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新聞小説 「ひこばえ」 (6) 重松 清

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新聞小説 「ひこばえ」(6)  9/18(106)~10/11(128)
作:重松 清  画:川上 和生

 

第五章 息子、祖父になる 1~22
五月一日。娘、美菜の出産予定日五月五日を待つ洋一郎。手許にあるのは自分のスマホと、川端さんから渡された父のガラケー。

 

父のことは航太しか知らない。
昨日は和泉台ハイツに行って父の遺品整理。残された食材やスーパーのレシートから見えて来た、父の普段の生活ぶり。

 

「原爆句抄」の他に二冊の本を持ち帰った。「尾崎放哉全句集」と吉村昭の「海も暮れきる」。
尾崎は、東大法学部を出て順風満帆な生活だったのが、突然会社を辞め妻とも別れて句作にのめり込んだ。吉村昭の本は尾崎の評伝。
アパートに通った理由は、父の写真が欲しいからでもあったが、それは一切見つからなかった。川端さんは「似てるわよ」と洋一郎を見てきっぱりと言った。
父の部屋にあったカレンダー。

卓上のものには予定や覚え書きが書いてあった。
三月のカレンダーを見た時にえずく様な声が洩れた「嘘だろ・・・・」
三月十六日。そこに「洋一郎 55」とあった。

洋一郎の満五十五歳の誕生日。
それは、母と姉の誕生日にも名前と共に到達年齢が記されていた。父自身の誕生日、六月六日には「84」とだけ。カレンダーの中にだけ揃っている家族。

 

職場の「ハーヴェスト多摩」での業務。空いた部屋のリフォーム確認。次に入って来る後藤さんは七十歳。会社経営の息子が古希祝いに入居費用の七千万を払ったという。孝行息子ですねと言う男性スタッフ。
だが本人はここに、納得してやって来るのだろうか・・・?

 

五月三日に再びアパートを訪ねる洋一郎。今日は衣類の整理。「情を移さない方がいいよ」との姉の言葉を思い出す。
残った冷や麦を持ち帰って、夕食に茹でて食べた。美菜と航太が生まれた時の事を思い出す。美菜の時は仕事の接待、航太の時には北海道への出張で、どちらも出産には立ち会えなかった。
五月四日の夜、夏子から電話がかかって来た。

電話は、そろそろ病院に行くという連絡。緊張が声に出てしまう洋一郎。明日の朝来ればいいと言う夏子。

出産に立ち会う事には全く期待されていない現実。

 

翌朝の六時に家を出て駅に向かう。途中で出会う様々な老人。それぞれが毎日の暮らしを重ねている。父の行って来た生活を、ふと思う。

 

美菜は五月五日の午前九時に男児を出産した。感激する千隼くん。先は長いと言う洋一郎。
佐山と芳雄くんの事をふと思い出す。子供を亡くした親も、相手不在のまま我が子との関係は、ずっと続く。
今は幸せな事だけ考えよう、と自分に言い聞かせる。
初孫との対面。腕に抱いた孫の体温の高さに驚く。孫の名は「遼星(りょうせい)」。名字の小林が地味だからだという。

 

病院から帰る途中で気が変わって、照雲寺に向かう洋一郎。

予告なしの来訪にも道明和尚は優しく出迎えた。孫、父にとっては曽孫の誕生を伝えると一緒になって喜んでくれた。
祭壇に骨壺を置き、少し中座した後、缶ビールとグラスを二つ持って来た。親子で祝杯を上げてとの心遣い。
安手のテレビドラマでもどうか、というぐらいのクサい場面。

バカだなあと思いながらも孫が生まれた事の報告。スマホで撮った遼星の写真も見せる。

お父さまもきっと喜ばれていることでしょう、と道明和尚。向き合うというのが大切だと説く。
写真が見つかると更に近づくという。川端さんが近所の人に訊いて回ってくれているらしい。
再会したくて、したわけではない。だが和尚の言葉に頷く程度には、この状況を受け容れられる様になっていた。
山門まで見送ってくれた和尚。

 

感想
相変わらず父のアパートへの訪問を続ける洋一郎と、孫の誕生。
孫の写真まで見せに行くとは、感情移入の進み具合が加速している。要は、姉が年長の分だけ父の醜い部分を記憶しているのに対し、洋一郎には負の記憶が少なく、その分求める気持ちが強く現れているのだろう。

しかし、別れた後もこれほど長く以前の家族に心を残していた。

父親の真意がどこにあったのか。
そんなに気になるんだったら、仕送りのひとつでもすれば良かったのに、そういう事は一切やっていない。
結局観念でしか家族をとらえていなかったという事か。

 

 

 


マルドゥック・スクランブル      2010~2012年

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 第一部『マルドゥック・スクランブル 圧縮』2010年
 第二部『マルドゥック・スクランブル 燃焼』2011年
 第三部『マルドゥック・スクランブル 排気』2012年

 

監督      工藤進
原作・脚本 冲方丁

 

キャスト
ルーン・バロット                    - 林原めぐみ
ウフコック=ペンティーノ             - 八嶋智人
ドクター・イースター                 - 東地宏樹
シェル=セプティノス               - 中井和哉
ディムズデイル=ボイルド          - 磯部勉
トゥイードルディ                    - 小林由美子
トゥイードルディム                  - 浪川大輔
プロフェッサー・フェイスマン           - 有本欽隆
クリーンウィル・ジョン・オクトーバー - 小室正幸
オクタヴィア                       - 勝田晶子
ベル・ウィング                     - 藤田淑子
アシュレイ・ハーヴェスト             - 土師孝也
マーロウ・ジョン・フィーバー          - 小野大輔

 

 

感想
名前だけは知っていた(エヴァンゲリオンの「マルドゥック機関」つながり)。なかなか良く練られたドラマ。
殺されかけた少女が、超法規的措置で命を救われる。担当捜査官とのコンビで事件の真相に迫って行く過程は、小出しに情報が開示されて行くため、一度観ただけではちょっと把握し難い。

幼いだけの、ただの娼婦が抱いた「なんで、私なの?」という疑問が次第に明らかにされて行く。連続殺人鬼シェル自身、過去に母親から性的虐待を受け、その代償作用が犯行の動機。
一方バロットを守るウフコックの側にも、元相棒ボイルドとの確執があった。

 

バロットの林原めぐみはすぐ判ったが、ウフコックが八嶋智人と知ってビックリ。武器としてバロットを助けながら、その心のケアにも腐心する、難しい役どころをうまく演じていた。

カジノでのギャンブルがこのドラマの見せ場。残念ながらポーカーもブラックジャックも不案内だが、緊迫したゲーム展開は、アニメとして十分通用する。
途中に挿入される「アメージング・グレイス」もなかなかいい雰囲気を出している。歌は急逝した本田美奈子。

 

変形自在で「使い手」の意のままになる武器という、ウフコックの設定は秀逸だが、銃弾そのものも彼の一部だとしたら、物理的に目減りして行くだろう。その辺のロジックがちょっと気になる。レーザーみたいなエネルギー系だったらまだいいんだけど。

 

しかし一つ不満。オープニングで出て来たシェルの乗る車が、屋根を担いだ霊柩車そのもの。この趣味の悪さは狙ったものか?
こんな所で張り切らなくてもいいのに・・・・

 

 

あらすじ
第一部『マルドゥック・スクランブル 圧縮』

 

予告編

 

男に捨てられ、車の中で焼き殺されそうになる少女。

 

目覚める少女。助けたのは委任事件担当捜査官イースター。

もう一人は金色のネズミ型万能兵器ウフコック。

 

武器に変身する事を「ターンする」という。逃げた男シェルを追う中で少女:ルーン・バロットを助けた。

マルドゥック・スクランブル-09(オーナイン)法(禁じられた科学技術の特別使用による救命)の適用により、金属繊維を用いた皮膚治療を行った。同時に無意識下で望んだ電磁干渉(スナーク)能力も与えられた。

 

09運用とは別に、唯一禁じられた技術の使用を認められているオクトーバー社は娯楽、快楽に関わる。そこで作られた、汚れた金をクリーニングするのがシェルの仕事。その合い間に、娼婦を引きずり込んでは殺す行為を続けている。殺した女の遺灰を使ってブルーダイヤを作って収集。シェルの側についた委任事件担当捜査官はボイルド。

かつてウフコックと相棒だった男。
シェルは記憶を記録化して消去しないと脳が腐敗する。ボイルドはバロットの話をするが、シェルにその記憶はない。「当事者の死亡もしくは失踪で事件不成立だ」とボイルド。

ウフコックとの関係性に慣れるのとリハビリを兼ねて、車で街に出るバロット。喫茶店で端末からシェルによって作られたバロットの履歴が開示される。

十九歳の銀行員。そのIDを使って金をシェルに横流ししていた。

そして家族環境。兄は刑務所で両親は療養施設。これらを法務局に送らなくてはならない。逡巡の後、それを了承するバロット。

 

車で流している時に追跡を受ける。ボイルドが送った殺し屋。それをかわし、追って来たボイルドと対峙するウフコック。手を引けというボイルドに「三日後の簡易法廷を待て」。
「なんで私なの?」と言うバロットにやさしく話しかけるウフコック。「俺は君という使い手に尽し、君の事

件を解決したい」。「あなたの役に立ちたい」とバロット。

 

法廷に出るバロット。シェル側の弁護人は殺意を否定。その場で明らかにされるバロットの過去。十二歳の時から父親の性の対象にされた。それで兄に撃たれて廃人となった父。兄とも関係していたバロット。理由は「愛していたから」。

閉廷の後、姿を現すボイルド。

「次回からは自分が出る、手を引くなら今だ」

 

アジトに戻り、ウフコックをスーツとして身に付けるバロット。耐熱・耐寒でスナーク能力も強化。思うだけで武器を手に出来る。撃たれた銃弾を射落とす事も可能。
ボイルドが雇った畜産物カンパニーの殺し屋がバロットに仕向けられる。ウフコックを武器にして戦うバロットは、銃撃戦の中、次第に快感を覚えて行く。自衛でなく、楽しみのための戦闘を感じたウフコックは、その指令を拒絶。
殺し屋たちを片付けた後に現れたボイルドは、擬似重力を駆使して壁面も歩ける。止む無く武器にターンして戦うウフコックだが、瀕死の重傷を負う。

 

 

第二部『マルドゥック・スクランブル 燃焼』

 

 

 

予告編

 

「楽園」で目覚めるバロット。負傷したが重くはない。脳内会話で声をかける少年トゥイードルディ。ここは研究所。禁じられた科学技術が開発されたところ。イースターとの面会。タンクで治療中のウフコックに謝る

バロット。


バロットをプールに連れて行くトゥイードルディ。そこで泳ぐイルカのトゥイードルディムは、機能補完でトゥイードルディと同等の会話能力を持ち、ウフコックとは旧知の仲。ここの最高責任者プロフェッサー・フェ

イスマンの話す、研究所の沿革。
ここを利用しての治療、武器の使用等は、その有用性が実証されない限り違法。それを肝に銘じるバロット。

シェルと話すボイルド。シェルは社長の娘オクタビアの知能障害を暴いて、彼女との結婚により権力を得ようとしていた。次の裁判の罪状が明らかにされない事で、シェルを追求するボイルド。彼の記録化された記憶の場所がカギ。

 

調査名目で楽園を訪れるボイルド。バロットとウフコックを出せとフェイスマンに銃を向けるが、彼の能力は元々ここで授けられたものであり対抗出来ない。
その隙に軍事用の浮遊住居で立ち去るイースター、バロット、ウフコック。

 

傷も癒えたバロットに、ボイルドとウフコックの話をするイースター。相棒だった二人だが、ボイルドが殺戮に走るようになってウフコックと反目。決裂した。ボイルド自身、楽園で睡眠不要の改造を加えられていた。
ボイルドの気持ちが判る、とバロット。自分も一度は狂った。慰めるイースター。
シェルの記憶のありかについて、楽園のプールでコンタクトを取った結果を話すバロット。
オクトーバー社が経営するカジノの百万ドルチップの中に情報が封じられている。十二個のうちの四個。
治療を終えて姿を現したウフコックと共に、バロックをギャンブラーとして仕込むイースター。

 

カジノに出向くバロットとイースター。ウフコックは彼女の手袋になっている。
手始めにスロットマシンに手をかけるが、スターク操作は警報が出てダメとウフコック。リズムで出そうな台を絞り込み、操作をすると777が並んで周囲から拍手。だがスロットでは大して稼げない。

次にイースターと組んでポーカーの席に座るバロット。ディーラーと客二人がグルで一人がカモ。その中で技を駆使して勝ち抜けるバロット。
次にルーレットの台に行けとのウフコック指示。ディーラーは女性、ベル・ウィング。カジノ界屈指のスピナー。二つに賭けたバロット。そのうちの一つで当りが出る。ウフコックの話では客引きのための「仕込み」。
移ろうという忠告に「もう少しこの人を見たい」と言うバロット。次に賭けた場所では外す。本気になったバロットに台のデータを出してバックアップするウフコック。勝負は一進一退。合い間ごとのベルとの語らい。右回りを頼んで、出た目を当てたバロット。
控室での会話でベル・ウィングの解雇を聞くバロット。だが冷酷さも身に付けないと先へは進めない。改めてシェルの秘密を暴く決心をするバロット。

シェルとボイルドとの会話。娘の父親(オクトーバー社長)をカジノで遊ばせる事でいきり立っている。
自身の肉体改造の記憶を辿るボイルド。不眠改造の副作用で廃人寸前となったボイルドにあてがわれたウフコック。互いに補完し合う中で蘇えったボイルド。だが結局怒りも悲しみも忘れた者となってしまった。そして

去って行ったウフコック。「取り戻せないなら消すだけだ」

改めてカジノ場に入るイースターとバロット。それを受けて部屋を出る男アシュレイ「それにしても良く出来た手袋だな」

 


第三部『マルドゥック・スクランブル 排気』

 


予告編

 

新たなカードの戦いはブラックジャック。中年の男、老紳士、太った貴婦人、イースター、バロットの五人が客。そしてディーラーのマーロウ。イースターとバロットは叔父と姪という触れ込み。
マーロウの仕込みで客が順次減って行き、最後はイースターとバロットが残る。機が熟して全額を賭ける二人。

マーロウの仕込みが裏目に出て客側の勝利。集まったチップをまとめるため百万ドルチップを要求する二人。

カジノでバロット達が荒稼ぎをしているのを見て逆上するシェルは、ボイルドに連絡して始末を命令。

 

一方解雇されたベル・ウィングは、アシュレイから、このカジノを仕切っているシェルが女を食い物にしている話を聞く。十五歳の少女を焼き殺しそうになった話を聞いて合点するベル。

提示された十二個の百万ドルチップから一つを選んで握るバロット。中のデータが引き出された。
マーロウを解雇して二人の前に出たアシュレイは最強のディーラー。

 

ベルが顔を出してバロットを応援。
延々と続くドロウ(引き分け)は十六を超えた。バロットには「最適戦略を守れ」と慎重な行動を取らせるウフコック。
それに対して「何を遠慮している」と挑発するベル。

チップを全てバロットに託して勝負から降りるイースター。次第に負け始めるバロット。ミスを謝るが、それはこの男の誘導だ、とウフコック。
バロットは手袋を外し、自分の感覚を頼りにカードと対峙する。次第に盛り返し、ついに勝ちが取れるようになってから百万ドルチップを積む。それにも勝利して次のチップを手に入れるバロット。

 

最後の勝負。百万ドルチップを積んでの勝負の途中、更に一枚積んで「ダブルダウン」を宣言。7のカードを三枚出して勝利は目前。賭け金と合せて八百万ドルが手に入るが、そこで「イーブンマネー」を宣言するバロット。これだと賭け金込みで四百万ドルの利益が確定(ディーラーの役に関わらず)。
実はアシュレイの手はブラックジャックで、これだとバロットの手より上であり「イーブンマネー」以外では彼女の負けだった。
バロットの判断を讃えるアシュレイ。

あと二枚の百万ドルチップから情報を引き出したバロットは、チップを返したいからオーナーに会いたいと申し出た。
オーナーのクリーンウィル・ジョン・オクトーバー。シェルの婚約者の父でもある。後に続くシェル。バロットを淫売と罵ってチップを取り返した。

アジトに戻ってのシェルの記録の復元は、バロットの肉体を使っての作業。シェルが犯した殺人の数々をトレースするバロット。
シェルのトラウマは、母親による性的虐待。十八歳の時、シェルは母親を殺している。それがオクトーバー社による記憶消去の副作用で感情が抑えられず、殺人衝動の源になった。その時に彼の恋人だった女性にも父に犯された過去があり、彼女が自殺した事でトラウマになり、同じ境遇の少女を殺すようになった。

 

法廷が開かれ、シェルの一件は解決されたかに見えた。だが彼の記憶はオクトーバー社にとっても都合が悪いものであり、今度はシェルが命を狙われるかも知れない。シェルを守るためにバロットが動く矛盾。だがそれを受け入れて行動を始めるバロット。
シェルのアジトで婚約者オクタビアの死体を見つけるバロット。そこに押し込む刺客。ウフコックがターンした武器で、それらを難なく倒すバロット。刺客に雇い主へ電話をさせると、出たのはクリーンウィル。
父親の話から、ある事に気付き電話の逆探知で居場所を見つけたバロットは、そこに向かって突き進む。
扉を破ったその部屋には、多数の少女をはべらせたクリーンウィルの姿。
彼を撃とうとするバロットを制止するウフコックだが、この父親も娘を犯していたと言うバロット。
私は死んでもいいから、この男を殺させて!と叫ぶバロットに、銃弾を装填して全てを託すウフコック。
すんでのところで思い留まるバロット。そこに駆け付けたイースターが逮捕を宣言。

 

シェルと対峙するバロット。相手に攻撃させて、命が脅かされている状況を作り出した上で反撃する。怪我を負わせたが命に別状はない。シェルに記憶を戻すバロット。
ダストシュートにシェルを落としてから、ボイルドと対峙するバロット。
お互いバリヤーを駆使してなかなか決着が着かない。戦いが進む中でボイルドは足を吹き飛ばされ、腕を切り落とされるが擬似重力でカバー。
最後にボイルドに銃を突き付けるが、それを取り上げられるバロット。そしてウフコックがターンした銃で狙いをつけるボイルド。だが撃たれたのはボイルドの方。最後はバロットが決着を付けた。

全てが終わり、走る車の中で、ターンした銃の姿のウフコックを抱きしめるバロット。

 

 

ファウンデーションの誕生(銀河帝国興亡史⑦) 発表:1993年 アイザック・アシモフ

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前作「ファウンデーションへの序曲」超あらすじ
未来を数学的に予言出来ると言った三十二歳のハリ・セルダン。それに興味を持つ銀河帝国の皇帝。
皇帝との謁見の後、チェッター・ヒューミンの手引きでストリーリング大学に行き、ドース・ヴェナビリという女性に引き合わされるセルダン。
その後、過去の歴史を求めてマイコゲン地区に行き「ロボット」に関して情報を得る。
次には帝国の目を逃れダール地区に。そこで後に深い縁となるレイチ、ユーゴ・アマリルとの出会い。
レイチの機転で危機を救われ、次には反帝国国家ワイへ行く。ワイのクーデターが途中で失敗し、その主導をしたのがヒューミン。彼の正体は帝国の宰相デマーゼル。そして彼の本当の正体はロボット-ダニール・オリヴォー。セルダンの進める心理歴史学の支持者。
数々の経験の中で、心理歴史学実用化のために、トランターの歴史に絞って構築する事を覚ったセルダン。ここから本格的な研究が始まる。

 

ハードカバー表紙

 

文庫版表紙

 

本編超あらすじ
第一部 エトー・デマーゼル

ラスキン・ジョラナムという政治活動家による危機。レイチを敵方に潜入させて首相デマーゼルがロボットだという事を信じ込ませる。

ジョラナムによる大々的な弾劾報道により、一時デマーゼル排斥の動きになるが、会見で真の笑顔を見せてそれを払拭。だがその混乱の責任を取ってデマーゼルは辞任。
セルダンが次期首相に任命されるが、それは全てデマーゼル/ダニールの目論見によるもの。
第二部 クレオン一世
ジョラナムのナンバー・ツーだった、ナマーティによる危機。トランター内の基盤設備を故障させて市民の不満増幅を狙う。ここでもレイチが敵方に潜入するが、取り込まれてセルダンの暗殺者に仕立てられる。
危ないところでセルダンを救ったのが、敵方に潜入していた保安官のマネルラ。皇帝のクレオン一世がアクシデントにより射殺される。
第三部 ドース・ヴェナビリ
マネルラはレイチの妻となり娘ワンダが生まれる。八歳のワンダが見る、セルダンが死ぬ夢。首相となって十年のセルダンは六十歳。共同研究者のユーゴ・アマリル四十九歳。

派手に行われたセルダンの誕生祝賀会。
セルダン保護に過敏となるドースは、たびたび異常行動を起こす。
未来予測機器のプライム・レイディアント。その機能アップツールである電子浄化器を、若手のタムワイル・エラールが開発。それがセルダンらを蝕んでいると突き止めてエラールを追及するドース。だがそれはドースにダメージを与えるものだった。エラールを殺したものの、機能停止するドース。そして暫定政権の崩壊。
第四部 ワンダ・セルダン
ワンダが十二歳の時、セルダンは彼女に他人の心を読む力がある事を知る。セルダン六十四歳。
セルダン六十六歳の時、アマリルが五十五歳で死ぬ。ワンダの様な者を集めて第二ファウンデーションを作る構想を伝えるセルダン。それに感動して息を引き取るアマリル。
セルダン七十歳。図書館で見出したステッティン・パルヴァーという青年。ボディガードとして助けてもらううちに遭遇した傷害事件を機に、ワンダとの接触で彼にも能力がある事が判明。
二人の能力利用で図書館長を味方に付け、進む心理歴史学研究。
第一ファウンデーションのボディガードとしての、第二ファウンデーション(スターズ・エンド)構想が完成。

第五部 エピローグ
ハリ・セルダンの独白。ターミナス、スターズ・エンドへの稼働状況。八十一歳で生涯を閉じるセルダン。

 

感想
ハリ・セルダンが「心理歴史学」を、実用に漕ぎ着けるまでを描いたドラマの後編。そしてアシモフの遺作でもある。
亡くなったのが1992年なので、書き上げてから一年そこそこで亡くなったことになる。

さて本題。元々可能性の提示だけだった「心理歴史学」を、ロボットの第零原則の観点から、実用化のために手を差し伸べたロボット「ダニール・オリヴォー」の関与で、研究が軌道に乗り始めるのが前編までの話。

前半は政府転覆分子との戦いであり、特に深い背景はないが、第三部では内部の敵タムワイル・エラールがドースと敵対する。こいつの背景が判らない。ドースをロボットと知っていて電磁攻撃をかける。単に暫定政権と結託しただけの話?
第四部では、第二ファウンデーション員の原点である精神操作について語られる。核となった愛娘ワンダ。

あと付けとはいえ、第1巻の「ファウンデーション」ではほんの数ページしか語られなかったものが、大きく膨らんだ。
ただ「心理歴史学」が、どのように実用化に向けて整備されて行ったかのプロゼスはあまりキチンと描かれず、事件中心になっているのは、小説としての面白みはあるが、理詰めで追求したい向きには少し物足りないかも。

 

長く続けて来た「ファウンデーション」三昧は、一応これでおしまい(ちょっと寂しい)

 

 

 

あらすじ

 

第一部 エトー・デマーゼル
ハリ・セルダンの共同研究者ユーゴ・アマリル。ジョージョー・ジョラナムと言われる政治活動家の事を心配していた。これを放置すればデマーゼルが失脚し、心理歴史学の研究が頓挫する。
「君の警告は確かに聞いた」とセルダン。

仕事を終えての帰り道、学内の広場で演説を行っている者を見つけるセルダン。学生に聞くと「ナマーティ」という人物。例のジョージョーの支持者だという。無許可での集会とみなして壇上に上がり、止めさせようとするが、親衛隊の一人がセルダンに手を出した。

得意の護身術でその男を倒すと、セルダンはナマーティの首を締め上げ、解散を宣言させた。

 

大学での武勇伝は、家で待つドースに既に知られていた。
追い払った男はジョラナムの右腕。デマーゼルなら簡単に対処出来る、と言うセルダンにドースは、簡単に出来ることではないと言う。副作用が生じないようにしなければならず、精神操作は容易に使えない。

ジョージョーことラスキン・ジョラナムからの謁見依頼が来て、面会するセルダン。先方はナマーティと二人で来るため、こちらもレイチを同席させる。8年前ダール地区から連れて来て養子にし、現在二十歳。
セルダンの経歴を調べていたジョラナムは、彼の立場がデマーゼルの庇護によるものだと看破していた。

 

セルダンと話すレイチ。ジョラナムを危険だと言いつつ、彼の言う「全ての地区に平等な権利と機会を」というスローガンは自分の出身であるダールを助けるもの。一抹の不安を感じるセルダン。

ドースと話すセルダン。ジョラナムの出身はニシャヤ地区。辺境で孤立し、見過ごされて来た地。
金を使ってニシャヤ地区を調べ、彼がこの地の出身でない事を確信した。彼の出身はマイコゲン。
彼の髪は完全無欠な感じがした。あれはかつら。マイコゲンは劣等ではないが制限、差別が多く首相を目指す者の出身地としては不適当。

デマーゼル/ダニールとの話し合いの場を持つセルダン。8年経っても彼の容姿には全く変化がない。
しばし家族の話をした後ジョラナムの話を始めるセルダン。彼の事を既に知っていたダニール。
もし干渉した結果ジョラナムを滅ぼしても、それが帝国の滅亡に繋がるのなら何も出来ない。

セルダンはレイチに、ダール地区行きの打診をする。ジョラナムが、新たに自党員が増えた議会に出席する事が判り、彼への接触をレイチに頼んだ。引き受けるレイチ。そのアイデアにドースは反対。

ビリボトンの店でチンピラ相手にイザコザを起こすレイチ。制服を着たジョラナム親衛隊という者。この地域での治安維持を行っている。拘留されるレイチ。

 

首相デマーゼルと話すクレオン一世。帝位に就いて十八年。ジョラナムについて気にするが、強硬手段は無益だとなだめるデマーゼル。
セルダンがジョラナムの関係者を退治した話を知っている皇帝。セルダンが何年か前に心理歴史学の話をしに来た事も覚えていた。謁見を取り計れとの命令。

皇帝に謁見するセルダン。8年前以来の再会。無礼講の誘いにも前回を考慮して用心する。
ジョラナムに対して何の行動も起こさないデマーゼルに不満の皇帝。心理歴史学がゲームに過ぎないという話を信じない。セルダンの武勇伝も心理歴史学の賜物だと言った。

 

拘留されたレイチは、父セルダンやユーゴ・アマリルの名前を出し、ジョラナムとの面会を要求。
レイチに会いに来たジョラナム。ダール人として抑圧されて来て、ジョラナムを支持し助けたいとの申し出。

どの様に助ける?の問いに、実は首相のデマーゼルがロボットだという事を暴露した。ナマーティが即座に否定するが、ロボットの伝説を知っているジョラナムは先を続けさせた。歳を取らない、感情を表わさない、金属製に見える時がある。それはレイチとしての確信。
なぜそれを問題にするかとの問いにレイチは、帝国の運営をロボットなんかに握らせたくないと強調。興奮するジョラナム。だが顔出しは出来ない、おやじに見つかったら大変、とレイチ。
権力を取った後の優遇をレイチに確約するジョラナム。

