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新聞小説 「ひこばえ」 (9)  重松 清

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新聞小説 「ひこばえ」(9)  11/23(170)~12/17(193)
作:重松 清  画:川上 和生

 

第八章 ノブさん  1~23
次の日曜、五月十三日に神田弘之さんが照雲寺へ来てくれる事になり、それに立ち会うため洋一郎も出向いた。

母の日に、航太と共に夏子を祝う件はキャンセル。
多摩ケ丘駅で西条真知子さんと待ち合わせ、バスで寺に向かう。

 

同じバスに乗り合わせた、釣り人のベストを着た初老の男性。

照雲寺前でその男性も降り、声をかけるとやはり神田さんだった。

持っていたのは大きな束のカーネーション。

母の日のためのカーネーション配送の仕事が多忙で、仕事先の人がくれたという。神田さんは流しのトラックドライバー。


父とは荒川急便という会社で一緒になったのがきっかけだという。一九九五年の阪神大震災の頃で物流が忙しい時期。

釣りの趣味で盛り上がって、それから意気投合したらしい。

 

本堂には道明和尚の他に、大家の川端さんと和泉台文庫の田辺陽菜さんも来ていた。これもノブさんの人徳だ、と喜ぶ神田さん。
父を軸にして盛り上がる回りの状況の中で、じわじわと不機嫌になる洋一郎。
和尚は、父の遺骨を本堂に移し、長いお経を上げてくれた。嗚咽を洩らす神田さんを見ても心が醒めている洋一郎。
読経も終わり川端さんが、石井さんの部屋でお酒やお菓子でもどうですかと持ちかける。
それに対して神田さんが、父親の遺骨をこんなところに置いといていいのか、と洋一郎に迫る。

言い返そうと思った時、神田さんがいきなり父の骨壺を抱き抱えた。「はかないよなあ、人間なんてのはせつないよなあ・・・」
随分乱暴な扱いだが、合掌で認めてくれた和尚。
「お前も抱いてやれ」と振り向く神田さん。引くに引けず、それを受け取る。孫の遼星を抱いた時とは全く反対に、軽くて、冷たくて、固い。

そして骨壺を祭壇に戻す。

 

帰ろうとする洋一郎に「ノブさんはお前の親父だ、それでも何の思いも湧かなくていいというのか?」と訴える神田さん。
「父の名はシンヤです。ノブヤではないんです」
その時、母からの着信があった。

母の日で、夏子に頼んで帽子を贈っていた。それに対するお礼。

母は同居する一雄さん家族に遠慮しながら暮らしている。最近特に気が弱くなった母。今日、お祝いに焼肉店へ行ったという。

 

老人にはヘビーであり、自分たちが食べたかっただけ。だがそれは口に出来ない。
そして、贈った帽子についても、一雄さんから夏用の帽子を贈られていた。一雄さん家族の前でこちらの贈った帽子をかぶる事は出来ない。むしょうに悔しさがこみ上げる。
その悔しさをたどった先に父の姿がある。

電話を終え、本堂に戻ると神田さんたちがノブヤ、シンヤの議論を行っていた。
真知子さんは相談会で父がイシイ・シンヤと言っていたのを記憶している。最初に神田さんからノブさんと言われて、気を使って訂正しなかったのかも、と川端さん。
陽菜さんが母親に確認した文庫の利用者リストでは「イシイ・ノブヤ」となっていた。
真知子さんの推理では、人生をリセットしたくてノブヤと名乗った・・・・
だが自分史を作る段になって、やはりシンヤとしての人生を書き残したくなった。

 

「ど、う、で、も、い、い」との、ぶつ切りの言葉に腹を立てる神田さん。
息子という言葉はやめて。自分は長谷川。離婚した後、一度も会ってなく、私の人生に父はいなかった。
親子の情があるはずだ、と気色ばむ神田さん。
真知子さんが割って入って「お父さんの事、何も知らないままで、本当にいいんですか?」


相手が彼女なら、と言い返す洋一郎に意外な事を言い出す真知子さん。父のケータイを借りて、アドレス帳の全員に電話をかけてみるという。神田さんも賛同。

神田さんが改めて、この遺骨を寺に置きっぱなしにするのか?と聞いた。
合祀するにせよ、納骨まで家に置いてやれないのか?との言葉に、家族の顔が頭に浮かぶ。
一晩ならどうだ?との言葉にも応えることは出来ない。

 

そこで神田さんの提案。骨壺に顎をしゃくって「ちょっと借りるぞ」
今週は北海道往復の仕事があるから、海を見せに連れて行ってやると言った神田さん。

 

感想
かつての仕事仲間だった神田さんの登場。一本気で人情厚く、なかなか理屈の通じない男。

これはもう「流星ワゴン」のチュウさんそのまんま(笑)
息子だったら当然、遺骨になった親でも思う気持ちが残っているだろう、というまっとうな気持ち。
真知子さんもそれに輪をかけてアドレス帳調べを申し出る。ムダにアツい連中に囲まれて食傷気味の洋一郎に同情・・・

 

しかし子育てのために再婚した母の現在は、遠慮ばかりの窮屈な生活。この父の事をもし知ったら、どんな反応になるのだろう?

 

 


ミスト    2007年  アメリカ

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監督・脚本 フランク・ダラボン
原作    スティーヴン・キング

 

キャスト
デヴィッド・ドレイトン       - トーマス・ジェーン
アマンダ・ダンフリー       - ローリー・ホールデン
ビリー・ドレイトン           - ネイサン・ギャンブル
オリー・ウィークス         - トビー・ジョーンズ
ミセス・カーモディ         - マーシャ・ゲイ・ハーデン
ジム・グロンディン         - ウィリアム・サドラー
ブレント・ノートン          - アンドレ・ブラウアー
ダン・ミラー                 - ジェフリー・デマン
アイリーン・レプラー       - フランシス・スターンハーゲン
バド・ブラウン               - ロバート・トレヴァイラー
ウェイン・ジェサップ       - サム・ウィットワー
ノーム                          - クリス・オーウェン
ステファニー・ドレイトン   - ケリー・コリンズ・リンツ

 

 

予告編

 

感想
地域スーパーが正体不明の霧に包まれて隔離される中、その中の者たちの様々な力関係に振り回される様が興味深かった。
現れて来る巨大昆虫は、軍の計画の失敗により異次元から入り込んで来たのだが、計画の詳細については語られず、単に昆虫に襲われる脅威だけが強調される。
狂った教祖を殺して車で逃れた先に立ちはだかる、更に巨大な生物。残った銃弾で仲間を死に導き、自分も怪物に殺されようとした時に、救援に現れた軍の車両。
この悲劇が映画の全てだが、ハード部分を全て除いて人間ドラマだけを抽出する手法は、SFとしてはイマイチ乗り切れなかった。

やっぱ時空の裂け目とか見せろよ。
この、監督と原作者の組み合わせは「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」と同じだが、ずいぶんテイストが違う。

 

「危機に遭った時はむやみに動くな」という教訓・・・・・

 

 


あらすじ
湖畔の家に住むデヴィッド・ドレイトン。

昨夜の嵐で窓や小屋が破壊され、息子のビリーと隣人のノートンを乗せて地元のスーパーへ買出しに出掛ける。湖に深い霧。
スーパーでの買い物を終え、出ようとするが深い霧に回りを覆われ、外から血だらけの男ダンが転がり込んで来る。

外ではパトカー、救急車の音。


店内に閉じこもる客と店員。
倉庫へ毛布を取りに行ったデヴィッドだが、発電機の異常を見つけて止める。またシャッターの外側に何かが居る気配を感じる。
男たちにその話をして、数人で確認に行く。発電機は、外のマフラーに異物が入ったからだと、店員のノームがシャッターを開けて見に行くが、巨大な触手に掴まれる。引き止めるデヴィッドたちだが、連れ去られるノーム。

 

この事態に狂信者のミセス・カモーディが「ハルマゲドンだ」と騒ぎ始める。
救助を求めるために数人の男たちが外に出て行くが、悲鳴が聞こえ救援のために繋がれたロープを引くと、男の下半身だけが戻った。
夜になると、店の光を求めて巨大昆虫が窓に体当たり。

そのうちに窓が割れ、羽虫や翼竜が入り込んで来る。襲われると毒が回って死ぬ。それらと戦う男たち。


ミセス・カモーディは何故か襲われず、ますます自分を救世主だと思い込む。周囲にそれが広がる。

デヴィッドたち数名が、負傷者を救うため隣の薬局へ薬を取りに行く。先に行った者たちが繭に包まれている。中から出て来る蜘蛛の集団。
辛くもスーパーに戻るデヴィッドたち。戻れたのは僅か。
三人いた軍人のうち二人が首を吊って死に、残る兵士のジェサップが追及される。
軍が進めている、異次元を窓から観察する「アローヘッド計画」が進められているという噂。どうもそれが失敗したらしい。
ミセス・カモーディが、その兵士に責任があると言ったのを真に受けて兵士をナイフで刺す男たち。兵士は店の外に放り出され、怪物の犠牲になった。

ミセス・カモーディの暴走から逃れるために、有志が集まって脱出を計画する。だがそれに気付いたミセス・カモーディが騒ぎ、息子のビリーを生け贄に差し出せと言い出した。同調する信者たち。


デヴィッドは一丁だけある銃でミセス・カモーディを射殺し、有志たちを連れて自分の車に走る。途中でやられる数名。
車に辿り着いたのはデヴィッドとアマンダ、ビリー、ダン、アイリーンの五人。
自宅に行くも、妻は昆虫に殺されていた。
なおも進むと巨大な怪物が車の上を過ぎて行った。


ついに車がガス欠で停止。怪物に殺されるぐらいなら自決を選ぶ。銃の弾を確認すると四発。最後に残った者は自分では死ねない。
「自分の事は何とかする」とデヴィッド。そして四発の銃声。

車から降りたデヴィッドは虚空に向かって「さあ殺せ!」と叫んだ。
その時、霧の先から大きな影が出現。軍の車両だった。
救援が到着していた。急速に晴れる霧。続く車両の後に、人を多数乗せたトラック。そこにはスーパーで取り残されていた信者の主婦が。
慟哭するデヴィッド。

 

 

 

ゴッドファーザー    1972年  アメリカ

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監督      フランシス・フォード・コッポラ
原作・脚本 マリオ・プーゾ 

音楽     ニーノ・ロータ

 

キャスト
ドン・ヴィトー・コルレオーネ    - マーロン・ブランド
マイケル・コルレオーネ      - アル・パチーノ
ソニー・コルレオーネ        - ジェームズ・カーン
フレド・コルレオーネ         - ジョン・カザール
コニー・コルレオーネ             - タリア・シャイア
トム・ヘイゲン             - ロバート・デュヴァル
ケイ・アダムス             - ダイアン・キートン
カルロ・リッツィ              - ジャンニ・ルッソ
ルカ・ブラージ             - レニー・モンタナ
ジョニー・フォンテーン       - アル・マルティーノ
アポロニア               - シモネッタ・ステファネッリ

 


感想
以前、ほくとさんのレビュー読んで、すぐ観ようと思いながら一年以上経ってしまった・・・・  細部はウィキペディアに譲る
年末年始の、映画特集のためのスペース作りも兼ねて、録画を消化。

 

キーとなるのはヴィトーの、マイケルに対する思い。
ギャング稼業でのし上がったが、息子三人の中ではマイケルに一番目をかけていた。結婚式の記念写真でも「マイケル抜きでは撮れない」という言葉にそれが滲み出る。
ベッドの上で、マイケルが仇を取ったとソニーから聞いた時の、何とも言えない悲しい顔も心に迫った。

 

一方マイケルは、ギャングファミリーの中にあっても民間人的な空気を感じさせる。同じくケイも普通の人として彼に接する。
だが父が狙撃されて、次第に心に変化が生まれて行くマイケル。

その様子は画面からさほど強く現れるわけではなく、彼がソロッツォを討つと言った時にはちょっとびっくり。
ただ、病院でギャングが襲いに来た時に、護衛を装って敵をけん制したあたりから決意を持っていたのだなあ、と後になって再認識。
そして様々な出来事を経て、父親以上に冷酷になって行くマイケル。
ケイがいながら、あっさりとアポロニアと結婚したのも、根底の冷たさの象徴か。

 

ヤマ場はマイケルがソロッツォを殺す場面。彼らの車に乗せられて店に行く時、ニュージャージー方面から急にターンして「騙されたか?」と一瞬思ったが、情報通りルイスの店に着き「やれやれ・・・」
トイレの場面でも、水槽裏に手をやってもなかなか銃が出て来ずやきもき。
そういえば待ち合わせの場所に使われたジャック・デンプシーの店。

デンプシー・ロールといえば「はじめの一歩」の主人公の必殺技。なつかし~~(ちょっと脱線)。

 

もう一つ。コニー役のタリア・シャイアは先日レビューしたロッキーの「エイドリアン」。この時は少し若くて、ヒステリー気味の若妻を好演。

ラスベガスに転身する話から、他ファミリーのボスを次々に暗殺するところまで、終盤近くで少し走った感じがあった。バランスから行けば前半を少し整理して後半に回したかったか・・・
しかし三時間近い長編を、ほとんど飽きさせなかった。本当に名作。

最後に音楽。言う事なし。


あらすじ
華やかな結婚式。ドン・ヴィトー・コルレオーネの長女コニーとカルロとの結婚。


書斎で多くの面会人に会うヴィトー。チンピラに娘を暴行された葬儀屋のボナセーラ。歌手のジョニーはヴィトーが名付け親。人気回復のため映画に出たいが、社長のウォルツに嫌われていると泣きつく。
一緒に話を聞く、側近で弁護士のトム。トムにそれらの課題への指示を出すヴィトー。
ヴィトーの長男ソニーはヴィトーの後継ぎを認識しているが、考えが浅い。次男のフレドは無能。三男のマイケルは軍人で恋人はケイ。マイケルを堅気のままにしておきたいヴィトー。

 

ウォルツ・インターナショナル映画へ交渉に行くトムだが、ウォルツは育てて来た女優を誘惑して台無しにしたジョニーを許さず、トムを追い払う。自分が所有している馬を自慢するウォルツ。
ある朝、目覚めて違和感を覚え、寝具をめくるウォルツは、そこに血だらけの愛馬の首がころがっているのを見て絶叫する。

後日ジョニーは主役をゲット。

 

ある日、ヴィトーに面会し商売を持ちかける麻薬密売人のソロッツォ。バックにタッタリア・ファミリーが居る。麻薬は汚い商売だと断るヴィトーだが、金になるのでソニーは不満を持つ。


側近のルカに指示してタッタリアから情報を取ろうとするヴィトー。
その企みがばれ、ルカは殺される。

 

相前後してトムがドン・フィリップ・タッタリアに誘拐される。
街中で襲撃されて倒れるヴィトー。

新聞でそれを知って駆け付けるマイケル。
トムに「ボスは死んだ。ソニーとの仲を取り持ってくれ」と頼むソロッツォ。だが弾を五発食らってもヴィトーは生きていた。
ソニーたちの元に死んだ魚が送り込まれる。ルカは海の底で眠っているとのメッセージ。

 

父が入院する病院を訪れるマイケル。警備が誰もおらず、看護婦が居るだけ。このままでは刺客にやられると考え、看護婦に手伝わせてヴィトーを他へ移す。涙を流すヴィトー。
その直後に男が来たが、彼はパン屋のエンゾで無関係。彼を利用して次に襲ってこようとする連中をけん制するマイケル。
その後警察がやって来る。ボスはマクラスキー警部。父を殺すためにここをカラにしたと言うマイケルは殴られる。ソニーがフィリップの息子ブルーノを殺した事が伝えられる。

 

ソロッツォとの会見がセットされる。その場に出向いて相手を殺すとソニーに言うマイケル。会見の場所を探り出し、そこのトイレに銃を仕込む側近のクレメンザ。
会見の相手はソロッツォとマクラスキー。ジャック・デンプシーの店の前で拾われて、ブロンクスのルイスの店へ運ばれる。
休戦協定を申し出るソロッツォ。計画通りトイレで銃を手にして二人を射殺し立ち去るマイケル。

意識を取り戻し、マイケルが仇を討った事をソニーから聞いて落胆するヴィトー。

 

ヴィトーの故郷シチリア島に身を隠すマイケル。そこで島の娘アポロニアを見染め結婚。


ケイがマイケルの行方を聞きにトムを訪ねるが、真相は話してもらえない。

 

コニーから夫カルロの暴力を聞かされて、カルロを時々痛めつけていたソニー。行動する時にはいつも護衛を付けていたソニーだが、コニーからまた暴力を受けたとの電話を受け、逆上して一人で車に乗る。
そこでタッタリアの待ち伏せを受けて惨殺されるソニー。

 


次いでマイケルも狙われる。ボディガードのファブリッツォの裏切りで殺されそうになるが、アポロニアが身代わりで死ぬ(自動車による爆死)。

 

何とか傷が癒えたヴィトーは五大ファミリー(タッタリア、バルジーニ、クネオ、ストラッチ)としてボスを集めて休戦を宣言し、マイケルに後を譲る。その時にファミリーの一つバルジーニが黒幕だと知るヴィトー。
マイケルはケイに会い、この先五年でコルレオーネ・ファミリーは合法組織になると言って結婚を申し出る。
迷いつつもそれを受けるケイ。

 

ラスベガスへの転身を考えるマイケル。こちらにはカジノ・ホテルを経営するモー・グリーンがフレドの面倒を見ていた。高圧的なマイケルに逆上するグリーンはホテル売却の話を蹴る。

マイケルに話すヴィトー。お前にはやらせたくなかった。お前なら人を操れる立場になれると思っていた。州知事とか・・・
今になれるよ、とマイケル。バルジーニとの会見を手配する者が裏切者だ、とヴィトー。

 

孫と遊んでいるうちに心臓発作を起こして死んだヴィトー。


ヴィトーの葬式。集まる各ファミリー。古参幹部のテッシオが、バルジーニに言われて会見を持ちかけて来た。

 

コニーが産んだ子の洗礼式に出席して名付け親となるマイケル。

その同じ時刻に指示を受けて他ファミリーの幹部を殺害する部下たち。テッシオ、グリーンも同時に殺される。
そしてコニーの夫カルロがソニー殺害の手引きを行っている事も判っていた。カルロに白状させるマイケルは、許すふりをして彼をクレメンザに託す。車の中でカルロを絞殺するクレメンザ。

亭主を殺したと言ってマイケルに怒りをぶつけるコニー。それを見て苦しむケイ。
マイケルに「それは本当の事なの?」と聞くケイ。
「嘘だ」と一言返すマイケル。書斎のドアが閉じられた。

 

 

 

 

 

来る(映画)  2018年

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監督・脚本 中島哲也
原作      澤村伊智「ぼぎわんが、来る」

 

キャスト
野崎和浩     - 岡田准一
田原秀樹     - 妻夫木聡
田原香奈     - 黒木華
田原知紗     - 志田愛珠
比嘉真琴     - 小松菜奈
比嘉琴子     - 松たか子
津田大吾     - 青木崇高
逢坂セツ子    - 柴田理恵
高梨重明     - 太賀
スーパー店長 - 伊集院光

 

ロングトレイラー


感想
NHKの情報番組で、松たか子がこの映画の番宣をやっていたので、ちょっと興味あって視聴。
小説は2015年に「第22回日本ホラー小説大賞」を受賞した作品。

原作は未読。
物語のベースにあるのは各地域に言い伝えられている「神隠し」。

当時貧しい農村で行われていた子供の「間引き」。

生活に困った親が、生活能力のない者を殺し、その言い訳として様々な理由付けを行って来た。
その怨念が次第に集合して邪悪なものに成長した。

人の邪悪な思念を「アレ」が吸収して肥大化して行く。

原作では「アレ」は「ぼぎわん」と言うが、劇中では主に「アレ」(十三回忌の時、親族の者たちが時々ぼぎわんと言っていたが・・・)

 

一つひとつは他愛のない微小な悪意。

それが積み重なって「あれ」に凝縮されて行く。
キーとなるのは「芋虫」。オープニングで少女の赤い靴に取り付き、秀樹のマンションのベランダにも群がっていた。それは心の弱さの象徴であり、除霊の最中琴子も血と共に吐きだした。
麻薬中毒患者が、禁断症状でウジ虫やら芋虫が群がる幻影を見るというが、それも思わせる。

 

ドラマの構築としては、大まかに三つ。序盤でいい人ぶったクズ育メンを殺し、中盤で母親を殺す。終盤で最後の戦い。
最後まで「アレ」の実体を見せる事がなかったが、成功している様な、いない様な。全く姿が見えないのもちょっと「つまんない」
セツ子の腕をもぎ取った時の迫力はハンパなかったが、琴子との戦いではさほどの印象を持たなかった。見えないなりに、存在を感じさせる演出がもう少し欲しいところ。

でもところどころ、小ネタでゾワッと鳥肌が立つ恐怖感の演出はあり、ホラーとして一応及第点はやれるだろう。

 

工事関係者を使って祭壇の準備をするところは、怪獣映画で地球防衛軍が迎撃の準備をしている様なノリがあり、バックの音楽いれたらメチャ受けるだろうな、と(笑)

 

シリアスな割りに、琴子の登場場面では黒の革ジャンで決め過ぎが笑えたり、なぜか琴子がラーメンを食べる場面では、女のくせにどんだけー、というぐらい多くの麺を箸で取って「ズズーっ」。

あれなら三口ぐらいで食い終わるナ・・・

琴子の生死をはっきり言っていないのは、続編を匂わせているのか?

