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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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ミッション:インポッシブル/フォールアウト 2018年

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監督  クリストファー・マッカリー


キャスト
イーサン・ハント            - トム・クルーズ
オーガスト・ウォーカー    - ヘンリー・カヴィル
ルーサー・スティッケル   - ヴィング・レイムス
ベンジー・ダン               - サイモン・ペッグ
イルサ・ファウスト          - レベッカ・ファーガソン
ソロモン・レーン             - ショーン・ハリス
エリカ・スローン             - アンジェラ・バセット
ホワイト・ウィドウ           - ヴァネッサ・カービー
ジュリア・ミード              - ミシェル・モナハン
デルブルック博士     - クリストファー・ヨーネル

 

予告編

メイキング


感想
この映画シリーズも6作目。1作目から22年を経て、トム・クルーズも56歳。頑張るネー。
オープニングは「スパイ大作戦」を思わせるテープ再生。

そして「5秒後に消滅する」も・・・・

前作で捕まえたソロモン・レーンが絡む話。ただ核のネタはどうも好かん。そもそもあんな風にむき出しに扱えるモノなのかね? 

入り口のところで拒否反応が起きてしまうのは困ったもの。
そんな訳で今回は評価外。

 

オールつっこみバージョンで行くしかないか・・・・

最初にプルトニウムと金の交換が雑すぎる。地下組織から買うって・・・・何のヒネリもなし。
その上無防備なルーサーが、金取られた上に人質にされて、完全に失敗。仲間を大切に、は判るけどお粗末すぎ。

デルブルック博士を騙す場面は、M・Iらしくて爽快ではあったが、声明読み上げたところでパスコードをペラペラ言うかね。

もっと喋らざるを得ない理由が欲しい。

「神の使徒」ラーク、レーン、これらの関係がイマイチ判り難い。

 

それから、画面に集中したいので吹替えにしたが、ウォーカー役のDAIGOは微妙だった。どうしようもない、とまでは言わないが「棒読み」。ただ、いつものおバカしゃべりではなかったが。

 

パリへ侵入するのに、あんなパラセールで行く必然性が全くない。

それから最初「雷が鳴ってるからやめよう」と言うイーサンも、どうかと思う。まあウォーカーが強引に行って気絶するんだけど。
この辺り、もうちょっとカッコいいシナリオにして欲しいノヨ。

 

ホワイト・ウイドゥは、ちょっとカワイイ女のコが、チラチラっと出たという印象しかないが、片足出して太もものホルダーからナイフを出したシーンには注目♪

しかし、手付にプルトニウム1個って何かヘン。IMFにとってはプルトニウム回収が目的だからいいんだけど「神の使徒」の取引き的にはオカシイ・・・・
護送車を運河に落としてレーンを船で回収するというのは、まあまあのアイデアか。

 

ビルからビルへのジャンプでは実際に骨折したらしい。

ただ、ラークを追いかける途中での出来事であり、痛い割りには大した場面じゃないのが悲しい・・・
ヘリは部分的に本人が操縦していたらしい・・・!あのスパイラル降下は本当に危険そう(撮影テクニックなら大したもの)。


まとめ
骨折までして体を張って。バイクシーンなどは確かにカッコ良い。
ただ、どうしてこんな風にエスカレートして行くのだろう。イーサンすごい!って言われて喜ぶのは、もう卒業してもいい頃。
さすがスパイ!と膝を打つような仕掛けがなく、ただのアクション映画で終わっているのが悲しい。
彼は、年齢なりにもっとスマートで渋い役どころにシフトする方がいい。汗かかない方がスパイらしいし(笑)

22年の変遷。よう頑張っとるとも言えるが・・・


あらすじ
合言葉を言って配達員から封筒を受け取るIMFエージェントのイーサン・ハント。
二年前逮捕したレーンが作った組織「シンジケート」の残党「神の使徒」が、クライアントのジョン・ラークの指示で核爆弾の製造を企てている。その材料となるプルトニウムを東欧の地下組織から買おうとしている(ロシアから盗み出されたもの)。
今回の任務は、彼らがプルトニウムを手に入れるのを阻止すること。

 

地下組織からプルトニウムを買おうとするイーサン、ルーサー、ベンジーの三人。先方持参の三つのプルトニウムをチェックするベンジー。放射線の内容から見て本物。
金の準備を伝えるイーサンだが、担当のルーサーが襲われて人質になった。取引き相手のギャングは皆殺し。イーサンはルーサーを撃ったが防弾チョッキを狙ったので怪我はなし。
だが金、プルトニウム両方が奪われた。

 

爆弾製造のキーマン、デルブルック博士を病室に閉じ込めて尋問するイーサン。拉致してから一週間。必要なのは爆弾の詳細情報に入るためのパスコード。TV画面には原爆テロで破壊された都市のニュース。デルブルックは、パスコードと引き換えに声明文のニュース放映を要求。その場でTV局に連絡を入れて放映させるイーサン。
全ての目的を達したと思ったデルブルックはパスコードを教える。サイトに入る事に成功した直後、部屋の壁が全て倒れて、そこが倉庫の中だと判る。ニュースキャスターもそこに居た。

サイト情報から、ラークと闇の仲買人ホワイト・ウイドゥが、パリのクラブでプルトニウム取引を行う事を知る。

 

イーサンがパリに向かって発つ寸前、CIA長官のエリカが、監視役としてオーガスト・ウォーカーを付ける事を要求。
空からパラセールでの侵入。途中落雷で気を失うウォーカーを助けるイーサンだが、恩知らずのウォーカー。

 

まずラークに接触して眠らせ、彼に変装してホワイト・ウイドゥに会う手筈だったが、麻酔をかけるのを忘れマスク製作中にラークが暴れ出す。二人がかりでも敵わず、危なくなったところをMI6のエージェント、イルサがラークを射殺する。別の指令で動いているイルサ。
顔を撃ち抜いたのでマスクが作れず、イーサンは素顔のままで会いに行く。

 

VIPルームでのホワイト・ウイドゥは、チャリティーへの協力を客に要望した後、イーサンと会う。

ラークの顔は知られておらず、うまくなりすますイーサン。
会場に多数居た殺し屋たちを制してホワイト・ウイドゥを逃がすイーサンは、アジトまで案内される。

プルトニウムの交換条件は、捕まっているレーンの引き渡し。レーンは各国の警察組織をたらい回しにされて自白を強要されていた。
ホワイト・ウイドゥ側の作戦は、パリに移送されるレーンの奪還であり、それのとりまとめをイーサンが行う。
警察側に多数の犠牲者が予想される。
作戦の手付としてプルトニウム一個が返された。

 

メンバーと連絡を取り合って裏の作戦を決行するイーサン。
トラックを体当たりさせ、護送車を運河に落とす。ダイバーとなったベンジーがレーンを救出。ルーサーの操縦するボートで脱出。
離脱が遅れ、バイクで市中を逃げ回るイーサンは、ルーサーに回収を依頼。だが延々と逃げ回った先で車に撥ねられてバイクから落ちるイーサン。警官に追われながら生垣の間に落ちる。
追い付いた警官が下を覗くと、そこは運河。

ボートで回収されたイーサン。

 

再度ホワイト・ウイドゥに会うイーサンだが、不信を抱いた彼女は、取引きはロンドンでやると言い残して去る。

 

ロンドンのIMFアジト。イーサン、ウォーカー、ベンジー、ルーサー、イルサ、そして捕らえたレーン。
IMF長官と会って取引きの手順を打ち合わせる。
ベンジーをレーンに化けさせて取引きし、プルトニウムを回収する。嫌がるベンジーだが同意。
ウォーカーとレーンを残して取引き場所に向かうメンバーたち。

 

ウォーカーはレーンの拘束を解いて脱出を促す。

実はウォーカーがラークだった。
だがレーンは逃げようとしない。そこに戻って来たメンバーたち。

残っていたのが変装したベンジーだった。
この事は通信でCIA長官のエリカにも知らされていた。

拘束されるウォーカー。
エリカは、更に裏切り者が居ると考え、特殊部隊で全員を制圧しようとする。だがその部隊にも敵がおり、レーンとウォーカーが逃げ、IMF長官が殺される。

発信信号を追ってウォーカーを追うが逃げられるイーサン。

 

レーンの首に打ち込んだ皮下発信器の情報を追ってカシミールまで来たイーサンたち。
ここは元々「シンジケート」が天然痘をばら撒いて、世界的な流行を画策した場所であり、医療機関の助けがまだ必要だった。
レーンの意図は、ここで核爆発を起こす事で、中国、パキスタンにまたがる水源の汚染により世界人口を減らす事。
レーンが隠れたのは医療キャンプ。ここならX線機器が多数あり、核設備を見つけるのに手間取る。

 

そこでイーサンは、元妻のジュリアとばったり会う。彼女は再婚した医師の夫についてボランティアを行っていた。これもレーンの目的の一つ。お互い夫に、素性を隠すのに苦労。そして別れる二人。

 

核爆弾は二つが同時に運用されており、カウントダウンが始まってから二個それぞれにあるリード線を同時に切断。

その時に起爆スイッチがオフになっていなくてはならない。

一つ目の爆弾はルーサーが見つけたが、あと一つが見つからない。

そのうちにウォーカーがレーンの指示を受けてヘリに乗り込む。

レーンは残る決心。
二つ目の爆弾を見つけたイルサ。だがそこにはレーンがおり、捕まってしまう。次いでベンジーも捕まり万事休す。

だがイルサが縄を解いて何とかレーンを倒す。

 

起爆装置のスイッチが入った。残り15分と叫ぶルーサーに、何とかするから準備をしておけ、とイーサン。
ジュリアが来て、爆弾の分解を手伝うが、そんな彼女に戻るよう諭すルーサー。
ウォーカーのヘリに追従するへりが吊り下げている荷物に飛び乗るイーサン。
そこから操縦席にまで辿り着いて、操縦士を落として交替。

 

追跡に気付き、マシンガンで攻撃するウォーカー。
乱闘の末、体当たりを仕掛けるイーサン。

二機とも墜落し、岩場を転がる。
奇跡的に助かる二人だが、岩場での殴り合い。
その戦いを制して、崖を上ってリモコンに向かうイーサン。
二つの爆弾は、リード線をいつでも切れるよう準備されている。

「二秒前で切る?」とのベンジーに「一秒前だ」とルーサー。

そして一秒前にリード線が二本同時に切られた。

 

医療キャンプのベッドで目を覚ますイーサン。その前にはジュリア。
謝るイーサンに、あなたに守られているから安心なの、とジュリア。
そして去って行く。

 

 

 

 


新聞小説 「ひこばえ」 (4)  重松 清

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新聞小説 「ひこばえ」(4)  7/27(55)~8/17(75)

作:重松 清  画:川上 和生

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注:小説は一人称ですが、三人称とします。

第二章 父、帰る 1~20
美菜の出産に備えて、予定日の一週間前に先方のマンションに泊まり込むという夏子。厳しい事を言っても本心ではそれを喜んでいる。
夏子と洋一郎は同い年での結婚。寿退社して専業主婦となったが、仕事を辞めた事に対する悔いもあったかも知れない。子育てを終えてしばらく経ち、今回与えられた役目に張り切っている。

 

美菜の夫、千隼君が夏子を迎えに来て、洋一郎と航太の二人生活が始まった。
航太は教師以外にも、顧問として卓球部の面倒を見ており多忙。
食事はめいめいで「てんでんこ」という約束にしてあり、自分の分の弁当とビールを買い込む洋一郎。

コンビニを出ての帰り道で、スマホに電話の着信。

藤原宏子--姉からだった。
普段は電話をし合わないという暗黙の了解。母は八十二歳になる。

思わず身がすくんで通話にした。
何時になったら家に戻れる?と聞いて電話が切られる。

 

家に帰って買い物を冷蔵庫に入れたところで再び姉からの電話。
多摩ケ丘市、和泉台がそこから近い?との質問。

洋一郎が住む市の路線の数駅先に、多摩ケ丘駅がある。
その和泉台に住んでいたと言う。誰が? 「あんたの父親」

洋一郎にとって父親は二人いる。一人は一九七○年に母親と離婚して姿をくらました血縁の父。もう一人は育ての親。母が郷里の備後市に戻って再婚した長谷川隆さん。
お義父さんって若い頃東京にいたの?という言葉にイラつく姉。

「いたでしょ。お母さんと離婚して逃げたのが」 

ようやく合点して「え?」と返す洋一郎。

 

父の兄の息子(つまり従兄)の誠司さんから連絡があった。一週間前の四月二十一日に倒れ、そのまま救急搬送されて死んだ。

和泉台の賃貸アパートで一人暮らしをしていたという。

父は七人きょうだいの四番目。誠司さんの父親が長兄で「本家」になり、今は誠司さんが継いでいる。
父がアパートを借りる時、緊急連絡先で誠司さんの電話番号を書いていた。父は実家にも迷惑をかけていた様で、絶縁されていた。
生存している四人のきょうだいは、全員遺体や遺骨の引き取りは拒否。法律的に義務はない。
アパートに残された家財にも一切関わらないと話を決めかけた時「そういえば」と姉と洋一郎の事を思い出し、連絡をして来たというのが事の顛末。

続いて姉のところに、そのアパートの大家さんから電話。部屋を見て欲しいとの希望。父はそこに十年暮らし、家賃滞納はなく、ゴミ出しもキチンとしていた。人づきあいも少しはあった様子。

大家さんの話だと「いい人っぽい」と姉。
人生の締めくくりを子供さんが感じてあげれば、それが供養だと大家さんが言ったという。「あとは洋ちゃんに任せる・・・・」

 

「で、どうするの?」コンビニで買って来たカツサンドを食べながら航太が聞く。ともかく大家さんに電話をかけてみるしかない。
長谷川のおじいちゃんの事を思い出したという航太に同意。


中学入学から高校卒業まで義父を「お父さん」と呼んで来た。

でも意識の中では「隆さん」。
母と義父とのいきさつ。母の離婚に対し、隆さんは死別。

妻の良江さんはガンにより三十五歳で他界。
良江さんの三回忌を終えた頃に、母の長兄の仲立ちで母と見合いをした。
母と隆さんの結婚は一九七五年。隆さんの子供、中二の一雄さんと小六の雄二君。こちらは中一の洋一郎と高一の姉。二つの家族が合わさって出来た六人家族。長男由来の名を持つ子供が二人。

 

航太との会話に戻る。遺骨はどうするの?という話から、この家に墓がない事を思い出す航太。

両親の墓は長男の自分が守らなくてはならない。
備後のお寺にするの?との問い。備後の菩提寺「薬師院(ヤクシンさん)」にある長谷川家の墓。何代も前からの墓を、隆さんが平成の初めに一つにまとめた累代墓にしている。

瀬戸内海に面した景色のいい所。


入っているのは隆さんの祖父母と両親、隆さん本人と、前妻の良江さんの骨壺。母もいずれそこに入るだろう。
「お父さんもヤクシンさんのお墓?」の問いを否定する洋一郎。

血の繋がりがない事で、洋一郎の家族の扱いは微妙。

一雄さんに相談した事はないし、するつもりもない。
「墓っていうのは怖いんだ」と言う洋一郎。墓を建てたあと、それを守るのは残された家族。洋一郎自身は、故郷を備後と言っても違和感はないが、妻や子供たちはそうではない。
東京近郊で霊園を探すつもりだった洋一郎。夏子は「千の風になっちゃえばいい」と言うが、そうも行かない。
いつもそこで話が終わっていたが、最近ではそれに母親の事も加わった。

 

母を備後の墓に入れるのを、洋一郎も一雄さんも当然と考えているが、姉がどうしても反対。
五年前の、隆さんの納骨をした時、墓石の下の骨壺を納める場所で、一雄さんが配置を変えて前妻の良江さんと隆さんが隣同士になる様にした。その時「やっと会えたな」と呟く一雄さんの言葉を聞いたと姉は言い張る。
前の奥さんとの生活の三倍以上も一緒に暮らした母が居るのに、恩を仇で返したと憤る姉。
だが今は一雄さんの家族と同居している母。波風を立てれば一番困るのは母。そこでこまめに備後へ顔を出さない洋一郎に八つ当たりが来るのが常だった。

 

姉の思い入れは、母の再婚当初に遡る。当初高一だった姉は、高三になってから、トップクラスの成績にも関わ

らず、就職すると言い出した。母が負い目を感じているとの思い。

皆の説得で大学へは行ったものの国立で、長い通学時間を要して自宅から通った。
たくさんの事を犠牲にして、本来の性格とは違う人間になってしまった。その全ての始まりとして、姉が「あの人」と呼ぶ、父がいる。


感想
血縁の父を介護する話かと思っていたら、いきなりの死亡宣告でびっくり。
母の再婚で複雑になった、洋一郎の過去の家庭環境が語られる。
再婚相手が、先祖を引き継いで来ていた長男だった事が微妙に話を複雑化させている。

こいのぼりの一件で、父親にそれほど悪感情を抱いていない洋一郎と、その父のせいで生き方、性格までもバイアスを与えられてしまった姉。父が暮らしたアパートを見る時の、洋一郎のリアクションもこの先気になる。

 

しかし、こうやって外堀からジワジワと迫って来る感じが「重松節」。

読み易さに騙されていると、とんでもない世界に連れて行かれる。

 

 

 

オーシャンズ8     2018年

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監督・脚本  ゲイリー・ロス
音楽       ニコラス・ブリテル

キャスト
デビー・オーシャン    - サンドラ・ブロック
ルー・ミラー              - ケイト・ブランシェット
ダフネ・クルーガー    - アン・ハサウェイ
アミータ                   - ミンディ・カリング
タミー                     - サラ・ポールソン
コンスタンス            - オークワフィナ
ナインボール           - リアーナ
ローズ                    - ヘレナ・ボナム=カーター
クロード・ベッカー      - リチャード・アーミティッジ
ジョン・フレイジャー   - ジェームズ・コーデン
イエン             - チン・シャオポー

 

 

予告編

 

感想
レビューしているブロ友さんがけっこう居たので視聴。
オーシャンズシリーズは「11」だけしか観ていないが、あまり印象に残っていない(だから続編も観なかったのだが)。

 

五年服役していたデビーが、その間に練り上げた計画を実行に移すというのが基本ストーリー。
長年の相棒だったルーを起点として、順にメンバーを集めて行く過程が楽しかった。それからハッカーのナインボールを活用して、セキュリティに穴を仕掛けて行く手順もなかなかイイ。
そういう予定調和がつまらないという人も居るが、技系の人間は、キチンと計画された事が手順通りに進む事にけっこう快感を感じるところがあって、これはこれでいいと思う。
逆に「ミッション・インポッシブル」シリーズは、予定外のトラブルとか裏切りとかがテンコ盛りで、スパイ物としてのミッション遂行過程をじっくり見せる、という点がおろそかにされている。

 

トゥーサンは、3キロものダイヤモンドが使われている超ド級のネックレスだが、ちょっとダサい感じではある。

五十年地下で保管されていたという事で、まあそれもナットクか。
だが、あの止め金具の構造は最新式だったから、そこだけはリニューアルされていたという事?でも特殊な工具を使わないと外す事が出来ないんだったら、走ったぐらいで外れる筈がない。見つかった時点でそれが本物でない事を疑うのが普通。この辺はちょっと甘いか。

 

うまく行き過ぎた事に、さすがにちょっと抵抗はあるかも。
しかし、アン・ハサウェイの艶やかさは、こういう場面ではピカイチ。

かわいい顔してワルがやれるのも彼女のいいところ(キャットウーマンとか)。
それにしてもサンドラ・ブロックの顔。マイケル・ジャクソンやね。

 

映画の中で流れる曲のセンスが非常に良かった。中でもテーマ曲の様に使われているのがナンシー・シナトラの「にくい貴方(These Boots Are Made for Walkin')」 原題と似ても似つかない邦題が笑えるが。


続編はあるかな?

 

あらすじ
出所前の面接を受けるデビー・オーシャン。つきあった男が悪かった。これからは地味に生きる、と殊勝な事を話す。
高級ドレスを着てブティックの化粧品を次々と手にするデビー。そのままサービスカウンターへ行き、それらの化粧品の返品を告げる。店員がレシートの提示を求めるが、そんなものはない。
愚痴を言いながらも、持って帰るから、と袋を要求。
その後もホテルに入り客を装って、運搬途中の客の荷物、コートを失敬。

 

美術ギャラリーを訪れ、そこの店主をしている男に声をかけるデビー。驚く男の胸元のボタンをナイフで切り取る。
安酒場を訪ねるデビー。そこのママ、ルー・ミラーはかつての仲間。
デビーが男に会いに行った話を聞く。
相手の男はクロード・ベッカー。数年のつきあいで相手を信じ込んでいたが、絵画の詐欺をした時、彼に嵌められた。彼女が逮捕された時、クロードは全て彼女の計画だと言って裏切った。
一切黙秘して服役したデビー。

 

次の仕事のアイデアを話すデビー。獄中で5年間練った計画。
それは世界最大のファッションの祭典「メットガラ」で、カルティエの所蔵する超高級ネックレス「トゥーサン」を奪うこと。
そのためには根回しが必要。

 

まずデザイナーのローズの引き込み。実力はあるが、ショーの運営がヘタで大きな借金を抱えている。
メットガラで宝石を身に付ける女優はダフネ・クルーガーに決まっており、まず彼女のライバル「ペネロピー」とローズが組む記事をバラ撒き、ダフネの嫉妬心を煽る。
その上でダフネに、今度のショーのプロデュースがローズになる様仕向ける。


ローズはダフネに、メットガラで「トゥーサン」を身に付けるのが必須と吹き込む。

一方、街頭で巧みにカード捌きをして客を騙しているコンスタンスもスカウトされた。

次いで天才ハッカーの「ナインボール」を引き込む。

 

ダフネの提案によりメットガラでトゥーサンを出品する事が決定。
ローズは仲間の宝石職人アミーダに声をかけて、カルティエ本社に事前確認の名目でトゥーサンを見に行く。

メガネに仕込んだカメラで3Dデータを取り込む。
アジトでトゥーサンの偽物を3Dプリンターにより制作。

 

ショーの会場には厳しいセキュリティがかかっており、それに対応するための作戦。
今は主婦で盗品ディーラーをしていたタミーに声をかけ、メットガラ主催者のVOGUEにスタッフとして入り込ませる。

メットガラ会場の系列ギャラリーで、展示絵画のすり替え事件が発生(盗まれたのではなく持ち込まれた:デビーたちの工作)。VOGUE側の要求でメットガラ会場のセキュリティ見直しが行われた。
そのセキュリティ担当の技術者にハッキングをかけるナインボール。

技術者が犬好きなのを利用して、それに関連した偽サイトをクリックさせ、パソコンを乗っ取る。

ナインボールの操作で十日間かけて防犯カメラを動かし、会場のトイレ前に3mの死角を作り出した。チェックのため、そこを歩くデビー。

 

当日のパーティー会場の座席表を見たルーは、ギャラリー運営者として列席するクロードがダフネの隣にセットされているのを見て、復讐を計画していると思い、デビーに警告。

偶然だと言って取り合わないデビー。
ルーは、ハラル対応で専任の栄養士が必要だというタミーの進言で、キッチンのスタッフに入り込んだ。

 

そして当日、ダフネの首にトゥーサンが仮着けされる。だがそれを外す時、係員が特殊な道具を使って外した。これは想定外。
ローズがスマホで動画を撮ってチームに送信。ナインボールは、この方面に詳しい姉のアドバイスを貰う。特殊マグネットを使ったメカだと言って対処法を伝授する姉。

 

トゥーサンを身に着け、ディナーの席に座るダフネ。

その隣に座って舞い上がっているクロード。
ダフネが食べるスープのソースに何かが上乗せされて、彼女の前に出される。朝から何も食べていなかったダフネはそれを平らげる。

 

しばらくして吐き気を催したダフネはトイレに直行。警護の人間が付いて行くが、入り口の前でシャットアウトするデビー。会場スタッフに化けたコンスタンスが介抱すると見せかけてトゥーサンを外して盗み出す。
そしてテーブルから食器を下げて来たボーイのお盆に。その先のキッチンで調理員に化けたアミーダが受け取り、トイレに籠る。

トイレにはネックレス分解の道具。

 

何とか落ち着いて席に戻った時、ダフネの首にトゥーサンはなかった。
会場が封鎖され、ゲストは外に出られない。大規模なトゥーサンの捜索が始まる。
地下の調理室にも警備の者が迫って来た時、タミーが会場の池から用意してあったトゥーサンの偽物を出して叫ぶ。
会場の警備は解かれ、アミーダにより小分けにされた装飾品をメンバーに分配。デビーはバーで飲んでいるクロードに巧みに近づき、ポケットに宝石を入れて立ち去る。

その後ろ姿を見て首をかしげるクロード。

 

メットガラは終了し、トゥーサンが金庫に戻される時、それが偽物である事が判明。
保険調査員のフレイジャーが呼ばれて徹底した調査が始まる。

ダフネのところにも調査が入るが、何も心当りがない、とダフネ。

 

アジトで祝杯を上げているところへ、ダフネが入って来る。元々ローズの挙動不審を怪しんでいたが、トゥーサンのロック構造の件で動画を撮っていた事が決定的。分け前を八等分する事で解決するデビーは、ダフネに一仕事追加を頼む。

 

クロードに誘いを掛けて彼の部屋に入るダフネ。

手錠遊びでクロードをベッドに拘束すると、彼の服からトゥーサンの片割れを取り出し、スマホで撮る。
一方フレイジャーから聴取を受けるデビー。父も兄も、彼に捕まった経緯がある。トゥーサンが戻るのは一部分でもいいかと聞くデビーに、背景を知るフレイジャー。

翌日、目覚めたクロードの元に警官が集まる。

ダフネが加わった事で取り分が減る、と不満のメンバーに種明かしをするデビー。
トゥーサン強奪の裏で、隣接の博物館に展示してある宝石を、偽物とすり替えて盗んでいた。

その手助けをしたのが兄ダニーの仲間だったイェン。

警護の者を引き付けて時間稼ぎをしていたデビー。

 

兄の墓の前でドライ・マティーニを飲んで供養するデビー。

 

 

 

 

ファウンデーション(銀河帝国興亡史①)発表:1951年 アイザック・アシモフ

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はじめに
アメリカのSF作家アイザック・アシモフの、ライフワークとも言える長編小説の序章。銀河帝国の中心、トランターの滅亡と、それに続く帝国の復興を描いたもの。
読んだのは30年以上前。すごく感銘を受けた筈だが、何も残していないので内容そのものが頭から抜けている。
今回三部作となる「ファウンデーション」、「ファウンデーション対帝国」、「第二ファウンデーション」を再読。
Appleが「ファウンデーション」のTVドラマ化というニュースもあり、最近ちょっと注目されているかも? 関連ニュース

 

 

文庫第一期

文庫第二期

 

超あらすじ
銀河帝国の中心で繁栄する「トランター」。その滅亡を予言するハリ・セルダン。トランターから遠く離れた辺境の惑星「ターミナス」に追いやられての、百科事典編纂作業。

資源に乏しいターミナスは、近隣の星アナクレオンの経済に依存している状態。移住して五十年。アナクレオンからの支配圧力がピークに達した時期に、セルダンの時間霊廟が開いた。
そして市長サルヴァー・ハーディンの無血クーデター。
セルダンの言葉。実は百科事典編纂作業は偽装で、科学技術を温存しておくための方便。そのためターミナスは、小型化した原子力技術を宗教に絡めて運用する事によりアナクレオン、スミルノを含む近隣四ケ国との共存を実現。
それは三十年続くが、アナクレオンがターミナス支配のために画策する。それを退け、ターミナスの安泰は守られた。

その時にも開いた時間霊廟。

ハーディンと同時代にターミナスから遠く離れて活動を行う貿易商人。宗教を受け入れないアスコーンの様な国に食い込んで行くための手段を、リマー・ポニェッツが最初に確立。

二回目の時間霊廟が開いてから七十五年後。ターミナス域外で次第に力を付け始める貿易商人たち。
貿易商人の代表ホバー・マロウが、銀河帝国の影響が色濃いコレル共和国へ派遣される。調査及び商談を済ませて帰ったマロウを待っていたのは、彼を陥れる裁判。
それを解決し、市長となったマロウ。宗教に頼らない、貿易による穏やかな戦争を経てコレル共和国を支配。


感想
資源のない星ターミナスは日本を思わせる。日本も電子機器、車などの小型化技術で世界に君臨して来た。大国の間を絶妙のタイミングで渡り歩くその姿は、高度成長期の日本そのもの。だがこの小説が最初短編で発表されたのは1942年。

さすがに日本の復興を意識したものではないだろう。

 

この、銀河帝国復興のシナリオを作ったハリ・セルダンそのものが描かれるのは、冒頭のほんの少しだが、何十年かに一度開く時間霊廟で、少しづつその風貌についても補完されて行く。

四つの王国は、関連記事によるとアナクレオン、スミルノ、ダリボウ、コノムらしいが、小説の中で語られるのはアナクレオンとスミルノだけ。

 

ターミナスの生き残り戦略の端緒を担ったのは、初代市長サルヴァー・ハーディン。そもそもセルダン・プランを信用せず無血クーデターを実行したが、時間霊廟での言葉が彼の行動を補強した。

宗教を利用した技術支配。
そして貿易商人の台頭を受けて、ターミナスの方向性を変えるホバー・マロウの出現。
SF(空想科学)の衣装はまとっているが、紛れもない人間ドラマ。

最初の発表時は、まだ原爆の脅威が一般化されていなかったので、原子力は平和利用が前提。

ストーリーで気になる点が一つ。マロウがシウェナに行った件が、後にどう繋がるかがイマイチ良く判らない。

何度か読めば見えて来るのかも知れないが・・・・

 

アシモフの、言いたい事をそのまま言わない難しい表現は、この歳になって読むと、時々寝落ちを誘う。
それが長編小説を読む醍醐味でもあり、不満は言うまい。
ちょっと油断すると何十年も経ってたり(笑)

この三部作、1966年のヒューゴー賞「過去最優秀長編シリーズ賞」を受賞したのはダテではない。
初作発表時のアシモフは二十代前半。1942年と言えば、太平洋戦争から一年。コンピューターの概念もまだない当時に書き上げた。

スゴいなぁ・・・・
ただ、K・S・Pとかバリバリ英語表現が出て、やっぱ英語は全宇宙をも席捲しとるんだナー・・・

 

 

あらすじ詳細

第一部 心理歴史学者

ハリ・セルダン:心理歴史学の分野で多大な貢献をした。
トランター:何百世代も続いた銀河帝国政府の中心。人口400億のほとんどが管理部門に従事。食料や生活物資を外界に依存しているのがトランターの弱点。
心理歴史学(サイコヒストリー):社会的、経済的刺激に対する人間集団の反応を扱う、数学の一分野。

 

数学の博士号を取ってすぐセルダン・プロジェクトへの招待を受けたガール・ドーニック。
急がなければならない、と言うセルダン。
トランターの現在の状態を計算パッドに演算させるセルダン。今の状態が不完全である事を示している。
五世紀以内にトランターが滅亡する確率は「92.5%」。
この結果が一部の貴族に漏れている、とセルダン。翌日大学に出向く約束をするガール。

公安委員会:社会秩序をもたらす要素として台頭した貴族グループが、現状維持のための盲目的な道具として運用したもの。


公安委員会に拘留されたガール。彼は、セルダン・プロジェクトに参加する事になったいきさつを延々と説明させられる。

セルダンとガールを被告とする裁判。傍聴人は少数の、皇帝の直臣。対峙する公安委員会の五人。
審問官とのやりとり。
プロジェクトの数学者は50人。ガールはその51人目。プロジェクト全体としては十万人。
トランター滅亡の影響を最小にとどめるのがプロジェクトの目的。滅亡の兆しは何世紀も前に始まり、そのテンポを速めている。
滅亡そのものは避ける事が出来ず、一万二千年存続した帝国は、その後三万年続く暗黒時代を経験する。我々の活動が許されれば、それを一千年までに短縮出来る。そのための活動が銀河百科事典の編纂。証言を終えたセルダン。

 

翌日の聴聞。委員長のリンジ・チェンが話を始める。

事実上の銀河帝国皇帝。
帝国滅亡に関する再確認。もし今自分を殺せば、その情報が未来に対する失望を生み、トランターは五十年以内に崩壊する、とセルダンは言う。
銀河百科事典の編纂について、場所を移す提案がなされる。その候補地がターミナス。銀河系の縁にある。それを受け入れるセルダン。

聴聞の場を辞して大学に向かったセルダンとガール。ターミナスへの出発準備期間は六ケ月。その短さに驚くガールだが、セルダンは二年前から準備を進めていた。移転するのは二万家族。
自分の寿命もあと1、2年と想定済みのセルダンは、後継者に引き継ぐ前提。

 

第二部 百科事典編纂者
ターミナス:銀河の渦巻きの最外縁に位置する太陽の惑星。

デスクで働くルイス・ピレンヌは百科事典編纂の代表。ここに定住して五十年。あと五年で百科事典の第一巻が出版される。
ピレンヌを訪ねるサルヴァー・ハーディンはターミナス市長。

市の維持のためにアナクレオンの資源が必要。
つい最近アナクレオンの太守が王の称号を得て、ターミナスがその勢力下に入る事になった。
そんな事に無関心のピレンヌは、皇帝の代理人というプライドが先行。
そんなピレンヌに、アナクレオンから特別使節が二週間後に来る事を告げるハーディン。

 

アナクレオン王の特別使節として、ターミナス宇宙空港に降り立ったオー・ロドリック。ターミナスが行っている、百科事典の編纂作業について説明するピレンヌ。
名目上の行事を終え、オー・ロドリックは目的の話を始める。
アナクレオンと敵対するスミルノが、ターミナスと五十パーセクもない距離にあり、ターミナスがスミルノに併呑される可能性もある。
アナクレオンはターミナスの秩序維持に対する責任を負っている、と話すオー・ロドリック。
そして軍事基地建設、税の徴収等の要望を話すが、ターミナスが資源のない星だと知ると、アナクレオンの貴族に土地を与える方法も提示。
怒るピレンヌをよそ目に、唐突に原子力発電所のためのプルトニウムの提供依頼をするハーディン。
急に対応がしどろもどろとなり、会見を切り上げたオー・ロドリック。

 

ハーディンは、アナクレオン及びスミルノが原子力技術を持っていない事を確信する。

新聞に対して影響力を持つハーディンは、世論の後押しも利用して理事会メンバーに加わった。
帝国の大蔵大臣ドーウィン卿が、二週間後にターミナスへ来る事を報告するピレンヌ。彼にアナクレオンとの関係を報告する事で問題が解決すると思い込んでいるピレンヌ。
アナクレオンの脅威について語るハーディン。

皇帝は五万パーセクも離れている。我々が猶予を得ているのは、原子兵器を所有しているかも知れないという印象をアナクレオンに与えているから。
科学財団(ファウンデーション)である事を言い訳に取り合わない理事会メンバー。
エキサイトする議論の中で、理事のジョード・ファラが発言。

あと一ケ月で創立50周年の記念式典を迎えるが、その時にハリ・セルダンの霊廟が開く。当代の最も偉大な心理歴史学者であれば、この状況をも予言しているかも知れない。

 

ターミナスを訪れたドーウィン卿。その前にアナクレオンを訪れたと言うが、単に野蛮な星というだけで、その話よりも百科事典の第二巻の説明をピレンヌに要望した。
また、アナクレオン等、外縁部の独立王国が原子力を失っている事についても、当然の様に評価し、文明を否定するドーウィン卿。

 

アナクレオンから届いた最後通牒。それはドーウィン卿の保証を真に受けて理事会が皇帝、帝国の態度をアナクレオンに送達したために来たもの。本来ならもっと時間稼ぎが出来た筈。
この工程から除外されていたハーディンは語る。
最後通牒には見えないその文書の本質は「我々が要求するものを一週間後に引き渡せ」
ターミナスにアナクレオンの軍事基地建造を許す以外にない。

だが易々とは応じないと言うハーディン。

ハリ・セルダンの霊廟開示が六日後。

それを待つべきだという意見を否定するハーディン。
基本的な演算が欠けている。彼がもしこの課題を予測していれば、ターミナスにファウンデーションなど設立しなかった。
彼に依存して解答を出してもらう事は出来ない。そしてこの状況全体に、何か大きなものがある、と言うハーディン。