 

皇帝に呼び出されるデマーゼル。トランター全体にばら撒かれたホログラム。少年の姿で帝国の運営をロボットなんかに握られたくないと言っている。指さす先にデマーゼルの姿。
これを放置する事は出来ない、と皇帝。だが犯人を捕まえて処刑する事など出来ない。暴君、独裁者と思われる。「セルダンと接触せよ」との命令。盗聴不可能なホットラインの設置。
セルダンと話す皇帝。相変わらず心理歴史学が問題を解決してくれると信じている。
陛下が何もなさらぬ事が一番、とセルダン。

 

ジョラナムはその二日後、トランターを席巻一大作戦行動に出る。ドースは、彼が短期間にトランターを支配すると心配した。
デマーゼルがロボットだという事がどうして知られたかを聞くドースに「レイチさ」と答えるセルダン。レイチは仕事を完全にやり遂げた。
ロボットに対する民衆の印象に対して、デマーゼルが笑うだけでいい。

デマーゼルが首相としての定例演説をホロビジョンで行っている。事務的な報告が終わり、質疑となって「首相、あなたはロボットですか?」との質問。
少しの沈黙の後、声を上げて笑うデマーゼル。豊かな笑いであり、それは聴衆にも広がった。

 

サンマスター14からのメッセージを受けた皇帝。ジョラナムがマイコゲンからの離脱者であるか、との裏取りをセルダンがやっていた。それを証明する返事。
これでジョラナムの信用は地に落ちる。彼の処刑を口にする皇帝だが、それはお薦め出来ない、とセルダン。
処置をマイコゲン人に任せるという方法。厳格な民族であり、投獄され、終身労働の道。だがそれでも殉教者を作る恐れがある。
もう一つの道としてニシャヤへの追放も選択肢に入れる。元々彼が出身地と偽っていた僻地。

見捨てられた地であり、復活の可能性はない。
セルダンを称賛する皇帝。そしてデマーゼルの辞職を告げ、後継としてセルダンを指名した。

この結果はデマーゼルの示唆だった。ロボット三原則に縛られて、危機への対応が苦しくなって来ていた。
今後の運営はレイチにも手伝わせればいい。平等と社会正義の点ではジョラナムの思想も間違ってはいない。

そして今後は心理歴史学を信じている皇帝が協力してくれる。
人類の福祉のために働くことがたくさんある、と言って去って行くデマーゼル/ダニール。

 

第二部 クレオン一世
園丁(庭師)のマンデル・グルーバー。皇居庭園の園丁として三十年励んで来た。十年前、セルダンが就任した年に起きた暗殺未遂。

それを防いだのはドースだったが、グルーバーはその時熊手を持って駆け付けた。それ以来セルダンは庭園を歩く時は必ず彼に声をかけ、親しく話す間柄になっていた。
今、庭園長の交代時期を迎え、彼を後任にと考えているが、外の空気を吸える今の立場を望むグルーバー。
セルダンの首相就任により、彼と彼の心理歴史学を守るというドースの使命は、より困難になった。
ジョラナムは去年ニシャヤで死んだ。その残党による皇帝暗殺を危惧するドース。

 

ワイ地区。反帝国と認知され、十八年前にはクーデターを帝国に鎮圧された歴史を持つ。そこで話すギャンボル・ナマーティ他数名のジョラナム党員。古参のカスパル・カスパロフ。
ナマーティは、ジョラナムの失敗分析から、都市部のインフラ機能を少しづつ故障させ、民に不便と不快を植え付けて行く方法を取った。それが暴動の下地になる。
その方法に賛成しないカスパロフ。去って行く彼を見送ってから、始末を部下に指示するナマーティ。

レイチ・セルダン。ダール地区でセルダンとドースに拾われてから十八年の三十歳。背は低く筋肉質。ダール人の証しの口髭。親子二人での会話。ここ1、2年で起こっている設備故障の事。
分析によれば、これは故意に起こされたもので、多くの住民に影響が及ぶ様仕組まれている。
それに加えて最近ワイ地区で殺人があった。被害者はカスパル・カスパロフ。古いジョラナム党員。
これらの出来事について犯人の「証拠」が欲しい。
潜入にあたって口髭を剃れという命令に抵抗するレイチだが、最終的に受け入れる。

庭に出た皇帝はグルーバーを呼び出す。首相からの言葉を伝え、親しく話をする。そして単刀直入に、君を庭園長に任命したと伝える。あらゆる言葉で辞退するグルーバーにも耳を貸さない。
セルダンから、処刑その他何においても制限される身の皇帝にとって、その程度の人事権行使は唯一の気晴らし。

 

ワイの安ホテルに滞在するレイチ。ここは殺されたカスパロフが最後の数日泊まったところ。だが特に情報はない。バーでマネルラという美しい女と知り合い、その繋がりで男が話しかけて来た。レイチの言った「ジョラナム主義」に興味を持っていた。
レイチは注意深く対応した。生まれは違うがダールで育ち、差別に対する不満は大きい。その上でのジョラナム支持。主義に対する質問。皇帝制については否定していない。首相のハリ・セルダンはどうも思わない(知らない)。
自分の信念のために進んで闘う気があるかと男に聞かれて肯定するが、ここに来たのは仕事を見つけるため。
名前を訊かれ「ブランチェット」と答える。男が証明書の様なカードをくれた。指定の行き先で見せれば仕事が見つかるという。

 

歩き回るナマーティを眺めている例の男:グレブ・アンドリン。
カスバロフを殺した事の批判を気にするナマーティ。
ナマーティが進める基盤施設の故障は、遅かれ早かれバレるが、ここからは次の段階。皇居の構内でトラブルを起こすため、現場に活動家が欲しいというナマーティに、皇帝が新しい庭園長を任命する件を話すアンドリン。それと同時に多くの園丁が入れ替わる。そこを狙って同志を送り込める。
おあつらえ向きの男が見つかった、とアンドリン。見つけたのはマネルラ・ドゥバンカ。彼の友人。男の名はブランチェット。

マネルラとベッドで語らうレイチ(ブランチェット)。仕事をもらった事を話すと、相手の男-アンドリンにはただ紹介しただけ、と言った。任務を忘れてもっと彼女に集中したいレイチ。

セルダンのところへレイチから遠回しのメッセージが届いた。グレブ・アンドリンとの接触。この名はノーマークだった。ワイ市長一族の一人。市長だったラシェルの甥。プレイボーイで、自らの力はないが監視されていた。ジョラナム主義を踏み台にして帝位回復の野望があるかも知れない。レイチが女と関わっていると聞いて眉をひそめるドース。

 

ナマーティとアンドリンとの会合。
ナマーティの前にブランチェットとして引き出されるレイチ。彼には十年前に一回会っていた。

名前、出身、主義、勇気等次々に訊くナマーティ。
ブランチェットを帰し、アンドリンと話すナマーティ。

あの男がハリ・セルダンの養子、レイチである事を見抜いていた。微笑し、それから声を出して笑うナマーティ。

 

レイチからの連絡が全く入らず心配のセルダン。
ある日の面会で、庭園長は自分の手には負えないと嘆くグルーバー。
話の中で新しい園丁が入る事を初めて知るセルダン。交替要員になりたい者が何百人も待機している。
セルダンは、ここ数週間に到着する予定の新人園丁の詳細リストの提出をグルーバーに命令した。間に合ったか、既に手遅れか・・・・

 

ナマーティがアンドリンに話す今回の作戦。新任の園丁たちの群の中にブランチェットとアンドリンが紛れ込む。秘密で持ち込むブラスター(手筈が決まっている)。
首相が新しい園丁の前に出て歓迎の挨拶をする。その時にブランチェットがセルダンを撃ち、直後にアンドリンがブランチェットを撃つ。そしてアンドリンは脱出(手引きする者がいる)。

園丁志望者のグループの中に居るレイチ。アンドリンからブラスターを持たされて驚くレイチ。大義のためなら何でもすると言質を取られていたが、殺人までやるつもりはなかった。
拒否するレイチに「そうしろと命じるだけだ」とアンドリン。
「デスペランス」。違法薬品。精神安定剤を改良したもので、マインド・コントロールに利用される。食事に混ぜて処方されていた。ナマーティに最初から見破られていた。父親を殺すシナリオが組まれている。

 

拝謁の式典が始まり、十二人の園丁を前にグルーバーが一言挨拶。その後をセルダンが引き継いで前に出た。

レイチを見つけるが、彼は目を逸らしている。
激励の演説を続けるセルダン。レイチの後ろにアンドリンを見つけて驚くセルダン。
アンドリンが囁いて、レイチが胴着からブラスターを引き抜いた。

ブラスターを持ったまま動かないレイチ。その後ろでアンドリンの変形した死体が血の中に倒れていた。ブラスターを持つ女性の園丁、マネルラ・ドゥバンカ、保安官だと名乗った。
「息子はどうしてしまった?」の問いに「デスペランスだと思います」と言ってレイチからブラスターを取り上げるマネルラ。

皇帝のことを思い出して小宮殿に駆け込むセルダン。だがそこには皇帝のつぶれた死体。茫然と立っているグルーバー。武器はアンドリンのものだった。
「庭園長になるのがどうしても嫌だったもんで」と崩れ折れるグルーバー。

 

第三部 ドース・ヴェナビリ
八歳の娘ワンダ。おじいちゃんは死ぬの?と母親マネルラに聞いて涙ぐむ。おじいちゃんというのはセルダン。
クレオン暗殺の一週間後。マネルラはセルダンとレイチの命を救ったが、いずれ出来る軍事政権の下では皇帝暗殺の一味とみなされて虐殺される運命。
解決策はセルダンの辞職。軍部との交渉で円満に軍事政権に移行出来れば、自分は研究に戻り、家族は守られる。マネルラも公安を辞めさせその輪に入れるつもりだった。

事件直後、レイチは「デスペランス」の後遺症で最悪の状態。そんな中でマネルラを求めた。ドースは彼女を認めない。あの女がセルダンとレイチの命を救った事が許せない。公安時代は情報集めのため、何人もの男と寝たような女。
だがマネルラの献身的な介護でレイチは回復し、その後結婚。二年後にワンダが生まれた。

 

首相を辞してから約十年。セルダンは六十歳になろうとしていた。本格的に心理歴史学の研究に戻り、ユーゴ・アマリル始め、多くの人員、予算を使ってプロジェクトを進めて来た。
アマリルも五十近くなり、少し活気がなくなっている。
そのアマリルが言うには最近入って来た若手のタムワイル・エラールが優秀だという。研究のためのプロジェクター、プライム・レイディアントの機能アップに貢献する電子浄化器を実用にしたのがエラール。

もうすぐ開かれる自身六十歳のための誕生祝賀会を思うと気が滅入るセルダン。
発案者のマネルラを詰問したが、誕生パーティーのアイデアはエラールの示唆だったという。「利口なやつだ」

ドースが心配事を話す。八歳のワンダが見た夢の話。二人の男が「レモネード・デス」という言葉を話したという。前にも二度あったセルダンの危機。彼を守るという意識の過剰反応。今の政府は完全に責任能力を欠いていると咎めるドース。セルダンほどには容貌の変化なく、いざとなった時に彼を守る能力も衰えていないだろう。

 

タムワイル・エラール、三十六歳。西マンダノフ大学からの採用。当初彼をうさんくさいと感じたアマリルだが、問題解決能力に優れ、今では重要なメンバー。
エラールと話すセルダン。軍事政権の新指導者テナール将軍が会談を求めているのを、一週間延期させたという。それは誕生祝いと時期をずらすため。それを不快に感じるセルダン。
更に続け、将軍との会談は自分が代理として出る事を提案するエラール。自分が弱虫扱いされていると感じてそれを撤回させるセルダン。

 

セルダンの誕生祝賀パーティーが始まった。三日間続く。ワンダに会って、あの夢の話を聞いてみるドース。彼女の話は明瞭だった。
その後ドースとの話。「レモネード・デス」の言葉で毒薬の心配をするセルダンに、むしろ数日後に行われる

テナール将軍との会談を気にしていた。「私が一緒に行かなければいけないのよ」

暫定政権のテナール将軍。だが皇帝が不在となって十年。自らを皇帝にしたいと思うようになっていた。参謀のヘンダー・リン大佐。まともな戦歴はなく、将軍の話し相手が堆一の仕事。
セルダン除去は処刑ではなく、やり方が大事。彼を自然な方法で交代させ、結果的に除去する。

祝賀会が終わり、数日後に将軍との会見を控えて、相変わらず付き添いを要求するドース。それに対しエラールが、皇居近くのホテルに人が集まって祝賀会フィナーレを行う提案を出した。セルダンが人気者だという印象を将軍に与えて側面からセルダンの安全を担保する。それにはドースも同意。

 

将軍との会見日を迎え、セルダンは護衛に伴われて会談に出向いた。それとほとんど同時刻に姿を消したドース。

皇居内を歩くドース。だが警備の地上車に止められる。乗っていた守衛を締め上げて車を奪い、猛スピードで走り出す。二台の地上車による追跡。
目的の建物の前で止まると、連絡を受けて既に車が待機していた。守衛が四人。女性である事に驚く守衛。
その中の一人が彼女をセルダンの妻のヴェビナリ博士だと気付く(タイガーウーマンとのあだ名)。ヘンダー・リン大佐に会いたいというのを制して逮捕すると言う守衛たち。そのうちの二人を即座に襲い、ブラスター二丁を取り上げるドース。

ドースと対峙するリン大佐。守衛二人に先導させてここまで来た。夫の安全確認が唯一の望み。将軍の狙いを聞くとリンは、将軍が心理歴史学に興味を持っていると言った。三十年近く続いている研究。実用的なものを求めている。会議への同席を求めるドースだが、話が済むまでは無理だ、とリン。

テナール将軍とセルダンとの会談。三十年あまり費やしても実績を示すものがない事に不満の将軍。成果が出名kなら資金援助を止める。支持の中止は未来を投げ出す事。

時間が必要だ、と譲らないセルダン。
財政の話で税金の事が出たのを機に、セルダンは税務組織の問題に少し触れる。現在は複雑すぎる、と将軍自ら言う。
その直後、リン大佐とドースのホロビジョン映像が室内に現れた。

ドースの物理的影響力に不安を感じる将軍とリン。あの女が居る限り、セルダンの除去は困難。

 

ドースに腹を立てるセルダン。だが怯まないドースは、暗殺の可能性について究明するため、関係者への尋問を宣言した。

ユーゴ・アマリルへの聴取。プライム・レイディアントの事について聞く。この装置を使っているのは今のところセルダンとアマリルだけ。彼らの疲労の原因は?
重ねてセルダンが暗殺されるような可能性を訊ねるが、それはもちろんNOの見解。

レイチのアパートを訪問するセルダン。彼の計画とは、将軍に人頭税を実施させる事。税の簡素化の極致。
これだけで暴動が起こり、政府が転覆する。
そんな話の時にドースが乱入。彼女はセルダン暗殺の陰謀を暴こうとしている。その原因はワンダの夢。

 

実験室を訪れるドース。対象はシンダ・モネイという女子研究員。電子浄化器を開発したのは彼女。それを実用可能にする理論を考案したのがタムワイル・エラール。彼が業績を奪った?との問いを否定するモネイ。その装置のもっと強力なものを彼の指導で開発中。
ドースは、仮定の話として後継者の候補を問う。エラール教授?の言葉を肯定するモネイ。

逆に古い化石は?の問いにはアマリルの名を挙げた。

再びアマリルを訪れるドース。彼の様子を見て、休暇を考えた事はないかと訊ねるが、言下に否定するアマリル。そしてセルダンが最近後継者の件を口にするようになったと話す。そうなったらプロジェクト、心理歴史学はどうなるのかしら?
「もしハリが引退したら、私が後を継ぎます」と断定するアマリル。自分を辞めさせるためにここに来たのか?と背を向けるアマリル。

 

レイチとドースの会話。ワンダの話した「レモネード・デス」が頭から離れないドースを慰めるレイチ。
アマリルが、後継者問題で別人を選んだと早とちりした話をするとレイチは、彼の人格から見てそういう事はあり得ないと否定。それで全く新しい考えが浮かぶドース。

 

四日間も銀河図書館に詰めていたセルダンに苦情を言うドース。
そしてあの電子浄化器をどれぐらい使っているかと聞く。二年ほどとの答え。主にアマリルとセルダン。
あの装置が長期の影響を及ぼしていると言うドース。否定するセルダン。
ドースはここ一週間普段と違う事はしないで、とセルダンに頼む。

セルダンがアマリルに、明日暫定政権が人頭税を実施すると伝えた。暴動を予測するプライム・レイディアント。

 

会議室で対峙するドースとタムワイル・エラール。ドースが話す内容に「ありえない!」と否定する。
ドースは続ける。誕生パーティはエラールの発案。そして中央研究所を片付けて立入禁止にした。

その間に暫定政権の者と打ち合わせをした。
それからワンダの夢に出た「レモネード・デス」の言葉。強力な電子浄化器を作ったあなたたちは、その作者にちなんでそれをエラール・モネイ・クラリファイアとでも呼んでいた。殺人装置として。それがエラール・

モネイ・デスであり、ワンダはそれを「レモネード・デス」と聞いた。
「気分が良くないようですね」とエラール。
話し始めるエラール。あなたが生きている間は、大先生は安全。この件を暫定政権の人々に話した。彼らはなかなか信じなかったが、あなたが行った乱入事件により納得した。
電子浄化器は、人体には害を及ぼさないが、敏感な電子装置には有害かも知れない。もしロボットというようなものがあれば。だからあなたは今不快に感じている。
さようならを言いなさい。装置を最大出力に上げれば、あなたは過去のものになる。
「私はあなたが考えている以上にシールドが効いているかも知れませんよ」と言ってエラールに体当たりし、手刀を彼の首に打ち込んだ。脊椎が砕けエラールは絶命。これをセルダンに知らせなくてはならない。

 

セルダンの腕に倒れ込むドース。顔はよじれ、体は歪んでいる。彼女をベッドに横たえる。
エラールの死を伝えるドース。ついに人間を殺してしまった。
彼はあの装置を最大出力にして、ドースに致命的なダメージを与えた。再調整出来る者はいない。
ダニールが自分につけてくれた護衛。心理歴史学の成功を保証するためのもの。唯一の問題は、セルダンがその護衛に恋をしてしまった事。マネルラとワンダに後を託して機能を停止したドース。
市民の暴動を伝えるアマリル。


第四部 ワンダ・セルダン
銀河図書館で足を引きずりながら歩くハリ・セルダン。銀河地図を立体状に表示して議論している三人に注目。その特徴から「かぎ鼻」「はげ」「赤ほほ」と名付けられた者たちは、辺境の地アナクレオンに対する帝国の圧力誇示について議論していた。帝国の弱体化。赤ほほの聞いたセルダンの演説。
三人に話しかけるセルダン。銀河地図を操作するセルダンは、トランターを映し出す。驚くほど小さな世界。
その中の一人「赤ほほ」に明後日の午後四時、図書館の彼のオフィスで会いたいと伝えた。

 

七十歳の身に外出はこたえる。オフィスまで出向いて図書館長ラス・ゼノウに面会するセルダン。
ゼノウは、かねて依頼されていた「あれ」が見つかったという。アナクレオン属州のはずれにある理想的な世界。遠すぎるため植民化されなかった。無人探査時に付けられた名は「ターミナス」。

六年前に話が遡る。
十二歳になったワンダに妹ペリスが出来た。母親マネルラの関心はそちらに注がれる。セルダンはドースの喪失と夢の話しとの連環で、ワンダを避けていた。
ワンダの話し相手としての受け皿はユーゴ・アマリルだけ。彼女の悲しい顔を何とかしようと「きれいなものを見せてあげる」
それは心理歴史学研究用のプライム・レイディアント。「きれいね」と喜ぶワンダだが「でもあの部分は嫌いよ、間違っていると思うの」と指指す。問題の方程式を見るアマリル。

 

セルダンに相談するアマリル。淋しくしているワンダを慰めるため、プライム・レイディアントを見せた時、ある部分を美しくないと指摘した。気になってそこの見直しをしたら間違いが見つかった。
セルダンはその時、アマリル自身がその部分に疑問を抱いていたと聞き、ワンダが彼の心を読んだと言う。信じられないアマリル。その能力を持っていた者--ダニール。

レイチにワンダの読心能力の事を話すセルダン。思えばレイチ自身セルダン、ワイのラシェル、ジョラナム、マネルラを味方に引き入れた。
この事実解明の一端としてゲノム解析を彼女に行う必要性を説いた。
反対するマネルラを何とか説得してワンダを連れ、ゲノム分析装置を持つミーアン・エンデレッキ博士を訪ねるセルダン。細胞採取は腕から行われ、数分で終わった。
一ケ月以上経ち、結果を聞きに行くセルダンだが、常人に存在する程度の欠陥遺伝子があるほかは特に他者との違いは見つからないとのこと。

 

銀河図書館を自由に使える立場にあったセルダン。今回は別の目的で図書館長のラス・ゼノウに初めて面会した。それは図書館内に今より大きなスペースが欲しいという事。大勢の同僚を入れたい。
図書館に収蔵されている情報を集約するための事業:銀河百科事典を考えている。だがそれを否定するゼノウ。評議会は今の状態でさえ不快を感じている。自分から評議会への提案を申し出るセルダン。

衰弱したアマリルのベッドわきに座るセルダン。彼はまだ五十五歳、セルダン六十六歳。
心理歴史学は革命を起こしつつある、と励ますセルダン。
二年前アマリルが指摘したワンダの能力。そんな者を集めて第二ファウンデーションを作る。帝国の監視者。
素晴らしい!私のすべき事は何も残っていません、と言い残して息を引き取るアマリル。

 

そして現在。
評議員ジェナーロ・ママリーと対峙するセルダン。セルダン自身の図書館利用スペースは維持されるだろうが、同僚の分までは不可能だと言った。私から皇帝に話して予算増額が通ったら?というセルダン。

エイジス十四世に拝謁するセルダン。クレオンの傍系親族という理由で暫定政権の後に就いた。銀河図書館で部下と共に仕事をしたいという申し出に対し、帝国が慢性的な赤字を抱えている事を告げるエイジス。今彼に出来るのは、セルダンと親しいという印象付けを行う程度。
そして実現したエイジス十四世の図書館訪問。

ゼノウは、皇帝と親しくするセルダンを見て深い感銘を受けた。だが評議会は皇帝の図書館利用の便宜を図る改善は行うが、セルダンの要望は却下。金の裏付けがない限り実現しない。

 

銀河図書館に向かって足をひきずりながら歩くセルダン。考える時間が欲しかった。そんな彼に若者の集団が近づいて来た。目的はセルダンが持つクレジット。
八人相手では無理。その時、大きな声が聞こえた。それはレイチ。
ダール製のナイフを抜いて構える。ブラスターを引き抜くリーダー格の男に飛びつき喉を刺した。
残りの者が飛びかかった時、二人が刺されて転がる。一人死んで二人負傷。倒れている者らを連れて逃げる残りの者たち。
ワンダに教えられて来たというレイチ。二人の精神コンタクトを信じたセルダン。

 

新しい職を見つけたというレイチ。サンタンニ大学。トランターから九千パーセクの遠方。二ケ月後に皆で行くから一緒に行こうという提案。心理歴史学はライフワークだというセルダンに「失敗したんだよ」
レイチたちが出発する時期を迎え、ワンダが訪れた。自分はここに留まるという。でも両親をどうやって同意させたんだ?の問いに「押(プッシュ)したのよ」。他人の心の中が見える。それを押して望む事をさせられる。セルダン、アマリルの精神から心理歴史学を学んだ。もっと勉強したい。
資金がないんだよ、というセルダンに「見ててよ、おじいちゃん」

ある日、ワンダを伴ってセルダンが散歩をしていると、ワンダが後方から二人が迫っていると告げた。

プッシュ出来るか?の問いに「壁を押すみたい」
「来たわ!」の言葉で振り向きざまにその男を杖で打ち倒す。護身用に鉛を詰めていた。もう一人は逃げて行った。駆け付けた保安官が現場を見ており、正当防衛ではなく暴行殴打だと宣言。

抑留され、弁護士と接見するセルダン。陪審裁判を勧めるが、判事との対面を主張するワンダ。彼女のプッシュを感じてそれに同意するセルダン。
判事との対面。先に起きた八人による襲撃は警察にも報告されておらず、判事の心証は悪い。だが改めてハリ・セルダンの名前が心理歴史学の彼だと認識してから態度が急変。

倒された男が前科者だった事もあり不問にされた。
プッシュがうまく行かず、セルダンを守れなかった事を嘆くワンダ。

それを慰め、次の皇帝への拝謁時に同行してくれるよう頼む。

皇帝に拝謁するセルダンとワンダ。襲撃された事件を聞いて自分の無力を嘆く皇帝。公安委員会に対してセルダンが全く人気がないのを訝る。
そして心理歴史学についても四十年近く努力しても何もならなかった。それなら、もういいではないかとも。
失意の中、帰ろうとするセルダンに、企業家を訪ねて贈与を募る提案を受けた。

目に涙を溜めるワンダ。皇帝に言われて四つの会社を回ったが、求めているのが金だと判ると冷たくなった。
心理歴史学のピンチに良案がないセルダン。
「これからどうするの?」とワンダ。
二日前に図書館で会った三人のうちの一人「赤ほほ」に会う約束をしていたセルダン。それを果たしに行かなくてはならない。

 

その若者はきっかり四時にやって来た。名はステッティン・パルヴァー。彼の父ジョラミス・パルヴァーとは面識があった。
トランター外のランカノ大学を卒業して、現在働いている。ここでの研究を勧誘すると、僕には仕事があるんですと言いながら、心理歴史学を教えてもらえるなら、出せる範囲の給料で受けると言った。
もう一つの仕事を頼むセルダン。それはボディガード。「何とかなるでしょう」

ストリーリング大学そばを散歩するセルダンとステッティン。清掃が行き届かない事を嘆くが、その先でゴミを投げ捨てる少年を見て怒鳴りつけるセルダン。
何かを聞こうとして集中しているステッティンを見て絶句するセルダン。その直後「すぐに逃げないと」
だが追い付かれた。相手は二人組。男が口上を言っている間にステッティンが一人に蹴りを入れて倒し、もう一人はセルダンが杖で倒した。
また関わると何もかも失う、とセルダンを連れて逃げるステッティン。だがそれを陰で見ていた少年が保安官を呼びに行った。それはセルダンがポイ捨てを叱った相手。

 

傷害事件裁判の公聴会。被告はセルダンとステッティン・パルヴァー。三人の若いトランター人を殴った罪。

弁護士、そしてセルダン自身の弁論。
次に目撃者の証言が行われた。ライアル・ネヴァス。セルダンがゴミのポイ捨てを注意した少年だった。セルダンたちがが一方的に手を出したとの証言。嘘だ!と怒鳴るセルダンに警告を出す裁判官。
だが話すうちにそわそわし始めるネヴァス。ブロンドの美しい女性(ワンダ)の強い視線。ネヴァスが被告席の方に目をやると、そこにはステッティンの視線。(真実を話せ!)の心の声。
裁判官が目撃の矛盾を突く。全ての目が注がれる。ネヴァスはセルダンを見やり「ごめんなさい!」と言って泣き出した。

 