 

しかし良く出回っているポスター。ホラー映画の告知として、なんでこんなダサいもん作ったのか。

 

 

あらすじ
サラリーマンの田原秀樹。スーパー店員の香奈を見染めて、祖父の十三回忌の場で親族に紹介する。田舎に言い伝えられている「ぼぎわん」の言い伝え。言う事を聞かないと山に連れて行かれるという。
子供の頃、秀樹と一緒に遊んだ少女が居なくなった話を母親がする。

 

そして結婚式。幼なじみの津田大吾も招待されて祝辞。
子供を授かり、手放しで喜ぶ秀樹。出産前からブログで子育て日記をアップして入れ込む。


出産に備えて和光市に転居し、同僚たちを招待する秀樹。津田やパパ友も呼んで、幸せの絶頂。家の壁には、実家から送られて来たものを始め、多数のお守りやお札。

会社にかかって来た面会のコールを秀樹に取り次ぐ同僚の高梨。

相手は「ちささんの事で話がある」と女性の声で言ったという。
ロビーに行くが、そのような人はいない。一緒に来て不思議がる高梨だが、突然ワイシャツを血だらけにして倒れる。

原因は判らなかったが傷は浅く、すぐ仕事に復帰する高梨。

 

女児を出産した香奈。秀樹が知紗と名付けた。

だが秀樹はイクメンとは名ばかりで、育児は一切せずブログ上でのパフォーマンスだけに浸っていた。


高梨はあの事故の後体調を崩し、秀樹を妬みながら一年あまりの入院生活の後死亡。
知紗が生まれてから二年。相変わらず秀樹は非協力的で、次第に精神のバランスを崩す香奈。
家事も出来ず知紗を抱く香奈を見て、幼い頃を思い出す秀樹。
幼なじみで行方不明になった少女。

「アレが来る、ヒデキのところにも。だってアンタはうそつきだから」 

靴に群がる芋虫。

 

民俗学の研究を行っている津田に相談する秀樹。
津田が紹介した野崎和浩。

心霊、オカルト何でも手掛けるルポライター。
霊能力を持つというキャバ嬢の真琴に対応を頼む野崎。
秀樹に会って何かを感じ取ろうとする真琴。そこで奥さんと子供に優しくすれば出なくなる、と真琴が言ったことで逆ギレする秀樹。
一方真琴は野崎に、同席していた津田の事についての不審を伝える。

津田の謝罪を受け、彼と別れてからしばらくして秀樹が家に帰ると、野崎と真琴が訪れていた。知紗と遊ぶ真琴。
真琴がどうしても現場を見たいというから、と弁解する野崎。

久しぶりに家で笑い声を聞いて容認する秀樹。
そんな時に「アレ」が入り込み部屋中のものを動かして見せる。

その直後に真琴に電話がかかる。それを受ける秀樹。


真琴の姉、琴子だった。

未熟な真琴が関わったために「アレ」を刺激してしまったと謝罪。
不安がる秀樹に「大切なのは”どうして”ではなく”どうするか”です」と諭す琴子。
そしてこの案件に対処するため、霊能力者の逢坂セツ子を紹介する。

 

街なかの食堂で逢坂セツ子に会う秀樹と野崎。早々に「アレが来ます」とセツ子。同時に秀樹のスマホに着信。

アレです、好きなだけ喋らせなさいとのアドバイス。
知紗の声、次いで香奈、高梨が女からの電話を受けた時の声に続いて、秀樹の声で香奈を悪く言う言葉。「そんな事言ってない!」と叫ぶ秀樹に「でも心の中で思っていた」と野崎。
それを制しようとセツ子が動いた時、回りに衝撃が走る。

セツ子が右腕をもぎ取られて倒れる。
家族のところへ行けというセツ子。野崎にも言われタクシーで家に向かう秀樹。途中で香奈に電話を入れ、知紗と一緒に家から出るよう指示。その後琴子から電話が入り、自宅で「アレ」を招き入れる作戦を指示される。

 

自宅に戻り、琴子の指示通り鏡を全て割り、刃物を一ヶ所にまとめて隠し、食器に水を溜めて廊下に並べた。
「これから先は私の仕事です」とスマホからの琴子の声。
そこに家の固定電話が鳴る。留守電に変わった時、それは琴子の声だった。
今起こっている事は全て「アレ」の罠だという。混乱する秀樹。
その時アレが部屋に入り込み、体を切断されて絶命する秀樹。

 


秀樹の死から一年。香奈は以前のスーパーに復職していたが、保育園と折り合いが悪く早退、欠勤で店長は閉口。

香奈のイライラのしわ寄せが知紗に向く。
事件のショックでずっと引きこもりだった真琴だが、知紗を案じて家を訪れる。知紗と楽しく遊ぶ真琴。

 

真琴に留守番を頼み、化粧をして出掛ける香奈。津田との逢瀬。

秀樹の生前から不倫関係だった。
留守番の真琴に野崎からの電話。仏壇の前にある魔道符は津田が呪詛を仕込んだものであり、破棄するようにとの指示。
それを破って燃やす真琴。だがその事が「アレ」を呼び寄せた。

家に戻った香奈がその現場に遭遇する。知紗を連れて逃げるよう叫んだ真琴は、ベランダに出て戸を閉める。

体をズタズタに切られて倒れる真琴。
逃げ出した香奈だが、隠れる場所などない。街をさまよった後、トイレに入るとドアが揺さぶられる。相手は自分を捨てた母。香奈にとっての「アレ」は母親。香奈は死に、知紗が連れ去られた。

 

重傷を負い病院のベッドで眠る真琴。
付き添いながらうたた寝する野崎。かつてつき合っていた彼女の、中絶を黙認した場面が夢に出る。
そこに琴子が姿を現す。

タバコの煙を吹きかけると、真琴の容体が回復。

 

「アレ」の除霊準備が始まる。
政府要人を呼びつけて、全国から霊能力者、宗教者を集めるよう指示する琴子。また埼玉県警にはマンション周辺一帯の入場規制を指示。
呼び寄せるための祭壇作り。工事関係者のヘルメットにはお札。

 

野崎が部屋を清掃し、そこに琴子が祭壇を設けた。儀式が始まる。
「アレ」と知紗は強固に結びついている。エセイクメンの身勝手な父親と、そんな夫を見限って不倫に走っていた母親。淋しい心がアレに付け込まれた。
知紗もろとも「アレ」を異界に送り返そうと考える琴子。
だが「アレ」と共に現れた知紗を抱きしめて離さない野崎。その心の結びつきを感じた琴子は「アレ」から知紗を引き離し、野崎と共にベランダから外に放り出す。花壇がクッションとなり助かる野崎と知紗。
「アレ」と琴子の壮絶な戦い。マンションの部屋には亀裂が入り、そこから血が噴き出す。
祭壇は破壊され、巫女や霊能力者たちも多く下敷きになる。

 

雪のちらつくクリスマスの夜。ベンチで知紗を抱く真琴。その隣りでビールを飲む野崎。
知紗が見ている夢は?と聞く野崎に「♪お~むらいすのくに いってみた~いな・・・・」と歌う真琴。

 

 

アリー/ スター誕生   2018年  アメリカ

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監督 ブラッドリー・クーパー
脚本 エリック・ロス
 
キャスト
ジャクソン・メイン   - ブラッドリー・クーパー
アリー          - レディー・ガガ
ボビー         - サム・エリオット ジャクソンのマネージャー(兄)
ロレンツォ       - アンドリュー・ダイス・クレイ アリーの父親
ヌードルズ       - デイヴ・シャペル
ゲイル         - レベッカ・フィールド
ウォルフ        - マイケル・ハーネイ
レズ           - ラフィ・ガヴロン  アリーのマネージャー

 

 

トレイラー1

ロングトレイラー

 

感想
Blogサーフィンで意外に評価が低く、観るまで少し気になっていた。
レディ・ガガについては以前それほど興味なく、奇抜な衣装や化粧が注目されて、音楽自身はあまり聴いていなかった。
それが、東日本大震災の時、他の著名人に先駆けて支援チャリティ活動を開始したのに接して、注目する様になった。

 

さて本編。今まで映画化されたものについては観ていないので、比較は出来ないが自分的には「いいものを観た(聴いた)」と感じている。

ガガが強い人だから、強い人を演じなければならない、なーんて事はない。アリーのナイーブな感性、初めの頃のものおじする様子など、素直に受け入れる事が出来た。ネットで彼女の人となりを知れば、いかにこの役と同化した女性かという事が判る筈。

ジャクソンに対する真っ直ぐな愛にも感じるものがあった。

 

レストランでの態度に問題があるという声もあるが、あくまでもスタッフ間の事。客に無礼を働いたわけではない。話の端々で「仕事に行かなくてはならない」と言っていたので、それほど無責任な事をしていた訳でもなく、ゴミ捨てもブーたれながらもキチンとこなした。
レストレンを辞めた事も、ジャクソンのコンサートを蹴ってまで仕事に来たのに、経営者につらく当たられて我慢の限界になったと解釈すれば、それほど問題にせんでもいいだろう。

 

鼻のコンプレックスについてだが、ジャクソン自身はむしろ好ましいものとして捉え、中盤ではアリー自身も自分の鼻すじをなぞって笑う場面も出て来る。コンプレックスが次第に魅力になって行く様の演出が、映画の中でキチンとなされているという事。

 

ジャクソンについては、何も自殺せんでも、と思うが、幼い頃のトラウマから抜け出せなかったという事か。

自滅型ではあるが、それも愛。ベルトを持った後ろ姿が痛々しかった。
アリーは「さげまん」ではないだろう。「あげまん」でもないが・・・
もともとアル中気味だったジャクソンの人気は下降気味だった。そんな時にアリーの才能を見出して彼自身いっとき輝きを取り戻したが、自身の弱さを克服出来なかった。そういう事だと解釈している。

 

それにしても、彼女自身の歌をそれほど真剣に聞いて来なかったが、今回は本当に堪能した。
なお劇中の歌唱パフォーマンスは、全て生収録だったとの事。

圧倒的なリアリティ。

 

彼女の魅力を最大限に引き出したという点で、ソフィア・ローレンの「ひまわり」みたいなもんだなーという印象。
ちょっと特徴的な顔が、後半本当にかわいく見えた(惚れてまいそう・・・・)
オスカー取れるかも?と思うのは褒め過ぎかな・・・・

オマケ
彼女の入浴時、一瞬だがフルヌードが拝めた。

毛は少な目(まあいいけど・・・・)

 

 

あらすじ
レストランで働くアリー。経営者に文句を言われながら働いている。
満員のコンサートで歌う、歌手のジャクソン・メイン。ステージに上がる前にもウォッカをあおるアル中。
ある日の公演の帰り、マネージャーのボビーが運転する車で飲む場所を探していた。見つけたのはゲイ・バーの「ブルー・ブルー」。有名なジャクソンの来店に舞い上がる店員。
そこで出演しているアリーが歌う「ラ・ヴィアン・ローズ」を聞いて釘付けになるジャクソンは、楽屋まで押しかけてアリーと話をする。
話の続きをしたくてアリーに着替えさせ、一緒に外へ出るが、ファンがアリーの事を商売女と間違えて罵る。

その男にパンチを食わせるアリー。

 

人混みから逃れてスーパーに入る二人。ジャクソンはアリーが痛めた拳を冷やすために冷凍のビーンズを当てる。店で歌っているいきさつを聞くジャクソン。歌に希望を持って作曲もしているが芽が出ない。

今の店も本当はゲイでないと出られないが、好意で歌わせてもらっている。
作った曲を聴きたいというジャクソンに「シャロウ」のフレーズを聞かせるアリー。
自分の身の上話をするジャクソン。少年期に、アル中の父の気を引くためにベルトで自殺未遂した事もあった(シーリングファンが丸ごと落ちて死を免れた)。
家まで送る時、コンサートを是非聞きに来て欲しいというジャクソンに、仕事があるから無理、と言って断るアリー。
家に帰ると、仲間と部屋を汚し放題にしている父。ジャクソンの話を聞いて行くべきだと言うが、アリーは聞かない。

 

翌日もジャクソンの迎えの車が待っていた。それに構わず出勤のアリー。だが行ったはいいが、経営者から遅刻を咎められ、とうとうプッツン。店を辞めると宣言して迎えの車に乗り込む。
そこからプライベート・ジェットに乗せられて舞い上がる。

満員の野外コンサート。アリーは舞台袖に案内されて楽しんでいた。

コンサートも佳境に達した時、ジャクソンが、アニーをステージに引っ張り出して、彼女の作った曲を弾き始める。

そして一緒に歌うようプッシュ。

最初は逃げたアリーだが、次第に気持ちが乗って来て、最後にはジャクソンとデュエット。

Shallow

 

アリーが歌った事はYouTubeで拡散され、父親も「200回観た」と上機嫌。それ以後、アリーはジャクソンのコンサートの常連となり、急速に知名度が上がって行く。
作曲の共同作業。流れで愛し合うようになる二人。

 

だがジャクソンは耳に障害を抱えており、補聴器を付けないとどんどん悪化する。ボビーの忠告にも耳を貸さない。
そんな時、レズが声を掛けてアリーのマネージメントを申し出る。
ジャクソンに相談するアリーに快く転身を勧めるジャクソン。
少し距離が離れたアリーに対し、酒量も増して次第にステージのパフォーマンスも落ちて行くジャクソン。

 

ジャクソンの故郷を訪れるアリー。だがそこの牧場はボビーによって売却されていた。逆上してボビーを殴るジャクソン。あんな父親を慕っていたのか、と返すボビー。実は彼はジャクソンの実兄だった。

今まで行って来た後始末はもうしない、とボビーは去って行った。

 

そんな時、アリーのレコーディングが行われた。レズに任せてはいたが、不安定なアリーを見て助け船を出すジャクソン。アリーの希望を聞いてレコーディングルームにピアノを入れさせ、彼女が弾く事でリラックス出来るようにした。レコーディングは大成功。

 

旧友ヌードルズの家で寛ぐジャクソンとアリー。ジャクソンはヌードルズからペンチを借りてギター弦の余りを切り取る。それを使って工作。
皆の前で、ジャクソンが弦を加工して作った指輪をアリーの左手薬指に挿した。そして結婚式。皆の祝福。

 

アリーはレコードセールスの成功もあって、どんどん人気が出る。
一方で人気アップのためのダンス練習を要求されるアリー。レズからの指示だった。
君は歌だけでやって行ける、とそれを疑問に思うジャクソン。
ジャクソンは、ボビーが去った事もあって、コンサートでの失態も増え、麻薬にまで手を出していた。アリーとも関係がギクシャクする。

 

Always Remember Us This Way

 

 

Look What I Found

 

 

Heal Me

 

そんな時、アリーがグラミー賞にノミネートされている事が伝えられる。皆が喜び、それはジャクソンも一緒だった。
だが栄えある受賞式の当日、アリーの元にやって来たジャクソンは泥酔状態。受賞を受けての、アリーのスピーチ最中に壇上で酔いつぶれるジャクソン。

 

ミーティングの席上。遅刻したジャクソンが着席する。アルコール中毒患者のための治療施設。
プログラムに従って回復中のジャクソン。面会に訪れるアリー。
だが次に面会に来たレズが全てを暴露する。

ジャクソンの失態の後始末がどれだけ大変だったか、アリーは君に全てを捧げているから何も言わない。
今ここで飲んでいるドリンクも、いずれ酒に変わるだろう。その時は彼女と別れてくれ。

 

療養施設を退院したジャクソン。アリーと犬のチャーリーとの、いっときの平穏。


だがアリーの受賞を台無しにした悔恨から逃れられないジャクソン。
アリーがコンサートでデュエットしようという提案をした。先に出掛けたアリー。だがジャクソンは残された家でベルトを片手に持ち佇む。

コンサートでのアリー。ジャクソンが来ないのにやきもき。

彼が来ることを信じてステージに立つ。

 

 

ジャクソンの追悼公演で一人歌うアリー。

曲は、彼が入院する前に詩を書き、退院してからアリーと共同で作曲していた「I'll Never Love Again 」

 

 

 

 

 

 

ゴッドファーザー PART II   1974年 アメリカ

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監督      フランシス・フォード・コッポラ
原作・脚本 マリオ・プーゾ

 
キャスト
ドン・ヴィトー・コルレオーネ   - ロバート・デ・ニーロ
カルメラ・コルレオーネ         - 若年期:フランチェスカ・デ・サピロ
                                            老年期:モーガナ・キング
マイケル・コルレオーネ       - アル・パチーノ
フレド・コルレオーネ         - ジョン・カザール
コニー・コルレオーネ             - タリア・シャイア
トム・ヘイゲン              - ロバート・デュヴァル
ケイ・アダムス             - ダイアン・キートン
フランク・ペンタンジェリ(フランキー) - マイケル・V・ガッツォ
ウィリー・チッチ            - ジョー・スピネル
ピーター・クレメンザ        - ブルーノ・カービー
ドン・ファヌッチ                        - ガストーネ・モスキン
ハイマン・ロス             - リー・ストラスバーグ
ジョニー・オーラ            - ドミニク・チアニーゼ

 

予告編


感想
父ヴィトーからファミリーを引き継いだマイケルのその後と、ヴィトーの若き日をトレースする物語が同時進行する。
両親を殺され、移民として辛くもアメリカに辿り着いた、ヴィトーのサクセスストーリー。
前作で手下だったクレメンザが、最初は格上だったのが笑える。
移民から搾取するファヌッチを殺した事で、仲間からの信頼を得てのし上がって行く過程は小気味良さがある。

そして親の仇であるチッチオの殺害も。

一方マイケルの方は、部下にやらせているとはいえ「殺しすぎる」嫌いがある。
そんなマイケルに嫌気がさすケイ。ケイのお腹の子が流産ではなく中絶だったというのはショック。マイケルに与えた打撃の大きさを思うと、今までやって来た事を忘れそうになるが、自業自得。

勢力拡大のための様々な話は、登場人物や出来事含めテンコ盛りで、とても一回観ただけでは把握出来ない。

ネタバレサイトのサーフィンでようやく理解した。

 

結局肉親のフレドまで殺してしまった、マイケルの心の闇。

これがファミリーを守る事だったのだろうか、という悔恨がラストシーンから滲み出す。

今回、マイケルの次に印象深かったのはトム・ヘイゲン。孤児だったのをヴィトーに拾われ、大学まで出してもらって弁護士になった。ヴィトーに次いでマイケルからも肉親以上に慕われている。そんな中でどんどん冷酷になるマイケルに困惑する姿が重く心に残った。

それからフレドも。一作目ではただの無能な兄と思っていたが、軽く扱われるうちにそれが裏切りという形に膨れ上がるまで追い詰めたのはマイケル。
ヴィトーが、肺炎で死にそうな幼児のフレドを見つめる姿。

そして後にマイケルの兵役志願を讃えるフレド。
思い返すと、実に重要な役だったことか。

 

 


あらすじ
映画ではヴィトーの話とマイケルの話が交互に描かれるが、それぞれにまとめる。

 

ヴィトーのドラマ
1901年
ヴィトー9歳。シチリアのコルレオーネ村で兄、両親と共に暮らしていたが、父が地元マフィアのボスであるドン・チッチオに殺される。その葬儀中に兄パオロも殺される。
チッチオにヴィトーの命乞いをしに行った母だが、男は復讐に来るから殺すと言われ、抵抗するも殺される。

村人の助けで辛くも脱出するヴィトー。
ニューヨーク行きの移民船に乗り入国するヴィトー。管理官の勘違いで村の名前のコルレオーネが姓とされた。天然痘に感染し、3ケ月の隔離の後、収容所に引き取られるヴィトー。


1917年
結婚して息子ソニーの父となったヴィトー。雑貨店で働いていたが、街の顔役ファヌッチが甥を連れて来て彼の職を奪う。移民たちからみかじめ料も取っているファヌッチ。
隣りに住むクレメンザから銃を預かった縁で、絨毯をプレゼントすると言われるが、結局裕福な家からの盗み出し。
1919年
クレメンザに加えてテッシオと三人での窃盗団として生活しているところへ、ファヌッチがヴィトーらの犯罪に気付いてみかじめ料を要求。一人200ドル、計600ドルの要求に対しヴィトーが150ドルで話をつける。
パレードの喧騒に乗じてヴィトーがファヌッチを殺害。
ファヌッチに苦しめられていた近所の者からの信頼を集め、相談に乗る体制が出来上がる。
「ジェリコ・オリーブオイル商会」を設立し、コルレオーネ・ファミリーを確立するヴィトー。
1925年
家族を連れてシチリアに凱旋するヴィトー。表向きはオリーブオイル輸入の契約締結だが、かつての親の仇、ドン・チッチオを訪ね、ナイフで刺殺して復讐を果たす。

 


マイケルのドラマ
1958年
ラスベガスに移住してファミリーを成功させたマイケル。息子アンソニーの聖餐を祝うパーティー。祝辞を述べるネバダ州議員のパット。
だがパットはカジノホテルの利権にも関わっており、裏の交渉ではマイケルを汚いイタリアマフィアと軽蔑しライセンス料の交渉が進まない。

 

ニューヨークからパーティにやって来たフランキー。マイケルが残して来たニューヨークのシマを守っていたが、地元のロサト兄弟と対立していた。そのバックに居るのがマイアミのハイマン・ロス。
カジノへの進出を考えるマイケルは、そのロスと手を組もうとしており、揉め事を起こさないようフランキーをけん制。だがフランキーはそれに不満を持つ。

そんなある夜、マイケルの寝室にマシンガンが撃ち込まれた。カーテンが開いているのに気付いたケイの言葉で間一髪助かるマイケルたち。襲撃者は自殺して首謀者不明。

信頼するトムに一時ファミリーの事を任せ、マイアミへロスに会いに行くマイケル。


ロスは亡き父ヴィトーと同世代のボスであり、裏社会での強い影響力を持っている。協力関係を申し出るマイケルは、自分を襲撃したのがフランキーだとロスに吹き込む。

 

一方フランキーを訪ねたマイケルは、自分を殺そうとしたのはロスだと吹き込み、油断させるためにロサト兄弟との話をまとめる様指示。
フランキーはその意向に従い、ロサト兄弟に会いに行くがそこで絞殺されそうになる。そこに偶然立ち寄る警察。
ホテル利権で敵対していたパット議員。売春宿で死んだ娼婦の横で目覚める。その後始末をしたトム。これでもう逆らう事は出来ない。

 

キューバに出向くマイケル。当時のキューバは政府と反政府ゲリラの対立が激化。
この国で裏を仕切っているのがロスだった。事業を譲る代償として大統領への賄賂200万ドルを要求されていた。
200万ドルをキューバまで持って来たフレド。会話の中でフレドとロスの繋がりに気付くマイケル。
そして殺し屋をロスに仕向けるが、容体が悪くなったロスは病院へ。その頃キューバ政府が敗北宣言を出し国内は大混乱。殺し屋が病院でスキを見てロスを窒息死させようとするが、失敗して射殺される。
大混乱の中、何とかキューバから脱出するマイケルだが、フレドは彼を恐れて逃げた。

 

ネバダに帰ったマイケルは、トムからロス暗殺の失敗、ケイの流産などつらい報告を受ける。

国の上院委員会から告発されるマイケル。フランキーが殺されずに警察の手に落ちたのはロスの計略。マイケルに裏切られたと思い込んだフランキーは全てを自白。
表向きは実業家だが、フランキーが全て今までの事を暴露すれば、マイケルは窮地に立つ。
マイケルの許に顔を出すフレド。フランキーがFBIの手に落ちた理由を聞くが詳しくは知らない。マイケルの叱責に、今まで何でもクズみたいな仕事を「フレドにやらせとけ」と押し付けられて来たと反論。
「フレド、お前とは縁を切る」と宣告するマイケル。

 

公聴会での証言の日、マイケルはシチリアからフランキーの兄を連れて来ていた。フランキーは今までの供述を全て否定し、FBIにそそのかされたと言った。
兄の存在に不審を抱いた公聴会が追及するが、兄は一貫して、弟のトラブルを知って駆け付けたと主張。
告発が取り下げられ、おめでとうを言うケイは、あなたに愛情を感じないと言った。
埋め合わせはする、子供はまた作ればいいと言うマイケルに、あなたは何も判っていないと叫ぶケイ。
子供は流産じゃなく中絶。あなたの子を欲しくなかった、だから堕ろした。「子供は渡さない」とマイケル。

 

マイケルの母が死んだ。そして葬儀。
フレドも戻って来るが、マイケルとの面会は許可されない。
コニーが今までのわがままを謝罪し、私が戻るからフレドを許してやってと懇願。マイケルの息子アンソニーの釣り相手として、居場所を与えられるフレド。

 

ハイマン・ロスのニュースが流れる。イスラエルへの亡命申請が却下された。死ぬといいながら20年。マイアミに戻るしかない。
「その時に殺す」とマイケル。諫めるトムの言う事も聞かず、ロッコに暗殺の指示を出す。

刑務所のフランキーを訪ねるトム。古代ローマの話を引き合いにして、例え謀反を企てても家族は守られると諭す。
その後浴槽で手首を切って死んだフランキー。
マイアミ空港で記者のインタビューに応えるロス。年金生活者だと自らを卑下する。
記者を装ったロッコがロスを射殺。ロッコも射殺された。

アンソニーと小舟で釣りに出掛けようとするフレド。ボディガードのアル・ネリも同乗。出る寸前に、マイケルが出掛けるのに一緒に行くという事で、アンソニーが降ろされる。
二人で沖に出る。ほどなくして、部屋で銃声を聞くマイケル。

 

若い頃を回想するマイケル。
1941年
ヴィトーの誕生日で皆が集まる。友人のカルロを連れて来たソニーが、兄弟やコニーに紹介。
日本軍の真珠湾攻撃が話題になり、流れでマイケルが海兵隊に入隊したと話す。
徴兵免除は父の力で何とでもなるのに、とソニーがその決断を嘲る。フレドだけがその決断を讃えた。

 

 

ゴッドファーザー PARTⅢ  1990年 アメリカ

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監督 フランシス・フォード・コッポラ
脚本 フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ 

 

キャスト
マイケル・コルレオーネ      - アル・パチーノ
コニー・コルレオーネ        - タリア・シャイア
ケイ・アダムス・マイケルソン  - ダイアン・キートン
ヴィンセント・マンシーニ      - アンディ・ガルシア
メアリー・コルレオーネ       - ソフィア・コッポラ
アンソニー・コルレオーネ    - フランク・ダンブロシオ
ドン・トマシーノ             - ヴィットリオ・デューズ
ドン・アルトベッロ           - イーライ・ウォラック
ジョーイ・ザザ            - ジョー・マンテーニャ
モスカ                  - マリオ・ドナトーネ
ギルディ大司教         - ドナル・ドネリー
ドン・ルケージ           - エンツォ・ロブッティ
ランベルト枢機卿        - ラフ・ヴァローネ
グレース・ハミルトン      - ブリジット・フォンダ

 

トレイラー

 

感想
晩年のマイケルが描かれる。あれほど冷徹だった男が、ギャング稼業から手を引こうとして画策する姿。

またランベルト枢機卿に懺悔して涙を流す姿も痛々しい。

 

ヴィトーを起点として描かれた移民のサクセスストーリーが第一作。ヴィトーが殺人を始めたのは、家族とその地域の仲間たちを助けるため。仲間たちからの願いを叶えるという姿勢が「ゴッドファーザー」と称される基礎を作った。
それを受け継いだマイケル。理知的で、ヴィトーからはギャングと無縁の人間として期待されたが、結局跡を継ぐ。

だがマイケルが行う殺人は、ファミリーを守るためとはいえ、少しづつニュアンスが変化して行く(PartⅡ)。

 

それを受けてのPartⅢ。宗教界に食い込み、自分をクリーンにしようとする試みの中で、愛娘のメアリーを巻き添えにしてしまう。

最晩年、シシリー島で日向ぼっこをしながら息を引き取るラストシーンの侘しさが、ギャング稼業の末路を感じさせた。

 