ファウンデーションの最初の住人の中に、ボー・アルーリンを除いて一流の心理歴史学者が一人も居なかった。

それがハリ・セルダンの狙い。
クーデターを準備するハーディン。それをサポートするヨハン・リー。

あと二日でアナクレオン人が乗り込んで来る。ハリ・セルダンが過去五十年間に推し進めて来たもの以外に頼るものはないのか。


セルダンの霊廟が開くのを待つ者たち。ハーディンも末席に座る。
時刻が来て、薄明りの小部屋で、車椅子に座った人の姿!
ハリ・セルダンと名乗ったその者の話。
百科事典財団(ファウンデーション)というのは欺瞞だと言う。
真の目的は、十万の人材をこのような惑星に五十年間保っておく事。今後何世紀にも亘って君たちは必然的に、引き返せない一つのコースを辿る。
銀河文明は退化しており、何世紀かを経て、滅亡した後に野蛮な時代がやって来る。
通常なら三万年続くその時代を一千年に短縮出来る。その方法は教えられない。
ターミナスと、そして銀河の反対側の端にある仲間のファウンデーションは、ルネッサンスの種。未来の第二銀河帝国の創始者となる。
そのクライマックスに向けてターミナスを出発させるのが、現在の危機。だが今後生じる危機よりも簡単。厳しい緊急事態に対し活動しなければならないが、このコースはあらかじめ設定されているもの。
その果てに新しい、より偉大な帝国がある。

ハリ・セルダンの姿が消えた。

 

ピレンヌを含む理事会は、自分たちが間違っていた事を認めた。

だが時既に遅く、リーの仲間が指揮権を握り、穏やかなクーデターは遂行された。
アナクレオン人の最初の宇宙船が翌日着陸する事になっていたが、それも問題なかった。危機に対する解決策は、判り切っていた。

 

第三部 市長
四つの王国:初期に帝国から分離独立したアナクレオン管区の一部に与えられた名称。

ターミナス市長として無血クーデターを起こしたサルヴァー・ハーディン。それから三十年経ち、六十二歳となった。側近のヨハン・リーは六十六歳。代表団を迎え入れる事について不満を言うリー。

 

代表団の中のセフ・サーマックは、若い市会議員として過激発言により議会を混乱させた前歴があった。
ハーディンの行って来た外交政策に対する不満。

よって新政党を結成するという。

サーマックへの説明という形で、今までの政策を話すハーディン。
五十年間、大百科事典の編纂を続けていたおかげで、突出した科学者の世界になっていたターミナス。
取り巻く四つの王国の中で最強だったアナクレオン。ハーディンは、残りの三ケ国それぞれに、原子力の秘密がアナクレオンの手に落ちる危険を説いて回った。
その結果、三つの隣国からの最後通牒を受け取ったアナクレオンは、七日後にターミナスを去った。
それからは四ケ国の間で、絶妙のバランスを保ちながら各国に技術援助を行って来たターミナス。技術の成果を擬似宗教の形で浸透させる。現時点での四ケ国は、技術を宗教とみなして表層的な面しか知らない。
サーマックはその点に危惧を感じている。

もし各国で天才が現れたら・・・・
ハーディンは、優れた技術者がこのファウンデーションに集められるシステムを説明して、その可能性を否定。
インタビューを終わりにして彼らを帰すハーディン。

 

サーマック支持者の存在を危惧するリー。

アナクレオンに派遣されているポリー・ヴェリソフ。技術成果を伝える祭司長の仕事を十四年間続けている。ハーディンの指示で三年ぶりの帰国。
早速アナクレオンの状況を聞くハーディン。アナクレオンの鍵を握るのは摂政のウェニス、レオポルド王の叔父。

ファウンデーション攻撃を主張している。
最近帝国の、遺棄された巡洋戦艦を入手した。ウェニスが、その戦艦をファウンデーションが整備してアナクレオン宇宙軍に移譲せよと言って来た。
それを受け入れようとするハーディンを心配するヴェリソフ。
船を移譲する事で、アナクレオンの軍事力が倍加する危険。
ハリ・セルダンの時間霊廟での言葉を気にするハーディンは、危機が来もしないうちに逆らってはならないと言う。
危機が姿を見せ始めたら、自らアナクレオンに行くと話すハーディン。

 

かつて皇帝が公式訪問したというアナクレオンも、その名声は萎んでいた。
狩りから帰った王を呼び止めるウェニス。甥に対して例の船の話を始めた。ファウンデーションに依頼している戦艦の修理。
ウェニスは、ファウンデーションとの戦争を示唆する。アナクレオンの経済全てがファウンデーションの力に依存していると説明。
気楽に受け応える若い王。叔父上の話は事実無根、と否定。
あなたは馬鹿です!と挑発するウェニス。あと二ケ月で成年に達する王は怒りを露わにする。
ウェニスは、ターミナス市長のサルヴァー・ハーディンが全ての元凶だと吹き込み、彼が王の誕生日にお祝いのため来訪する事も伝える。
だが司祭長ヴェリソフから聞かされている、銀河霊の事を危惧する王。それを否定するウェニス。

 

行動党を作り上げるのに奔走しているサーマック。
アナクレオンでは、技術をコントロールする司祭階級が、神的なトリックを使って民衆を操作している。
司祭長のヴェリソフは司祭階級の顧問。ただのお飾り。
次いでファウンデーションが修理している戦艦の情報。
そこへもたらされた最新情報。レオポルド一世の成年の祝いにハーディンがアナクレオンへ行く。
市長がターミナスを売るとの疑惑。ハーディンの弾劾要求に走るサーマックたち。

 

ハーディンはアナクレオンに向けて発つところだった。
サーマックが昨日出した弾劾要求は、206対184で否決された。勝つには勝ったが危ないところ。
三十年前に時間霊廟が開いた時の事を話すハーディン。数週間後にそれがまた巡って来る。
今日の議会で「その日にハリ・セルダンのメッセージが現れる」という宣言をリーに依頼するハーディン。

それまでは彼らが行動を延期する事を期待して。

 

ハーディンは、惑星アナクレオンには直接行かず、この王国を代表する八つの星系を回り、ファウンデーションの地方代表との協議を済ませた後、戴冠式前日に惑星入りした。
アナクレオンが管轄する星系は全部で二十五。ファウンデーションの後援により人口も百九十億まで膨らんでいた。
ハーディンが到着した時、既に祝賀行事は始まっており、祭を主宰しているヴェリソフと三十分の打合せ時間を持つのがやっとだった。
若いレオポルドは大きな玉座に座り、それは原子力モーターにより浮遊した。
ハーディンの所にやって来たウェニスは、ハーディンを伴って自分の個室に導いた。
レオポルド一世のための乾杯。ウェニスは修理した戦艦「ウェニス号」が引き渡されたこの時点で、ターミナスを攻撃する予定だった。そしてハーディンは捕虜となる。
アナクレオン艦隊は既にターミナスに向かっている。

 

だがハーディンは落ち着いていた。この戴冠式が行われる真夜中を目標に迎撃態勢を取っていた。
惑星アナクレオンの破門。アナクレオンの全ての司祭がストライキに入る。それを解除出来るのはハーディンの撤回命令だけ。
そして付け加える。ファウンデーションに対する攻撃は「神聖冒瀆罪」
既に司祭が、自分たちの政府が行った愚行を民に暴露し始めていた。あわてて外に出るウェニス。
玉座が停止し、王を包んでいたオーラが消えた。驚きに顔を歪める王。
暗くなった舞踏室で、まだ支配の効いている衛兵に松明を持たせるウェニス。だが事態はどんどん悪化。
自分の息子も乗せているウェニス艦がターミナスを攻撃すると言い張るウェニス。

旗艦ウェニス号に乗る司祭テオ・アポラット。ファウンデーションの人々指揮を直接受けて艦の修理に従事した。出航前にヴェリソフから真相を聞かされる。
そして提督であるウェニスの息子レフキン公からターミナス攻撃を聞かされ、独自の動きをする。
船内通信を支配して、この船が神聖冒瀆罪を犯している事を周知。そしてハーディンの指示で装着されたウルト

ラ・ウエーブ・リレイを開くと、船は機能を停止した。

 

レフキンはアポラットによって拘束された。

通信画像に現れた、レフキン公のやつれた顔を見て椅子にへたり込むウェニス。平然としているハーディン。
アポラットの言いなりに、戦いの中止とウェニスの投獄を宣言するレフキン。ハーディンの話す、馬と狼と人の例え話。
ウェニスがスキを見て兵士から原子銃を奪い、ハーディンを撃った。だが彼の体はバリヤーで包まれておりダメージなし。
ウェニスはその銃口を自分に向け、顔を吹き飛ばして絶命した。

 

時間霊廟が開くのを待つ者たち。満員を越えて人々が三列に並ぶ。
ハーディンは市長であると共に全ての権力を身に付けていた。
レオポルドが署名した、ファウンデーションへの攻撃を永久に防ぐ条約。他の三国ともそれは交わされた。
ハーディンの失脚を目指していたセフ・サーマックとルイス・ボートは早々に自分たちの間違いを認め、転身と新行動党のキャンペーンを始めていた。

再び現れたハリ・セルダン。

二度目の危機により重大な逸脱が生じない確率は98.4%と予測。
また二度目の危機では、宗教的権力で支配権を得たとも予測。
ファウンデーションは新帝国に通じる道の出発点に立ったに過ぎない。
そして八十年前に、銀河系の反対側の端に、もう一つのファウンデーションが設立された事を周知。
君たちの前に九百二十年のプランが続いている。
そう言って映像は消えた。

 

第四部 貿易商人
貿易商人:辺境に向かってかぼそい指を伸ばしている貿易商人。彼らの作る「四つの王国」とは異なる帝国。

スケールの大きい孤独な人物像。

 

貿易商人のリマー・ポニェッツは、ファウンデーションからの通信を読んだ。貿易商のエスケル・ゴロヴがアスコーンに投獄されているとの知らせ。アスコーンは閉鎖区域で、原子力機器は何一つ売れない。

アスコーンに着き、大君主との面会に漕ぎ着けたポニェッツ。ゴロヴの処刑を示唆する大君主。

ゴロヴとの面会を求めるが、冷たく拒否される。
ポニェッツは、霊的な側面から慈悲を求め、その点に関して反応した大君主。

ポニェッツの姿を見て驚くゴロヴ。

ここのボスが信心深い事が幸いした。
大君主の懐柔には黄金が一番。ファウンデーションに帰ってそれを手に入れ、釈放してくれるよう頼むゴロヴ。
元々ゴロヴはエージェントで、アスコーンに原子力機器を売り込むのが任務。ファウンデーションの安全を確保するために、宗教にコントロールされた商業帝国作りが必要。
ポニェッツは、これはチャンスだと考え、一肌脱ぐと言った。

 

ポニェッツは、一週間かけて作った得体の知れない機械を前にしていた。相手は大君主と、その側近のファール。以前一度会っている。
この機械は鉄を黄金に変換する装置だと言う。試しに部下のバックルを差し出させる大君主。
その装置は十分程でそのバックルを黄金に変換した。
疑いを持つ大君主に、機械を差し上げるのではなく、黄金を差し出すのだと念を押すポニェッツ。
なおも反対するファール。自分を三十日間拘留し、それでも黄金に異常がなかったら受領して下さいと申し出るポニェッツ。

 

ファールと会見するポニェッツは商談を持ちかける。あの金属変成機そのものを差し出すと言う。気持ちが動くファール。秘密裏に運用出来るよう、操作法も全て教える。
対価は、一立方フィートの錬鉄。あまりにも先方に有利な商談。
その保証として文書が欲しいと言うポニェッツの言葉を否定するファール。

ゴロヴは五百ポンドの黄金と引き換えに、船と共に釈放された。
金属変成機をどうやって手に入れたか聞くゴロヴ。
金属照射室からひねりだしたという。貿易商人が使うトリック。短期間ならうまく行く。
だがアスコーンには原子力機器を売って初めて目的を達する。それはどうなった?
動じないポニェッツ。ファールはあの機械が動く限り黄金を作り続け、次の選挙で勝てるぐらいの蓄財をする。
種明かしをするポニェッツ。
船はアスコーンの外縁部にある鉱山に向かっていた。あの金属変成機をただで売った。その見返りは、この船に積んでいた原子機器全部の容積に見合う錫。

ポニェッツは、ファールに差し出す金属変成機を設置する時に、その中にレコーダーを仕込み、翌日分解修理の名目でそれを外した。場所は彼の奥の院。彼が金塊を押し戴いている映像が手に入った。
二日後にそれを見せてから、もう彼は言いなり。奴は取引きに応じた。
それは正当な契約。ポニェッツのとゴロヴの持っている全ての機械を、我々が運べるだけの錫を代価にして買い取った。

彼は当然その機械を使う事になる。彼は次の大君主になり、今後望む貿易の相手となる。

 

第五部 豪商
貿易商人:心理歴史学的必然性によってファウンデーションの経済的支配力は増大。

豪商の最初の一人として生涯を終えたホバー・マロウ。

 

市長秘書ジョレイン・サットが、主任貿易商ホバー・マロウに、極秘に属すると言って話を始める。
コレル共和国に向かった貿易船が、昨年三隻も姿を消している。コレルには原子兵器を持っている疑いもある。
優秀な貿易商人であり、コレルにも行った事があるマロウがその調査要員として選ばれた。彼がスミルノ人である事に対する物言いに多少イラつくマロウ。
帰ったマロウを見送ってから市長室に入るサットは「ひょっとしたら大物かもしれませんよ」と市長に話す。

 

サットの居る独身アパートでワインを飲む小柄な老人パブリス・マンリオ。ファウンデーションの重要な役職に就いている。マロウを送り出した事について話し合う二人。
ファウンデーションが設置されてから五十年後に最初の危機、その三十年後に二番目の危機が来た。それ以来七十五年。もうその時期。
セルダン危機が激化する前に対策を講じなくてはならない。
私に任せろ、と言うサット。

 

ホバー・マロウが会談をしている相手はジェイム・トゥワー。議会関連の運動をしており、貿易商人の代表としてマロウを送り込もうとしていた。だがその話には乗れない。サットの依頼で仕事に出掛ける事を話すマロウ。
セルダン危機が発生しかかっているという話に、全く反応しないトゥワー。驚いたマロウは、その話をかいつまんで説明した。そうそう、思い出すべきだったと弁解するトゥワー。
この危機が増大しようとする時に、自分が送り出される事に意味を見出しているマロウ。
唐突に「一緒に来ないか?」と誘うマロウ。多少躊躇した後「わかった。行こう」とトゥワー。

 

コレル共和国の概要。共和国と言いながら絶対専制君主制。支配者アスパー・アーゴ主席によりファウンデーションの影響が退けられている。その古びた宇宙空港に到着したマロウ、トゥワーらを乗せたファー・スター号。
ここに到着して既に一週間。いらだちを見せるトゥワー。だが落ち着いているマロウ。双方とも「待っている」状態。

そんな時に、ファウンデーションの宣教師を収容した。兵士からの知らせ。治療が必要だという。
マロウは、自分の命令なしにこの男を中に入れた軍曹を叱責した。部下も含め軍曹に監禁の罰を与えたマロウ。

懲罰に異を唱えるトゥワー。
マロウは宣教師に名前を聞くが、相手は両手を差し出して説教を始める。なおも名前を聞くマロウ。
ようやくジョード・パーマと名乗った男は命乞いをする。
敵の部隊が群集となって集まっている。要求は宣教師の引き渡し。
この人は保護が必要だと言うトゥワー。だが邪魔をするな、と厳しく言うマロウ。
パーマに、協定によってファウンデーションの宣教師は、コレルの領域に入れない事のダメ押しをするマロウ。
言い訳をするパーマに「保護は出来ない」と断じるマロウ。命令を通すために原子銃を抜くマロウ。
先方から代表者を来させて、パーマは引き渡された。悪態をついて連れて行かれるパーマ。

 

トゥワーを個室に招くマロウ。彼がマロウの判断に口出しした事を咎める。ここではマロウが指揮官。
謝罪するトゥワーに握手してその場を収めた後、マロウは今回の事件に不審を抱く。パーマはおとりとして放たれたものかも知れない。

こじつけだよ、とやんわり否定するトゥワー。
コレルからの招待状が電信で届く。宣教師を返して三十分後。「テストに合格したのだと思う」とマロウ。

 

主席アスパーとの会見を行っているマロウ。二国間の貿易がうまく行っていない事を指摘するマロウに、主席は二十年前のアスコーンで起きた事を引例に出した。商品を売りつけられ、それが正しく使われるよう宣教師が送り込まれた。宗教学校の設立等を経て、今ではアスコーンは、ファウンデーション組織の完全な一員。

 

マロウはそれを否定する。金が私の宗教。宣教師には興味がない。

その言葉を喜ぶ主席。
これからアスパーが得る利益について説明を始めるマロウ。
待女を借りて、その腰に鎖を止め、スイッチを入れると光で出来たマントが色とりどりにその体を包んだ。鏡を見てうっとりする待女。
こうした物の供給と、その利益配分の説明を受けて興味を示す主席。対価としてコレルから産出するものを貰うのがマロウ側。また、製鉄所の設備改善も提案するマロウ。
心を許した主席は、マロウを部下共々私邸に招いた。

 

私邸で主席を話す主席夫人のリチア。夫人はマロウらに好意を持ってはいない。夫人の実家は有力な国家(コレルより大きな)。
マロウからもらったベルトとネックレスを彼女に巻く主席。夫人はおとなしくなった。

製鉄所で主席と廷臣一行を前にするマロウとトゥワー。鉄板を切断する工具、はさみ、ドリル等様々な道具の実演を行うマロウ。
そこで急に緊張するマロウ。主席の護衛がたまたま前に来た時身に付けていた武器は原子力機器だった。それも帝国の刻印がされた、一世紀半も前のもの。

 

コレルを後にして二日後、自室にドロート大尉を呼んだマロウは封筒、マイクロフィルム等を渡した。そして艦長権限の委譲。指定された場所で二ケ月待機し、それでも彼が戻らなかったらターミナスに帰って、渡したものを報告書として提出する様に依頼。

 

救命艇で一人旅立つマロウ。

ノーマン星区の元首都シウェナ。かつて帝国の貴族だった老人オナム・バーを訪れるマロウ。
百五十年も前の古星図で訪れた事に驚くバー。新しい首都は二十パーセク先。
この星系の今までの状況を問わず語りに話すバー。長く安定していたが、皇帝に背いた事で恐怖政治が始まり、彼はここまで逃げ延びた。六人の息子のうち五人は戦死。最後の一人は名を変えて提督の部下になった。今のバーを助けている。一人いた娘は行方知れず。

 

シウェナに原子力施設があるかと聞くマロウ。発電所があると言うが、技官によって管理されており容易に近づけない。技官買収の可能性について、否定はしないバー。発電所のある最寄りの町を教えてもらうマロウ。老人は何かの助けになると、彼の偽造パスポートをくれた。
口数は少なく、とのアドバイス。

技官と対峙しているマロウ。昨日贈った貢物のおかげで面会が許された。生活に困っている様子はなく、金での懐柔は困難。
マロウは、簡単な願いを叶えてくれればもっといいものを提供すると言い、銃で自分を撃てと言った。彼の体にシールドがあるのに気付き、原子銃で撃つ技官。エネルギーは吸い取られ、マロウは何ともない。
そのシールドを身に付け、実際に原子銃で撃ち満足する技官。
マロウの希望は「おたくの原子炉を見たいのです」
「一緒に来い」と促す技官。

 

地下通路を通って、オゾン臭のする発電所に入った。それから十五分間、何物も見逃さず記憶したマロウ。
早々に追い出されるマロウ。
二日後、マロウはファー・スター号が待つ基地に戻った。
そして更に二日後、技官のシールドはだめになった。


私邸のサンルームで寛ぐマロウ。半年ぶりの休息。隣席するアンカー・ジェイルは元教育長官だが、ジョレイン・サットによって内閣から外された。
以前はジェイム・トゥワーがマロウを議会に送り込むと言っていたが、手を切った。相棒としてジェイルを選んだ。
だが議会に入るためには莫大な金が要る、とジェイル。

 

そこにサットが訪れる。この一ケ月、マロウが逃げ回っていた。ジェイルを隣室に押しやり、話を聞いている様に指示。
サットは早速用件を切り出す。コレルの報告書が不完全だったこと。
またあれ以来、マロウが工場建設やこの御殿など多大な出費をしている事を問題視。金をどこから得ているか。
あっさりと、コレルの主席との取引きによるものだと話すマロウ。
報告に書いてないと言うサットだが、マロウとしては行方不明になった三隻の船の行方は判らず、原子力施設も確認出来なかった。それ以外については、通常の市場開拓としての業務。
商品と宗教を抱き合わせにして売るのが一般の習慣だと言うサットに、文句があるなら法廷に訴えろと居直るマロウ。
なおも、宗教の導入により新技術と経済をコントロールし易くするのが本来のコースだと続けるサット。
だがそれは時代遅れだと否定するマロウ。四つの王国でそれがうまく行ったとしても、辺境の世界では受け入れられない。
マロウの権益をかすめ取るため、様々な条件を出すサット。その中には議席提供も。
いずれ議席は手に入れるというマロウに、殺人罪で裁判にかけると脅すサット。コレルでの、司祭を引き渡した件。予備手続きは済んでおり、サットがサインすれば裁判が始まる。
「好きにするがいい」とマロウ。

 

サットが帰った後、ジェイルが部屋に戻って来た。
ジェイルの話すサットの狙い。宗教的政策の破綻は彼も承知している。だが百年に亘って維持されて来た儀式と心のある者が、宗教の力を反抗するために使ったら・・・
正義の名において従属惑星の聖職者に、ファウンデーションへの反抗を指示出来ればどうなる?
ハーディンの言った「原子銃は良い武器だが、銃口はどちらに向ける事も出来る」。
僕を議会に送ってくれ、というマロウに、先の宣教師の話を聞くジェイル。事実だと話すマロウ。
危惧を口にするジェイル。いかに法に従った事をしたと言っても、もし人々が君を冷酷無情な獣だと思ったら、絶対に選挙に勝てない。
君は狙われている。

 

主任貿易商ホバー・マロウの裁判四日目。ジェイルに頼んで揃えてもらった資料。一般大衆の他、外部惑星でも注目している裁判。
審理の場に進み出るマロウは、告発された事は全て事実であると認めた。だが事件の全体像はまだ未完成だと指摘。
まずジョレイン・サットとジェイム・トゥワーに会った日に遡る。サットは、マロウに監視役を付ける必要があった。それがトゥワー。もと商人という触れ込みだった割りにマロウの記憶に全くなかった。その上トゥワーは、セルダン危機の事を一切知らなかった。
トゥワーが貿易商人では絶対になかったと考えたマロウは、彼が聖職者で、サットに買収された者だと推理。旅行への同行の誘いをかけたら、簡単に乗って来たトゥワー。

次いで宣教師の話。
逃亡宣教師が乗船した事を聞いて途方にくれたが、この現場の録画を思い立った。トゥワーと士官たちを五分間だけ外に出し、その間に録画装置をセットした。
審議会の許可を得てその画像が再生される。
表面的には、マロウが軍曹の処分を言い渡し、ジョード・パーマが訴える、そしてマロウが銃を抜き、宣教師は引きずられて外に出る。
この事件のおかしな所に対する指摘。ほとんど荒廃した場所なのに、宣教師はどこからやって来たのか。その上、大勢の群集も。この点に検察側は一切注意を払っていない。
また宣教師のけばけばしい衣装。法律に逆らって、命をかけてコレルにいる宣教師が・・・

 

マロウの推理。アスパー主席が、自分の手の者を宣教師に仕立て、マロウらを違法な侵略者として合法的に攻撃しようとした。
検察側は、マロウが自分の行為を正当化するであろう答弁に対し、ファウンデーションの尊厳を盾に、彼の人間性を糾弾するのが目的。
よって検察側はパーマの素性に関する詳細を一切提出していない。これはパーマ自体がうさん臭いから。この人物はそもそも存在しない。
先ほどの録画の静止画像を開示するマロウ。パーマが連れて行かれる時に袖口で光るもの。その部分の拡大画像

でK・S・Pと読める。これは刺青であり、通常は見えないが紫外線が当たると光る。K・S・Pとはコレル・シークレット・ポリス(秘密警察)の意味。ニセ宣教師の正体。

 

マロウの演説は途中でかき消され、彼は市長のベンチまで群集に担がれて行った。「マロウばんざい、マロウばんざい・・・・」という歓声。

この二日間、事態収拾に奔走したアンカー・ジェイル。

パブリス・マンリオとジョレイン・サットの逮捕。選挙まで彼が外に出られないための措置。

僕は市長であると共に司祭長でなくてはならないと言うマロウ。
コレルが宣戦布告する事を予測する。また、帝国の力がまだ及んでいる事も懸念要素。対応を誤ると命取り。

 

自分がファウンデーションのボスになったら、何もしない、とマロウ。それが危機の解決策。

コレル共和国でのアスパー主席と妻の会話。ファウンデーションとの取引きに不満の妻。義父が贈っている戦闘艦は既に五隻。口論に疲れた主席はファウンデーションとの間に戦争が始まると告げる。
帝国の巨大宇宙船の到来を告げるダーク・ネビュラ号。

 

マロウが市長になって二年。コレルとは時々軍事衝突を起こしているが、致命的な事にはなっていない。
ジェイルは、コレルに対して三年間独占的利益を与える取引をした事を咎めていた。完全に手詰まりの状況。
マロウは、セルダン危機の回避について話す。今までその時どきに利用可能だった力によって解決された。
今回の場合は「貿易」。
過去三年の間にコレルは、我々が導入した原子力技術に依存する様になった。これらが次第に故障し、維持出来なくなったらどうなる?
本当の戦争なら民は苦痛や空腹に耐えるだろう。だが通常の生活の中で欠乏が始まるのに耐えるのは困難。これから千日手が始まる。

 

我々は資源がなかったからこそ、帝国が追従出来ないものを作った。

帝国は自分たちの巨大技術すら理解出来ない。この戦争は二つのシステムの戦い。帝国とファウンデーション、大きなものと小さいもの。
マロウの自信過剰を咎めるジェイル。だがマロウは、セルダン危機の内的および外的解決策の歴史的正しさを確信している。

 

宗教の力は尽きた。これから貿易で繁栄は続く。
将来、金の力がなくなった時に別の危機が発生するだろう。それは俺の後継者に解決させるがいい。

 

コレル:記録上、戦闘が最も少ししか行われなかった戦争を三年間続けた後、コレル共和国は無条件降伏した。

 

 

日本のいちばん長い日 2015年

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Zeldaさんが「8月に観たい戦争映画」とのオススメ。

今回視聴は新しい方。何とか8月中の視聴にすべり込み。

 

監督・脚本   原田眞人
原作       半藤一利
音楽            富貴晴美

 

キャスト
阿南惟幾(陸軍大臣)             - 役所広司
昭和天皇                       - 本木雅弘
鈴木貫太郎(内閣総理大臣)        - 山崎努
迫水久常(内閣書記官長)          - 堤真一
畑中健二(陸軍少佐)              - 松坂桃李
東条英機(陸軍大将、元首相)        - 中嶋しゅう
米内光政(海軍大臣)              - 中村育二
森赳(陸軍中将、近衛師団長)        - 髙橋耕次郎

阿南綾子(阿南陸軍大臣の妻)      - 神野三鈴
阿南喜美子(阿南陸軍大臣の次女) - 蓮佛美沙子
絹子(陸軍大臣官邸の女中)         - キムラ緑子
館野守男(NHK放送員)              - 野間口徹

 

 

予告編

 

 

あらすじ
1945年4月。鈴木貫太郎に組閣の下命。

 

陸軍大臣に阿南を据える鈴木。
戦局は困難な状況であり、本土決戦が口にされ始める。
阿南の家。次女の結婚。
4月にルーズベルトが亡くなり、記者からコメントを求められる鈴木。
5月に東京大空襲。
本土決戦に意欲を示す阿南。「六百万の無傷の兵士がいる」それに反論する米内に「海軍などキンタマ取られている」
6月22日。御文庫地下防空壕にて懇談会。天皇が「戦争終結の検討をせよ」。奔走する迫水。


天皇から阿南にお言葉「結婚式は出来たのか?」被災した帝国ホテルから軍神会館に変更して実施。
「それは良かった」の言葉に感激する阿南。
庭での天皇。ヒメジョオンは外来種だと言って自ら引き抜く。

7月27日。ポツダム宣言が行われる。

国体護持の点で紛糾し、受諾議論が進まず。
8月6日。広島に原爆投下。
8月9日。ソ連の参戦。同日長崎に原爆投下。
鈴木の決心。

それぞれの段取り考え、間違えないようにと迫水に指示。
鈴木が陛下に面会。陛下の助けをお願いするかも知れない。
8月10日。御前会議は二時間以上に及ぶ。

政府と軍の対立。皇室保全が前提。
後聖断を求められ、国民を守る事が重要だと発言する天皇。

それを元に連合国へ申し入れ。裏で青年将校らを煽る東条。


8月12日。連合国回答で天皇陛下の立場を原文「subject to」に対して陸軍は「隷属」と訳し、国体護持にならないと反発。

不穏な動きに走る(受諾阻止)。
8月13日。再度の御前会議。
8月14日。玉音放送の録音。その夜クーデター未遂(宮城事件)。

畑中は森近衛師団長を殺害。


8月15日。早朝に阿南は切腹。
録音盤は守られ正午、玉音放送。
畑中はピストル自殺。

 

感想
1967年版は予告編しか観ていないが、ちょっと見だけで阿南役のミフネと役所は全くタイプが違う。
敗色濃厚な中、東条内閣の後を継いだ鈴木内閣が誕生した所からドラマが始まる。

 

陸軍兵士六百万で本土決戦を行う、と言う阿南も家庭ではトランプで遊び、娘の結婚式に心を砕く、ごく普通の父親。
鈴木も阿南も天皇の信認が厚く、様々なエピソードが語られる。

鈴木が阿南を選んだ理由もそこにあったのだろう。
表面上は本土決戦を口にするが、天皇の決心を受けて心が動いて行く阿南に対して、どんどん過激な方向に転がって行く畑中たち若手。

海軍のキンタマとは戦艦大和の事か。

 

人間「昭和天皇」と、彼を支える者たちのドラマとして観るのが一番しっくりと来る。

本木演ずる昭和天皇は、ちょっとおとなしいか。人間宣言後の天皇は温厚な面しか見せなかったが、開戦当時は戦勝に声を上げて喜んだり、将校を叱責したりとかもあったらしい。

だが物まねに走らず、キチンと人間を描いたのは好感が持てる。
天皇の会話の中で一度だけ「あ、そう」という言葉が、確信犯的に入っていた。昭和天皇の口癖。

 

松坂桃李演じる畑中少佐。

初めの方では理知的な好青年のイメージだったのが、東条に決意表明を行った辺りから少しづつ変化が始まる。
あの「隷属」の解釈から陸軍のスイッチが入ったのだろうか。

それから先は理念というよりクーデター実行の方に力点を置きながら、集団の意思が整って行く。

 

玉音放送阻止のためのクーデター未遂。空気感としては2.26事件を思わせて、緊張する場面展開だった。

録音盤を巡る攻防はなかなか見ものだった。宮内省とNHK、どっちにあるのか?右往左往する侍従たち。
NHKを乗っ取って、玉音放送前に陸軍の思いを国民に伝えようとするが、女子局員が電源を落としてそのスイッチをヒモでグルグルに巻く。この場面は良かった。

 

ただ松山ケンイチのマヌケ演技にはまいった。首相官邸を襲った佐々木大尉役だが、緊迫感まるでなく「官邸に火つけようか?」なんて回りに聞いたりして、完全にギャグ。

監督に言われるままだったのだろうが、ここは不要。

 

そういえば、東条と天皇のやりとりがあった(創作エピソード?)・・・・
東条は御聖断に納得せず、軍はサザエの殻、殻がなくなれば中味も死ぬと言うが、天皇はスターリンやトルーマンがサザエを食う場面が想像出来るか?彼らなら殻ごと捨てる、と返す。
軍があろうがなかろうが日本は死ぬと言う事ネ。


印象としては「良く出来ている」と思える映画だったが、やはり1967年版があっての本作という位置付けからは逃げられないのだろうか。

予告編観ただけでも、あちらの方が上という気持ちが抜けない。

ミフネ強すぎ!(笑)

 

1967年版

 


 

 

 

 

ファウンデーション対帝国(銀河帝国興亡史②)発表:1952年 アイザック・アシモフ

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ファウンデーション

 

前作「ファウンデーション」あらすじ
何世紀も前から崩壊を続けていた銀河帝国。中心となる首都トランターでそれに気付いた心理歴史学者ハリ・セルダンは、帝国滅亡後の早い復活を目指して二つのファウンデーションを銀河の両端に設置。
その一端「ターミナス」は五十年後に迎えた四つの隣国からの脅威を、サルヴァー・ハーディンの指導で乗り切る。宗教を加味した技術浸透により、絶妙なバランスを保って四つの国をコントロールした。
それから三十年後。隣国アナクレオンがターミナスの支配を目的に攻撃を宣言。だがその前兆を掴んでいたハーディンにより未遂に抑え込み、隣国を含めて条約で縛る事に成功。
更に七十五年後。貿易商人のホバー・マロウが、銀河帝国の影響が残るコレル共和国を、自分たちの小規模な機器類の貿易により服従させるに至った。銀河帝国に次ぐ力を持ったファウンデーション。

帝国との戦いの道が開かれる。

 

超あらすじ
第一部 将軍
帝国艦隊の司令官ベル・リオーズ。魔法使いと呼ばれるファウンデーションの者たちを追っていた。ホバー・マロウの時代から四十年後。ファウンデーションへの進攻を行うリオーズ。
セネット・フォレルの指示で、貿易商人ラサン・デヴァーズが捕虜として送り込まれる。
デヴァーズは、かつてホバー・マロウに協力したオナム・バーの息子ドゥーセム・バーの協力を得て、トランターに行き、リオーズ及びその上司ブロドリッグの失脚を側面から支援。
結局リオーズは失脚し、ファウンデーションは守られた。内部の敵を示唆するデヴァーズ。

 

第二部 ザ・ミュール
ファウンデーション紀元三一○年。
環境の厳しいヘイヴンから、新婚旅行を兼ねてカルガンに向かった貿易商人トランとベイタの夫妻。

トランの叔父ランデュの話す「ミュール」の噂。
カルガンの海岸で、ミュールのお抱え道化師マグニフィコを保護するベイタだが、軍とトラブルを起こす。
諜報部員ハン・プリッチャ-の手引きでカルガンを脱出する一行だが、ファウンデーションの船に拿捕され、フリッチャーは投獄される。

科学者エブリング・ミス。セルダン研究の第一人者。ベイタ、トラン、マグニフィコとの接触。
ミュールは周辺国を次々に落としてターミナスに迫っていた。
時間霊廟が開くが、セルダンの予言ではミュールの危機には触れていなかった。
その直後にミュールからの攻撃とファウンデーション占領の布告。
ミスがベイタたちを連れて脱出。
独立貿易世界だけが持ちこたえていた。そこに向かうミュールの軍勢。

 

地下組織に潜り込んだプリッチャー。準備期間を経て、ターミナス市長の公舎に居るミュールのところへ自爆覚悟で行くが、その行動は察知されていた。

 

ファウンデーション設立時、同時に作られた第二ファウンデーションの情報を得るため、トランターに向かうミス、ベイタ、トラン、マグニフィコ。
ミスは文献の分析に没頭し、次第に弱って行った。
次に姿を現したプリッチャーは、ミュール側の人間になっていた。

強力な感情操作。

衰弱したミスが最後に、第二ファウンデーションの場所が判ったと皆の前で話そうとした時、ベイタがミスを撃ち殺した。ミュールにその場所を知らせないため。

 

ミュールの正体は、道化師のマグニフィコだった。
腺病質で、奇妙な子供として迫害を受けながら育ったマグニフィコ。成長して、他人の心を操作出来ることに気付いた。自分は表面に出ず、支配を進める。
全てを征服するために第二ファウンデーションの場所が知りたくて、ミスらに付いて行動した。

だが間違いを犯した。それはベイタに対する感情。能力を使わなくても好いてくれたのはベイタだけ。だから彼女の感情を読むことをしなかった。去って行くミュール。

 

文庫第一期

文庫第二期

 

ミュールのイメージ SCIENCE FICTIONより

 

感想
ミュールという、得体の知れない者に対する疑念をずっと引っ張りながら、支配されつつあるファウンデーションの暗い未来を読み進む。

最初に読んだ時は、ミュールの正体に「そうだったのか!」とけっこう感動した。
今回読み返してみると、マグニフィコがミュールであるというヒントが、そこかしこに伏線として張られており、別の意味で面白かった。
登場人物も生き生きと描かれている。

まずハン・プリッチャ-。優秀な諜報部員としてミュールに疑いを持ち、その出生に肉薄するも、近づき過ぎてミュール側の人間にされてしまう。ベイタらの活動に制限を加える事をしなかったのは、第二ファウンデーションの位置を知りたがったミュールの指示か?