暴行殴打事件が全て解決し、新任図書館長のトライマ・アカーニオに面会するセルダン。前任者のラス・ゼノウからの引き継ぎを期待したが、彼との間で進めて来たターミナスでの百科事典プロジェクトの推進について否定的に語るアカーニオ。
今回事件であなたは、帝国内で先駆的な心理歴史学者ではなく、帝国の破滅を騒ぎ立てる狂人として注目されてしまった。この図書館自体も笑い者にされる。セルダンの、図書館での特権停止が宣言された。

 

プライム・レイディアントで、アマリルの研究を引き継いでいるワンダ。方程式の見直しで作業の進展があった事をセルダンに報告。ターミナスを働かせるため、別の場所に釣り合いの重りを配置する。それで完全な調和が図れる。
だがその時、レイチからの緊急メッセージ。政府が倒れ、暫定派に乗っ取られた。大学を守るためレイチは残ると言い、マネルラとペリスは第七アーカディア号で脱出したと話した。通信はそこで途絶える。
その後軍部を通じて情報を集めても状況が判らない。最後の手段でエイジス十四世にも頼み込むが、結局レイチの死が確認され、マネルラとベリスは不明のまま。

失意の中でもワンダは研究を続け、未来が形を現し始めるのを感じていた。百科事典編纂者をターミナスに定着させ、それがファウンデーションになる。だが肝心のセルダンが全く気力を失ってしまった。

 

花壇で手入れをしているワンダに話しかけるステッティン・パルヴァー。ボディガードをしているセルダンの事を心配していた。数度の言葉のやりとりの中で、ある考えが浮かぶワンダ。
「あなたは人の心を操作することが出来るのね?」二人はこの事実をセルダンに伝えるために急いだ。

信じられないセルダン。能力を持った者が二人、こんな近くに居た。ワンダは研究に没頭してステッティンに会う機会がなかった。唯一あの公聴会で会った時、目撃者の少年に「事実を話せ」と偶然二人同時に念じた。

それがあの少年を崩した。
ステッティンが話す。
「ワンダと僕が突破口なんです」

図書館長のアカーニオに再び面会するセルダン。今度はワンダとステッティンを同行させている。
五分だけという条件で話を聞き始めるアカーニオ。ワンダが心理歴史学の意義について「保存」の側面を強調。文明の衰退を予言すると共にそれを保存するのが銀河百科事典の目的。
この若い娘の、否定出来ない魅力に引き寄せられるアカーニオ。破壊ではなく保存の問題・・・
後を継いでステッティンが、この図書館こそが帝国の知識、歴史の総体であり、この保存の価値は計り知れないと話す。
まったく突然に、セルダンの事業が至極当然の事に思われたアカーニオは職員、資金の増強を確約した。
図書館を辞し、セルダンは二人に、これからは極力二人で歩き回り、他の精神作用能力者を探すように言った。

 

セルダンの研究室で待つワンダとステッティン、そしてもう一人の男。セルダンが来てその男性はボー・アルリンと名乗った。商店街でワンダが出したシグナルに反応した。

プロジェクトへの参加を表明するアルリン。
セルダンのプラン。六年前、ワンダの能力を知ってから考えていた事。もう一つのファウンデーションは秘匿され、第一ファウンデーションのボディガードでなくてはならない。

そのためにもっと仲間を見つける必要がある。
私たちはどこへ行くの?というワンダに、セルダンは彼女の手を掴んだ。「セクション33A2D17-星界の端(スターズ・エンド)ね」

 

第五部 エピローグ
ハリ・セルダンの独白。
心理歴史学の進歩を考えるあまり、関わり合って来た人たちをないがしろにして来たかも知れない。
先月「危機ホログラム」のレコーディングを終えた。それはセルダン廟に納められ、将来適切な指示を出すだろう。
先月ガールから便りがあった。ターミナスではうまくやっている。「流刑地」のボー・アルリンらも元気。過去十年にワンダとステッティンは数十名の仲間を見出した。あの二人が「スターズ・エンド」に行く事が必須

だった。
ここを引き払い、大学に返すつもり。

手許に残るのはプライム・レイディアントだけ。
私には見える。しっかりとした希望の光・・・・スターズ・エンド。
これが--わたしのライフワークだった。

わたしの過去-人類の未来。ファウンデーション。すごく楽しく、すごく生き生きしている。そして、なにものも・・・・ ドース! 

 

八十一歳で生涯を閉じるセルダン。

 

 

 

ジャッキー・ブラウン   1997年

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監督・脚本 クエンティン・タランティーノ

 

キャスト
ジャッキー・ブラウン     - パム・グリア
オデール・ロビー       - サミュエル・L・ジャクソン
マックス・チェリー       - ロバート・フォスター
ルイス・ガーラ         - ロバート・デ・ニーロ
メラニー・ラルストン      - ブリジット・フォンダ
レイ・ニコレット          - マイケル・キートン
マーク・ダーガス        - マイケル・ボーウェン
ボーマン・リヴィングストン  - クリス・タッカー

 

 

予告編

 

感想
「110番街交差点」をテーマ曲にしている、という以外は全く予備知識なしで観たので、最初は主役女性が警察関係者か、空港警備かなんかだと思っていた。
それが行きついた先が搭乗口だったので「アア、FAか」。

最初がけっこうダラダラと、銃の名前やら性能やらの話だったので、ちょっと気分が落ちたが、中盤以降は、金のスリ替えのトリックもあってなかなか面白かった。

 

びっくりなのは、あのロバート・デ・ニーロの使い方。この時期でもけっこう大物なのに、ムショを出たばかりの半ボケのおっさんなんかやらせて、そのあげくブチ切れて女を殺したと思ったら、あっさりオデールに殺

されちゃって、まあ、かわいそう。

 

サミュエル・L・ジャクソンは「ダイハード3」のゼウス役とか「シールド」のフューリー長官役で「イイ奴」の印象が強いので、最初は少し違和感あったが、さすが役者、クズを演じきっていた。

薄給の中年FAが、警察にハメられたのを逆に利用して50万ドルせしめてしまう。題名が女の名前なんて、結構安直だが、話の内容も気取ってなくて潔い。

保釈屋のマックスが、いい。今まで一万人以上保釈して来て、犯罪者をイヤというほど見ているからこその堅実な仕事ぶり。だがジャッキーに会った事で、そろそろ引退を考える。
そして自分の役割りを確実にこなし、手数料もきっちり一割と決めて、ジャッキーを見送る。
初老の男の、何とも言えないカッコよさ。見習いたいものだ。

 

ちょっとツッコミ
もしメラニーとルイスが死ななかったら、さすがに全部の口封じは無理だろう。その時はどうするつもりだったのか。
オデールがバカでキレやすいという事を承知してたのかな?ジャッキーは。

この映画、タランティーノがパム・グリアを使いたいために作ったとか。

 


あらすじ
オープニング:黒人の制服女性が、歩く舗道を進む。

 

マンションの一室でビデオ「銃マニアの女たち」を観る男二人。黒人はオデール、白人はルイス。そばでゴロゴロしている女はメラニー。

 

ビデオの女が持っている銃に解説をするオデール。めっぽう詳しい。ルイスは四日前に出所。オデールの仕事は銃の密売。

 

オデールの相棒のボーマンが無免許で捕まり、銃の不法所持も見つかった。
保釈金融業者のマックスの所へ行き、保釈手続きの依頼をするオデール。保釈金1万ドル、手数料は1000ドル。

金はあるが信用がないため、業者が必要。
保釈されたボーマンを訪ね、仕事だと引っ張り出すオデール。韓国人に銃を売るから、争いになった時のためにトランクに隠れていろ、と言って入らせ、適当に近所を廻った後、射殺する。
ルイスへの説明。ボーマンは前科もあり、裁判前に司法取引でもされたらこっちに足がつく。組むんだったら覚悟しろ、とルイスに言った。

 

客室乗務員を呼び止めるATF(爆発物取締局)のレイと、ロス市警のマーク。いきなり持ち物検査。5万ドル出て来る。1万以上は申告が必要。その上麻薬まで出て来た。俺たちと話すか税関と話すか・・・・警察に引っ張られる女。
女はジャクリーン(ジャッキー)・ブラウン。44歳。前科があったが、小さなメキシコ路線のFA(フライト・アテンダント)として細々とやって来た。ボーマンが殺された。何か知っているだろう。情報提供で協力しろ、と言うレイに一切口を割らず留置されるジャッキー。保釈金は1万ドル。6週間後に裁判。その話を聞いていたオデール。

 

再びマックスを訪れるオデール。今度はジャッキーの保釈。ボーマンが死んだから、その時の保釈金を回せと言う。
保釈されたジャッキーを迎えに行くマックス。一目でジャッキーに惹かれる。


待ち伏せしていたオデールに詰問されるジャッキー。自分は喋っていない、ボーマンが話した。メキシコに金がある事も知っている。麻薬は仕込まれたもの。
警察から司法取引しろと言われている。あんたを売れば罪の帳消しと10万もらえる→私にいいアイデアがある。

 

翌日ジャッキーの元へマックスが来る。対オデールのために、マックスの車から無断で銃を借りていた。オデールとの事を話すジャッキー。

金の密輸をずっとやっている。

オデールはメキシコに50万以上持っている。
FAで20年やって来た。職を失ったらもう後がない。
マックスには警察に協力すると話すが、チャンスがあったら50万奪うか?と聞くジャッキー。それには明確に答えないが、ジャッキーを見たことで、この仕事をそろそろ止めようかと思った、と話すマックス。

 

オデールの留守宅で話すルイスとメラニー。ルイスとオデールは刑務所仲間。最後に会ったのは7年前。
日本で男がいたメラニー(名前はヒロシ)。オデールにバカ女と言われているが、音読でしか本が読めない、とメラニーの方でも彼をバカにしている。
「ファックする?」と言われてすぐ乗るルイス。

 

警察、オデール双方が知った上での検挙作戦。金の移動のため、ジャッキーに出国許可が出る。
最初1万でやって、次に50万。
受け渡しを成功させるという前提で、50万の15%をオデールに要求するジャッキー。

レイに、2回目の金額が5万に変更になったと話すジャッキー。レイの最終目的は銃密売検挙なので、深くは追及されなかった。

最初の一万の受け渡し(カフェエリアでの買い物袋の差し替え)で、オデールが打ち合わせと違う事をやり、ジャッキーが激怒。

 

次回の受け渡しはブティックの試着室、とジャッキーが決めた。受け渡しに使う女はメラニー。

2回目の受け渡し。証拠を押さえるため、移動する5万ドルに印を付けるレイ。
受け渡しメンバーはメラニーとルイス。支度に手間取り、時間ギリギリに着く二人。
受け渡しのブティックに向かうジャッキー。店でスーツを試着し、買うからと言ってまた試着室へ戻る。
試着室で大きいバッグを開け、まず紙袋に小物を入れてから札束を数個入れ、そのうちの一束を別にすると衣類で隠した。札束一つはその上へ。
ドアの外にその袋を出しておくと、メラニーが取りに来る。
ジャッキーが「それは貴女のよ、オデールはくれないわ」と言う(一番上の札束の事)。礼を言うメラニー。
その後ジャッキーは別の紙袋に残りの金を入れ、タオルの束でそれを隠すと、そのまま置いてレジに行く。
レジの女性に、キャッシュでスーツ代を払い、試着室に荷物の忘れ物があると言い残して立ち去るジャッキー。その後急にうろたえて歩き回り、待機しているレイの名前を呼ぶ。

 

場面繰り返しその1
ブティックの前で様子を見るメラニーとルイス。そこで偶然マックスの姿を見掛けるルイス。だが誰か思い出せない。ジャッキーが試着室に入り、頃合いを見てメラニーが袋を取りに行く。

ルイスと二人で駐車場に戻る。途中で袋を無理やり奪うルイスだが、車の置き場所を忘れて迷う。メラニーが判っていてバカにする。それを繰り返すうちにルイスがキレて、メラニーに銃を二発撃って殺してしまう。

 

場面繰り返しその2
ブティックの前に居るマックス。ジャッキーが服の支払いを終え、立ち去った後に店を訪れる。
「ワイフが忘れ物をしたらしい」と店員に言うと、一番奥の試着室だと指さす。そのまま試着室の一番奥に行き、中身を確認。そして悠々と駐車場に行って帰宅。

ルイスと落ち合って金を受け取るオデール。本来50万ドルある筈が4万しかない。ルイスは何の事か全く判らない。責められるうちに、ブティックの前にいた男がマックスだと思い出したルイス。それで全てを悟ったオデール。袋の重さをごまかすために小物を入れる知恵もジャッキーならでは。
どうして気が付かなかったと責めまくるオデールに、まともに言い返すルイス。オデールがブチ切れてルイスを撃ち殺す。

 

警察ではジャッキーが何かやったと疑ったが、ルイスが死んだ事と、メラニーも死んでかつ、印の付いた1万ドルを持っていたため、金を持っているのはオデールと確信し、捜査に協力したジャッキーを不起訴として釈放。

 

オデールからマックスへの電話。マックスは、ジャッキーが金を返したいと言っていると伝え、自分もジャッキーの保釈金の返却分、1万を返したいと言う。金は山分けにするつもりだったが、怖くなったと言い訳。
マックスの事務所でジャッキーが待っていると伝え、そこに向かうオデールとマックス。
暗い事務所で、まずオデールが部屋に入って来た時、ジャッキーが「銃を持っている!」と叫ぶと銃声がしてオデールが倒れる。即死。

 

撃ったのはレイ。ジャッキーがあらかじめ呼んでいた。

数日後、マックスの事務所を訪れるジャッキー。マックスは50万ドルの1割だけを割り引いて、ジャッキーに金を郵送していた。
もっと取り分を受け取って欲しいと言うジャッキーに「これで十分だ」。

 

スペインに行くというジャッキーはマックスを誘うが、断られる。

一人、車を走らせるジャッキー。バックに流れる「110番街交差点」のテーマ。

 

 

 

 

 

 

世界にひとつのプレイブック    2012年

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監督 デヴィッド・O・ラッセル
脚本 デヴィッド・O・ラッセル
原作 マシュー・クイック

 

キャスト
パット             - ブラッドレイ・クーパー
ティファニー        - ジェニファー・ローレンス
パット(シニア)      - ロバート・デ・ニーロ: パットの父親
ドロレス           - ジャッキー・ウィーヴァー: パットの母親
ダニー・マクダニエルズ   - クリス・タッカー: パットの友人
クリフ・パテル医師   - アヌパム・カー: パットの主治医
ロニー            - ジョン・オーティス: パットの友人
ジェイク           - シェー・ウィガム: パットの兄。弁護士
ヴェロニカ       - ジュリア・スタイルズ

                             : ティファニーの姉。ロニーの妻
ランディ       - ポール・ハーマン : パット(シニア)の賭博仲間
キーオ巡査       - ダッシュ・ミホク: 地元の担当警官。
ニッキ          - ブレア・ビー: パットの元妻

 

 

予告編

 

 

 

 

感想

BSプレミアムで放送されたので、何気なく録画したもの(ロバート・デニーロつながりで・・・)
パットが精神病院で生活している場面から始まり、すぐ声を上げたり、イラついたりするのを見て、がっくりとテンションが下がった。
精神的に不安定な人間を見るのは、心地よいものではない。
ただ、次第に背景が判って来るに従って、パットに少し同情。

それに輪をかけてオカシイのがティファニー。ダンナに死なれたショックで同僚とSEXしまくって、セラピーを受ける事になるとは。
男とヤルより女とヤル(レズビアン)方がイカれていると考える価値判断は、アメリカを代表した思考なのか?(まあいいけど・・・)

 

パットの方も、途中の説明で夫の死の真相が判ってからは、精神の病のきっかけが、どこにでも転がっているんだと再認識。
この話をしてから、ティファニーがダンスの手ほどきをする時の場面で流れる音楽(ボブ・ディランの「北国の少女」)がイイ。YouTubeの貼り付けが出来ないのでこちら

ロバート・デニーロ演ずる父親もなかなか存在感があった。店の開業資金まで賭けに注ぎ込んでしまう不良オヤジ。兄貴は弁護士で、勝ち組人生をひけらかすイヤな奴だが、アメフトに関しては兄弟が一心同体になれる。

 

ストーリーとしては、さほど深いものはないが、人それぞれ持っているクレイジーな部分も含めて、人間性として包んであげる、そんな理想を形にしたファンタジーとして良作。
傷を持つ者だからこそ相手の気持ちが判る。
しかしランニングのコースを教えたのが母親だったのには笑った。

 

ジェニファー・ローレンスは、先日やった「レッド・スパロー」で大胆な演技を行ったが、今回の映画でオスカーの主演女優賞を取ったらしい。この時21歳。
彼女、X-MENのミスティークなんだよね。あの映画観ている時は知らなかった。青くペイントしてるけど、ものすごく大胆なヌードだったんだ・・・
無表情の時、けっこう仏頂面なので、あまりかわいいというイメージがないが、今や大女優。
2014年にヌード画像流出でかなり被害を受けた様だ。

 

 

あらすじ
高校教師のパット。精神病院での治療を受け、母の車で自宅へ一時退院。本来薬の治療が必要だが、副作用がイヤで飲むのを誤魔化すパット。


元々躁鬱病だったのだが、同じ職場の妻ニッキが、自宅で同僚と浮気しているのに遭遇して暴行。そのため裁判所から入院と、ニッキへの接近禁止が言い渡された。その事件の時、音楽が流れていた事で「マイ・シェリー・アモール」を聞くととたんに不安定になる。

 

家に帰ると父親が仕事もぜずアメフトの賭け(ノミ行為)に没頭。仲間のランディと賭け合っている一方、レストランを開業するつもりで金も貯めている。
家に帰っても、読書や音楽のせいで常に不安定になり騒ぐパット。その度に警官が来る。


主治医にニッキとの面会を願い出るパットだが相手にされない。

友人のロニーがそんなパットを夕食に誘う。

ロニーの妻ヴェロニカが妹のティファニーを同席させていた。
場を持たせるための配慮だったが、警官だった亭主に死なれ、不安定になって薬物治療を受けているティファニーに、薬の話で妙に盛り上がるパット。

パットが行うランニングに、偶然を装ってつきまとうティファニー。

 

主治医が、もしティファニーの傷心を癒す事が出来れば、心証が良くなってニッキにも会えるかも知れないと言う。
それでティファニーを食事に誘うパットだが、正式な食事じゃない、とシリアルを注文。反発して紅茶を頼むティファニー。夫に死なれてからのティファニーの行動を聞かされて驚くパット。女性を含む同僚全てと肉体関係を持ったティファニー。


女性とも関係した事にパットが大げさに反応したため、怒った彼女は、少年たちとトラブルになりそうだったパットを警官に突き出す。だがそのトラブルの理由が例の音楽絡みだったと知り、警察に説明して事なきを得る。

 

ティファニーとヴェロニカの姉妹がニッキの友人である事から、パットはティファニーへ、ニッキに手紙を出して欲しいと頼む。
今ダンスにハマっているティファニーは、ダンスを一緒にしてくれたら出してあげると言う。
渋々ながらそれを飲むパット。だがダンスを始めると、パット自身の精神も落ち着いて来た。
休憩時にティファニーが話す夫トミーの死因。結婚して3年。彼は子供を欲しがり、彼女は自分の事で精一杯。ある日彼はシークレット・ショップへセクシー下着を買いに行った。帰りに故障車を助けようとして後続車に轢かれた。何が悪かったの? 沈黙するパット。

 

パットが一緒にTVの試合を見るとイーグルスが勝つ事から、次の日曜は兄と一緒にスタジアムに行って応援してくれと頼む父。
だがその日はダンスの練習をティファニーと約束していた。コンテストが迫っている。
父はレストランの開業資金まで賭けにつぎ込んでおり、逃げられないパットは、ティファニー相談。
こちらに気持ちを引き込むため、ティファニーはニッキからの手紙があると言い、それを見せる。
安心出来る証明が必要、とそこに書かれていた。

 

結局パットは試合に行く。スタジアムでファン同士のケンカに巻き込まれ、試合は負けるしティファニーとの約束も守れなかった。

パットの家に怒鳴り込むティファニー。父が、ティファニーがパットと付き合っているから運が逃げたと非難。
逆にティファニーは、パットと会っている時にいつもイーグルスが勝っていると論破。
もう金がない父に、再度賭けをする様けしかけるティファニー。

受ける側のランディはなかなか承諾しない。
アメフトの勝敗に加えてティファニーらが出場するダンス大会の得点までそれに加える(10点満点中の5点以上が条件)。それで賭けは成立。

試合は一週間後。

 

賭けに乗り気でないパットは外に出てニッキからの手紙を読む。手紙はティファニーが書いたものだと気付く(signという単語で気付く)。
一方ティファニーは最後の手段として、ニッキが試合を見に来る、とパットに嘘をつくよう両親に言う。

ダンス当日。ロニー夫妻が本当にニッキを連れて来てしまった。

ニッキは主治医から、パットがダンスに励んでいる事を聞いていた。
ティファニーは、試合結果に関わらず、パットがダンスにより立ち直った事をニッキが知れば復縁してしまうと思い込み、ヤケになる。
そして会場のバーで酒を飲み始める。

 

出番が迫り、パットがティファニーを何とか探し出す。酔いつぶれる程ではないが、気の入らないティファニー。

 

ダンスが始まり、息の合ったステップが続く。アメフトの試合は大差でイーグルスが勝ち、後はダンスの結果次第。
最後の大技で、パットが彼女をリフトアップする場面。上りきらずにティファニーの股間がまともにパットの顔面に。
それを何とかまとめてフィニッシュ。


審査員4人の平均得点は「5.0」。賭けには見事に勝った。
パットがニッキのもとへ歩いて行くのを見て、会場を飛び出すティファニー。

 

父が助言をしてパットを送り出す。

ティファニーに追い付いたパットは、手紙を渡す。
・・・・僕のためにクレイジーな代筆をした。ありがとう。過去にとらわれて気付くのが遅れてごめん。愛しているよ。 パット--
この手紙は一週間前に書いたという。

「一週間も前から、私をだましてたの?」  「ロマンチックだろ?」
キスをする二人。


パット独白
人生は いろんな方法で人を傷付ける。うまく言えないが 誰だってクレイジーな部分はあるだろ?
また日曜が好きになった。
みんなに助けてもらって 僕は本当に幸運な男だ。

 

 

ミクロの決死圏    1966年

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監督 リチャード・フライシャー
脚本 ハリー・クライナー

 

キャスト
グラント                   スティーヴン・ボイド
コーラ・ピーターソン         ラクエル・ウェルチ
カーター将軍             エドモンド・オブライエン
マイケルズ博士           ドナルド・プレザンス 
ドナルド・リード大佐         アーサー・オコンネル
ビル・オーウェンス海軍大佐  ウィリアム・レッドフィールド
デュヴァル博士           アーサー・ケネディ
ヤン・ベネシュ博士        ジーン・デル・ヴァル

 

予告編

 

ロングバージョン


感想
有名なSF映画だが、実は初見だった。先日TV放送されていたものの録画。
この年代にしてはかなりチャレンジングな映画。荒唐無稽なりに、医学的な考証もある程度キチンとしていて、瘻孔によるコース逸脱、心臓通過、空気の補給等スリリングな場面の演出も「なるほど」とナットク出来る進行だった。

 

つっこみどころはたくさんある。だがこのテの映画で「つっこんでどーする」てな気分もあり、まあそこそこに・・・・

 

そもそも縮小化技術の権威であるベネシュ博士の持つ技術が欲しかったのに、その博士を助けるのに縮小化技術が使えるなら、別に亡命の必要もなかった様な・・・・

血液もリンパ液も、かなりの高粘度。あんな風にスイスイ泳げるわけない(それを言っちゃあおしまいよ・・・)
同様に、水中で使えるレーザー銃も「凄いナー」と言うばかり。

心臓を止める必要があり検討する所で、計算尺を使う場面が出て来てのけぞった。まあ年代的に言えば「確かに」。東京タワーも基礎計算は計算尺で行ったと学校で教わった(どんな構造物も3桁までの計算で作れる)。

 

コーラ役のラクエル・ウェルチ。当代きってのグラマー女優だったそうで、ウエットスーツは胸の形がバッチリ判るほどピチピチ。白血球に襲われて抗体が体にびっしり付いたのを皆ではがす場面では、みんなが彼女にさわりまくり。ボーナス映像でした。

後半でマイケルズや潜水艇自身が白血球にやられるのはいいけど、残った残骸が元のサイズに戻ったら、とんでもない事になる筈。

 

この脚本を受けてアイザック・アシモフがノベライズを書いたらしい(ちょっと興味ある)。

 

 

あらすじ
情報部員のグラントは、軍の組織(極小抑止連合会)に連れて来られ、チームに加わる様指示される。


彼が亡命に協力した東側の科学者ベネシュ博士が脳に負傷した。彼は物体の縮小化技術の権威。
外科手術不可能な場所の損傷であり、命を救うには、潜航艇を細菌サイズにまで縮小して脳まで送り込み、治療する必要がある。治療はレーザーで行う。
縮小化技術はまだ未完成であり、60分しか縮小化出来ない。チームはグラントを入れて五人。

 

段階的な縮小を経て注射器から動脈に送り込まれる潜航艇「プロメウス号」(帰りは静脈)。


 

 

 

途中でコースを逸脱。負傷の影響で出来た瘻孔で別の血管に入った。このままで行くと心臓に入ってバラバラになる。
通過の間、心臓を止める方法で何とか弁を通過(停止期間は60秒)。

衝撃の影響で空気タンクに漏れが生じ、帰還まで空気が持たない。

胸膜を通って肺胞まで行き、空気を補給。

 

リンパ節の経路を通って脳向かうが、先の衝撃でレーザー銃の損傷も見つかる。通信機の部品を使っての修理を敢行。よってそれ以降の通信が途絶。
またこのままでは間に合わないため、耳管を通過するコースに変更。
外ではその意図を察して、通過の間音を立てないよう指示。だが医師が器具を落として潜航艇が衝撃を受ける。

 

何とかそれも乗り越えて脳の深部に向かうプロメウス号。途中吸水口の詰まりを除去する作業で、コーラが白血球に攻撃される。皆で救助。


何とか患部に到着するが、残り時間はあと6分。グラントらが治療を行うが、船内に残ったマイケルズが敵側の者で、船を乗っ取って逃げる。
だが白血球に襲われて取り込まれるマイケルズ。

 

治療は終えたが船を失った残りの4名は、光のさす方向に泳ぐ。外でも彼らが目から脱出しようとしているのを察知して、涙腺を刺激。
目から脱出した彼らをスライドガラスで受ける。無事に生還した4人。

 

 

 

 

新聞小説 「ひこばえ」 (7)  重松 清

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新聞小説 「ひこばえ」(7)  10/12(129)~10/30(147)
作:重松 清  画:川上 和生

 

第六章 カロリーヌおじいちゃん 1~18
父が借りていた本を返却するため、和泉台ハイツから徒歩十分ほどの和泉台団地に向かう洋一郎。大家の川端久子さんが先導。
自分たちが昔暮らした団地に驚くほど似たその佇まい。


私設の図書館「和泉台文庫」の成り立ちについて説明する川端さん。住民同士の交流を目的として、有志の寄付により今では蔵書三千冊。
川端さんもここへ来るのは初めて。

 