この、バチカンとイタリア政財界による疑獄事件は、実話をベースにしているらしく1978年にヨハネ・パウロ一世が急死している。

詳しくはこちら

しかしこのソフィア・コッポラ、何でアサインされたんだろうと思ってググったらこんなのが出て来た。ただの親バカらしいです・・・・

 

監督が、借金を返すために作ったとも書かれており、ちょっと残念。
確かにギャング映画なんだから、フレドの粛清をあれほど後悔する事自体が不自然にも思える。
二作目はオスカー市場初の続編連続受賞を取っただけに残念・・・

 

オマケ

ペントハウスがヘリで銃撃されるシーンは圧巻。スター・トレック イントゥ・ダークネス で、それを参考にしたシーンがあった(と思っている)。

 

 

あらすじ
1979年。マイケル・コルレオーネは多額の寄付の効果もあって、バチカンから「聖セバスチャン勲章」を授与される。

 

その祝いのパーティ。受付でリストに自分の名がないことに文句を言う若者。マイケルが歓待する。亡き兄ソニーの息子ヴィンセントだった。
美しく育った娘のメアリー。息子のアンソニーは父から弁護士になる様言われていたが、それに反発してオペラ歌手になりたいという。
再婚した元妻のケイもお祝いのために来ていたが、その理由は息子を守るため。アンソニーの歌手への道を願い出る。アンソニーのトラウマ。マイケルの指示でフレドが死んだ事も知っていた。
歌手への道を認めるマイケル。
一方メアリーと親しくなるヴィンセント。

 

パーティに出席している見慣れない男。ジョーイ・ザザの子分だ、とヴィンセント。
同業のドン・アルトベッロがお祝いに来る。100万ドルの小切手を持って来てコルレオーネのファミリーに入れて欲しいとの申し出。
アルトベッロの下で動くジョーイ・ザザとの会談。そこに割り込むヴィンセント。ザザと揉め事を起こしていた。仲直りしろ、とマイケルに言われるが、抱擁の最中ザザの耳に噛み付くヴィンセント。
取り敢えずヴィンセントを手許に置こうと考えるマイケル。

 

ヴィンセントを襲いに来た殺し屋二人。ザザの差し金だった。

返り討ちにするヴィンセントだが、それを叱りつけるマイケル。

 

バチカンの寄付窓口担当のギルディ大司教と話すマイケル。

損失補てんと、投資会社インモビリアーレの株取得のために6億ドルをギルディに渡すマイケル。
アルトベッロが、近隣のボスたちにも恩恵を分けるようマイケルに申し出る。皆を集めるよう指示するマイケル。

ヘリに乗るマイケルとヴィンセント。判断を誤るから、敵を恨んではいけないと訓示。

 

ニュージャージーのカジノ・ホテルのペントハウスに到着。代表ファミリーの幹部会。
皆に配当名目で小切手を渡すマイケルだが、ザザがそれに反発し、部屋から出る。
その直後外からヘリによる機銃攻撃。ほとんどの幹部が殺される中、ヴィンセントの機転で何とか逃れるマイケル。

 

ショックで発作を起こすマイケルは、病院に担ぎ込まれた。
見舞いに駆け付けるケイ。アンソニーのオペラデビューがパレルモで行われると知らせる。マイケルは糖尿病に侵されており、低血糖発作による失神の危険を抱える。

コニーの承諾を得て、先日の報復のため、ザザを暗殺するヴィンセント。勝手な行動を怒るマイケル。
またメアリーとヴィンセントとの交際にも気付いていた。

 

症状が何とか回復したマイケルはシシリーで療養する。かつてマイケルを匿ってくれたドン・トマシーノの屋敷。
ヴィンセントに、アルトベッロの下でのスパイ工作を指示。
その結果、裏でイタリア政界の大物ドン・ルケージが関わっている事を突き止める。


マイケルは、裏切ったギルディを見限り、改革派のランベルト枢機卿に協力を求める。
その会見の時、低血糖の発作を起こしたマイケルは、ランベルトの勧めで告解を行い、フレド粛清の苦悩を吐きだした。
パウロ六世の死去により行われたコンクラーベにより、ランベルトがパウロ一世となる。一方アルトベッロとルケージは、マイケルの抹殺を殺し屋のモスカに依頼。

トマシーノが殺し屋のモスカに殺された事で心が乱れたマイケルは、ヴィンセントにゴッドファーザーの地位を譲る事を決める。

その条件はメアリーと別れる事。
それを受け入れるヴィンセント。

 

アンソニーのオペラデビューの公演日。マイケル一家は総出で観劇に訪れる。敵側、味方側双方での暗殺合戦。
ヴィンセントが送った刺客によりルケージとギルディは始末され、アルトベッロはコニーが渡した毒入りの菓子を食べて死ぬ。
だが敵方が送った刺客によりランベルトが毒殺される。

 

そんな中、何とか難を逃れたマイケルだが、劇場出口でモスカに銃撃される。傷を負ったが命には別条ないマイケル。だが隣りに居たメアリーが胸に直撃を受けて絶命。絶叫するマイケル。

 

十数年後のシシリー島。椅子に座るマイケルが、静かに体を崩し地面に横たわった。

 

 

 

 

ミッション (映画)   1986年 イギリス

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監督 ローランド・ジョフィ
脚本 ロバート・ボルト
音楽 エンニオ・モリコーネ

 

キャスト
ロドリゴ・メンドーサ       - ロバート・デ・ニーロ
ガブリエル神父        - ジェレミー・アイアンズ
アルタミラーノ枢機卿    - レイ・マカナリー
フィールディング宣教師  - リーアム・ニーソン
フィリッポ・メンドーサ      - エイダン・クイン
カルロッタ             - シェリー・ルンギ

 

予告編

 


感想
密林に住む先住部族へのキリスト布教を描いたもの。
確か映画のキャッチフレーズが「滝の上の出来事は誰にも話してはいけない・・・」とか何とか。

 

部族への布教浸透と共に描かれる、奴隷商人ロドリゴの変革が前半のクライマックス。
許嫁を寝取った弟を、決闘で殺してしまったロドリゴの心の闇を救うガブリエル神父。
粗暴で宗教を受け入れようとしなかったグアラニー族。それが同胞をさらって売り飛ばしていたロドリゴを赦した。キリストの教えによりそうなった、というより部族そのものが持っている資質だろう。

 

追放される先住民と共に闘う道を選ぶロドリゴと、無抵抗を貫くガブリエル。
布教により部族を幸せに導いた筈が、追われる事になってしまった矛盾。映画は淡々と「理不尽さ」を形に残して行った。

 

映画の中で、ロドリゴに常に附いている少年が気になっていた。最初は反発していたのが、次第に尊敬の眼差しに変わって行く。
軍隊が来ると聞いてロドリゴが悩んでいる時に、川に沈んでいた彼の武具の中からサーベルを引っ張り出して来て磨き、それをロドリゴの前に差し出す少年。それで共に戦う決心を決めるロドリゴ。

大人たちが殺された後に、生き残った子供たち男女が小舟に乗って進んで行く姿。
その少年はロドリゴ、ガブリエル双方の戦い方を胸に刻んでいる。

 

 

あらすじ
1750年代の南米内陸部。イグアス川上流。
十字架に縛り付けられた男が川に流され、滝から落ちる。彼はイエズス会の神父。
その後を継いで崖を登り、先住民グアラニー族の元に出向くガブリエル神父。
オーボエを吹き、その音色に部族の者が興味を持つが、楽器がへし折られる。だがその中にも理解ある人の助けがあり、受け入れられるガブリエル。

 

スペイン人入植者の軍人ロドリゴ・メンドーサ。先住民をさらっては奴隷として売り飛ばしていた。ガブリエルとは犬猿の仲。
その許嫁であるカルロッタは、ロドリゴの弟フィリッポを愛していた。
ある日ロドリゴがそれを知る事となり、逆上したロドリゴは決闘の末弟を殺してしまう。
その悔悟から半年も引きこもり状態となるロドリゴ。
そんなロドリゴに「出口はある」と声をかけるガブリエル。だが「償いようがない」と絶望から抜けられない

ロドリゴ。
滝の上の部落の事を話すガブリエル。贖罪のため、自分の武具を入れた大袋を引いて後に続くロドリゴ。
険しい山道で何度も転げ落ちるロドリゴ。それが延々と続く。
同行者が「償いは十分だ」と言うが、ガブリエルは「本人はそう思っていない。神が決める」

 

グアラニー族の居る場所まで来た時、ロドリゴを見て緊張する部族民。人さらいの彼の顔は知られていた。ガブリエルは黙って見ている。受け入れられるかは部族民次第。
刀を持ってロドリゴに近づく男。その男が肩に食い込んでいる武具を引いている縄を切る。川に転げ落ちる袋。声を上げて泣くロドリゴ。

 

宣教師の努力もあり、グアラニー族への布教は順調に進んだ。農場での収益も上がって行き、それは平等に分配された。

噂を聞いた脱走奴隷たちも頼って集まって来る。
元々植民地社会であり、そうした布教区は、支配側にとって不都合な存在となって行った。

宣教師たちの成果を実際に視察するためにアルタミラーノ枢機卿が、布教区を視察した。
整備された建物、歌われる讃美歌等に驚嘆する枢機卿。

 

そんな時期にスペイン、ポルトガル両国による南米領土の国境区割りが行われ、グアラニー族の地域はポルトガル領に編入となった。

布教区から追い出される事になった先住民たち。

この場を守るという部族民と行動を共にする宣教師たち。武器を持って戦う決意のロドリゴに対し、戦いはいけない、とガブリエル。
決裂して武装を整えるロドリゴ。

 

軍隊が押し寄せるが、地の利を生かして部族民も善戦。だが大砲などの重火器も使って軍隊側が優勢となる。
銃弾を受けて倒れるロドリゴの先に、武器を持たない者たちを引き連れて行進して来るガブリエルの姿が見える。

だがその彼も撃たれて倒れる。

 

法王宛てに手紙を書いているアルタミラーノ枢機卿。今回の事件の顛末報告。死者の精神は生きる者たちの記憶の中に生き残る・・・・・
ロドリゴを敬愛し、あの戦いを生き抜いた少年が、残りの少年少女を集め、小舟に乗って川を下っている。

 


投稿記事アクセス ベスト20(3月~12月)

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アメブロで昨年3月から始まった「月間アクセス数」の表示。
最初は「なんや、これ?」とあまり気にしていなかったが、ちょっと覗いて100位までチェックしてみると、数年前の記事に対して意外にアクセスがある。それで気になり出して毎月集計する様に。
データは100位まで範囲指定してコピーし、EXCELに貼り付ける事で集計化可能。
そんなこんなで昨年3月~12月までの集計をしたものが以下。

 

                                                                                 アクセス
順位 投稿年 記事タイトル                                                   計
   1    2018  スペシャルドラマ「荒神」NHK BSプレミアム         2368
   2    2015   失楽園 1997年                                             1273
   3    2017   新聞小説 「国宝」 (1) 吉田 修一                     1141
   4    2017   鈴木先生 TVドラマ 2011年                             1038
   5    2017   火の鳥 未来編 単行本③ 作:手塚治虫              827
   6    2018   新聞小説 「ひこばえ」 (1) 重松 清                    827
   7    2017   アウトレイジ 最終章 2017年                              812
   8    2018   グレイテスト・ショーマン 2018年                         760
   9    2017   火の鳥 黎明編 単行本①② 作:手塚治虫           752
 10    2018   レッド・スパロー 2018年 アメリカ                         700
 11    2018   新聞小説 「国宝」 (19) 吉田 修一                     679
 12    2017   火の鳥 宇宙編 単行本 ④ 作:手塚治虫              665
 13    2018   世にも奇妙な物語 '18秋の特別編                      624
 14    2017   火の鳥 鳳凰編 単行本⑤ ⑥ 作:手塚治虫         588
 15    2018   Nスペ「山一証券破綻の深層」                          523
 16    2017   幻魔大戦 (映画) 1983年                                   511
 17    2014   新聞小説「荒神」(8)宮部みゆき                        496
 18    2018   Nスペ 「人体」 第6集母と子 ミクロの会話            473
 19    2013   竹内まりや「駅」パクリ疑惑                                444
 20    2017   火の鳥 復活編 単行本 ⑦ ⑧ 作:手塚治虫          443

 

コメント

1位 「荒神」のNHK放送
これは宮部みゆきが朝日新聞に連載していた小説のドラマ化であり、弊ブログでも小説あらすじをアップしていたが、ドラマを記事アップしたらとんでもないアクセス数を記録し、日別の順位で最高18位(映画レビュージャンルで)を記録した。それ以後再放送がある度にアクセスがあり、今回集計では断トツの一位。

戦国時代、土くれに取りついた怨念が、怪物となって村民を苦しめる。双子の兄妹の近親相姦を扱っているので、NHK的にはどうだったのかな?(まあいいか)

 

2位 失楽園
これは役所広司と黒木瞳のもので、安定して高アクセスを維持している。マジメなサラリーマンが不倫の末、心中するのだが、それが合体したまま絶命するというショッキングなもの。
ありそうもない設定がアクセスの原動力か・・・

 

3位 新聞小説「国宝」
昨年5月まで朝日新聞で連載されていたもの。単行本が発刊された事もあって、継続的にアクセスがある。ヤクザの家系から歌舞伎の女形として人間国宝まで登りつめた男の、骨太なドラマ。

腹の底にズン、と来る。

 

4位 鈴木先生
意外だと思う反面「見る人は見てるなァ」と人を信じる気持ちになる結果。ちょっとオタク系の鈴木先生(長谷川博己)がクラスの生徒との関わりの中で様々なものを与え、与えられて行くドラマ。放送当時はワーストに近い視聴率だったが、その後注目され映画にもなった。

 

5、9、12、14、20位 火の鳥
これは手塚治虫のライフワークだったものであり、私自身中学生の時から、つかず離れず人生の節目節目でお世話になっている。
不老不死の「火の鳥」が様々な世代、様々な人々に関わりながら時を紡いで行く。火の鳥自身は何の教えも与えない。関わる者たちも、必ずしも幸せにはならない。生の無常。
何度読んでも満たされる事がなく、何度でも読みたくなる・・・・

 

6位 ひこばえ
昨年1月から朝日新聞で連載されている。さすがの重松清。

毎回けっこうなアクセスがあり、注目の作家。幼い頃離婚して別れた父親との関係が綴られる。

 

7位 アウトレイジ最終章
これが7位にはいったのはけっこうインパクトがあった。
一作目の「アウトレイジ」では弱小の組を維持する大友の悲哀が強く感じられた。二作目では裏切り者の片岡刑事を粛清。
そして最終章で暴力団の末路を見せつける。

 

8位 グレイテスト・ショーマン
昨年の単発映画で最もアクセスを集めた。サーカスの楽しさをミュージカルで表現した名作。

 

10位 レッド・スパロウ
ロシア系の諜報部員というレアな設定でジェニファー・ローレンスを起用した。お色気もそこそこで楽しめた。

 

13位 世にも奇妙な物語'18秋の特別編
28年前に始まったシリーズ。当初のキレは弱まったが、このシリーズが生き残っている事自体に、ちょっと嬉しい気持ちがある。

 

15位 Nスペ「山一証券破綻の深層」
12月のみの単発でここに食い込んだのは意外。

野澤社長の「社員は悪くないんです!」の絶叫が忘れられない。

 

16位 幻魔大戦
アニメとしてはこれがトップ。

自分的には「アキラ」に次いでお気に入り。

 

18位 Nスペ 「人体」 第6集 母と子 ミクロの会話
出産を巡る驚くべき知見。これは全ての者たちが観るべき番組。

 

19位 竹内まりや「駅」パクリ疑惑
彼女については、別に嫌いではない。だがここまであからさまなパクリについては糾弾されてしかるべきだろう。


まとめ
辺境のブログではあるが、こうして過去記事についても何らかのリアクションが確認出来るのは嬉しいものだ。
どの順位に居るかというより、何を残せたかという事の方に関心がある。

 

 

 

 

どろろ ①、②巻  作:手塚治虫  全4巻(秋田書店サンデーコミックス)

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どろろ  作:手塚治虫  秋田書店サンデーコミックス版
            初出 1967年 少年サンデー、1969年 冒険王


タイタンパーさんのところで、今年初めから「どろろ」の新作アニメが放送されているのを教えてもらった。
思い返せば、子供の頃最初に「少年サンデー」でリアルタイムに読んだが、内容の暗さもあり途中で連載は中断。

コミックスとして全4巻となったものを読んだのは成人してから。
最初のTV放映の時には、もう中高生だったので本格的には観ていなかった。確か放映途中から「どろろと百鬼丸」に改題された(まあ百鬼丸の話だからしゃーない・・・)。

その後全く思い出す事もなかったが、娘が中学の頃に古本を買って来て読んでいた。その時は「ああ、それ知っとる」てな程度で、読み返す事もなかった。
そして今回。第1回目を観て「あれ、こんなだったっけ?」と気になって娘の残したダンボール箱を発掘し、全部読み返した。
まあ、新作アニメが全て原作通りである必要はないが、一応原作との違いを理解しておくのもイイだろう。

なおアニメはBS11の月曜深夜0:30~で放送中。


登場人物
どろろ    野盗・火袋の子供。両親に死なれ泥棒で日々をしのぐ
百鬼丸   魔神の呪いで体の48ケ所が欠損して生まれる。
醍醐景光 百鬼丸の父。野心のために子供を魔神に売り渡す
縫の方   百鬼丸の母。夫の野望を知らずに百鬼丸を産む
法師     盲目の琵琶法師。百鬼丸に生きるアドバイスを与える
火袋     どろろの父。権力に抵抗する野盗。
お自夜   どろろの母。
イタチ    火袋の子分。後に火袋を裏切る
みお     不遇なこどもたちの世話をする少女。
寿海     赤ん坊の百鬼丸を救い、育てた恩人の医師


第①巻

 

<発端の巻>
領内の地獄堂に納められている48体の魔像を訪れる領主の醍醐景光。和尚が話すその由来。
和尚を帰し、魔像と交渉をする景光。天下取りと引き換えに、近く生まれる自分の子供を差し出すと約束。
話を聞いてしまった和尚は殺された。
景光の妻、縫の方が産んだ赤ん坊を見て、自分の願いが聞き届けられたと喜ぶ景光。川で、子供をたらいに乗せて流す景光と縫の方。

 

<百鬼丸の巻>
さむらい崩れの追いはぎに囲まれる百鬼丸。近寄ると危ないという警告に構わず切りつける追いはぎ。両腕の義手を抜いて刀を出し、皆を倒す百鬼丸は、その後も寄って来る妙な妖怪たちを撃退。
川原でボコボコにされている少年。やりすぎを止める百鬼丸に大男が、こいつはどろろといってどうしようもない悪ガキだと罵る。
そんな時「死霊の声がする」と百鬼丸。大男が、流れて来たものを掴むと急にそれが立ち上がる。
それに触られると体が溶けてしまう。大男がやられた。
百鬼丸が義手を抜いた刀で橋を切り刻み、妖怪を崩れた橋の下敷きにして仕留めた。
その姿に感激したどろろは、以降百鬼丸に付いて回る。だが百鬼丸に寄り付く妖怪に捕まる。すかさず助ける百鬼丸。

それでも懲りないどろろ。
百鬼丸はうつむくと両の目玉をポトリと落とす。

どろろ絶叫!。耳も外れる。

 

子供は胴体と頭だけの状態で、たらいに乗って流されて来た。

それを見つけたのが医者の寿海。
おかゆをあてがうと懸命に吸う。

 

幾つかの季節を過ぎたある日、寿海はその子供からの心の声を聞いた。「なにかたべたい」。寿海の語りかけに心で応える子供は、それからどんどん知識を吸収した。
寿海は工作の腕も確かで、腕や足、目などの部品を次々に作った。
そして子供に麻酔をかけ、長い手術を施して仮の部品を取り付けた。
見た目だけは申し分のない体が出来た。だがそれを自身で動くようにするには非常な努力が必要だった。
苦痛を乗り越え、自由に走れるまでになった子供。欠損がある分、特別な勘が働く。
ある日女が訪ねて来る。苦しいと言い、寿海が診るが脈がない。子供が「そいつ人間じゃない!」と教えるが、女の髪が寿海を襲う。
斧で女の首を斬り、火で追い払う子供。それは何とか撃退出来たが、その後おかしな妖怪が続発。
妖怪は、子供に惹かれて集まるのだと理解した寿海は、子供に旅へ出るよう勧め、指が動かせる義手と、それを抜くと出る刀を取り付けた。そして子供に百鬼丸の名を与えて送り出した。
嵐の中、入ったお堂で何者かに「お前は48匹の魔物に出会うだろう」と言われる。それらを倒す事で失われた体を取り戻せる。

雷鳴と共に声は消えた。

 

<法師の巻>
ある日、盲目の琵琶法師とすれ違う百鬼丸。

その時法師が「死神のにおいがプンプンする」と言った。
百鬼丸の事をスキだらけだと言いながら、飛んでいる虫を仕込み杖の刀で、音もなく二つに割る。
弟子にして欲しい、とつきまとう百鬼丸だが、法師は構わず歩く。
強風吹きすさぶ崖で、足がすくみ動けない百鬼丸。人並みな事は何も出来ないと嘆く百鬼丸に、あるところへ連れて行く法師。
荒れ果てた山門に棲み付く浮浪児たち。手や足のない子もいた。
それ以来子供たちと一緒に暮らす百鬼丸。浮浪児たちの世話をする少女みお。心惹かれる百鬼丸だが、自分は汚れていると言うみお。子供たちを食べさせるために雑兵たちから食べ物を恵んでもらっていた。
ある日百鬼丸が剣の練習から帰って来ると、山門が燃えている。
以前から立ち退きを要求していた武士たちが、子供たちを皆殺しにしていた。そこにはみおも。
叫びながら武士たちを斬り殺す百鬼丸。

 

<金小僧の巻>
今までのいきさつをどろろに話す百鬼丸。だがそれにも怯まず、手に付いている刀をいつか奪い取ると豪語するどろろ。
川原で野宿する二人。明け方に鈴を持った妖怪が、寝ている百鬼丸を窺っているのを見るどろろ。
行き着いた村で、どろろが村人にその話をすると「それは金小僧だ」と言って二人を縛り上げ「万代(ばんだい)」さまのところに引き出される。半身にふとんを掛けて座る美人。
金小僧が何か言った筈だと万代が聞くが、シラを切る百鬼丸。
納屋の柱に縛り付けられる二人。そこの井戸から妖怪が現れた。刀で応戦する百鬼丸。妖怪は再び井戸に逃げ戻った。身軽などろろが井戸に入って行く。底には多くの人骨。更に横穴を通ると屋敷の中に出た。
見つかって捕らえられたどろろは、木に縛られてしまう。
どろろを助け、村人に万代と金小僧の事を聞く百鬼丸だが、万代が情深いという割に貧しい村。定期的に妖怪が襲い、人を殺して金を奪うという。
金小僧を見た者を万代のところへ連れて行くのが、命じられている事。
百鬼丸は、金小僧から「やろうかあ、やろうかあ」という言葉と、ある場所を聞いていた。
そこへ行くと金小僧が居たが、皆が行くと消えてしまった。その場所を掘れと言う百鬼丸。
そこにはたくさんの金が埋まっており、村人が奪われたものだった。

 

<万代の巻>
金が見つかった事を万代に報告する村人。それは良かった、と万代。一人になった時、万代の目が光る。
村人の話を聞く百鬼丸。荒地を開墾してここまで漕ぎ着けた。万代さまの寄付のおかげ。だがばけものが人を殺して金を奪って行く。そしてまた万代から金を借りるという繰り返し。
ばけものはきっとまた村を襲う、と百鬼丸。
警戒しているところで、見張りの村人が殺される。
万代を見張っていたどろろだが寝てしまい、百鬼丸の通信で目覚めるが、万代は既にいない。
現れた怪物と戦う百鬼丸。しっぽに布が巻いてあり、その先には万代の顔があった。
百鬼丸の足に仕込んだ焼水の攻撃で逃げて行くバケモノ。
部屋で待つどろろは、怪物と合体した万代を見てしまう。
駆け付ける百鬼丸。

 

 