ベイタは、元々ファウンデーションの人間であり、トランの妻になったのは、何らかの偽装が感じられる。
マグニフィコに対する偏見のない好意が結局自らを救うが、最終場面でミスを射殺したのが、第二ファウンデーションの秘密を守るためとはいえ、ショッキングだった(普通に言って殺人だし)。三作目でも違う形で影響を与える。

 

キーマンのミュール。自らの肉体的欠陥を補うように身に付いた超能力。これは以降「地球(テラ)へ」のミュウなど、SFモノにはお約束の設定となった。
銀河の支配という壮大すぎるテーマに対し、ベイタへの感情との対比がハンパないが、まあこれもドラマとして成立させてしまうところが小説の良さか。

ハリ・セルダンの予言には具体的に入っていなかった、ミュールに対する危機。だがそれも含めた危機的状況に対応するため、セルダンが準備していたのが「第二ファウンデーション」。
それが第三巻目に繋がる。この長いドラマをどう組み立て、進めて行くのか。本当に良く考えられている。

 

 

あらすじ詳細

第一部 将軍

1 魔法使いを探して
帝国艦隊司令官のベル・リオーズ。

シウェナに住む老人ドゥーセム・バーを訊問。
叛乱の気配を秘めている「魔法使い」に関する情報収集。
ドゥーセムは、四十年以上前、貿易商人の訪問を受けたオナム・バーの息子。個人用のフォース・シールドを持っていた。帝国の技術ではあり得ないもの。
父の研究を引き継いだドゥーセムは、ハリ・セルダンを知る。

その名を知らないリオーズ。セルダンの予測した帝国の衰退と、その後の野蛮化。
否定するリオーズ。帝国はこの千年期で最も隆盛期を迎えている。
セルダンの計画した二つのファウンデーション、第二銀河帝国の事について、四十年の研究により導いたドゥーセム。
証拠を得るためにファウンデーションを見つけるというリオーズ。

 

2 魔法使いたち
隔離された部屋で話し合う四人の男性。そのうちの一人はセネット・フォレル。ホバー・マロウの私生児。
議論しているのは、拿捕した帝国の戦艦で捕えた若い軍人の扱い。帝国の軍事指導者でありながら、外縁部の小君主を装っていた。ホバー・マロウの時代に、帝国から一度攻撃されている。
帝国からの攻撃を受ける可能性。セルダンの四度目の危機かも。
独立貿易商のスパイを送り込もうとするセネット・フォレル。

 

3 死者の手
帰還しない「スターレット」号の探知を指示するベル・リオーズ。
ドゥーセム・バーを呼び寄せて作戦に利用するリオーズ。半年前に魔法使いの話をして以来の再会。
反撃の方法をバーに乞うリオーズだが、例え帝国が総力を上げても押し潰せないと言う。
バーは歴史心理学の観点から、死者の手のために帝国は負けると言う。

 

4 皇帝
病気を抱えベッドに横たわる生活のクレオン二世。側近ブロドリッグを最も信頼している。リオーズの、ファウンデーションへの進攻と増援の申し出を伝えるブロドリッグ。
シウェナの軍政長官ベル・リオーズ将軍。

帝国のための征服事業を申し出た男。
十年前に仕官候補生となって以後、功績により特進した。
そのリオーズからの連絡。事情が判るまで増援は認めない、と皇帝。列候会議の招集。

 

5 開戦
帝国宇宙軍が、シウェナを起点としてファウンデーションへ侵攻する。
ファウンデーションの船に乗る、ラサン・デヴァーズと名乗る男を捕える。
ファウンデーションが計画している第二帝国の創建について質問するリオーズ。はぐらかすデヴァーズ。
デヴァーズはバーに預けられた。バーと話すデヴァーズは、彼をオナム・バーの息子との確信。

 

6 寵臣
惑星ワンダでブロドリッグと話し合っているリオーズ。ファウンデーションへの進攻を正当化するリオーズだが増援について否定的なブロドリッグ。

 

7 賄賂
見張り役、モリ・ルーク軍曹を買収したデヴァーズ。リオーズの暗殺を提案するデヴァーズに、その上のブロドリッグが重要だと言うバー。下賤の生まれだが、あらゆる点について皇帝の顧問。
そのブロドリッグが会いに来て、リオーズが戦さをする理由を聞く。ファウンデーションが持っている秘密は元素の変成。それが手に入れば帝国全体の経済を支配できる。鉄の、イリジウムへの変換が出来れば資源に悩む必要がなくなる。
ファウンデーションが和睦のためにイリジウム提供を申し出ているのを蹴っている、リオーズの態度の背景を理解したブロドリッグ。金をバラ撒いてデヴァーズに口止め。
二ケ月に及ぶ戦闘で疲労しているリオーズ。ブロドリッグが副司令官として加わり、戦艦の補強もされたが、腑に落ちない点がある。
デヴァーズが簡単に捕まった事に疑念を持っていた。機械を持参して精神探査をすると言う。バーが隙を見て飾りのクリスタル像でリオーズの頭を打撃。二人はルークの案内で商船まで走って脱出。
ブロドリッグに吹き込んだ話が効きすぎた。彼はリオーズと手を組んだ様だ。

 

8 トランターへ
ファウンデーションが攻撃を受けている事に苛立ち、バーに八つ当たりしたデヴァーズ。だがバーは、逃亡した事で、残した息子らの身が危なくなっている。
思い出してカプセルを取り出したバー。リオーズが受け取ったもの。ブロドリッグからリオーズへの書簡。ブロドリッグらの謀反の証拠としての利用を考えるデヴァーズは、クレオン二世に会うためトランターに向かう。

 

9 トランターにて
正規の手続きでは入国出来ないデヴァーズ。ブロドリッグからもらった紙幣が効いて、賄賂により手続きが進む。
ひと月かけてようやく要職の部署に辿り着いたが、ブロドリッグの紙幣である事を咎められる。担当者を倒し、商船に乗って脱出するデヴァーズとバー。ニュースでリオーズとブロドリッグの逮捕を知る二人。

10 終戦
故郷ターミナスで勲章を授与されるデヴァーズだが、彼らの行動の前にリオーズは逮捕された。今回の解説をするバー。
ファウンデーションに害が及ぶケースは、強い皇帝と強い将軍が組み合わさった時だけ。今回の強い将軍リオーズに疑惑を感じた皇帝。それに加えて側近のブロドリッグがリオーズに肩入れ。この「うさん臭さ」がファウンデーションを救った。
帝国からの攻撃はもうない、と喜ぶフォレルに第二ファウンデーションの存在を語るバー。「おそらく内部に敵がいるよ」と言うデヴァーズ。
例えば、誰だ?」というフォレルに「たとえば人民だ」と返すデヴァーズ。
富の分散を願う者。どこかに集中しているのを防ぎたい。

見つめ合う二人。

 

第二部 ザ・ミュール

11 花嫁と花婿
ヘイヴン第二惑星に降り立った夫のトランと妻のベイタ。ヘイヴンはファウンデーションの支配を受けている。トランはヘイヴンの出身。

ベイタはファウンデーションの出身で、先祖を辿ればマロウにまで行き着く家系。
刺すような寒さ。出迎えるトランの父フランと、トランの叔父ランデュ。彼らは貿易商人。
最後の危機からもう一世紀経とうとしている。支配階級の安定。

それに重ねてフランが貿易商人の貧困を叫ぶ。
ランデュが、ここ一、二年の噂を口にする。ミュールという男。

勝ち目がない戦いに何度も勝っているという。
ランデュは、トランたちの新婚旅行を、そのミュールが居るという「カルガン」にする事を提案。ここから七千パーセク。ファウンデーション人のベイタと組めば、何か探り出せるかも知れない。

 

12 大尉と市長
諜報活動を業務としているハン・プリッチャー大尉は、ファウンデーションのインドバー市長に謁見していた。同じインドバー名での三代目。プリッチャーの記録を見る市長。紀元二九三年に入隊してから十七年の四十三歳(よって現在は紀元三一〇年)。優秀な勤務状態で勲功章を授与されているが、その一方で上官に対する不服従も繰り返す。
緊急事態にも関わらず、重要な問題が無視されていると主張するプリッチャー。
プリッチャーは一年半前からカルガンで、引退した商船員を装って、カルガンの将軍の政策チェックを行っていた。カルガン及びその星系はファウンデーションにとって戦略的に重要な存在。
二ケ月前に一旦帰任し、一ケ月前に戻った時、得体の知れない者がカルガンを征服していた。この不思議な傭兵隊長-ミュールについての噂が広まっている。
プリッチャーの危惧を否定する市長は、彼をヘイヴンへ出張させた。
だがその命令に背いて進路をカルガンに取るプリッチャー。

 

13 中尉と道化師
カルガンは、レジャーの売り手として、征服者の蹂躙を受ける事なく存続して来た。

だが最後に征服した将軍は、熱心に自国の防御に力を入れた。
だがおかしなニックネームを持つ者が新たにカルガンを征服した。

今まで通りの繁栄を続けるカルガン。
カルガンに到着したトランとベイタは、もう四日間もここに滞在している。叔父のランデュが言っていた、ミュールの事を気にしていたが、探す手立てがない。

ベイタは海岸で、道化師と警備員のイザコザを見る。道化師がベイタの方に近づき、彼女の知性を讃える。ベイタが優しく話しかけた。
あの警備員が追って来て、道化師を引っ立てようとする。トランが道化師を庇う。道化師に金を渡して芸をさせるところだとけん制。
警備員はその男を領主さま(即ちミュール)のお抱え道化師だと言った。
道化師に暴力を振りそうになる警備員の麻酔銃を取り上げるトラン。事態が険悪に。
そこへ中尉の制服を着た大男が来る。警備員が事情を話す。
ファウンデーションの市民だと言うトランに、今の行為が不法だと警告する中尉。
身分証は船にある、とトラン。群集は電気鞭で追い払われた。
自分のやった事に改めて驚くトラン。「まるで別人だったわ」とベイタ。乗せられた小型機のシートで寝ている道化師。

報告する中尉に「君の役目は終わった」と言う大佐。「ミュール様は大衆の面前で面子を失いました」と付け加える中尉。その措置は取った、と大佐。

 

14 突然変異(ミュータント)
格納庫の船の中。道化師は食べ物にぱくついていた。この一週間ろくなものを食べていない。道化師の名前はマグニフィコ・ギガンティクス。彼にとってもファウンデーションは有名だった。ちょうどそこに訪問者。
男はベイタをファウンデーション人と見抜き、地下組織の一員である事も知っていた。男は秘密情報部のハン・プリッチャ-大尉と名乗る。

 

プリッチャーはミュールを、ファウンデーションへの脅威として認識していた。その出生についても調べていた。

三十年前に生まれ母親は死んでいる。
生き残っている者の話によれば、彼は人類ではない。

彼はミュータント。無名から身を起こして、二年でカルガンを征服したのは、その能力が並みでない事を示している。
マグニフィコの話すミュールの風貌。立派な体格で髪は赤毛。そして不透明な眼鏡をかけている。目で人を殺すという。
大尉の提案でカルガンを脱出。
不思議なことに追跡はなく、道化師を連れ出す事を彼らが望んでいたとも思える。
その後報じられたニュース。(ミュール)の宮廷の一員が誘拐され、それについてファウンデーションに抗議したという。我々の立場は悪くなった、とプリッチャー。

 

15 心理学者
科学者のエブリング・ミスは、市長インドバーに面会するため、請願書は出したものの、その許可を待たずに宮殿に押しかけた。
市長の苦情を無視して「セルダン危機」の言葉を出すミス。市長がセルダン危機を恐れている事を承知している。
心理歴史学を研究している彼は、併せて時間霊廟についても調べていた。

その関係で今度のセルダン危機、五回目のものがいつ来るかを知った。それは四ヶ月後。何年も前から準備されていたという事。
そこへ秘書が市長へ報告。命令にそむき、カルガンに向かっていたハン・プリッチャ-が戻って来たため投獄し、処刑を待っている状態。同伴の者は抑留。
プリッチャーの言うカルガンの新将軍の企み。ミスは、プリッチャーの釈放を進言。

 

16 協議会
ファウンデーションとは異なる貿易世界で繋がっている二十七ケ国が、ラドール市に集まって会合を行った。
カルガンがミュールに支配された話が語られる。

ミュールはミュータント。
ファウンデーションに対して敵対しているが、ミュールも大きな脅威。ミュールは狂人。また敵は新兵器、原子フィールド抑制機を持っているという。

 

17 ヴィジ・ソナー
ターミナスの、エブリング・ミスの自宅に連れて来られたベイタとマグニフィコ。ミスがやって来てマグニフィコにたくさんのキーが付いた楽器を見せた。ヴィジ・ソナー。音だけでなく視覚や精神にまで影響を与えるもの。
ファウンデーションにはこれをキチンと弾ける者はいないという。

一心にそれの調律を始めるマグニフィコ。
用意が出来て、電気を消し、彼の音楽を聞くミスとベイタ。めくるめく様な体験。聞き終えたベイタは涙ぐむ。
この演奏を、もっと多くの人に聞かせたくないか、と言うミス。大きな名声を得るチャンス。

インドバーと会見するミス。ミュールの情報を要求する市長。マグニフィコに軽い表面探査を行ったが、ほとんど新しい事は判らない。
市長は、独立貿易世界連合が、ミュールに対して宣戦布告した事を告げた。協力ではないが、ファウンデーション艦隊が増強されたのと同じ効果。
また、市長は時間霊廟の話を持ち出した、あと九週間で時間霊廟が開く。もしミュールの攻撃が危機でなかったら、真の危機はどこにある?

 

18 ファウンデーションの陥落
ハリ・セルダンの出現を前にして、時間霊廟に人が集まりつつあった。
最初に来たのはインドバー市長。星間中継も準備出来ている。後援者や指導者が集まる。
その中にヘイヴンのランデュが姿を現した。独立貿易世界連合の代表。市長から出ている、連合の宇宙戦艦をファウンデーションの艦隊に分配する指令の撤回を求める。その様な措置には従えない。
統一されるべきだ、と譲らない市長。決裂する二人。

ベイタ、トラン、マグニフィコも来場。ランデュとの再会。
そして時間霊廟が開いた。ハリ・セルダンの姿。ファウンデーションの内乱に対する言及。独立貿易世界の叛乱。
エブリング・ミスがランデュに詰め寄る。内戦の計画をしていたのか?
確かに計画していたが、ミュールの事があったので取り消した、とランデュ。

その時、ミュールからの攻撃が告げられる。時間霊廟の中の時計が止められていた。
次々と入る敗北の報告。気絶したインドバー。気付けのワインで目覚めた時の言葉は「降伏だ!」

ミスがベイタ、トラン、マグニフィコを連れて脱出。
ファウンデーションに対する占領の布告。
独立貿易世界だけが持ちこたえていた。そこに向かうミュールの軍勢。

 

19 探索開始
孤独な惑星ヘイヴン。ファウンデーションの瓦解から四ヶ月後、通信網は断ち切られ、戦闘基地として孤立したヘイヴン。
ベイタは今日、生産局へ行った。工場の士気が落ちている事の訴え。ヘイヴン自体がそれに陥っている。

 

ランデュとエブリング・ミスとの会話。この敗北感は群集心理だと言うミス。ミュールについて、セルダンは用意をしていなかった。

我々は自力で戦う事になったが、勝つ事は出来る、とミス。
ミュールについての仮説。ミュール自身のミュータント能力は、噂に助けられている。そしてミュールが持っているという原子反応を抑制する放射線。それがもし精神エネルギー抑圧にも有効なら、ファウンデーションを襲っているものの説明がつく。
だが理屈に合わない事もある。ファウンデーションの宇宙軍を簡単に打ち破ったミュールも、独立貿易商の艦隊には勝てない。我々が知らない要素がある。
ランデュは、ミスを最も偉大な心理学者と讃え、ミュールを打ち破る最後の望みだと言った。だがここでそれを行う事には無理がある。

トランターなら中心部にまだ記録が残っている、とトランター行きを勧める。そしてセルダンが設立したという第二ファウンデーションを発見して欲しいと重ねた。

 

20 陰謀者
かつての市長の宮殿に入るハン・プリッチャ-大尉。四ヶ月前の、時間霊廟の前での事件。セルダンの見当外れの言葉。そして起きたミュールからの攻撃。
トランが道化師を担いで逃げる姿を見た。

プリッチャーは彼らの後に脱出。
翌日に見た敵宇宙船の群れ。そこから旅に出たプリッチャー。

三十日かけて地下組織まで辿り着く。
そこで合流したフォックスという男は、共闘を希望するプリッチャーに、工場の労働者になる事を勧める。インドバーのための工場が今はミュール側に寝返っている。働くとなれば身分証も入手できる。

彼はアトム・フィールド・ベアリング社のシールド工 ロ・モロとなった。

 

四ヶ月後、再びインドバーの庭園に立つプリッチャー。口の中の原子爆弾の寿命はあと三十分。
工員となってから二ケ月。仕事の最中に男からメモを渡された。
フォックスの家に行くと知らない男が来ていた。ミュール暗殺の作戦。ミュールはインドバーが使っていた居室に住んでいる。あの場所のセキュリティを熟知しているプリッチャー。一ケ月かけて準備が行われた。暗殺者となったプリッチャー。

宮殿を静かに入って行くプリッチャー。残り時間は五分。
一緒に死ぬミュールを見たくてドアをめちゃくちゃに叩くプリッチャー。ドアが開き、そこには制服を着た大男が。来る事を予想されていた。爆弾の寿命は最後の一分。
その錠剤を吐きだす様に言う男。爆発しないよ、とも。最後の一分が過ぎ、銀の粒を吐き捨てるプリッチャー。
その男はミュールではないと言う。この計画は君がベアリング工場で働き始めていた頃から判っていた。
プリッチャーに対して、最初にミュールの力を見抜き、その若い頃にも関心を向けた者として、有能な男だと褒めた。
転向を勧める男。言下に拒否するプリッチャーに、私でさえ敵わなかった、と言う。カルガンの将軍だった男。「そして今はミュールの忠義な総督だ。彼には説得力があるのだよ」

 

21 宇宙の幕間劇
トランターに向かう宇宙船。クルーはエブリング・ミス、トラン、ベイタとマグニフィコ。通信によれば、ヘイヴンも占領された。
ベイタが、私たちはいつも間一髪で逃れていると指摘。
ここ一ケ月あまり、航行ルート計算を行いながら進んで来たが、ある日マグニフィコが、計器がおかしな動きをしていると報告。

自分たちが探知されている。
起こされて来たミスに、フィリア自治領に入ってしまったと話すトラン。
フィリア船から六人の武装兵が入って来て、質問を行う。そして次に技術者が居るかを聞く。自船のパワー・プラントに調整が必要だという。トランとマグニフィコが連れて行かれた。
先方の船に異常はない。機嫌の悪いトラン。別室に連れて行かれたマグニフィコが十五分ほどで戻った。
自船に戻され、フィリア側として二百五十クレジットを要求。そして解放された。

トランの言うには、あの船のエンジンはファウンデーション製。どうやって見つけたか訝るベイタ。尾行されていたとの疑い。
その上で釈放されたのは、我々の行き先に興味があるから。

腹を立てるトラン。
マグニフィコが、あのフィリア船で知った顔を見たという。それはハン・プリッチャ-。助けてくれた事で良く覚えていた。彼がミュール側の者となって追跡している事を知る。

 

22 ネオトランターでの死
五十年前は四百億の人が居たトランターも、今では一億程度。四十年前の大略奪により、皇帝の一族がこの地に逃れた。その時の皇帝がダゴバート九世。その息子ダゴバート十世。
今回来た者の話をするジョード・コマソンとインチニー。来た者たちは身分証を持っていない。コマソンは皇太子の臣下。その手下がインチニー。来た者の中の女を皇太子に与える案で話が合う二人。

ダゴバート九世に謁見するトランたち。旧トランターに入るため、皇帝の印が必要。

そちらの方へ話を進めるが、老齢により話の認識力が弱い王。
ベイタが具体的に、トランター行きを許可する命令書へのサインを願い出る。それにサインを与える皇帝。

部屋を辞して外に出たところで武装兵に囲まれ、麻酔ピストルで撃たれる一行。もうろうとする頭で男たちの声を聞くベイタ。

 

コマソンと話をする、殿下と呼ばれる男。トランたちは手足を固定されている。皇帝の通行許可証を持っていると言うトランに「きちがい皇帝」と言う太った男。それは二十歳のダゴバート十世だった。
ベイタの前で、この女が気に入ったという皇太子。

ミスは気を失っていたが、マグニフィコは目覚めていた。ヴィジ・ソナーを取られたと訴える。
皇太子はそれを手に取って鳴らそうとするが、全く音が出ない。「おまえ弾けるのか?」との問いに頷くマグニフィコ。
弾け、と命令されて弾き始めるマグニフィコ。鋭い光の虹が跳ね上がり、邪悪なリズムに合わせて光が点滅。
それは十五分も続き、終わった。いつもとは全く違う音楽。
足もとに皇太子が静かに横たわり、コマソンがよだれを垂らして呻く。
マグニフィコは皆の手足の固定を外して行った。

一時間後、宇宙船のキッチンでマグニフィコにパイを食べさせるベイタ。先のヴィジ・ソナーの事を聞く。
ヴィジ・ソナーは神経組織に深い影響を与えるという。

それは邪悪なもの。
皇太子をノックアウトした事を褒めるベイタだが、マグニフィコは、彼を殺したと言う。あの皇太子は邪悪な目であなたを見た。
不思議な思いが湧くベイタ。

 

23 トランターの廃墟
トランターに接近するベイタ号。金属で覆われた地表の一部に割れ目があり、緑が見える。そこを目指して着陸するベイタ号。
それを用心深く見上げるリー・センター。このグループの指導者。自然農業を行っている。
着陸して降り立った者たちはセンターに平和目的で来た事を告げた。

自給自足の生活。だが肉の供給は外国との貿易に頼っていると言う。輸出するのは金属。加工済みの金属なら無限に供給出来る。
大学構内での調査を申し出る年配の男。リーはその夜ネオトランターに連絡を入れた。

 

24 転向者
大学構内の図書館に入ったエブリング・ミスは、目録室にに留まる事にして、食べ物はそこに届けるようトランに申し入れた。
トランとベイタはこの一年の新婚生活の中で、最も正常な形の生活を過ごしていた。マグニフィコは図書室の映写機に夢中。
ミス自身は書籍研究に完全に埋没し、青白く痩せこけて行った。
暗い部屋で考え込むベイタに、トランはイライラを募らせた。
そんな時、マグニフィコが「奥様・・」と声をかけた。
そこに現れたのはハン・プリッチャ-。

ネオトランターの農夫に報告を命じていた。
そしてトランたちの行為が無益だと言う。

ミュールはミュータントであり彼を打ち負かす事は出来ない。
完全な忠誠心と、ミュールが勝つという完全な信念を沁み込ませる事が可能。
ミュールの力は絶望に関しても作用させる事が出来る。ファウンデーションやヘイヴンの要人たちがほとんど戦わずして陥落した理由。それが感情調節。
ミュールはこの七年間でファウンデーションの原子力技術まで手に入れ、最終的に老皇帝の死と共に新帝国を確立する事になる。
セルダンの歴史心理学があと七百年かけなければ達成出来ない事を、彼は七年間で成し遂げた。
だがプリッチャーは、ここに居る者たちの扱いが任務外だという事で、マグニフィコも含め、報告もしないと言った。
そしてミスたちが、第二ファウンデーションを探している事も知っていると伝えて、去って行った。

 

25 心理学者の死
図書館に籠りきりのミス。ベイタはトランと共にミスのところへ行き、プリッチャーが来た事を話し、ミュールの変異の話をした。
その事を承知していたミス。ミュールの感情調節を、様々な要因から導き出していた。そしてプリッチャーが感情調節を受けてその話をベイタらに話した事を聞いて、急がねばならない、と言った。
トランが、第二ファウンデーションの事を聞くと、その意義--それに関するすべてがより巧妙に隠蔽されていると話すミス。
翌日図書館に行ったベイタ。マグニフィコがミスをサポートしてじっと彼を見つめている。
マグニフィコに用事を言い付けて席を外させるベイタ。そしていつもマグニフィコが居る事について、邪魔ではないかと聞く。むしろ助けになっていると言うミス。
ミュールの道化師だった彼が感情調節されていない事に疑念を抱くベイタ。だがミスはそれに合理的な理由を見出しており、またマグニフィコの持つ情報そのものは重要ではないと言った。
更に第二ファウンデーションの事を聞くベイタ。
ミスの話。第一ファウンデーションは自然科学者の世界だった。セルダンが意図して心理学者を入れなかった。それゆえに発展した。
第二ファウンデーションは心理学者の世界。

第一ファウンデーションは科学的に進んだ世界。だがミュールの様な精神攻撃には準備がなかった。
第二ファウンデーションは何もしていないと言うベイタに「まだ十分に成熟していないかも知れない」
もし第二ファウンデーションがミュールを倒せないと、彼の子孫にホモ・サピエンスは太刀打ち出来ないだろう。
彼らに警告するため、その場所を知らなくてはならないが、その位置が判らない。
その晩、トランと話すベイタ。彼を信じると言うベイタだが、ミスは病気に罹っている。まさかの用意に原子銃を持つというベイタ。

エブリング・ミスの命はあと七日。

最後の日にマグニフィコが、学者の先生がお呼びです、と言って来た。
床に伏しているミス。仕事を引き継ぐと言った。
厳しい声でマグニフィコを上の階に追いやる。しぶしぶあとずさりするマグニフィコ。だがミスは居させてやれと言った。
第二ファウンデーションは、未成熟のうちにミュールに攻められなければ勝つ事が出来る。その所在は秘密にされなければならない。君たちはそこに行かなくてはならない・・・・」
トランの「どこにあるんだ!?」との問いに「今教える」
ベイタが原子銃でミスを撃ち、彼の上半身がなくなった。
力の抜けたベイタの手から銃が落ちた。

 

26 探索の終わり
今まで一度も泣かなかったベイタが一粒の涙を落とした。
ベイタはゆっくりと話を始める。
今まで何度も経験した、後をつけて来る様な災難。そしていつも間一髪で助かる。現実の世界ではこんな事は起こらない。
自分たちが伝染病の源を持ち運んでいた。トランが、それをエブリング・ミスかと言った。言下に否定するベイタ。ベイタでもない。
そうなると、残るはマグニフィコ。ベイタは続ける。
ネオトランターで、ヴィジ・ソナーを弾いて皇太子を殺した。恐怖のために何も出来ない者が、意のままに人を殺す能力がある・・・
演奏のほんの一部をベイタも聞いたが、時間霊廟での絶望感と同じものを感じた。

なおも否定しようと彼の方を見るトラン。

 

マグニフィコは背筋を伸ばし、自分の正体を明かした「私がミュールだ」

ミュールが話す、今までのいきさつ。
幼年時代、腺病質で貧弱な体のため、奇妙な子供として皆が避け、様々な出来事が起きた。彼の過去を調べていたプリッチャーがそれを気付くのに十分なエピソードがあった。
長じるにつれて他人の感情を、ダイヤルを回す様に指針を合わせて固定出来る事が判って来た。
二十二年間の嘲笑と虐待からの逆転。
だが自分自身に何もないという弱点。

権力を得るのは他人を利用してのみ可能な事。

自分の活動の助けとするため、道化師の姿でファウンデーションのエージェントを探していた。結局それがプリッチャーだったが、その時はベイタに引き寄せられた。それが致命的な失敗の出発点。
トランが、信じられない行動力でマグニフィコを助けたのも精神調節の仕業。
ミス博士に会った時、ヴィジ・ソナーを渡された事が、仕事を非常に楽にした。感情制御装置としての利用。
重要な発見がエブリング・ミス。彼に施した精神調整で、高能率で第二ファウンデーションの探索に没頭した。

だが間違いを犯したミュール。それはベイタ。
ベイタは唯一、感情をいじらなくても彼を好いてくれた人。笑い者にもしなかった。それが彼にとってどんな意味を持つか。
ミュールは彼女の心には立ち入らなかった。自然の感情をあまりにも大切にした。それが間違い。
トランは制御を受けていた。
ネオトランターでの失敗。自分の愚かな感情が、あの皇太子の、ベイタに対する意図を冷静に見られなかった。
殺さなくても用は足りたのに。

 

これからどうするの?と言うベイタに、第二ファウンデーションを探さなくてはならないだろう、と返すミュール。
あなたは負けた、とミュールを挑発するベイタ。
ミュールは、まだ自分は銀河系で最も強力な男だと言い、王朝を設立して適当な后を迎えても良いと言った。
その意味を覚って愕然とするベイタ。

 

だがそこまでで、ミュールは立ち去った。決して振り返らずに。

 

 

 

 

 

 

荒野のガンマン     1961年

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監督       サム・ペキンパー
脚本・製作  A・S・フライシュマン

 

キャスト
キット・ティルドン     - モーリン・オハラ
イエローレッグ      - ブライアン・キース  元北軍兵士。
ビリー・ケプリンガー  - スティーヴ・コクラン タークの相棒。
ターク            - チル・ウィルスイエロー
牧師             - ストローザー・マーティン
カクストン医師     - ウィル・ライト

 


予告編

 

感想
西部劇はあまり観る方ではないが、BSの録画をしてしばらく放置していたものを視聴。

ちょっと微妙な西部劇。そもそもイエローレッグが、肩に入った銃弾のため、まともに銃が撃てない人間なのに、ガンマンとして生き延びて来れたというのが不思議。

それからイエローレッグが、異様に帽子を外そうとしない動作もちょっとしつこい。額の傷跡を見せるのがこの映画のクライマックスだから、まあやむを得ないのだが。

モーリン・オハラ。ちょっと険があるが、正統派の美女(好きです)

 

しかし、息子の遺体を運ぶのを護衛する話が、途中馬車は処分するわ、馬は先住民に殺されて棺を手で持って運ぶわ、とだんだんおかしな方向に流れて行く。
途中で「一体このドラマはどこへ行くの?」とツッコミたくなった。

結局後で現れたビリーとタークが同士討ちをしてくれたおかげで、何とか収まったが、それがなかったら、あの使えない右腕ではどうしようもなかっただろう。
ガンマンと言いながら、ちっともガンマンじゃない男の映画・・・・


キット役のモーリン・オハラで小咄
妻:モーリン・オハラって、どっかで聞いたわね
夫:ああ、それ。あのスカーレット・オハラの姉さんだよ
妻:へぇ、そうなの?知らんかった~~
なわけねえだろ・・・・(これ実話)

 

あらすじ
とある酒場。カードでイカサマをやって、ロープで吊るされている年寄りの手の傷を見て驚く男。
そのロープを外そうとした時、年寄りが「ビリー!」と救援を叫ぶと、女を連れて部屋に来た別の男が、銃でそのロープを切る。
その酒場を逃げ出す三人。年寄りはタークと言い、男はイエローレッグといった。タークの連れはビリー。
ヒラ・シティーに銀行が出来た、と強盗を誘うイエローレッグ。

 

1週間かけてその街に着く三人。イエローレッグがいろいろ指図するのが気に入らないタークとビリー。
少年にチップを与えて馬の世話を頼むイエローレッグ。隣の看板(DR.DEXTON)に目を留める。

 

街に着き、三人が酒場へ行くと、礼拝が始まると言って店を片付け始めるマスター。一角に椅子が並べられる。
集まる街の男女の中にすごい美人が。先ほどの少年を連れている。
女性らの陰口。父親も判らない子。ダンスホールの女が上品ぶっている・・・・

神父が来て、皆で讃美歌の斉唱。神父が三人に向かって、神への礼儀として帽子を取れと言う。タークとビリーは脱いだが、イエローレッグは脱がずに部屋を出た。

 

医師の診察を受けるイエローレッグ。右肩の痛みは銃弾が入っているため。手術が必要だが、完治には1ケ月かかる。治療を見送る彼に見覚えがあったデクスター医師。体格が似ている。
昔、酔った南軍の兵士が、北軍の軍曹の頭の皮を剥がそうとしていた。帽子を脱げば君かどうか判る。
それには答えないが、敵を討つ気があると言い、その相手がこの街に居る事を話す。

 

酒場。神父が「地獄へ行きたい者は立て」と挑発する場面で立ち上がるビリーとターク。景気付けに銃まで撃つビリー。そして美人の女性キットに無理やりキスをする。

店を出て、三人が件の銀行を襲おうとした時、先に強盗をした者たちが飛び出して来る。腕のいいビリーが次々に賊を倒すが、イエローレッグは、右肩の痛みで大きく狙いを外す。
その時誤って少年ミードを撃ち殺してしまう。母親は礼拝所の美人キット。イエローレッグに憎悪を燃やす。

 

父親の墓があるシリンゴに息子を埋めると言って、馬車で出るキット。
責任を感じたイエローレッグが同行しようとするが拒絶される。


途中先住民に襲われる危険があり、イエローレッグは気乗りのしないビリー、タークを連れてキットを護衛する。

途中、川で馬車が脱輪したのをビリーがを助けるが、タークがキットに迫ろうとしたためイエローレッグが追い払う。

沐浴で汚れを落とすキット。

 

イエローレッグも拒絶されて別れるが、その後キットは馬に逃げられる。予感を感じて引き返したイエローレッグは、自分の馬を繋いで旅を続ける。ようやく感謝の言葉を言うキット。

夜中、先住民から馬を奪って来たイエローレッグ。その時一人の先住民に顔を見られ、殴り倒して逃げて来た。
その後、矢で狙われている事に気付き、馬車を処分する二人(地下に埋める)。
子供の遺体をそこに埋めようとしたイエローレッグに、銃を向けて怒るキット。

 

旅を続けるうち、ようやく打ち解けて、お互いの話をする二人。イエローレッグが敵として追っている相手はターク。南北戦争の時、南軍だった彼に頭の皮を剥がされそうになった。その時の額の傷を隠すため、常に帽子で隠している。タークの事は、たまたま仲間になった時気付いた。
キットの夫はミード・ティルドン。新婚でヒラ・シティーに向かう途中、先住民に殺された。だから街の者は子供を私生児だと思っている。それが悔しい。

 

先住民から執拗な追跡を受ける二人。途中の野宿で馬も殺された。
二人で棺を持って歩く二人。洞窟を見つけて泊まろうとする。イエローレッグは外で敵を探していた。
一人で居たキットに洞窟の上から先住民が近づく。

危ういところで先住民をライフルで倒すキット。


ようやくシリンゴに着き、夫の墓を探すが見つからない。悲嘆にくれるキット。
だがイエローレッグが、倒れた柵の下から何とか墓標を見つける。
喜んだのもつかの間、ビリーとタークが姿を現した。街で銀行強盗をやって逃げて来ていた。
ビリーが、イエローレッグに仇を討たせてやろうとお膳立てをする。

それを知って逃げ出すターク。追うイエローレッグ。

だがイエローレッグはまともに銃が撃てない。
建物の屋上に逃げたタークを撃つビリー。重傷を負ったタークは仕返しにビリーを撃つ、倒れるビリー。

上階に上ってタークに迫るイエローレッグ。動けないタークに、あの時置いて行った彼のナイフを出して、同じ様に頭の皮を剥がそうとする。
その時入って来たキットがそれを止める。彼女を追い払うが、どうしても頭を剥ぐなど出来ない。
そのまま出て来たイエローレッグを抱きしめるキット。

 

そこにビリーらを追って街の者が多数駆け付ける。自分の金になると皆真剣になる。
神父に、キットの息子ミードを葬ってくれるよう頼むイエローレッグ。

埋葬も済ませ、キットと共に馬で進んで行くイエローレッグ。

 

 

 

 

第二ファウンデーション (銀河帝国興亡史③)発表:1953年 アイザック・アシモフ

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「ファウンデーション」「ファウンデーション対帝国」まとめ
何万年も持続した第一銀河帝国。その中にあって、帝国の衰退を予見したのがハリ・セルダン。
その根拠となる心理歴史学。帝国の滅亡後、勃興まで三万年かかるところを一千年で回復させるため、銀河系の両端に設置された二つのファウンデーション。
第一ファウンデーションの最初の三百年が先の二冊で語られた。

卓越した科学を利用して、周囲を併合しながら拡大するも、ただ一人の突然変異体、ミュールにより破れた第一ファウンデーション。
未だ見つからない第二ファウンデーション。銀河全体を征服しようとするミュールと、第一ファウンデーションとの、探索を巡る戦いが始まる。