高校生風の女性に声を掛けるとすぐやって来た。「田辺(娘)」の名札。
事情を説明する川端さんだが、ピンと来ていない。彼女は臨時の手伝いであり、もう一人に声をかけた。
その女性の名札には「田辺(母)」とあった。

娘は陽菜、母は麻美さんといった。創設当時からのスタッフ。
川端さんの説明に麻美さんは「石井さんが?」と返した。

週に一度は来ていたので父の事は良く知っていた。

 

登録後しばらくは、毎日の様に来て「カロリーヌ」の名を冠した児童本を全巻読破した。


「カロリーヌおじいちゃん」とは、いつも同じ席でその本を読んでいた父についたあだ名。
カロリーヌの名前に記憶があり、麻美さんが持って来た本を見て驚く洋一郎。家にもこの本のシリーズがあった。
元々は洋一郎が小学校に上がる時に買ってもらったものだが、姉の方が夢中になった。幼少期の大事な記憶。
貸し出し用にあったのは復刻版だが、たまたまあったオリジナルを見せた時、父は涙を流したという。
また、常連になった父に、イベントの朗読劇で子供を見送るおじいさんの役を頼み込んでやってもらったと話す麻美さん。

彼女にとっては「いい人」でしかない。

洋一郎は父と自分、母や姉との事を麻美さんに説明した。

家族を捨てた男。

驚いた麻美さんだが、思い出した様に、朗読劇の時、相手の子どもが姉弟の二人だったのがやり難かったと言われた話をした。
麻美さんのところで父が写った写真がないか探してもらったところ、武蔵野電鉄の広報誌「ムサQ」に掲載された和泉台文庫の記事に、後ろ姿ではあるが父の姿が写り込んでいた。
全体の佇まいに既視感があった。

 

その話を姉にした。話を聞くやいなや怒り出す姉。カロリーヌの本は、姉も自分の娘に復刻版を買って読ませていた。

 

すらすらと登場人物の名前が出て来る。だが今の父の話を聞いて、もう二度と読み返さないと言った姉。
その話は早々に切り上げられ、孫の遼星の話に入る姉。母への連絡を妻の夏子にさせた事を叱る。
だが自分が話した時に、父の事を隠しおおせる自信がなかった。姉からは絶対話してはダメと言われていた。
なおも食い下がる様に、父が「原爆句抄」を借りた時のいきさつ、麻美さんに話した尾崎放哉や山頭火の様なフラフラした生き方に惹かれる、といった話もしてみた。
「そんなのどうでもいい」とにべもなく断ずる姉。
母はもう八十過ぎ。長谷川のお義父さんと四十年近く連れ添って、今は血縁のない長男の家族と気兼ねしながら暮らしている。
姉が見て来た母の様々な苦労。泣いているところも、土下座して謝っているところも。その全ての出発点は「あのひと」なんだから。


父が残していた、携帯電話のアドレス帳や、カレンダーに残していた誕生日の事を話しても、無言で電話を切った姉。

 

その夜、帰宅した夏子に父の事を初めて話した。実の父親の話など、この三十年の付き合いの中で、数えるほどしかしていない。
子供や孫にやっかいな事を背負わさないのも私たちの務めだと言う夏子。
遺骨を手元に置いた方がいいという住職の話には「だめよ、そんなの」と一瞬での答え。

 

寝酒を飲みながら、和泉台文庫で借りて来た「カロリーヌとおともだち」のページをめくる。
姉と一緒に読むカロリーヌの本。母の姿の向こうにごろんと横になってタバコをふかしている父の姿。


懐かしさでまぶたの裏がじんわりと熱くなった。

 

 

 

感想
父が借りていた本を返しに行った「和泉台文庫」を巡る話。
洋一郎や姉にとって幼少期の重要な位置を占める「カロリーヌもの」の児童書。それを懐かしく読み返していた父の姿。
だが父にとってその思い出は悔恨の固まりでもある筈。

事実姉は、カロリーヌと父が繋がった事を知っただけで「もう二度と読み返さない」と激怒。
洋一郎が、ノー天気に懐かしがっているだけなのにもかなり違和感。

 

ただ、これを読んで思い出すのは重松の過去作「流星ワゴン」。

事故死して車ごと幽霊になった親子と共に、危篤の父の過去を巡る旅に出掛ける男の話。父の若い時の姿「チュウさん」を通して父が若い時に出会った人生の分岐点に立ち会う。

 

父が、一体どうして母と別れてしまう事になったかという、究明のナビゲーターとして洋一郎を設定し、架空ではない「実世界」の話として構築しようとしているのか?

 

ところで、「カロリーヌとおともだち」は実在する絵本。
絵本ではあるけど、その筆致は子供こどもしておらず、細かく描き込まれた内容は、確かに部分ごと様々な物語を膨らませる事が出来る。

 

 

 

ゲド戦記 (映画)    2006年

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監督・脚本 宮﨑吾朗

原案      宮崎駿『シュナの旅』
原作      アーシュラ・K・ル=グウィン

 

キャスト
アレン(レバンネン)   岡田准一
テルー(テハヌー)   手嶌葵 
ハイタカ(ゲド)       菅原文太 
テナー            風吹ジュン
クモ              田中裕子
ウサギ           香川照之 
国王             小林薫
王妃             夏川結衣 
女主人           倍賞美津子 
ハジア売り         内藤剛志 

 

 

予告編

 

感想
公開後数年してからTV放映を観て、父殺しの場面だけで「こらーあかん」と決め付けていた。
今年になって原作を全部読破し、映画がどれぐらいダメなのかを確認するつもりで今回の視聴。
だが結論を言えば、アレンの父殺しは原作の第一巻で、ゲドが自分の未熟さのために大賢人を死なせてしまった件を、アレンに置き換えて入れ込んだもの。重大な過失を表現する方法論として全否定は出来ない、カナ?

テナーについても断片的ではあるが、アチュアンの墓所からゲドが助けてくれたと、第二巻のエピソードを盛り込んでいる。

 

メインとなっているクモとの戦いは第三巻。原作ではテナー、テルーとも絡まないが、魔法が使えなくなって殺されそうになるゲドとテナーを、テルーが竜を呼び寄せて助けるというエピソードは、第四巻の最後に出て来る。更に第五巻でテルーは竜のテハヌーとなる。
ウサギも原作で出て来るがこちらは、生死の扉の秘密を知りたくて、魔法の能力を売り渡してしまう弱い男が本来の設定。

 

アレンの経験した、影との確執(実は若い時のゲドだが)の末にまた一つに戻って、より強い人間になるところや、アレンとゲドとの会話、またクモとの戦いの中で語られる「死ぬこと」「生きること」の意味についての言及は、原作の意図した生死論が、ある程度反映されている(あくまでも「ある程度」だが)。

 

あちこちで言われている「吾朗が父親への反発で殺した」みたいな事はないだろう。
死に対する過度の恐怖が膨れ上がる事で、精神のバランスを崩すのは、現代社会でも十分起こり得ること。
そんな心をいま一度リセットするのにはいい映画と言えるか。
小説だと読破するのに数週間かかるが、映画なら二時間・・・・
情報量が多いので、このレビューを読んだ後に観ても十分。

 

ところで、岡田准一オーラなさすぎ(笑)

 

 

あらすじ

 

 ことばは沈黙に
 光は闇に
 生は死の中にこそあるものなれ
 飛翔せるタカの
 虚空にこそ輝ける如くに
 -エアの創造-

 

嵐の海を渡る船。風の長が真の名を思い出せずにうろたえる。
竜が二頭現れ、空で戦いを始める。一方は死んで海に落ちる。「竜が食い合うなんて・・・・」

 

エンラッド王国。羊や牛、乳児の大量死について報告を受ける国王は、感染拡大防止策を指示する。光が弱っている。、と魔法使いの言葉。


下女が王子アレンの不在を訴える。

たしなめる王女は心配いらないと否定。
一人になった国王に向かって走る影。

アレンが刺した。狂った目。国宝は絶命。

 

多数の船が打ち上げられた浜に降り立つ男。砂漠で野犬に追われる若者を助ける。男はハイタカ、若者はアレン。アレンの持つ剣は魔法で鍛えられたもの。エンラッドの血の者かと訊ねるが答えはない。
その剣は今のお前では抜けない、とハイタカ。同行を勧めるハイタカに従うアレン。
農民が逃げ出した村を通る。凶作のためだけではない。

 

次の街ホート・タウンに入る二人。あちこちで見られる、枷をはめられた者たちは奴隷。人間が商品。
女主人が布を売る店でアレンのマントを買うハイタカ。剣を隠すためにも必要。この女主人も元は魔法使い。今は魔法も無力化している。
男からハジアを勧められるアレン。使い続けると中毒死する。ハイタカに警告されて逃げて行く男。

 

この街はおかしいと言うハイタカ。世界の均衡を崩そうとする動き。

いったんハイタカと別れたアレンは、集団で襲われている少女を助ける、少女の顔にはアザが。命なんかいらない、と無謀に相手に向かって行くアレン。
敵は追い払ったが、命を粗末にするアレンに怒りを覚え、走り去る少女。

横になって回想するアレンに、再びさっきの集団が来て、そのボスの命令で拉致されるアレン。

 

奴隷を乗せる車の中で目覚めるアレン。首輪と枷で繋がれている。
その時外にまばゆい光がさして、ハイタカが車のドアを開ける。救出されるアレン。もの探しの術を使ったという。

 

草原に建つ一軒家に向かうハイタカ。出迎える女性にテナー、と声をかけるハイタカ。手当てを受け、ベッドで横になるアレン。
大賢人は忙しい、とテナー。ハイタカはあちこちで世界が不安定になっていると言う。
顔にアザのある少女か顔を出す。5年前からここで引き取っているテルー。

 

街外れの城。集団のボスを「ウサギ」と呼ぶ黒装束の「クモ」。

逃したのは顔に傷のある男と若造。「ハイタカだ。大賢人。再会を喜ぶぞ」とクモ。

 

起きてテルーと顔を合わせるアレン。早く出て行け、と冷たいテルー。
ハイタカと一緒に農作業を行うアレン。
魔法使いがなぜ農夫のまねごととするか、と問うアレンに諭すハイタカ。自分の不安を訴えるアレン。
世界は全て均衡の上に成り立っている。全てのものに真の名がある、と説くハイタカ。

山羊小屋で、生まれた子山羊の世話をするテルーのところへ来るアレン。命を大切にしない奴は嫌いだ!と言い放つテルー。

その夜父親の夢を見てうなされるアレン。ハイタカが揺り起こして止める。

 

翌日ゲドが街へ出掛ける。近所の女の話では、テルーは親から捨てられた子。やけどもその時のもの。
テナーとアレンが居るところへウサギたちが来て畑を荒らして行く。

ハイタカの事を話すテナー。旧いつきあい。彼はローグの大賢人。私をアチュアンの墓所から光の中へ連れ出してくれた。

 

街で、アレンが拉致された時になくした剣を刀剣商から買い戻すハイタカ。

夕食どきになり、テルーを呼びに裏へ行くアレン。歌を唄っていた。並んで話すアレン。
僕は父を殺した。どうしてそんな事をしたのか。いつも不安、自分が抑えられない。もう一つの自分がいる。
早く行かなきゃ奴が来てしまう。

 

家から出て川べりを歩くアレン。鳥に変身したクモがアレンをさらって行った。

ウサギたちが再び襲って来てテナーがさらわれる。テルーは縛られて、クモの城へハイタカが来るようにとの伝言役。
クモの屋敷で目覚めるアレン。影は入って来られないと安心させ、グラスの液体を飲ませるクモ。
ハイタカが旅をする理由は永遠の命のため。永遠の命を求めるそなたが「選ばれた者」と言うクモ。
生と死を分かつ扉を共に開こうと誘う。真の名を明かせと言われ「レバンネン」と答えてしまうアレン。
「準備は整った」

 

急を知らせるテルーに剣を渡して城に向かうハイタカ。
地下牢に入れられたテナー。アレンはクモのいいなり。牢の中で墓所を思い出すテナー。
杖に魔法の灯を灯して馬で駆けるハイタカ。そしてクモとの対決。

 

「ゲド、久しぶりだな」黄泉の国で別れて以来。
ハルンの知恵の書による、黄泉の国の境。生死両界を分かつ扉を開こうとするクモ。
捕らえられるゲド。この館では魔法の力が弱まる。

テナーと一緒の牢に入れられるゲド。

 

剣を持って城に向かうテルー。アレンが先導をしてくれるが、彼は本人ではないという。
アレンの心に満ちた不安が闇となり、光を求めて影となって外に出てしまった。真の名「レバンネン」をテルーに教える「影」
城に入り、壁を伝ってアレンの部屋に辿り着く。放心状態のアレン。
一つしかない命を生きるのよ。生きて次の命を引き継ぐ。
「レバンネン」と囁いてアレンを正気に戻すテルー。

「私の真の名はテハヌー」とテルーが言った瞬間、巨大な竜が現れる。

 

縛られて塔の上に立たされるゲド。
「この世の清算は私に任せろ」とクモ。塔を目がけて走るアレンとテルー。
もうすぐ夜明けが来る、希望が近づいて来る。

そこにアレンが駆け付けた。
もう惑わされない。念じると剣が鞘から抜けた。クモとの斬り合い。クモの片腕が飛んだ。たちまち老人になるクモ。

テルーをさらって別の塔に登るクモ。それを追うアレン。階段が次々崩されるが、それを飛び越えて追うアレン。

 

クモを諭すアレン。お前は僕と同じ。光から目を背けている。死を拒んで生を手放そうとしている。
だが狂ったクモは、抱えたテルーを締め上げて気絶させる。倒れるテルー。


朝日を避けて逃げようとするクモ。
「待ちなさい」と言って立ち上がるテルー。
「影は闇に帰れ!」とテルーが言うと、竜が現れてクモを焼く。更に朝日に焼かれて消滅するクモ。

 

 

日常を取り戻したゲド、テナー、テルーとアレン。
償いのために国へ帰ると言うアレン。
「いつか君に会いに来ていいかな?」

 

 


世にも奇妙な物語 '18秋の特別編

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総括
この、オムニバス形式の「世にも奇妙な物語」が始まったのは1990年からだという。当初は毎週のレギュラー放送だったが、第三シーズンを終えてからは春と秋の特別篇という運用。
昔の「怪奇大作戦」的なテイストの回もあり、以前はけっこう入れ込んで観たが、最近はパクリ疑惑等もあって時々観ない事もある。
潜在的視聴者は多いから、もっと真剣に取り組んで欲しいものだ。

 

全体予告

 

公式サイト

 

 

1.脱出不可

スタッフ
脚本         山岡潤平
原案         コヤナギシン
演出         都築淳一
編成企画     渡辺恒也、狩野雄太
プロデュース 植田泰史、中村亮太

 

キャスト
志倉真司    坂口健太郎

 

あらすじ(公式サイト)
ある日、目を覚ました主人公の志倉真司。

そこはコンクリートの狭い部屋の中。
「何だこれ、暗証番号?」ドアは施錠されており、たたいても応答はない。携帯電話も時計も見当たらず途方にくれていると、突然4つのモニターが起動する。


1つには真司自身の姿、その他のモニターには真司と同じように閉じ込められた男女3人の姿。
画面の右下には“視聴者数”の表示。“脱出ゲームスタート”の合図が出ると、“なにこれww”“ドッキリ?”など、視聴者コメントが続々と表示される。
どうやら4つのモニターは、インターネットを通じて不特定多数の人に閲覧されている模様。ふと、“視聴数を稼ぎ、視聴者からヒントを集めることで突破口を見つけられるのでは?”とひらめいた真司は、視聴者の力を借りながら脱出を試みるが―。
一体、なぜ真司は密室に閉じ込められてしまったのか? そして脱出ゲームの主犯は何者なのか…?

 

結末まで
部屋にある写真。「燃やしてみたら?」のネットのコメントに、ポケットに入っていたライターで火を点けると、二重構造の中から金属の板が出て来る。いくつか組み合わせて「1020」となり、打ち込むと第一の鍵

が開く。
次にアドバイスでスプリンクラーの口を外すと、記号の形をした金属が入っていた。
「アナグラム?」のコメントに、何回か並べ替えて「KENMU1」。「建武一年。1334じゃね?」を受けて打ち込むと、第二の鍵が開く。
鍵はあと一つ。
その時、画面にマンション火災の映像が出る。母親と娘が死亡。閉じ込められたうちの二人に、この事件に関する重大な過失があった。
そして真司自身この火事を発見し、母親の叫びに応えることなくその動画をSNSに投稿していた。
これはゲームじゃない、復讐・・・
投稿時刻の1513を入力するが反応せず。
ネットから「押すべきだった数字を押すんじゃない?」との書き込み。「119」を押して解放される真司。

 

真司が自宅に帰ると恋人のみどりがPC画面を見ていた。出て行こうとする彼女を止めるが「しんちゃんが火を点けた事にされてる」と冷たく言って出て行った。
ポケットにあったライターで放火をする男の姿が、防犯カメラ映像に映っていた。

 

感想
ネットからのヒントを受けて鍵を開けて行くというアイデアは新鮮味があって面白かったが、もう少しネタを吟味して欲しかった。建武元年って何よ、関係なくね?
オチの決め方がイマイチ。

だがこの番組はいつもこうなので(ま、いいか)

 


2.あしたのあたし

スタッフ    
脚本      武井 彩
原案      赤松 新
編成企画    渡辺恒也、狩野雄太
プロデュース  植田泰史、中村亮太

 

キャスト
斉木香織    国仲涼子
小野寺修二   忍成修吾
加藤由佳    森田涼花
斉木拓也    渋谷謙人

 

あらすじ(公式サイト)
斉木香織は、刺激のない退屈な生活を送っている主婦。夫の拓也とも倦怠(けんたい)期に入り、トキメキとはほど遠い状況だ。
そんなある日、香織のスマホ画面にバナー広告らしきものがポップアップされ、そこには“あしたのあたし”という文字が…。
興味本位でアクセスすると、いきなり香織本人の姿が画面に現れ、映画の予告編のような動画が流れ始める。

予告の中で、元カレ・小野寺修二と再会を果たす香織。
まるでラブストーリーのような展開に、「なんなのこれ…」と、驚きを隠せずもう一度再生しようするが、“視聴済みのため再生できません”という表示が。

 

翌朝、いつもと変わらない日常が始まり、すっかり動画のことなど忘れかけていた香織だが、目の前に修二が本当に現れて・・・


結末まで
予告ではかなり思わせぶりな言葉が出て、心ときめくが、実際の場面では意味が異なりさして進展がない。


一方修二は大病院の医師であり、看護師の彼女・由佳が居たが、彼女が香織の事を誤解して敵意を抱く。
その間にも無断で服を買った事を拓也になじられ、ケンカをしてしまう香織は、怒ったまま彼を出社させてしまう。
“あしたのあたし”の最終回では拓也が工事現場の事故で亡くなり、修二と結ばれる様な場面。
修二に会いに行く途中でスマホに電話がかかる。拓也から贈られたという花。修二に会うが、デートを断り拓也の会社に電話をかける。彼が事故で入院した。
見舞いに行くと、足を骨折しただけで命は無事。予告動画は彼の事ではなかった。
香織を幸せに出来ていない、と謝る拓也に少しづつ積み上げて行こう、お金も幸せも、と香織。あしたの私は自分で積み上げて行く。
病室を出て歩く香織の背後に気配が。女がナイフを握りしめて香織の背後を刺す。由佳だった。
「死ぬのは私だったのね・・・・・」

 

感想
ちょっと隙間風の入り始めた夫婦。そこに乱れを生むアプリ。SNS時代にマッチしたネタ。
ハッピーエンドで終わりそうな寸前に「ブスッ」と来る意外性。

これもまたよし。

 

 


3.幽霊社員

スタッフ
脚本     赤松 新
演出     星 護
編成企画   渡辺恒也、狩野雄太
プロデュース 植田泰史、中村亮太

 

キャスト
工藤良治   佐野史郎
里山秀平   勝地 涼

 

あらすじ(公式サイト)
とある建設会社の社史編集室でひっそりと働く工藤良治(佐野史郎)は、存在感ナシ、定時になるとすう~っと帰ってしまういわゆる幽霊社員。
仕事の情熱もとっくになくなり、定年まであと4年、余計な事をせず平穏に過ごそうと思っていた。
そんなある日、工藤は会社のトイレで、過労死したはずの若手社員・里山秀平(勝地涼)に遭遇する。


なんと里山は幽霊となって工藤の前に現れたのであった。しかも、姿が見えて会話出来るのは何故か工藤だけ!?「最後の仕事をどうしてもやり切りたいんです!どうか力を貸して下さい!」と懇願された工藤は里山がやり残した仕事を渋々引き受ける事になって・・・

 

結末まで
里山のやり残した仕事は、事業獲得のためのコンペ参加。里山のサポートでいいところまで行くが、霊感の強い女子社員が手配した神主の除霊で、存在出来なくなってしまう。


自信をなくす工藤だが、若手社員や妻子のサポートでプレゼンをやり通す。
コンペに勝ち残り受注が取れて、上司に褒められるが微妙な工藤。
トイレの帰りに悪寒を感じると、無数の幽霊社員が・・・編集室に押しかける亡霊社員の群れ。
タモリコメント:旧い会社には無数の思いが棲み付いている・・・・

 

感想
脱力社員を佐野史郎が演じるのは絶品。
一人の思いを叶えたばかりに、大勢の幽霊が集まってしまったというオチ。ヒネリも起伏もあまりなく、「まあこんなもんか」

 


4.マスマティックな夕暮れ

スタッフ
原作「マスマティックな夕暮れ」  諏訪 雅(ヨーロッパ企画)
脚本                  上田 誠(ヨーロッパ企画)
演出                  紙谷 楓
編成企画            渡辺恒也、狩野雄太
プロデュース          植田泰史、中村亮太

 

キャスト
凛子        玉城ティナ.
文哉        ジェシー(SixTONES)
一成        田中 樹(SixTONES)
大知        松村北斗(SixTONES)
宗徳        髙地優吾(SixTONES)
隆         やべきょうすけ
郁子(隆の母)   山村紅葉

 

あらすじ(公式サイト)
主人公の凛子は不良少年グループの文哉、一成、大知、宗徳から、「てめえ…勉強できるんだったら、ドウシンエン(同心円)の描き方を教えろ!」と突然絡まれる。
不良少年たちが同心円の描き方を知りたい理由はただ一つ。事故で死んでしまった仲間、隆(たかし)を生き返らせるため・・・
リーダー格の隆を突然の事故で失い悲しみに暮れていた少年たちはある日、道ばたで「黒魔術」と書かれた古書を偶然拾う。「死者蘇生の方法」が書かれているが数学用語だらけで全く理解できない。
「俺たちに数学なんてできんのかよ…」と弱気になる少年たちだが、「私も手伝います」と凛子。
その日以来、放課後になると凛子を囲んで勉強会をする日々が始まる。はたして彼らは隆を生き返らせることができるのか?

 

結末まで
凛子の指導でめきめきと学力を上げる不良たちは、先生から大学進学を勧められるまでになる。
学業を重ねた結果、黒魔術の書の、魔法陣の描き方を習得した彼らは、リーダーの隆を呼び出す。


呼び出された隆。祝いに飲みに行こうと言う隆に、いろいろと指導を始めるみんな。
違和感を抱きながらも、皆に言われて母親に会いに行く隆。

 

感想
不良たちが凛子に、同心円の描き方を迫るところは秀逸。

基本となる図形「五芒星」を描くための知識が、不良たちの基礎学力を飛躍的に高めたという展開もいい。
ただ、最後の決め方がやはり中途半端。

メガネ女子の玉城ティナには「萌え~~」

 


5.クリスマスの怪物

スタッフ
原作「薄氷の日」    朱川湊人(集英社文庫『水銀虫』収録)
脚本            和田清人
演出             岩田和行
編成企画        渡辺恒也、狩野雄太
プロデュース      植田泰史、 中村亮太

 

キャスト
小野寺奈央     川栄李奈
緒方良輔      本郷奏多


あらすじ(公式サイト)
クリスマスイブが近づき、恋人で、IT企業社長の緒方良輔にすてきなホテルディナーを予約してもらった主人公の小野寺奈央は、その日良輔からのプロポーズを期待している。
気がかりはクリスマスイブになると必ず現れる、不気味な装いの“怪物”の存在。ボロボロのコートを羽織り、背中が大きく曲がっている醜い姿の“怪物”。
ボサボサの髪に覆われているため表情は見えない。この“怪物”は、7年前に起きたある事件を境に、クリスマスイブになると奈央の前に必ず現れるようになった。
忘れられないすてきな一日になるはずのクリスマスイブ当日。
ディナーを終えた奈央の目の前にその“怪物”が現れて―。

 

結末まで
奈央と幼い頃から仲良しだった秀美。だが学校でミハルからいじめを受ける。それに加担させられた奈央。
7年前のクリスマスの夜、秀美にトナカイのキャップを被せ、鼻に口紅を塗り街で「私は馬鹿でーす」と言わせるミハルと奈央。
翌日から秀美が休校。家のベランダから転落して大けが。体が不自由になり杖をついての生活。顔の傷を隠すため、いつもマフラー。施設に入るため転校。

その翌年からクリスマス・イブの夜に必ず秀美が現れる様になった。

良輔にはそれをミハルの話として脚色。
良輔が、「それは神様が謝るチャンスを与えている」と話す。

上階のホテルの部屋へ先に行って良輔を待つ奈央。だが部屋に入ろうとすると、そこに秀美が現れる。

 

屋上に逃げる奈央だが秀美も付いて来る。倒れた秀美に馬乗りになり首を絞める奈央。「死ねよ!」
そこに良輔が顔を出す。言い訳をする奈央を突っぱねて話し始める。
7年前、街でのいじめの後、奈央を訪れた秀美。だが奈央は「私には関係ないから」と言って拒絶。その二時間後に秀美は自宅のベランダから飛び降りた。


「君が彼女の人生をぶち壊した」
奈央は、やったのはミハルだと言い逃れる。
すると良輔が「彼女はもう罰を受けている」と倒れている女を指さす。秀美だと思っていた醜い体の不自由な女はミハルだった。
ミハルに突き落とされ、屋上フチにぶら下がる奈央を見下ろす良輔。助けて!と叫ぶ奈央に女性の声で「私には関係ないから」
落ちて行く奈央。

 

感想
いじめっ子の尻馬に乗って、幼なじみをいじめていた女が復讐される話だが霊的、ホラー的要素はあまりなく、ただの復讐劇に過ぎない。
秀美の修復に特殊な組織が関与したとか、いじめの実態トレースよりもそっちの方面に力を入れると良かった。

 

ゲド戦記(小説)  全体まとめ

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先日レビューした宮﨑吾朗監督のアニメ「ゲド戦記」。原作との違いがイロイロ騒がれたが、この機会に改めておさらいを・・・・
アメリカの女流作家アーシュラ・K・ル=グウィンによって書かれた5巻に亘る冒険長編小説。
アースシーという海域の中心をなすアーキペラゴ(多島海)が舞台。
今年一月の、彼女の死去により三部作に追加して残りの二巻を通読した。

 

だが何せ長い。以前書いたあらすじでは冗長過ぎて扱いかねる。
そこで今回二段構えであらすじの再整理を行った。
細かいのが好きな向きには以下を・・・ 
、 、 、 、 


アースシー地図

 