<人面瘡の巻>
鐘突き堂に逃げる怪物。百鬼丸は青梅の毒矢で万代の額を貫く。鐘の上で怯む怪物に村人が鐘木を打ち込む。
何度も打ち込まれ、落ちた怪物がどんどん小さくなり、人の顔になる。
「人面瘡だ!」と言って村人を遠ざけ、焼水をかける百鬼丸。白い液体を出して消滅するばけもの。
以前にも似たものを退治した百鬼丸。その時は娘のヒザに大きなできものが出来、人の顔になってものを言ったり食ったりする。その時も焼水で退治した。
怪我をしたどろろを手当てする場所を貸して欲しいと言う百鬼丸。だが村人はどろろの悪い噂を知り、追い払う。
百鬼丸の手当てで何とか回復するどろろ。だが体を触られた事にショックを受ける。
その時、百鬼丸の右腕に異変が起きる。義手が外れ、刀も抜けた。そして腕が生えて来た。凄まじい痛み。

 

今まで16匹の妖怪を退治し、髪や鼻などは生えて来たが、今回の様な大きなものは初めて。
どろろが寝ている間にうわごとを聞いていた百鬼丸は、お前も身の上話をしろと言うが、頑なに拒むどろろ。

 

 

第②巻

 

 

 


<無残帳の巻>
どろろの回想。
多くの手下を使って夜盗をする首領の火袋と、女房のお自夜。

そして乳飲み子のどろろ。
酒盛りの最中に、子分のイタチが侍と手を組んでの天下取りを進言するが、侍の仕打ちに苦しんだお自夜たちにその気はない。
逆恨みしたイタチは、味方につけた子分と共に、どろろを誘拐して火袋をおびき出した。
代官と手を組んだイタチは火袋家族三人を牢に入れる。
どろろが盗み出したカギを使って牢を脱出した三人。

お自夜をどろろと共に逃し、代官の屋敷を破壊する火袋。
イタチの待ち伏せに遭って捕まるお自夜。結局火袋も捕われの身に。
矢で火袋の足を痛めつけてイタチが去る。
まともに歩けない火袋と、どろろを抱えて苦労するお自夜。

野盗のまねごともしたが続かない。
何年も経ったある日、通りかかった公家の一行。

娘がどろろに饅頭を恵んだ。
それに激怒した火袋が、侍従たちといさかいを起こして結局殺される。

 

寺の炊き出し。器を持たないお自夜は、両手に直接おかゆを受けて、それをどろろに飲ませる。手は火傷。


その年の冬は厳しく、雪山へ迷い込んだ二人。

むしろにくるまって冷たくなるお自夜。

 

<妖刀の巻>
百鬼丸とどろろの行く手に現れた男。似蛭という刀を持ち、人を多く斬りすぎたために刀が血を欲しがっているという。
延々と続く百鬼丸と男との戦い。男は刀を構えたまま気を失っていた。念力同士の戦いだった。
百鬼丸がよせと言うのを聞かず、男からその妖刀を盗んで来たどろろ。だがそれを持ったとたん「斬れ!」という言葉が頭を支配する。
参拝で階段を上る父娘。娘の名はお須志。そこに妖刀を持って迫るどろろが襲いかかり、父親の頭を傷付けるが、持っていた護符のおかげてそれ以上の攻撃は食い止められた。
父娘が逃げた後、町で刀を振り回すどろろ。
お須志が茶屋へ血止めをもらいに行くと、そこにはあの妖刀の男。

お須志は「兄さん!」と叫ぶ。
彼は五年前に足軽に取立てられた田之介。城主に仕えるのはまっぴら、と田之介。
城の秘密を知った大工の抹殺を指示されてイヤイヤ実行したが、それが高じて刀に振り回されるようになった。
どろろに取られた刀を取り返しに来た田之介。町人の火責めに遭って刀を落とすどろろ。妖刀は田之介に戻った。
そして百鬼丸との戦い。壮絶な斬り合いの中で、田之介が百鬼丸の左腕に斬り付ける。その腕が抜け、刀が出て驚く田之介。そこに斬り込む百鬼丸。
重傷を負う田之介。血が吸いたいと言う刀を、自分の体へ突き立てる田之介。百鬼丸の一撃で粉々になる妖刀。
突然左目に痛みが走り、入れ目が落ちる百鬼丸。そして本物の目が生まれた。
川で体を洗う事を提案する百鬼丸だが、どろろは絶対拒否。だが橋の上でわめいているうちにどろろが落ちた。
その時、どろろの背中に現れた模様を見て驚く百鬼丸。

 

火袋は、皆のために使う目的で金を貯めていた。お自夜は死ぬ少し前、隠し場所を伝えるためにどろろの背中に地図を彫り込んだ。
いつの間にか琵琶法師が姿を現し、生きがいについて説く。どろろが金を探す事への協力がそれだという。

 

<鯖目の巻>
歩く先に妖気を感じて隠れる百鬼丸。大きな体のシワだらけの赤ん坊を連れている、性別も判らぬ者。子供を買ってくれという。断る百鬼丸だが、いつの間にかその者が消えた。


寺の焼け跡を見つけて泊まろうとするが、そこに赤子を抱いて訪れる夫婦。捨て子だと怒る百鬼丸。だが夫婦の言うには、慈照尼さまが赤子を養ってくれると聞いて来た。
百鬼丸は先の者を思い出し、その尼は死んだと言う。
そこに現れる土地の郷士の鯖目。慈照尼がうそつきだったと言った。
屋敷に招待される百鬼丸とどろろ。凄まじい妖気。
食事を提供され、寝る場所も与えられるが、その夜現れる妖怪。百鬼丸が腕に仕込んだ刀で刺すが、空を飛んで逃げられる。
鯖目と話す奥方は百鬼丸たちを泊めた事を咎める。鯖目から出て行くように言われるが、バケモノの話を持ち出して断る百鬼丸。
土蔵に忍び込んで捕まるどろろ。奥方の名はマイマイオンバ。女官たちと共に遠い世界からやって来た。屋敷で自分たちの子供を育てており、それを慈照尼に知られ殺した。
スキを見て土蔵に火を点けて逃げ出すどろろは、百鬼丸と合流して全てを伝える。
鯖目は洗脳されており、百鬼丸に斬り付けるが敵わない。
火に追われて逃げ出す妖怪たち。

 

<地獄変の巻>
山に登って奥方と会う鯖目。私が妖怪でも妻としてくれる?という奥方に頷く鯖目は、百鬼丸を殺すための毒を渡された。
村人に真相を話し、守りを固めるよう指示する百鬼丸。
だが僧の集団に化けて入り込む女官たち。その上百鬼丸は毒入りのお茶を飲まされる。
妖怪たちの粘液に捕まるどろろ。そこに助けが来る。途中で姿を消した赤ん坊の妖怪。その体が割れて中から白い体の妖精の様なものが多数出て妖怪たちを撃退。


それはお寺に住んでいた子供たち。姿を変えて強い人が来るのを待っていた。村人が団結して妖怪たちを底なし沼へ追い詰める。
まだ体がマヒしている百鬼丸を襲う鯖目。落ちていた丸いものをぶつけて応戦するどろろ。
その丸いものはマイマイオンバの卵。
妖怪をどうしても斬らなくてはいけない、と言う百鬼丸に肩を貸すどろろ。舟に乗って最後の戦いに臨む。水面から浮かび上がるマイマイオンバ。
指示を受けてたいまつの火を灯すどろろ。習性から火に引きつけられて焼死する妖怪。
百鬼丸の足に激痛が走り、右足が生えて来た。


翌朝、鯖目は頭を丸めて来た。尼寺を再建して子供たちを弔うという。
厄払いの祭りで賑わう村だが、百鬼丸の足が取れてまた生えて来た事を知って、妖怪の仲間だと決めつけ、追い払おうとする。怒るどろろだが、それをなだめて村を出る百鬼丸。

 

感想
前述のように、子供時代「少年サンデー」で読んだのが最初。
胴と頭だけの、究極の欠損体として生を受けた百鬼丸。これは一時医師を目指した手塚独特の視点であり、以後「ブラックジャック」のピノコにもその設定が受け継がれる。
寿海に育てられる時期に、相手への呼び名が「パパ」というのにはどうにも違和感があったが、シャレなのか彼のマンガにはこういうものがけっこう多い。
子供の頃読んで一番印象に残ったのは「万代」。巨大な怪物のしっぽ部分が女だったというショック。
ネーミングも、当時急成長したプラモメーカーの「バンダイ」と重なって記憶に刷り込まれた。
悪ガキのどろろには、最初あまりいい印象はなく、いつも足を引っ張るイヤな奴という感じ。だが百鬼丸との人間関係が構築されるにつれてそれは解消。
題名も、本来ならば「百鬼丸」としたいところだが、どろろに対する手塚の思い入れの強さが、このマンガに独特の味を加えている。

 

 

 

 

新聞小説 「ひこばえ」 (10) 重松 清

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新聞小説 「ひこばえ」(10)  12/18(194)~1/13(219)
作:重松 清  画:川上 和生

 

第九章 トラブルメーカー  1~26
後藤さんが901号室に入居してから二週間。

スタッフ間で入居者の把握を行うファースト・インプレッションの期間を経て問題点が出始めていた。
まずゴミ出しの件。入居当初901号の前に出ていたゴミ箱を、隣室902号の宇野さんが親切心で空にしてあげたが、ゴミ放置が三日続いて苦情になった。

 

それを伝えると大いに反省して低姿勢となる後藤さん。
だが正しいゴミ出しはわずか一日で、またゴミ放置が三日続いた。
副施設長の本多君からの注意でようやくそれは止まった。

だがそれからしばらくして、週一で部屋の清掃を行う業者からの報告。後藤さんの部屋の散らかりようがひどいとの事。そして高アルコール濃度の酎ハイ空き缶が十数本。
また、別のケアマネージャーからの情報では「やすらぎ館」の女性スタッフに対して、入居者のケアをする姿に対し「もっと楽な仕事があるだろうに」などと、やる気をなくす様な言い方を後藤さんがしているらしい。慰めや励ましが、却って神経を逆なでするとの事で、スタッフらの印象は最悪。

 

だが別件があり定時で帰る洋一郎。実は父の遺骨を持って北海道回りをしていた神田さんが帰京するため、遺骨返却を兼ねて話を聞くことになっていた。
父の携帯電話のアドレス帳の人への連絡をすると言っていた、西条真知子さんも報告に来る。

電車で向かう途中でメールチェックすると、本多君からのメッセージがありコールバックする洋一郎。
夕食時、後藤さんが初めて夕食の席に缶チューハイを持ち込んで飲んだ。飲酒自体は禁止されていないが、たまたま相席だった入居者の綿貫さんもワインを飲んでいたため、話が弾んだ。
後藤さんはそれからも自販機でチューハイを買って話し続け、綿貫さんは閉口。また後藤さんは息子の自慢話を延々と始めた。入居者の中には、子供の話は地雷原にもなる。
自販機の弱い酒では飽き足らず、自室に戻って強い酒を取って来た後藤さん。既に綿貫さんは部屋に戻っており、今度は回りの人に酒を勧める後藤さん。

 

それを見かねた入居者が本多君を呼んで収めさせた。

明日、何とか言って下さい、との本多君の言葉。

 

電話を切ると真知子さんからの電話。既に神田さんは遺骨を寺に返したので、居酒屋で話そうと言う。
海鮮系の居酒屋で神田さん、真知子さんに会う洋一郎。七輪でイカを焼く神田さんの一方で真知子さんの報告。


三十件あまりの登録の中の半分について相手に電話を入れたが、そのうち三件は着信拒否。つながった十件あまりもその反応は冷たいものだったという。中には直後に着信拒否になったり。
真知子さんなりに父に対して好印象を持っていたため、この結果に落胆し、残りについて続けるべきかどうかを聞いて来た。
イカに次いでホッケの干物を焼いている神田さん。迷ってるならひっくり返すな、と。
その禅問答を受けて、残りにも電話するよう頼む洋一郎。結果がどうでも、とにかく親父をすっきりさせてやりたい。

 

次いで神田さんの話。景色が単調な道央自動車道ではなく、海沿いの国道を選んで走ったという。
ノブさんとの関係を改めて話し始める神田さん。釣りの時の延長で、彼とはいつも隣り同士が多く、差し向かいだった事がないから、立ち入った話はしなかった。


荒川急便の頃には、ちょっと金にだらしなくて仲間から小金を借りたり、会社から前借りなどもしていたらしい。それで会社の寮から夜逃げのように居なくなった。
その後一年ほどして連絡があり、またつきあいが復活。
親父は神田さんにも迷惑をかけたのでは?という問いには

「もう忘れた、昔のことだ」

 

そうして再会した後、父が急逝するまで付き合いが続いた。父が更なる借金をしたかどうかは、判らない。
友だちの前でいいカッコする気持ち、わかるだろう?
ノブさんが背負っていた事や後悔、そういった事は何もわからん。だから教えてやれないんだ、と謝る神田さん。


「親父と友達で居てくださって、ありがとうございます」との言葉に
「どんな親だろうと・・・親は、親だ」


感想
特別案件で入居した後藤さんの問題。態度が卑屈な割りに、下の者には横柄になる。これは最悪だが自分も高年齢になるにつれ、そうなって行く可能性がある。他山の石としよう。
果たして認知症の前触れなのか。

施設内でゴミ屋敷というのも恥ずかしい話。

 

そして神田さんと真知子さんの報告。

多分神田さんは父への貸金があったのだろう。それを押し殺して「親は親」と言う言葉が切ない。

神田さん自身、辛い私生活があるのかも知れない。
真知子さんのアドレス調査は、まああんなもんだろう。借金に回るためのリストだったら、そらー受けた後着信拒否になるわな。

 

この小説も、もう200回を超えた。連載一年少しを前提とすれば起、承ときて、そろそろ新しいネタが欲しいところ。

 

 

 

どろろ ③、④巻  作:手塚治虫  全4巻(秋田書店サンデーコミックス)

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どろろ  作:手塚治虫  秋田書店サンデーコミックス版
            初出 1967年 少年サンデー、1969年 冒険王

 

前回紹介した①、②巻の後半を紹介。
アニメはBS11の月曜深夜0:30~で放送中。


登場人物
どろろ    夜盗・火袋の子供。両親に死なれ泥棒で日々をしのぐ
百鬼丸   魔神の呪いで体の48ケ所が欠損して生まれる。
醍醐景光 百鬼丸の父。野心のために子供を魔神に売り渡す
縫の方   百鬼丸の母。夫の野望を知らずに百鬼丸を産む
法師     盲目の琵琶法師。百鬼丸に生きるアドバイスを与える
火袋     どろろの父。権力に抵抗する夜盗。
お自夜   どろろの母。
イタチ     火袋の子分。後に火袋を裏切る
寿海     赤ん坊の百鬼丸を救い、育てた恩人の医師

 

感想
百鬼丸とどろろの、珍道中とも言える紀行。昔は全国を回っている様な印象を持っていたが、要するに父景光の影響が及んでいる村々を巡っていた。
③巻では百鬼丸が自身の弟、多宝丸と戦い倒してしまう場面が印象的。景光は百鬼丸を、息子でありながら多宝丸の仇として憎むが、徹しきれない苦悩も垣間見える。魔神と契約して売り渡した百鬼丸に感嘆する感情。
④巻では、どろろの背中に彫られた地図の謎がようやく回収される。ただ見つけたものは「宝は別の場所に隠した」という書置きだけ。

そらーないぜおとっつあん。

最終話「ぬえの巻」でこの「ぬえ」という名は出て来ないが、景光にとり付いていた虎のようなヤツがそれ。

百鬼丸の呪われた体の大元の原因。
下は歌川国芳が描く鵺(ぬえ)

 

ぬえが体から抜けた事で、景光は百鬼丸に許された形となり、縫の方と共に追放される。
原作の百鬼丸は、全ての体を取り戻す前で終わっているが、1969年のTVアニメでは完全な体になるところまで描かれている様だ。

 

ところで、どろろが女だったという件。もうかなり前の話なのですっかり忘れていた。
③巻の「しらぬいの巻」でイタチがどろろをハダカにして、女である事が初めて判明するが「ぬえの巻」で百鬼丸は、目があいた時初めてどろろを見て判ったと言っていた。
それは②巻で妖刀「似蛭」に翻弄されて死んだ田之介の妹お須志を、女として初めて見た百鬼丸が、その後でどろろを見た時、直感的に感じたのだろう。
どろろをむりやり川に入れて背中の地図を見つけた時のシーンで下の1コマがある。

この時どろろが恥じらう姿は、まさに女。この時点で手塚は絵の上でどろろを女として宣言していた。

ゲームの世界では完全に女として扱っているみたいですネ・・・・

 

映画もあるらしい(2007年)。どろろが柴咲コウ、百鬼丸が妻夫木聡ではイマイチだが、鯖目の妻マイマイオンバが土屋アンナなのは、ちょっと観たい・・・・

 

 

 

第③巻


<ばんもんの巻>
吹きさらしの小高い荒地に立つ板塀の前にいるどろろと百鬼丸。砦の跡だろう、と百鬼丸。
そこで野宿する二人だが、夜中にキツネの群れに襲われる。百鬼丸が倒すが、数が多くてキリがない。
だが気が付くとキツネは消え、死骸も残っていない。
気配を感じて隠れる二人。村人数人を弊に引っ立てる足軽たちと、指図する武将。村人は皆、矢で射殺された。
親に取りついて泣く子供さえも矢で殺すのを見て、どろろが飛び出して足軽に飛びかかる。


やむなく加勢する百鬼丸はその武将と戦いを始める。義手を外して出る刀に驚く武将。作り物の体だというどろろの言葉を聞いて驚いた武将は、慌てて兵と共に引き上げた。
町に着いたどろろは、突然多くの人に殴られ、簀巻きにされて川に落とされる。それを助ける子供。
一方茶屋で休もうとした百鬼丸も、浪人に絡まれるが数名を難なく斬り倒す。そこに残った若侍。
彼は多宝丸。あの板塀、ばんもんで出会ったのは父親の醍醐景光。
メシぐらい食わせる、と屋敷に誘う多宝丸。

 

<助六の巻>
屋敷を訪れる百鬼丸。多宝丸から父の景光を紹介される。主人の富樫に仕えないかと誘う景光に、いくさのために生まれてきた訳じゃない、と気のない返事。怒る多宝丸だが、それをなだめる景光。
そこに顔を出す縫の方。ぼうや、と言われ心に感じるものがあって「母さん?」と聞く百鬼丸だが、すぐに否定して飛び出し、庭の草木を斬りまくる。
一方助けられたどろろ。子供は助六といった。ばんもんのこちらは富樫領で、向こうは朝倉領。ある日突然いくさが始まり、大きな板塀が作られて行き来出来なくなった。たまたま富樫側で遊んでいた助六は家に戻れなくなった。
何度も続くいくさで、塀のほとんどが焼け落ち、残ったのはあれだけ。だが相変わらずむこうへは行けない。
野ギツネに襲われないよう、みの虫の様にヒモでぶら下がって寝る助六は、どろろにもそうした。
夜半すぎに、富樫側の兵たちの突入がある事を知った助六は、どろろを誘ってばんもんの向こうに向かった。
途中で敵兵に会い、どろろがおとりになって助六を逃がす。結局捕まるどろろ。
ばんもんまで引っ立てられると、助六も捕まっていた。家は焼かれてなくなり、父母も殺されていた。
捕まえたのは多宝丸の部隊。どろろの目の前で他の者と共に殺される助六。
助けに入る百鬼丸。そこで多宝丸との戦いが始まる。
それを聞いて「二人は兄弟だ」と叫び、止めに走る景光。

 

<愛憎の巻>
戦いのさなか、百鬼丸の心に、多宝丸はお前の弟だというキツネの妖怪の声。そして景光は父親だ、とも。
打ち込んで来る多宝丸。そして倒された多宝丸は、百鬼丸に抱えられて息絶えた。
次に現れたキツネの妖怪。激怒した百鬼丸との壮絶な戦い。抱え込まれた百鬼丸だが、自分の鼻を抜いてそれをキツネの口に放り込む。爆発してキツネの首が吹っ飛び絶命。
百鬼丸の鼻が生えてくる。匂いを感じて笑う百鬼丸。
倒した九尾のキツネをばんもんの壁に貼り付けると、壁は崩れ去った。


多宝丸の死に直面した景光は、百鬼丸に追っ手を差し向ける。だがそれはことごとく倒される。
百鬼丸はどろろに、縁はこれきりだ、と言って去って行った。
強がりを言うが、一人残されてベソをかくどろろ。
そこへ近づく女。おにぎりを差し出して、家へ来ないかと誘う。疑いつつもあとに続くどろろ。
一方百鬼丸の前に再び顔を出す琵琶法師。死霊の気配を気にするなと諭したが、百鬼丸は、その死霊がどろろに付いたものだと気付き、追いかけようとする。
女の案内で、みしらずの滝の白面不動に呼び込まれるどろろ。

 

<白面不動の巻>
洞窟の中の家に案内されるどろろ。寝ている間に女がいなくなり、奥の洞窟に行くと、顔のない凍った死骸が多数。女を見つけてそれを話すと、夢でも見たのだと一蹴される。
不動明王と話す女。今度の行者の顔はいかがかと問い、次は子供だと伝える。
どろろを不動明王に差し出そうとするが、うまく行かない。その上情が沸いて、そちらの面からも実行は無理。
どろろにいきさつを話す女。あれはニセ不動の妖怪。女も本当は死んでいるが、顔を持って来るために生かされている。どろろが人間の心を吹き込んでくれたと言って息絶える女。
妖怪の力で逃げ出せなくなったどろろを助けるために、百鬼丸が駆け付ける。

 

意地を張るどろろだが、構わず不動に立ち向かう百鬼丸。ピンチに遭うが、どろろも何とか助ける。
不動の首を落とすと体が溶けだした。岩にとりついたカビに精気が入り込んで妖怪になった。耳が外れ、本当の耳が生える百鬼丸。
大嫌いだと言いながら、腕の刀をもらうまでは離れない、とどろろ。

 

<みどろの巻>
景光に敵対する武将が乗る愛馬「ミドロ号」。だが部下から出世は馬のおかげと言われ、馬に八つ当たりし、生まれた仔馬を引き離す。
ひょんな事から引き離された仔馬を失敬するどろろ。
仔馬を奪われ元気のないミドロ号に厳しくあたる武将。戦場での無理な扱いで落馬した武将を川に沈めて殺すミドロ号。矢を多数受けて瀕死のミドロ号は、馬の霊に乗り移られる。
その馬の妖怪に出会い戦う百鬼丸。それを追って山小屋に行くが、そこにいたのは賽の目の三郎太。武将間の戦いを見極めて、強い方に着く考え。
そこに仔馬と共に現れるどろろ。現れた馬が母親だと思い込むが、あれは妖怪だ、と百鬼丸。
馬を追いかけると、そこには馬にまたがった三郎太がいた。
三郎太も妖怪に取りつかれた。
戦いの末、焼水で妖怪を倒す百鬼丸。気を失う三郎太。

 


④巻

 

<二ひきのサメの巻>
盗賊に襲われるどろろと百鬼丸。その首領はイタチ。どろろの父火袋の部下だった。背中に宝の地図が描いてあるというどろろに用があった。百鬼丸の力及ばずさらわれるどろろ。
宝が埋まっているという白骨岬に着くイタチ。陸づたいには行けず、船頭を探すも妖怪の噂があり漕ぎ手がいない。
そこに引き受けるという男が現れる。二艘の船を出すが船頭は一人。相棒は海の中だという。
二匹の巨大サメが現れる。二郎丸と三郎丸といい、男が子供の頃から飼っていた。
片方の船を沈没させて、その乗員を食うサメ。
残された舟で目覚めるどろろ。自分がおとりになってサメの腹を海上に出させ、そこをみんなの刀で刺す作戦を提案し実行。


そして白骨岬に向かって漕ぎ出すみんな。

 

<しらぬいの巻>
どろろを追って進む百鬼丸。どろろなしの旅が寂しいと感じる。
そんな時にどろろからの心の通信。舟で進むどろろを見つけるが、同時に追って来るサメに乗ったを見つけて海に飛び込む百鬼丸。
サメの男と戦うどろろ。そこに到着してサメとの戦いを始める百鬼丸。片目をつぶされて逃げるサメ。
皆で何とか陸に上がる。百鬼丸に休戦を申し出るイタチ。サメの男はしらぬいといった。サメの二郎丸は必ず戻って来るという。
父も母の戦さで殺されたというしらぬい。サメになりたいと言い、二郎丸に一生をかけたいとも。
水が欲しいという足軽に水場を教えるしらぬい。だが行った者が戻ってこない。確かめに行ったどろろは、そこにサメがいて皆を食ったのを知り、心で百鬼丸に伝える。
駆け付ける百鬼丸をしらぬいも追う。どろろがサメの目から刀を抜こうとしている。陸に飛び出るサメ。
戦いの末、サメの二郎丸を倒す百鬼丸。仇を取るためにしらぬいも向かって来るが、胸を刺される。
二郎丸と一緒に体を結んで海に流してくれ、と言って死ぬしらぬい。
そのとおりにしてやる百鬼丸。