超あらすじ
第一部 ミュールによる探索
ミュールの指示により、第二ファウンデーション探索の旅に出るハン・プリッチャ-中将とベイル・チャニス。
チャニスが拡大映像モニター<レンズ>により、自身が考える第二ファウンデーション「タゼンダ」に向かって船を進める。
船の追跡装置「ハイパートレイサー」を見つけるチャニスだが、そのまま戻す。
タゼンダの周辺星「ロッサム」で住民とコンタクトを取る二人。その星の総督と話をするが、会見は不調に終わる。
チャニスがここまで何の迷いもなく到達した事に不審を抱き、銃を向けるプリッチャー。
チャニスがハイパートレイサーの話をする。プリッチャーはミュールが仕掛けたものと考えていたが、チャニスは第二ファウンデーション員が取付けたものだと攪乱。
そこに到着したミュール。装置は彼が取り付けたもの。ミュールは最初からチャニスを疑っていた。
時間かせぎをして応援を待つチャニスだったが、ミュールは艦隊を引き連れており、タゼンダを総攻撃した。その上チャニスの深層心理を暴いて、本当の第二ファウンデーションがロッサムである事を知る。

そこに現れる第二ファウンデーションの第一発言者。チャニスの情報はニセモノであり、ロッサムは第二ファウンデーションではない。ミュールの艦隊は第二ファウンデーション員により転向を解かれていた。
感情のスキを突いてミュールの心を改変させた第一発言者。

 

第二部 ファウンデーションによる探索
第二ファウンデーションの位置を探索するために、ダレル博士を含む五人のメンバーが結集。
カルガンの、ミュールが治めていた時の宮殿に秘密を求めて、ホマー・マンが送り込まれるが、その船に密航したダレルの娘アーカディア。
カルガン君主へのとりなしにカリア夫人、アーカディアが貢献するが、勘違いをさせて、君主はファウンデーションへの宣戦布告を準備。
君主の望む情報が出ないため危機に陥るマン。アーカディアも危なかったが、カリア夫人が逃がす。
空港でプリーム・パルヴァー夫妻に助けられ、トランターまで逃げ延びるアーカディア。

カルガンとファウンデーションとの戦争が始まる。

勝利を信じ込む君主。
六ヶ月かかった戦争は、君主側の敗北で終わった。

ホマー・マン派遣の総括で再び集まる五人。第二ファウンデーションの位置を巡って議論が交錯。
ダレル博士が「精神空電装置」を使ってペレアス・アンソーアが第二ファウンデーション員である事を暴いた。第二ファウンデーションの位置は、このターミナスだと話すダレル。彼らは五十名程度で、この装置により根絶が可能。
ダレルが危惧したアーカディアへの脳コントロール。

だが彼女は影響されていなかった。

本当の真相
ターミナスを第二ファウンデーションとして、メンバーを全滅させる事自体が偽装。
アーカディアは生まれた時にコントロールを受けており、痕跡が残らない。セルダン・プランでは第一ファウンデーション員には絶対に第二ファウンデーション員の存在を隠さなくてはならない。
トランターで銀河を見つめる第一発言者--プリーム・パルヴァー。

 

文庫第一期

文庫第二期

 

アーカディアのイメージ


年表
ファウンデーション紀元による整理(番号は巻数)
①   0年 ターミナスへの移住
①  50年 ハーディンの無血クーデター。近隣四ケ国との共栄。
①  80年 アナクレオン叛乱を経ての支配。他国への統治拡大。
① 160年 貿易商人による統治(ホバー・マロウ)

                  コレル共和国支配。
② 200年 ベル・リオーズの台頭と逮捕
② 310年 ミュールによるファウンデーション危機
③ 315年 ミュールによる探索
③ 376年 ファウンデーションによる探索


感想
ミュールが、ベイタにより正体を暴かれて以降行った、第二ファウンデーション探索の顛末を語るのが第一部。
チャニスが、宇宙に出る前にタゼンダにターゲットを合わせて出航するのは、いくら何でも判り易すぎた。もう少し寄り道しても良かったか。
ロッサムへの寄港についてもやや不満。本丸はタゼンダなんだから、どうしてそっちの方向へ話が行かないのか。

そんな訳で、第一部についてはあまり意外性がなかった。

第二部は、ファウンデーションにおける第二ファウンデーションの探索。
ファウンデーションは、ミュールが骨抜きにされ、その後死んでからは、支配されたと言っても各君主の世襲、選挙等で緩やかに元々のファウンデーションに戻って行った。

探索については、エブリング・ミスを射殺したベイタの息子である、ダレル博士がキーマン。
ミュールが治めていたカルガンに秘密があるという前提で、ホマー・マンを送り込んだのに、要するに君主にファウンデーション征服の野望を持たせ、戦争へ飛び込ませただけ。

ただ戦争が終わり、五人の会合でもアンソーアが、第二ファウンデーションをカルガンだと主張したのには、やや微笑。
アンソーアが第二ファウンデーション員だと暴いて、残ったメンバー殲滅の道筋を付けたダレル。
だがその下にもう一枚あったというのには驚いた。
生まれた時からコントロールされていたアーカディア。

ここまで来ると、第二ファウンデーション員の冷血さが際立つ。

 

アシモフの「ファウンデーション」シリーズは、ここで一応完結したが、それから約30年経って続編が作られた。

 


第一部 ミュールによる探索

1 二人の男とミュール
ミュールが五年かけて手に入れたファウンデーションを含むある領域。その拡張を停止し、五年かけて強化した。

そして構築された<連邦>。ミュールの堅実な支配の下の平和。
過去の指導者は去り、有能な転向者がその運営を担った。最も役に立ったのはハン・プリッチャ-中将。
ミュールに招聘されて向かうところ。

一方、ベイル・チャニスという男が居る。非転向者。まだ二十代でハンサム。第二ファウンデーションを恐れず、ミュールも恐れていなかった。
チャニスもミュールの招聘を受けていた。

首都は、征服したファウンデーションより近いカルガンに設定している。
ミュールと面会するプリッチャー。特異な体型のミュール。
この五年間、第二ファウンデーションを探し続けて来たミュール。もう三十二歳。精神はともかく、肉体は弱っている。
プリッチャーの報告に落胆した、とミュール。第二ファウンデーションなど存在しない、と断ずるプリッチャーに、エブリング・ミスがあと一分長く生きていれば知る事が出来たと言うミュール。
言い合っても結論のない話。

 

戦術を変えると言うミュール。ベイル・チャニスという若い男とプリッチャーと共同での探索を指示。
非転向者である点にこだわるプリッチャー。

非転向者としての探索への利点を説くミュール。
だが完全に信用出来ないから君が必要、と言われて納得するプリッチャー。

 

プリッチャーを帰し、次いでチャニスと会談するミュール。
指令を受けて、第二ファウンデーションの存在を信じていると言うチャニス。その方が、物事が面白くなる。
プリッチャーの否定に対し、自分の精神が微妙に干渉を受けている事を話すミュール。
それは別のミュータントの仕業では?と聞くチャニスを否定するミュール。チャニスの心にある、過度の報酬の希望を覚って、軽い精神攻撃を加えるミュール。耐えがたい衝撃。

第一の幕間劇
第二ファウンデーションにおける行政評議会。談話の必要がないコミュニケーション。
ミュールが拡大路線を止めた理由への言及。心理学者が我々の位置を告げる直前に殺された事件。それに介在する若い女性。
第一発言者の声。
ミュールに対する脅威をオーソドックスでない方法で防いでいる事が、セルダンの歴史計画全体を損なっている。だからミュールが我々を見つけるのを放置しなくてはならない。

 

2 ミュール抜きの二人の男
プリッチャーとチャニスが宇宙船で出掛けようとする時、ミュールがトランターへ戻ると言った。プリッチャーは「出し殻だ」と言って不賛成。

宇宙船の操縦室。チャニスがプリッチャーのノートを読んで興奮していた。第二ファウンデーション探索の経緯を記したもの。

チャニスの言う「精神学の技術によって支配しているが、科学的には遅れている世界」に叶う場所として「タゼンダ」の可能性。

第二ファウンデーションが「世界の果て(Starsend)」とも言われている。Tazendaとの語感の類似。
<レンズ>での確認を提案するチャニス。銀河系内の拡大映像モニター。超空間を疾走する感覚。星雲の裂け目の小さな口を拡大した先にたった一つの星が光っていた。

突然ある事に気付いたプリッチャー。船が既に宇宙へ飛び出していた。<レンズ>の視野を拡大している時に発進したので気付かれなかった。
本来なら三日後に出発する筈だったのを早めた。チャニスは第二ファウンデーションのスパイの可能性を危惧していた。

ハクスラニ機関長が通信回路から見つけた部品を見るチャニス。ハイパートレイサー(追跡装置)。それを元の位置に戻すよう指示して「この件は忘れろ」と言うチャニス。

<レンズ>はハイパースペース航法のためには必須の設備。何度かのジャンプで、タゼンダにはあと一回で到着するところまで近づいた。
チャニスの目を盗んでハイパートレイサーの点検をするプリッチャー。

第二の幕間劇
何かの到来を伝える非公式の会合。

 

3 二人の男と一人の農夫
タゼンダの支配を受けている星ロッサム。寒冷で痩せた土地。タゼンダからの徴税を受けている。

ジェントリ村にはタゼンダ人の駐屯所がある。
そんな星に小型船で降り立ったプリッチャーとチャニス。

村人から聞くこの周辺の状況。まずは長老との顔合せ。

第三の幕間劇
ミュールの部下は、計画通りに反応しつつあった。

 

4 二人の男と長老たち
長老たちとの面会。形式的な挨拶の後、俄然打ち解けて質問責めをされる。質問で丁寧に答えるプリッチャーだが、チャニスがタゼンダの事について教えて欲しいと言ったとたん黙り込む。
どうにかプリッチャーがとりなして、今までの時代についての話を少し聞けた。
プリッチャーが長老に、あなたがたの総督に会わせて欲しいと言うと、明日ここに来るという。そして一週間も前から予期していたとも。
翌日ロッセムの総督がやって来た。精神操作を恐れて緊張するプリッチャー。
食事が終わり、総督が、あなたがたの船について、点検修理の手配をしたいが見つからないと言う。
母船は宇宙に残してある、とプリッチャー。だが納得しない総督。
貿易関係の話をタゼンダと行いたいという話に理解を示すも、総督は船の点検に固執した。
プリッチャーはそれを拒否し、総督との会見は終わった。

 

5 一人の男とミュール
総督との会見結果について話し合うプリッチャーとチャニス。

もし彼が第二ファウンデーション員だったとしたら、という仮定の話を続ける二人。
プリッチャーがチャニスに原子銃を向ける。チャニスがいかにも容易に第二ファウンデーションを見つけた事があり得ない偶然。
動じないチャニスは、通信回路に取り付けたハイパートレイサーの話を始める。
プリッチャーが干渉を受けていると指摘。ハイパートレイサーを誰が取り付けたかはプリッチャー自身見ていない。

ミュールがやったとの推定。
あの部品は第二ファウンデーション員が取り付けたものだとの示唆。自分に自信がなくなって来るプリッチャー。

プリッチャーがチャニスに原子銃を渡しそうになった時、後ろのドアが開いた。
「その銃は持っていたまえ」ミュールだった。ハイパートレイサーはミュールが取り付けたもの。
ミュールはチャニスを第二ファウンデーション員だと断じた。

非転向者で物事の中心に近い。該当する人間は多くない。その中で君は成功しすぎた。
そしてこの指令に与え、ミュールが精神操作をした時、一瞬抵抗を見せた。今まで一瞬でもミュールに抵抗出来た者はいなかった。

ミュールがチャニスを撃とうとした瞬間、チャニスの感情的潜在力が盛り上がり、引き金を止めた。
そして次にプリッチャーが急変し、憎悪の顔をミュールに向けた。
チャニスがプリッチャーの転向工作を解除していた。かつてミュールを殺そうとしていた五年前のプリッチャー。ミュールは諦めて銃を捨て、部屋の端に蹴った。

 

6 一人の男、ミュール--そしてもう一人の男
対峙するミュールとチャニス。互いに感情の攻撃が出来る者。

チャニスは自分が負ける事を知った。
時間かせぎをするため、チャニスは饒舌になった。
チャニスはおとり。ミュールが後を追って来た時、仲間に始末させる計画。そのための時間かせぎ。
だがミュールは大艦隊をタゼンダに向けて発進させていた。

今ごろタゼンダは廃墟になっている。
更に精神攻撃をかけるミュール。タゼンダが破壊されたと聞いても、チャニスの絶望は見せかけ。
ミュールが容赦なく相手の感情を掻きむしった。
タゼンダは看板、ロッセムこそ、その世界・・・・崩れ折れるチャニス。

タゼンダの後でロッサムを始末すればよい・・・勝利をおさめて笑うミュール。

ドアが開いて、そこに第一発言者の姿があった。

彼の精神的影響力が届き、安堵するチャニス。
五年前、ミュールの将来について計算を誤ったのが第一発言者。

そして今回、ミュールの攻撃も予測していた。
ミュールや第一発言者の持つ感情コンタクトは、人間の脳に含まれているもの。だが言語の発達と共に退化した。
第二ファウンデーションでは、それを回復させた。

教育によってそれを引き出し、鍛錬した。

ロッセムも全滅する話を第一発言者にするミュール。

チャニスが、つい十分前に精神攻撃でそれを引き出された事を話す。
動じない第一発言者。三年間、第二ファウンデーションはタゼンダで見せかけを作り上げ、君を待っていた。
チャニスは、ロッサムの記憶も含め、全てを信じてこのミッションに送り込まれた。
そしてミュールの派遣した艦隊へは第二ファウンデーション員らが多数向かっており、転向を解く。再転向は不可能。
ミュールが絶望感で心を開いた瞬間、第一発言者はその心に入り、彼の心を変化させた。
平和愛好家となったミュール。だが肉体のハンデのため、あと数年の命。

最後の幕間劇
ベッドで寛ぐベイル・チャニス。失語症になっていた。
回復の期間を過ぎて言葉を取り戻したチャニス。

第一発言者が付き添う。
「今は第二ファウンデーションはどこにあるか知っているかね?」頷くチャニス。

 

 

第二部 ファウンデーションによる探索

 

7 アーカディア
アーカディア・ダレル。十四歳の少女。音声転写機を使って学校の課題である「セルダン・プランの将来」についての口述を行っている。
アーカディアは、かつてミュールの正体を暴き、第二ファウンデーションの位置が明らかになるのを阻止したベイタ・ダレルの孫。周知の事実だが、この部分の表現に苦慮するアーカディア。

そんな時に窓の外の男と目が合う。窓を開けると三十歳ぐらいの大人。ダレル博士の家だろ?と聞く男。入ってもだめ、逃げてもだめと難題を出すアーカディア。
許可を受けて窓から入った男はペレアス・アンソーアと名乗った。

ここ最近の様子から、父親が彼を待っていたと推理するアーカディア。
床をどすん、どすんと蹴ると、父親が飛んで来た。アンソーアとは初対面だが、彼からの手紙を受け取っていた。
訪問の目的について「第二ファウンデーションよ」とあてずっぽうに言うと、しばらく沈黙。不安がよぎる。

 

8 セルダン・プラン
セルダン・プランが完全に保管されている--ある部屋。

その部屋の中に第二ファウンデーションが存在している。
その部屋に居る第一発言者。プラン監視者としては十二代目。

彼の前任者がミュールを打ち破った。その影響は消えず二十五年間に亘って軌道修正の努力を続けている。
そこを訪れる「学生」。会話は精神的なもの。

その学生は優秀なるが故に、発言者の見習いとして選ばれた。
発言者になる事の困難さを説く第一発言者。
学生の前に出される基本輻射体。セルダン・プランの全体を壁面に投射する装置。彼が学んで来た部分が拡大して提示され、それについての説明を求められる。
だが、このプランは完成されたものではなく、点検し組み立て直されて来た。発言者となる前に、プランに対して独創的な貢献をする必要があると言う第一発言者。
第一発言者の提示する課題。約半世紀前、プランに現れた分岐。その時期に現れ、約十年に亘ってプランを捻じ曲げた「ミュール」。

その対応のために、第二ファウンデーションの存在が第一ファウンデーションに知られてしまった。
この時点でセルダン・プランの成功率は21.4.%。

課題を共有する学生。

 

9 陰謀者たち
ダレル博士とペレアス・アンソーアとの交際は世間の注目を集める事なく続いた。
一方アーカディアは、その方面に技術のある友人から盗聴器のプレゼントを受け、その事を相手が忘れる程度の期間のつきあいを経て、疎遠になって行った。

ダレル博士を含め、家に集まった五人。ダレル博士、ペレアス・アンソーアの他に放映記者のジョウル・ターバー、物理学のエルヴェット・セミック博士と図書館員のホマー・マン。
ダレル博士の言葉。秘密の集まりではない事を強調。

敵の注意を引けば一巻の終わり。その話を盗聴するアーカディア。

アンソーアが紹介される。ダレル博士の同僚で、昨年死んだ電子神経学者のクライゼに師事していた。
話を始める前に、皆の脳波データが必要だと言うアンソーア。

彼のデータは既にダレル博士が持っている。実験室で皆のデータが採取される。全員が終わった時、アーカディアのものも必要だと言う。

呼ばれて電極を付けられ、同じ測定を受け、また戻るアーカディア。

次にアンソーアが数十枚の記録を皆に見せる。前頭葉から出るタウ波の中にあるプラトー状の部分。

この被験者は下級職員、心理学者、産業資本家等、様々な業種。
ダレル博士の所見では、激烈な脳外科手術を受けた印象。脳の何かが切除された形跡(肉体的でなく)。ミュールもしくは第二ファウンデーションの者だったらこうなるだろう。
アンソーアはクライゼの下で研究を続けるうちにこれを知った。
人工的な精神状態、干渉を受けていると言うダレル博士。かつてクライゼ博士と一緒に研究していたが、途中で手を引いた。

先にアンソーアが行った検査はこれのチェック。
考えられる脅威は、第二ファウンデーションの浸透。
この浸透の度合いは不明。

第二ファウンデーションの情報がもっと必要。
ミュールは、支配の最初の五年間、その情報を求め続けたが、急に探索をやめた。その秘密を知るには、ミュールの首都だったカルガンにある、ミュールの宮殿を調べる必要がある。
アンソーアが、ホマー・マンに向き合う。図書館員であるマンは従来からミュール関係の資料集めをしており、宮殿に入る申請を出しても何の不自然もない。気の進まないマン。

 

10 迫りくる危機
第二ファウンデーションでの二週間が過ぎ、再び呼ばれた学生。
学生の分析。第二ファウンデーションの存在を知った第一ファウンデーションの者の対応は、目的を持って歩く事の放棄、退行が考えられる。
もう一つの危惧は、彼らが心理学者になろうとする事。
それは実際に起こっている・・・・と第一発言者。低い確率だが、プランの歴史上初めて一個人の行動がそれを破壊する事が可能。

解決策も進めつつある。
その危機回避の成否が判るのは一年以内。

 

11 密航者
一ケ月ほど経ち、小型宇宙クルーザー「ユニマラ」号でターミナスから出航するホマー・マン。

与えられたミッションを行うため、カルガンに向かう。
ダレル博士の家で起きている事件。アーカディアの家出。

至急アンソーアを呼び寄せるダレル博士。
取り乱すアンソーアに、置き土産の盗聴器を見せるダレル。

アーカディアは彼らの会話の一員だった。
マンは彼の二十年来の友人。姪を連れての旅行となれば、スパイを疑う者はいない。

ユニマラ号の中でのアーカディア。何度かのハイパージャンプの後、マンに見つかった。度を失うマン。
冷静に状況を説明するアーカディア。

盗聴器で彼らの話を全部知っていると聞いてがく然とする。
次いで父からのメッセージ「楽しんでいらっしゃい」。
それ以降の船内で、アーカディアのおしゃべりに救われるマン。
船は、次のハイパースペースだけを残すのみとなった。

 

12 君主
カルガンの歴史。最初は銀河系の娯楽施設として栄えた。だがミュールが来ると、その娯楽に無感覚な対応のため、カルガンは没落。
ミュールの死後、それが回復する事はなく、ファウンデーションも離脱した。
今のカルガン君主はステッティン卿。やり手で御しがたい人物。
君主と、妻のカリア夫人、第一大臣のレヴ・メイルスとの会話。
ファウンデーションへの攻撃を検討している君主に対し反対するカリア夫人。

ファウンデーションからの訪問者を話題にする君主。

宮殿への立ち入り許可を求めている。それに反対するメイルス。
同行している少女と会いたいと言うカリア夫人。子供が欲しいという裏の心を知って笑う君主。

 

13 貴婦人
カリア夫人に面会するアーカディア。夫人はさほど頭が良くは見えなかった。
宮殿内部を見るという、マンの計画が失敗すると予想しているアーカディアは、夫人に話を持ち掛ける。
君主は新帝国の中核になる可能性を持っている。だからそれをはっきりさせるためにマンが記録を調べようとしている。

君主は、荒れた気分になっていた。ファウンデーションから来た「腰抜け」との実りのない折衝。呪いに対する恐怖もある。
そこへ話しに来た夫人。セルダン・プランが変更されて、君主が帝国を作るために動いている。ミュールの宮殿にその証拠がある。
君主が出した二つの命令。一つは宮殿立ち入りの許可。もう一つは演習名目での戦艦五百隻の出航。

 

14 不安
カルガンからの攻撃を受けているファウンデーション。
今までの経緯を思い出すダレル。クライゼとの共同研究は順調だったが、彼は単なるデータ収集家。
彼と別れてダレルは一人で研究を続け、大脳に関する限り、第二ファウンデーション員が人間でない事を突き止めた。
だがそんな時にクライゼが、アンソーアという弟子を使って戻って来た。干渉された人間の脳波など今では意味がない。

陰謀の中で陰謀を続けたダレル。

寒々とした控室に留め置かれるアーカディア。

マンは君主のところに居る。
二週間、宮殿の中で調べを進めるマン。
マンに詰問する君主。帝国の勝利者になるための証拠を求めている。少女がベイタ・ダレルの親族だという事も知られていた。アーカディアの年齢を聞く君主。時が経過すれば、娘は女になる。

カリア夫人がアーカディアを逃がすために手を尽くしていた。裏の通路を通り、変装のための衣装を着せた。君主はあの人を留めておくが、あなたは留まってはいけない。
館の外に出てしばらく走り、夫人は彼女を置いて館に戻って行った。

一瞬見せた冷たい楽しみの表情。
夫人が第二ファウンデーションの女だと知ったアーカディア。

エア・タクシーを拾って乗り込むアーカディア。夫人から金も貰っていた。空港へ急ぐ。
宇宙空港で降りたアーカディア。どうしても逃げなくてはならない。

だがその場所はファウンデーションではない。
切符販売機の前でも迷うアーカディア。彼女だけが第二ファウンデーションの位置を知ったから。

 

15 格子を抜けて
後ろからの声に気がつき、切符販売機に金を入れるアーカディア。

思わず「トランター」を押す。切符を取って逃げるように立ち去る。
不意に誰かにぶつかり、腕を掴まれる。小柄で小太りの男。

続けてその妻が来て、夫の不作法を詫びる。
彼女が誰かから逃げていたと言う夫。
助けてあげるわ、という言葉に涙を流すアーカディア。落ち着いた彼女は身分証を出す。
叔父が逮捕され、ステッティン卿から逃げて来た事を話すと、その先を汲み取った妻。
その時、空港内で逃亡者の捜索に関する放送が響き、区画の格子が降ろされ始めた。
身を隠すため婦人トイレに連れて行かれるアーカディア。

その後警官に身分証を提出する夫。プリーム・パルヴァー。カルガンに一ケ月滞在してトランターに帰るところ。農協の貿易代表。

妻はトイレだと言うが、待つ警官。夫は同伴者に姪が居ると告知。
妻がアーカディアを連れて戻って来る。妻に続いてアーカディアの身分証を要求する警官。促されて身分証を出すアーカディア。

だが警官は、確認後それを返し、皆は解放された。

乗船した後、パルヴァーは種明かしをした。

身分証と同時に渡した賄賂。
だがアーカディアは、この事が、彼女を逃がすために仕組まれたものだと直感した。

 

16 戦争の始まり
アーカディアがターミナスを出てから二十三日目。この間身動きが取れなかったダレル博士。
物理学者エルヴェット・セミックに、シムズ-モルフ共振器の小型化を依頼するダレル博士。要求はベルトに吊るせるサイズ。
アンソーアがディリジ警部補を連れて来た。

カルガンでアーカディアの姿を最後に見た者。
ディリジは故意にアーカディアを逃がした。賄賂が効いたわけではない。ディリジはファウンデーション人。
アーカディアはトランターに居るという。

トランターで無事に居るがいい、とダレル。
彼女がトランターに行った理由をいろいろ推察するアンソーア。

そして帰らせたディリジの脳波がコントロールされたものだと報告。

第二ファウンデーション員だった。
アーカディアのリードに従ってトランターに移る事を提案するアンソーア。だが留まるつもりのダレル。

 

17 戦争
ファウンデーション市長と、カルガンとの戦いについて意見を交わすダレル博士。距離的な要素を考慮すると、ファウンデーションが不利。
カルガンの君主は自国の勝利を確信。根拠はホマー・マンの情報。

カリアがいるところでは面白い情報を出す。

 

18 ある世界の幻影
トランターでプリーム・パルヴァー夫妻の世話になって、もう三ヶ月経つアーカディア。疼く良心。
プリームが、カルガンとファウンデーションとの戦争の話題を出す。

気を使って制する妻。
アーカディアが、かつてのファウンデーションの戦いを話す。

食糧難のため、闇値でいい商売が出来る。
二週間後、食料を運ぶ船の手配を済ませたプリーム。ターミナスへ行くという彼に、父への伝言を頼むアーカディア。それは五語の言葉。

 

19 戦争の終わり
例の五人メンバーの一人ジョウル・ターバーは、従軍記者として最前線の兵士を取材していた。
そんなところへ小男が捕虜としてターバーの前に引き出されて来た。男はプリーム・パルヴァーと言い、ダレル博士に会いたいと話した。アーカディアは無事。
提督と交渉して、戦闘が終わったら彼をターミナスに届ける約束を取り付けるターバー。
戦闘はファウンデーションの勝利。ターミナスに着いたプリームは、ダレル博士に五語の言葉を伝え、食料供給の協定も締結した。

父親から返事を託されるプリーム。

大きな敗北を喫して挫折感を味わうステッティン卿。側近たちが最後の引導を渡す。
そして年が明け、六ヶ月以上要した戦争が終息した。

解放されるホマー・マン。

 

20 わたしは知っている・・・
ダレル博士は終戦から数週間後にターミナスの自宅へ帰り、その日が五人の集会日となった。
勝利を喜ぶターバーに対し、アンソーアが不機嫌に「けちな喧嘩に勝っただけ」と言った。
そして第二ファウンデーションの事についての話を要求する。
ホマー・マンが、カルガンで行った調査の経緯を話した。そして第二ファウンデーションは存在しないと結論付けた。マンの話す数々の裏付け。
だがアンソーアはそれを嘘だと言い、彼が以前とは違う人間だと断じた。そしてここの全員に脳波検査を要求した。次々にテストされる面々。そしてマンがテストされた。
ダレルがマンの肩を押さえて言った「君はいじられている・・・」

アンソーアが、第二ファウンデーションの場所を知っていると言う。

それはカルガン。
だがセルダンは、銀河の両端に二つのファウンデーションを設立したと言った、とセミックが聞く。
それは小さな問題だとかわすアンソーア。プランの保存を目的とすれば、第一ファウンデーションの近くにあるべき。
その案を否定しないダレル。
ダレルは、独自で続けていた脳写分析について話を始める。人間にあると仮定する「精神共鳴器官」。磁気フィールドの様なエネルギーをそこに加える事で精神の調節を行わせる。
セミックの助けで「精神空電装置」というべきものを作った。

特定のエリアで精神干渉を遮断するもの。
続けるダレル。「カルガンは第二ファウンデーションではない」そして「私は第二ファウンデーションがどこにあるか知っている」

 

21 納得のいく解答
ダレルは、アーカディアからのメッセージ「円 には 端 が ない」を伝えた。
平たいレンズ状の銀河系。その端にあるターミナス。反対側の端を探してどんどん進んでも、その端はない。出発点に戻るだけ。

そこに第二ファウンデーションがある。
懐疑的な表情のアンソーア。だが隣人にそういう者が居るのなら空電装置には意味がない。
ダレルが続ける。盲人に対しては役に立たないが、健常者に効果がある武器は? 例えば目つぶしのライト。
空電装置は強力な電磁パターンの放射が可能。
興味を示すアンソーア。これがその装置だと言って彼に渡すダレル。言われた様に操作するが何も起こらない。
それは模造品だと言って上着を脱ぐダレル。そこに本物があり、ダレルがノブを最大に回した。
絶叫を上げて床に倒れるアンソーア。

アンソーアが回復するのに数分を要し、水を飲ませて落ち着かせた。
物理学者が脳波に着目し始めた事を知って、対策が必要になった。カルガンが宣戦布告するようにマンを送り込んだ。カリアは我々の仲間。
アーカディアの事は予想外。カリアが誘導してトランターに行かせた。
ダレルをコントロールしなかったのは、そういう命令だったから。

必要以上の関与は計画をダメにする。
メンバーの人数は五十人程度。数人は宇宙に出ている。
そこまで言って気絶したアンソーア。ダレルは最初からアンソーアを疑っていた。メンバーは装置により根絶可能。
だがダレルの危惧。直面しなくてはならないもの。

アーカディアが帰宅して二週間。あの考えについての確認を迫られるダレル。
両方のファウンデーションがターミナスにある事を、どうやって判断したのか。
アーカディアは、自分で確信が持てたと言ったが、直感は疑わしいと言うダレル。コントロールされていた疑い。
アーカディアに、脳写分析をさせて欲しいと頼むダレル。

そして行われたテスト。
全てのテストが終わり、父親の笑い声を聞くアーカディア。
これで元の生活に戻れる・・・・

 

22 正解
位置不明の部屋。目論見通りに行った計画。
第一発言者と学生の会話。五十人の男女による殉教。

探知を恐れて、指導は出来なかった。
手の込んだ計画--第一ファウンデーションの人々に、第二ファウンデーションの位置を突きとめ、亡ぼしたと確信させる必要があった。
アーカディアが我々の道具だと気付かれる確率は30%だった。
もし気付かれても、脳写分析でも証拠が残らない「干渉プラトー」の技術で対応出来る。
痕跡を残さずに、ある個人をコントロールするためには、新生児からの操作が必要。アーカディア・ダレルは、自分がコントロールされている事を決して知らなかった。

第二ファウンデーションは、トランター。
エブリング・ミスが我々を発見したのが、このトランター。その公表を阻止するための工作をファウンデーションの娘に行わせた。
自分自身に対する説明を終え、銀河を見つめる第一発信者--プリーム・パルヴァー。

 

 

 


ペンギン・ハイウェイ     2018年

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監督    石田祐康
脚本    上田誠
原作    森見登美彦

主題歌  宇多田ヒカル「Good Night」

 

キャスト
アオヤマ君            - 北香那
お姉さん              - 蒼井優
ウチダ君              - 釘宮理恵
ハマモトさん            - 潘めぐみ
スズキ君              - 福井美樹
アオヤマ君のお母さん   - 能登麻美子
アオヤマ君の妹        - 久野美咲
アオヤマ君のお父さん   - 西島秀俊
ハマモトさんのお父さん  - 竹中直人

 

 

予告1

予告2

 

感想
最近アニメ観ていないので「未来のミライ」と天秤にかけてこちらに。
科学好きの少年が、不思議な体験をするストーリー。

賛否が分かれている様だが、自分的には「アリ」。

 

サワリで相対性理論が出て来たが、この現象はちょっと方向性が違うだろう。お父さんとの会話や終盤で良く言われているのが「世界の果て」。ただ、お父さんの言っていた「袋を裏返すと、外の世界が内側に潜り込む」というのとの食い付きはあまり良くない。
これで思い出したのはTV版の「新世紀エヴァンゲリオン」に出て来た使徒レリエル。ディラックの海という厚さ3ナノメートルの虚数空間。

それのダミーとして白黒ツートンの球体を出現させる。
球体に入る事で広大に広がる空間に取り込まれる。
今回ストーリーで扱うとしたら多分「虚数」カナ?。まあ、いいけど・・・・
そういえばエヴァでも「ペンペン」とかいうペンギンがミサトの家の住民だったナ。
「スタニスワフ症候群」は「ソラリス」の作者スタニスワフ・レムへのリスペクトやね。

 

お姉さんの存在が、結局はっきりとは判らない。自分がペンギンを出せる理由、最終的にアオヤマ君が導きだした「人間ではない」事などを最初から知っていたのかどうか。
映画ではアオヤマ君に「調べてみなさい」と言って、彼の研究が進むにつれて自分も知って行くという体裁を取っているが、最初から全部判っていたという見方も出来る。
事件が終わった後で、お姉さんの部屋の荷物が出される場面があったから、それまで確かに生活していた証しは残っていた。

謎は謎として、か・・・・・
予告で蒼井優の声にすごく違和感があったが、人間でない設定ならむしろアリかも(笑)

 

「おっぱい」の連呼にどうも違和感。小4のガキが憧れるものとして、お母さんとは違う物体という意識は判るが、別にこれをストーリーに持ち出す必要はない。

小4にもなればおっぱい(その他含む)見ればまず勃起してもおかしくない。生々しくなる覚悟もなくネジ込むのは軽率(研究対象にするのはキケンだよ、アオヤマ君)
単なる年上の女性に対する憧れの象徴とするなら、もっと控えめ(上品)に。

 

今回ストーリーは海がなく、緑が残る中堅都市で「海」を見た子供たちのファンタジーという解釈をしている。

街並みや、研究対象の「アマゾン」小川の源流を追う中の景色、森の中の広場に出現した「海」。これらの風景が、心地よい空気感を持って流れて来る。
この辺はジブリ映画の得意とするところだが、くっきりとしていない、ちょっとパステル系が入った様な表現は郷愁を誘う。

 

マスコミまで巻き込む事件ではなく、あくまでもローカルな出来事として扱った方が良かったか。

研究者が寄ってたかって小4に敵わないというのも情けないし・・・・
それから、お姉さんがペンギンと共に出してしまうジャバウォック。ペンギンを食べてしまうらしいが、これの位置付けがイマイチ不可解。単に物語の増量剤というのなら、入れてもしようがない。

水路の源流が見つからず、ぐるぐる回っているという事も、途中で打ち捨てられ、中途半端・・・

 

「海」の解釈(アオヤマ君なりの)

この世の破けたところ、もしくはこの世の内側に潜り込んだ、世界の果てかも知れない。

 

「おねいさん」にちょっと憧れる、少年時代の甘酸っぱい記憶は男なら誰でもあるだろうし、その辺をくすぐられると、まあ許してしまうか・・・・
最後にアオヤマ君の決意表明のような独白。

それに続いて宇多田ヒカルのテーマ曲は、十分余韻を楽しめた。

 

トレイラー(エンディング曲)

 

あらすじ
小学4年のアオヤマ君。

勉学に努力する事で偉くなれると信じるマジメな少年。
朝の通学時、空き地でペンギンを見かける。

この件について研究しなくてはならない。


ペンギンの話は学校でも騒がれていた。
その件でウチダ君に暴力をふるうスズキ君。いじめっ子。
ウチダ君とは研究仲間。今の研究テーマは「プロジェクト・アマゾン」。近くを流れる川の源流を突きとめるもの。

クラスの女子ハマモトさんはチェスがすごく強く、負ける事が多いアオヤマ君。彼女はアオヤマ君が読んだ「相対性理論」も読んでいた。

 

放課後歯科医院に行くアオヤマ君。そこに居たスズキ君に虫歯の病気(スタニスワフ症候群)で全部抜かないと死ぬ、と脅す。
医院で働いているお姉さんとは友達。彼女もペンギンの話は知っていた。「謎だね」

 

ペンギンが海から陸に上がる時、決まって辿るルートを「ペンギン・ハイウェイ」と言う。これをプロジェクト名としてノートを作るアオヤマ君。

ウチダ君と共に目撃者へのインタビュー。

喫茶店でお姉さんとチェス勝負。彼女が師匠。

疲れて寝てしまったところへアオヤマ君のお父さんが迎えに来る。
調査中にペンギンを見つけて追いかけるアオヤマ君とウチダ君。森の入り口で見失った。この先は「銀の月」が出るという噂。見た子は病気になるという。
帰り道でスズキ君たちに見つかり、歯医者での仕返しだと自販機に縛られるアオヤマ君。
その後顔を出すお姉さんに助けられる。乳歯が抜けそうなので、それを抜くのに歯を糸で縛られる。勢いをつけるため、缶コーラに糸を縛って投げるお姉さん。
投げた缶コーラがペンギンになった。血を垂らしながらあ然とするアオヤマ君。
「この謎を解いてみなさい」。自分でも良く判ってないと言うお姉さん。

翌日様々なものを持参してお姉さんに投げさせる実験。

でも全然出ない。

 

ウチダ君がペンギンを隠していた(屋上)。ずっとご飯を食べていない。


ペットケースに入れ、電車で水族館に向かう二人。だが途中でペンギンが弱り、途中駅で降りてケースから出すと、飛び上がって破裂し、水になってしまった。最後に残ったコーラの空き缶。
ノート記載。ペンギンは未知のエネルギーで動いている(例えばペンギン・エネルギー)。町から離れると力をなくす。
喫茶店でお姉さんとチェス。最近眠れなくて怖い夢を見る、とお姉さん。夢に出る怪物ジャバウォック。
急に停電になると、チェスの駒が突然振動を始め、空中に飛んだ。

それはコウモリ。それを見てもう一度実験を申し出るアオヤマ君。

 

同じ場所でタイミングを待つアオヤマ君。その場所が日陰から日なたになった時「今です!」
お姉さんの投げた缶コーラはペンギンになった。ペンギンが出た日は太陽が照っていた事から仮説を立てた。

くもりでは出ない。暗闇だとコウモリが出る。
今の状態ではお姉さんが何を投げてもペンギンになる。

お姉さんの家に誘われるアオヤマ君。パスタをごちそうになる。
チェスをすると「腕を上げたね」とお姉さん。
お姉さんが疲れたという。ペンギンを出し過ぎたから?