全体まとめ
最初は、優れた魔法力を持った少年ハイタカ(ゲド)の成長物語として始まった。
千年前の亡霊を呼び出すと共に、自分の内なる「影」を引きずりだしてしまったゲド。それは心の闇。様々な試練を乗り越えて、再び影と一体になったゲドの姿に勇気をもらった少年たちは多かっただろう。
二巻でのテナーの話は、孤立した者へのメッセージ。運命として大巫女の人生を押し付けられた アルハ(テナー)が、壊れた腕輪の半分を取りに来たゲドとのやりとりの中で自己を見出して行く。
三巻では新たに少年アレンが加わり、世界の均衡の乱れを正すために立ち上がる。

 

それから二十年あまりを経て書かれた続編は、不遇の少女テルーを加えてテナー、ゲドらとの擬似家族を軸に、竜の娘テハヌーの出現までを描く。
そして最終巻。生と死の境でなおも起きている異変を解決するために奔走するアレン(レバンネン)とテルー(テハヌー)。

 

続編では、今まで物語の中軸を占めていた魔法の力は全く描かれず、生死の分かち、人の心への回帰などを、竜との関わりになぞらえて掘り下げる。
世界の均衡を取り戻す事のトレースが、自分自身の均衡回復にも繋がっており、人との関係で悩みを持つ者にとっては、いくばくかの助けになるかも知れない。

今回、作者の死というトリガーは望ましいものではなかったが、二十年の時を越えて、生死を巡る壮大な物語を味わう事が出来たのが、我が残りの人生にとっても有益だったと思える。

 

 

超々あらすじ(時間のない人向き

Ⅰ「影との戦い」
ハイタカ(ゲド)の少年期(数歳)から青年前期(20歳前後)までの話。
 魔法を使える少年、ハイタカ。ゲドという真の名を得てローク学院で学ぶが、自分の未熟さのため瀕死の重傷を負い、大賢人ネマールが犠牲になる。そして同時に自分の影を現世に放出してしまう。長い追跡の末に、それを自分の中にまた収めるまでの話。

 

Ⅱ「こわれた腕輪」
アルハ(テナー)の5歳から16歳辺りまで。
ゲドは彼女より10歳上(26歳)
カルガド帝国の大巫女として育てられたアルハが、伝説の腕環の半分を奪いに来たゲドとのやりとりの中で、自分自身を見出して行く。
最後に完成した腕輪をハブナーに持ち帰る二人。

 

Ⅲ「さいはての島へ」
 腕輪が還って25年。ゲドは50歳、テナー40歳。
アレン(後のレバンネン)は少年(13歳前後)
 世界中で魔法が使えなくなる事態が生じる。魔法使いのクモの仕業。生と死の隔てを開いてしまった。西の果てまで行って、クモとの戦いを制し扉を再び閉じるゲドとアレン。

そのためにゲドは魔法の力を無くす。

 

Ⅳ「帰還」
Ⅲの直後から始まる話。ハブナーに戻ったレバンネンが王となり、ゲドはゴント島に戻る。
Ⅱから続くテナーの物語。農夫の嫁を経て寡婦となったテナーは、親に捨てられ火傷を負ったテルーを救い、共に暮している。力を失いゴントに戻ったゲドは、テナーらとの穏やかな暮らしを手に入れる。だがそれを乱す危機に遭う。

ゲドとテナーを救ったテルーは、竜カレシンの娘テハヌーだった。

 

Ⅴ「アースシーの風」
レバンネンがテナーと会ってから十五年後。
修繕屋ハンノキが見る夢が、生と死の間に築かれている石垣の異変を知らせていた。それに巻き込まれて行くレバンネンとテハヌー。
元は同じ種族だった人と竜。求めるものの違いから別の生き方を選んだ。その上でなおも竜の持つ自由を求めた人は、生と死の境界に石垣を作って、魂の永遠を求めた。そして行き場をなくした死者の魂。
それを解決するために「まぼろしの森」に集結した者たち。
石垣は壊され、人の側の課題は解決した。そしてテハヌーは竜となって去って行った。

 

 

超々あらすじよりは細かく・・・・


超あらすじ

Ⅰ「影との戦い」 国内初版:1976年

ハイタカ(ゲド)の少年期(数歳)から青年期(22歳前後)までの話。
多島海(アーキペラゴ)に浮かぶ小さな島「ゴント」で魔法を操る力を持つ少年ハイタカは、魔法使いオジオンに見いだされ、13歳から「ゲド」という真の名を与えられて修行に入る。
その後魔法を教えるローグ学院に入るゲドはメキメキと頭角を現すが、寮生ヒスイにそそのかされ、千年前に死んだという「エルファーラン」を呼び出し、その後始末のため大賢人ネマールが命を落とす。
ゲドも瀕死の重傷を負い、顔に生涯残る傷も受けた。またゲド自身の影が外に出てしまった。
その後忠誠を誓い、4年の歳月を経て18歳でロー・トーニング島への赴任を許されるゲド。ベンダーに棲み着いた竜への対応で、分不相応な魔法使いを求めた島民。

 

ある時、まじないで子供を助けようとしたゲドだが、自分の放った影がそれを阻んだ。影と対峙するため、島民に申し出てベンダーの竜退治に出掛けるゲド。そしてベンダーで竜を鎮める。
帰島しても子供を亡くした親からは疎まれ、学院へ帰還するゲド。

だが何らかの力が働いて、どうしてもロークへ行けない。
その道程で策略に遭いテレノン宮殿に幽閉されるゲド。権力者セレット夫人の誘惑。強大な力を持つ石の奴隷にされそうになる。
それから逃れるため、ハヤブサに身を変えて恩師オジオンの元に辿り着くゲド。
手厚い看護で蘇えるゲド。オジオンは影に立ち向かえと激励。

 

舟で影を追いながら難破し、島に打ち上げられるゲド。
島に二人だけで住んでいる男女の老人の世話を受ける。三日かけて舟を修理して立ち去る時、老婆が半欠けの腕環をくれた。高貴な家系を想像させる。
その後三度影と向き合い戦ったゲド。だが決着は付かず、いつしか切っても切れない絆を意識する。

補給のため「手の型島」を訪れたゲドは、その島の老人の目を治したお礼に「はてみ丸」という舟を譲られる。
次に目指すのは、同僚だったカラスノエンドウが赴任しているイフィッシュ島。再会を喜び合う二人。

厳しい戦いを感じて同行するというカラスノエンドウ。

 

いくつかの島を経由して最南端に到着する二人。
ついに影を捉えるゲド。砂浜での対決。いくつかのやり取りの後、互いが同時に「ゲド!」と叫び己の影をしかと抱きしめるゲド。二人は溶け合って一つになった。

ゲドは勝ちも負けもしなかった。自分の影に自分の名を付し、己の中に戻した。自分自身の本当の姿を知る者は、自分以外のどんな力にも利用されない。
ゲドはそのような全き人間となった。

 

 

Ⅱ「こわれた腕輪」 国内初版:1976年

カルガド帝国、千年続くアチュアンの墓所で巫女として五歳から教育を受ける「アルハ」。幼名をテナーといった。幼い頃から世話をしてくれているマナンは宦官。
十四歳になってからは大巫女としての教育を受ける。十五歳で正式な大巫女となったアルハ。だが教育係のサーとコシルに指示されるばかりの行事。
墓所の地下を巡る無数の通路と部屋。これらの把握も大巫女の仕事。始終通っては覚える日々。

墓あらしの話を伝えるサー。カルガド帝国が出来る前、魔法使いの賢人エレス・アクベが神殿に攻撃を仕掛けたが、神官がエレス・アクベのお守りを真っ二つに割って撃退した。
その後魔法使いが何度か割れた腕輪を取り返しに来たが、この墓所で守られているという。ここにあるのは腕輪の半分。あとの半分は失われている。片割れがなくなってからもう七十年になるという。

そんなサーもその年の秋に死に、気の合わないコシルとの生活。

 

ある日アルハが地下を巡っている時、顔に傷のある者にばったり出会う。杖の先が光り魔法使いだと感じたアルハは外に出て迷宮入り口の鍵を閉めた。

男は扉にまじないをかけて出ようとするが、びくともしない。
三日後、マナンを連れて中に入ったアルハは、倒れている男を見つけた。枷を嵌めた上で水を飲ませ、パンも与えた。首にかけた飾り物は取り上げた。

翌日また会いに行くアルハ。相手の名はハイタカと言い、自分のものを取りに来たという。
その後も毎日会いに行くアルハ。男に食料を与えるため、自分の分も回した。
魔法使いの証拠を見せよと言うアルハに、着ている服へ宝石をちりばめたハイタカ。

ハイタカを、彼が来たがったという大宝庫まで連れて行き枷を外したアルハ。水と食料は持って来るから信じて従え、と言うアルハに「ああ、そうしよう」。別れ際に「気をつけてな、テナー」との言葉。

自分の名前を取り戻したアルハ。

 

コシルに男の事は気付かれていたが、殺したと嘘をついていた。早晩ばれる。
大宝庫でハイタカと話すアルハ。石櫃の中から出したという腕輪を見せるハイタカ。アチュアンの誰も見たことがなかった。あとの半分は、アルハが取り上げた首の飾り物。
腕輪の由来。かのエルファーランが身に付けていたもの。九つの穴が明き、九つの神聖文字が彫ってある。統治のしるしである文字が割れ、それ以来優れた王が生まれていない。

もう一つの片割れは、ハイタカが若い頃、島の老女から贈られた。竜と向き合う出来事があった時にその腕輪の由来を教えてもらった。失われた神聖文字を見つけ出すためにここへ来た。
アルハが首からハイタカの腕環を外し、もう一つと合せると完全に重なった。「一緒に行きます」とアルハ。

 

崩壊を始める墓所。魔法で必死に崩壊を食い止めながら脱出したゲドは、力を使い果たした。
山越え、野宿をするうちに寄り添い合う二人。
馴染みの村に辿り着き「はてみ丸」に乗って内海に戻ったゲドとテナー。テナーをかつての恩師オジオンに預けようと考えるゲド。

 

 

Ⅲ「さいはての島へ」 国内初版:1977年

ゲドがエレス・アクベの腕輪を持ち帰ってから25年後のハブナー。
魔法の殿堂ローク学院を訪れる少年アレン。

父親はエンラッドを治めている。
そこで起きているのが、魔法が通じないという現象。

魔法使いも呪文を忘れた。
大賢人ゲドは各長を集めてこの問題を議論し、魔法の力が弱まっているという他の方面からの情報も含め、混乱の正体を突き止める必要性を説いた。
自ら真相を突き止めに出ると言う大賢人は、アレンを同行させる。

まず出掛けるのは全海域の情報が集まるホート・タウン。伝来の剣を持つアレン。

 

はてみ丸でホート・タウンに着くゲドとアレン。街を外れると「ハジア(麻薬)」が蔓延。
とある布売りの店で女店主に声をかけるゲド。魔法使いだった事を見抜いて、探している男の事を聞く。見つけたのは右手首のない「ウサギ」と呼ばれる男。
ウサギの話す、黄泉の国から夢の中に入って来る道。ウサギとの交信で別世界に踏み込むゲド。途中で覚醒して実世界に戻り、追っ手から逃げるアレンだが気を失う。

目を覚ましたアレンは奴隷船に繋がれていた。首輪と足枷。
日も沈んだ頃、アレンはゲドに助け出される。
ゲドとウサギはあの時、闇の世界に行っていた。アレンはその回りの荒地に迷い込んだ。

 

はてみ丸で南西に進む二人。次の行き先はローバネリー。
魔法で死者と話が出来るかを聞くアレン。「呼び出しの術だ」とゲドは言い、かつてその術を悪用していたハブナーのクモという男の話をする。黄泉の国の入り口まで連れて行って懲らしめたという。
ローバネリーは優れた布の産地だが染料に問題がある。染師の話す「王」の話。死を征服したと言う。それを知りたくて男は魔法を譲り渡してしまった。
「王」はクモの事だと予測するゲド。この染師ソプリを連れて行くと言うゲドに反発するアレン。

 

ソプリを加えた三人を乗せて進むはてみ丸。
「王」から聞いた、死んだ者が来てまた帰って来れる場所の話をするソプリ。その秘密の場所にゲドが行きたがっている、と言うソプリの言葉に、ゲドに対して不審を抱くアレン。
ソプリが言っているオブホルという島に上陸しようとした時、多数の投げ槍が飛んで来る。必死でオールを漕ぐアレン。気が付くと槍がゲドの肩に命中して出血していた。ソプリは泳げないのに海に飛び込み、多分死んだ。ゲドが気を失い、途方に暮れるアレン。三日間の漂流。

 

イカダで暮す外海の部族に助けられるゲドとアレン。重体だったゲドはしばらくアレンと離されて治療を受けた。
再会して、ゲドの死を望んだ事を詫びるアレン。死の恐怖から逃れたかった。アレンの真の名「レバンネン」を教えるゲド。
いつか死ぬという事は、天から授かった贈り物。我々が持っているのは喜んで失っていいものばかり。
アレンの不安や苦しみが今回の旅の道案内だと諭すゲド。

 

海の民にも狂気が迫って来た事を示す現象が起きた。そして竜の来訪。「出発の時が来た」とゲド。

竜の説明をするゲド。オーム・エンバーといい、エレス・アクベを殺し、自分も殺されたオームの血を継ぐ竜。手下の竜を使いゲドに助けを求めていた。恩があり、今度は返す番。
西国に起きた災いで破滅の危機。共通の敵との予感。

ローク学院でも起きている異変。呼び出しの長トリオンが倒れ、姿かえの長が大賢人に異変を知らせるため、鳥となって姿を消した。

長い航海の末に、竜の住むセリダーに到着。出迎えるオーム・エンバー。
そこに姿を現す黒マントの男。クモだった。だが目の前にいるのは幻。わしの国で、わしの好きな時になら会えると言って姿を消した。

更に後を追い、エレス・アクベの亡霊を見つけるゲド。彼までも奴のいいなりにされている。
杖を取り、呪文を唱えてクモを呼び出すゲド。それに竜が襲いかかるが倒される。竜の下敷きになったクモが本当の姿を現した。

 

闇を集めて黄泉の国への入り口を作り、逃げ込むクモ。後に続くゲドとレバンネン。

死者の蠢く街。そこに呼び出しの長トリオンがいた。道が判らないという。
クモを追い詰めるゲド。クモは生死両界を仕切る扉を開いた。

それが現世での混乱を招いている。
だがもうクモの力ではそこを閉じる事が出来ない。
進むアレンがクモに追い付いて彼の手を掴む。その前にはぽっかりと黒い穴。
「閉じろ!」と叫ぶアレンに続き「ああ、閉じようぞ」と続けるゲド。
精神の全てを動員して、その扉を閉じたゲド。

 

ゲドが、クモに向かって解放の言葉を授けると、彼はゆっくり死の川を下って行った。
力を使い果たしたゲドは動けなくなる。肩を貸してそれを支えるアレン。ゲドを背負って何とか死から生への境界線を越えて来たアレンだが、ゲドの体は冷たく感じられる。

川に辿り着いたアレンの元に竜が降り立った。警戒するが、目を覚ましたゲドが「乗れと言っているのだよ」竜はカレシンといった。

 

ローク周辺の島では大騒ぎ。ロークまで竜が来たのは歴史始まって以来。二人を降ろすカレシン。アレンの前でひざまずくゲド。
「我が連れなりし王よ。ハブナーの王座につかれたあかつきには、永く平和の世を治められますように」
そして再び竜に乗ると、ゲドはゴント島に向かって飛び去った。

 

 

Ⅳ「帰還」 国内初版:1993年

村で農園を維持している寡婦のゴハ。火に放り込まれたという少女を引き取り看病した。
顔の右半分と右手に骨まで達するやけどを負っていた。

それから一年以上経った頃、ル・アルビのオジオンが呼んでいるとの伝言を受け、子供テルーを連れて出掛けるゴハ。
ゴント山に入ったところで四人の男に絡まれる二人。気丈にやり過ごすゴハ。それを見送る革帽子の男ハンディ。

 

出発して翌日の夜にようやく到着。

ほとんど寝たきりのオジオンが「おはいり、テナー」と応える。テルーを見てオジオンは、この子に何もかも教えてやってくれと言った。
翌日森の中で、テナーに自分の真の名を明かして息絶えたオジオン。

 

葬儀は地元のまじない女のコケばばが準備をし、領土付きの魔法使いアスペンと、ゴント港からの魔法使いが儀式を行った。
昔からの確執で、アスペンに嫌われているテナー。オジオンの真の名アイハルを、教えたにも関わらず忘れた事にあきれる。

オジオンの家でしばらく暮す事を決めるテナー。元の家の羊と果樹園は二組の小作人夫婦に任せる。

オジオンの養女としてしばらく暮した後、百姓のヒウチイシに嫁ぎ、子も二人育て上げたテナー。そんな時に引き取ったテルー。

コケばばがいろいろ吹き込むのが心配。

 

庭に腰かけて海を見ているテナーが、飛んでくる赤い竜を見つけた。
岩場に降り立った竜は、男を降ろす。「起きて、ゲド!」と声をかけるテナー。去って行く竜、カレシン。
皆の手を借りてゲドを家まで運び込む。

 

三日目にようやく目を覚ますゲド。少しスープを飲んだだけでまた眠る。次に目覚めた時にようやくオジオンの話。十日前に亡くなった。
ゲドはセリダーからロークに戻り、そしてゴントに来た。

大賢人を呼びに来る者が誰もいない事を訝るテナー。領主の館からも誰も来ない。
アレン、本名レバンネンの話をするゲド。今はハブナーに王がいるんだ!と涙を流す。

 

体調を回復したゲド。もうここですべき事はなく、家に帰ろうという事をゲドに話すテナー。
その流れで、自分にはもう魔法の力がなくなった、と話すゲド。彼ならテルーを治せるかも知れない、と期待していたテナーは落胆。

羊の仲買人から聞いた、ハブナー市からの大きな船が港に来ているという話をゲドにするテナー。ぎくっとして身構えるゲド。王からの使いの者だと判っていた。
次いでコケばばが、港から立派な身なりの者が来る、と知らせて来る。匿ってもらうために家を出るゲド。

 

その後正装した五人の男が訪れる。レバンネン王の戴冠式のためゲドを探している。居留守を使って彼らを帰し、ゲドへの手紙をテルーに託すテナー。

ゲドが今夜発つとの返事を持ってテルーが帰る。

 

テナーが村での用事を済ませて帰ると、テルーがいない。探し回ったあげく、台所の隅で震えている彼女を見つける。
あの人が来たと言った。こちらに来る時に絡まれた四人のうちの一人、革帽子の男。かつて一緒に暮らしていた男だという。

領主の館の牧草地で働く者の中に男がいると当りを付け、聞きに行くテナー。ヴァルマスから来た男だとの話。運悪くアスペンと出くわした。悪口の言い合い。
口論の末に、アスペンから魔法をかけられそうになるテナー。偶然近くに居たハブナーからの使者に助けられ家に帰るが、ハード語でものを考えられなくなっている事にがく然とする。アスペンの仕業。カルガド語で何とか考えられる。幼い頃のアルハの言葉。

 

テルーと二人でゴント港に向かうテナー。15マイルを歩き通し、ようやく港町に入った時、革帽子の男が近

づいて来た。目指す船はもう少し。転んだテルーを抱き上げてタラップに辿り着く。船員が気を利かせて男を足止めして、乗り込む事が出来た二人。

 

王の乗る「イルカ号」。レバンネンに今までの事を話すテナー。ゲドが魔法の力を失ったのが信じられないレバンネン。
レバンネンが来たのは、ゲドの事とローク学院の賢人会議で話の出た「ゴントの女」のキーワードを解くため。だがそれはテナーの事ではない。テナーらの帰郷を約束するレバンネン。

テナーの家があるヴァルマス港では、ハブナーからの船が来た事で大騒ぎ。娘のリンゴも仰天。幼い頃に聞いた腕輪の話も、ただの歌の文句だと思っていた。
娘の家で一晩過ごした後、家に戻ったテナー。伝え聞くゲドは山の上で羊番をしているという。

生活は落ち着いたが、テルーの扱いに頭を痛めるテナー。オジオンの遺言「何もかも教えてやってくれ」が気になる。

 

そんなある夜、家の外で大きな音がした。火かき棒を持って戸口に立つテナー。数人の気配がし、男がチビちゃんに会いたがっていると言う。更に包丁を持ってドアを開けるテナー。
仁王立ちになり「どこからでも、かかっておいで!」

だが様子がおかしい。倒れている男の後ろで男が顔を出した。ゲドだった。
男は熊手に刺されて重傷。だが革帽子の男ではない。ゲドの話では、たまたま山から降りて来たところで男た

ちの企てを聞いた。

 

事件の顛末。男は四人。昨夜倒した男以外では一人殺され、あと二人が捕らえられた。同行していた女は殺されていた。それがテルーの母親。「セニニ」と名を言うテルー。
ゲドに、一緒に暮すことを提案するテナー。その夜愛し合う二人。

 

冬を越し、春になってテナーの息子ヒバナが三年ぶりに帰って来た。ゲドの立場が微妙になりテナーを悩ませる。横暴になるヒバナに、三人でル・アルビへ行くと宣言するテナー。

ル・アルビへの旅を始める三人。だが近づくにつれて頭がぼうっとして来るテナー。
分かれ道で領主の館に向かってしまうテナー。後に続くゲド。

分かれ道で立ち止まるテルー。
歩いた先で領主付きの魔法使いアスペンが待ち構えていた。ゲドが魔法の力を失っている事も知っていた。
館の牢に閉じ込められるゲドとテナー。

 

テルーは、ゲドたちの後をつけて、二人が捕らえられた事を知り、オジオンの家の向こうの崖まで走って、ある名前を呼んだ。そしてコケばばの家で一晩を過ごした。

翌朝、アスペンに引き出されて崖のはずれまで歩かされるゲドとテナー。
崖に着いた時、遠い空に一点見えたかと思うと、またたく間にあの竜が飛んで来た。
「カレシン!」と叫んでゲドをしゃがませるテナー。
二人の頭上をかすめた竜は、直後のアスペンとその部下を踏み潰して岩場に舞い降りた。
「テハヌー」と言う竜に「カレシン」と応えるテルー。彼女が竜を呼んだ。
カレシンの娘テハヌー、それがテルーの真の名。

 


Ⅴ「アースシーの風」 国内初版:2003年

先の出来事から15年後のル・アルビ(ゴント)。
農夫として静かに暮らすハイタカを訪れる修繕屋のハンノキ。
妊娠した妻ユリが、出産時のトラブルで母子共に亡くなった。それから二ケ月後、妻が夢に出る様になった。
石垣を挟んで手を取り合うが、向こうには行けず、ユリを引き込む事も出来ない。
ハイタカはその石垣を超え、そして戻って来たが、ハンノキの体験には特殊な意味がある。

ハンノキは島の魔法使いに相談した上でローク学院に行く。呼び出し、薬草、守りの長の下で石垣まで行く試みをしたが不調に終わる。

 

ロークの長はこの現象が「ある魔力」によるものと考え、大賢人の身で夫婦の絆にも詳しいハイタカを頼った。彼に起こっているのは、何かの前兆かも知れないと考えるハイタカ。
王レバンネンが最近、竜カレシンの娘テハヌーを招聘した事も関係があるかも知れない。
眠れないハンノキのために、子猫をあてがうハイタカ。小動物の癒しは彼も経験した。そしてハンノキにハブナー行きを勧める。

 

レバンネン王への謁見まで漕ぎ着けるハンノキ。多くの課題に苦慮するレバンネン。
悩ましい外交問題。カルガド諸島に一つで大王を宣言したソル。和平の申し出の返事として娘を送り付けた。
王女の滞在のみを認め、一度も会わないレバンネン。
王女が来訪して半月後にテナーとテハヌーが来た。別件ではあるが、王女の相談をテナーにするレバンネン。
彼女の立場を深く理解するテナー。自分も大巫女としての経験を持っている。

 

レバンネンが抱えるもう一つの課題。ここ数年竜が村を襲う事件が頻発。クモの事件から15年経っての異変。テハヌーが呼ばれたのもこの件の解決を期待されての事。
かつてロークにやって来た娘の話。8年ほど前、若者に変装した娘がロークに来た。呼び出しの長トリオンが相手をしたが、塵となって消された。娘の真の名「アイリアン」を口にして、相手が竜になったための出来事。竜は飛び去った。

 

ハブナーの西で竜が森に火を放つ事件が起き、王たちが出向いた。テナーに説得されて参加するテハヌー。
暴れる竜の一頭に声を掛けるテハヌー。相手は彼女の兄。竜は静まり去って行った。
テハヌーの話では、竜の中で人間に対する不信が拡大している。
アイリアンが来られるよう、兄に頼んだテハヌー。

王女の事を思い、単身面会に行くテナー。女官に構わず中に入ると王女が抱き付いて来た。信頼の証しとして名を聞くテナー。彼女はセセラクと言った。
自分の母国語でもあるカルガド語での会話。まずあの方に好かれるために言葉を覚えなさいと諭すテナー。

 

王が帰還し、竜との休戦の件を議会にかける。和睦に反対する者もいて、いったん休会。
その時、竜が外のテラスに降り立った。挨拶するレバンネン。テハヌーが通訳して、人の姿になったアイリアンが議場に入る。
語られる、竜と人間との関係。元々同じ種族だったが竜は自由を選び、人間は安定した暮らしを選んだ。方角としては竜が西、人は東。だがお互いに相手を羨望する気持ちがある。
今までは僅かながら、相手の種族に生まれて来る者がいて均衡を保った。だが均衡は崩れ、もう生まれて来ない。
今問題を起こしている竜は、人の住む西のはずれで領土を奪い返そうとしている。竜たちが恐れるのは「不死の魔法」

 

レバンネンが、かつてクモという者が不死身になろうとした事を話す。
だがもう一人、アイリアンが倒した呼び出しの長トリオンの存在。死んだのに、ロークの術で石垣を超えて帰って来た。それが世界の均衡を崩した。帰って来てから人が変わってしまったトリオン。
均衡を戻すにはロークの「まぼろしの森」に行く必要がある。
イルカ号でロークに向かう宣言をするレバンネン。

ローク行きにあたっては、王女の同行が必須だと進言するテナー。やむなくそれを伝えに行くレバンネン。
王の来訪に驚く女官が言葉の心配をするが、今さら後に引けない。
女王が前に進み出る。レバンネンがローク行きの件を話すと、ベールを開いて、たどたどしい言葉でそれを承知する王女。勇気そのものを見て、怒りが消える王。

 

必要な、全ての人を乗せてイルカ号はロークに向かった。

行く手を阻む暴風雨に耐え、ようやくロークに着いた一行。
学院の長たちと合流し、今までの整理が行われる。

生と死の境界に起きた問題。

 

かつて竜と人間は同じ種類だったが、両者は違うものを求め出したため「ヴェル・ナダン」という協定を結び、人は東、竜は西へと移動。人は天地創造の言葉を失う代わりに物の所有と権利を得て、竜は太古の言葉と翼を持った。
人は物の所有を求めながら、竜が手にした自由も欲しがった。それは時間も越えて飛び回る力。竜が行った西まで出掛けてその一部を自分のものにした。だがそこには魂しか留まれない。
だから人はそこに石垣を築いた。生きていては人も竜も越えられない石垣。だがそのために風が吹かなくなり、死んだ人が赴く世界は、魂として生き続けるが、暗く乾いたものになった。
クモとトリオンの行為により、その生と死の境界が乱された。今では死者の霊魂もその石垣に押し寄せている。