 

<無情岬の巻>
イタチに矢で刺され倒れる百鬼丸。イタチはどろろを裸にして背中の地図を写し取った。
「おまえのおやじは何故お前を男の子として育てたのか?・・・」と呟くイタチ。その意味が判らないどろろ。
目を覚ます百鬼丸。自分の本当の声が出ることに喜ぶ。背中の矢は、父の寿海が作ってくれた代用骨に刺さっていた。
宝を目指して崖を登るイタチと部下たち。だが途中に仕掛けがあって次々落とされて行く。
罠にかかってイタチも落ちそうになり、助けを求める。それを助けに行くどろろ。
何とかイタチを助けたところに、沖から大量の船が来始めていた。
この岬を統括する代官 真久和忠兵衛。野盗の情報を聞いて検分に来た。だが本当のところは宝探しが目的。

我れ先に宝を目指す兵たち。
イタチも多数の矢を受けて瀕死の状態。どろろが何とか宝の壺を開くと中に手紙。
「黄金は別のところに移す。貧しい農民が立ち上がるための金」
金が見つかるように祈ってるぜ、と兵を道連れに崖を落ちるイタチ。
最後に残った百鬼丸とどろろは、舟で岬をあとにする。

 

<どんぶりばらの巻>
子供が田舎道を歩いていると、大きなお面に白装束のお化けもどきが襲って来る。通りかかったどろろが抑え込むと、それは少女。村人の言うにはどんぶり長者の娘お米。
長者の接待を受けるが、器ばかり大きくて食べ物は僅か。

下女の話ではここが醍醐景光の領内で、年貢の取り立てが厳しく、満足な食事が出来ないとのこと。
長者が毎夜出掛ける先は、肥溜めを偽装した入り口の秘密部屋。そこでごちそうを食べている。
お米は、その入り口がバレないように人を近づけないための細工をさせられていた。
その秘密を嗅ぎつけたどろろが捕まる。そこに本当の妖怪が現れる。
村を訪れる醍醐景光。年貢を納めないという長者の申し出を受けて咎めに来た。引っ立てようとするところを止める百鬼丸。

迫力に押されて退却する景光。
妖怪にどんどん飯を食わせられる長者。満腹になったところで妖怪がへそから長者の中に入り、腹を減らしてまた食わせる。
秘密の入り口を百鬼丸に教えるお米。門番を倒し、妖怪と戦う百鬼丸だが、妖怪が逃げて行く。
追いかけた先に沼があり、そこに見える岩。妖怪はここに入った。岩の上で待つが、髪か藻の様なもので縛られる百鬼丸。お米に教えられて助けに来たどろろは、村人と共にその岩を引き上げる。それは巨大な亀だった。亀の首穴に竹を差し込み、薬を流し込んで亀は絶命。
沼のものを食って動けなくなった亀が、自分の精気だけを泳がせて人に取りつき栄養を取っていた。
百鬼丸を助ける知恵を出したのはお米。それを褒める百鬼丸。
そこへまた現れる景光。多宝丸の仇だと言って、ある者を差し向けた。
それはミドロ号の亡霊と共にいた賽の目の三郎太。
だがその戦いのさなか、百鬼丸の右の義眼が落ちて本当の目になった。眩しくて目がくらむ百鬼丸。それに付け込んで斬り付ける三郎太。割って入ったお米が身代わりに斬られた。

 

あたいをバカじゃないって言ったのはあんただけ・・・と言ってこときれるお米。静かに立ち去る百鬼丸。

 

<四化入道の巻>
久しぶりに川で水浴び。暑さも寒さも体に感じない百鬼丸。
どろろが魚を取ろうとして手を罠に挟まれる。
助けを求めて古寺を訪れる百鬼丸。そこで暮している四化入道に助けを求める。
川に戻るが、そこにどろろがいない。元々和尚に妖気を感じていた百鬼丸は戦いを始める。
もぐらの穴の様な跡を追って寺に辿り着く百鬼丸は、近くに住む木こりに寺の話を聞く。
この寺に砦をつくろうと醍醐が来たが、和尚がそれを固く断ったため、責めた末に和尚を生き埋めにした。
寺を壊そうとした醍醐だが、野ネズミや獣の大群が押し寄せ、そのまま寺は放置された。
和尚が埋められた墓を崩す百鬼丸。それに応える和尚の霊。どろろを助ける、と宣言する百鬼丸。

 

捕われのどろろ。上を見上げると、遥か上に光が差す穴。
寺の本堂に入り、首の浮いている如来像を見つける百鬼丸。首の穴から中を見下ろすとどろろの声。
これは罠だと言い、中はとんでもなく深い。
構わず足を入れようとする百鬼丸に、メチャクチャに暴れてそこまで辿り着いたどろろは、百鬼丸の足にしがみつく。何とか外に出たどろろは、焚火をその首に詰め込んで蒸し焼きにした。
モグラ穴の先で待つ百鬼丸。煙で燻されて飛び出す妖怪を次々に斬り捨てる。
だが親玉の入道が出て来ない。別ルートの穴を掘っていると直感し、狙いを付けて攻撃。頭を刀で貫かれて入道は倒された。

 

<ぬえの巻>
訪れる村が既に三つも、もぬけのカラの状態。寝たきりの老人に聞くと、醍醐景光が砦の堀作りに村人を駆り出している事が判明。

脱走を企てる若者。だが逃げた先の我が家は焼き払われていた。
川で老婆の亡霊に遭う百鬼丸とどろろ。景光に焼き殺されたという。
景光と刺し違える覚悟の百鬼丸は、どろろと別れる決心を伝える。
別れるなら殺して行けというどろろに「女は斬らん」と言う百鬼丸。今度はどろろが驚く。
どろろを置き去りにして景光の屋敷に入る百鬼丸は仕官したいと兵隊に伝える。
景光は母親の縫の方に引き合わせる。涙を流して謝る縫の方。


騒ぐどろろを押さえ付ける若者は、穴を掘って屋敷に入ろうとしていた。狭いところが得意などろろは最先端で掘り進む。
屋敷に一番乗りで入り込むものの、捕まるどろろ。仕官の証しにどろろを斬り捨てよ、と百鬼丸に命じる景光。
刀を構える百鬼丸だが、狙ったのは妖怪。

 

景光に取り付いている妖怪の片割れを五、六匹分は仕留めた。

苦しむ景光。
穴から城に入った若者の手引きで門が開かれ、屋敷内は総崩れになった。夫婦で屋敷から追い払われる景光。

 

騒動は終わり、百鬼丸はどろろに刀を渡した。
魔物を探して倒し、自分が完全な体になったらまた会おう、と百鬼丸が去って行く。

 

 

 

”『クリード 炎の宿敵』(2018年・アメリカ)”

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ジェーン・ドゥさんの記事にリブログ(御免なすって)
主な写真はリブログ参照。

 

 

監督 スティーヴン・ケープル・Jr.
脚本 シルヴェスター・スタローン、チェオ・ホダリ・コーカー

 

キャスト
アドニス・クリード           - マイケル・B・ジョーダン
ロッキー・バルボア        - シルヴェスター・スタローン
ビアンカ                      - テッサ・トンプソン
イワン・ドラゴ               - ドルフ・ラングレン
ヴィクター・ドラゴ          - フローリアン・ムンテアヌ
メアリー・アン・クリード   - フィリシア・ラシャド
ダニエル・ウィーラー      - アンドレ・ウォード
トニー・デューク            - ウッド・ハリス
ルドミラ                       - ブリジット・ニールセン
ロバート・バルボア        - マイロ・ヴィンティミリア


感想
ちょっと前に「ロッキーシリーズ」の記事アップした時、一通り1~5までは観たが、6の「クリード チャンプを継ぐ男」だけが未見であり、今回もパスしようと思っていた。
だがジェーン・ドゥさんのお勧めブログを読んで、やっぱロッキーファンとしては行くべきか、と思い劇場へ。
まあ、予定調和といえばその通りなのだが、30年近く前に味わった心地よさと同種の感動が蘇える。
パンチの応酬を見ている時に、どうしても体が動いてしまう。

誰かに見られていたらホント間抜けな光景・・・・

 

ドラゴ側は完全な親子タッグだが、アドニス側はちょっと微妙。父は亡くなり、母親とは血の繋がりがない。

またロッキー自身はボクシングを嫌った実の息子とは疎遠であり、親友の遺児を見守るという立場。

 

アドニスに対する遠慮が、いつの場面でも滲み出ており、本当に切ない。だが初戦でヴィクターにガタガタにされ、傷が治ってからも委縮していたアドニスを鍛え直すところから、どんどん厳しい扱いになって行く。この辺りのスイッチの入り方が気持ち良かった。
ただ「虎の穴」って何よ。タイガーマスクか(笑)。エンドクレジットで「ニューメキシコユニット」の表記があったからあらすじに書いたが、ネタバレサイトでは、訓練場所はカリフォルニアとなっていた。

ロッキー4の時は木こりで鍛えたが、今回はハンマーで穴掘り。重いパンチを身に付けるには、こういう鍛錬が効くのだなぁ(笑)。
接近戦をやるためにタイヤに片足づつ突っ込んで対戦するのは「いいアイデア」と納得。
弱いボディを徹底して鍛えるという方向性も正しいが、もうひと味ヴィクターを凌駕するトレーニングがあると、盛り上がり方が違ったか。

 

それから本編では見逃したが、試合後ルドミラが車の中からドラゴ父子を見るシーンがあったらしい。この親子も負けはしたが、負けた事で憑きものが落ちた様になって、関係を取り戻したのがイイ。
メアリーは、なさぬ仲のアドニスを気遣ってロッキーに手紙を出した(実はここに一番グッと来た)。
いずれにしても、様々な親子の形をパズルの様に組み合わせ、それぞれの伏線を張り、多少のこぼれはあるものの、何とか全て回収して終わらせた。
深い感動、とまでは行かないが、観終わってから「なんかあったかい」という充実感を味わう事が出来た。人生の回復、修復。

 

突っ込みの前に
何と言ってもロッキーシリーズの多くを占めるのは、あのテーマ曲。
今までの作品では、ちょっと食傷気味に流された事もあったが、今作では全く出て来ず、言葉の意味が判らないラップ主体でフラストレーションが溜まっていた。
それが、ロシア戦でのクライマックスでようやく出て来たあのメロディ。

だがそのままではなく、イメージを残しつつ「もう一息」というところでセーブ。
その後はピアノバラードの形で、演者の心に寄り添いながら、あくまでも脇役としての音楽に徹した。
第一作から聴き続けていたからこそ、この扱いには脱帽。

 

 

突っ込みどころ
ビアンカの難聴ネタには若干疑問が残る。多少手話を使うところも見られたが、補聴器を使えばほとんど日常生活に問題はない程度のもの。また進行性という事だったから、新生児の時に難聴が判ったら、それは別の異常。本件、ドラマで扱うには考証が足りない。
ただ、脳波との組み合わせで新生児の聴力を判断する手法は素晴らしい(って、最近では常識なの?)

 

マスタングの窓ガラス開閉が手動式! まあ初期型だがら当然なんだけど、何か新鮮だった。

 

 

あらすじ
ウクライナ州キエフ。ヴィクター・ドラゴが試合で相手を難なく倒す。父親はイワン・ドラゴ。
アメリカ。WBCのチャンピオン戦。ダニエル・ウィーラーに挑戦するアドニス・クリード。セコンドにつくのはロッキー。
ウィーラーを圧倒して新チャンピオンとなったアドニスは、ウィーラーに奪われていた父アポロのマスタングも取り返した。
恋人のビアンカにプロポーズするアドニス。その前に、ロッキーからのアドバイスを受けていた。ビアンカは難聴を抱えながら音楽活動をしている。

 

数日後、ロッキーのレストランを訪れるドラゴ。

ロッキーに負けた後名誉も妻も失った事を告げ、息子ヴィクターにボクシングを仕込んだと言った。
そしてTVから流れるドラゴ親子によるアドニスへの挑戦を伝えるニュース。
悩んだ末に試合する事を決めたアドニスだが、ロッキーは反対。かつてタオルを投げずにアポロを死なせてしまった事を後悔していた。
セコンドを断るロッキーと決別するアドニス。

アドニスの母メアリーの洞察力で自分の妊娠を知るビアンカは、喜びつつも自分の難聴が遺伝しないかと心配。
かつてアポロのセコンドをしていたデュークの息子トニーと猛特訓を行うアドニス。

 

そして試合当日。
ヴィクターのパンチは重く1ラウンド、2ラウンドを何とか乗り切るものの左肋骨を痛めるアドニス。
そして3ラウンド。執拗な攻撃で肋骨は骨折してダウンするアドニス。
だがその倒れる時にパンチを入れたためヴィクターは失格。アドニスは入院。腎臓にもダメージを受けていた。
ロッキーが見舞いに来るが、心を閉ざすアドニス。

ヴィクターはその後も試合で勝利を重ねて評価を上げ、ロシアでも政府幹部から会食に招待される。そんな席にかつてドラゴ父子を捨てた元妻のルドミラが政府関係者として顔を出す。迎合する様な態度の父にも腹を立てて席を立つヴィクター。
それを「将来のためだ」と言って宥めるドラゴ。

 

何とか傷も癒えたアドニスだが気力が戻らない。誰かとは対戦しないとチャンピオンの資格を失う、と言うトニー。
ジムの前にまで行くが、入れずに引き返すアドニス。
メアリーからの手紙を受けてアドニスに会いに行くロッキー。
正直に、ヴィクターに勝てないかも知れないと話すアドニスにロッキーは、自分自身の気持ちが一番大事だと話した。

それから守るべきものの事。

 

ビアンカが産気づいたという連絡を受けて病院に駆け付けるアドニスとロッキー。
無事娘のアマーラが産まれるが、脳波による聴力検査では反応が悪く心配するアドニス。
ロッキーは「娘は自分の事を惨めだとは思っていない」と言う。

たまたまビアンカからアマーラを預かり、ジムに顔を出すアドニス。
サンドバックに触り、少しづつ打っているうちに気分が高まり、素手のままで連打を始める。そして大声で吠えた。

アマーラが右腕を突き出す仕草。
家に戻り、ビアンカにヴィクターとの戦いを告げるアドニス。
だが今度の戦いはロシアで行うのが条件。

 

ロッキーにもその決心を告げると、体を鍛え直すためニューメキシコの「虎の穴」に行くと言い出すロッキー。まともなトレーニング用具などなく戸惑うアドニス。
まず最初はハンマーで地面を打ち付ける。掘り返すわけでもなく意味不明。
ボディ強化のため懸垂状態でパンチングボールをぶつけられる。
対応出来ず反吐を吐くアドニス。ランニングもロッキーの運転するマスタングにノロノロ付いて行くだけ。
だが訓練が進むにつれてみるみるうちに体は強化され、メデシンボールにも耐え、トラックのタイヤに片足づつ突っ込んでの接近戦も制する。ランニングでは車をはるかに追い越す。ハンマーで打ち続けた地面は大穴になった。

 

そして迎えたタイトル戦。
ホームで大歓声に迎えられるドラゴ親子。

ルドミラも政府高官と共に観戦。
そしてアドニスは、ビアンカの歌に導かれ一緒に入場。ロッキーも続く。
前試合の結果を受けて予想オッズはアドニス側が26倍。
そして試合開始。打たれても後退せず踏みとどまるアドニス。

あきらかに前回とは違う事に戸惑うヴィクター。だが判定ではアゥエー側が不利。
ほぼ互角の状況で後半を迎えるが、ドラゴの指示で以前の様に脇腹を狙うヴィクター。反則だがレフェリーは気付かない。猛抗議するロッキー。
そしてアドニスは再び肋骨を骨折。だがインターバルでも、もうロッキーは止めろとは言わない。
10ラウンドで再びヴィクターのボディ攻撃を受けダウンするアドニス。だが歯を食いしばり、マットを殴りながら立ち上がる。
そして驚異的な反撃でヴィクターからダウンを奪う。
その時、失望したルドミラが高官と共に席を立った。席に母がいない事に気付くヴィクター。
そしてもう一度ダウンを奪い、次にアドニスが猛攻をかけた時、ドラゴが血の付いたタオルをリングに投げ入れる。
泣きながら父を責めるヴィクターにドラゴは「もういいんだ」。
ロッキーを探すアドニス。彼はリングには上がらず「お前の時代だ」と言って拳を伸ばし、アドニスの拳と合わせる。

 

アドニスは父アポロの墓に来ていた。墓参は久しぶり。ビアンカとアマーラを紹介する。
ロシアでトレーニングを再開するヴィクター。それに伴走するドラゴ。

 

ロッキーは息子ロバートの家を訪れる。初めて会う孫のローガン。
驚くロバートだが、ロッキーに入るよう促し、そして抱き合う二人。

 

 

 

 

七つの会議(小説) 原作:池井戸潤

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中堅電機メーカが起こしたリコール隠しを巡るドラマ。
八章からなる短編により構成されるが、全体として繋がっている。

 

登場人物
東京建電
宮野和広  社長
村西京助  副社長
北川誠    営業部長
稲葉要    製造部長
飯山孝実   経理部長
河上省造   人事部長
坂戸宣彦   営業一課課長
原島万二   営業二課課長
加茂田久司 経理課長
佐野健一郎 カスタマー室長
八角民夫   営業一課係長
伊形雅也   人事部課長代理
新田雄介   経理課長代理
奈倉       商品企画部
前川       高崎工場 副工場長
内藤       高崎工場 ライン長
浜本優衣   営業四課
小西太郎   カスタマー室
仁科里美   カスタマー室
遠藤桜子   人事部
谷口友紀   営業部

 

ソニック
徳山郁夫  社長
田部       副社長
梨田元就  常務取締役
木内信昭  総務部長

 

その他
三雲英太  移動ベーカリー経営
森島      アジア交流開発協会
増谷寛二  元製造部長
加瀬孝毅  社外調査委員会
佐川昌彦  社長付き運転手
八角淑子  八角の妻

 

 

感想
2月からこのドラマの映画が公開される。単行本は五年ほど前に発売されており、息子が買って読んだ本が家に放置されていた。
企業ドラマは昨年の「空飛ぶタイヤ」も観たように嫌いではない。
そこで映画化で何が違うのかを確認するためまず原作を、と今回読んでみた。
以下映画のネタバレを嫌う方はスルーして下さい。

 

そういえば小説発売時期にNHKドラマでコレやってた様な・・・・コチラ
あらすじを読むとけっこうアレンジしているみたい。

 

エレクトロニクス系の大手メーカ「ソニック」の経営多角化のため、業績アップを課せられた子会社「東京建電」の中で生じたリコール隠しを描いたもの。
エレクトロニクス系でこの社名というと「ソニー」を連想するが、実際にはモデルとなる会社はないとの事(映画ではこの会社は「ゼノックス」とされている→これも何だかなァ・・・)

万年係長によるパワハラ告発により、切れ者の課長が左遷させられた事を発端に、企業の暗部が暴かれて行く。
数々の山場が用意されていて読み応えがあった。

 

まず坂戸の後任の原島が最初に気付くが、これは最初の八角への接触で全てを知らされる。事後処理担当として動き始める原島。
次いで新田。原島への反感からネジ転注による高コストを問題視するが、八角の警告を無視してトーメイテックにまで踏み込んだため、不倫もバレで島流し。
カスタマー室長の佐野は、市場クレームから疑いを持ち、強度偽装に辿り着く。単に北川への復讐のみを考えていたのが、社長までグルだと知り愕然とする。
会社の創成期に、コストダウンのため品質偽装を行っていた北川。その件では事なきを得たが、二十年後にしっぺ返しを食う。
副社長の村西。ソニックのお目付役だからこそ蚊帳の外にされた。ソニックに報告するも、その社長にも隠蔽を指示され絶句。

 

最終的に、八角がマスコミにリークしてようやく本件の是正が実現した。このインパクトの大きさに比べれば、実は江木を使って強度偽装を指示していたのが社長の宮野だったと判っても、あまりびっくりしない。

企業の中で正しい行いをしようとする者が、なかなか報われない事を良く表現していると共に、企業における自浄がいかに困難であるかを示唆するドラマ。
各登場人物の生い立ちや私生活も描かれ、特に坂戸の過去は自分の犯した犯罪の背景として胸に迫るものがある。

 

最近本当に多い企業ぐるみの犯罪。この源流にあるものは何か?
この小説はほんの一例だが、決してフィクションではないところが「恐ろしい」

 

題名となった「七つの会議」は下記の七つか
1.第一話 営業部内の「定例会議」
2.第三話 環境委員による「環境会議」
3.第四話 売上。経費目標設定の「計数会議」
4.第五話 カスタマー室での内輪の「編集会議」
5. 〃   カスタマーレポートを報告する「連絡会議」
6.第六話 過去組織の産業課で行われた「営業会議」
7.第七話 社長・取締役出席で議事録の残らない「御前会議」
*パワハラ委員会や調査委員会も、会議と言えば言えるので、まあ一例として・・・

 

ツッコミどころ
ソニックは大手のエレクトロニクス企業であり、家電事業の子会社を持つのはアリだが、営業二課が扱う白モノに対して、花形と言われる一課で椅子を扱っている事が少し不自然。
それから、製造部と営業部は出て来るのに、設計部門が全く出て来ないのもちょっと変。本来ネジ等の部品は資材部門がメーカ選定をして、設計・生産技術部門がメーカの実力評価を行う。
製造業のリサーチをもう少しがんばると、随分リアリティが増すと思うが・・・

 

オマケ
第二話で逸郎が勤めていた知多の鉄鋼工場は「大同特殊鋼」だな(笑)

 

 

あらすじ

第一話 居眠り八角
中堅会社の東京建電。「定例会議」でノルマ未達を営業部長の北川から責められる営業二課長の原島万二。二課は白物家電主体で季節の影響が大きい。
一方営業一課長の坂戸宣彦は、稼ぎ頭でもあり、称賛を受ける。その横で半分寝ている一課係長の八角民夫。万年係長で煙たい存在。
資料作りも協力しない八角にイラ付く坂戸。その会議を境に坂戸の、八角への態度が厳しくなった。ぎくしゃくする関係が日常化。

 

そんな年度末、坂戸がパワハラ委員会にかけられているという噂が原島にも入って来る。八角が告発した。
パワハラ委員会の結果、坂戸は「クロ」。親会社のソニックのガイドラインだとそうなる。そして坂戸の「人事部付」が決まった。坂戸を高く評価していた筈の北川の提案。
後任の打診を受け、意外にも原島が営業一課長となった。
坂戸の歓送会。八角へのパワハラの処分が厳しすぎる事への不満が送る側からも出るが、八角さんが悪いわけじゃない、と坂戸。

 

新任の原島が最初に行ったのが、課員十五名との面談。

最後に残った八角。
入社五年で係長にスピード昇進。以来二十八年間の据え置き。当時の課長で、今はソニック常務の梨田元就の仕打ち。
当時はなりふり構わぬ営業で急成長した東京建電。方針に従いユニットバス他多数を売った客が自殺。その息子に「あんたのせいだ」と言われた八角は梨田に方針の間違いを進言。だがその後は目の敵にされた。そして梨田は親会社に栄転。
万年係長でいいと言う八角に、坂戸をパワハラで訴えた理由を聞く原島。それを聞くことで大事な権利を失う、と警告する八角。
長い話を聞いて、全てを理解した原島。


第二話 ねじ六奮戦記
従業員十名ほどの零細ねじメーカ「ねじ六」。三沢逸郎が経営している。逸郎は知多の鉄鋼工場に勤めていたが、父の急死により跡を継いだ。離婚して戻った妹の奈々子母子と同居。経理は奈々子が仕切っており、最近の赤字続きで資金繰りに苦慮していた。
主要顧客の一つ、東京建電の坂戸が出す仕様書を見る逸郎。

坂戸の厳しいコストダウン要求で、最近の利幅は削ぎ落されている。
それから数日かけて試作品を作り、自身としてもギリギリの見積りを坂戸に提出。その結果、拍子抜けするほどあっさりと受注。人員も増やして着々と生産準備を進めた。
そんな時に坂戸の訪問。更に値段を下げる要求。競合他社がここまで下げているという。
とてもねじ六ではやれない価格。量産準備は動いていると泣きつく逸郎に、正式な発注書は出していないと逃げる坂戸。
赤字を出しても契約を繋ぐ方を勧める奈々子。だが坂戸のやり方に不信感を持つ逸郎は受注を辞退。

東京建電を失った影響は大きく「ねじ六」の経営は厳しいものが続いた。

 