わかんない。出すのは好き。
眠ってしまったお姉さんの胸を見つめるアオヤマ君。

ペンギン・エネルギーの元はお姉さんかも知れない。

 

夏休みに入り、お姉さんと会う機会がなくなった。
世界の果てについての、お父さんとの会話。

もっと遠くにあるのは判っているんだ。
そうとは限らない、とお父さん。世界の果ては遠くにあるとは限らない。折り畳まれて内側に潜り込んでいるかも知れない、と言って袋を取り出す。この袋に世界を入れることは出来るかい?
そして袋をひっくり返す。外の世界が内側になって袋の中に潜り込む。

 

ハマモトさんに呼び出されるアオヤマ君とウチダ君。連れて行かれた先はペンギンを見失ったところ。銀の月の噂はハマモトさんが広めた。
森を抜けると巨大な水の球が広場の中に浮いている。彼女は海と呼んでいる。なぜ浮いているか、原理は判らない。

研究を手伝ってという申し出を受けるアオヤマ君。
観測開始。ビーチパラソル他様々なものを持ち込み。

 

夏祭りでハマモトさんのお父さんに会うアオヤマ君。お父さんは大学の研究所で働いている。そこに偶然お姉さんが来る。

ペンギン研究中断の理由を知るお姉さん。

 

海の研究は続く。アオヤマ君の提案でセンサーを付けた「ペンギン号」を海に入れる。どんどん引っ張り込まれ、糸もろとも取り込まれる。

直径からは考えられない入り込みかた。


そこに現れるスズキ君たち。つけられていた。ハマモトさんを好きだろうと言われて逆上するスズキ君が暴れ出し、手がつけられない。
そこにお姉さんが現れ、多くのペンギンをけしかけて追い払う。
「ふしぎなもの見つけたね」とお姉さん。
だがその時、海の様子が変化。表面が尖り、水の塊を放出。
「離れろ!」だがウチダ君が逃げ遅れた。その時お姉さんが缶コーラを投げると、それがペンギンになって水の塊を分解。そして小さくなった水玉を突いたペンギンが消えてしまった。
その現象は回りでも起こっていた。

ペンギンの事を前から知っていた事にハマモトさんは激怒。お姉さんが捕まる事を恐れて言えなかったアオヤマ君。

だがこれでペンギンと海が繋がっている事が明らかになった。
お姉さんも加わってもらう提案を拒否するハマモトさん。

 

アオヤマ君の考察。ペンギン・エネルギーの源は海かも知れない。

水族館に連れて行く途中でペンギンが消えたのは海から離れすぎたから?
ペンギンは海を目指してここに集まって来た。それで海を壊す。

何か矛盾していない?とお姉さん。
森に大人がやって来た。何かおかしな物を見なかったかという問いに「いいえ」
ペンギンを出せるお姉さんが心配なアオヤマ君は、お姉さんにペンギンをあまり出さない様に頼む。

 

ニュース報道。ここ数日見つかっている未確認生物。過去にない。

ジャバウォックだ、とアオヤマ君。
街の人の言葉。今度は街灯がなくなった。隣は自販機が。
変な事が起こっている、森に走る三人。ウチダ君の話。「プロジェクト・アマゾン」の源流探しは、同じ水路に戻る。この川には果てがない。

周囲を見ると大きな動物がペンギンを追っている。ジャバウォック。
広場に着くと海は更に大きくなっていた。
僕たちの手に負えないとハマモトさんに話す。でもお姉さんの事を研究者に言えない。だからこの研究を凍結すべきだと言った。
アオヤマ君はお姉さんを庇っているだけ、と反発するハマモトさん。

 

歯科医院へお姉さんを訪れるハマモトさんのお父さん。大学で気象の研究をしている。娘のノートを読んで森の物体、ペンギン、そしてあなたの事を知った。協力して欲しい。
その後お姉さんに会いに行ったアオヤマ君。

お姉さんは明日海辺の町に行こっか、と誘う。

 

出掛けたものの、途中で具合が悪くなるお姉さん。ペンギンを降ろしたのと同じ駅で降りる。周囲が砂地に変わり、ひざまずくお姉さんの回りをぐるぐると動く。そこにジャバウォックが。
しばらくすると、それは収まった。
ここ2、3日何も食べていないのに平気、どうしてだろ、と言うお姉さん

 

出張前のお父さんに相談するアオヤマ君。難しい、みんなつながっている気がする。

お父さんのアドバイス。一枚の紙に全てメモしてそれを何度も眺める。
それでも判らない時は考えるのをやめる。

みんなが突然つながる瞬間がある。「エウレカ」だ。

 

始業式。スズキ君が変な動物を水槽に入れて持って来た(ジャバウォック)。学校に来た研究者に呼ばれて鼻高々のスズキ君。
海の事が完全に研究者に知られてしまった。

家に帰って断食実験を始めるアオヤマ君。夢に出て来る妹。お母さんが死んじゃう、と泣く。みんないつかは死ぬ・・・

翌朝熱が出て学校を休むアオヤマ君。ずっとお姉さんの夢を見る。

 

次の朝目覚め、ガツガツと朝食を食べて出校するアオヤマ君。

教室で今までの出来事を全てノートに記載。
校内が騒がしくなり、教室のテレビをつけるスズキ君。避難勧告発令。海は膨張を続け、現場にいた研究者を巻き込んだ。ハマモトさんのお父さんも飲み込まれた。
保健室に行くふりをして教室を出たアオヤマ君たち。

だが外は大人が多数。スズキ君が脱出の手助け。
こうなったらお姉さんの力を借りるしかない。

 

お姉さんの前にいるアオヤマ君。「謎が解けたようね」
ペンギンは本当のペンギンではなく、お姉さんとも人間ではない。
海からは何らかのエネルギーが出ていて、お姉さんとペンギンはそれを受け取って生活している。その海をペンギンが壊すのは、何か重要な意味がある。
海は空間を歪めたり時間も狂わせる。だからこの世には存在してはいけないもの。
海は物体としてそこにあるのではなく、むしろ穴だとしたら。
この世の破けたところ、もしくはこの世の内側に潜り込んだ、世界の果てかも知れない。
ペンギンたちは海を壊していたんじゃなく、世界を修復していた・・・・
「私がペンギンを作るのは世界の穴を塞ぐためだった?」
だから僕がペンギンを作らない様にお願いした事は間違い、と嘆くアオヤマ君。
君のせいじゃない。道草食ってたのは私かもね。

この世界に未練でもあったのかね?
よく考えてくれたね、少年。

 

海に向かう二人。直径は数百m。ハマモト先生、大丈夫かしら?
送り込んだペンギン号の話をするアオヤマ君。
「まあ、入ってみるしかないね」一人で行くというお姉さんに、どうしてもついて行くと言うアオヤマ君。
大丈夫、私たちにはペンギンがついてる。

道いっぱいにペンギンが充満し、二人を押し流して行く。

 

ものすごい数のペンギンと共に海に入って行く二人。中にはまた街並みがあり、水に浸かっている。
連なったペンギンのボートに乗っている二人。「連れて行っておくれ」
今までの記憶について話すお姉さん。海辺、お父さん、お母さんや今まで生きて来た思い出。それも全部作り物?
僕には判りません。でもお姉さんと過ごした記憶は間違いなく本物です。
ハマモト先生たちが居るところに行き着く。

助けに来たと言われて驚く先生たち。

そろそろだね、と言うお姉さんに、海を少しだけ残せばお姉さんは元気で居られるかも、とアオヤマ君。
だけどこんなもの残しちゃマズいんだろ? ・・・・・・ハイ。
「それではお家に帰りましょう!」と手を上げるお姉さん。

乱舞するペンギンたち。
「何が起きてるんだ?」とハマモト先生。
「僕には判りません」
「君は本当は、判ってるんじゃないのかい?」
「僕は判ってるのかも知れません。でもこれは僕の大事な研究。この研究の秘密を誰にも教えないのです」

 

「少年、行こっか」とお姉さん。
「おい、危険だ、ここにいなさい」とハマモト先生。
「私たちは大事な用事があるんです」とお姉さん。
「だから先生、さようなら」

 

全ての決着がついて喫茶店に居るお姉さんとアオヤマ君。
「少年、やっぱり海は残せなかったみたい」 「ハイ」
「ねえ、私はなぜ生まれて来たのだと思う?」「判りません、でもいつか僕は判るかも知れません」
「私は人類じゃないんだってさ」「信じられません」
「私はキミが本当の大人になるのを見てみたかったんだよ。

キミはみどころのある少年だからな」
「そうです、僕は立派な大人になる、もっともっと偉くなって、宇宙にも行く」
「偉くなったら私の謎も解ける。そしてら私を見つけて会いにおいでよ」

 

「それじゃ、そろそろさよならね、君はここにいなさい」
と言ってお姉さんはドアから出て行き、広場の前まで行って、手を振ると   消えた。

 

皆のところに現れるアオヤマ君。ハマモトさんが飛びついて来た。
「あの人は?」「お姉さんは行ってしまったよ」
TV報道。昨日県境に現れた巨大半球体が消滅してから一夜明け、周辺地域に出ていた避難勧告は解除・・・


僕が大人になるまでに、あと3748日ある。僕は一日一日、世界について学んで、昨日の自分を上回る。
世界の果てを見るのは、悲しい事かも知れない。それでも僕は世界の果てに向かって大変早く走るつもりだ。

なぜなら、世界の果てに通じる道はペンギン・ハイウェイである。
その道を辿って行けば、もう一度お姉さんに会うことが出来ると僕は信じる。
その時僕はお姉さんに教えてあげたい。

僕がどれだけお姉さんを大好きだったかを。

 

 

 

 

荒野の1ドル銀貨   1965年  イタリア、フランス

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監督・脚本  カルヴィン・ジャクソン・パジェット
音楽       ジャンニ・フェッリオ

 

キャスト
ゲイリー・オハラ      - ジュリアーノ・ジェンマ
ジュディ・オハラ       - イヴリン・スチュワート
マッコリー            - ピーター・クロス
ドナルドソン          - ジョン・マクダグラス
アンダーソン保安官   - フランク・ファレル
フィル・オハラ         - ニコラス・セントジョン

予告編

あらすじ映像と音楽

 

感想
NHK BSで「荒野のガンマン」に続いて放送されたもの。
哀愁を帯びたテーマ曲がイイ。

題名にある、1ドル銀貨に命を救われるというところだけ覚えていて、あとは完全に忘れていた。

 

あんなにきれいに貫通せんだろう。ただ、九死に一生という設定だから多少体にも食い込んだという設定か。

弟が牧場主の用心棒だったというのが、いささか唐突すぎたが、貯金を時計に隠していたという伏線があって、マッコリーの手配書を発見するところは、けっこういい演出。

 

「荒野のガンマン」でも思ったが、女性の扱いが本当に雑。ダンスホールの女だからといって、人前で露骨にキスしたり、人妻だと判っていて拉致監禁したり。まあ映画だから、という点はあるけど・・・

主役のゲイリーが一人だけで、中盤辺り「この状況で一体どう勝つの?」てな雰囲気だったのが、たまたま敵が一人になったり、縛られてると騙したり、同士討ちさせたり、と終わってみれば一応解決している。
そんなにうまく行くかいな、というツッコミもあるが、ハラハラドキドキの繰り返しで、西部劇の面白さを十分満足出来る一本になっている。

銃身を切られて使い物にならなくなった銃が、最後に自分の命を助けてくれる。これも出来過ぎだが、まあ許せる。

 

 

あらすじ
南軍兵士として戦い、北軍捕虜となって終戦を迎えたゲイリーと弟のフィル。返された銃は銃身が切られていた。


フィルは西部へ行き、ゲイリーもいったん自宅に帰ってから西部に向かった。妻のジュディに家の売却を任す。

西部のイエローストーンに行くも職がなく、地元の有力者マッコリーに雇われて、敵対する者ブラックアイを倒そうとするが、それは弟のフィルだった。

 

正当防衛を主張するマッコリーを認めるアンダーソン保安官。
二人とも殺され、通りがかりの馬車に乗せられるが、ゲイリーは胸に入れた1ドル銀貨のおかげで死んでいなかった。弟の貯金から一枚だけもらったもの。

 

数ケ月後、街に戻るゲイリー。マッコリーに抵抗する牧場主ドナルドソンを助けたゲイリーは、フィルがこの人の用心棒だった事を知る。

マッコリーの弱味を握っていたフィル。

フィルの住居はマッコリーの手下に使われており、そこで手下どもを縛り上げ、ボスのブラッドと交渉して仲間に入るゲイリー。

スキを見てフィルの残した証拠を探すが見つからない。
一方、街で新たに銀行を作り、住民を救うため軍資金の金塊を運ぼうとするドナルドソン。
強奪を計画するマッコリー。その計画を知ってドナルドソンに知らせようとするが、それがバレて捕まるゲイリー。

 

そんな時、家を売ってイエローストーンに到着した妻のジュディ。マッコリーからゲイリーは死んだと聞かされても信じられず、墓を見せてもらうために馬車に乗る。だが結局手下のアジトに拉致される。


縛られながらそれを知るゲイリーは、縛られた足のロープをブーツの拍車で切る。

金塊を運ぶ馬車と、それを護衛するアンダーソン。だがその途中、ドナルドソンはアンダーソンに射殺される。マッコリーとグルだったアンダーソン。

 

ブラッドたちが金塊襲撃に出発したため、一人留守番の手下。ジュディを襲うために縄を切る。だがそこに縄を解いたゲイリーが。
手下を倒し、ジュディと共にフィルの残した証拠を探すが見つからない。ブラッドたちが戻る気配に、ジュディをアンダーソンの元へ向かわせるゲイリー。

縛られているふりを装い、ブラッドたちを倒したゲイリーは、時計の奥からマッコリーとアンダーソンが併記された手配書を見つける。
二人の共犯関係を知り、やって来たマッコリーにアンダーソンが裏切ったと吹き込む。
金塊を持って戻って来たアンダーソンたちと撃ち合うマッコリー。同士討ちの末、アンダーソンを殺すマッコリー。

ジュディを取り戻しに行くゲイリーだが、手こずっているうちにマッコリーが戻り、ジュディを人質に取る。
やむなく銃を捨てるゲイリー。その銃を手にしたマッコリーに向かって行くゲイリー。
構わず近づくゲイリーに重ねて撃つが当たらない。

マッコリーが銃を見ると、それはゲイリーが戦争から持ち帰った銃身を切られたもの。全く狙いが定まらない。


ゲイリーが銃を取り上げ、至近距離から撃とうとすると、街の者たちが制止。彼らの銃が多数火を吹いた。

抱き合うゲイリーとジュディ。

 

 

ファウンデーションの彼方へ(銀河帝国興亡史④)発表:1982年 アイザック・アシモフ

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ファウンデーション
ファウンデーション対帝国
第二ファウンデーション

 

プロローグ(興亡史①~③あらすじ)
没落しつつあった第一銀河帝国。それを理解していたハリ・セルダン。
セルダンはファウンデーションを二つ設立し、ターミナスの第一ファウンデーションは周辺を併合して、プランに沿って順調に発展した。

一方第二ファウンデーションは沈黙の中に居た。
その後セルダンが予想出来なかった「ザ・ミュール」の出現により敗れた第一ファウンデーション。

そして次に第二ファウンデーション支配を目指すミュール。
ベイタ・ダレルによりその計画は阻まれ、第二ファウンデーションは対策の期間を得た。ミュールの支配意欲を喪失させたのが「第一発言者」プリーム・パルヴァー。
だがその代償として第一ファウンデーションに、第二ファウンデーションの存在が知られてしまった。
第一ファウンデーションによる探索を許し、偽りの第二ファウンデーションを壊滅させる事で、トランターにある第二ファウンデーションの実体を隠したプリーム・パルヴァー。
銀河系の中でますます強大化して行く第一ファウンデーションは、発足してから四百九十八年経っていた。
その絶頂の見せかけを信じない男が一人だけいた。

 

超あらすじ
ターミナス議員のゴラン・トレヴァイズ。第二ファウンデーションの存在を主張して、ブラノ市長により宇宙船で放逐される。

同行した歴史学者ジャノヴ・ペロラットと、ひょんなことからセイシェル星区にあるガイアという惑星に向かう。
第二ファウンデーションの発言者ストー・ジェンディバル。

セルダン・プランを理想的に運用する「反ミュール」の存在を主張し、その鍵がゴラン・トレヴァイズにあると考えた。
セイシェルを経てガイアに招待されるトレヴァイズとペロラット。それをエスコートするブリスはガイアと一体の群意識を持つ。惑星全体で意識を共有しているガイア。到着して会った長老のドムも同じ。

ミュールも実はガイアの一員だった。

ある目的のために引き寄せられたトレヴァイズ。

 

ガイアの領域に集まるターミナス市長のブラノ(第一ファウンデーション)と発言者ジェンディバル(第二ファウンデーション)。精神フィールドの攻防で、ガイア人のノヴィも交えて三すくみ状態になるブラノとジェ

ンディバル。それを解決するために呼ばれたトレヴァイズは、特殊な直感力の持ち主で、銀河系の将来に対する選択を迫られる。
第一、第二ファウンデーションを双方活かすため、ガイアの目指すギャラクシア(生きている惑星が結合した超宇宙生命)を選択したトレヴァイズ。それは直近で結論を出さないための「時間稼ぎ」。
トランターの図書館から、地球に関する資料が消えたのがガイアの仕業でない事が判り、地球を訪れる決心をするトレヴァイズ。

 

ハードカバー表紙

 
感想

新本は早川書房からも入手出来ずAmazonから中古本を購入・・・

アシモフが「第二ファウンデーション」を発表してから約三十年経過しての続編。移民がターミナスに行ってから約五百年後の世界。
セルダン・プランが順調に進んで行く事に対して疑問を抱く者が第一、第二ファウンデーション双方からほぼ同時に現れる。

 

コンピューター技術がずいぶん進歩したので、宇宙船の操縦表現もかなり進化。読んでいて楽しかった。
小説の中で、最初「地球」と言っていたものが次第に「ガイア」にすり替わって行った様な気がする。そして次作への課題が「地球」。

この辺りはもう一度読まないと理解出来んか・・・・

ミュールがガイアの者だったというのは、あと付けの理屈としてちょっと苦しいかも。
第二ファウンデーション員としての能力が発生するのが、果たしてロボットと関係があるのか。
ガイアのテレパシー能力が、ロボットから授けられたものだという理屈が、ちょっと唐突で賛同し難い。

今まで、次の第二銀河帝国を空白期間一千年以内に勃興させる、というのがテーマだったのが、どのグループがその主導権を握るかという「中味」の問題に変わって来た。

 

ギャラクシアの考え方は、生命体の理想という雰囲気もするが、実は一番恐ろしい(個人の埋没)。

ガイア理論という事で1960年代に地球の生態系を表現したものがあり、本作もそれが織り込まれていると考える。単一の群意識を持った惑星や、銀河系の将来を一人に委ねることなどは「新世紀エヴァンゲリオン」の人類補完計画にも影響を与えている。

また我が敬愛する小松左京氏の「果しなき流れの果に(1965) 書評    あらすじ」では宇宙が意識体である事の言及があり、多少はアシモフに影響を与えているかも知れない。

 

しかしこのブリス、なんでこんな(失礼)ペロラットを好きになるのか。これは老境に入ったアシモフの願望でもあったのかナ? まあ同じような環境にある自分と重ね合わせるのも楽しいが・・・

このシリーズも、「興亡史」の時系列的にはあと1作で終わり。
「地球」を目指すトレヴァイズが最後に見るものは?

 

注)ハードカバーでは「ゲイア」の表現だったが、後の文庫版では「ガイア」となっていたのでこちらの表記とした。

 

 

あらすじ
第一章 議員
若い議員のゴラン・トレヴァイズは、同僚議員のムン・リ・コンパーと議論していた。
セルダン・プランの否定。時間霊廟もインチキだと言うトレヴァイズ。
行政委員会の開会を宣言する女性市長ハーラ・ブラノ。ブラノはセルダン支持者。
議会でセルダン・プランなど存在しない、と主張するトレヴァイズに取り消しを迫る市長。
トレヴァイズを訊問するリオノ・コデル。トレヴァイズの言う「セルダン・プランを信じない」という主張についての証拠収集が彼の仕事。
必要な部分の録音を録り終えると、彼への尋問を終えるコデル。

真夜中になって、二人の衛兵に伴われて自宅に帰るトレヴァイズ。コンパーに裏切られた。
地上車に乗って自宅に着くと、玄関の"内側"に衛兵が居る。ターミナス市長、ハーラ・ブラノが居間の入り口に立っていた。

 

第二章 市長
六十三歳の市長と対峙するトレヴァイズ。

自分の年齢の二倍近い相手。
今回時間霊廟が開いたのは八回目。設立以来四九八年も経っているのにあまりにも正確。ミュールのせいで大きく的を外したのに。
第二ファウンデーションがそれを引き戻したと説明する市長。そして紀元三七八年に第二ファウンデーションのメンバーが処分された。

それ以降、機能を果たして来たファウンデーション。
だが納得しないトレヴァイズ。第二ファウンデーションは全く滅んでおらず、我々を陰て操作している。

市長は話を続けながら、次第に第二ファウンデーションが存在している事を前提としたもの言いに変えて来た。
そして、第二ファウンデーションが存在しているかどうかを自ら調べなさいと言う。

 

ジャノヴ・ペロラットという男に明日会わせると言い、彼と一緒に最新型の宇宙船で出発せよとの命令。

リオノ・コデルと落ち合う市長。コデルは一部始終を聞いていた。
もし第二ファウンデーションが存在すれば、トレヴァイズの行動が彼らの目を引き、対抗策を考える時間稼ぎが出来る。彼は避雷針の役目。

 

第三章 歴史学者
ジャノヴ・ペロラットは白髪の五十二歳。古代史の教授。

研究実現のため、トランターの銀河図書館に行く事が一番の願い。

市長がそれを実現。
市長が連れて来たのがゴラン・トレヴァイズ。第二ファウンデーションを探しに行こうという彼と話が噛み合わないペロラット。この話を市長が持ち込んで来たのは三週間前だというのに驚くトレヴァイズ。
ペロラットは言った「君とわたしは捜しに行くのだ--地球を」
地球というものを全く知らなかったトレヴァイズ。それは人類が初めて現れた惑星だという。
今までの状況から、第二ファウンデーションを見つけたければ、トランター以外に行くのが正解、と思い込むトレヴァイズ。

 

市長執務室でムン・リ・コンパーと話す市長。トレヴァイズに比べて穏やかなコンパー。
コンパーの密告に感謝しつつも、今後の役割りを匂わせる。
コンパーに、彼らを尾行する業務を与える市長。妻帯者だが、妻の同行は許されない。
コデルと話す市長。厳しいやり方に感嘆するコデル。コンパーを全面的に信用しているわけではなく、彼の船には追跡装置を付ける。第二ファウンデーションがあっても、なくても対応出来る計画として運用。

 

宇宙船は、武装はないが最新式のものが提供される。そして表向きはペロラット教授の地球探索を手伝うこと、と言い渡した市長。逃げようとすれば殺される。

 

第四章 宇宙
最新のクルーザー級宇宙船「ファー・スター号」を前にして、自分の任務の重要性を実感するトレヴァイズ。それほど優れた船。
だが操縦のための情報は何もない。トレヴァイズは、デスクの前の座席につき、そこに手を置いた。

光の輪が広がり、デスクが手前に傾斜した。
頭の中に「接続します」という声が聞こえ、船内のあらゆる部分が見えた。外の様子を見る事も出来る。
次第に扱い方を理解するトレヴァイズ。手を使ったコンピューターとの接続。望みさえすれば、その通りになる。

そして船はいつの間にか発進していた。
ペロラットに、コンピュータとの接続による宇宙の姿を見せるトレヴァイズ。様々な映像化にトライ。だが疲れを感じてデスクから手を離した。

 

第五章 発言者
銀河の中心だったトランター。最初の八千年に亘って拡大し、その後の一万二千年は銀河帝国の首都として栄えた。今から二世紀半前に起こった大略奪。ここではもう、昔のトランターの面影はなく、表面の金属はなくなり、自給自足の農民がまばらに住む世界。

 

第二ファウンデーションの、第二十五代目の第一発言者であるクィンダー・シャンデス。十八年間この地位を守っている。大略奪が起きてからの経緯。帝国は崩壊したが、先の発言者たちが大学・図書館を何とか温存した。

シャンデスに対し、若い発言者ストー・ジェンディバルが謁見を申し入れた。かいつまんでの説明を求めるシャンデスに「セルダン・プランは無意味です!」
ジェンディバルは、幼い頃から非凡な能力を見せ、三十歳で発言者会の一員になっていた。

セルダン・プランの検証システム「基本輻射」によるチェック。逸脱は青い線で示され、発言者の改良は赤で示される。

最も特徴的なのがミュールの一件。

それが次第に収束。それはプリーム・パルヴァーの成果。
逸脱の世紀を生き残ったのが欠陥がない証拠だ、と言うシャンデスに「欠陥のない、その無謬性こそが致命傷なのです」とジェンディバル。
予測出来ない可能性の一つがミュールだった。彼を止めた結果、第一ファウンデーションはこの百二十年間平穏な時を過ごしている。

 

ターミナスに居るという、第二ファウンデーションの存在を主張する者。
「ゴラン・トレヴァイズです」と答えるジェンディバル。彼が見つけてその情報をシャンデスのオフィスに回した。訓練を受けていないにも関わらず、異常な直感力を持っている。トレヴァイズはミュールも及ばないほ

ど危険な存在だと評価するジェンディバル。

その話と、セルダン・プランが無意味だという話との繋がりについての説明を求めるシャンデス。
それを証明するために微小輻射という装置を使って説明する。
ジェンディバルの説明によれば、セルダン・プランが一世紀以上も逸脱を示さないのは、第二ファウンデーションが関与しない程の微小な方法でコントロールされているから。
破壊と逆の行為を、知らないところで行う「反ミュール」の存在。目的は、彼らの知的子孫が意思決定者となる、第二帝国の計画推進。
ターミナス市長がなぜゴラン・トレヴァイズを追放したのかの疑問。

却って危険人物を銀河系内に放つ行為。

それは「反ミュール」のエージェントから受けた強迫観念のためだった。トレヴァイズは彼らの新人として採用された。

よって致命的に危険な存在。

 

第六章 地球
ハイパー・リレイを探すトレヴァイズ。

それはハイパースペースを通った星間航行をした場合の探知を可能にするもの。ジャンプは二日後を予定。
彼がなぜ地球に興味を持ったのかを聞くトレヴァイズ。
ターミナス等の星は、最初苔のようなものしか居なかった。それを植物、動物等を持ち込み改良して行った。

今では土着生物は残っていない。真に繁栄する土着の自然環境バランスを生み出した世界を研究する事に、大きな興味を持ったペロラット。「起原問題」に挑戦するため、歴史を学んだ。
地球の情報はトランターへ行かないと判らないと言うペロラットに、これから地球を見つけに行くと言うトレヴァイズ。
迫られて、今まで集めた資料を元に、地球の位置に関する情報を話し始めるペロラット。
きっかり一標準時間(二十四時間)で自転し、月と呼ぶ巨大な衛星を持っている。
リストにG-A-I-A(ガイア)という名の惑星がある。「地球」という意味。だが詳細の情報はない。その場所もセイシェル星区に分類されているとしか判らない。
「そのセイシェル星区に行って、何とかガイアを見つけようよ!」とトレヴァイズ。結局ハイパー・リレイは装着されていなかった。

 

第七章 農夫
トランターの農耕地域をジョギングするジェンディバル。発言者会の中には批判する者もいる。ヘイム人の農民たちは、彼ら学者たちに関わる事はほとんどなかった。
すれ違うために近づくヘイムの農民。ジェンディバルに執拗に絡む。これから発言者会に出席しなくてはならない。加勢する様、後ろに三人ほどが控える。
農民の心に手を加えるのは基本輻射に逸脱を生じるため出来ない。ルフィラントと言った男が殴りかかるのを何とかかわすジェンディバル。怒りに燃えるルフィラントは加勢の者と共に迫る。
とうとう手を掴まれてしまったジェンディバル。

 

発言者会の集まり。一人遅刻のジェンディバル。女性発言者のデロラ・デラーミがシャンデスに「いつまで待つのですか?」と質す。
時間稼ぎをしてもジェンディバルが来ないため、シャンデスは彼が警告した第二ファウンデーション以外の組織の存在について説明し、第一発言者としてそれを支持していると話した。

キーとなるゴラン・トレヴァイズ。
シャンデスは、トレヴァイズに個人的にプランを適用したが、結局何も出なかった。だが四十年の分析の実績から、勘ではあるがトレヴァイズを放置してはならないと断言。

デラーミはその話に否定的に対応する。
 
腕を掴まれ、もう会議には間に合わないと諦めたジェンディバル。押さえ付けられた状態でルフィラントに殴られようとした時、農夫の女が近づいて来た。弱い者いじめの臆病者!との罵り。
青びょうたん相手に何人もかかって、この先続けるなら言い触らしてやる、との言葉に戦意喪失した者たちがぞろぞろと帰って行った。
礼を言うと、女はノヴィと名乗った。一緒に歩くよう申し出て、彼女はそれに応じた。会議への遅れは認識したが、それもやむを得ない。大学の建物が見えるところで、自分の住所を言って別れるジェンディバル。

 

第八章 農婦
発言者会。デラーミはこの機会に第一発言者に対する弾劾を考えていた。それと引き換えに、先の発言の削除をデラーミが提案した時、ジェンディバルが入場して来た。
農夫によって会議への出席が妨害された事を問題にするジェンディバル。デラーミとの間で議論が紛糾。
発言の削除の件が改めて話題にされた。トレヴァイズの疑いを補強するジェンディバル。
組織の中に逆の働きをしている者が居ると言い、全員に精神分析の実施を提案するジェンディバル。混乱に陥った会議は、第一発言者の宣言で休会に。

 

ジェンディバルは翌朝、面会者を告げるコールに起こされる。
そこに来ていたのは昨日の女。改めてノヴァと名乗る女。大学の構内を案内してやると伝えていた。
ノヴァの目的はそれだけではなかった。「おら学者になりに来た」学者の意味も良く判らない者にどうやって判らせるか?
彼女がなりたいのは「彼の召使い」である事を理解したジェンディバル。粗野で文盲、とてもあり得ない、と否定するが、考えるところがあって、手許に置く事にした。
デラーミや、その他発言者との戦いにおいて、この百姓女スラ・ノヴィが鍵になるとの確信。

 

第一発言者からの呼び出しを受けて出向くジェンディバル。
彼の握っている情報では、トレヴァイズはトランターへは来ない。地球を探すためだからこそトランターに来る筈だったのに。
必ずしもそれは悪い事ではない、と言うジェンディバルを否定するシャンデス。
シャンデスがもっと重大な話をする。デラーミの発議で発言者の緊急集会があった。その席でジェンディバルが弾劾された。

 

第九章 ハイパースペース
最初のハイパースペースを前にして不安がるペロラット。トレヴァイズの操作によりそれは行われた。
ハイパースペースが終わった時、何の変化も感じなかった事に感嘆するペロラット。
元々コンピューターは、惑星セイシェルのそばまで行くのに29のステップが一度に出来ると表示していた。それを信じずに一回だけのジャンプをさせた。一日かけて検算。
それを受けて、今度は一度に目的地までのジャンプを実行。

最終的に28カウントで止まる。
「我々は惑星セイシェルのそばにいる」とトレヴァイズ。
なぜこんなに進化した船を市長は提供したのか、と驚くペロラット。

実験だろう、とトレヴァイズ。

 

第十章 会議
弾劾の会議を待つ身のジェンディバル。彼の立場について説明する第一発言者は、弁明の機会を与えた。
ゴラン・トレヴァイズが、トランターではなく別の方向に飛び去った事を伝えるジェンディバル。進路変更は、トランターが地球の重要性に気付くのをくらますためのものだと言う。
地球の事など誰が気に掛けるかという反論に、今図書館に地球関係の資料が一切残されていない事を告発するジェンディバル。
地球の話と弾劾とは関係ない、と弁明を切り上げようとするデラーミを制する第一発言者。

 

次いで、証人を呼びたいと言うジェンディバル。それはヘイム人の農婦ノヴィ。ノヴィは、ジェンディバルがあの日襲われた時の事を証言した。男は普段学者に喧嘩を仕掛ける様な事はしたことがない。

あの時は自分が脇に立っていて、別の自分を眺めているようだった、と聞いていた。そして彼女自身も、割って入った時には何かに憑かれていたと言った。
ジェンディバルはノヴィを眠らせ、その心の中を皆が見えるよう開示した。そこに極めてデリケートな神経線維の捻じ曲げの形跡があった。

こんな事は、よほどの準備がないとやれない。

ノヴィは起こされて退室した。
我々の能力を超えた方法で精神に干渉されている。図書館員も、その様にして地球の資料を運び出したのかも知れない。
この事実により、反ミュールの存在が認識され、ジェンディバルに対する弾劾は撤回された。

狡猾に転身を図るデラーミは、ジェンディバルに謝罪した。次いでこの問題を解決するため、彼が自ら出向くことを提案。発言者会の賛同は確定。彼女の策略は成功した。
それに怒りを覚える第一発言者は、ジェンディバルがこのミッションを完遂して帰還した時には、彼を第一発言者にすると宣言。

デラーミは、失望を巧妙に隠し、任務を果たすには妻帯者として行くべきだと進言。
彼女の言っているのは、ヘイム農婦のノヴィの同行。反射的に拒否したいと思っていたジェンディバルだが、平然とそれを肯定し、初めから彼女を連れて行くつもりだったと返す。

第一発言者とジェンディバルとの密談。
後継者指名が、デラーミに対する怒りで早まった事をしたと詫びるシャンデス。だがこの、宇宙への危険な単独行に対して喜んでいるジェンディバル。時代遅れの惑星に閉じ込められて来た男の欲望。

 

第十一章 セイシェル
ファー・スター号はマイクロ・ジャンプを行って惑星セイシェルに近づいて行った。
通関ステーションで税関吏のチェックを受けた。その後無線ビームに従って空港に向かう。
税関吏のジョゴロブ・ソブハッダーサ。次に入って来た船についての報告。これとそっくりな船をさっき通関させた。通してはならない船を通したとの疑い。

夜景を見ながらの降下。空港に近づき着陸操作を行うトレヴァイズ。
機体はブースに入れられ、所定の場所に固定された。
用意された地上車に乗ってツーリスト・センターに向かう二人。
目的地に着き、その建物に入って行く。人々の服装は色彩豊かで、グレイずくめのターミナスとは異なっている。

 