 

半分石垣の側に引き込まれていたハンノキが「死者が求めているのは死。大地の一部になりたがっている」と話す。
そんなハンノキに寄り添うテハヌー。それを妨げた呼び出しの長。死の世界から引き戻されるハンノキ。
再び目を覚ましたハンノキ。
「この世界をなおす。石垣をこわすんだ」とハンノキが石垣に手をかけ、それをテハヌーが助ける。落ちる石垣。だが死者の群れが石垣に押し寄せる。
レバンネン、アイリアン、長たちも合流して石垣を壊し始める。
カレシンもやって来た。それに応えるテハヌー。
死者の群れの中にユリを見つけるハンノキ。二人は手を取り合って石垣を超え、光の中に消えて行った。
壊れた石垣のそばで夜明けの空を見つめるレバンネン。三匹の竜カレシン、アイリアン、テハヌーは去って行った。

 

現実世界でのハンノキに手を重ねるテナー。「この人は逝ってしまった」。テナーに、去って行ったテハヌーの事を話す様式の長。
動かないレバンネンを前に逆上するセセラク。大丈夫、と諭す様式の長アズバー。

 

ゴントに帰ったテナーは、ゲドに今までの事を話そうとするが、内容が多すぎて要領を得ない。
ひとわたりの話を聞いた後「私たちは世界を全きものにしようとして、壊してしまったんだ」と呟くゲド。

 

 

 

NHKスペシャル 人生100年時代を生きる 11/17、18放送

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第1回「終の住処はどこに」  11/17放送
番組詳報

 

阿川佐和子は認知症の母親(91歳)を自宅で介護している。
2011年より国の肝入りで始まったサービス付高齢者住宅(サ高住)での退去事例が増えているという。
入居した後に認知症となり徘徊を繰り返す。元々サ高住は自分で動ける高齢者が前提であり、職員数が少ないため対応に疲弊。
国から出る補助金は要介護度によって変わる。要介護1:17万、2:20万、3:27万、4:31万、5:36万。
認知症では、体は動くため要介護度は低い。認知症の発症率は85歳以上で5割を越える。
特別擁護老人ホーム(特養)では要介護度3以上でないと入れない。
サ高住の経営者が入居者の選別を行う(寝たきりの方が楽)。
最近の流れとして、要介護度が下がったら報奨金を出す考えが出て来た。生きる楽しみも与えられる。
豊かな老後→弱って行く中で生きて行く意味を見つける。
介護される側の気持ちを入念に拾って行くことが大切。

 

 

第2回「命の終わりと向き合うとき」  11/18放送
番組詳報

 

透析患者の高齢化が問題。治療を始めた後に認知症になると、自分が判断出来ない状況で治療だけが続く(家族が判断出来ず)。
80歳以上の透析患者は6万。ある病院では入院患者の9割が認知症。
終末期の患者の救急搬送。自宅介護の家族が、命の終わりを見極められず救急車を呼ぶ。
延命治療の中止に関するガイドラインが整備されつつある。
死ぬことを選択する時代(難しい)。病院で延命治療の中止の選択肢がある事を伝えるケースが半数ほどに増えている。
中止により家族に悔いが残る。異なる考え方→どちらが本人らしいか。お父さんらしく、と考えて見送った娘。
事前指示書→認知症になった後の延命治療についてあらかじめ決めておく。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)。
自分で死を決断する時代。

 

感想
日常では気付かない(フリをしている?)老いについてしっかりと向き合わされた。NHKらしいと言えばらしい番組。
認知症の方が要介護度が低いというジレンマ。
また、透析患者の多くが認知症というのにもショックを受けた。
2回目で言っていた「本人も家族も、死をひと事と思っている」という言葉が印象的だった。

 

 

シザーハンズ    1990年

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監督  ティム・バートン
脚本  キャロライン・トンプソン

 

キャスト
エドワード・シザーハンズ   ジョニー・デップ
キム                   ウィノナ・ライダー
ペグ     ダイアン・ウィースト   エドワードを引き取る婦人
ジム     アンソニー・マイケル・ホール  キムのボーイフレンド
ジョイス   キャシー・ベイカー   エドワードに髪を切ってもらう婦人
ビル     アラン・アーキン   ペグの夫
ケヴィン   ロバート・オリヴェリ   キムの弟
発明家    ヴィンセント・プライス
ヘレン    コンチャータ・フェレル   隣人。太った女性
ジョージ    ビフ・イェーガー
マージ     キャロライン・アーロン 
アレン巡査   ディック・アンソニー・ウィリアムズ
エスメラルダ  オーラン・ジョーンズ   エドワードを悪魔の化身と言い触らす

予告編

 

感想
北海道にようやく初雪も降ったことだし(そこかよ)
暮れのクリスマス・シーズンにTV放映されていたのを録画。

例によって放置した後の視聴・・・

 

ジョニー・デップが注目され始めるきっかけとなった作品。
家に案内されてウォーターベッドを見た瞬間「そうなるな」と直感。
年代は、アメリカの旧き良き時代(’50年代?)であり、明快なカラーの建物、車が象徴的。
全ての隣人を愛せよ、というお手本のようなペグに、引きずり込まれるように連れて来られた人造人間エドワードを巡るドタバタ劇。

あれじゃあ服は着れんだろう、と思ったが何とか着たのにビックリ。
食事も、どうやって食べるの?、との疑問にも「勝手に食べて」てな感じで、ある意味冷たい対応が面白い。

人造人間ゆえに、感情表現がヘタなのは当然だが、時々けっこう鋭いことを言って、ハッとさせる。
また、キムを抱きしめたくても傷付けるのが恐ろしくて出来ない。

あそこでの切なさは、この奇妙な設定を忘れさせる。
そういえば、ヤマアラシのジレンマというのがあったが(エヴァンゲリオン)・・・・

博愛と排斥。アメリカ人の両極端の特質を十分に味わえる映画。

 

 

あらすじ
「雪はどうして降るの?」
おばあちゃんが孫娘に昔話を聞かせている。

 

町はずれの山の上に建つ屋敷。発明家の老人が人造人間のエドワードを作り出し、愛情を持って育てるが、指は代用のハサミ。

両手が完成したものの、発明家はエドワードにそれを取り付ける前に死んでしまった。

 

 

化粧品セールスレディのペグ。町の女性ほとんどと知り合い。
ある日急に思いついて、その屋敷へ売り込みに行く。ハサミの指をしたエドワードに驚くが、まともに生活出来ていない事を不憫に思い、家まで連れて来てしまう。だがまともに食事も出来ないエドワード。

 

夫のビル、息子のケヴィンも特に拒絶はしなかったが、たまたま娘のキムの部屋にエドワードを入れたため、知らずに帰宅したキムは驚いて叫ぶ。穴が開いて水が吹き出すウォーターベッド。
拒絶反応でエドワードに冷たいキム。

興味津々の隣人たちは、ペグに無理やりパーティーを開かせる。パーティーで多少町の人たちと知り合い、ぎこちないながらも生活を始めるエドワード。

食事等では不便なハサミも、植木を刈るのには素晴らしく役立った。

 

隣人のエスメラルダが、エドワードを悪魔の化身だと言い触らす。
隣人のジョイスが髪を切ってくれと頼み、それが非常にうまく行って、美容院をやらせる話にまで発展。
後にジョイスはエドワードに迫り、それが失敗して敵対するようになる。

 

キムのボーイフレンドのジム。親が厳しいので小遣いに不自由している。家の鍵も持たせてもらえないため、エドワードがハサミでドアの鍵を開けられる特技を利用して、自宅の鍵を開けさせる。

キムもその一味に入っており、止めたが聞くような相手ではない。
その実行の時、防犯ベルが作動してエドワードだけが残された。

取り調べるアレン巡査だが、キムが関係していたため、エドワードは一切弁解しなかった。

何とか家に戻ったエドワード。最初嫌っていたキムだが、今回の事でエドワードに対して好意を持つようになる。それに嫉妬を覚えるジム。
だが町の人たちからは、次第に危険な存在として敬遠される様になるエドワード。

 

クリスマス・イブの日に、エドワードが氷の塊からハサミで削り出して、天使の彫刻を作っていた。

粉が舞い上がり、雪のように降った。喜ぶキムが近づいた時、エドワードのハサミが触れてキムの手が少し傷付いた。
たまたまそこに来ていたジムが、エドワードを追い出してしまう。

怒ったキムはジムに絶交を言い渡す。

逆上したジムは酒を飲んで車を走らせる。キムの弟ケヴィンがそれに轢かれそうになったところを、エドワードが飛び出して助ける。

だがその時にケヴィンの体を少し傷付けてしまったため、町のみんながまたエドワードが事件を起こしたと騒ぎ出す。

 

元の屋敷に逃げ込むエドワードを追って、キムも屋敷に入る。
傷心のエドワードを優しくなだめるキム。ようやく落ち着いたエドワードだが、そこにジムが乗り込んで来て銃を向ける。
キムが棒で殴ってそれを止めるが、今度はジムがキムに向かって来たため、エドワードは手のハサミでジムの胸を刺す。
ジムは窓を突き破り、一階まで落ちて絶命した。

 

押し寄せて来た町のものたちが、ジムの死体を見つけてまた騒ぎ出す。キムはとっさに老発明家が残した予備のハサミの手を差し出して「エドワードは死んだわ」と言って彼を匿った。

 

それ以来、エドワードが来る前には降らなかった雪が、毎年クリスマスの時期になると降るようになったという。
屋敷で氷の彫刻をするエドワード。当時の若い姿のままで氷の粉をまき散らしている。

 

 

 

 

 

ノウイング   2009年 アメリカ

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監督      アレックス・プロヤス
原案・脚本 ライン・ダグラス・ピアソン

 

キャスト
ジョン・ケストラー       ニコラス・ケイジ 
ケイレブ・ケストラー    チャンドラー・カンタベリー
ダイアナ・ウェイランド   ローズ・バーン 
ルシンダ/アビー      ララ・ロビンソン 
ミス·テイラー(2009)      アリシア・マクグラス
ミス·テイラー(1959)        ダニエル・カーター
フィル・ベックマン      ベン・メンデルソーン
グレース・ケストラー    ナディア・タウンゼンド
謎の男             D・G・マロニー 
ケストラー牧師       アラン・ホップグッド 

 


予告編

 

感想
TV放送の録画を観たもの。過去に1回レンタルで観ていた。
50年の時を経て取り出された、少女が書いた数列の秘密。
ニコラス・ケイジは、昔はコッポラの身内とかでスペシャル感があったが「ナショナル・トレジャー」辺りからオーラを感じなくなった(元からないのかも・・・・)
一時期ゴールデンラズベリー賞に常連でノミネートされていたが、最近ではその話からも遠ざかっている。

 

話としては、最初の取っ掛かりでの数列が、日付と死者数、後に緯度、経度だと判明するが、ここがストレート過ぎて謎説き要素がなく、SFとしては少し物足りない。
また地球が太陽フレアの異常で滅亡する話と、「救済者」が50年に亘って大きな事件の予知を行って来た事の食い付きも何かしっくり来ない。聖書との関連付けは、まああんなものか(もう一息)。

ただ今回観て、ストーリーの概略が判っている分だけ各家庭環境の中味が深く理解出来、まあまあ上質な親子の物語だったんだナーと納得。
しかし、種としての命は繋ぐ事が出来るものの、地球が焼き尽くされて行くシーンは、やっぱり気分が落ちる。

ディストピアものはニガテ・・・・かな

 

オープニングとエンディング近くで使われていたクラシック曲は、ベートーベンの交響曲第7番 第二楽章。

葬送行進曲であり、悲劇的な結末に向かって行く時の音楽として胸に迫るものがある。

 

あらすじ
1959年、マサチューセッツ州レキシントンのウィリアム・ドース小学校で行われた創立記念式典。公募の結果少女ルシンダの提案が採用され、未来を描いた絵を容器に納めて50年後に開く事にした。

だが肝心のルシンダは絵を描かずに数字の羅列を書き続ける。それを途中で取り上げる担任のテイラー女史。
式典の途中でルシンダが居なくなり、物置で見つかった時は手が血だらけ。ささやく声を止めて!と叫ぶルシンダ。

 

現在。マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授ジョン・ケストラーが生徒を相手に講義。地球と太陽との絶妙な距離が地球に生命を生んだ。だがそれは偶然の産物で目的も意味もない、と断じる。
同僚のフィルが、妻を亡くして人づきあいが悪くなったジョンに合コンを誘うが、息子の学校行事を理由に断るジョン。
息子のケイレブは補聴器を使っている。難聴ではなく、雑音が聞こえるための対応。

学校での記念式典。50年前に埋めたタイムカプセルを開く。ゲストは当時の担任教師だったプリシア・テイラー。その時、遠くに人影を見るケイレブ。ケイレブが手にした封筒にはルシンダの書いた数字の羅列が入っていた。

 

その紙を家に持ち帰っているのを見つけて叱るジョンだが、偶然その紙を見てしまい、興味本位で解読作業に手を付ける。
日付と思われる数字を打ち込んでネット検索すると、それぞれが大きな事故とその死傷者数を現していた。
その中には死んだ妻が巻き込まれた火事も含まれていた。

 

職場でもあるMITのヘイスタック天文台に行き、フィルにこの内容を教えるジョンだが、彼は偶然の一致だと言って取り合わない。現に解明されていない数字も多数含まれている。
ジョンはこれらの数字の中で三件だけまだ発生していない、未来の事故を現す数列があるとも言うが、それも否定される。

 

メモを書いた少女の事を聞くために当時の担任テイラー女史を訪ねるジョン。ルシンダの事を覚えていた彼女。ルシンダは数年前に亡くなったという。そしてあの日、物置で扉に文字をかいていたとも言った。
見知らぬ男がら黒い石をもらうケイレブ。
家に帰るとジョンの妹グレースが来ていた。実家とは絶縁状態で、それを何とか繋いでいるのがグレース。


ついうたた寝をして、ケイレブからの電話を受け、慌てて学校に向かうジョン。渋滞にはまり、何となくカーナビの座標情報を見ると、緯度と経度の表示が、メモの今日の日付と同列になっている。車を入りて渋滞の先に向かったところで旅客機が突っ込んで来た。散乱する機体、多数の死者。
あと二つ起きる。これは警告。

 

夜中に目覚めるケイレブ。知らない男がベッド脇に立ち、窓へ導く。

その外には山火事を起こして真っ赤になった風景。叫び声を聞いて駆けつけるジョン。火事は幻影、外に人影を見つけて威嚇するジョン。

ルシンダの情報から、彼女の娘ダイアナと孫娘のアビーを知るジョン。偶然を装って知り合うが、ルシンダの事を聞かれると拒絶して去るダイアナ。

 

次の予言の日付が迫る。緯度、経度情報からそこはニューヨークの市街地。FBIに事故が起きるとの情報を入れるジョン。
気になって当日その場所に出向くジョンだが、増員していた警官に追われる。その中で不審者を見つけて地下鉄に乗り込み追い詰めるが、ただの万引き犯。その時脱線事故が起きて百名以上の死者を出す。

 

ジョンが家に帰るとダイアナが待っていた。そしてルシンダが自殺した実家へ彼を連れて行く。
これらの予言の意図を知りたいと言うジョン。そしてメモの一番最後にあるEEの表記の謎。
ささやき声が聞こえると言っていたルシンダ。母は準備のためここに移ったという。今までの事故は全て記事を記録していた。聖書の中のエギゼル書の絵をいつも見ていたという。中空に浮かぶ神の姿。
ベッドの下に多数の黒い石。
ジョンがベッドをひっくり返すと、その裏に引っ掻いた文字が。
「EVERYONE ELSE」でEE。他の皆→全人類という意味。

車の中のケイレブとアビーに迫る男たち。クラクションの音で駆け付けるジョン。ささやき声の人、とアビー。ケイレブにも聞こえた。

 

天文台に行って確認するジョンに驚くフィル。

今まで行方が判らなかった。
ジョンは以前プレアデス星雲でのスーパーフレアについて論文を書いていた。この太陽でそれが起きる。そして地球の生物は絶滅する。海洋大気局でも気付いている筈だ。

父に電話するジョン。だが神の思し召しだと言って動くつもりのない父。
ケイレブの学校へ行くジョン。テイラー女史の話では、ルシンダは物置のドアに文字の続きを書いた。侵入してその扉を取って持ち帰る。

 

ジョンの言っていた、気休めの洞穴に行こうとするダイアナが、子供たちを連れて出てしまった。数字を解読した後でそれに気付くジョン。
ガソリンスタンドで、国が出した避難命令を知るダイアナ。略奪が始まっていた。スタンドの電話からジョンに掛けるケイレブ。途中でダイナナに代わりスタンドの場所を知るが、子供たちが例の男たちにさらわれる。それを追ううちに事故で死ぬダイアナ。

 

ジョンはスタンドに辿り着くが、ダイアナは救急車の中で死亡。

手にはあの黒い石が握られていた。

ルシンダが最後に残した座標は彼女自身の家であり、再びそこに戻るジョン。黒い石を敷き詰めた道を辿った

先に車が乗り捨てられており、ケイレブとアビーがいた。

そこに現れる男。銃を向けるジョンを止めるケイレブ。

彼らは僕たちの準備をしてくれたという。そして彼らの声が聞こえた者、つまりケイレブとアビーしか行けない。
絶滅する地球人の中から、選ばれた者を救い出すためにメッセージを出していた種族。

 

彼らに子供たちを託し、両親とグレースの許に帰ったジョン。

そこに到来する太陽フレアの衝撃。

 

草原の星に降り立ったケイレブとアビー。彼方には同様にして降りる宇宙船が見えた。

 

 

新聞小説 「ひこばえ」 (8)  重松 清

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新聞小説 「ひこばえ」   (8)  10/31(148)~11/22(169)
作:重松 清  画:川上 和生

 

第七章 父の最後の夢  1~21
父の部屋に通った大型連休が明け「ハーヴェスト多摩」での日常が再開した。
その日の夕方、901号室に入居予定の後藤さんが手土産の菓子を持って訪れた。会社経営の息子が七千万の入居費用を払ってくれた人。


入居する部屋へ案内するが、気乗りしない様子。後藤さんはまだ七十歳。この部屋で多分十年以上暮らすことになる。

本当にこれが望んだ暮らしなのか。
部屋での説明にもあまり興味を示さない後藤さん。

ここで皆さんの迷惑にならないか?と聞いて来る。

途中で出会った石川さん夫妻にも異常なほどへり下っていた。

 

後藤さんを帰し、スタッフの本多君と話す洋一郎。彼は後藤さんの息子さんと同じ四十二歳。そして後藤さんと同じく父親は戦後生まれ。

入居者の個人情報には制限があるが、後藤さんの息子さんは、この施設の親会社である生保会社の中枢に絡んでいる様だ。
三月に申し込んで五月に入居という力業。コネが強力だったか金を積んだか・・・いずれにしても入居を急ぐ事情があった。
「とんびが鷹を産んだ」と言う本多君をたしなめる洋一郎。ただ、どう見ても「勝ち組」に見えない後藤さんの風貌から言っても、この施設が似合わない事が気になる。

 

そんな時、父の携帯電話に着信があった。留守電のメッセージではブンショウシュッパンのサイジョウさんという女性。自分史の件で折り返し電話が欲しいという。
外に出て、そのサイジョウさんにコールバックする。
父の死に驚くサイジョウさん。死の事情説明に対し、自分史の事についての説明がされた。もう八十三だから元気なうちに自分の足跡を残しておきたいとの父の言葉も。
自分史は自費出版と違い、記念品の様な扱い。普通は近親者たちに配る。だが父の場合は一冊だけでいいとの事だった。近所にある図書館に寄付するつもり。それは多分和泉台文庫。詳しい話を聞くために面会を申し出る洋一郎。

 

カフェでの面会。相手は西条真知子さん。フリーのライターだが文翔出版の名刺も持っていた。航太と同世代に見える。
自分の名刺が石井でなく長谷川という事で、父母の離婚とその後の音信不通、遺骨との再会について簡単に話す洋一郎。


父は、四月八日に会社が定期的に開催していた出版相談会に出向いていた。そこで彼女と話したが、契約まではしなかった。

連休前に連絡すると言われてから音沙汰無し。

自分史についての説明がパンフレットで行われる。自分史は原稿持ち込みと記者取材の2コースであり、父の希望は後者。これだと最低でも百二十万かかる。父の残した貯金通帳には五百万近い残高があったが、ただ一冊のために注ぎ込む筈がないと思われた。
洋一郎は、父は途中で気が変わってやめようと考えたのだ、と西条さんに話す。

 

相談会での父の様子を話す西条さん。一冊しか作らないという事について「家族は誰もいないんだよ」と言ったという。だがその後言う事が変化し、居る事は居るし、まあ、居ると思うんだけど・・・居ないんだ、という曖昧さ。
そして、これを書いてくれるあなたが読んでくれればそれでいい、と笑ったという。
音信不通の、ワケありの部分について聞きたそうな西条さんに、契約を結んだわけじゃないから自分史の話はなかった事にして下さい、と話を切り上げる洋一郎。パンフレットも名刺も部屋になかった。
納得しない西条さんはケータイをチェックして下さいと言い出す。それがあれば話を進める意思表示があった事になる。
だが西条さんのケータイ番号はアドレス帳には入っていない。文翔出版の名も登録はない。
なおも粘る彼女に個人名のチェック。

「西条真知子」の名で会社の電話番号が登録されていた。
だがどっちにしても本人は亡くなった。もうこの話は終わりだ、と言う洋一郎に「息子として、それでいいんですか?」

 

その時、父のケータイに着信の振動が伝わった。

電話の相手は父をノブさんと呼ぶ、トラック運転手時代の仲間、神田弘之さん。六十五歳。二十年以上のつきあいで、年に数回会って酒を汲み交わしていたという。
何とか事情は判ってもらったものの、遺骨にせめて線香を上げたいと言い出した。

 

そこまでの話を聞いて「わたしもご一緒します!」と西条さん。
せっかくのご縁と言う彼女に冷たく、キャンセルされると困るのも判るが諦めてくれと言う洋一郎。
目を赤く潤ませて「一番大事なのはお金じゃなく、石井さんの気持ち」と訴える西条さん。
圧倒されながらも、父が、人生を閉じる二週間足らず前に、彼女に話を聞いてもらっていた事を思い出す。
非礼を詫び、改めて自分史の事とは別に、焼香を願い出る洋一郎。
自分の家族で亡くなった人がおらず、石井さんの死を重く考えている西条さんの言葉に素直に頷く。

 


感想
恵まれた状況で入居して来る筈の、後藤さんが抱えている苦悩が何か? 気になる。
また亡き父親がまさかの「自分史」作りを考えていたとは驚き。
だが意に沿わない、後悔が募る過去であっても辿った道は道。

どんな人間の一生も、価値あるものとして尊重されなくてはならない。

 

これで思い出すのがモームの「人間の絆」。
人生を振り返る時、一つの芸術品が完成した事を喜ぶ気持ち。そしてそれを知っているのは自分ひとり。死とともに一瞬にして失われてしまおうとも、その美しさには変わりない。

 

人の幸せって、なんだろう・・・・?

 

 

ボディガード   1992年 アメリカ

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監督 ミック・ジャクソン
脚本 ローレンス・カスダン

 

キャスト
フランク・ファーマー    ケヴィン・コスナー
レイチェル・マロン     ホイットニー・ヒューストン
サイ・スペクター      ゲイリー・ケンプ
ビル・デヴァニー      ビル・コッブス
グレッグ・ポートマン    トーマス・アラナ
ハーブ・ファーマー     ラルフ・ウェイト
ニッキー・マロン      ミシェル・ラマー・リチャーズ
トニー・シペリ        マイク・スター
ヘンリー            クリストファー・バート
フレッチャー・マロン    デヴォーン・ニクソン

 

 

予告編

 

感想
ホイットニー・ヒューストンが、絶頂期とも言えるタイミングで映画出演した一本。
絶大な人気を誇る歌手と、その警護をするボディガードとの恋。

実際、なかなかそんな話にはならないが、ケヴィン・コスナーだと通ってしまうのは、役得か。
ストーリーの作りはやや雑。姉の嫉妬で妹を始末させるのに、たまたま酒場で知り合った男に頼むとか、レイチェルがあてつけでヤろうとしたのを、途中で放り出されて逆恨みする男とか。

殺したいほど憎むかな?普通
息子のフレッチャーを殺そうとした爆弾も、彼がボートに乗るのをどう予測して仕向けたのか?