ある日、東京建電の原島という者の訪問を受ける。前任の坂戸は担当替えになったという。何種類かのネジを出して、これと同じものを作って欲しいと言った。仕様・価格は以前の見積りのままでいいと言う。即決で仕事を請けた逸郎。
新たな東京建電部品納入も軌道に乗った頃、原島が持って来たサンプルのネジが二本出て来た。なにげなくそれを引張試験機にかけた逸郎は、要求に対してはるかに低いその値に驚く。
全てを理解する逸郎。だが「言われたままのネジを作ればいい」とそのネジを捨てる。


第三話 コトブキ退社
営業四課の浜本優衣。入社五年。会社の彼(妻帯者)から別れを切り出される。OLに見切りをつけるため、会社の上司に退職を申し出る優衣。面倒になるのを嫌って理由は「コトブキ退社」。
友人で人事部の遠藤桜子に説教される優衣。辞めても次の当てはない。退職までの二ケ月で何かを残そうと考える優衣。
社内の「環境会議」で無人のドーナツ販売を提案する優衣。とりまとめの人事部課長代理、伊形は会議で賛同者が多い事に驚く。
何の準備も考えていなかった優衣は、桜子に指導されて店の打診から始め、企画書までを作り上げた。
店側の協力が得られない中、脱サラで移動ベーカリーをやっている三雲英太を知る優衣。今までの店の対応とは異なる好感触に、この店を前提として企画書を修正。。
企画書は経理課に届き、それをチェックする課長の加茂田と、優衣の彼氏だった課長代理の新田。加茂田に輪をかけてアラ探しをする新田は、三雲のベーカリーをけなす。「あなたはそんなに誠実な人なんですか」と返す優衣。

 

キャンペーンとしてのドーナツ配布を副社長の村西が食べた事で、あっさり無人販売は認可された。
それからほどなくして、新田からヨリを戻さないかと言われる優衣。再会した時、誠実に生きるという言葉に心が動く優衣。
三雲からの相談。移動販売で販売数と集金が合わない。誰かが金を払っていない。  
退職日も迫る中、犯人を突き止めようと見張りをする優衣。犯人は何と新田だった。幻滅した優衣が「この事と、私との事も話そうか」と脅すとガタガタ震え出す新田。


第四話 経理屋稼業
毎月計画と実績の検討が行われる「計数会議」

加茂田から計画比七千万の下ブレを追求されて神妙な顔の原島。

加茂田の下で働き、それを内心喜ぶ新田は、原島との間で接待費の扱いに関して確執があった。
新田は一課が提出した仕入れ先リストのチェックで「ねじ六」への転注により数百万の支出増となっている事に注目し、それを加茂田に進言。だが原島は平然と「役員会にでも報告したらどうだ」。
役員会に加茂田がその件を上程した。期待した新田だが、加茂田の言うには、それはスルーされたという。恥をかき新田を責める加茂田。
その後の情報収集で、ねじ六の前の納入メーカがトーメイテックであり、引き揚げられたのは全てこの会社のものだった事が判明。原島とねじ六の癒着も疑う新田。
遡って、坂戸がトーメイテックを開拓した事で、同社の業績か大躍進した事も判明。

 

坂戸更迭の真相を聞くため、八角に接触する新田。接待費計上を口実に八角と話す。坂戸とトーメイテックとの癒着も疑い、同社を調べてみようかと踏み込む新田に「勝手にしろや」

トーメイテックに出向き、決算書を要求する新田。もう取引きがないのだから渡す必要がない、と断る社長の江木。
出口で原島に出くわす新田。苦しい言い訳をするが、当然信用はされない。社に戻るとトーメイテックに行った事が、既に加茂田に知られていた。一課からの抗議。
余計な事をするなと叱責され、プライドがズタズタの新田。家庭でも妻と不和。

数日後、部長の飯山に呼び出され、大阪への転任を告げられる新田。抜擢かも知れないという期待は打ち砕かれ、仕事は営業。反論しようとするのを遮り、退職した浜本君と不倫していただろう、と言う飯山。解雇したいぐらいだ、とも。
単身で大阪に行った新田は、三ヶ月後離婚した。


第五話 社内政治家
カスタマー室長の佐野健一郎。かつては営業部次長だったが二年前に移動。当時上司だった北川のイエスマンでやって来たが、業績不振の原因にされた。腐っていたところを製造部長の稲葉にとりなされ、時々北川に不利な情報を流した。それがバレての左遷。

 

この会社ではクレームに対する感度が低い。クレームは封じ込めるものだ、という認識。

部下の小西太郎、仁科里美と行う「編集会議」でカスタマーレポートに抽出する案件を整理。
毎月一回行われる「連絡会議」。ここでカスタマーレポートを報告。
そんな中で、椅子にかけようとして壊れたという情報を掴む佐野。先方まで出向き状況を調査した。ネジが折れていた。
椅子を持ち帰り製造時期を調べると二年前。それも日本での製造。過去三年のクレーム情報では座面が外れたクレームは7件。揉み消しを恐れて商品企画部の奈倉にネジを調べさせた。結果は規格通りと強度不足のネジの混在。また旧い椅子のネジは規格通り。
問題の椅子は「ラクーン」。十年前から製造している。ネジの調達は営業部の管轄であり、課長には聞きづらい。結局八角に聞くことに。
「モノにはやり方がある」と八角。それ以上は言わない。

 

女子社員の谷口を使って、このネジが古くはねじ六で作られ、坂戸になってからトーメイテックに転注、そして半年前再びねじ六に戻された経緯を知る佐野。疑われるリコール隠し。

トーメイテックが製造したネジの在庫を回収するため、高崎工場への「工場見学ツアー」を企画する佐野。名目は顧客サービスの一環。
実施される工場見学ツアー。

通り一遍の見学を終え、担当に取り入ってサンプルを集めて行く。

「ラクーン」だけでなく多岐に亘る製品に使われているネジ。
工場に行った事が稲葉にバレた。

「正義は我にあり」と考えるが力ない佐野。
奈倉に預けたネジの強度結果が報告された。32種のうち22種は不良品が混入。特に問題なのが3種。列車、航空機の椅子にも使われているもの。既にカスタマー室が関与するレベルを越えた案件。
「俺は一体、どこで道を間違ったのだろうか」


第六話 偽ライオン
北川部長の執務室に押しかけた製造部長の稲葉。「ネジ強度不足による製品リコールの件」と題した書類。差出人はカスタマー室長の佐野。宛名には北川、稲葉、社長の宮野の名もあった。
かつてトーメイテック社製を採用していた時期のネジ強度不足に対する告発。この件の説得のため、佐野に会う北川だが、宮野社長の判断を仰ぐと言って応じない佐野。
八重洲の居酒屋で八角と話す北川。役職は違うが同期入社。告発文の事を話し、佐野への警告を頼む北川だが、断る八角は北川を偽ライオンと揶揄した。

 

旧い記憶を掘り起こす北川。立ち上げ時期の厳しい時期に、北川は獅子奮迅の働きで「ライオン」とあだ名されていた。販売ノルマは達成したが、最大の難関はコスト。
列車シート受注に苦慮していた時期に、当時の製造部長からの助け舟が、耐火性等スペックの偽装。
「営業会議」でノルマ達成の圧力を強める当時の営業課長、梨田。それが北川の背中を押した。
そのおかげで北川は受注をクリアし、目覚ましい成績を上げた。一方八角は梨田と衝突し抑圧された。そんな時期に八角から偽ライオンだと言われた。 -こいつ、知ってやがる-
製品の不正は五年ほどで終わった。

 

再び佐野を訪れる北川。佐野が調べた内容を認めた。本件の隠蔽を指示するが、北川の辞任を要求する佐野。社長にも本件を伝えていると言う佐野に、全てを話す北川。
半年ほど前、八角がネジのリストを持って北川を訪れた。損益の改善からネジの要素を抽出し、強度不足のシッポを掴んでいた。
折りたたみ椅子ならいざ知らず、鉄道や航空機のそれを交換するのは不可能に近い。
北川は全てを社長の宮野に話した。坂戸を呼びつけて怒り狂う宮野。だが結局北川、稲葉への指示は「本件、隠蔽せよ」。八角によるパワハラ告発は口実だった。
愕然とする佐野の顔から表情が抜けて行った。
「納得させました」と宮野に報告した北川。

一件落着、と思った二日後、副社長の村西に呼び出された北川。匿名の告発があったと言う。
佐野の告発文とほぼ同じ内容。「これが本当ならソニックに報告しなくてはならない」
村西はソニックから出向して来たお目付役。

この隠蔽を絶対知られてはならない人物。


第七話 御前会議
北川から全てを聞いた村西は、しばらく考えた後ソニック本社の総務部長、木内に電話を入れ、すぐ出向いた。
明日開かれる「御前会議」の議題にすると言う木内。これは取締役以上が集まるもので、議事録は作られない。
翌日御前会議に出席する村西。進行の木内、社長の徳山、副社長の田部、かつて常務を争った梨田も出席。
徳山の指示は、まず状況の把握。調査チームの派遣が決められた。
帰社した村西に打ち合わせを求める社長の宮野。北川、稲葉も同席。今リコールをかければ会社はひとたまりもない、との言葉に怒りをぶつける村西は、本件は既にソニックのマターになったと宣告する。

誰がこの件を把握しているかを整理するため、佐野を呼び出す村西。だがこの告発文を村西に出したのは別人。心当りを聞かれて八角の名を出す佐野。
次いで八角に事情を聞く村西。だが告発文を書いたかどうかには答えない。
なぜこんな事が起きたかを問う村西に「あえて言えば体質かな」
そして昔、製造部に増谷という人がいたと言い残して去る八角。

 

古い記録を繰って増谷寛二を探し出す村西。最終ポストは製造部長。連絡すると、暇だからと会社へ出向いてくれた増谷。
今回の状況を話し、八角から名前を聞いたと知って、腹を括り昔の悪事を話す増谷。コストで苦しむ営業担当に、規格を下回る部品を作ってデータを捏造すればコストダウンが出来ると吹き込んだ。
その時の営業担当が北川。だがその秘密を知っていたのは八角だけではない。当時の営業課長だった梨田--今のソニック常務。知っていながら知らぬフリをした。
増谷の名を出して北川に確認する村西。

緊張と絶望に満たされる北川。

ソニックからの調査チームが入って一週間。それから一週間後、御前会議に呼び出される村西。
リコールした時に予想される賠償額は概算で千八百億。狼狽する宮野に梨田が追い打ちをかける。村西は二十年前の不正についても報告に入れていたが、それは削除されていた。

取りまとめの木内がやった事。
発表は早い方がいいと思います、との木内の言葉に「誰も発表するとは言っていない」と徳山。
発表しない限り、本件が表沙汰になる事はない。その代り東京建電の経営陣には責任を取ってもらう、と言い残しで退席する徳山。

 

月日は流れ、年を越した。改修はハイペースで進んでいる。
八重洲の居酒屋で八角と飲む村西は、彼に課長にならないかと打診。八角の組織を見る目は正しい。だがそれを断る八角は、社内人事よりメガトン級の爆弾が必要だと言った。
それから一週間後、東京建電のリコール隠しが新聞報道された。八角の言葉を理解する村西。


第八話 最終議案
東京建電の強度偽装は各メディアが一斉に報道。航空機、鉄道車両は運休に追い込まれた。ソニックの株価も二割下がる。
設置された社外調査委員会の加瀬孝毅に呼び出される八角。

調査委員会の興味は、個人の罪か組織の罪かの判断。坂戸への事情聴取には同席してくれと言い渡す加瀬。 

憔悴し切った坂戸に、加瀬は坂戸の実家である館山の不動産について確認を始めた。個人賠償のための手順。だがそれだけは困る、と頭を下げる坂戸。
実家の商店がスーパーの進出で経営不振になった時、父親は商売を継がせる方針を変え、坂戸と兄に好きな仕事をしろと言った。それに従い兄は銀行、坂戸は東京建電へ。
その後兄弟とも家庭を持ち、基盤も安定した頃、父が倒れ母が介護する生活となった。
その生活も一年ほどで母が倒れ、心臓手術を受けた。両親をどうするかで妻ともギクシャク。
そんな時、兄が銀行を辞めて家を継ぐと言った。どちらかがしなければならない中での兄の決心。

大きな負い目を持った坂戸は、会社で成功するしかないと思い詰めた。だが、それで強度偽装を正当化は出来ない、と加瀬。

不正を思いついたいきさつを聞くと、最初の提案はトーメイテックの江木社長からだったと言う。

 

社内では、再建案についての検討が進められ、新会社の社長と目されている総務部長の飯山から、新会社の課長又は部長代理のポストを打診される八角。
家で妻の淑子と話す八角。新会社に移るかも知れない話をすると喜んだ。八角の複雑な思い。正式なリコールを期待して告発したが上層部は隠蔽に走り、次にリコール騒ぎとなってからは犯人探しばかりで企業再生の理念などない。
「今まで十分過ぎるぐらいスジ通したんじゃない?」と淑子。

 

取り調べを終えて帰る途中の坂戸を、付き添いの伊形込みで居酒屋に誘う八角。江木とのつきあいの経緯を改めて聞くと、証拠を残さない様な意図が感じられた。またトーメイテックを最初に紹介してくれたのは北川だという。
原島と共に江木へ確認に行く八角。江木は、言われたものを作っただけだと言って提案した事を否定。下請けの立場でそれを言うのは不可能だとも。

北川に、トーメイテックを坂戸に紹介したいきさつを聞く八角。あっさりと、社長からの助言だと答えた北川。江木の提案の陰に宮野がいる。だが証拠がない。
社長付きの運転手、佐川に話を聞く八角。トーメイテックの江木と社長が何かあるかと聞くと、二人でよく飯を食いに行くと答える佐川。そこで坂戸の立場を話すと、彼に同情する佐川。
加瀬に会い、江木と社長の関係を話す八角。だが佐川の名は出せない。
「どうやってそれを証明しますかね」

八角が、加瀬の随行の形で再び江木に面会。相変わらず自分は言われた事をやっただけとの弁明。
加瀬が一枚のコピーを差し出す。宮野氏から江木宛に出されたメールのコピー。だがそれは途中までしか書いていない。データ捏造提案は口頭のみで行うこと、坂戸はこれを拒否しないことなどが書かれている。これが宮野のパソコンの「書きかけ」の項目に入っていたという。
加瀬の追い打ちに、宮野からの指示だと白状する江木。証言を録音する加瀬。

二時間近くに及んだ聴取の後、八角があのコピーは俺が作ったニセものだと言った。違法だとわめく江木に「裁判所に出すわけじゃない。知りたいのは真実」

 

公表から半年が過ぎ、営業一課の機能だけ残して他の業務は新会社へ移された。

清算事業としての東京建電は、村西が社長となって回した。
宮野は特別背任で告発。トーメイテックは破産を申し立て、江木は行方不明。坂戸は、個人賠償は免れたが懲戒免職。ただ、何とか拾ってくれる会社は見つかった。
梨田は二十年前の不正を問われて子会社へ出向。

八角の新会社への移籍・昇進は流れた。

 

虚飾の繁栄か、真実の清貧か--強度偽装に気付いた時、八角が選んだのは後者だった。
どんな道にも、将来を開く扉はきっとある筈だ。

 

 

 

3年A組 -今から皆さんは、人質です- 1~4話 日テレ系 2019年

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月曜10時30~のTVドラマ(日テレ系)2019.1.6スタート  番組HP
クラス全員を人質にして学校に立て籠もった教師を巡る話。
今回は第一話~第四話をレビュー。

 

脚本 武藤将吾
演出 小室直子、鈴木勇馬

 

キャスト
教室 3年A組
柊一颯(ひいらぎ いぶき)担任 - 菅田将暉
生徒
茅野さくら(かやの さくら)       - 永野芽郁
宇佐美香帆(うさみ かほ)     - 川栄李奈
諏訪唯月(すわ ゆづき)      - 今田美桜
逢沢博己(あいざわ ひろき)   - 萩原利久
石倉光多(いしくら こうた)      - 佐久本宝
甲斐隼人(かい はやと)      - 片寄涼太
中尾蓮(なかお れん)        - 三船海斗
秋庭凛、浅見沙也、魚住華、金沢玲央、河合未来、熊沢花恋、小宮山愛華、里見海斗、須永賢、瀬尾雄大、立野寛人、辻本佑香、西崎颯真、花岡沙良、兵頭新、不破航大、堀部瑠奈、真壁翔、光永葵、水越涼音、柳本稔、結城美咲

 

教師(私立魁皇高校)
武智大和   - 田辺誠一   3年B組担任(数学担当)
森崎瑞希   - 堀田茜     3年C組担任(地理担当)
市村浩一   - ベンガル   校長
坪井勝     - 神尾佑   体育担当
佐久間現   - バッファロー吾郎A 3年の学年主任。

警察(瀬ヶ山署)
郡司真人   - 椎名桔平 生活安全課少年係の刑事
宮城遼一   - 細田善彦 生活安全課少年係の刑事
五十嵐徹   - 大友康平 捜査一課の理事官

その他
景山澪奈(かげやま れいな)- 上白石萌歌  自殺した生徒
相楽文香(さがらふみか) - 土村芳  一颯と交際していた元教師
相楽孝彦                    - 矢島健一 文香の父
喜志正臣    - 栄信  半グレ集団「ベルムズ」のリーダー

 


第一話 Day-1(1/6放送)視聴率10.2%
卒業まであと10日となった私立魁皇高校。3年A組の担任柊一颯が、生徒全員集まった教室で、皆を人質にすると言い出す。
隣接する教室が爆破され、教室はいくつかの準備室、トイレを含み隔離された。一颯は美術担当で生徒からは「ブッキー」と呼ばれるおとなしい印象の教師。
反発して攻撃する男子生徒は簡単に撃退される。
窓は特殊な鍵で開かず、強化ガラスのため割ることも出来ない。

爆発により他の生徒、教師は校庭に脱出。

 

一颯の通報で警察も来る騒ぎになった。手を出せば生徒が死ぬと警告する一颯。
一颯は、昨年自殺した同クラスの景山澪奈が、なぜ死ななければならなかった理由を考えさせる。
解答を要求される茅野さくら。間違えるとクラスの誰かが死ぬと言う。
澪奈は水泳でオリンピック候補にもなっており、さくらは勝手にファンとして追っかけをしていたが、ある時から澪奈の方から申し出て友達になる。
だがその後澪奈のドーピング疑惑がネットで流され、彼女はクラスから拒絶される。
気にしていなかったさくらだが、澪奈の方から「もう友達はやめる」と言われ、クラスの目もあって距離を取った。そして澪奈は自殺。

ドーピングはデマだった事がその後判明。
自責の念で「澪奈を殺したのは私」と涙を流すさくらに、その回答は間違いだと言う一颯。
男子たちが反抗する流れの中で、中尾蓮が胸を刺される。その体を美術準備室に運び込む一颯。


第二話 Day-2(1/13放送)視聴率10.6%
一夜が明ける。瀬ヶ山署の郡司は、一颯のプロフィールを知るために前任の高校を訪れる。その高校で女教師と交際していたが、彼のDVによりその女教師は辞めたという。
一方教室では、澪奈へのドーピング疑惑をネットに流した者「やりにげX」がこの中にいるから名乗り出よと言う一颯。今回も期限は夜8時。
一方DVを受けたという女教師・相楽文香の自宅を訪れる郡司。本人は出られず、父親の孝彦が応対した。昨日の校庭でその顔に見覚えがあった。一颯を「恐ろしい人間ですよ」と言う孝彦。
疑心暗鬼の中での探り合い。諏訪唯月が宇佐美香帆に、あんた以前澪奈と仲良かったと言う。反発する香帆。
期限となり顔を出す一颯。追い詰められる空気の中で、思わず「私がやりました」と言ってしまうさくら。だが掲示板へのログインパスワードを答えられず、あっさり脱落。
名乗り出なければまた誰かが死ぬという中で、香帆が「自分だ」と告白。ログインパスワードも正しかった。
澪奈と仲良くしていたが、それはSNSでのフォロー数稼ぎのためだった。だが澪奈がさくらと仲良くし、排除されたと逆恨み。
だが証拠とされる薬がバッグに入っているところと、澪奈が薬を飲んでいるところの動画までは作っていなかった。


第三話 Day-3(1/20放送)視聴率11.0%
一颯の要求により、おにぎり30個の差し入れを持って五十嵐が校内に入る。一颯が姿を現し銃を突き付ける。盗聴器を持っているだろうと言って出させてそれを踏み潰す一颯。
一颯の銃は水鉄砲。盗聴器を破壊してからは、二人とも旧知の話し方になる。五十嵐が自らに共犯者という言い方をする。
五十嵐の銃を手に入れる一颯。一発殴らせて戻る五十嵐。

 

教室では、動画を撮った者がこの中に居る、と一颯が言う。そしてその犯人探しを郡司刑事がやる様にと電話で伝え、動画を送る。
動画を撮った場所は水泳大会の会場。また撮った者は水泳部のジャージを着ており、対象者は絞られる。

水泳部員の熊沢花恋とマネージャーの真壁翔。熊沢は澪奈とライバル関係だった。真壁はかつて澪奈と交際していると誤解され、他校のリンチを受けて選手生命を絶たれていた。それを乗り越えてマネージャー

として澪奈を支えた。
水泳大会の時、ジャージを里見海斗に貸したと言う真壁。犯人は里見、熊沢のいずれか。
生徒の中に内通者がいて、LINEで外部と交信。郡司はそれを利用してジャージの袖に付いたシミ跡から犯人確定をしようとした。

 

期限の8時が近づき、郡司は内通者の情報を元に熊沢だと特定。シミ跡はトマトジュースの汚れを洗って落としたもの。だが熊沢はトマトジュースは飲んでおらず、ゼリーしか食べていない。実は内通者は一颯の協力者であり、嘘を教えた。
それで犯人は里見と判明。里見は澪奈に交際を申し込んで断られ、プライドを傷付けられた。そんな時にある者にそそのかされて動画を撮った。だがサプリメントの容器映像を加工して禁止薬物に見せかけたの

は別の人物。

郡司が間違えた事で、一颯は生徒五人を殺すと宣言。申し出た里見以外に瀬尾雄大、堀部瑠奈、西崎颯真、結城美咲。準備室に連れて行かれる五人。


第四話 Day-4(1/27放送)視聴率9.3%
殺すと言われて連れて行かれた五人は、梯子を下りて別の部屋に移動させられ、眠らされた。再び目覚めた時に、殺された筈の中尾が立っていた。

 

フェイク動画の話になってから急に静かになった甲斐隼人。甲斐が里見に動画を撮らせていた。だがその動画を加工するのは素人では無理。また夜8時までに答えを出せ、と一颯。出ない時は10人が死ぬ。
学校を訪れる子供二人。甲斐の弟妹。母親が寝たきりで、学校の誰かが面倒を見てくれると聞いて来た。

一方郡司は間違いを答えた事で捜査から外され、タレコミがあって引っ張って来た喜志正臣の取り調べを行って来た。ガールズバー経営。この辺りは半グレ集団「ベルムズ」の縄張り。知らないという喜志。
相楽文香がスマホを取り返しに郡司を訪れた。スマホを一颯との交信に流用していた。ベルムズの言葉に反応する文香。

 

甲斐の家に出向く坪井と森崎。母親が一年前交通事故に遭い脊髄を痛めて歩けなくなった。ダンスで世界一になるのが夢だった甲斐は、それを諦めバイトや家族の世話に明け暮れる毎日。

 

8時を前にして教室に戻る一颯。相手の名を言えない甲斐。
不良仲間に頼まれ、20万もらえるというので澪奈に会わせる手配をした甲斐。だが車で乗り付けた男たちに澪奈がさらわれそうになり、体を張って逃した。その事も知っていた一颯。
一颯と戦って負けたら話すと言う甲斐。それを受けて二人の戦いが始まる。一颯に倒される甲斐だが、家族が危険になるので言えない。
俺を信じろと言う一颯。他の男子も気持ちをぶつけ、とうとうその名を言う甲斐。
「ベルムズ」のリーダ「K」は喜志正臣。繋がっていた電話でそれが郡司にも伝わる。それを予測して一颯がタレコミをした?

喜志を連行してガールズバーにガサ入れする郡司。だがモヌケの空。部屋をくまなく探し、コンセントに仕込んだスイッチを見つけ、隠し扉の向こうのアジトを見つけ、中の者を検挙する郡司。抵抗した喜志も

手錠をかけられる。

生徒たちは殺されていない、と皆に伝えるさくら。美術室前まで行って、中尾の声を確認した。

逮捕された喜志正臣と同じペンダントを握りしめる諏訪唯月。

全てを話そう、と言った一颯が突然倒れる。

 


感想
どうにもメチャクチャな設定だが、話が進むにつれ「殺した」とされた生徒たちは生きており、また警察側の郡司、五十嵐とも一颯と繋がっている事が判明。第四話の様子では半グレ集団「ベルムズ」の摘発まで漕ぎ着けたので、この連中(もしくはその上の組織)の壊滅が目的か?