カウンターに向かう二人を認めて、男が寄って来た。

グレイずくめの男。
「何たることだ。友達のくせして裏切りやがって!」

 

第十二章 エージェント
そこにいたのはターミナス議員ムン・リ・コンパー。

密告のいきさつを説明される。
この事についての埋め合わせをしたいと言うコンパー。
この尾行の報告は市長に送っている。船にはハイパー・リレイが取り付けられており、外す事が出来ない。
また妻が人質になっているので市長に逆らえない。

自分は警告に来た。君は第二ファウンデーションの反応を引き出すための避雷針。これで彼らの手の内が判る。
そしてコンパーは、第二ファウンデーションを探してはいけないと言った。別の仕事がある、とトレヴァイズ。

ペロラットと地球の探索をしていると言った。
コンパーは「今は、地球はない」と言った。彼の祖先から言い伝えられている。シリウス星区にあった。その仮説はあった、と言うペロラット。
コンパーは続ける。そこは放射能を帯びて、今は生物が住むのは不可能。探しても無駄だと言う。
コンパーの祖先が出たというコンポレロン。詳細を知りたければそこに行くべきだと言った。
そうして我々をコンポレロンに行かせようとしているんだろう、と言うトレヴァイズ。
助けようと努力なんかしなければ良かった、と立ち去るコンパー。

 

コンパーと別れた後、食事をしに行った二人。食後のコーヒーを飲みながら、先のコンパーの話を吟味する。
彼らは我々がトランターに行く事を望んだ。それを台無しにして僕がセイシェルに来た。だからこうして追い出しにかかっている。僕はここに残るつもりだ。
多少異議を感じつつもトレヴァイズの方針を受け入れるペロラット。

 

ムン・リ・コンパーは、子供の頃にスカウトされた第二ファウンデーションの「観察者」だった。
ミュールによる打撃を受けて以降、観察者による運用が始まった。横の繋がりを持たず、上の階級の者としか繋がっていない。被害を広げないための方策。
コンパーの上に繋がる者はジェンディバル。

コンパーの方が四歳年長。
コンパーがトレヴァイズに出会ったのは大学時代。乏しいデータから正しい結論に達する、卓越した能力をそこに見出し、彼を重要人物だと発言者会に伝えていた。それに応答してくれたのがジェンディバル。
トレヴァイズの追放という状況を作り上げたのは、ジェンディバルの指示によるもの。トランターに送り込む筈だった。コンパーのところへ近づきつつあるジェンディバル。それがコンパーの緊張を深める。

コンパーと交信を始めたジェンディバルは、トレヴァイズたちとの会話を会話を全て報告させた。彼が到着するまでトレヴァイズたちをセイシェルに留め置く、という指令を忠実に守ったコンパー。

 

第十三章 大学
眠るために船へ戻って来た二人。
我々が既に目立ち過ぎている事を懸念し、その後一時間ほども眠れないトレヴァイズ。

翌日ツーリスト・センター経由で図書館へ行き、コンピューターを使ってデータ収集をする二人。
考古学者のリストを調べるうちに「クインセデッツ」の名に覚えがある、とペロラット。所属はセイシェル大学。午後になり大学に着いて取次ぎを頼むと、意外にも先方はペロラットの事を知っていた。

 

女性の案内でオフィスに向かう。途中その女性に地球の事を聞くトレヴァイズ。その名は知らなかったが、最初の惑星についての言い伝えは知っていた。ハイパースペースの中にあるので行く方法がないと言う。オフィスに着き、ドアに「ソテイン・クインテゼッツ・アプト」の表示。

相手は背が高く、熟年の男でS・Qと名乗った。
クインセデッツは、ペロラットの論文を読んだ事があると言う。世界の始まりに関するテーマ。

 

唐突に「ロボット」の話を始めるクインセデッツ。トレヴァイズたちの知らない言葉。コンピューター搭載可動機械という説明。それの人間そっくりの形をしたものがロボット。
セイシェルにある言い伝え。地球が唯一の世界だった頃、ロボットが発明された。その目的は銀河系探索と植民。だが多くの植民が行われた後に、ロボットは不要となった。
地球でもある時期からロボット不要の流れとなり、そこから脱出した者が、ロボットを使わない新たな植民地を作って行った。その最初の民がセイシェル星区に来たという言い伝え。

地球のその後を聞くトレヴァイズ。人類は地球を去って、それぞれの星区に定住した。それ以上は判らないという。
話を切り上げて暇を告げるタイミングで、トレヴァイズはガイアの事について話して欲しい、と言った。表情を硬くするクインセデッツ。

 

話をそらして、夕食を招待するクインセデッツ。そして建物を出て、星空の説明をする。その中で五角形に並んだ「五人姉妹」という星座の説明をする。その中央にある小さな星が、報われない愛を表わすという。

ディナーは菜食中心で美味なものだった。
食後、早速先のゲイアの話の続きを聞くトレヴァイズ。
セイシェル領域内にそれはない、と言うクインセデッツに対し、我々に説明してくれた五人姉妹の中心の星がガイアだと言うペロラット。否定はされない。
ガイアの事を知るために、本件を政府レベルにまで引き上げる用意があると迫るトレヴァイズ。
やむなく、知られている事について話し始めるクインセデッツ。

帝国の衰退が進み、為政者がガイア支配を試みたが、ことごとく失敗。貿易等も申し入れたが、孤立を守っている。
クインセデッツはミュールの話を始めた。ファウンデーションにとっては不愉快な名前。
ミュールとセイシェルの大統領との会見記録に「・・・・私でさえガイアには近づきたくない」という一文がある。
セイシェルの中では、ミュールがガイアで生まれたと考えられている。
ミュールでさえ近づこうとしない星。おやめなさいという忠告。
それにも関わらず、星の座標を求めるトレヴァイズ。

 

第十四章 前進!
ガイアに向けて船を進めるトレヴァイズ。
行かないでくれと言いながら、我々が確実にガイアに行くよう教えてくれたクインセデッツ。
もしトランターに行っていたら、ガイアの情報は得られなかった--
ペロラットに、どうやってガイアの事を知ったか訊ねるトレヴァイズ。
三十年以上研究をして来た彼だが、具体的に言われて、それが三年ほど前の事だと気付く。それも無名の個人からの手紙。

どこからかも不明。
そしてクインセデッツの言っていた五角形の中心。ペロラットはそれをガイアに関する資料として知っていた。
だがトレヴァイズは、あの五角形はそこから見た時にしか現れないと立体星図により証明した。更に百五十年前の星図では、その五角形の形は偏っている。よってペロラットが手に入れた資料はここ十年のもの。ガイアに関する情報が、ここ十年の間に整備された事になる。

そしてトレヴァイズ自身についての振り返り。
ある時ふと、第二ファウンデーションがまだ存在しているという考えが浮かび、それを選挙運動に利用。その後調べるうちに確信に変わった。その後市長に逮捕され、高性能宇宙船で追放された。
トランターへは行かずセイシェルに行き、そして今回ガイアへ。
「我々はガイアに行くように操られている?」とペロラット。「そうだ」

 

ガイアが第二ファウンデーションであるとの推定。だがどうして第二ファウンデーションが我々をそこに仕向ける必要がある?

様々な想定があるにせよ、今からでは手遅れ。大使館宛てにこれからガイアに行くというメッセージを座標付きで教えた。
きっと市長は動く。第一ファウンデーションが注意を向ける事は、第二ファウンデーションにとっては都合が悪いだろう。彼らが隠れているのは、何らかの弱点があるから。
彼らが一体何を望んでいるのか?と訝るペロラット。
トレヴァイズの直感。僕には彼らが欲しがる何かがある。何としてもそれを突きとめなければならない。
それを自分が正しいと感じるものに利用したい。
君を信頼する、とペロラット。

コンパーからの情報を吟味し、コデルと話すブラノ市長。セイシェルの素性を気に掛ける。ミュールに包囲された時も中立を守った。
ペロラットたちがセイシェル大学にいた情報も入っていた。そして今回トレヴァイズから大使宛てにガイア行きを伝えた。
その現場に行きたいと言い出す市長に驚くコデル。何らかの抑止力のため、戦艦も同行させたい。
コデルの反論に半分脅迫して従わせる市長。
市長の考え--セルダン・プランは、ミュールについては間違った。それは他の場合にも誤る可能性を暗示している。 

ガイアに向かって 前進!

 

第十五章 ガイア-S
ジェンディバルとスラ・ノヴィを乗せてジャンプを繰り返す宇宙船。

ノヴィは意識して言葉を直していた。
ただの百姓女である筈の彼女だったが、時折り見せる深い洞察に感嘆するジェンディバル。
彼を手伝いたいという、彼女の精神構造の滑らかさの陰にある知性、理解力、勇気。今後不可欠の脇役を予感させる。

あと一跳びで向こうに着くと言うトレヴァイズ。

ガイアの太陽--ガイア-S。
ガイア-Sの惑星について吟味を進め、候補を見つけた。自転周期二十二時間、直径百キロ程度の月も伴っている。その星を目指し、最後のジャンプをすると、宇宙ステーションが回っているのが見え、技術文明がある事が確認出来た。
だが、その宇宙ステーションの牽引ビームに引かれ始める。

 

第十六章 収束
ジェンディバルははようやくコンパーの船と合流した。宇宙服を使って先方に移るジェンディバルとノヴィ。過大な期待を抱いていたコンパーは、彼の姿を見てやや落胆したが、その心は筒抜け。
状況を聞くジェンディバルに、トレヴァイズの船が惑星ガイアに接近している事を報告するコンパー。それに加えてファウンデーションの戦艦がセイシェルの外縁に接近している事も。

セイシェル駐在のファウンデーション大使リットラル・スービングとコデルとの交信。両者は一時市長職を争っていた。トレヴァイズの通信を転送したのがスーピング。
惑星ガイアの発見を目指している市長。スーピングは、ガイアの事を知ってはいたが、その重要性についての認識はなかった。セイシェルにはまだ反逆者も多く、艦隊の引き上げを要請するスーピング。
市長の意向をそのまま伝えると、通信を切るコデル。

トレヴァイズは、次第に引き寄せられる状況にイラついていたが、落ち着いているペロラット。そしてガイアの者たちは非人間かも知れないと言う。あり得ないと否定するトレヴァイズ。
そんな時にステーションから宇宙船が発進するのを見る。こちらに乗り込むつもり。

市長に、スーピング大使からの警告を伝えるコデル。そして偵察部隊が、コンパーの宇宙船を発見した事を報告。先行するトレヴァイズはガイアに向かっている。
市長は第二ファウンデーションの位置も知っていた「まずガイアを片付け、それからトランターにかかるわ」

 

第十七章 ガイア
宇宙ステーションからの船は、長い時間をかけてこちらに連結した。

出口から宇宙服が現れ、推進装置を使って接近し、エアロックから入って来た。

 

宇宙服を脱ぐと、それは豊満な若い女性だった。きみ何歳?との問いに「二十三歳・・・です」

ここに来た理由は二人をガイアにエスコートするため。
名前を訊くペロラットに「ブリス」と答える。
ぞんざいな態度を取るトレヴァイズを別室に引いて行き、突っかかるのはやめろと忠告するペロラットは、彼女に好意を抱いている。

それがまた気に入らないトレヴァイズ。
ファウンデーションの事を知っているブリス。ミュールのために学校で習うという。ミュールはここの出身だった。

着陸するため下に降りて行くことを促すブリス。

着陸し、遠くに海岸線を見ながら歩く。ガイアのところへ連れて行ってくれるのか?と訊ねるトレヴァイズに、わたしがガイアなのよ、と返すブリス。この惑星全体がガイア。私たちは皆個人だけど総体的な意識を共有している。
それを代表するのがドム。いろいろなやり取りの末に、この惑星の群意識、群精神について理解する二人。

 

ドムとの面会。年配の男。ゲイア年で九十歳。食事をしながらの会話。この食べ物もガイアの一部。
様々な例題、小道具なども交えてガイアの社会が説明される。
ロボットをご存知か?とドム。
かつてロボットと共に暮らしていた人類。三原則に従って進化を続けたロボットは、最終的にテレパシー能力まで開発された。人間の行動が監督される。外見も人間そっくりとなり、それが反撥を呼んだ。
ロボットは進化を続けたが、結局三原則の一条の履行のため、自ら機能を止めた。それ以来我々は孤独に進歩を続ける人間になった。

多くの人間たちが、ロボットのない植民地を作るために出て行った。

それらのグループの中で、ガイアに着いた我々だけがロボットからテレパシー技術を学び取っていた。
それは人間の心の中に遺伝されているが、発達は微妙で難しい。
テレパシーを増進させるうちに群意識に気付いたのは、ずっと昔。

最初は人間、それから動物、次いで植物。最終的には惑星そのものの構造の群意識にまで到達。銀河系の中で我々は独自の存在。
そしてミュールは我々の一人。彼は異常型で出て行った。引き止めるのが間に合わず、第二ファウンデーションに扱いを委ねた。

ミュールの悲劇のおかげで、自分たちの滅亡の危機に気付いた。

既に対策は立てている。
「私は心配していないわ、あなたが処理してくれるから」と言うブリス。
ドムが言う。ガイアは何百もの穏やかな操作をして、君をここへ連れて来た。我々の危機に立ち向かわなければならないのは、君なのです。
「なぜ僕なんだ?」怒りの形相に変わるトレヴァイズ。

 

第十八章 衝突
ジェンディバルは、用心しながらガイアに近づいていた。隣で心配するノヴィ。探索を続ける先に大きな船を発見した。五十万キロ先。

トランターの第一発言者シャンデスは、ジェンディバルからの通信を受けていた。トレヴァイズとペロラットがガイアに入り込み、かつ自分たちから五十万キロ先に宇宙戦艦が居る事の報告。
ガイアの周囲の空間に微弱な精神フィールドがあり、何らかの秘密がある。非常事態の宣言を求めるジェンディバルに少し怯むシャンデス。だが今危機に瀕しているのは第二ファウンデーションそのものだとの警告。

市長の暴走を懸念するコデル。彼方に留まっているコンパーの船。

だがコンパーは降り、別の二人が乗った事まで確認されている。
その者が第二ファウンデーションの人間だと考える市長。コンパーが彼らの支配下にあったと前から疑っていた。コンパーを追跡者として出したのはテストでもあった。
今まで起きた事件を遡って見れば、トランターは第二ファウンデーションである事は、当然考えられた。
目の前の第二ファウンデーション員と戦うため、静かに移動を始める戦艦。

更に接近する戦艦に対して、精神フィールドを絞って投射したジェンディバル。だがその直後、痺れるほどの反撃を受ける。

市長が相手からの攻撃を確認した。震えるサイコメーターの針。精神シールドの開発を最優先で行い、百二十年かけて何とか完成。
相手の船にメッセージを送る市長。回答を返すジェンディバル。

ブラノ市長と名前で呼び、この船に招待されたと弁明。

そして一時休戦を提案。
市長はなおも高圧的に出る。トランターを処理する準備があるとの警告。再び回答。君たちのシールドは不完全。シールドがあると力のコントロールが出来ないため、君たちの精神に回復不能のダメージを与える。
市長の考え。第二ファウンデーションの任務はセルダン・プランの維持。第一ファウンデーションに打撃を与えればプランは崩壊する。
延々と続く口論。
その時、ノヴィが言った「これ以上踏み込まないで下さい。ターミナスのトレヴァイズ議員を待たなければなりません。

 

第十九章 決断
ファー・スター号で再び惑星の外に出ようとしているトレヴァイズとペロラット、そしてブリス。
ブリスは「あなたは何も知らずにその場所に行かなくてはならない」と言った。一切の調整をしてはいけない。
興奮するトレヴァイズだが、ペロラットの貢献で冷静になる。ブリスがペロラットに「あなたがとても好きなのよ・・・」

ぼんやりと、そしてもっと強くスラ・ノヴィは、ガイアで愛していた生命形態の一つを思い出していた。
ノヴィを見つめて驚くジェンディバル。トレヴァイズ議員の事を知っている?「何者だおまえは?」との問いに「ガイア人です」
我々は三すくみの状態。このままの状態を続け、トレヴァイズ議員を待つのです。この手詰まりを、自由意志で破るのが彼なのです。

ファー・スター号は二隻の宇宙船に近づく。一つはコンパーの船、もう一つは戦艦。静止する三隻の船。

 

ノヴィが全員の心に向かって説明を始める。
銀河系の未来が危険になっている。
ターミナスの技術進歩による精神シールドの進化。これをあと一世紀放置すれば、ターミナス様式の第二銀河帝国が誕生する。精神シールドが不完全なうちにブラノ市長の行動喚起が必要だった。
そしてトランター。セルダン・プランは、ガイアが自身が微修正して正確に軌道に乗せていたが、ジェンディバルの台頭により、ターミナスの危険性を認識し、精神シールド未完のうちにターミナスを操作して、トラン

ター様式の第二銀河帝国を作るだろう。
話に割って入るトレヴァイズ。

そのどちらかの様式の第二銀河帝国で何が悪い?
ノヴィの解説。
ターミナス様式では闘争によるもので、これは第一銀河帝国と同じ。
トランター様式では、全て計算によって維持される袋小路。
ガイアの代案は?と問うトレヴァイズ。
より偉大なガイア、ギャラクシアです。あらゆる生きている惑星が結合した超宇宙生命。

この三つの中で、何を選ぶかの選択をトレヴァイズが行う。
選択を達成するために誰かが必要だった。ゴラン・トレヴァイズが持つ「これだ!」という直感力。
市長、発言者双方を圧倒出来るのがガイアなのではないか?と問うトレヴァイズ。
だがガイアの思考は、かつてのロボットにより形成された。

よって基本は受動的。だから決断を他に委ねる必要がある。

 

最後の弁論の機会を得て、市長は「自由意志!」、発言者は「指導と平和!」、ノヴィは「生命!」と叫ぶ。
ペロラットの意見を聞くトレヴァイズに、決めるのは君だと言いながら、以前彼が銀河モデルを見せた時「銀河は生き物みたいに見える」と言った事を話すペロラット。
突然「これだ!」と確信したトレヴァイズ。

 

第二十章 結末
ハーラ・ブラノ市長によるセイシェルへの正式訪問。連邦の市長が局部的な星群を訪問するのは異例。だがそれが友好の証し。

トレヴァイズは手許に置かず自由にさせた。

発言者ジェンディバルは、トランターの第一発言者へ「全てうまく行った」と報告を行った。
ターミナス市長とセイシェルの指導者に僅かな調整を行った結果、両者の親善関係が樹立された。
発言者デラーミは失脚し、ジェンディバルが第一発言者になるだろう。ノヴィの持つ弱いシールドが今回の課題解決に大きな貢献をしたと感謝するジェンディバル。
そのヘイム女の仮面の下でノヴィは、母体から離れていても苦にならなかった。

 

話し合うペロラットとトレヴァイズ。
ガイアの行った操作。市長はセイシェルとの通商協定を成果としてターミナスに帰り、ジェンディバルは自分が事態を収拾したと確信してトランターに帰った。ノヴィはいずれ実現を期待するギャラクシア実現のため、発言者と行動を共にする。そしてどちらのファウンデーションも、ガイアの存在を知らない。

ペロラットはガイアに残ると言った。驚くトレヴァイズ。ブリスを見つけた事が自分を変えた。ブリスはガイアの一部だと言っても動じない。

 

ブリスと二人だけで話すトレヴァイズ。君はロボットではないか?と問う。その上でペロラットの彼女への想いを伝え、彼の幸福が保たれる保証について問い質した。
ロボットの件については否定するブリスだが、そうであってもなくても、彼に優しくするのは私の望み、と答える。

ドムとトレヴァイズとの会話。彼の行った決断の背景。
第一、第二いずれかのファウンデーションに味方した場合、いずれもただちに行動を起こすだろう。そしてやり直しはきかない。
ガイアに味方した場合は第一、第二いずれも自分の小さな勝利を感じながら、今まで通り存続する。ギャラクシアの建設には何世紀もかかるだろうから、今回の選択は「時間稼ぎ」。

 

確かめたい事がある、とトレヴァイズ。地球を訪れたい。
その理由を聞くドム。

コンピューターを使って、様々な関係者の思考に接触してみたが、それらの中にトランターの図書館から地球関係の資料が抹消された事件がある。
その事をガイアは知らない、と言うドムは「その問題を解決しなくてはならない」とトレヴァイズを送り出す。

 

 

 

dele(ディーリー)TVドラマ テレビ朝日系2018/7~9月

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監督 常廣丈太、瀧本智行
脚本 本多孝好 他

主要キャスト
坂上圭司       - 山田孝之
真柴祐太郎     - 菅田将暉
坂上舞         - 麻生久美子

 

 

 

「dele.LIFE」(ディーリー・ドット・ライフ)は、依頼人の死後、パソコンやスマホに残るデジタル記録を内密に抹消する業務を請け負う会社。坂上圭司が運営。姉は弁護士事務所を経営する坂上舞。時々圭司と仕事で連携する。だが圭司は車椅子生活で行動に制限がある。
そんな中で舞が、何でも屋の真柴祐太郎を仕事の相棒として紹介。

業務のお約束

依頼者のPC又はスマホが設定した時間以上使われないと、信号を圭司のPC「モグラ」がキャッチ。死亡確認をした後デバイスに入ってデータ消去、というプロセス。

 

各話   放送日    サブタイトル                                       脚本     
第1話  7月27日  死後、不都合な記録を削除致します       本多孝好第2話  8月 3日  ダイイングメッセージの真相                   渡辺雄介 
第3話  8月10日  28年の逃亡犯と監視された女                青島武     
第4話  8月17日  超能力少年が隠した失踪事件                瀧本智行第5話  8月24日  婚約者は別の顔                                   本多孝好

第6話  8月31日  雪原に埋まる少女の死体と消された日記  金城一紀 
第7話  9月 7日  死刑囚の告白                                      徳永富彦 
第8話  9月14日  最後の仕事                                         本多孝好

 

感想
深夜ワクでもあり、全く期待していなかったので、番組が始まって中盤までは他の作業をしながらチラ見。意外に面白いので、次の週から真剣に観た。
デジタル遺品の削除請負いなんて、ありそうな、なさそうな商売。様々なルール設定で、今まで淡々と削除して来た業務が、祐太郎の加入で「削除しない」ケースに振り回される圭司。だがけっこうそれを楽しんでいる。
車椅子の圭司が、上半身だけで意外に格闘出来るのが、結構カッコイイ。
印象深かったのは3話、6話あたりか。7話は最終的に犯人が特定されず、祐太郎同様「気持ち悪い」結果だった。
偶然採用されたと思われた祐太郎と、圭司たちとの関係が最終回で明らかにされる。この辺りの構成はうまい。圭司がなぜこの仕事をしているかの背景でもある。
視聴率はあまり取れなかった様だが、久しぶりにハマったドラマだった。

 

詳細あらすじはコチラ

 

 

第一話      安岡春雄(本多章一)、片山薫(江口のりこ)
番組導入。祐太郎の加入まで。
依頼人の雑誌記者・安岡が不審死。究明のためデジタル遺品の確認を行う事で、警察(城西署)内の横領が発覚。内部告発者・片山薫の協力で悪事を公表。

 

第二話      宮内詩織(コムアイ)、
依頼人・宮内詩織が病死。データ消さないで、のメモを残す。父親の期待(音楽家になる)に応えられず、家を出て絶縁状態だった詩織。葬儀で娘を罵る父親。
彼女の友人だった沙也加の冷たい態度に不審を抱き、データ閲覧。そこには親しい友人と行った「生前葬」が記録されていた。詩織は別の形で音楽を続けておりCDも発表していた。
沙也加たちを訪れ、感謝を述べる両親。だがデータを残したのは「両親への復讐だ」と圭司。

 

第三話          江角幸子(余貴美子)、浦田文雄(高橋源一郎)
自分の死後、理髪店を経営する江角幸子という女性に、データのコピーとバラの花を届けるという依頼。
依頼から二日後に依頼者の写真館主・浦田は自殺。浦田の家への侵入者の存在からデータ閲覧。
公安からの委託で28年間に亘って幸子を監視していた浦田(盗撮・盗聴)。過激派で逃亡中の、五藤卓の恋人が幸子。
監視の委託が中止され、生きがいをなくして死んだ浦田。幸子に好意を持っていた。
浦田の死により、五藤に資金援助して来た行為に決別する幸子。
依頼だった五本のバラの花言葉は「あなたに逢えてよかった」。

 

第四話                  日暮裕司(野田洋次郎)
依頼人・日暮裕司の病死。風景画と写真を残していた。25年前、霊視が出来る少年として注目を集めた日暮。

だが失踪中の母親を探す番組で失敗した。
日暮の葬儀での情報から、過去の辛い顛末を知った圭司と祐太郎は、かつて依頼を出した美香に会いに行く。

当時母親の死を覚悟していた美香は、日暮がその事実を隠すために失敗を装ったと思っていた。
データに残っていた風景画の中の建物に記憶があった美香。

現地に行き、道路沿いに次々と絵の風景が見つかり、導かれて行く圭司たち。
山に入り、最後に日暮が描いた瓶がそのまま置いてある場所があった。そこを掘り、美香の母親の遺骨を発見する。
美香の父・重治を呼び出す圭司。遺骨のそばに重治の名刺入れがあった。自首するかどうかを彼に委ねて去る圭司たち。

 

第五話           沢渡明奈(柴咲コウ)、楠瀬百合子(橋本愛)
依頼人・天利聡史の死亡確認に向かう祐太郎。

一方元恋人の沢渡明奈に会う圭司。16年前からの交際だが、車椅子の体になって圭司が身を引き、それからは年に1回だけ会う関係。

 

聡史の自宅近くで、彼の婚約者だという楠瀬百合子に会う祐太郎は、連れられて病院に行く。事故に遭って意識不明の聡史。dele. LIFEの事を知っていた百合子は、婚約者だからデータ削除を中止して自分に見せて欲しいと懇願。だが圭司はあっさり断る。
聡史の一番の親友だという宮田翔に連絡を取った祐太郎は、百合子がただの幼なじみだと知る。

ずっと片思いで告白出来なかった百合子。
聡史が目を覚ましたとの知らせで病室に向かう祐太郎、百合子、翔の三人。聡史が最初に手を取った相手は翔。その様子から二人が愛し合っている仲だと知る百合子。データはその証拠・・・・

 

圭司の仕事ぶりを見ていた明奈は、自分もデータ削除の登録を行いたいと言い出した。そして「待ち合わせは今年で最後。長くは待たないよ」と言って去って行く。

 

第六話                石森純子(山田愛奈)
姉・舞から回って来た依頼。自殺した娘のパソコンのパスワード解除依頼。自殺した娘純子の原因がイジメだと断定。
まず彼女のスマホから調査を始め、その情報から別の少女がいじめられて自殺寸前だったのを救う。だがそれは純子の死と結びつかない。
そこでPCのパスワードを解除して、消去データを復元。SNS上でバクという人物とのやりとりを見つけ出す。
理解者を装い接近したバクは、彼女から両親、友人らのメールアドレスを聞き出し、ロックを解除してデータを盗み出していた。それを純子に流す。両親のW不倫、純子への大量の悪口・・・
それらに耐えられず「きれいなまま死にたい」と冬の別荘で凍死した純子。

更に次のターゲットを自殺させようとするバクに対し、彼のPCデータを全て消去。更に呼び出して痛めつける。
両親へは遺志を尊重して何も伝えず。

 

第七話              笹本清一(塚本晋也)、宮川(千葉哲也)
依頼人・笹本隆の死亡確認が取れ、ファイル削除しようとした圭司に姉の舞が、彼が死刑囚・笹本清一の息子だと言い出す。
八年前の、バザー会場での毒物混入事件。ジュースに入った毒物で四人が死んだ。
清一は、いったん自供するが、その後一貫して否認。
舞に要求されてやむなくファイルを開く圭司。そこには一人の男性がジュースのタンクに粉末を入れている動画が。
その人物は市会議員の宮川。だが圭司の追及に宮川は、甘みを増すために粉末ジュースを追加しただけだと告白。

疑われるのがいやで黙っていた。
その他にも当時疑わしいと思われる者が数名出て来て真相が判らない。結局、清一の死刑が執行された。
「すっげぇ気持ち悪い」と言う祐太郎が去った後、データを削除する圭司。

 

第八話(最終回)          辰巳仁志(大塚明夫)、仲村毅(麿赤児)
依頼人・辰巳仁志のPCからのメッセージにより、死亡確認を祐太郎に指示する圭司。依頼人の名を聞いて飛び出す祐太郎。舞の話では、数年前に難病だった祐太郎の妹・鈴が新薬の治験を受けている最中に死んだ。その時の病院側の弁護士が辰巳。
圭司のPCに外部からの攻撃が入る。

 

帰った祐太郎の話。死因を巡って祐太郎の両親が病院と対立。辰巳は、投薬はブラセボ(偽薬)だったと言って責任回避しただけでなく、家族写真をネットにバラ撒いて「クレーマー」「賠償金目当て」などの誹謗中傷を行った。ネットでの厳しいバッシングを受け両親は離婚。

辰巳のファイルを開くと音声データがあり、それは祐太郎の妹への投薬を巡る、当時の厚労省官僚だった仲村毅との会話。新薬の副作用の隠蔽を指示するものだった。

 

黒幕を割り出す作業の中で、圭司が襲われPCごとデータが奪われた。追求の証拠を失った祐太郎に、あるデータを渡す圭司。
圭司の父親が、かつて仲村の指示で贈収賄の証拠改ざんを請け負っていた。遺品整理でそれを知った圭司。
証拠が公表されれば圭司の今の仕事や、舞の弁護士事務所も打撃を受ける。祐太郎はそれを断った。

 

辰巳の葬儀会場。参列に来た仲村を監禁し、過去の悪事を問い詰める祐太郎。証拠は全て隠滅と言い、辰巳の無能を笑う仲村。だがその様子は全て会場にスピーカーで流された。激怒する辰巳の息子。
圭司は結局父親のデータを公表し、仲村は逮捕された。退職届を出して姿を消した祐太郎。

仕事が激減した圭司の元に祐太郎が帰って来る。

何事もなかったかの様にパンを差し出す祐太郎。

 

新聞小説 「ひこばえ」 (5)  重松 清

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新聞小説 「ひこばえ」(5)  8/18(76)~9/17(105)
作:重松 清  画:川上 和生

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第四章 和泉台ハイツ205号室 1~29
四月二十九日の朝、早い朝食を済ませ、9時になるのを待ってアパートの大家さんに電話。姉の話では上品そうな人。留守電のメッセージ。必要事項を言ってスマホを切った。
それからすぐに先方から電話。川端久子さん。

こちらは昨日電話頂いた藤原宏子の弟、と名乗る。
事務的になり過ぎず、でも一線は守る・・・・同じ武蔵野急行電鉄線であり、これから伺えると言った。

 

各駅停車の電車に乗っている洋一郎。

川端さんとは駅で落ち合い、お骨のある寺に行くことに。
コーヒースタンドで時間をつぶし、川端さんに電話すると通路で軽く手を振る老婦人がこちらを見ていた。


ぎこちない挨拶の後、川端さんの話。クモ膜下出血で、ずっと眠ったまま亡くなった。見つかった場所は公園だったとのこと。ベンチの前で倒れていたのを子供たちが見つけて救急搬送された。
寺へはバスで向かった。この街に父がいた。十年前に越して来たとの話から、電車等で隣り合わせになった可能性も思う。

 

照雲寺は、風格ある本堂を構えた寺だった。川端さんから、住職の道明和尚を紹介される。年齢は四十代半ばか。実家の縁もあって、父の骨を預かってもらった。先導されて納骨堂に入る。

祭壇に置かれた骨壺に「俗名 石井信也殿」の短冊。

一九七〇年以来、四八年振りの再会。悲しみ、感慨はなく、感情は凪いでいる。焼香して手を合わせた。


住職の話では、ここでやっている写経教室にも何度か来たという。
父を納めた骨壺は七寸。いっとき、地方によっての骨壺寸法の話。西日本は三寸から五寸だという。
その話から、お骨を納める先を聞かれ、言葉に詰まる洋一郎。

あとはよろしく、では済まない。
川端さんが、お骨をしばらく手元に置いては?と持ち掛けた。

 

寺の前でバスを待つ川端さんと洋一郎。遺骨を手元に置く話には首を横に振ってしまった。川端さんは賃貸物件を三棟持っており、老人の孤独死は父で五人目。照雲寺に預けられ、過去四人は全て引き取り手なく合祀された。
住職が話した川端さんの好意。一人暮らし老人の入居を拒まず、トラブルにも誠実に対応。父の最晩年は、さほど寂しくなかっただろうと、初めて思う洋一郎。

乗ったバスで、父が住んでいたという「和泉台ハイツ」に向かった。

 

築三十年で、部屋は1LDK。和室にこだわったので、老人ばかりが入る様になってしまった。部屋は205号室。
父は十年前に入居。工事現場の誘導員が主な仕事だったらしい。家賃滞納はなかった。


アパートに着き、中を見せてもらう。部屋は綺麗に片付いていた。灰皿にタバコの吸い殻が二本。リビングの座卓にハイライトと使い捨てライターがあった。


無名ブランドのテレビにVHSのビデオプレーヤー、DVDプレーヤー。そしてVHSテープが数本とDVDソフト。
あとは文庫本と旅行雑誌。これらを見ても父の顔は浮かんで来ない。
その中に毛色の違った本が。「原爆句抄 松尾あつゆき」長崎に落とされた原爆で妻子を奪われた俳人の句集。妻を捨て、二人の子どもを捨てた者が、どういう思いでこれを読んだのか・・・・
本は図書館から借りたものらしく、その返却を川端さんに頼まれる。
次いで押し入れを開けると、上の段が空っぽ。持っているものが少ないから上の段が余った。
何も置くまいと決めたのか、そもそもなかったのか。

この先公園を見せてもらう予定だったのが、二時間足らずで疲れ切った。施錠した川端さんが鍵を渡す。業者に処分を頼むつもりだったが、しばらく通ってみれば?の言葉に逆らえず、それを受け取る。そして賃貸契約を一ケ月延長。

 

別れ際に父が持っていたという携帯電話を渡される。この一週間電話、メールの着信はない。
アドレスの登録は三十人ほど。リストの「石井」で始まるところには父の長兄「石井勝一」のみ。
スクロールの末尾近くで目を疑う。「嘘だろ・・・・」
画面に「吉田智子」「吉田宏子」「吉田洋一郎」の登録。旧姓の私たち親子。電話番号の登録はない。番号を知った時の準備か、ただ、かつての家族の痕跡を残しておきたかったのか?

 

感想
父の遺骨と、住んでいたところの確認。幼い頃に縁が切れた父親の死。それも数日前まで生きていた。
何の思い入れもない、感情が湧かない中で大家さんから「お父さま」と呼ばれる居心地の悪さ。
携帯のアドレスに、捨てた家族の名前を入れていた父。

 

離婚でいったん縁が切れても、親子の血縁は残る。すごく微妙な心のヒダに沁み込んで来る感じが重松らしいという事か。だが死んだ人のトレースはどうしてもモチベーションが落ちる。退屈で仕方がない。

 

 

 

ファウンデーションと地球(銀河帝国興亡史⑤)発表:1986年 アイザック・アシモフ

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ファウンデーション
ファウンデーション対帝国
第二ファウンデーション

ファウンデーションの彼方へ

 

前作(ファウンデーションの彼方へ:興亡史④)超あらすじ
ターミナス議員のゴラン・トレヴァイズ。第二ファウンデーションの存在を主張して、歴史学者ジャノヴ・ペロラットと、セイシェル星区にある惑星ガイアに向かう。そこで出会うブリス。

第二ファウンデーションの発言者ストー・ジェンディバル。「反ミュール」の存在を主張。
惑星全体で意識を共有しているガイアが反ミュールの正体。
ガイアの領域に集まるターミナス市長のブラノ(第一ファウンデーション)と発言者ジェンディバル(第二ファウンデーション)。

精神フィールドの攻防で三すくみ状態になるブラノとジェンディバル、そしてノヴィ。それを解決するために呼ばれたトレヴァイズは、銀河系の将来に対する選択を迫られる。
第一、第二ファウンデーションを双方活かすため、ガイアの目指すギャラクシアを選択したトレヴァイズ。
それは直近で結論を出さないための「時間稼ぎ」。

 

超あらすじ
自分がギャラクシアを選択した理由を確認するため、地球を目指すトレヴァイズ。同行するペロラット、ブリス。
人類祖先の伝説があるコンポレロンで、運輸大臣リザラーと関係するトレヴァイズ。歴史家デニアドールの教える三つの座標。
一つ目のオーロラでは野犬に追われ、何の収穫もなし。
二つ目のソラリアで全人のバンダーに殺されかけて、逆に倒し、その子ファロムを連れて脱出。
三つ目のメルポニアで植民グループ「スペーサー」の位置座標を入手。座標からアルファを見つける。惑星の名は「新しい地球」。地球の最後の民が移植された一つだけの島。そこの女性ヒロコと関係するトレヴァイズ。ウィルスからの脱出。
地球への到達。だが放射能により上陸は不可能。衛星である月への訪問。月を守っていたダニール・オリヴォー。
地球の終焉以来、二万年作動を続けたダニール。ギャラクシアを目指してガイアを育てて来た。

セルダン・プランもダニールの関与で始まった。
終末が近いダニールの願いは人間との融合(相手はファロム)。
ギャラクシアを選んだトレヴァイズの考えは、銀河系以外の脅威に対する備え。分裂、対立のない世界。
その決意の裏で残るファロムへの疑い・・・・


感想
前作で第一ファウンデーション、第二ファウンデーション、ギャラクシアの三択の中からギャラクシアを選んだトレヴァイズが、その判断の妥当性を確認するため地球を求めて旅するドラマ。
ペロラットとブリスがいちゃつく姿はアシモフの願望か(笑)。それに対抗する様な、トレヴァイズとコンポレロンの運輸大臣リザラーとのセックスには恐れ入った。ただ、様々な惑星を訪れるのは面白い反面、単に紀行モノの感じで、印象に残り難い。

しかし日本名の「ヒロコ」が出て来たのにはびっくり。やはり日本にも重大な関心を持っていたのかな?