 

それから笑ったのは、レイチェルがフランクの部屋に行って日本刀を構え、そこへフランクがスカーフをふわっと掛けた時、真っ二つに切れたこと。日本刀は、横にずらさない限り切れない(だから刃の上にも裸足で乗れる)。

 

まあ、あれこれ細かい事は置いといて、この映画がホイットニーをスターダムに押し上げる最大のパワーになった事は確か。

この時のサウンドトラックは全世界で4,200万枚売れたという。

 

そんな彼女も2012年に死んだ。

コカイン中毒による心臓発作とも言われている、浴槽での死。
この葬儀の時の、ケヴィン・コスナーの弔辞が良かったらしい。
これによれば、ホイットニーの出演を強く推したのはケヴィン。だがアフリカ系アメリカ人だったため、彼女の出演には苦労があった。

 

 

 

あらすじ
駐車場で襲われたクライアントを助けたフランク。クライアントの礼に「駐車場で洗車する奴はいない」
専属にならないか、と言うクライアントに「一ヶ所に留まりたくない」と断るフランク。

 

ある日、フランクを訪れるビル。人気歌手のレイチェル・マロンの警護を依頼に来た。脅迫状も届いている。週2,000ドルの条件。
だが撮影現場を訪れると、協力的には見えないレイチェル。
断るフランクだが、レイチェルの希望だと言うビル。週3,000ドルで引き受けるフランク。爆発事件も起きていた。

 

レイチェル宅を訪れるフランク。なかなか入れてくれない相手に「亜鉛の原子番号は30」それが合言葉で扉が開く。
中で洗車をしているヘンリー。インターホンの相手は彼。

爆発事故で手を怪我していた。
昔からレイチェルをサポートしている姉のニッキー。
警護を担当している大男のトニー。
レイチェルには息子フレッチャーがおり、彼の警護も対象。

 

脅迫者に一番先に殺されるのは運転手、とフランクに言われ、あ然とするヘンリー。そんなヘンリーに車の取り回しを特訓するフランク。

 

屋敷の防犯設備をどんどん充実させて行くフランク。

スタッフへの教育まで始めたのに不満のレイチェルは、スタッフのサイと共に、勝手にライブハウスに向かう。新曲発表のイベントだが、控室にまで脅迫状が届いてレイチェルは動転。

初めて脅迫の事実を知り、一度はフランクと共に帰ろうとしたが、ファンの声を聞いてステージに出てしまう。


興奮したファンたちに引き摺られ、ステージ外に運びだされるレイチェルだが、危ういところでフランクに抱えられて脱出する。

ヘンリーに指示してあらかじめ別の出口に待機させていた車でそこを出た。

 

家で休んでいるフランクに、面子を潰されたトニーが襲いかかる。

だが簡単にブチのめされて、今度は包丁を手にするトニー。

フランクが投げたナイフが、トニーのすぐ脇の食器棚の桟に刺さる。

戦意喪失のトニー。

 

設備の確認をしているフランクのところへ近づくレイチェル。

ジョギングは出来ないと言うフランクに散歩を提案。
これはらは言うことを聞く、と素直になったが、夜の外出はしたい。

解決策はあなたとデートする事。

無理とは言わない、と照れながら去るレイチェル。

 

クロサワ映画の「用心棒」の1シーン。
映画館から出て来るフランクとレイチェル。

「あの映画何回観たの?」 「62回」。


そして「今夜のデートはフルコースなの?」と聞くが答えられないフランク。踊って欲しいだけ、と言ってダンススペースへ誘うレイチェル。

曲は「I Will Always Love You」ドリー・パートンの曲。

レイチェルを自宅まで連れて来るフランク。大学時代の写真が飾ってある。ウェストバージニア大のフットボール部。


シークレット・サービスはどうして辞めたの?の問いに「金さ」
壁の日本刀を手に取るレイチェル。
あなたってどういう人なの?心の安らぎと縁がないのかしら・・・・

 

翌日。スーツを着るフランク。こんな事になったのを謝る。「金で雇われて君を守っている」「じゃあ何?」
「今の仕事に専念したい。君が悪いんじゃない」
「依頼人と関係を持った。こんな気持ちじゃ君を守れない」
「SEXはダメなのね・・・・」

 

マイアミのヒルトン・ホテル。チャリティ・コンサートに出演のレイチェル。だがフランクとの関係は最悪となり、口も利かない。
元同僚のグレッグ・ポートマンが声をかける。今は彼もフリーとなり、他の要人のガード。「レーガンの一件はお前のせいじゃない・・・・」
そんなところへレイチェルが来てポートマンを誘い、自分の控室に入る。やむなく外で待機するフランク。

 

フランクに言い寄る女。「隅に戻って見続けてろ・・・・」
控室でキスをするうち、その気がなくなるレイチェル。だがポートマンは収まらない。仕方なく、トニーを呼び出してポートマンを追い出すレイチェル。

そんな時にレイチェルに電話。フレッチャーだと思って出たレイチェルだが、不審者からの脅迫。
あの電話の声は本気。あなたの言う通りにする、とレイチェル。
「ここから連れ出したい」 「いいわ」。「コンサートは中止」 「いいわ」

 

雪に閉ざされた湖畔の家。住んでいるのはフランクの父親ハーブ。そこへ避難したフランク、レイチェル、フレッチャー、ニッキー。
レーガンの事件の後、半年ここに居た、とハーブ。母キャサリンの葬儀の日、フランクが非番となった時にレーガンの狙撃事件が発生した。
食事の時、フランクが子供の頃の話を暴露するハーブ。
そしてチェスを引っ張り出して対戦の続きを始める親子。三年前から続いている。フレッチャーが提案した手を、しばらく考えて採用するフランク。ハーブが「いい腕してるな」とフレッチャーを抱き込む。

 

その夜、ニッキーがフランクに話しかけて来る。ニッキーがバンド活動をしていたところへレイチェルが入って、立場が逆転した。ニッキーの献身に感心しているフランクだが、「惨めに見えるでしょうね」。
ニッキーがフランクにキスするが、全く相手にされない。

 

外で知らない足跡を見つけるフランクとハーブ。
そこにエンジン音。フレッチャーが勝手にボートに乗って桟橋から出るところだった。離れて行くボートにダイビングしてフレッチャーを水の中に落とすフランク。
桟橋に戻るがレイチェルは激怒してフランクを非難。

謝るフランクだが、その時ボートが爆発。

 

こんな所には居られない、と荷物をまとめ始めるレイチェルだが、車が壊され、電話線も切られている。歩いて行くにはもう遅い。

ニッキーの様子がおかしい事で問い詰めるフランク。ニッキーの、妹に対する妬み。
相手は下町のバーで知り合った男。名はアーノルド。金は払った。勝手にやる条件で、方法までは知らない。

手紙による脅迫はその以前から自分でやっていた。だがフレッチャーを傷付けるつもりはなかったと泣くニッキー。
そこへまた侵入者。ニッキーが撃たれた。後を追って外に出るフランクだが、結局取り逃がす。

 

ニッキーの葬儀が行われた。アカデミー賞の授賞式が迫っており、レイチェルはノミネートされているが、欠席と思われていた。
だが強い意志で出席を決めるレイチェル。厳しい警護を覚悟するフランク。

そんな所で、再びポートマンに再会するフランク。前に居る司会者の警護だという。
レイチェルは各賞のプレゼンターにも任命されており、司会者と共に進行の補助をする。モニター通りのセリフを話せばいいのだが、司会者が受賞者を書いた封筒を開いた時、その中身が脅迫状に見えて、突然逃げ出す(実際には普通のメモ)。

 

控室でようやく落ち着くレイチェル。次は自身の主演女優賞待ち。
司会者にポートマンの事を聞くと、そんな男は知らないと言われ、犯人がポートマンだと知るフランク。
挙動のおかしいカメラマンを探し出して、トニーを向かわせる。
だがトニーは目を刺されて倒れる。

 

司会者のコールを受けてステージに向かうレイチェル。彼女の顔にレーザーの照準がチラチラ踊る。
彼女がスポットライトを受けて客席に向かった時、走り込んで来たフランクがレイチェルの体を庇う。胸を撃たれて倒れるフランク。彼が銃を持っているため、周囲が騒ぐ。
撃たれた方向に、カメラマンに化けたポートマン。そこに向けて銃を撃つフランク。射殺されるポートマン。


空港。プライベート機で出発しようとしているレイチェル。左手を吊っている姿のフランク。彼女の次のボディガードは白髪。「若いのは危険だ」とフランク。
さよならの抱擁をしてして別れたレイチェルは、座席に座る。
機体がゆっくりと動き出した時「止めて!」とレイチェル。
タラップから降りてフランクに走り寄り、キスを交わすレイチェルとフランク。

 

 

国際的な会合が開催されている。その後ろで控えている黒スーツ姿のフランク。SSに復帰していた。

 

 


NHKスペシャル「バブル 終わらない清算 〜山一証券破綻の深層~」 12/2放送

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平成史スクープドキュメント の第二回目。

番組詳報 今回は詳報の体をなしていないが・・・・


感想
山一証券の破綻では、野澤社長の「社員は悪くないんです!」の絶叫が記憶されているが、20年以上経ってその背景についての真相が報じられる。


平成に起こったバブル、そして破綻。バブルがはじけた後、未だにその低迷から抜け出せていない今の経済状況。
当時は定期預金の金利が8%とも言われており、世間全体が右肩上りの時代。

 

大企業が起こす不祥事も最近増えている。
悪事を働く根っこは同じという事か・・・・
社長から隠蔽を命じられた木下公明。彼の人生が今回一番身にこたえた。

 

 

概要
名門企業を蝕んだその病理に迫る。
小手川大介:元大蔵省 証券業務課長として、三洋証券、山一證券の整理を担当。山一の自主廃業を促した。


山一証券は1997.11.24自主廃業した。当時の常務、藤橋忍がインタビューに応じた。
1989(H1)から始まった平成バブル。

営業部門では一人で1千億動かす。
H3年に暗転。証券スキャンダル。

金を集めるために損失補てん。利回り保証金で運用。
山一の補てんは1200億。問題先送りを考えた行平社長。極秘チームに木下公明を据える。
手法:飛ばしの複雑化。細かく分けペーパーカンパニーに分散、移し替え(悪質な手法)。
木下82歳。会社のためにそれをやらなければ瞬間に破綻。とりあえず生き残らせる。
当時55歳。平社員で再就職先も決まっていた。社長直々の命令で気持ちが動いた。この時から破綻まで六年。

 

1992(H4)夏。株価14,000円以下。証券危機。不良債権に公的資金投入が検討されたが反対される。
山一営業の正富。株価下がり押し潰されそうだった。みんな下痢。
木下は当時役員。その時が来たら「怖いな」
破綻寸前、一時株価が持ち直した。行平の希望的観測→株価上がれば損失も解消。

1995(H7)大和証券ニューヨーク支店の巨額損失。大蔵省の報告遅れで国際問題になった。
日本の「護送船団方式」(体力の弱い銀行も守る)が国際的に批判される。
破綻寸前の株主総会で行平吊し上げ。

社長が野澤に交代(実情何も知らず)。

 

事態急変は11/14。メインバンク富士銀行との交渉は不調に終わり、海外会社との提携もNG。
最後に頼ったのは大蔵省。損失隠しの報告。今まで多くの接待を続けて来た。「バックアップしましょう」の言葉に野澤は安堵。
翌日小手川は救済しないと決断。山一を救う方法はない。

 

日銀は山一の破綻前提で動いた。世界の金融市場を混乱させない事が優先。金融不安、恐慌を防ぐ(証券、銀行は潰れてもいい)。
11/24。山一破綻。社員7,500人のほとんどは報道で破綻を知る。

 

木下の自問自答。
組織に忠誠を尽くすのが自分の生き方の基盤。どこが間違ったか。
損失補てんに使われた国民負担は10兆円規模。

 

藤橋のことば
歴代社長、自分も含めて痛感したのは「当事者意識のなさ」
会社が生き残るためにすべきこと→見たくない現実も直視。常に最悪を想定して、その上で最善を尽くす。
祈るだけ、は最悪。

 

今も続く大企業の不祥事。組織文化をどう変えて行くか?
藤橋は自主廃業後も最後まで残って事務処理を行った。

破綻の4年前に書かれた山一の社内文書。
経営構造の改革31ケ条。その中の一文
「座して死を待つか、チャレンジするか・・・・」

 

推奨はしませんが、削除されるまでは観られます・・・

 

 

メッセージ・イン・ア・ボトル 1999年 アメリカ

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ケヴィン・コスナーつながりで・・・

 

監督 ルイス・マンドーキ
脚本 ジェラルド・ディペゴ
原作 ニコラス・スパークス 
音楽 ガブリエル・ヤレド

 

キャスト
ギャレット・ブレイク      - ケヴィン・コスナー
テリーサ・オズボーン    - ロビン・ライト・ペン
ドッジ・ブレイク        - ポール・ニューマン ギャレットの父親
ジョニー・ランド        - ジョン・サヴェージ キャサリンの弟
リーナ・ポール        - イリーナ・ダグラス 同僚
チャーリー・トスキ      - ロビー・コルトレーン 上司
ジェイソン・オズボーン   - ジェシー・ジェームズ テリーサの息子 
マータ・ランド         - ベセル・レスリー キャサリンの母親
ハンク・ランド         - トム・アルドリッジ キャサリンの父親
キャサリン・ブレイク    - スーザン・ブライトビル 亡き妻

 

 

予告編

 

映画とは関係ないですが・・・

同名の音楽  police

 


感想
瓶に入れた手紙がきっかけで知り合う男女の、切ないラヴ・ストーリー。小説が全米で大ベストセラーになったとのこと。

 

手紙の主を割り出すためのプロセスが、結構興味深かった。
ただ、映画としてはもう少し引っ張っても良かった様に思う。案外簡単に見つかったナ、という印象。

出会いのぎこちなさは、良く描かれている。だが、妻に死なれて2年間、傷心のまま妻の実家とも遺品を巡るトラブルを抱えている割りに、あっさり「ステーキ食べに来ない?」ってのは、ちょっと軽い。
女性の側から自然に(さりげなく)、次に会う機会を作って行った方がそれらしい。

 

瓶の手紙についても、誰かに読まれるという事は十分あり得る事だし(実際あった)、何かを期待していたのか、とも思える。

寡黙な海の男と、ちょっとイメージが食い違う。

妻の実家とも和解し、ヨット製作を再開したのは、テリーサが現れたからに他ならず、それが完成して「進水式には来て欲しい」と愛情いっぱいのメッセージを出しておいて「キャサリン号」にはちょっとびっくり。
そらーテリーサは同席出来んだろう。

 

女性の側については、心情的にほぼ納得出来る展開。
ただ、個人的に見つけた手紙でも、職業的見地から行けば、何らかの新聞ネタとして考えていた事は確か。チャーリーが全文を手に入れ、記事が書けた事を許した時点で、怒る事は出来ない。
会いに行って、思ったよりイイ男だったから、訪問の目的を言いそびれた。ハンサムって、いいなぁ。

 

ギャレットが、口ベタの割りに積極的なのが、彼女の側に響いたという事か。この辺の、テリーサに対する思いと、亡き妻に対する思いの使い分け。
不器用に見せかけて実にうまいなー、と思ってしまうのは僻みかな?・・・・・
彼女の残したコンパスは「自力で私を探しに来て」ということだな。

 

結局ギャレットが遭難死する事で、この恋愛は結末を迎えるが、二人がうまく行く要素が、そもそもない。
男は自分の町から出たくないし、女は都会に仕事を持ち、キャリアもアップして、仕事を捨てるなどあり得ない。
結局そういう意味でも「ファンタジー」としてちょっと涙を流す、ぐらいのものか。

 

ポール・ニューマンの父親が、何とも渋くて良かった。ギャレットの父親にしてはよく喋るが・・・・
昔、スカイラインのCMやってました(terrificという言葉知らなかった・・・)

 

そういえば、テリーサの愛車がトヨタのカムリ(まあ、大した話じゃないけど・・・)

 


あらすじ
シカゴの新聞社に勤めるテリーサ。最近離婚して息子と二人暮らしだが、元亭主夫妻に子供を預けた期間、休暇を取って海岸で過ごした。
ある朝、ジョギングで砂浜を走っていると、半分埋まっている瓶を見つける。中に手紙。


それはキャサリンという女性に宛てた愛情深い手紙。

女性は既に亡くなっていると想像される。

感動したテリーサは、職場にその手紙を持って行き、同僚のリーナらに見せたところ、皆が感動。
だがそれを読んだボスのチャーリーが、新聞のコラムにその手紙の内容を掲載してしまった。

 

何も知らされなかったテリーサは怒るが、その記事の反響は大きく、何百もの手紙が来る。
その中で、手紙の形式が似通った手紙が2通あり、いずれも近くの海岸で拾われたもの。
元々テリーサは記事の裏取りをする調査部の人間であり、この手紙を書いた人物に興味が湧いた。

タイプ打ち文字の特徴から、タイプライターの機種が特定され、瓶の製造メーカ、場所も割り出された。栓のコルクから、海中にあった期間が2年程度と判った。拾った場所の海流から、投げ込まれた場所の推定。
また便箋のマークが特殊なため、大まかに当たりを付けた地域の印刷業者を当たったチャーリーが、その発注者を特定し、テリーサに住所と名前を教えた。

 

ノースカロライナ、アウターバンクスに居る、その人物G・ブレイクに会いに行ったテリーサ。その住所を訪れると留守で、近くに居た老人が話しかける。当人は港にいるとの事、老人は父親のドッジ。
海岸まで出掛け、本人のギャレットに会うテリーサ。ギャレットは頼まれてヨットの修理をしているところだった。新聞社で調査員をしている事、セイリングを楽しんでみたいといった話をし、話の接ぎ穂が見つからな

いまま帰ろうとしたテリーサに、明日の朝この舟の試走をすると話すギャレット。

 

朝、店でコーヒーを飲んでいるギャレットに、男が来て彼を泥棒呼ばわりする。店の者はその男に、裁判で負けたんだから、と止めるが、更に暴言を吐いたため、ギャレットが殴る。
ちょうどその現場を見てしまったテリーサ。
店を出てヨットに向かうギャレット。不安を感じたテリーサは、一旦はヨットに乗るのを断るが、思い直して乗り込んだ。
船上で先の男ジョニーの事を話すギャレット。ジョニーの姉と結婚した。今は結婚していない。
テリーサも自分のこと、息子がいて現在は独身だと伝える。だが瓶の手紙の事が言い出せない。

テリーサが忘れたジャケットをホテルに届けるギャレットだが、口下手で会話にならない。帰りがけに自分が焼くステーキは最高だと言った。

 

翌日家を訪れるテリーサ。
部屋に掛かった絵の事を聞くと、妻のキャサリンが描いたものだと言う。キャサリンとは幼馴染み。

病気で2年前に亡くなったと言うギャレット。
その晩ソファーで眠ったテリーサは、夜半にギャレットのベッドに入る。

翌日、作りかけのヨットを見せるギャレット。キャサリンが亡くなってから手が付けられない。
テリーサは、息子を迎えに一旦シカゴに戻らなければならないが、互いに惹かれる気持ちを確認する。

 

亡くなったキャサリンの家族三人が、ギャレットの家を訪れる。キャサリンが残した遺品の絵を返せというのが要求。応じないギャレット。険悪な中、ドッジが家から絵を持ち出して、割った瓶で切り刻むと脅しをかけた。キャサリンがこんな事を喜ぶ筈がない。
母親がその通りだと言い、皆は帰って行った。

 

その晩ヨットで一夜を明かすギャレットとテリーサ。
翌日ギャレットが不在の時に部屋に入り、キャサリンのスケッチ等、持ち物を動かしてしまったテリーサ。それを知ったギャレット。キャサリンの靴にテリーサのこぼした水が掛かる。
一人にして欲しいというギャレットに、居場所がなくなって外に出たテリーサは、父親のドッジに会う。

 

キャサリンの話をするドッジ。体は弱かったが絵の才能に期待していたキャサリンの両親。妊娠して体調を崩し、実家に帰っていたが、ギャレットが強引に家へ連れ帰った。
そして懸命な看病の甲斐なく、キャサリンは亡くなった。

 


戻ったドッジとテリーサを迎え、三人で食事をするギャレット。

翌日、シカゴに戻るテリーサを見送ったギャレットは、中断していたヨット作りを再開する。
一方テリーサはチャーリーに、亡くなった妻を今でも愛し続けている、普通の男だったと話す。
だがリーナには詳しい話をすると、感激される。
テリーサに電話を入れるギャレットは、船の製作を再開した事を話す。テリーサは二人の出来事をただの遊びだった?と聞くと、愛したのは妻と、都会の女性だと答えるギャレット。
会いたいというギャレットに、それならこちらに出て来て、と難題を吹っ掛けるテリーサ。ギャレットはアウターバンクスから出たことがなかった。

 

数日後、ドッジの運転する車でバス乗り場に行くギャレット。慣れない旅で緊張している。

到着したギャレットを息子ジェイソンと一緒に迎えるテリーサ。愛し合いたいが、息子がいるので自重。
翌日、ジェイソンに案内されてテリーサの職場の新聞社を訪れるギャレット。皆に口止めするテリーサ。
職場の人間がみな好意的な事に驚くギャレット。

 

ジェイソンが友達の家に泊まりに行ったのを見送り、愛し合うギャレットとテリーサ。
テリーサがベッドから離れた時に、ベッドサイドの引き出しにクロスが挟まっているのを引いて、中にあった瓶を見つけてしまうビャレット。そして同じ場所にあった手紙や新聞記事も見つけてしまった。
全てを知られてしまったテリーサは、帰ろうとするギャレットを必死で止める。
最初は手紙、そして会ってから貴方に恋をしたと伝えるテリーサだが、手紙はキャサリンに書いたものだと返すギャレット。
テリーサが言った、三通の手紙が私を変えたという言葉に反応するギャレット。自分は二通しか書いていない。全ての手紙を見て、自分の知らないものを見つける。

キャサリンがまだ生きていた時、病気で弱っているのに海岸へ行って、彼女を抱いて帰った事があった。その時に投げられたものかも知れない。キャサリンはその後容体が急変して三日後に亡くなった。


その事を思い出しながら、手紙を読んで涙するギャレット。
手紙の文面から、キャサリンは自分の死期を悟っていたと話すテリーサ。
手紙を持ち帰りたいと言って、そのまま去るギャレット。

キャサリンの実家を訪れるギャレット。在宅だが外に出ない母親。

絵と遺品の入った箱を玄関先に置いて帰るギャレット。

 

今回の出来事を、彼とは別の話として原稿にまとめ、チャーリーに渡すテリーサ。
一方ヨット製作をしているギャレットの元に、ジョニーが訪れる。無言のまま製作を手伝うジョニー。

テリーサの記事は採用され、一面に掲載された。チャーリーとそれを喜ぶテリーサ。

 

会社では記事の功績が認められ、専用のオフィスを与えられるテリーサ。そこにギャレットからの手紙。完成したヨットの写真の裏に、全ての思いを込めた。愛している。進水式に来て欲しいとのメッセージ。
昇進のお祝いに来たチャーリーにその写真を見せるテリーサ。「例のエイハブか」。彼の事を幸せ者だと言って立ち去るチャーリー。

進水式を見に出掛けたテリーサだが、そのヨットの船名は「キャサリン」号。シャンパンを割り、船首に寄り添うギャレットを見たテリーサは、気付いたドッジに手を上げると、そのまま立ち去った。

 

家で待っていたテリーサに、今日来てくれたことを感謝するギャレット。キャサリンを愛し続けているギャレットだからこそ愛したが、ここには居られない。
失いたくないと止めるギャレットだが、捕まえてと言うテリーサを止められなかった。

過去に縛られるギャレットを不憫に思うドッジ。

 

帰宅したギャレット。ベッドに残したテリーサからの包みを開ける。

コンパスと、彼女のメッセージ。
キャサリンへの手紙をタイプで打つギャレット。

 

翌日自分のヨットで沖に出ようとするギャレットに、嵐だから気を付けろと心配するドッジ。心を決めたと伝えるギャレット。
どんどんひどくなる嵐。ヨットで遭難している親子を見つけて、父と娘を助けたギャレット。だが母親がまだ取り残されている。海に飛び込むギャレット。

 

会議中のテリーサに緊急電話が入る。ギャレットの死を伝えるドッジ。
葬儀を終えたドッジの元をテリーサが訪れる。

瓶に入った手紙が残っていた、とそれを渡すドッジ。

 

キャサリンへの手紙。
思い出に生きるのではなく、心を開いて再び人を愛する事を、テリーサが教えてくれた。
テリーサの愛を捕まえに行く。
成功しても、失敗しても自分たちを祝福して欲しい。

君を愛したほどテリーサを愛している。

 

ギャレットを想いながら考えるテリーサ。
完璧な人生もあれば、苦難の人生もある。
今回の旅で失ったものが、人生において何が尊いかを教えてくれた。
愛もまた、最高の輝きを与えてくれたと。

 

 

昼顔 ~平日午後3時の恋人たち~ TVドラマ  2014年

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フジテレビ系 木曜22時~ 7/17~9/25放送

 

脚本         井上由美子
プロデューサー  三竿玲子

 

キャスト

笹本 紗和       - 上戸彩
滝川 利佳子    - 吉瀬美智子
北野 裕一郎    - 斎藤工
加藤 修          - 北村一輝
笹本 俊介       - 鈴木浩介
笹本 慶子       - 高畑淳子
滝川 徹          - 木下ほうか
滝川 真菜       - 山口まゆ
滝川 陽菜       - 豊嶋花
北野 乃里子    - 伊藤歩
長谷川 美鈴    - 木南晴夏
萩原 智也       - 淵上泰史

 

 

詳細あらすじはこちらを参考に・・・


ドラマダイジェストPV  最後に映画版予告あり

 

 

感想
セックスレスの夫を持つ主婦笹本紗和が、ふとしたきっかけから、高校教師の北野裕一郎と不倫の関係になって行く話。
ドラマとしては、紗和と友人になるセレブの滝川利佳子、そして裕一郎の妻の北野乃理子との、三人の友人関係が中盤まで描かれる。

昆虫研究に力を入れる裕一郎と親しくなり、一緒に公園へ通ううちに、お互い惹かれ合う紗和。娘が二人居ながら次々と不倫を重ねる利佳子。裕一郎より一歳上で子作りにあせる乃理子。

最終話に近づくにつれて、乃理子の迫力がグイグイ。

優柔不断な夫を責めつつも、ターゲットは紗和。

紗和の夫俊介も巻き込んで紗和を追い詰める。

 

結局弁護士立合いの下、乃理子の主導で、今後一切二人は逢わない事を誓わされる紗和と裕一郎。

終わってみれば、全てのしわ寄せが紗和に集約されてしまった様な話。不倫はアカんよ、という教育番組。
平均視聴率 13.9%は、10時ドラマとしては異例の健闘。

 

 

各話あらすじ

第一話:恋する妻たちの怖く痛く愛おしいラブストーリー
夫、笹本俊介と結婚5年目の紗和。俊介は植物系のマザコン。ここ数年はセックスレスで、ハムスターに愛情を注ぐ俊介。
紗和は近所に引っ越して来た、セレブの滝川利佳子と知り合いになる。

スーパーでパートとして働く紗和。

商品の口紅を万引きした所を利佳子に見られる。
萩原智也と不倫関係の利佳子は、たまたま智也とスーパーに来た時車上荒らしに遭った。警察の事情聴取で紗和と三人だったという話を勝手に作る。逆らえない紗和。


犯人は高校生で、担任教師の北野裕一郎が駆け付ける。
その後高校生と示談が進められるが、保護者含め不誠実な対応で、裕一郎は苦しい立場となる。

翌日、家の近くをうろ付いている智也を見つける紗和。利佳子に捨てられたが忘れられないと言う。
引越しのパーティーをしている利佳子の家を訪ねる紗和。
成り行きでパーティーに参加させられる紗和だが、そこへ智也が来てしまう。利佳子の夫、徹が不審に思ったため、とっさに「私の弟です」と言ってしまう紗和。

徹が編集長をしている雑誌で挿絵を描いている画家の加藤修に、肖像画を描いて欲しいと頼む利佳子。
別室で絵を描いた修。それを見て一流だと感じる利佳子。

その後学校へ裕一郎を訪ねる紗和は、利佳子とは友達ではないと訂正する。


第二話:濡れたキス・・・妻たちの共謀
紗和の家に姑の慶子が来て、紗和が男と話していた事を問い詰める。先日智也と話していたのを見られていた。裕一郎に惹かれている事で動揺する紗和。
修が書いた肖像画は、利佳子が黄色の涙を流しているものであり、徹はそれを捨てる。もう一度描いて欲しいと利佳子が頼むが、断る修。

利佳子から逢おうと誘われて出掛けた紗和だが、そこに居たのは裕一郎だけ。示談の話だと言われて来たが、それは利佳子の策略。

お互い楽しく会話して、連絡先も交換する二人。だがその場面も慶子に見られていた。


またも慶子に追及される紗和だが、利佳子が共通の知人だと言って助けてくれた。

紗和が働くスーパーに、契約社員として入って来た智也。利佳子との繋がりを求めての行動。
スーパーにたまたま訪れる裕一郎の妻・乃理子。紗和は業務として会話するが、もちろんお互いを知らない。

アトリエに修を訪ねる利佳子。肖像画を描いて欲しいと頼むが冷たくあしらわれる。
裕一郎に電話をかけ、昆虫採集に行く約束をする紗和。
そして昆虫採集に来た裕一郎と紗和。ふと見つめ合った時に、紗和がキスをしようとしたが、それを避ける裕一郎。

妻乃理子とマンションで暮らす裕一郎。
乃理子は裕一郎より一歳年長。大学の研究室に勤めている。最近准教授になった。
乃理子とは同じ研究室だったが、裕一郎はそこを辞めて高校の教師になった。昆虫を研究している。


第三話:妻の失恋・・・本音語る七夕の夜
利佳子からの電話を受ける紗和。裕一郎への気持ちを知られていた。夫なんかにバレないとそそのかす利佳子に、もう裕一郎には逢わないと言う紗和。