 

視聴率は、遅い時間帯の割りに10%台を出して健闘。ただ第四話でちょっと落ちたので、今後どうなるか微妙なところ・・・
田辺誠一が「エセカリスマ教師」として外しまくっているが、本当に不必要なキャラ。

 


ノスタルジア   1983年 イタリア、ソビエト

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監督 アンドレイ・タルコフスキー
脚本 アンドレイ・タルコフスキー、トニーノ・グエッラ

 

キャスト
アンドレイ・ゴルチャコフ  :オレーグ・ヤンコフスキー
ドメニコ            :エルランド・ヨセフソン
エウジュニア         :ドミツィアナ・ジョルダーノ
ゴルチャコフの妻      :パトリツィア・テレーノ

 

 

予告編

 

オープニング

 

あらすじ映像

 

 

 


感想
タルコフスキーの作品は他に「惑星ソラリス」しか観ていない。意思を持つ海が主題のため、水の表現に卓越したものを感じていた。

今回の作品はエンドクレジットで「母の思い出に捧ぐ」とあり、彼自身を描いている部分もあると思われるが・・・何せ長くて、何度か眠ってしまった・・・・

 

話の概要としては、ロシア作家のアンドレイが、女性の通訳を伴ってイタリアを取材旅行する間の出来事を描いたもの。
最初通訳のエウジュニアの透明な感じが好ましかったが、行動を辿るうちに、意外に愛される事に対する執着心が強くてびっくり。
胸をはだけてアンドレイを誘うシーンは、見事なバストに目を奪われたが、全く興奮しない。要するに聖人君子的なアンドレイの性分を判った上での行動なので、そう感じたのだろう。
このエウジュニアがアンドレイの妻と抱き合うシーンがあったが、あくまでもアンドレイの想像なのか。

 

最初は、自殺した音楽家サスノフスキーを取材するのが目的だったのが、温泉で知り合ったドメニコに興味を持つアンドレイ。家族を7年間も監禁したというドメニコの心の闇。
それがアンドレイと語り合う事で心が解放されたのだろうか。ローマでの三日間に亘る演説と、それに続く焼身自殺。
アンドレイもドメニコに依頼された苦行に意味を感じ、心臓に危険を抱えながらもそれに挑戦する。

ドメニコの家で、家の中になお降っていた雨は「惑星ソラリス」でも出て来た設定。また泉から続く水路を彷徨うところでの水の流れも「ソラリス」の冒頭で出て来た印象に繋がる。

 

とにかく水が美しい・・・・
水の記憶が、彼の幼少の頃と関係があるのだろう。

それから修道院廃墟での最後のシーンで、アンドレイの後ろに見える家は、冒頭に出て来た彼の生家。
そもそもあんな場所に建っている筈がないから、心象風景なのだろう。
これは「ソラリス」のエンドロールでも出て来た、海の中に作られた架空の世界に繋がるもの。

 

結局この映画は、あまり細かくストーリーを追うのではなく、霧の深い濃密な空気感、水の表現などを楽しむためのものだという事か。
交互に切り替わるカラーと白黒の表現も印象深い。

 


あらすじ
イタリア。霧の中を走る黒いワーゲン。車を止めて女が先に降りて絵を見に行った。男は行きたくないと言うが、車からは降りる。
男はロシアの作家アンドレイ・ゴルチャコフ。女は通訳のエウジュニア。

教会を訪れるエウジュニア。
子宝をお望みか、その逆か?と訊ねる堂守。どんな願いも叶うが、その前に跪きなさいと言われたが出来ないエウジュニア。
そこで行われる儀式。運ばれるロウソクとマリア像の神輿。
なぜ女性だけが神にすがるのか?と聞くエウジュニアに、女性の方が信仰心が強いから、と堂守。


女の役目は子を産み育てる・・・それだけ?  わからん。
離れて行くエウジュニア。

マリア像の胸が開かれ、多くの小鳥が飛び出した。

 

ホテルに着いた二人。

エウジュニアが読んでいるというアルセニー・タルコフスキーの翻訳詩集を「捨てろ」と言うアンドレイ。「詩は翻訳出来ない」
「トルストイ、プーシキン・・・・翻訳のおかげで世に出た」とエウジュニア。
奴隷になるのを承知で帰国した音楽家サスノフスキーの気持ちを聞くエウジュニアに、これを読め、とサスノフスキーが書いた手紙を渡すアンドレイ。

係の者に案内されて部屋に行く二人。エウジュニアは上の部屋。窓を開け、部屋をチェックして回るアンドレイ。聖書を開く。
部屋の外にエウジュニアが来て、モスクワの奥さんに二人とも電話していないと言う。相手をしないアンドレイ。

その後ベッドに横たわると眠ってしまうアンドレイ。いつの間にか雨が降り出した。妻の夢を見る。

 

エウジュニアの呼び声で目を覚ますアンドレイ。二人で近所の温泉に出掛けた。
妙な雰囲気のある男、ドメニコに出会う。温泉に入っている男女の話によればドメニコは、信仰心が高じて家族を七年間も閉じ込めていた。

ドメニコに興味を持ったアンドレイは、彼の住所を聞き出し、エウジュニアに頼んで話を聞こうとした。

だが相手にされない。ただ自転車を空漕ぎするドメニコ。直接対応しようとしないアンドレイに腹を立て、ローマに帰ると言って去ってしまうエウジュニア。
仕方なく自らドメニコに話しかけるアンドレイ。特に拒否もせず家の中に導くドメニコ。

家の中に流れるベートーベンの「喜びの歌」。赤ん坊の人形の写真。
ドメニコの言葉。一滴に一滴を足すと大きな一滴になる。二摘にはならない・・・・
男の家の中で、なお雨が降っている。点在する瓶に落ちる雨滴。壁に書かれた1+1=1の文字。
ドメニコに寄り添う愛犬のゾーイ。

ドメニコがワインとパンを差し出す。受け取るアンドレイ。
ドメニコは続ける。もっと大きく考えるべきだ。私はエゴイストだった。家族だけを助けようとした。
そして自分が行おうとしている苦行を説明。温泉の端から端までロウソクの火を灯して渡る。だが自分には出来ない。狂人として追い出される。
その苦行を引き受け、ロウソクを手にするアンドレイ。

 

ホテルに戻ると、彼の部屋にエウジュニアが居て、ベッドで髪を乾かしていた。自分の部屋が断水だったと言う。

ドメニコから渡されたロウソクを見せるアンドレイ。
なぜ何でも怖がるの?と胸を出して挑発するエウジュニア。だが相手をしないアンドレイ。
屈辱を感じて乱れるエウジュニアは、雑言を浴びせる。
「正気じゃない」と部屋を出ようとするアンドレイを追い「偽善者!」と叫ぶエウジュニア。そんな彼女の尻を叩いたアンドレイは、瞬間的に平手打ちの反撃を受けて鼻血を出す。
エウジュニアはローマに戻って行った。

 

幻影を見たり、泉を彷徨ったりするアンドレイ。出会った少女アンジェラに話しかけるが、イタリア語が下手だと自虐。「人生には満足よ」と返すアンジェラ。

 

 

詩集を燃やすアンドレイ。そこで目覚めた。父親の思い出。

一人で戻ったアンドレイにエウジュニアからの電話。

ドメニコが、あるイベントのためこちらに来ているという。まるでカストロ気取り。あなたが義務を果たしたかどうかを気にしていると伝える。
それを聞き、予定を変更してあの「ヴィニョーニ温泉」に戻ったアンドレイ。

 

カンピドリオ広場の、マルクス・アウレリウス像の上に立って演説をするドメニコ。
私の中で祖先が語る
頭と体の中に同時に生きるのは無理だ
故に一つの人格にはなれない
私は無数の事を同時に感じられる
現代の真の不幸は、偉大なる師はいない事だ
我らの心の道は影に覆われた
無用と思える声に耳を傾けよ
忙しい頭脳から、長い下水道管や学校の壁を外せ
アスファルトや福祉書類も要らん
昆虫のうなる音を頭脳に入れろ
皆の耳と目そ満たすのだ
大きな夢の始まりによって「ピラミッドを建てよう」と誰か叫べ
実際に建てなくてもいい。願いを育てるのだ
あらゆる意味で魂を広げるべきだ
果てしなく広がるシーツのように
もし諸君が進歩を望むなら、互いに手をつなげ
健やかな者と病める者を混ぜ合わせるのだ
健やかな者たちよ。その健やかさが何になる?
人類は絶壁を見ている。皆が転げ落ちる絶壁を
自由など要らん、諸君が我々を直視出来ないなら
共に飲み食い出来ないなら
共に眠れないのなら
健やかな者こそが世界を破滅へと導く
人間よ 従うのだ
お前の水の中に 火に、そして灰に従え
灰の中の骨に
骨と、灰に従え

街を放浪するアンドレイ。打ち捨てられた棚の扉を開いたところに、初老の男の姿(父?)。

 

ドメニコの演説は続く。
お前はどこだ?
現実にも空想の中にも存在しない。新しい契約だ
太陽は夜輝き、八月に雪が降る
強者は滅びる。弱者が生き延びる
バラバラになった社会は統一される
自然を観察すれば、生命は単純だと分かる
原点へ戻るべきだ
誤った道へ迷い込んだ あの地点へ
根源的な生活に戻るべきだ
水を汚さずに 何という世の中だ
病める私が言うのだ 「恥を知れ」と
さあ 音楽だ

周りの者が準備を始める。男がドメニコに四角い缶を渡す。

言い忘れた。
母よ 母よ 大気とは軽やかなもの
頭の周りを巡るもの
あなたが笑えば さらに輝く

 

そして油を頭からかぶるドメニコ。
ゾーイが心配そうに立ち上がり、小さく吠える。
手にしたライターで火を点けるドメニコ。。
駆け付けるエウジュニアと警官。
像から落ち、背中を火に包まれながら歩くが、その先て倒れ、動かなくなったドメニコ。

 

温泉に戻ったアンドレイ。湯は抜かれており、清掃の者がゴミを拾っている。
その場所に降り立ってポケットからロウソクを出し、ライターで火を点ける。端の壁に触れてから歩き出す。炎が消えないように手をかざしてそろそろと歩く。

だが火が途中で消える。しばらくしてまた元の場所に戻り、火を点けて壁に触れ、また歩き出す。次はコートの裾を開いて風よけにした。


風よけも途中でやめ、前回よりは進んだと思われる所で再び火が消える。茫然と立ちすくむアンドレイ。だが気を取り直し、再び湯船の端へ。
ロウソクに火を付け、また壁に触れてから歩き出す。
とうとう湯船の端までたどり着いた。端の棚部にロウを落としてロウソクを固定する。

その場に倒れるアンドレイ。送迎のタクシー運転手や周りの者が駆け付ける。

 

屋根のない、礼拝堂の廃墟。その中央で半身を起こしたアンドレイがこちらを見ている。動かない。
カメラが次第に引いて行き、姿が小さくなって行く。

そして雪が降り出した。

 

エンドクレジット
「母の思い出に捧ぐ -アンドレイ・タルコフスキー-」

 

 

 

 

歴史秘話ヒストリア 「ぼくはアニメの虫 手塚治虫がやりたかったこと」 NHK 1/16放送

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番組詳報

 

概要
ニッポンのアニメの市場規模は2兆。

鉄腕アトムは日本初の連続長編TVアニメ。
現在は第四次アニメブーム(君の名は、この世界の片隅に)。第三次は「新世紀エヴァンゲリオン」。第二次は「宇宙戦艦ヤマト」。

そして最初のブームは「鉄腕アトム」。


自らスタジオ(虫プロダクション)を作って取り組んだ手塚。

1928年生まれの手塚治。マンガと同時期にアニメにも魅せられていた(ディズニーアニメ)。
手回しの映写機から動画の原理を理解(1コマづつの連続)。家にある本でパラパラ漫画を描きまくった。

「白雪姫」50回、「バンビ」80回観て、全てのシーンを記憶。
元々マンガ家になったのは、金を貯めてアニメを作るため。

 

1963年から放送された「鉄腕アトム」。まともに行けば30分の番組で一万枚以上の絵が必要。手塚の秘策→リミテッドアニメーション。口だけ動かす。バンクシステム→以前使った画像の使い回し。
1965年「ジャングル大帝」でカラーTVアニメを制作し大ヒット。
それ以降はTVアニメの戦国時代。
流行の多様化に対応出来ず、虫プロは1973年に倒産。

 

手塚が負債を完済し、アニメの世界に戻ったのは1984年。

短編アニメ「ジャンピング」で受賞。


仕事場にはアニメとマンガそれぞれ専用の机があったという。

 

晩年の総決算として「森の伝説」に取り組むが、作業半ばで病に倒れ1989年に亡くなった。

 

 

感想
手塚治虫がアニメに力を入れていたのは知っていたが、アニメを作るためにマンガ家になったというほどのものだったとは・・・・
彼の享年は60歳。胃がんだったという。大好きなアニメのために負債を抱え、それを完済したわずか5年後に他界。

本当に無念だっただろう。
彼の作品を一作でも多く目にしてやるのが供養、だな。

 

 

グラン・トリノ   2008年

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監督 クリント・イーストウッド
脚本 ニック・シェンク
原案 デヴィッド・ジョハンソン

 

キャスト
ウォルト・コワルスキー   - クリント・イーストウッド
タオ・ロー           - ビー・ヴァン
スー・ロー           - アーニー・ハー            : タオの姉
ヤノビッチ神父      - クリストファー・カーリー
ミッチ・コワルスキー   - ブライアン・ヘイリー: コワルスキーの長男
スティーブ・コワルスキー  - ブライアン・ホウ: コワルスキーの次男
カレン・コワルスキー    - ジェラルディン・ヒューズ  : ミッチの妻
アシュリー・コワルスキー  - ドリーマ・ウォーカー      : ミッチの娘
マーティン           - ジョン・キャロル・リンチ  : 床屋

トレイ            - スコット・リーヴス :スーと一緒にいた少年

 

 

予告編

 

感想
クリント・イーストウッド監督作品は昨年「15時17分、パリ行き」を観ている。
今回は「旧き良きアメリカ」が体じゅうから滲み出している男の、生きざま(死にざま)を描いた映画。
とにかく口の悪いジジイ。行きつけの床屋のオヤジとも、まるでケンカをしている様な会話。そんなとんでもない爺さんが、隣に越して来た家族(中でもスー)との会話の中で次第に変わって行く。
このスーがいい。ウォルトから相当キツい事を言われても軽くいなし、うまく褒めて自分のペースに持ち込んで行く。
ただ、黒人のチンピラへの態度は、ウォルトもビックリの激しいもの。

 

最初は人とも思っていなかったタオの事を次第に見直し、何とか身が立つようにしてやろうと肩入れして行く過程が、何か涙が出そうなぐらい切なかった。
本来なら、息子たちに伝えるのが理想だったのだろうが、結局それは叶わず、最後の懺悔でも神父に告白している。
だがそうやって親密になった彼らを守るつもりで、チンピラギャングをちょっと脅した。ウォルトにとっては、今までそれほど疑問にも感じずにやって来た警告なのだろう。
指で「バーン」とやるポーズと、その後で本当に銃を抜いて脅す姿の重複。銃を、威嚇するものとして全く疑いなく使ってしまう感覚(指バーンは「狼よさらば」でもやってたな・・・)

だがギャングたちの報復を受けて、深く後悔するウォルト。脅しが通用しないと判った時点で、力ではどうしようもないという事を、身を以て知る。要するに戦争も同じ。

 

最終シーンに至るまでに何度となく繰り返される、左胸に手を入れる仕草。どう考えたってダーティハリーの延長だから、あの場面でも当然銃が出て来るものと思ったら、そこにはジッポーライター。
はっきり言って殺され損。だがあの姉弟を守るために、最も有効な手段として決行した。

命まで賭けることはなかった。子供、孫も居て。

だが妻に先立たれ、健康不安も募る。
そんな事とは別にタオに対する思い。あれほどタオの事を「トロ助」などと蔑称で呼んでいたのが、最後には「誇らしい友達だ」と言った。

旧き良き時代の最後の車「グラン・トリノ」と、ウォルトの姿を重ね合わせた映画。
いろいろと説教じみた読み解き方もあるだろうが、最後に出来た若き友達のために死んだ男の話、だと考える。

 


あらすじ
50年連れ添った、妻ドロシーの葬儀。喪主のウォルト・コワルスキーに次々と挨拶する弔問客。孫娘のカレンはへそ出しルックでウォルトをイラつかせる。
死とは何でしょう・・・・神によって救われます、というヤノビッチ神父の決まり文句にも渋い顔のウォルト。

ガレージでタバコを吸っているところを見つかる孫のアシュリー。おじいちゃん死んだらこの車どうなるの?と聞く孫娘に絶句のウォルト。

車は'72年式の「グラン・トリノ」


そんなところへ、隣に越して来たというアジア系の少年が、ジャンプケーブルを貸して欲しいと訪れる。

喪中だ、と追い返すウォルト。

葬式後の会食。盛大だね、と言う息子に、うまいハムがあると聞いたからだろう、と言い捨てるウォルト。
ヤノビッチ神父が話しかけて来る。ウォルトと言う呼び方に「コワルスキーだ」と反発。神父は亡き妻から、夫を懺悔させて欲しいと頼まれていた。教会はあまり好きじゃない、新米の神父に懺悔するつもりはない、と剣もほろろ。
帰って行く息子の家族。車はトヨタのランクル。

 

ウォルトの家に行った少年が道を歩いていると、アメ車に乗った黒人の若者たちが声をかけて嫌がらせ。


そこに日本車に乗ったアジア系の若者らが近づいて、追い払う。少年の名はタオ。若者の一人はタオの従弟のフォン(スパイダーの刺青)。
守ってやるから仲間に入れ、との押し付け。

タオはおとなしく、家の手伝いをしている様な男。


押し切られる形で「何すりゃいいんだ?」
隣にすごい車があるだろう(’72年型グラン・トリノ)。新車同様だ。

 

退役軍人クラブで旧友と飲んでいるウォルト。そこに訪れる神父。

再び奥さんとの約束(懺悔)の話。生と死について話し始める神父に「一体生と死の何を知ってる」と言い返すウォルト。
死については、朝鮮で三年近く戦った。多くの兵、市民を殺した。死ぬまで忘れない。
生については、生き残って結婚し、子供を作った。
生より死に詳しいようですね、と力なく言う神父。

夜中に、物音で目を覚ますウォルト。「ふざけやがって」とライフルを持ってガレージに飛んで行く。そこに居たのはタオ。銃を構えたが、撃つことはせず、タオは逃げて行った。

 

翌日、タオを連れて姉のスーがウォルトを訪ねて来た。母親たちが花や食べ物も持って来る。


先日タオを助けてくれたお礼だと言う。あなたは町の英雄だ、とも。
それに加えてタオが車を盗もうとした事を謝罪した。

「もう一度忍び込んだら終わりだぞ」

近所の床屋に行くウォルト。イタリア野郎と罵るウォルトに、ポーランド野郎と返すマーティン。口は悪いが昔からの親友。

 

ボーイフレンドのトレイと一緒に道を歩くスー。黒人の若者が数人居る前を通り過ぎる時、トレイが彼らに「やーブラザー」とタメ口を利き、絡まれる。通りかかってその様子を遠くから見ているウォルト。
スーも強気で言い返しているうちに、相手に手を掴まれる。
そろそろ危ないと感じたウォルトが、トラックを横付けにして仲裁に入る。銃を抜いて相手を威嚇しながらスーを取り返すウォルト。一緒に居たトレイは逃げて行った。
強気のスーに「何考えてる」とたしなめるウォルトは、なぜこの街に越して来たのか、と聞く。


彼女らはモン族。これはベトナム戦争のせい。家は教会が世話してくれた。
君はまともだが、弟はボーっとしている、と言うとスーは「女は適応して大学にも行けるけど、男は刑務所に入る」

 

ウォルトの誕生日に息子夫婦が来てプレゼントをするが、集団生活の出来るホームの紹介などされてるうちに行き違い、追い返してしまう。

スーが来て、家でやっているパーティーに誘う。最初は断るが、ビールもあると聞いて付いて行くウォルト。
かなりの違和感を感じるウォルトに、モン族の頭を触ってはいけない、相手と目を合わせるのは失礼、などのルールを教えるスー。慣れるに従い、皿に食べ物を盛ってくれる人も現れて、機嫌が良くなるウォルト。

 

スーが、まじない師に見てもらったら?と誘い、言われるままに受けると、みんなあなたを尊敬していない、から始まってさんざんな言われ方。幸せもなく、安らぎもないとまで言われて落ち込む。
咳をして、少し血が出たのをスーが見て「大丈夫?」と声をかける。
別室の、若者たちが話す場に連れて行かれるウォルト。そこでタオが若い娘ユアに好意を持っている事を素早く悟るウォルト。彼女が若者たちに連れられて出て行ってしまうとタオに、女とは口もきけないトロ

助だと挑発。

 

翌日、またスーたちが来る。今度はタオの償いをさせたいと言う。車を盗もうなどとは一族の恥。
こいつを家に入れたくないと拒むウォルトに、受け入れてもらわないと困る、とスー。モン族の女は強情だ。
考える事があって「明日よこせ」と返すウォルト。

翌日来たタオに、向かいの家の修理をさせるウォルト。

最初は要領が悪かったが、誠実に仕事をこなして行く姿をじっと見つめ、タオを見直す。
家の修理が終わると、タオが自分の家の水道を直して欲しいと頼んで来る。それを直してやるウォルトだが、暑いと言って回させたシーリング・ファンがこれまた不調。
ガレージでそのファンを直すのを見て、工具の多さに仰天するタオ。

自分にはこんなに揃えられないと言うタオに、これだけ揃えるのに50年かかった、と言い、まずこの三つから始めれば、家の大抵の事は何

とかなる、と潤滑スプレー、バイスクリップ(広口ペンチ)、ダクトテープを渡す。

また血を吐くウォルト。すぐ病院に行かなきゃ、と言うタオに何ともない、と返すウォルト。

 

タオにつきまとう男らの事を聞く。モン族のストリートギャング。先日仲間に入れるための儀式に失敗した。そのテストが車を盗むことだった。

タオに手伝わせて地下室からフリーザーを持ち出すウォルト。60ドルで売るというウォルトに、タオが家のが壊れていると言うと「お前の家なら25ドルで売ってやる」
グラン・トリノの洗車をタオにやらせるウォルトを見て、スーが「感謝している」と言った。タオには今まで手本になる人が居なかった。あなたはいい人。
タバコは止めた方がいいと言うスーを無視するウォルトに「少しは言うことを聞いたら」

ジッポーライターのエンブレムの事を聞くタオに「第一騎兵師団のものだ」
大きくなったら何になりたい?との問いにセールスをやりたい、とタオ。
50年フォードにいた。あの車の一部も俺が作った。息子は日本車に乗ってる。
さっさと働くことだ。建築の仕事ならある、と言い、まず男の自己紹介のやり方を教えるため、床屋へ連れて行く。
店に入った時に言うまくら言葉などなど。

そこそこの対応に喜ぶウォルト。
建設業をしている、友人のティムのところへタオを連れて行くウォルト。来週から働く話をつけた。
工具屋で必要なものを買ってやるウォルト。

 

仕事の帰りに、例の従弟のギャングに襲われるタオ。工具は壊され、頬にタバコを押し付けられた。
タオの顔の跡を見咎めるウォルト。おとといやられた。工具壊された。激怒するウォルトに、何もして欲しくない、とタオ。
ギャングの居所を突き止め、太った男が一人残ったところに乗り込み、相手をさんざん殴った後、相手に銃を突き付けて、今度タオたちに手を出したら殺す、と警告するウォルト。

家の前で小パーティー。ユアと親しくなっているタオ。デートはバスだと言うタオに、自分のグラン・トリノを貸してやる、とウォルト。

 

その夜、例のギャングがタオの家を銃撃した。負傷したタオ。ウォルトが駆け付けると、スーがいない。

スーは暴行されて家の前に捨てられた。
自分を責めて涙を流すウォルト。神父が駆け付ける。スーを病院に連れて行ってくれた。


復讐したい、私も頭に来てる。ビールを飲むか、と勧めるウォルトは、神父に「ウォルトと呼べ」と言った。
どうします?と言う神父に「何か考える。あの連中は許さない」

 