 

探し求めていた地球本体が、どうして放射能汚染されてしまったかの理由がイマイチ良く判らない。・・・抗争と災害の局面を改善するのは容易ではない・・・との記述があるだけ。この辺りはもう少し具体的に核戦争とか原発事故とか言ってもらった方がいい。
それから、最初ロボットを伴っての植民が、どこがどうおかしくなってロボット抜きの植民になったのか。その辺りの説明がソラリアだったのかな?(イマイチ不明)

月に移した物は一体なに? 要するに二万年の記憶を持ち歩いているダニールがそれの事なんだろう。
結局ガイアの基礎を作ったのも、セルダン・プランのきっかけを与えたのも、図書館から地球の情報を引き上げたのも、みーんなダニールの仕業、と全部伏線回収を一人におんぶしているのが、少し安直な気がする。
特にセルダン・プランは、三部作まで書いてこの興亡史の中核をなすもの。それをダニーがチョコ、チョコと関与した結果だというのでは、ちょっと裏切りに近い。

個性を重視するトレヴァイズが、結局エイリアンからの侵略に対応するため、全体主義に賛成するというラストがあまり賛同出来ない。
それから最後の4行の謎。融合すべきファロムが内なる敵かも知れない、なんていうのを仕込んでおいて、それの続編がないのは「あかんぜよ」

 

本人はもっと長生きするつもりだったのだろうが、本作の後、ファウンデーション設立の前日譚となる二冊を数年かけて書いたところで命が尽きた・・・・

 

ハードカバー表紙

文庫版表紙

 

 


第一部 ガイア

第一章 探索開始
なぜそうしたか?未来としてガイア(ギャラクシア)を選んだ事を自問するトレヴァイズ。彼の心の中には、それを望まない「なにか」がある。

なぜその決定を自分が下したか、知る必要がある。また、超有機体の一部になりたくない。
「地球を見つけなければならない」と言うトレヴァイズ。

ペロラットが訪れた。私も行きたい、と言うペロラット。彼女も行きたがっていると言う。
ブリスとの話。ドムを通じて、この件をある程度知っていた。
地球の位置についてはガイアはそれを知らない、とドムと同様の返事を返す。
ブリスの辿った記憶では、ガイアの創立は一万八千年前。それは銀河帝国の確立前。よってガイアへの最初の植民者は地球から来た。だがその記録が失われている。この事からも地球探索の理由がある。
準備ができ次第出発するとの宣言。

 

第二章 コンポレロンに向かって
小雨の中、宇宙船「ファー・スター号」に乗り込む三人。
ブリスを除いて話す二人。彼女を嫌っている態度のトレヴァイズに気を遣うペロラット。ブリスはガイアだという意識が邪魔をする。
彼女から、感覚の共有について体験しているペロラット。脳障害の危険があるため、短時間しか実施出来ない。それは薬剤中毒と同じだと断じるトレヴァイズ。
目的地を隠している、と聞くペロラット。それを否定し「コンポレロンに行く」と言った。
裏切り者のムン・リ・コンパーが、セイシェルで話した彼の祖先の世界。全部は信じられないが、まず出発点として考える。だがそこは放射能を帯びた不毛の地だとも言った。
コンポレロンに関する手持ち資料の吟味。
放射能説は、接近を阻止するための方便かも知れない。コンポレロンへのジャンプの準備が間もなく整う。

 

第二部 コンポレロン

第三章 入星ステーションにて
ジャンプを前にして自分たちの部屋で待つペロラットとブリス。トレヴァイズに嫌われていると言うブリスは、以前彼からロボットではないかと言われた事も話す。お互いの愛情を確かめ合う二人。

ジャンプを終え、コンポレロンが実体の球形に見えるところまで近づいた。
星の情報から、寒い環境が予想された。入星ステーションからの指示があり、与えられた座標に向かって進む。

コンポレロン人の担当官が乗り込んで来た。名札にはA・ケンドレイ。
この船を重力船と認識していろいろ聞いて来る。
その後身分証の提示を求め、トレヴァイズを確認する。次にペロラットの身分証も提示させる。そしてブリス。彼女は何も持っていない。どこから来たのかも言えない。
重要な使命で来たと高圧的な態度を取るトレヴァイズに、あくまでも規則を盾に引き下がらないケンドレイ。
別室での説明。彼女はペロラットの連れであり、時々彼女を必要としている。だが彼にはターミナスに妻がおり、表沙汰になると後で惨めな立場になる・・・
渋い顔のケンドレイに、自分が全責任を負い、君の昇進を推薦すると重ねるトレヴァイズ。
しばらくもじもじした後、通す事を了承するケンドレイ。もし問題を生じれば一切助けられないと宣言された。

 

第四章 コンポレロンにて
ステーション通過のために、一種の方便を使った事を聞いてペロラットは困惑した。過去に妻を持った事はあるが、それ以後かなり長い間独身。まともな方法では通過出来なかったにも関わらず、その方便を否定するブリス。着陸場に降りるファー・スター号。

空港当局からの手続きに従い、機体を固定してタクシー乗り場に向かうトレヴァイズたち。肌を刺す寒気。
一台のタクシーが接近して止まった。それに乗り込む三人。
ドライバーは途中で態度を変える。コンポレロン公安部員だった。
タクシーが止まり、次いで三人の武装した者が近づいて来た。車から降ろされ、身体検査をされる。
男だちに先導されて進む三人。ロックを通り抜けた先に大きな建物。

 

第五章 宇宙船をめぐる戦い
三人はエレベーターに乗り、下階に降りた。その先に大きな部屋。入り口には「ミッザ・リザラー、ミン・トランス」ミン・トランスは恐らく運輸大臣。その大臣は明らかに女性だった。
トレヴァイズとペロラットは別にして、証明書なしで女性が入国した事が問題とされていた。
またファウンデーションから出されている船の接収命令。延々と続く口論。トレヴァイズは大臣に、仲間と話をする時間を要望し、15分間を与えられた。

小さな部屋に通された三人。
あの「三すくみ」状態を解いた時、ガイアの者はトレヴァイズの事を、市長とあの第二ファウンデーション員の精神から切り離した。だがあの船の事まで彼らの精神から切り離さなかった。だから市長は船の回収を要求したという事。
その間違いを正すのが君の仕事だ、とブリスに言うが、干渉は副作用があると渋るブリス。
ある事を試みようとするトレヴァイズ。15分が過ぎた。

大臣室に戻った三人。ペロラットとブリスは別室に移された。衛兵はそちらに向かい、部屋には彼女とトレヴァイズだけになった。エレベーターで更に下階へ運ばれる。彼女個人のアパートメントだという。
そこでも続く船の放棄に関する議論。自分は重大な使命を帯びており、それをコンポレロンが支持してくれれば利益を受けるだろうと話すトレヴァイズ。
その話を保留し、食事の時間を設ける大臣。
元の話題に戻る時大臣が、コンポレロン人の持つ反ターミナス傾向は、その不道徳性にあると言った。それは性的不道徳。
彼女は、ブリスを男性二人で性の相手として扱っていると指摘。それを言下に否定するトレヴァイズ。
彼女は魅力的だと言う大臣に、自分は魅力を感じないと答える。
「年増の方が好みなの?」との言葉に用心深く、熟年の女性を評価出来るだけの年齢に達している、と返す。
しばらく船の事は忘れましょうと言い、リザラーは自分が四十六歳で、未婚であると話す。そして話すうちにコンポレロンの男たちの性的な不器用さへの非難を始める。
それから先も挑発する言葉を投げるリザラー。それに冷静に返すトレヴァイズ。
突然リザラーが腰に巻いていた紐を外すと、布が落ちて上半身はだかになった。

 

第六章 地球の性質
横でいびきをかいている、運輸大臣のミッザ・リザラー。ファウンデーション育ちの不道徳者に対して、彼女が持った期待。政治力と体力を持ち、周囲の男性を軽蔑する一方、ターミナスの男に支配されたいという思い。それを信じて行動し、成功した。
目覚めたリザラーに優しく接するトレヴァイズ。ある程度納得したら三人と船を解放してくれそうな雰囲気になるが、そうなったとしてもあの若い女は連れて行けないと言う。
真実を話すトレヴァイズ。最古の人類はここで発生したのではない。最初の世界に到達しなければならない。

僕は「地球」を探しているんだよ。「その名を口にしたわね」

それ以後全く口をきかなくなったリザラー。互いにシャワーを浴び、着替えをしてようやく落ち着いた状況に戻る。
あの言葉は「最古の世界」と呼べばいい。コンポレロン人にとっては不吉な言葉。言い伝えが深く浸透しており、とても相容れない。
この話が出来る人を紹介して欲しいという願いに「ヴァジル・デニアドール」という歴史家を教えるリザラー。

 

居室を割り当てられ、三人が再び会う事が出来た。リザラーの言ったヴァジル・デニアドールを知らないペロラット。明日面会の手筈を取ってくれるという。
船は没収されない、彼女を説得したと言うトレヴァイズに、彼女がトレヴァイズに惹かれていたと話すブリス。
干渉したのか?と怒るトレヴァイズに、少し抑制を外しただけ、とブリス。
セックスの後に軟化した事を知ったペロラットに居直るトレヴァイズ。

 

ヴァジル・デニアドールとの面会。注意して「最古の世界」と言ったトレヴァイズに「地球のことですね」
リザラーは山岳地帯の出身なので、旧い風習を払拭出来ないという。デニアドールは懐疑主義者。
彼の考える、過去に起こったこと。
人類唯一の存在だった地球。今から二万から二万五千年前に、ハイパースペース・ジャンプ航法を確立して植民を開始。既にロボットが考案されていた。ロボット化社会を持った植民者は、テクノロジーを発展させ、異常な長命を獲得。そして祖先の世界を抑圧した。
地球はやがて新しいグループの植民者を送り出したが、ロボットは禁じられた。コンポレロンはその植民者の最古のもの。
初期の、ロボットを伴った植民者は死滅した。「処罰者」によって処罰されたとの言い伝え。ロボット依存の世界が、生きる意思の喪失等で弱体化、委縮したとの推定。
そして元の地球は、放射能を帯びてゆっくりと視界から消えて行った・・・・

 

第七章 コンポレロンを去って
その後昼食の時間を持ち、一段落して話を戻す。なおも地球の位置について訊ねるトレヴァイズにデニアドールは首を振る。
地球の位置を間接的に知る方法。帝国末期にもあった「起原問題」。ヤリフ計画:銀河系内の惑星の、植民の日付によるネットワークを作り、その球の中心を割り出す。だが惑星起原の情報が不正確なためうまく行かない。
他に何らかの情報があると思われる世界は?との問いに答えるデニアドール。
最初の植民者グループは「スペーサー」と呼ばれた。その数は五十。彼らの世界は我々のいかなる世界より古い。
昨年、古文書漁りをした時に、古い船の航宙日誌を見つけた。その船の船長が「スペーサー」の女を連れ出したという記述。日誌には座標かも知れない数列も見つかった。

コンポレロンの弱い太陽を見ながら別れを惜しむトレヴァイズとリザラー。このまま船と彼らを帰す事で、彼女の立場が悪くなる事を危惧するトレヴァイズ。そもそも着陸を許したのが災い。あなたを知ったことも、と言うリザラー。
コンポレロンを脱出したトレヴァイズたち三人。地球探索について、改めて決心を伝えるトレヴァイズは今後の危険を考え、自分一人で行くと言うが、皆一緒だとの返事。

デニアドールから入手した三セットの座標について考えを巡らすトレヴァイズ。まず座標の約束事の分析をコンピューターにやらせる。その中で最も近い「禁断の世界」の座標を銀河地図に記入。
銀河地図を二万年前に戻すが「禁断の世界」は見えない。その画像をコンポレロンのすぐそばまで移動させ、拡大させた。ターミナスの太陽より少し暗いが、コンポレロンのそれよりは明るい。元々銀河地図から省かれていたもの。

 

第三部 オーロラ

第八章 禁断の世界
トレヴァイズが調整を重ね、三つの「禁断の世界」の一番近いものの惑星系に近づいていた。
そして見えて来た居住可能惑星。巨大衛星は持っていないので地球ではない。酸素大気がある。
動植物が住んでいる、とブリス。上空からの情報を収集する宇宙船。
夜の側に明かりが見えず、人のいない兆候を示している。

 

第九章 群れとの対面
小さな丘の麓に着陸したファー・スター号。遠方から見通せない場所を選んだ。
気温は24℃、湿度40%。ほぼ快適な環境。トレヴァイズがブラスターと神経鞭をベルトにセットするのを見て嫌悪感を表わすブリス。

自分は武器を持たないと言うペロラットに「私が守る」とブリス。

外に出て木々の間を歩いて行く。上空で見た遺跡風の場所に行くペロラットとブリスを見送るトレヴァイズ。
注意深く周囲の観察と行うトレヴァイズ。

小鳥のさえずり、昆虫の羽音などが聞こえ、穏やかな環境。
回れ右をした時、彼は凍り付いた。そこにいたのは犬。
大型で痩せて頑丈な歯。唸り声で威嚇行動。犬の数はどんどん増える。近くの木に登って緊急避難。

何をなすべきか、考えが頭を駆け巡る。犬は二十頭以上集まっている。
ブラスターを使わざるを得ない。引き抜いてビームの指標を合わせる。そして一頭に狙いを合わせて撃った。

倒れる犬。だがそれは彼らに餌を与えただけだった。
遠くからペロラットの声。二人が遺跡から出るところだった。犬の状況は向こうも同じ。
彼女の精神攻撃は効かない。射撃しようとするトレヴァイズを止め、神経鞭を出力を下げて使うように言うブリス。
その提案に従って、犬を狙って鞭を打った。悲鳴を上げて転倒する犬。周囲に対しては効果的。警戒しながら船に戻る三人。

傷の手当てをするトレヴァイズ。武器が必要だった事を認めるブリスに、神経鞭を使う指示を感謝するトレヴァイズ。険悪な関係が多少穏やかになる。
ペロラットが、遺跡で撮って来た写真を分析にかけていた。その結果「惑星オーロラ」と解読出来た。
だが現人類の中で「オーロラ」という言葉を使っているものは一つもない。もし第一期の植民者と我々の祖先、第二期植民者との間に敵対する時期があったとしたら、第二期の者は、決してその名を使わない。
ロボットでも発見したらその説を受け入れようと言うトレヴァイズ。
「ロボットがあったんだよ」とペロラット。

ロボットを今まで見た事はなかったが、金属の頭、腕、足、銅。それに触ったとたん崩れた。
それが崩壊する前、その目がかすかに光ったという。
ブリスも同じものを見た。更に彼女は、それが直前まで機能していたのを感知していた。
「これで事情は一変した」とトレヴァイズ。

 

第四部 ソラリア

第十章 ロボット
二人を部屋に下がらせて操縦室に籠るトレヴァイズ。緊急の際には発進が必要。
しばらくすると、ブリスがそこに訪れた。さっき彼が言った「事情が一変した」との言葉を気にしていた。
ここをすぐに立ち去ろうと思っていたが、未だに機能していたロボットがあるとなれば調査が必要。
それには及ばない、とブリス。実は機能していたというのは嘘。

ペロラットの思い込み。彼から発見を取り上げられない、それほど愛している。
ブリスの、彼に対する愛をあり得ないものだと考えるトレヴァイズに、あなたはなぜ彼を愛するか(セックスを除いて)聞くブリス。
彼は一度も自分自身の事を考えない。同行しろと言われて出掛けた。トランターではなくガイアに行く時も反対しなかった。そして地球探索にも。僕のため、いや誰のためでも必要があれば命を捨てるだろう。
だからこそ、いつか彼が君に捨てられるような時が来るのがやり切れない。
ブリスの言葉。彼の精神に直接コンタクト出来る私が、彼の本質をどう思っているか。彼は別格。
全てを悟ったトレヴァイズは「今度こそ友達になろう」と手を差し出した。

 

探索の二番目の星は、デニアドールの座標通り。

惑星の周回軌道に入る。
ブリスを呼び出し、生物有無の確認を頼む。ロボットの存在。
森のそばの草地に船を着陸させ、外に出る三人。前回と同じくブラスターと神経鞭を持つトレヴァイズ。
遠くから人影が現れ、最終的に三体のロボットが近くまで寄って来た。
銀河標準語は通じない。ペロラットが古代銀河語を使って片言で話す。かろうじて通じるが、まともな情報にはならない。
そこに近づく人間の姿。「こんにちは、宇宙からの放浪者たち」と彼は言った。

彼はソラリア人。名をバンダーといった。さっそく地球の事を聞くと「知らない、知りたいとも思わない」
そして質問を無視してトレヴァイズの持つ武器に注目。簡単に取り上げられてしまい、無力化される。耳の後ろにあるエネルギー器官。

 

第十一章 地下
バンダーの言うこの星の沿革。ソラリアは五十番目の「スペーサー」。地球人が群れて出て行く中、ソラリア人は地下に入り、他との接触を断った。体は両方の性を取り込んで全人となった(トレヴァイズたちは半人)

。自分の意思で子孫を作れるため必要以上の人口は要らない。ソラリア全体の人口は一万二千。

エレベーターを降りて部屋に通される。広大な私有地を持っており地表は何千平方キロにも及ぶ。穀物、果樹等の事業を行っている。
車に乗って通路を下る。車両型のロボット。途中でおびただしい数のロボット。様々な作業に従事。
車が止まり、下車を促される。通されたのは「祖先の死の部屋」。過去の記録も収められているという。
不用意に過去のフィルムを見せて欲しいと言うトレヴァイズ。凍り付いたバンダー。昔の半人のフィルムは破棄された。他のソラリア人に聞きたいとの言葉に、急に態度を変えるバンダー。
「乗って来た船を調べ、君たち三人を全て殺さなければならない」

 

第十二章 地上へ
救いを求めてブリスを見ると、全くの無表情。何かをやろうとしている。
バンダーに話しかけて翻意を促すトレヴァイズ。だが全く説得されないバンダーは、慈悲を求める彼に向かって手を上げた。トレヴァイズの上に暗黒が降りた。

窒息したかと思ったトレヴァイズ。だがペロラットの声が聞こえる。バンダーが死んだと直感するトレヴァイズ。ブリスが何かをやった。
そばに倒れているブリス。ソラリア人は死んだという。

そこまでの意図はなかったが、彼の精神構造が特殊なためコントロール出来なかった。
彼の死が知られれば、脱出はほぼ不可能。何とか地上に出る方法を探る三人。
ブリスが弱い精神信号を感じた。今のところそれだけが希望。
数々の部屋を通って次第に信号が強くなる。見つけたのは子供。後継者として育てていたバンダーの子。
彼の死によって乳母ロボットが止まったので神経が乱れた。子供を抱きしめるブリス。
新しいロボットだと思い込ませて、外への出方を子供に聞くペロラット。名前はファロム。

 

何とか「戸口」の単語を理解させ、出口を探し当てた。

だが船の前には監視ロボットがいた。独立した動力で動いている。バンダーの命令を受けているので、彼以外

の言う事はきかない。連れて来たファロムをバンダーの子だと言ったが、エネルギー器官のない者は後継者ではないと拒絶。
時間稼ぎの末に、ロボットの神経に作用して倒したブリス。
そして全員が乗り込む。

 

第五部 メルポニア

第十三章 ソラリアを離れて
脱出は慌ただしかった。そのためファロムを一緒に連れて来てしまった事に気付かなかった。
ブリスがどうしても手放さなかった、とペロラット。
これからどうする?と聞くペロラット。先の二つから判断して、期待出来ない。
今までの経緯を振り返るトレヴァイズ。オーロラの遺跡を探しても、ソラリア人を調べても、情報を取ることは出来ない。たとえ地球を発見しても、何かが力を加えるのではないか?

ブリスがトレヴァイズを訪れる。呼ばれたと思ったらしいが勘違い。ファロムの事で口論。それからブリスの向こうのガイアとの関係。
先のソラリアでロボットの始末に手間取った事を蒸し返すトレヴァイズ。監視ロボットの精神を研究していたという言葉に不満。トレヴァイズにとってはただのロボットだが、知性を持ったものに対する反応は重要と返す。ファロムの扱いについて再び忠告するトレヴァイズ。「いまに危険な存在になるぞ」

ペロラットがトレヴァイズを訪れる。自分に子供が居たせいか、ファロムと相性がいいペロラット。気のないトレヴァイズ。ファロムの思念にある乳母ロボットのジェンビイ。
ブリスと彼の仲を心配するペロラットは口論を止めなくてはならないと忠告。ギャラクシアと個人主義の対立は続くと宣言するトレヴァイズ。
ソラリアでの個人の状態を見て、耐えられないと言う。それには同意。
次の-最後のチャンスもだめだったら?と心配するペロラットに「だからジャンプを延期している・・」

 

第十四章 死の惑星
対象の惑星が、居住可能かどうかの確認を長い間かけて行うトレヴァイズ。まだどちらとも言えない。
ファロムはブリスの指導もあって、急速に言葉を覚えており、片言の挨拶をした。不快に思うがブリスの手前褒めてやる。

また両性具有ではあるが胸のふくらみがあり、声も甲高いため女性として「彼女」の扱いに同意。
分析を進めた結果、この星には生存出来るほどの大気がない事が判明。だが建物はあり、情報を得る点では調査の意味はある。多少口論はあったが、トレヴァイズとペロラットが上陸する事で話がついた。

宇宙服を着てエアロックから出る二人。目指す三階建ての建造物。
壁に彫刻があった。五十の名前が挙げられており「スペーサー」の名前を列記しているのだろう。その中で少し大きな字体が一つある。

メルポニア。多分この惑星の名前。彫刻には座標らしい数列もある。
カメラでそれを記録するトレヴァイズ。

部屋の隅に緑色のものを見つけるトレヴァイズ。僅かな二酸化炭素と水、日光で生存している苔の様なもの。
日が昇るに従い、次第に温度が上がる。棚にあるブックフィルム。図書館らしい。
ブックビューワーを探し出すが動力がない。神経鞭の動力を落として作動させてフィルムを見た。ハイパースペース探検を扱った映像。
だがその時ペロラットが、トレヴァイズのフェイスプレートの隙間から苔が増殖しているのを見つける。僅かな空気漏れのせい。
船に戻る事とし、ブリスには中から開けない様指示して、外からロックを開けて入り、付着した苔を死滅させてから船内に入った。

この惑星そのものには得るものがなかったが、残り47の「スペーサー」の位置座標が見つかった。
しらみつぶしに探すと言うトレヴァイズに「地球の場所がわかったと思う」と言うペロラット。

 

第六部 アルファ

第十六章 諸世界の中心
以前議論した事のあるヤリフ計画。多くの惑星の植民時期から源を割り出す試み。今回「スペーサー」の第一波の座標分布を見れば源の位置が逆算出来る。
それを思いつかなかった事を恥じて、早速作業に入るトレヴァイズ。
既に訪れた三つの惑星の座標を加えて五十の座標がインプットされた。いくつかの補正を行い、最終的にコンピューターが仮想星図に示した星は「アルファ」。だがその星は連星。もしそうだと、地球の太陽ではない。
実際の宇宙空間にもその星がある事を確認するトレヴァイズ。そしてそれは銀河地図にはない。「あれが地球の太陽だ」

 

第十七章 新しい地球
連星の第二惑星に接近する宇宙船。厚い雲に覆われている。雲の割れ目を見つけて降下。
雲の下を飛ぶが、陸地が見つからない。陸地のない星には火がないから科学技術が発達しない。落胆するトレヴァイズ。だが延々と探した末に、長さ五十キロ、幅五キロほどの島を見つける。

草地に静かに着陸する宇宙船。気候は温暖。一人の女性が立っている。腰にスカートを巻き付けただけで、上半身ははだか。
話をしに船から降りるトレヴァイズ。女性は正確な古典銀河語を話した。残りの三人も降りて来る。
女性はヒロコと言った。男たちは漁に出ているという。人口は二万五千ほど。この星はアルファといった。正式にはアルファ・ケンタウリ。そしてこの島を自分たちは「新しい地球」と呼んでいる。

食堂に案内されるみんな。飲み物、果物等、多くの分量に驚く。
新しい地球があるなら、古い地球はどこにあるのですか、という質問が理解出来ないヒロコ。
昔の話を知っているモノリーという老人を紹介される。ブリスの相手としてヒロコの母の友人を連れて来てくれるという。
ペロラットはモノリー、ブリスとファロムはその友人の女性のところに行かせ、トレヴァイズはヒロコからもう少し情報を集める事とした。

ヒロコが自分の家にトレヴァイズを連れて行く。入り口はカーテンだけだが、閉じておけば勝手に入る者はいないという。
座ったところでヒロコが、マダム・ブリスはあなたの伴侶か?と聞く。ペロラット博士の伴侶だと言うと、驚いた。どうやって自分を癒すのかとの問いに。その話をされると余計味気なくなる、と返すトレヴァイズ。
慰め合う事を提案するヒロコ。それが女あるじとしての礼儀。
その提案を受けるトレヴァイズ。

 

第十八章 音楽会
朝食に次いで、昼食も同じ食堂だった。多くのアルファ人に歓迎される。
昼食が終わって、宿舎ともなる部屋に案内されるみんな。ブリスはガイアの特性として、ヒロコとトレヴァイズとの出来事を知っており、冷やかす。だが豊富な経験の一つ、と冷静に返すトレヴァイズ。
ブリスが、晩餐の後音楽会に招待されているという。

老人モノリーとの話をするペロラット。アルファ人の祖先は地球を去った最後の人々。
多くの植民者を送り出した地球が、徐々に放射能に汚染されて行った。一時期帝国がこの土壌改良に協力した時期もあったが、人口は減少を続けた。
そこで残りの住民を新世界に移植する提案がされた。それがこの世界。
陸地がなかったため、浅い場所に堆積物を集めて陸地化し、植物の種が蒔かれた。そして移植が行われたが、この星は打ち捨てられて完全に孤立した。モノリーの話では、地球は放射能を帯びている。

音楽会と聞いて喜んだファロム。歌を歌うファロム。美しい音節。ジェンビイが教えてくれたという。
夕食が終わって、音楽ホールへの移動。
始まった音楽は、女性四人による器楽。単調ではあるが、慣れるにつれ懐かしさも感じる。
次いでヒロコが約1.5mほどの木の管を持ってステージに立つ。多くの金具が付いて指で押さえるもの。ファロムはそれを「フィーフル」と言い、知っている様だった。
音楽会が終わるとファロムがヒロコのところへ行き、その楽器を見せてと言った。「これはフルートというのよ」触ろうとするのを制して、見るだけと言い、差し出すと、フルートが音を出した。驚くヒロコ。未発達な

がらも彼女のエネルギー器官によるもの。
ブリスが連れ出そうとすると、もう一度やってもらいたい、とヒロコ。
最初はぎこちなかったが、どんどん良くなる。ヒロコが演奏した曲を一音も間違えなく演奏。
求められるまま吹き続けるファロム。演奏が終わると、ヒロコはそれを彼女に渡した。

宿舎に戻り、ここにはとどまりたくないと言うブリス。それをヒロコが居るためだと思い、不快になるトレヴァイズ。だがその時、ヒロコが急いで入って来た。ここを立ち去って下さいと言う。
「さもないと死ぬからです。あなたがたみんなが」

性の交わりをした事でトレヴァイズにウィルスが感染した。アルファ人には免疫がある。
この星の民は人数が少なく、資源は豊富。後の略奪の恐れがないかを見極めるため、感染させた者を二日間留め置く。翌朝漁船団が戻って来るとウィルスが活性化される。
なぜ逃がしてくれるかの問いに、ファロムの音楽を聞いてしまったからと言う。あの音楽が破壊されるのに耐えられない。
宇宙に戻れば不活性のウィルスは死に、あなたたちは安全、と言って立ち去るヒロコ。

夜明け前に宿舎を脱出するみんな。ファー・スター号の中にある、衣服の感覚をブリスが探知して船まで辿り着いた。

 

第七部 地球

第十九章 放射能?
アルファ系を脱出したファー・スター号。ヒロコの言った事をそのまま信じられないトレヴァイズは、そのウィルスを探し出して死滅出来ないかブリスに聞く。困難を伴うが、弱っているウィルスを探し出して死を加速

させる事は出来そう。トレヴァイズのためよりも、それ以外の者の安全のために注力するブリス。

結果的にファロムの演奏能力に助けられた事で、ブリスの正当性を認めるトレヴァイズ。
ブリスは、それを別にしてヒロコにトレヴァイズを死なせたくない暖かいものを感じたと話す。リザラー大臣の件も、彼女を説得して脱出に導いた事を、功績だと言った。
上機嫌で操縦席に戻るトレヴァイズ。彼の心をうまく導いた事を褒めるペロラット。

三回ジャンプして、地球の太陽らしい星に近づく。「新しい地球」のアルファ星の双子に相当するもの。
今まで起こった事を考えると、近づくリスクがあるが、皆で接近に合意。
その太陽の惑星の調査。太陽から六番目の惑星にある巨大なリング。そうだとすると地球は三番目。更に近づくとその三番目の惑星は大きな衛星を持っていた。伝説の言い伝えと同じ。
「我々は見つけたんだ」

地球に向かって慣性航行を続けるファー・スター号。
昼食時にファロムが「またジェンビイに会えるかしら?」とブリスに聞く。曖昧に答える。
ファロムに、未知の力があるのではないかと疑うトレヴァイズを宥めるブリス。
地球の情報で、想定より温度が高い事が判明。放射能が存在する可能性。

ファロムの居る部屋に入るブリス。物を動かす能力があるファロムに、トレヴァイズの居るところでそれをやってはいけないと諭す。こういう運動でエネルギー器官を鍛えるのだとジェンビイが言っていたという。そして大人になったらロボットが動かせるようになる。バンダーの後継者になる筈だった事も認識していた。
ペロラットとブリスの会話。バンダーを殺したのが誰か、いずれ知られる事を恐れるブリス。一方ペロラットは、地球が放射能を帯びている事をトレヴァイズが知った時の事態を危惧。

トレヴァイズは、種々分析の結果、地球は居住不可能なほどの放射能があると認めた。全てを放り出したいと言う。だがそれは本心ではない。このまましばらく周回軌道に乗せながら考えるという。

 

第二十章 近くの世界
あの時から四度目の食事の時、沈黙を破るトレヴァイズ。
なぜ地球の情報が抹殺されなければならないのか。最初は地球の放射能が増えた時、何かを移して隠した。そしてごく最近トランターの図書館から地球の情報が除去された。
移した秘密が、地球を調べる事で明らかになるとしたら、その情報も隠さなくてはならない。
新しい地球も含め、情報を隠した場所を再び推測するトレヴァイズ。アルファの伴星にも考えが巡る。
その時、ファー・スター号がかすかによろめいた。「誰かが操縦装置を触った?」

ファロムがコンピューターのコンソールの前に手を付けていた。トレヴァイズのやっていた操縦法。
願いは「ジェンビイのところへ行きたい」。画面に映るのはソラリアだと想像。
そこに駆け付けるトレヴァイズ。バンダーを殺した者。言うことなど聞くものか。ソラリア行きの決心。船がまた震える。

ファロムをどかそうとするトレヴァイズを必死で止めるブリスは、ファロムに手を上げるよう言うが、聞かない。肩に手をやると、すすり泣きながら手をおろすファロム。一瞬彼女の心の中に入ったブリスは、トレヴァイズを睨みながらファロムを連れて別室に去った。
コンピューターの異常を危惧するが、今のところ大丈夫。多分矛盾する要求を出した。
だが、画面を見て「これはいいことかも知れない」
スクリーンに映っているのは地球の衛星「月」。月の地下だったら何かを隠す事は可能。宇宙船を考えれば、空気、水のない事が居住不可能の要因にはならない。
何とかファロムを寝かし付けたブリスが戻った。次の目的地が月と聞いて意外に思うブリス。

ブリスの助けを借りて月の表面を探索するファー・スター号。何度かの走査を行った後、ある場所を指さすブリス。我々を探知したようにも感じられる。歓迎の印象。強い知性を感じるが、人間ではない。

月面に降下する宇宙船。入り口が開き、機体が入ると閉じた。第二の入り口を通って広大な空間に出る。
エアロックから外に出る全員。呼吸可能であり、快適だった。
向こうに礼儀正しく立っている男。ファロムが走り出して「ジェンビイ!」と叫んだ。ファロムを抱き上げる男。
男が初めて口をきいた。流暢な銀河標準語。自分はロボットだと言った。名前はダニール・オリヴォー。

 

第二十一賞 探索おわる

ブリスとファロムを遠ざけ、ダニールはファウンデーション人の二人に話しかけた。
ペロラットは、古い伝説に出て来るダニールという名のロボットの話を出した。それは私だという。彼は、作られて二万年経つ。
ダニールの話す、今までの経緯。
最初彼は「オーロラ」に派遣されていたが、放射能を帯びた地球が出来上がるのを防ぐため、ここに来た。先にジスカルドというロボットが居たが、私たちは失敗。ジスカルドは機能停止する前に自分の精神感知・調整の能力を移植した。
地球の世話を引き継いだダニールは、当時指導的立場のイライジャ・ペイリの下で働いた。土壌のリサイクル、アルファ星の改良等。
だがロボット三原則を守りながら、抗争と災害の局面を改善するのは容易でない。
停止直前にジスカルドが三原則の前に付けた定義が「第零法則」。対象が人間でなく「人類」。一個の人間に対し、人類は抽象的概念。
人類を単一の有機体として扱えれば、処理が出来る。
ダニールはガイアの基礎を作った。だが人間だけで集まっている超有機体は不安定。だからガイアでは無機物も取り込んだ。ギャラクシアへのへの準備が出来たのが、やっと今世紀になってから。

ただロボット三原則は、ロボット自身が人類に危害を与える可能性のある決定を許さない。
五世紀ほど前に、ガイア確立に対する障害を丸く収めるための次善の策として、心理歴史学の発達を助けた。
ダニールは、ブリスを通じてトレヴァイズたちの旅行に同行していた。
旅を円滑に進めるため、ブリスの意識に紛れて導く事もやっていた。何度もトレヴァイズを失う危機に遭遇した。
結局ダニールに代表される願望はギャラクシア。「僕に何をさせたい?」との疑問。
ダニールは、自分が死にかけている、と言った。

それを悲劇とは思えないトレヴァイズ。二万年の寿命に対する評価。
ダニールは電子頭脳だけて五回交換を重ねている。最初の交換で一万年もったものが、現在では六百年で老化。
これ以上の複雑化は不可能であり、六番目の電子頭脳の設計が出来ない。

延命(自分の活動を減らす)のためにやった事が、地球・月系を孤立させるための文献除去。惑星からの地球に関する記録を人間型ロボットが持ち帰った。
一方ダニールは、電子頭脳を置き換える代わりに、人間の脳との融合を考えていた。それであればロボット三原則にも拘束されない。
自分の脳が融合されると考えて慄然とするトレヴァイズ。個性を失う事は絶対に拒絶。
ダニールは「あなたがた」と言ったのを繰り返す。
そこで自分がその役目を担うと申し出るペロラット。二万年の記憶の共有という使命に酔っていた。
だが脳が古い事を理由に断られる。またブリスもガイアの一部でありダニールと融合出来ない。
そこにブリスと戻って来るファロム。「このロボットはずっとファロムをほしがっていたんだよ」