パートの仕事を終えて帰る時に雨となり、智也の傘に入って歩く紗和。そこへやって来た裕一郎。紗和に借りた傘を返しに来た。足早に立ち去る裕一郎。

たまたまスーパーで会った紗和、乃理子、利佳子。三家族で七夕パーティーをする事になった。
男たちが結局集まらず、残った三人で不倫話。絶対否定派の乃理子。

 

翌日裕一郎の学校を訪れ、智也の件の誤解を解く紗和。
また森林公園で昆虫採集をしている裕一郎と紗和。手を繋ぐ様になった二人。だがそれを裕一郎の教え子に目撃された。

その頃、修に抱かれている利佳子。


第四話:妻を強くする恋・・・覚悟のキス
情事を終えて金を残して行こうとする利佳子に、突き返す修。
紗和の夫、俊介を誘惑する会社の部下、長谷川美鈴。飲みに行くため、紗和に嘘のメールを送る俊介。

その日、裕一郎と逢う約束をしていた紗和だが、会えなくなりました、とのメールが届き落胆。
逢えないと判っていても森林公園を訪れてしまった紗和。
だがそこに裕一郎が居た。思わず抱き合う二人。

そして初めてのキス。


第五話:悪女誕生 妻が一線を越えた日
海辺のホテルで一線を越えるのに躊躇している裕一郎と紗和。
一方出会い系サイトで、騙して利佳子をホテルに呼び出していた智也。元々利佳子とは出会い系で知り合った仲。修との関係を断つよう言う智也。一方夫の徹が利佳子を尾行して近くに居た。

裕一郎が押し倒して結ばれる紗和。


帰宅して徹からの電話を受ける紗和は、利佳子が家にいないという知らせを受けて利佳子の居るホテルに急行。出会い系でもし危険な男だったら助けに行く約束をしていた。
紗和がホテルに入るのを見届ける徹は、結局利佳子の浮気を知る。

後日徹は、花火大会の日に、利佳子と修が逢う様罠を仕掛ける。
密会する利佳子と修。車に仕掛けたGPSを見抜き、タクシーに乗り換える利佳子。だがGPSはもう一つ仕掛けてあった。

一方動物園で待ち合わせをする裕一郎と紗和。


第六話:秘密の恋がバレる時・・・夫の罠
動物園でのデートを楽しむ裕一郎と紗和。

 

一方修と利佳子の密会を撮影する徹。

花火大会で不在だったのを子供たちからなじられる利佳子。その時徹も不在だった事を知り動揺する利佳子。
契約プラン変更を口実に利佳子のスマホを取り上げる徹。

徹は利佳子のスマホから智也を割り出して呼び出す。
一方利佳子はバッグに仕込んだGPSを見つけ、全てが徹にバレた事を知る。
紗和、乃理子に会って「罰があたった」と嘆く利佳子。その時乃理子のスマホの着信が鳴り、待ち受け画面で夫の裕一郎が現れる。

それを見て初めて乃理子の夫を知り、ショックを受ける紗和。
利佳子も画面を見ており、乃理子が帰った後、諦めるよう諭す。

「あなたは嫉妬心を抑えられない」。

帰宅した利佳子。徹と修が家に居り、徹が修との絶縁を言い渡す。修は元々誘惑されただけだと冷たい。
また智也も徹に責められて全てを話しており、二股不倫もバレていた。

紗和と裕一郎の別れ話。さよなら、と言って別々に歩き出す二人。


第七話:恋の終わり・・・日常に戻る辛さ
裕一郎との別れを泣きながら話す紗和に、不倫は別れても人に知られてはいけないと諭す利佳子。
徹の平手打ちを受けて家を出る利佳子。

俊介が母親・慶子と話すのを見かける美鈴。美鈴が強引に挨拶したのを見送って不倫を疑う慶子。

校長に、生徒の木下から渡された紗和と一緒の写真を見せられる裕一郎。校長の警告。

慶子が、俊介の不倫をほのめかす。動揺する俊介。
利佳子が修のアトリエに入ろうとした時、中に徹が居る事に気付く。妻という人形が欲しかっただけ、と徹を責める修。
帰宅した利佳子は長女に、男と別れて泣いていたところを見られており、責められる。

裕一郎と映画を一緒に観た乃理子。帰りにスーパーに寄ると、たまたま俊介も居た。紗和が裕一郎に「北野先生」と言うのを聞いて怪しむ乃理子。紗和の家で一緒にお茶を飲もうと提案する乃理子。

 

一方、離婚届を置いて修のアトリエを訪れた利佳子は、修に抱かれる。


第八話:妻の追及・・・修羅場がはじまる
紗和の家ではしゃぐ乃理子。ゴリラのぬいぐるみを見つけ出す。裕一郎が紗和にプレゼントしたものだが、俊介は知らない。動揺する裕一郎。
乃理子が、紗和が裕一郎と初対面でない事について訊ねると、車上荒らし事件の関係で知り合っていた事を話す裕一郎。

一方、裕一郎の財布から動物園のぬいぐるみの領収書を見つけた乃理子は、不倫の相手が紗和だと確信。
乃理子が紗和に電話をして、今度は自分の家に夫婦を招待する。

 

智也経由で連絡を取り合い、図書館で逢う紗和と裕一郎。

乃理子の疑惑を感じ、もう二度と会わないよう話しているところに、裕一郎を尾行して来た乃理子が現れる。

 


第九話:確実に崩れゆく日常・・・夫の涙
乃理子が紗和を殴り、騒ぎとなって三人が警察で事情聴取を受ける。北野夫妻は帰されたが紗和は居残り。


ホステスとして働いていた利佳子は、警察からの電話を受けて紗和を引き取りに行く。

荷物をまとめてマンションを出る乃理子。この街には住みたくないと言い、一週間以内に彼女の実家に引っ越して欲しいと裕一郎に宣言。
スーパーの幹部に紗和の事でクレームを入れた乃理子。叱責される紗和。
学校で校長から転任を勧められる裕一郎。乃理子が不倫の件を学校にも告げていた。

帰宅した紗和は待ち伏せしていた美鈴から、俊介と別れるよう迫られる。紗和の不倫も知られていた。
美鈴の事を話し合う俊介と紗和。自分の告白もしようとする紗和だが、一切聞き入れない俊介。

行き場がなく、以前裕一郎とデートした森林公園に来てしまう紗和。
そこに立っていた裕一郎。そして海岸を歩く二人。


第十話:妻の逃避・・・試される愛の強さ
紗和の不在について、俊介は友達と旅行だと聞かされていたが、慶子は信じない。乃理子が俊介に裕一郎の不在を告げる。

紗和と裕一郎は、彼の知り合いの別荘で食事をしていた。紗和が携帯の電源を入れると、多くの着信の中に新しい利佳子の携帯番号。状況を教え、帰るよう説得する利佳子。


愛を確かめ合う紗和と裕一郎。だが裕一郎はケジメを付けるために一旦帰ると言う。待つように言われる紗和。

笹本家を訪れ、俊介と慶子に謝罪する裕一郎。だが俊介は離婚を拒み、裕一郎を追い出す。
自宅に戻った裕一郎は、全て僕が悪い、と乃理子に謝罪し別れを申し出るが、乃理子が自分の妊娠を告げる。


第十一話(最終回)

:罪から始まった恋完結・・・妻が選ぶのは夫か恋人か
乃理子の妊娠は結局嘘だった。出て行く裕一郎を、乃理子が雇った探偵が尾行。
裕一郎が別荘に戻る。抱き付く紗和。
その夜、一台の車が別荘に着き、俊介と慶子が乗り込んで来た。

そしてもう一台。そこには乃理子と彼女の父親が乗っていた。二人は無理やり引き離される。

会社の飲み会で正体なく酔っ払い、醜態を晒す俊介。介抱しようとする美鈴だが「冷めちゃった、もういい」と別れて行った。

後日、裕一郎側と紗和側の家族が弁護士事務所に集まり、話し合いの場が持たれた。


乃理子の要求は「今後二人は絶対に会わない。電話、メールも一切しない」。違反したら一生、毎月30万の慰謝料を支払う事。
北野家は転居、裕一郎は高校を退職。紗和もスーパーは退職。
裕一郎、紗和とも家族の手前、相手の悪口を言ってその場を取り繕う。

学校を退職する日、生徒の木下が裕一郎を責める。
放送室を占拠して「誰かを真剣に愛するように」とのメッセージを伝える裕一郎。もの陰からそれを聞いて涙ぐむ紗和。

帰宅した紗和は、発作的にベランダで靴を燃やす。このボヤ騒ぎで紗和は警察の取り調べを受けるが、俊介の助言で放免となる。
俊介が「離婚しよう」と告げる。そして「一番近くにいたのに、気持ちが判らなくてごめん」。

 

一人で転居しようとする紗和。

裕一郎が引っ越すトラックとすれ違うが、気付かない。

 

 

ヴェノム  2018年 アメリカ

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延々と流れた予告編に引っ張られて観に行ったけど、自分的にはイマイチ。ただブロ友さんの中で「ヴェノやん」というジェーン・ドゥさんの表現があり大いに賛同。
乗っかってレビューすることに。基本はリブログ参照。


 

監督 ルーベン・フライシャー
脚本 スコット・ローゼンバーグ

 

キャスト
エディ・ブロック / ヴェノム       - トム・ハーディ
アン・ウェイング / シーヴェノム   - ミシェル・ウィリアムズ
カールトン・ドレイク / ライオット   - リズ・アーメッド
ダン・ルイス                  - リード・スコット
ローランド・トリース                     - スコット・ヘイズ
ドーラ・スカース                          - ジェニー・スレイト
マリア                                       - メローラ・ウォルターズ

 

 

感想
「マーベル史上「最凶のダークヒーロー」との触れ込みだったが、ストーリー的には時々コミカルで、人間を乗っ取る異星生物が「ヴェノやん」なんだからちょっと気が抜ける。
それ単体では力がなく、他の生物にとり付く事で本来の能力を引き出すという設定は面白い。
だが後半エディの胴体がブッ刺された時、ヴェノムがとり付いてそれが治ってしまうロジックがちょっと気になる(気にするなってか)
寄生生物のくせに「寄生」という言葉に異常に抵抗する「ヴェノやん」。これはこれでけっこうハマる。


ざっくりあらすじ
記者のエディは、ライフ財団が行っている人体実験の噂を追求している。恋人のアンが弁護士としてこの件に関わっている事を知って、彼女のPCから機密情報を盗み出す。
財団トップのドレイクを追求するも、会社をクビになるエディ。アンも巻き添えで職を失う。
財団では宇宙から持ち帰った生物の研究を行っていた。ヒトへの寄生を試みるがことごとく失敗。
その後財団の研究者ドーラが、研究に疑問を抱きエディに情報を提供。
研究施設に侵入したエディだが、タール状の生命体シンビオートに寄生される。
脳内に話しかけるシンビオートは「ヴェノム」と名乗る。

極めて高い能力を持つが、生きた動物を捕食する必要があり、エディとの間で葛藤が起こる。


部下を殺され、エディがシンビオートに寄生された事を知ったドレイク。そこに地球帰還時に脱出して、少女に寄生していたシンビオートのライオットが訪れ、ドレイクに寄生。
自分の母星に行って仲間を地球に運ぶため、宇宙船を発航させようとするライオット。
ヴェノムからライオットの事を聞いたエディは、協力して宇宙船の阻止に動く。
激しい戦いの末、ライオットが宇宙船に乗り込むが、飛び立つ途中で外から船体を切り裂くヴェノム。
宇宙船は破壊された。


戦闘シーンダイジェスト

 

 

 

 

 

 

ロッキーシリーズ  1976~2006年 アメリカ

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第一作目から約30年かけて6作が作られた。
ボクシング映画というジャンルを確立したシリーズ。
何度倒されても立ち上がるロッキーと、それに重なるテーマ曲。

何度見せられても、その都度涙腺がゆるんでしまう。

これほどズルい映画があるだろうか・・・・

なお亡き親友アポロの息子を育てる「クリード」のシリーズはここに含まない。
ドラゴの息子まで登場させて、こっちのシリーズもどこまで行くのか・・・

 

 

ロッキー  1976年

監督   ジョン・G・アヴィルドセン
脚本   シルヴェスター・スタローン
音楽   ビル・コンティ
興行収入 2.25億ドル 

 

キャスト
ロッキー・バルボア   シルヴェスター・スタローン
エイドリアン        タリア・シャイア
ポーリー           バート・ヤング 
ミッキー            バージェス・メレディス
アポロ・クリード       カール・ウェザース
デューク           トニー・バートン

 

 

トレイラー

 


あらすじ
フィラデルフィアで暮すロッキー・バルボア。ボクサーだが三流。賞金だけでは生活出来ず、借金の取り立てを請け負うなどで暮していた。

トレーナーのミッキーからも愛想をつかされている。
そんなロッキーにも、近所のペットショップで働くエイドリアンに時々会う楽しみがあった。だが極端な内気で打ち解けられないエイドリアン。


精肉工場で働く、エイドリアンの兄ポーリー。妹に好意を寄せるロッキーに感謝しているが、口には出せない。

 

そんな時、建国200年祭のイベントとして、ボクシングのヘビー級タイトルマッチが企画されたが、世界チャンピオン、アポロ・クリードの対戦相手が負傷。
無名選手との対戦が話題になる、とアイデアを出すアポロ。

ニックネームが「イタリアの種馬(Italian Stallion)」というだけで対戦相手に指名されたロッキー。
乗り気でないロッキーに、半ば強引に指名するアポロ。
ミッキーは大きい相手に本気になり、マネージャーを申し出る。最初拒絶したロッキーも後に和解。
エイドリアンとも交際が始まるロッキーだが、それに嫉妬するポーリー。結局ロッキーと同棲を始めるエイドリアン。

ミッキーの指導で猛特訓を始めるロッキー。
次第にフィラデルフィアの街を挙げて応援の機運が高まり、ポーリーも精肉工場の牛をサンドバックとして提供。

 

試合当日。

ロッキーは勝つ事より、最終ラウンドまで戦う事を目標にする。
試合が始まり、1ラウンドでアポロからダウンを奪うロッキー。だがそれはラッキーパンチであり、以降のラウンドでメッタ打ちにされるロッキー。だが、何度ダウンしても立ち上がる。
ボロボロになりながらも立ち続けるロッキーを見て恐怖するアポロ。

最後までノックアウトされなかったロッキーは、判定で敗れたものの、観客から大きな声援を受けた。
そしてリング上からエイドリアンの名を叫び、彼女と抱き合った。


感想
ベタな構成ながら、気分がスッキリする映画(名作かどうかは意見が分かれるが・・・)。
そもそもシルヴェスター・スタローン自身のサクセス・ストーリー。
何度オーディションを受けても落選していた彼が、世界ヘビー級選手権の放送を観た感動で、三日でシナリオを書き上げた。
高評価を受け、脚本料は高額の提示があったのを、自身の主演を主張して、低ギャラで作られたのが大化けした(ちなみに製作費は110万ドル)。この年のアカデミー作品賞を取った。

字幕もいいが、吹替えでエイドリアンをやっている松金よね子の声が好き。何と言っても「エイドリア~~ン!」が全ての映画。

 

 

ロッキーⅡ  1979年

監督・脚本  シルヴェスター・スタローン
興行収入 2億ドル

 

キャスト
ロッキー・バルボア   シルヴェスター・スタローン
エイドリアン         タリア・シャイア
ポーリー           バート・ヤング 
ミッキー            バージェス・メレディス
アポロ・クリード      カール・ウェザース
トニー                      トニー・バートン

 

 

トレイラー

 

あらすじ
負けたものの、ロッキーの健闘を称える声が高まった。だがロッキーはボクシングから身を引き、エイドリアンと結婚。そして彼女の妊娠。
注目されてCMにも出たが、不器用のため金にならず、ポーリーの精肉工場を経て、結局ミッキーのジムの下働き。
エイドリアンは生活のため、再びペットショップでのパートを始める。

 

そんな中、世間の声に反発してロッキーとの再戦を猛アピールするアポロ。挑発を受けて憤慨したミッキーと共に対戦を受けてしまうロッキー。
それに反対するエイドリアン。そのためか練習にも身が入らない。
ポーリーがそんな話を聞いてエイドリアンを責める。ショックで倒れるエイドリアン。急を聞いて病院に駆け付けるロッキー。

病院ではエイドリアンが、出産はしたものの余病併発により昏睡状態に。ロッキーの看病により目覚めるエイドリアン。


「ボクシングを辞めてもいい」と言うロッキーに「勝って!」と叫ぶエイドリアン。猛トレーニングを再開するロッキー。

 

そして試合当日。前回以上のアポロの猛攻。試合は最終ラウンドまでもつれ、ほとんど相打ちの形で二人が倒れる。

最後にカウント10以内で立ち上がったのはロッキー。


感想
初回の好評を受けての二作目。一作目ほどではないが、ヒット作の範疇に入る。
エイドリアンがハッパかけて、音楽で盛り上げるパターンはミエミエだが、まあ深く考えず流れに身を任せるのが正しい鑑賞法。

 

 

ロッキーⅢ  1982年

監督・脚本  シルヴェスター・スタローン
興行収入 2.7億ドル

 

キャスト
ロッキー・バルボア   シルヴェスター・スタローン
エイドリアン         タリア・シャイア
ポーリー           バート・ヤング 
ミッキー            バージェス・メレディス
アポロ・クリード       カール・ウェザース
クラバー・ラング         ミスター・T
サンダー・リップス      ハルク・ホーガン
デューク                   トニー・バートン
ロッキー・ジュニア     イアン・フリード

 

 

トレイラー

 

あらすじ
アポロとの壮絶な戦いに勝利したロッキーは、その後ヘビー級チャンピオンとして連勝を続け、十度の防衛に成功した。
またチャリティとしてプロレスとの異種格闘技にも挑戦。プロレスのヘビー級チャンピオン「サンダー・リップス」との対戦。そのファイトマネーは全額寄付。
エイドリアンと息子との三人での生活は、幸せの絶頂。
一方ランキング戦で勝ち上がるクラバー・ラング。どう猛でハングリーな男。

そんな時にフィラデルフィア美術館で、ロッキー自身のブロンズ像の除幕式が行われた。
そこで引退を口にするロッキー。その場にいたクラバー・ラングが自分と戦え!と挑発する。
挑戦を受けようとするロッキーだが、マネージャーのミッキーは、今まで格下の相手ばかりと対戦を組んで来た事を告白。
乗り気でないミッキーを説得して対戦を受け、練習に入るロッキーだが、見た目ばかりを気にして真剣な練習にならない。

 

試合当日。ミッキーの持病が悪化し、心臓発作を起こす。ミッキーを控室に残し対戦に臨むが、まともなアドバイスも受けられず2ラウンドでノックアウトされるロッキー。ミッキーは息を引き取った。

 

失意のどん底のロッキーの前に現れたアポロ。ロッキーの対戦の時、前チャンピオンとして挨拶したが、その時クラバーに罵られていた。
負けたのはハングリー精神を失ったからだと言って、自分がトレーナーをやるからリターンマッチをしろと言う。

 

アポロの故郷カリフォルニアでの練習は、環境が劣悪でポーリーも閉口。ロッキーは、ミッキーに言われた「弱い相手との対戦を組んだ」との言葉が心に残って練習への意欲が出ない。

そんなロッキーに喝を入れるエイドリアン。

なくしたら手に入れればいい。
その言葉に目覚めるロッキー。アポロの提示するスピードとセンスを身に付けて行く。

 

そして試合当日。見違えるような引き締まった体となったロッキー。

アポロは愛用だった星条旗のトランクスを貸す。
軽快なフットワークで攻勢をかけるロッキー。苦戦するクラバーは卑怯な手で一時優勢に立つが、その後ロッキーが盛り返し、ついにクラバーをKOする。

 

誰もいないジムで対峙するロッキーとアポロ。アポロがロッキーを鍛えた理由はもう一つ。前回負けた戦いの雪辱を果たすため。


感想
柳の下に三匹目のドジョウはいたか? 居たようです。
クラバーにあっさりと負け、ミッキーにも死なれたロッキーの助っ人となったアポロ。二作目の終わりで二人の間に友情が生まれていた。
この友情を描く事で、映画の質が少し変わって来た。それがヒットを継続出来た要因だろう。
それからタイアップ曲の「EYE OF THE TIGER」も、どハマリして大ヒット。お盆興行映画として、その地位を安定させた。

 


ロッキーⅣ/炎の友情  1985年

監督・脚本  シルヴェスター・スタローン
興行収入  3億ドル

 

キャスト

ロッキー・バルボア     シルヴェスター・スタローン 
エイドリアン            タリア・シャイア
ポーリー             バート・ヤング
アポロ・クリード         カール・ウェザース
イワン・ドラゴ         ドルフ・ラングレン
ルドミラ・ドラゴ       ブリジット・ニールセン 
デューク           トニー・バートン 
ロッキー・ジュニア     ロッキー・クラコフ
特別出演          ジェームス・ブラウン

 

 

トレイラー

 

あらすじ
クラバー・ラングを倒し、チャンピオンに返り咲いたロッキー。
そんな時にソ連のアマボクシングのヘビー級王者イワン・ドラゴが訪米。同時にソ連のプロボクシング加入を発表。現王者のロッキーとの対戦希望を表明。マネージャーは妻のルドミラ。


気乗りのしないロッキーに対し、自分が受けるとアポロがエキシビションマッチを申し出る。
その対戦はラスベガスで開かれ、華やかな演出の中、ハットを被ったアポロ。ジェームズ・ブラウンの出演。
1R目の前半はアポロのジャブが良く入り優勢だったが、後半に入ってメッタ打ちにされる。
何とかゴングに助けられコーナーに戻る。セコンドに入っているロッキーが危険だと言うが、絶対にタオルを入れるなと言って2R目に入る。初めはジャブで応戦するが、ドラゴの重いパンチがどんどん入り、倒れたアポロはけいれんを起こす。10カウントを待たずにロッキーたちが入って抱き上げる。
だがそのままアポロは息絶えた。

 

そしてドラゴとの対戦を決めるロッキー。試合は敵地ソ連で行い、非公式戦でファイトマネーもなし。
アポロのトレーナーだったデューク、義兄のポーリーと共にソ連へ渡るロッキー。だが反対するエイドリアンは同行しなかった。
トレーニング場所は粗末な山小屋。だがそれはロッキーのリクエスト。昔ながらのやり方、木こり仕事などで体を鍛える。一方ドラゴは政府の最新施設で科学的なトレーニングを行う。
トレーニング終盤になって、現地に駆け付けるエイドリアン。

 

試合当日。政府首脳も出席の中、ブーイングに包まれて入場するロッキー。
試合が始まり、圧倒的な体格差で一方的に打たれるロッキー。だが倒されても何度も立ち上がる。
次第にラウンドが進み、相変わらずダウンを繰り返すロッキーだが、そのたびに立ち上がり、ドラゴはセコンドに「奴は人間じゃない」と泣き言を言う。
観客も、最初は自国を応援していたが、次第にロッキーへも応援の声が上がり始める。
最終ラウンドを前にして、政府関係者が「政府のメンツをつぶすな」と言いに来る。「俺は自分のために戦う」と相手を押しのけるドラゴ。
最終ラウンドでの壮絶な打ち合い。最後にロッキーがドラゴを倒す。

テンカウントで立ち上がれないドラゴ。

ヒーローインタビューでロッキーは「最初敵意に満ちていた会場が、最後には気持ちが変わって行った。人は誰でも変わることが出来る」と言った。


感想
ソ連の国家戦略として作り上げられたドラゴとの対戦。共産国家を適当に茶化し、盟友のアポロを殉死させて興行収入は過去最高をマークしたが「ゴールデンラズベリー賞」5部門受賞の名誉も得た。
得る物はあまりないが、その後1991年にソ連崩壊となったところを見ると、この映画が多少貢献したか(そんなバナナ!)。ゴルビーのそっくりさんがイイ味を出していた。
ドラゴの妻ルドミラが「半分、青い」で裕子役だった清野菜名にちょっと似ている。

 


ロッキーⅤ/最後のドラマ  1990年

監督    ジョン・G・アヴィルドセン
脚本    シルヴェスター・スタローン
興行収入  1.2億ドル

 

キャスト
ロッキー・バルボア         シルヴェスター・スタローン 
エイドリアン             タリア・シャイア
ポーリー               バート・ヤング
トミー・マシン・ガン         トミー・モリソン
ロッキー・ジュニア         セイジ・スタローン
ジョージ・ワシントン・デューク  リチャード・ガント
ユニオン・ケイン          マイケル・ウィリアムズ 

 

 

トレイラー


あらすじ
引退したロッキーが育てた、白人ボクサーのトミーは順調に育つが、黒人プロモーター、ジョージの計略で引き抜かれる。
黒人ボクサーユニオン・ケインとのタイトルマッチで勝利するトミーだが、観客からは認知されなかった。
八百長を疑われて人格まで変わってしまったトミー。ジョージがけしかけてトミーにロッキーとの試合を要求させる。巻き添えでポーリーが殴り倒され、トミーとロッキーのストリートファイトが始まる。
激闘の末、トミーを倒すロッキー。

 

感想
ロッキーがとうとう引退してトレーナーになってしまっては、とても魅力ある予告編など作れる筈もなく、興行収入はシリーズ最低。
ロッキーとして戦うものの公式な試合ではなく、蹴ったり突き飛ばしたりの「ただのケンカ」。
これではもう「ロッキー」とは言えん・・・・・

 

 

ロッキー・ザ・ファイナル  2006年

監督・脚本 シルヴェスター・スタローン
興行収入  1.6億ドル

 

キャスト
ロッキー・バルボア         シルヴェスター・スタローン 
ポーリー               バート・ヤング
ロバート・バルボア・ジュニア   マイロ・ヴィンティミリア
デューク                   トニー・バートン
メイソン・ディクソン                ジェラルディン・ヒューズ

 


トレイラー


あらすじ
老境に入ったロッキーは、亡き妻エイドリアンが残したイタリアン・レストランで、時々客に昔の活躍を話して時を過ごしていた。
息子のロバートは普通の会社に勤めるホワイトカラーだが、父親がロッキーという事で、常に気まずい思いをしていた。

 

ある日TV企画で、現チャンピオンのメイソン・ディクソンがもしロッキーと対戦したら、というバーチャル試合が組まれた。メイソンは圧倒的強さで相手を秒殺するため、ファンからは不評。
そんな時にバーチャル試合ではロッキーが勝利。一方でそれを酷評する評論家。
世論の盛り上がりを感じ、ボクサーとしての情熱が蘇えるロッキー。

ライセンス申請をしてプロボクサーに復帰するロッキー。最初はローカルな試合を考えていたのが、メイソン側のマネージャーの画策で彼とのエキシビションマッチが申し込まれる。
それを知ったロバートは、再び自分も巻き添えで注目されるのに耐えられず、父に反目。
かつて不良少女でロッキーが世話をしたマリー。再び親しく交流していたが、彼女は応援。

 

メイソンが圧倒的に有利な状況で試合が始まるが、試合早々でメイソンが左拳骨折のアクシデントに見舞われ、互角の戦いとなる。


最終ラウンドまで試合は続き、判定でメイソンの勝利。
互いを讃える観客の声援の中、去って行くロッキー。

 

感想
前作で、やっぱロッキーに試合をさせんとアカンという事で、バーチャル試合をきっかけに持って来るのはいいアイデア。
そんなバカな、と思いながらも観に行ってしまうのは、長年培われた「刷り込み」か・・・・

 

 

 

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