復讐に燃えるタオが「何してる!考えている時間はない」と煽る姿に「作戦を練る。信じて任せろ。夕方4時に来い」と言って家に帰す。
床屋に行って散髪を頼むウォルト。いつもの会話。だが今まで一度も頼んだ事のない顔剃りを頼んだのに驚くマーティン。
次に教会へ行き、神父に懺悔をする。三つの罪を犯した。’68年に他の女にキスした。900ドル儲けたのを申告しなかった。二人の息子とうまくつき合えなかった。 あなたの罪を許します、と神父。
「スーの復讐をするつもりですか?」と神父。そんなつもりはない、との返事に「心安らかに」

 

4時になり、タオが来る、地下室に案内し、用意した銃を見せる。ライフルを持って「これで撃つ?」と聞くと「今回は使わない」
朝鮮で何人殺したの?との質問に「少なくとも13人」。
そんな話をしている時に、ウォルトはタオを部屋に残したままドアに鍵をかけた。そして、お前は立派になった、俺にとって誇らしい友達だ、と続ける。最後に「お前が重荷を背負うな。俺が決着をつける」
犬のデイジーをタオの祖母に預けるウォルト。
スーに電話をかけるウォルト。顔の傷跡も痛々しいスー。タオが地下室に居ると教える。
神父が心配して、ギャングの家の前で警官を待たせていたが、相手をして居られない、と夕方には帰ってしまう。

 

ギャングのアジトの前に立つウォルト。

 

それに気付いて出て来る男たち。タオじゃないのか、と言う男たちに挑発する言葉をぶつけるウォルト。相手も銃を抜き、銃撃戦が始まろうとしていた。近所の人たちも注目している。
ウォルトが上着の左に手を差し入れた時、男たちが一斉に発砲。ウォルトは多数の銃弾を胸に受けて倒れる。
彼が手にしていたのは例のジッポー。

 

スーに部屋から出してもらい、現場に走ったタオ。ウォルトはシートを掛けられていた。警官の話では、彼は一切武器を持っておらず、ギャング達は長期刑を免れないとの事。

ウォルトの葬儀。管財人の話す遺産の処置。建物は市に寄付、車(グラン・トリノ)は隣人のタオ・ローに譲る、となっていた。

落胆する息子の妻。

 

グラン・トリノに乗って海岸線を走るタオの姿。走り去って行く車。

 

 

新聞小説 「ひこばえ」 (11) 重松 清

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新聞小説 「ひこばえ」(11)  1/14(220)~2/8(245)
作:重松 清  画:川上 和生

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第十章 迷って、惑って  1~26
父のアパートの大家だった川端さんから、三日後の六月二日に四十九日の法要を行うとの電話があった。

何も動かない洋一郎に業を煮やして決めた。直前での連絡も、断る口実を与えるため。だがその日(土曜)は何も予定がない。

この地での納骨のしきたりについて聞くが、意図を察して、それは急がなくていいと言う川端さん。

 

家でその話をすると、意外にも妻の夏子が一緒に行ってもいいと言う。最初はトラブルに巻き込まれるのを避ける気持ちだったが、遼星が生まれてから血の繋がりについての意識が生まれたという。

 

その上、息子の航太までもが行くと言い出した。骨壺だけでも見たいとの事。備後の隆さんが本当のおじいちゃんでない事を彼に話したのは、小学校の高学年辺り。以後、その話をする様な事はなかったが、隆さんに対する態度が少しよそよそしくなった。
今、孫が出来た自分の立場だと、隆さんの寂しさがよく判る。
航太も、遼星が生まれた事で意識が変わったと言った。

また今年からクラス担任となった航太は、仕事はきつくなったが今の方が楽しいという。
生徒は毎年入れ替わるが、教師は毎年歳を取る。それで常に若々しくなれる人と、却って年齢を感じて老け込む場合の二通りある、とは先輩教師の話。

そんな話で佐山と、十五歳で亡くなった息子の芳雄君を思い出す洋一郎。五十半ばで終の棲家を探す佐山。

お父さんの仕事は僕らと逆だね、と言われて今抱えている課題を思い出す洋一郎。

 

翌日は、施設の常勤スタッフが一堂に集まる月次ケア・カンファレンス。910号室の後藤さんに関する問題が噴出。本人がよかれと思って言うねぎらい、励ましが相手を傷付ける。卑屈な言動が、結果的に相手の仕事の内容を貶めているのに気付いていない。
クリニックで胃薬をもらう時にも看護師をイラ付かせる。


清掃の担当からはもっと現実的な問題。普通は見栄もあり、部屋へ清掃に入る前は多少整える人がほとんどだが、後藤さんは古新聞、雑誌、空き缶等も布団に置きっぱなし、パンツも脱ぎ捨て。
下着は臭くて、多分何日も使っている感じ。そして調理台から溢れそうな缶チューハイの空き缶。
食堂で騒ぎを起こした後に、後藤さんが謝りに来た。必要以上にへり下り、息子への連絡を気にする。大丈夫、ととりなした後にゴミ出しをキチンとする約束もした。それが僅か一週間で、より悪化。


カンファレンスの後、本多君との話。息子さんに連絡した方がいい、と言う本多君に、あとでゆっくり話してみますと返す洋一郎。
外出している事を確認して帰りを待つ。本多君の推理では午後散歩に出たついでにチューハイを買って帰る。実際その通りだった。

 

ちょっと話がある、との言葉に警戒する後藤さん。ファミレスでも酒は飲める、との言葉に喜び、自分で店を選んで向かった。
店に入って早速チューハイを注文した後藤さんは、乾杯してすぐ半分を空にした。
本題にはいろうとする前に、ご自慢の息子さんですねと水を向けると、私は足手まといなだけだと言う後藤さん。
口止めをした上で、自分の家をゴミ屋敷にしそうになった話を始める。
ニュース番組で取り上げられて騒ぎになり、息子に叱られた。この施設の世話になる原因。
普通の建売住宅。奥さんが生きているうちはきれいにしていたが、五年前に奥さんが六十三歳で心不全により突然他界してから「ぽかーん」としているうちにゴミが溜まってしまった。


とりあえずのつもりで庭にゴミを出しているうちにどんどん溜まり、近所で問題になった。
その間にもチューハイのお代わりをする後藤さん。

三杯空にして追加で二杯。
そして、タバコを吸いに時々中座。この席は禁煙。ハーヴェスト多摩でも部屋は禁煙だが、酒飲みはルーズになるから今後注意が必要。

気が重いことに後藤さんの銘柄は、父が喫っていたハイライト。

 

店を出てから、ご機嫌の後藤さんに、タバコによる火事の危険性を諄々と説く洋一郎。だが逆に、年配の住人の仏壇のロウソクについて問う後藤さん。仏壇の事まで住人には口うるさく言っていない。
後藤さんは、妻の位牌を息子が持っているので手を合わせられず、線香やロウソクの心配はないと言った。
後藤さんとロビーで別れ、徒労感でベンチに座る洋一郎。

後藤さんの背中が父に重なった。理屈ではない。

施設で疎んじられる後藤さんと、周囲に迷惑をかけ通しだった父。


心配して本多君が顔を出す。後藤さんへの話の状況を聞かれるが、説得出来た自信はない。
後藤さんは、息子さんの自慢はしても奥さんの話は全然しませんね、と本多君。

後藤さんの息子さんへの連絡を考え始める洋一郎。大手町案件でもあり、ヤブヘビの危険もある。五年ほど前、着任間もない洋一郎が介入して、クビ寸前まで追い込まれた事があった。

だが今はスタッフもどうすべきか判断出来ない「迷って、惑う」状態。

そんな時に煙感知器の警報が鳴った。「901号室です!」

 

部屋でしょげている後藤さん。酔ってご機嫌になっていた後藤さんは追加でチューハイを飲み、喫煙コーナーまで行くのが面倒となり、部屋でタバコを喫った。


更に、天井の煙感知器を見ているうちに、故障していたら困ると思って、タバコを近づけた。だが鳴らない。
座卓に上って更に近づけた。どうしてこういう所だけマメになるのか。
「鳴りました、やっと」と笑みを浮かべる後藤さん。
息子さんに電話をかけるしかないな、と覚悟を決める洋一郎。

 

 

感想
妻の夏子、息子の航太が父の四十九日に出席してくれるという驚き。それは遼星が生まれた事で感じた人の絆によるもの。
そして件の後藤さん。ルーズさの原因が、奥さんの急死にあった事が明らかになる。ウチも基本的な家事は妻任せ(自分がやるのは風呂そうじぐらいか・・・)。だからこれはまさに「他山の石」。
しかし自宅でもゴミ屋敷になりかけていたとは。息子が金をかけてトラブル封じ込めに走ったという図式が見えて来る。

 

しかし酔いが回って、煙感知器の動作が気になるなんて、お茶目な後藤さん(爆)

 

 

七つの会議(映画)  2019年

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小説はコチラ

 

監督 福澤克雄
脚本 丑尾健太郎、李正美
原作 池井戸潤『七つの会議』

 

キャスト
東京建電
宮野和広    :橋爪功     社長
村西京助    :世良公則    副社長
北川誠     :香川照之   営業部長
坂戸宣彦   :片岡愛之助 営業一課長
新田雄介    :藤森慎吾   営業一課長代理 優衣と不倫
八角民夫   :野村萬斎   営業一課係長
浜本優衣   :朝倉あき    営業一課員   新田と不倫
原島万二   :及川光博   営業二課長
飯山高実   :春風亭昇太  経理部長
加茂田久司 :勝村政信    経理部経理課長
佐野健一郎 :岡田浩暉      カスタマー室長
奈倉翔平   :小泉孝太郎  商品開発部員


ゼノックス
梨田元就    :鹿賀丈史   常務
徳山郁夫    :北大路欣也 社長
田部       :木下ほうか  副社長

その他
江木恒彦    :立川談春  トーメイテック社長
三沢逸郎   :音尾琢真  ねじ六社長
三沢奈々子 :土屋太鳳  三沢逸郎の妹
淑子       :吉田羊    八角の元妻
星野       :溝端淳平  若き八角が営業を行った老夫婦の息子
捜査官     :役所広司  

 

 

予告編


感想
直前に原作を読んだので、ストーリーそのものを楽しむ喜びは放棄。
まあ、以後ツッコミだらけになってしまうが、内容盛りだくさんの原作に対して、良く頑張って押し込んだナーという感想。
だから原作を全く知らずに観た人は、怒涛のような出演者の数に混乱したかも知れない。ただそのサポートのため、主要出演者の所属と名前がその都度画面に出たのは、多少興醒めでもあり、有り難くもあり、

といったところだろうか。

異なる部分について
原作では、原島は初期段階で八角から事件の真相を知らされ、対策メンバーとしてねじ六への再転注を行うが、映画では八角が行っている。
映画での原島は、基本的に強度偽装の事は知らず、浜本優衣とタッグを組んで真相に近づいて行くのが、映画の手法としては好ましいと思えた。それに伴い、トーメイテックのネジを手に入れる場面も、佐野から原島に変わっているが、まあ許容範囲。

ただ製造に使用した部品が、あんな風にでかい箱に入っているという事はない。部品単位でせいぜい10~20cm程度の小箱に入っている筈。この辺りはNHKで放送されたものの方がリアリティがあった。

原作では、八角は離婚していないが、自分の犯した罪に苦しんだという事の結果で離婚を持って来たのは、それはそれで評価。

吉田羊は良かった。
ただ、初めの方の八角が「ウヒョヒョ・・」的な雰囲気でちょっとやりすぎ。観客サービスかも知れないが、映画の格が落ちた。

 

終盤で、捜査官に促されて独白めいた持論を八角が語るが、蛇足感満載。
原作では以下として簡潔に締めくくり。
 虚飾の繁栄か、真実の清貧か--強度偽装に気付いた時、八角が

  選んだのは後者だった。
 後悔はしていない。どんな道にも、将来を開く扉はきっとあるはずだ。

 

結局八角は、他に何も求めず自分の価値判断で行動を起こした。だからそもそも説教くさい事を言う筈がない。この辺が、小説の本質をちょっと間違えたかな、という感じ。
武士道まで引っぱり出して・・・・この脚本家の思い入れ方がちょっとカンに障る。

 

それにしても豪華なキャスト。ゼノックス社長の北大路欣也が画面に出ると、やっぱりグッと締まる。その顔で「公表するとは言っていない」だからなぁ・・・
それに引き換え終盤で出て来た捜査官役の、役所広司のしたり顔。

出るのがほんの少しだから爪跡残してやろうという下心ミエミエで、かなり気分悪かった。サプライズのつもりだろうが逆効果。

 

オマケ
原作では親会社の名前が「ソニック」。某メーカをイメージするという事で改名したのかも知れないが、映画の中ではどうしても「ゼロックス」としか聞こえない(どうせ変えるならちゃんとやれ!)。

この会社の会議室や廊下が重厚すぎる。要するに子会社なんだから、それほどの老舗感を出す必要はない筈。

この辺りの違和感が気になった。

 

原作でも映画でも、ねじメーカの選定に対し営業部が強すぎると感じていたが、最近起きている制振ダンパーの偽装なんか、自社で検査データまでニセもの作ってるし(設計、品証部が関与)、完全にフィクションを越えているから、ほとんど気にならなくなった・・・

 

主題歌としてボブ・ディラン の“Make You Feel My Love”が設定されているが、終盤でセリフのバックに小さく流れるだけであり、さすがに「それはないだろう」
本編より予告編の方がキチンと聴ける。バカな話・・・・

 

 


あらすじ(完全ネタバレです)
総合企業ゼノックスの子会社「東京建電」の大会議室。
営業二課長の原島が北川部長から業績不振を責められる。一方営業一課長の坂戸は連続のノルマ達成で褒められる。
だがその会議で居眠りをしている一課係長の八角。坂戸がいきり立つが、北川は相手をせずに営業会議は終了。
それ以来坂戸の、八角への風当たりが強くなり、坂戸の「死ねば?」の言葉に「このおとしまえ、キッチリ付ける」と八角。


相手にされないだろうとの予想に対し、人事部付に移動した坂戸。

後任は原島。

 

それ以降、北川に怒鳴られ続ける原島。

会議の席上で転んだ拍子に椅子がつぶれる。


原島に同情的な浜本優衣は、近々退職するが、試験的に社内での無人ドーナツ販売を提案して実行している。だが金を払わない者の散発で悩んでいる。八角が怪しいと言う浜本に、少し興味を持ち彼の経歴を調べる原島。北川と同期。入社後、同期トップで係長になったが、その後延々と最低評価で進級なし。

 

いつも営業と対立している経理。新田が営業部を叩くネタとして10万超の接待費を見つけ、八角に文句をつけに行く。相手は「ねじ六」というネジメーカ。新規発注先だと言い、新田を言い負かす八角。
本気でねじ六を調べ始める新田。

ねじ六を訪ねて一旦発注を止めたネジの再発注を申し出る八角。社長の三沢逸郎は、以前坂戸から厳しいコストダウンを要求された上に取引き中止に遭っていた。


八角が置いて行ったネジを引張試験機にかけると、思いの外低い値で破断したのに驚く逸郎。

新田の調べで3週間前からねじをトーメイテックからねじ六に転注した事が判明。それに伴い毎月90万の出費増。

 

ゼノックスの常務梨田が訪れ、自社の型落ち冷蔵庫10万台の押し込み交渉。

 

対応した副社長の村西は、4年前まで梨田と出世競争をしたが、破れて子会社へ出向。
応接室で北川に八角が話している。「妙な連中が探りを入れてる」

 

経理部が動き出して、ねじ六への転注を会議で問題視した。意外にもそれを擁護する北川。それに社長の宮野も賛同し、経理が無駄な事をしたとされた。責められる新田。
その話を聞いて驚く原島に、いい話があるとカスタマー室長の佐野が後で来いと話しかけた。


一発逆転、あとは証拠を集めるだけ。
リストを手に外出しようとした佐野の前に八角。「面白いリストがあるそうだな?」
その後すぐ、佐野の移動の発表。

 

坂戸はあの移動以降出社していない。真相を知るために坂戸の自宅を訪ねる原島と浜本。自宅には坂戸の兄がいたが、本人は不在。兄は東京中央銀行本部の次長。坂戸にも負けられない事情があった。
坂戸更迭にはパワハラ以外の理由があると確信した原島。これ以上立ち入ると、大事な権利を失う事になる。知らないうちが花、と八角の警告。
新田がトーメイテックにまで押しかけたと、社長の江木が北川に連絡する。一方ドーナツ泥はまだ続いていた。八角が、発生するのはいつも水曜の夜だとアドバイス。
原島と一緒に張り込みをする浜本。犯人は新田だった。毎週行われる役員会議のための資料作りで遅くなる。言い訳する新田を斬り捨てる浜本。


新田が東北営業所に移動。ドーナツ泥と社内不倫。上司から「クビにしたいぐらいだ」と罵られる新田。

八角さんはあやしいと言う浜本に、恐怖を感じた原島は「ここまでにしよう」と言うが、退職を前に「この会社に何かが起きている」と燃える浜本。

 

結局八角を尾行する原島と浜本。野球場に行く八角。その後ホームセンターへ。自社製品の折り畳み椅子「セルーラ」を手に取っている。自課の取り扱っている製品。
そしてレストランに入り相手の女性に金を渡す八角。今は独身だが、かつて結婚していた。
「20年も自分を罰しているわけ?」と言った女性。
八角が女性と別れたため、原島は八角、浜本は女性を追った。
八角の住所「ロイヤルパレス」が、収賄でさぞ豪華なところと思っていたが、驚くほどの安宿。

 

会社で浜本と話す原島。昨日八角が見ていた自社の椅子「セルーラ」。会議室で使っていたものを総入れ替えしたと言う浜本。それは原島が潰して以後の話。

そういえばあの時の北川と八角の恐ろしい形相。
カスタマー室で「セルーラ」のクレーム情報を集める原島。既に佐野が調べていた。クレームはここ二年に集中。ネジのメーカをトーメイテックにしてから。不良品のネジ。これを隠していたとの仮説。証拠が必要。

 

原島の不在に気付く八角。聞くと浜本と外回りに出たという。社用携帯のGPSで追跡される原島。
自社の製造工場に出向いた原島と浜本。工場責任者にネジのサンプルが欲しいと頼む。部品倉庫でトーメイテック製のネジ探し。
そこに八角が乗り込む。危ういところで脱出する二人。数種類のネジを持ち帰る事が出来た。
検査部門に行き、奈倉に引張試験を頼む原島。対象の「セルラー」用ネジの必要強度は14kN。だが現物は7kNしかなかった。
奈倉が言う。他のネジでも問題あれば折り畳み椅子どころではない。航空機、列車・・・
そこに顔を出した八角。逃げる奈倉。八角が航空機椅子用のネジを試験機にセットする。必要強度は130kN。だがその半分で破断した。もしリコールすれば二千億の損失。
経緯を話す八角。二ケ月前に椅子が壊れたのに気付き、専門機関でネジを調べた。北川に話し、その後宮野社長に呼ばれ、坂戸をパワハラ名目でラインから外す指示が出る。村西には知らせるな(ゼノックスに筒抜けになる)。対応にに二ケ月。坂戸の隔離、メーカ変更調査・・・それも今日で終了。明日リコールをかけて片がつく。

 

社長室で話し合う宮野、北川と人事部長。坂戸はホテルに閉じ込め新田、佐野は飛ばした。人事を盾にすれば逆らう奴はいない、と北川。
「本当に恐いのは、出世に興味のない人間だ」と宮野。
そこに訪れる八角。今日のリコール公表を信じていた。
だが宮野社長の指示は「この件、隠蔽する」 責任を他に全て押し付けて逃げる宮野。
もう手は打った、と北川(ヤミ改修)。
「俺をだましたのか!」と北川に詰め寄る八角。20年前から何も変わっていない、犬だな。

 

八角の有休届けを確認する原島。八角の社用携帯のGPSを追って田んぼの中の墓に辿り着く原島と浜本。
昔、俺が殺した、と言う八角。20年前、当時ゼノックスから出向していた梨田の下で無茶なノルマを課せられていた。老夫婦にユニットバスを売ったが、それを苦に旦那さんが自殺。葬式でその息子に「人殺し

」と言われた。それ以来月命日の墓参りを欠かさない。
先日の女性、元妻の淑子と食事をしている八角。今度は職を失うかも知れない、だが養育費は何とかするという八角に「遠慮しないでやりたい事やって」と言う淑子。

 

告発文が届いたと言って宮野、北川を追求する村西。御前会議の前で話すしかないと言う村西に絶望の顔をする宮野。リークしたのは誰だ!と言う宮野に「こんなバカな事するのは一人だけ!」

トーメイテックに出向き、江木社長から聴取する八角と原島、浜本。自らを立場の低い下請けだと言って受け身の立場を主張する江木。
帰りにロビーで会社と同じドーナツを見つけて驚く浜本。あのドーナツは浜本の提案で作ったオリジナル商品。

北川が黒幕? 20年前と同じだ、と八角。

 

ゼノックス本社で行われる、徳山社長を前にしての「御前会議」。
公表した時の損害額二千億と聞いて「出せるか?」と徳山の質問に、二百億がやっと、と宮野。
東京建電の解体が必要だ、と梨田。
この報告だけでは不十分だと村西が言い、八角と坂戸を招き入れる。
坂戸に全責任がある、と断ずる梨田。
笑う八角。この体質を作ったのは梨田だと言い、20年前に同様の事があったと報告に書いたが記載がないと指摘。梨田が削除していた。

 

20年前、東海鉄道新型シート受注に向けて、耐熱性の偽装を梨田から持ちかけられた。八角は拒否。だが北川が受けた。その偽装はうまく行き、その手柄は梨田のものとなり本社へ。
また、隣りの坂戸に今回の真相を話させる。
二年前、帝国航空社の受注のためのメーカ回りで北川からもらったリストの中にトーメイテックがあった。
食事に誘われ、強度偽装を先方から持ちかけられた。突っぱねたが、厳しいノルマに屈した。

 

下請け不正の提案をするわけがない、と梨田。
証拠がある、と八角。一通のメール。それを読み上げて江木に迫ると、仕方なかったと告白する江木。
野球部の大先輩だから断れなかった。何とそれは宮野。何もかも宮野社長に言われてやった。
メールを書いた覚えはない、と言う宮野に「これは俺が書いたデタラメメール」違法だとわめく宮野に「データ偽装が抗議ですか」
俺は警察じゃない。真実だけが知りたい。徳山社長も同調。
宮野が告白。坂戸へは北川から紹介させた。藁にもすがる思い。

どうやって思いついたかという問いに、20年前製造部長だった時、データ偽装に気付いた。

だが梨田が絶対にうまく行くと言ったので黙っていた。

 

「この件は私が預かる」と徳山。調査チームを派遣するという。リコール発表はいつ?という八角の問いに
「発表するとはひとことも言ってない」

 

八角が社に戻ると、PCや書類、データ全てがゼノックスの調査チームに持ち去られていた。
この辺で諦めよう、証拠がない、と北川。だが八角は「知っている事全部話す、誰かが信じてくれるまで。俺はもう逃げたくない」と叫ぶ。
北川が一本のネジを取り出す。最初に偽装が判った時、この応接室で怒りに任せてサンプルを投げた。その一個がソファの下に潜り込んだ。調査チームもここまでは気付かなかった。
上の指示に従うのが生き残るすべだと思っていた、お前みたいに突っぱねていたら、俺の人生変わっていたかもな、と北川。

 

TV報道。内部告発による東京建電のリコール隠し発覚。

国土交通省による立ち入り検査はゼノックスにも入った。
捜査官が最後に八角へ質問。なぜこの様なことが起きてしまったか、告発者としての考えを聞きたい。
本気で言ってます?と聞きながらも話を続ける八角。

この世から不正はなくならない、絶対に。

どの会社でも一緒、何度だってやる。
特に日本の場合、会社の常識が世間の常識より大事になってしまう。日本人のDNAに組み込まれている。
藩のために命を賭ける、侍の生きざま。
持ちつ持たれつの企業風土が、資源も何もない島国を先進国にまで押し上げた。だから功罪半ば。
一つ言えるのは、ひたすらガキみたいに言い合って行く。悪い事は悪い、命より大切なものはない。
それが出来れば、なくなりはしないがデータ偽装、隠蔽などは減るんじゃないか、と思いますよ。

 

各関係者の「その後」が語られながらドラマは終わる。
東京建電は営業一課だけを残して、他の業務は新会社へ移された。その社長には村西が就き、宮野は特別背任で告訴。坂戸は個人賠償は免れ、八角の知り合いの会社に就職。特に印象的なのは北川。退職し実家のバラ園を継いだ。梨田は地方の子会社に出向、徳山は変わらずゼノックスグループの頂点に君臨。
残った営業一課には原島、八角が残り立て直しを図る。

 

 

 

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