ダニールとファロムの融合の話は、ショックではあったがブリスは受け入れた。
ダニールの探索終了宣言を受けたが、ギャラクシアが人類にふさわしい事の説明を求めるブリス。
セルダン・プランとの関わりの中で、地球を求めて必死で努力した。そしてダニールを見つけた時、ブリスが感じた精神は人間でもロボットでもない「新しいもの」。
人類は銀河系で唯一の知的種族であるというのがセルダン・プランの前提。性質の異なる知的種族が他にいれば、それは意味のないものになる。

銀河系は「宇宙」ではない。マジェラン、アンドロメダ等、その先に何十億もの星雲がある。
もしインベーダーの侵略があった時、我々の分裂・対立を見れば全部を支配するか、皆殺しにするだろう。
唯一の策はギャラクシアを作ること。
「それまでの時間があるかしら?」とブリス。
この状態があとほんの何世紀か続けばいい。

そう言って突然不安の疼きを感じたが、そのまま続けた。
「ここに--我々の中に--既に敵がいるというわけではないんだから」
彼は下を見なかった。こちらを見つめている、両性具有の、エネルギー器官を持つ、異質な--ファロムと目を合わせたくなかったから。

 

 

 

聲の形(こえのかたち) アニメ  2016年

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監督 山田尚子
脚本 吉田玲子
原作 大今良時
製作 京都アニメーション

 

キャスト
入野自由   石田将也
早見沙織   西宮硝子
悠木碧     西宮結絃
小野賢章   永束友宏
金子有希   植野直花
石川由依   佐原みよこ
潘めぐみ   川井みき
豊永利行   真柴智
松岡茉優   石田将也(小学生)
小島幸子   島田一旗(小学生)
武田華     広瀬啓祐(小学生)
小松史法   竹内先生
谷育子     西宮いと
鎌田英怜奈  マリア
濱口綾乃   将也の姉

 

 

予告編

 

感想
NHK Eテレでやっていたので視聴。
聴力障害者を題材にしたドラマ。コミックで発表されてかなり話題になったらしい。
幼い頃に、ハンデのある人をいじめるのはありがちな事。聴力でなくとも「大きなホクロ」「唇が厚い」「足が短い」等々。
幼いというのは残酷なこと。自分では大した事ではないと、ついやってしまったのが取り返しのつかない事だったり。
やった事もあるし、やられた事もある。

 

それはさておき。
将也が、やった事が自分に跳ね返って孤立するのは判るけど、それを高校生まで引きずるというのが少し不自然か。
将也が自殺を考える動機もちょっと判りづらい。手話を覚えて硝子に謝罪したいと思っている最中の事だからこそ、そういう時期には死のうとは思わないだろう。

硝子の自殺未遂もイマイチ。将也と母親とのわだかまりも解け、楽しく花火見物をしている時に死のうと思うか?
それも自宅のベランダから飛び降りようなんて、どこまで自己チューな奴だ!と思ってしまった。
ただ、自殺にそんな理路整然とした理由など求めても仕方がないか。

 

植野直花の気持ちは良く判る。将也に好意を持っていたものの、硝子の件で彼に責任を押し付けたうちの一人。それで再会した時に将也と硝子が仲良くしているのに逆上。
そんな将也が硝子のために命を落としそうになった。

 

聴覚障害は、あくまでもドラマの味付けであり、基本は将也の再生物語。そういう意味では、まあ許容範囲かな?エピソードもたくさんあり、数回の視聴に耐える。

 


あらすじ 詳細はコチラ(hmhmさんにお任せ)
高校生の石田将也。バイトや持ち物を売った金を母親の枕許に置いて家を出る。大きな橋の欄干から飛び降りようとずるが、思いとどまる。

 

石田将也の通う小学校に転校して来た西宮硝子。彼女は重度の聴覚障害で補聴器が欠かせない。筆談ノートでのコミュニケーション。最初は面倒を見ていた植野直花だが、面倒になって手を引く。

 

仲良くしようとした佐原がイジメの対象になり転校。

好奇心から近づいた将也もノートで「ごめんなさい」ばかりの硝子にイラ付き、彼女の補聴器を捨てたり、大声を出して脅したりの毎日。果ては彼女の耳にケガを負わす。

だがある時、硝子の母親から学校に訴えがあり、高価な補聴器が何度も壊されている事が明らかとなる。担任教師の竹内は、将也を名指しで吊るし上げる。他の者もやっていたのに、一番目立っていた将也に全てを押し付けたクラスメイト。
将也の母は金を工面して硝子の母親に170万を弁償。
それからは将也にイジメの矛先が向き、クラスの中で孤立する。
硝子はイジメの事もあって転校して行った。

 

中学でも元クラスメイトが噂を流して将也の孤立は続く。

高校になってからは、それが自分の性格となって、一人も友人がいない状態の将也は他人の顔が×に見えてしまう。


硝子の筆談ノートが捨てられない将也は、いつか彼女に渡すつもりで手話を習い始める。
手話教室に行った先で、偶然硝子を見かけた将也。

 

大金を渡されて、将也が死ぬつもりだとの直感から、言わないと金を燃やすと脅す母親。結局将也は白状(どさくさで金も燃える)。

 

生徒に因縁をつけられていたのを助けた関係から友人になった永束。ノリの良さに、次第に打ち解ける将也。

手話教室で硝子に会おうとする将也だが、硝子の彼氏だという結弦に阻まれる。結弦はカメラ小僧。

気付いた硝子に小学校時代の連絡ノートを渡し、以前の事を手話で謝る将也。手話を覚えてくれた事を喜ぶ硝子。

 

硝子の願いもあり、小学校の時のクラスメイトだった佐原を引き合わせる将也。その輪は次第に広がる。その中には植野も居たが、いじめた者といじめられた者が仲良くする事に抵抗感を持っていた。

結弦は、実は硝子の妹。最初は警戒するも、次第に将也の存在を許す様になる。だがある時硝子の母親がそれを知り、将也にビンタする。

仲間で遊園地に遊びに行った時、硝子に絡む植野。後日、観覧車で植野が硝子を責めていた事を将也に教える結弦。

 

硝子や結弦を見守ってくれていた祖母が亡くなり、不安定になった結弦を慰め、葬儀場まで見送る将也。
そんな事もあって硝子の母親・八重子も将也が関わる事を許す。

硝子たち家族と共に花火見物に出掛ける将也。八重子と結弦がいない時に、家に帰ってしまった硝子。


結弦に頼まれてカメラを取りに硝子の家に行った将也は、ベランダから飛び降りようとしていた硝子を見つけ、すんでのところで腕をつかむ。何とか引き上げるが、その反動で将也が落ちる。

 

水の上に落ちたため、一命をとりとめた将也だが昏睡状態。

植田は、自分が死のうとした事に将也を巻き込んだのが許せない。

その後つきっきりで看病する。

 

目覚めた将也は予感がして、いつも鯉にエサをやっていた橋まで行くと、硝子もそこにいた。
「君に、生きるのを手伝って欲しい」と手を取って頼む将也に応える硝子。

 

夏休みも終わり、将也は自分の学校の文化祭に硝子を誘う。だが事件の事は皆知っており、視線に耐えられずトイレに逃げ込む将也。
そこに駆け付ける永束。度重なる説得でようやくトイレから出た将也に抱き付いて涙を流す永束。
廊下に出ると小学校からの仲間の顔が。

植野も居て、手話で硝子に「バカ」と言うが、どうもキレが悪く、正しい「バカ」をやって見せて笑う硝子。
みんなに一緒に回ってくれと頼む将也。

歩くうちに、回りの人間の×印が落ちて行く。
涙を流す将也。

 

 

 


君の膵臓をたべたい    2017年

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監督 月川翔
脚本 吉田智子
原作 住野よる 『君の膵臓をたべたい』

 

キャスト
山内桜良              - 浜辺美波
「僕」(志賀春樹)          - 北村匠海
滝本恭子(学生時代)     - 大友花恋
一晴(ガム君)            - 矢本悠馬
隆弘                   - 桜田通
栗山                   - 森下大地
宮田一晴(現在のガム君) - 上地雄輔
桜良の母                        ‐ 長野里美
現在の恭子                    - 北川景子
現在の「僕」(志賀春樹)    - 小栗旬

 

 

 

予告編

 

あらすじ詳細はhmhmさん参照)
中学の国語教師「志賀春樹」。12年前に卒業した母校に赴任している。取り壊しが予定されている図書館の蔵書整理を手伝ううちに、生徒との話で昔を回想する。

 

読書好きでクラスメートと関わりを持たない春樹。ある日病院の待合室で落とし物を拾う。「共病文庫」と書かれた文庫サイズの日記帳。そこには自分の余命が膵臓の病気のために長くない事が書かれている。
その持ち主はクラスメートの山内桜良だった。
明るく振る舞う咲良だが、この件は絶対に秘密だと約束させられる(特に親友の恭子には)。
その後、春樹と同じ図書委員になってつきまとう咲良。放課後も様々な理由をつけて春樹と共に過ごす。不審に思い、春樹に警告する恭子。


咲良の話す聞きかじり。不調がある時、他の動物の、その部分を食べると治るという。

咲良の言う「死ぬまでにやっておきたい事」の一環であちこちデートに付き合わされる春樹。九州への一泊旅行にまで行くことになる。

だが親しくはなるものの、人を寄せ付けない性格の春樹にはうまく対応出来ない。

 

ある時、咲良が病欠となり、心配で見舞いに行く春樹。病状悪化による検査入院だったが、周囲には虫垂炎だと誤魔化していた。


咲良の退院に合わせて一泊旅行を計画する二人。

見たいと言っていた桜。

落ち合う前に「君の膵臓をたべたい」とメッセージを送る春樹。

だが待ち合わせの場所に咲良は来なかった。

ニュース報道される咲良の死。通り魔に殺された。
一ケ月の休学を経て咲良の家を訪れる春樹。母親は春樹の事を知っていて「共病文庫」を渡す。

 

現在に戻って。
図書委員の生徒が見つけたヒントで、蔵書の中から咲良が春樹と恭子に宛てて書いた手紙を見つける。
実は恭子から結婚式の招待状を貰っていて放置。

今日が式の日だった。
普段着のまま式場に駆け付けて手紙を渡す春樹。

咲良の病気の事情を初めて知る恭子。
彼女の遺言だった「仲良くしてください」の言葉をかける春樹。


感想
TV放映の録画。

題名がショッキングだったが、劇場鑑賞までは行わず。
クラスメートが抱える病気を、たまたま知ってしまった高校生の苦悩。重い病気なのに、生活自体が普通すぎるのにちょっと違和感があったが、後半のお泊りでポーチに入った薬や注射器の表現がありナットク。
ヒロインの浜辺美波と、相手役の北村匠海がいい。特に男性の方は、人とのコミュニケーションが苦手で内向的な青年を良く演じていた。

 

病気になった時、他の動物の患部に相当する部分を食べる事で治そうというロジックに対し「君の膵臓をたべたい」というのが、今回のキーワード。
前述のロジックとは整合しないが、彼女の体にとって最も忌わしいものを取り除いてやりたい、もう一歩踏み込めば「引き受けてやりたい・ひとつになりたい」という究極の愛。
これに心打たれる感性がある限り、まあ若い人たちも心配ない・・・・カナ?

ちょっと気になって原作の結末をネタバレサイトで確認したら、咲良の死後苦労して恭子と親友になった春樹が、一年後彼女と一緒に墓参りをする話の様だ。  原作通りに作れよ!と言いたい・・・・

映画では要するに、12年も恭子の事を放置していたというのがダメポイント。それで結婚当日に真相を知らされたところで、気持ちが動くか? 遠い昔のエピソードでしかない。
最後春樹が「仲良くしてください」と言うのが、いかにも手遅れ感満載でツラい。

 

ただ、今回映画を観てつくづく思ったのは「余命」について。
病気だろうが老衰だろうが、普通は徐々に死を迎える「余命」の期間を経て息絶える。だが今回の咲良は余命を宣言され、その残り少ない中で精一杯生きようとする途上で突然、死を迎えた。
交通事故による死もそうだが、余命を経ないで死んだ者に対して、人は心を残してしまうのだろう。

 

 

ファウンデーションへの序曲(銀河帝国興亡史⑥)発表:1986年 アイザック・アシモフ

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アイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズは①~③(1951~1953年)の後、④~⑤(1982~1986年)の続編を以て、時間軸基準では完結した。
その次にアシモフが取り組んだのが、ハリ・セルダンが「心理歴史学」を完成させるまでの話。若きセルダンが描かれる。

興亡史としては⑥、⑦の扱い。

 

ハードカバー表紙

文庫版表紙

 

超あらすじ
数学者の大会で、未来を数学的に予言出来ると言った、32歳のハリ・セルダンは各方面から注目される。
銀河帝国皇帝クレオン一世がセルダンを招聘。宰相のエトー・デマーゼル。謁見は不調に終わり、皇帝は失望。謁見の後、襲われたセルダンを連れ出すチェッター・ヒューミン。
ヒューミンの手引きでストリーリング大学に行き、ドース・ヴェナビリという女性に引き合わされる。
ドーム屋上での遭難騒ぎ。凍死を免れるセルダン。
膨大な情報量を扱うのでは心理歴史学が機能しない事から、狭くても過去の歴史が確保されているマイコゲン地区へ向かう。
サポートする女性レインドロップ43から、歴史の資料である「本」を入手するセルダン。本に「ロボット」の記載。
ロボットを求めて寺院「サクラトリウム」への侵入。だがそこにあったのは単なる象徴。捕らえられるセルダンとドース。
ヒューミンに危機を救われ、帝国から目の届かないダール地区に送られる二人。
数学者を目指すユーゴ・アマリルとの出会い。地球の事を知っている「リター母さん」に会うため、危険なビリボトンに出向くセルダンとドース。案内者の少年レイチ。
アパート家主の妻カシリアの策略で危機に陥るが、レイチの機転で助かる。
レジスタンスのダヴァンの手引きにより、ダール地区から脱出。

着いたところはワイ。南極地区を統治して長い歴史を持つが「反帝国」として認識されている。女性市長のラシェル。父マニックス四世から権限移譲を受けている。
帝国主導によるクーデターによりワイの政権が奪取される。力を失うラシェル。裏で手引きをしていたのはヒューミン。

彼の正体は帝国宰相のデマーゼル。

 

セルダンとヒューミンだけの会話。
最初、心理歴史学に実用性はなかった。単純な世界として扱うためにマイコゲン、ダール地区は有用だった。

だが結局求めていた単一の世界は「トランター」にあった。
そしてヒューミンがロボットである事を言い当てるセルダン。
二万年に亘って機能を続けている彼の正体は「R・ダニール・オリヴォー」
帝国の宰相として、何とか衰退を防ごうと関与していた時にセルダンの論文を知り、人類にとっての未来を識別する可能性に賭けた。

ここから先はセルダンの仕事。
セルダンにとって、大事なパートナーのドース。
ロボットである事を承知で彼女に求愛するセルダン。

 


感想
ファウンデーションと地球(銀河帝国興亡史⑤)のラストで現れたロボットのダニールが、ハリ・セルダンにどうやって関与したのかを描くシリーズ。そこに書かれていた「五世紀ほど前に、ガイア確立に対する障害を丸く収めるための次善の策として、心理歴史学の発達を助けた」の一行が大作ドラマに膨らんだ。

若いハリ・セルダンが、最初理論だけで実用にはならなかった心理歴史学を、ヒューミン/デマーゼル/実はダニール からの影響を受けながら軌道に乗せる端緒を掴むまでの話。
様々な地区を渡り歩いて、危機を脱しながらヒントを掴んで行くというパターンはいつもの流れだが、話がトランター内に限定されているので「宇宙もの」という観点からはやや物足りないか。

 

相棒のドース。最初他人に託して、セルダンがドームの屋上で凍死しかけた事で、彼を「放っておけない人物」と認識するが、その後も勝手な行動をするセルダン。普通ならキレるところだが、種明かしによれば彼女もヒューミン同様ロボットだったのならナットクか。
そらーロボットなら、ナイフ持ったチンピラにも負けるわけないわな。

 

ヒューミンの語る、帝国衰退の要因の一つが出生率低下というのは示唆に富んでいる。
今回では心理歴史学の研究として全く進んでおらず、膨大な帝国全域の歴史ではなく、トランターに絞ったものとして今後進めて行くという、方針だけが判明。
今回はアクション混じりだったが、次作の「ファウンデーションの誕生」では心理歴史学の完成までの道程が描かれるだろう。次で興亡史としては終わり。何だか寂しい・・・・

 

あらすじ
文庫版・上巻

数学者
銀河百科事典:クレオン一世
エンタン朝最後の銀河帝国皇帝。ハリ・セルダンと同年(定かではない)。二十二歳で帝位を継いだ。宰相エトー・デマーゼルの手腕により穏やかな統治を行った。

 

銀河帝国の皇帝に即位してから十年のクレオン一世。十年毎に行われる数学者の大会で、未来を数学的に予言出来ると言ったハリ・セルダンに興味を持ち、宰相のエトー・デマーゼルに招聘を命じた。
宮殿に呼び出されるハリ・セルダン、32歳。
早速、数学者大会での講演内容の事を聞く皇帝。期待する言葉が得られずイラつく皇帝は、自分の暗殺について予言せよと迫る。過去の例を引いて確率論を話すが一蹴。セルダンを下がらせる皇帝。
セルダンへの失望を話す皇帝。デマーゼルは彼が害をなす可能性に言及。今後見張りを付ける事を提言。

 

謁見の後、公園に出掛けたセルダンに近づく男。数学の十年大会で彼を見たと言う。名前はチェッター・ヒューミン。ジャーナリスト。
セルダンが宮殿に呼ばれた事を知っていた。警告するヒューミン。監視を続け、必要に応じて捕まえ、もし危険なら殺す。それはセルダン自身の予測でもあった。

 

逃走
銀河百科事典:トランター
第一銀河帝国の首都。今の時代がこの都の絶頂期。人口400億。ドームに覆われ、果てしなく広がる都市。

男二人に因縁をつけられるセルダン。今立ち去れと命令される。
そこへ助っ人に出たヒューミン。逃げて行く二人。
だがここを立ち去らなくてはならないという。彼らは多分警察から差し向けられた者。
エアタクシーのレンタル・ターミナルで車に乗り発進。目的の場所はトランターの中でも、帝国権力からは全く安全だという。
ヒューミンの語る銀河帝国の歴史。二万年以上前には単一の惑星系だったかも知れない。人類としての未来は今後も続いて行くだろう。それを調べる事は極めて重要。
「私は歴史心理学と呼んでいる。理論的には可能」とセルダン。
ヒューミンの話す衝撃の言葉「銀河帝国は、死にかけて、います」。

 

大学
銀河百科事典:ストリーリング大学
古代トランターにあった高等学術機関。ハリ・セルダンが逃亡中に一時滞在した。

ヒューミンの言葉を聞いて不快感を抱くセルダン。不確定の物事を評価するために確率の法則を使ってエレガントな方程式を作った。だがそれは数学的好奇心から。それに意味を与える歴史的知識は持っていない。
この状況で心理歴史学が実用に供するとはとても考えられない。

銀河帝国が死につつある理由を聞くセルダン。トランターの人口減少を挙げるヒューミン。理由の一つは出生率の低下。それとテクノロジー進歩の停滞。感覚としてはそう感じるが証明が出来ない。
それを見つけることは出来ないと言うセルダンに食い下がるヒューミン。やれというのではなく「やってみてくれないか」と言っているのです。失敗してもともと。
理由も判らず「やってみましょう」と言ってしまったセルダン。

 

エアタクシーは大きな駐車場に入る。ここからはストリーリング地区。公然の攻撃からは守られる。
車を降りて歩き出す。最後の行程はエクスプレスウェイ。
ヒューミンの話では、これから向かうのがストリーリング大学。

 

図書館
通された部屋は窓がなかった。セルダンが置いて来たものはもう取り返せない、とヒューミン。当面の出費に対応するため、彼のクレジット・タイルをくれると言った。
ヒューミンは、これで自分は通常の生活に戻るという。

ブザーで起こされた。相手はドース・ヴェナビリと名乗り、ドアの内側にホログラムで現れた。
身支度を済ませ、ドアを開ける。彼女はヒューミンから世話をする様に言われている女性。トランター人ではなくシンナの出身。セルダンの知らない星。
彼女は二年前に博士号を取ってここに居るという。もうすぐ30歳。
魅力的な女性との関わりに喜ぶセルダン。

 

晩餐を終えたクレオン一世は、デマーゼルを呼びつけて、先日の数学者について問い質した。
セルダンを早く帰国させようとしたが、加勢する者が居て今はストリーリング大学に居る。立腹すると共に引き抜きを心配する皇帝(例えばワイの市長)。そんな事態になれば殺す、とデマーゼル。

コンピューターの端末を見つけ出し、遅いながらも作業を進め始めたセルダン。
歴史を学び始めて、文献が限られた事件に集中している事をドースに指摘するセルダン。数学では、知った事は全てコンピューターの中に再現出来るが、歴史は取捨選択がされる。
歴史は取捨選択しなくてはならない、と言うドースに対し、心理歴史学の法則を割り出すには歴史の全てを知らなければならない、とセルダン。研究の先行き不安を口にするドース。

解決策が思いつけないセルダン。

 

上側
翌日になると、また端末に向かうセルダン。
そんな彼を訪れるリスング・ランダ。東洋人。リスングの伯父は気象学で有名な学者。彼は心理歴史学の内容を調べて気象学への応用可能性を考えていた。
ドーム覆いの「上側」に設置してある計器類のチェックに明日同行するというセルダン。気象学と聞いて驚くドースに気分転換と言った。スケジュールを理由に同行を断るドース。

 

気象学プロジェクト・リーダのジェナール・レッゲン。気象変化の一般法則を求めている。ドームの屋上に向かっていた。

同行の女性クロウジア。「上側」に出てからは彼女の説明を聞きながら関連の場所を回った。
上側に溜まる土のおかげで、樹木も生えていると聞き興味を持つセルダン。
クロウジアがレッゲンに呼ばれて残されたセルダンは、その樹木に急に興味を持ち、高いドームの方へ歩いて行った。
しばらく歩き、もう一つのドームの上に樹木を見つけて納得するセルダン。だが上空から音が聞こえ、遠くに目をこらすと、黒い点が現れて、やがて雲に隠れた。
その時、理由も判らず「追っ手が来た」と思い込むセルダン。
木立の陰に隠れるセルダン。近づいて来る物体はジェットダウンだった。六角形をして空中にホバリング出来る探査用の乗り物。
ヘリコンにもある乗り物。追っ手なのか、気象探査の一環なのか。なおも近くを動き回るジェットダウン。セルダンは、これを陰謀と判断して隠れ続けた。去って行ったジェットダウン。辺りを見回すと、日が暮れてい

た。出て来た所を探すが、どれだけ歩いても覚えのある場所に出ない。
顔に突き刺さる様な感覚。雪が降って来た。体を丸めてうずくまる。
眠れば死ぬと判っていても、目がひとりでに閉じた。

 

救出
ドースがレッゲンを見つけたのは日暮れ前。セルダンが「上側」に同行した事を確認したが、今どこに居るか知らないという。自分の多忙に気を取られて確認していない。
ドースは地震学者を呼び出した。地震計のデータで人の動きがあれば検知出来る。地震学者のベナストラが条件を絞り込んで、その痕跡を捕まえた。二十分前まで動きがあった。
レッゲンに緊急連絡をかけるドース。もし彼が死んだら過失致死だと脅迫。雪が降る中、セルダンを見つける。幸い手が触った時声を上げた。毛布に包まれて回収されるセルダン。

 

医者による抗ウィルス血清の投与。外世界人である事が幸いした。もしトランター人だったらショック死レベル。
二日目の朝、セルダンは目覚める。陰謀説を語るセルダンに驚くドース。ジェットダウンの件。
レッゲンが見舞いに来た。

ジェットダウンが来た事は知っていたレッゲン。トランターの気象観測所にはそれを所有しているところは多いという。
ドースは本件を、ジェットダウンを見て気が動転したセルダン博士が、暗闇のため帰れなかったと結論付け、水に流すようレッゲンに宣言。彼の話のうちどれだけが本当なのだろう?彼女には判らなかった。

 

マイコゲン
セルダンが目覚めると、そこにヒューミンが居た。二ケ月ぶりの再会。「上側」での事件を聞いて確認に来た

もの。
研究の進捗状況を聞くヒューミン。

二ケ月足らずで何が出来る!と憤慨するセルダンに、希望はありそうかと聞き直すが「率直に言って、ないね」
ドースが改めて心理歴史学の事を、数学抜きで説明して欲しいと要望。
物事は、複雑化するほどシミュレーションが困難になる。統計的な手法で、あるセットの出来事が起こるか、それとも別のセットで起こるかの確率で述べる事で未来の予測が可能になると証明した。
だが銀河系社会を理解するのに十億年かかる事になる。今の時点では大学図書館も役に立たない。
そこでヒントになる考えを話すセルダン。

過去に遡れば社会は縮小する。
ヒューミンが後を継いで「ずっと単純な銀河系社会を扱えば、心理歴史学を成立させられる?」「そうだ」
だがドースは記録時の効率、記録保持の必要性等で切り捨てられるものがあると説明。
その課題に対して「マイコゲン地区」があると言うドース。それに同意するヒューミン。それは何かというセルダンの問いに「後で話す。今夜発つことになるよ」
夜中、マイコゲン地区の事をドースに聞くセルダン。
人口二百万ほどの小さな地区。昔の歴史についての伝承を固く守っている。正統的な歴史学者より正確。
だがどういう形での記録かは不明。ドースに促され、ついに眠るセルダン。

 

午前三時、マイコゲンに向け大学構内を出るセルダンとドース。ヒューミンは同行出来ず。
エクスプレスウェイに乗り込むセルダンとドース。しばらく乗ってから降りる二人。薄暗い路地を進む。行き先の標識は飛行場を示している。
小型機まで辿り着き、パイロットに合言葉を言うドース。

 

サンマスター
発進するジェット。狭いチューブを通った後に真っ暗な外に放り出され、機は飛行を始める。
雨降る中、高度を上げ、雲の上に出ると輝く星空。銀河系の中心に近いトランター独特の景色。
夜明けを迎える前にマイコゲンに到着。閑散としたジェットポート。
ヒューミンの説明では、サンマスター14が迎えに来るという。いっとき名前に関するドースとの会話。
いつの間にか、オープンの地上車が来ていた。それがサンマスター14。老人で白いガウン(カートル)にサンダル。髪はなく青い目。ヒューミンからの依頼は承知していた。
ここでの風習は髪を見せない事。住民は成人になると脱毛もしくは剃毛。他からの住民は。頭髪と眉を隠すキャップの装着を求められる。

そして女性から話しかける事への警告。

単調な街並みに驚くドース。完全な農耕社会で、ここは居住区。農場は下階にある。白い服は男性で「ブラザー」女性は灰色の服で「シスター」。人数の増加はないと言う。
居住区に案内すると、去って行くサンマスター。

小さな居住スペースに失望するセルダン。必要なものは全て揃っているが、かなり窮屈。
ドースの話すマイコゲンの内容。語源は「酵母の生産者」。あらゆる種類のマイクロフード生産で産業を支えている。帝国にも供給。
ホステス役のレインドロップ43と45の姉妹。

 

マイクロファーム
ドースと話す、マイコゲンの文化についての考察。彼らの伝承に宗教が関係している?
誰かに昔の社会の事を聞かなくてはならない。サンマスターは教えてくれない、とドース。
例えばあのシスター・・・否定するドースだが、しばらく考えて、宗教には重要な本が関わると話すドース。

セルダンは、マイクロファームを見せて欲しいと43に申し出る。
手続きが面倒だと言いながらも、43はそれが出来るよう約束した。
その夜、マイクロファームへは自分も同行すると言い張るドース。大学での遭難騒ぎを後悔していた。
彼女に異常な環境を与えて自由に喋らせるのが目的、と同行を拒否するセルダン。
朝食を終え、レインドロップ姉妹が来て姉はセルダン、妹はドースとペアになり別れた。
下階へと次第に降りて行くセルダンと43。下降には「エスカレーター」というものが使われた。
多くの下降を繰り返し、フロアに到着。腐敗臭が一切しない事に驚く。

完全にコントロールされている事に驚嘆するセルダン。だがウィルス感染、突然変異等の問題もある、と43。

そんな時は群れ(バッチ)ごと廃棄。
どうやって防ぐかとの問いに、巧妙にコンピューターのプログラムを作っても、予言は出来ない、と返す。
自然法則以外のものに頼る事への話をするセルダンに「宗教のことを言っている?」と43。
毛を持たない事、服装等もあり、それを持っていると判断していた。
宗教は必要ない。「私たちには歴史があるんです!」

 


急に汗をかき始めた43。休憩用の小部屋を探して、そこに二人で入る。男と二人でこんな所にいたら追放されると話すが、出る事も出来ない。抑制が解け、セルダンを睨み付ける43。マイコゲンの真の歴史について聞くセルダン。

 

それはある本に書いてあるというが、それを見せるのには条件があると言う。
彼女の手でセルダンのキャップが除かれ、そして彼の髪を優しく撫でる。「気持ちいい」「可愛いわ」と撫でたり、といたりを繰り返す43。そしてカートルのポケットから「本」を取り出してセルダンに渡した。

セルダンから髪の話を聞いたドース。この社会では異性の髪に触る事が快感に繋がる行為。
今回の件で、やはりセルダンを一人で出した事を失敗だと言うドース。もしあんな場面で捕まったら大事件になる。
話を「本」に戻すセルダン。
ただページを繰っただけでは白紙。縁のちいさな突起を押す事で文字の行が現れて上にスクロール。翻訳言語を切り替える事も出来る。

ドースが目を覚ました時、セルダンは本を読んでいた。どうしても眠れない。
内容に落胆のセルダン。事実上の百科事典。人名と地名の羅列。
生物学者に絡む「地球(アース)」の言葉を言うドース。だがその言葉は「本」にはない。
ただある部分で「50」について述べている。50人のリーダー?50の都市?
ある一ヶ所で彼ら自身の世界を「オーロラ」と呼んでいた。そして彼らの寿命が三~四世紀だと言っている。

ついに睡魔に負けて眠りに付くセルダン。

レインドロップ45と次に外出する際に、いくつかの質問をドースに頼むセルダン。訊きたい事は、特別に意義のある建物、過去に結びつき、神話的価値がある・・・・
「寺院があるかという事?」その言葉を知らなかったセルダン。

 


(下巻)

サクラトリウム
ドースはレインドロップ姉妹と外出した。43の憔悴した姿を見て心配するセルダン。
ドースは夕方に帰って来た。寺院についての情報を聞くセルダンに、それはサクラトリウムと呼ばれている、

とドース。昔彼らが住んでいたというオーロラに捧げられている。本の中にロボットの記述がある。
人間そっくりの外観。長い寿命。記述を総合すると、サクラトリウムにはここ二万年生き続けているロボットが居る。いくら早くても行くのは明日。そして必ず行する、とドース。

 

地図を手に公共バスに乗るセルダンとドース。
スキンキャップがずれているのを教えてくれた老人。マイセリウム72といった。彼は学者で文化の専門。サクラトリウムへ行くというので、一緒に降りる二人。
話はサクラトリウムへ移る。部族民が入れるかとの問いに「夜明けの息子たち」しか入れない。「夜明けの娘たち」は特定の日だけ。
マイセリウム72はロボットの話を一蹴。だが「長老のエアリー」という特別な、隠された場所があるという。彼は前触れもなく立ち去った。すぐにセルダンたちを目指して男が近づいて来た。
ドースに強く手を引かれ、立ち退くセルダン。

 

昨日の一件で、あそこにロボットある事を確信するセルダン。
それを見に行く決心を話すセルダンに、今度こそ一緒に行くと譲らないドース。
自分が着る白いカートル(男装前提)と、サクラトリウム関係者の印である飾帯を買うドース。部屋で着替え、出発の準備をする二人。

 

エアリー
図書館の入り口。顔も見ない受付の男のわきを通って中に入る。外から見えない物陰で飾帯を付ける二人。
その先にサクラトリウムへの入室ドア。
中の雰囲気は葬式そのもの。ところどころにスクリーンがあり、近づくとナレーションが始まる。
部屋を注意深く眺め、ドアと思われる場所を見つける二人。色褪せた部分に触り、ドアを押すと音もなく開いた。ドースと共に中へ入る。
その先に続く階段。踊り場を三つ通って疲労を感じるセルダン。エアリーと言われる高い場所を求めてここまで来た。その先の入室パネルを押すと、ドアが開いた。
そこにロボットがあった。だがそれは金属的で生きてはいない。

単なる象徴。ロボットの陰から人間が出て来た。
男はサンマスター14だった。
二人の行動をなぞる様に話すサンマスター14。そしてセルダンがあの「本」を持っていると断定。やむなく本を返すセルダン。
全ての行動が監視されていた。ドースが話す。

あなたがたは、私たちを誘い込んだわけではないが、止める事をせず、来るのを容易にした。
ロボットがあのようなものに過ぎなかったため私たちは退去します、という言葉に違法行為の代償として皇帝に引き渡すか処刑するかしかない、というサンマスター14。
「第三の道を探さなければならない」と新しい声。

 

「ヒューミン」とドースの安堵した声。この行動に入る前、彼に連絡を入れていた。驚くサンマスター14。
ヒューミンが、セルダンの取り組んでいる心理歴史学の事について説明するが、蓋然性のない推論だと断ずる

サンマスター14。帝国の弱体化の中で、デマーゼルがもしこの理論を手に入れた時、マイコゲンに対して良

い方向には行かない、とヒューミン。
「気になる推論ではある」と認めるサンマスターは言った「彼らを連れて行け!」

マイコゲンを出て、どこかに続くトンネルを走るヒューミン、セルダン、ドースの三人。
ロボットを見たかった理由を訊ねるヒューミンに、自分の失敗を認めるセルダン。あれは単なるシンボルだった。
本の入手方法を聞かれてやむなく話すセルダン。だがシスターからの入手方法は、考えてみれば不自然。
ヒューミンはその本を読んだことがあるが、信憑性には疑問を持っていた。
セルダンが読んだ中に、そのロボットをレネゲイドと呼んでいた。反逆者の意味だとドース。
レネゲイドが人間の感情に影響を及ぼすという記述・・・
心理歴史学を完成させる方法を求めても、いつもそれを阻む方向に向かっている事に失望するセルダン。
もっと時間をかけなさい、と慰めるヒューミン。

 

熱溜め(ヒートシンク)
国家行事での対応に苦労する皇帝。デマーゼルは裏でそれを支えるが、実質的な支配者はデマーゼル。
行事が終わり、デマーゼルを呼び出すクレオン一世。まだ寝る気分にないため、あの数学者と心理歴史学の話

を始め、最新情報を求めた。マイコゲンに潜伏している事までは知っていた。失敗したと謝罪するデマーゼル。
ワイの市長への競り負けを気にする皇帝は、今度失敗したら許さぬ、と言い渡す。

 

ダール地区の粗末なアパートに匿われたセルダンとドース。オーナーのジラド・ティザルバー。背が低い。
ヒューミンが家賃等で格別の配慮をしており、愛想がいい。
この地区は注目度の低い貧しい場所であり、それなりに危険。今度はトラブルを起こさない様に、と釘を刺されていた。ドースにもプレッシャー。
娘のブックビューワーを提供されて情報収集していたが、三日で飽きてしまったセルダン。
妻のカシリア・ティザルバーがたまたま言った「ヒートシンク」の言葉に反応した。トランターのエネルギーの半分をここの地下で作り出している。トランターでは皆が知っている常識。
そこを見学したいと言うセルダンに、環境が悪いと渋るティザルバーだが、結局それを受ける。

 

ティザルバーの手持ちの衣類を借りて出発する一行。
しばらく歩いた後、エレベーターに乗る。
技術的な事を聞くセルダン。予想はトランター内の熱で水蒸気を作り、タービンを回して発電・・・
だがそれは違った。効率の良い大規模熱電堆での直接発電。
エレベーターを降りると猛烈な熱。
次の案内者、ハノ・リンドーに引き継ぐティザルバー。シャツを脱ぐ事を提案するリンドー。結局ドースもブラジャー姿になった。
要所で説明を受けながら進み、労働者グループに近づく。男はシャツなし、女性は機能優先で乳房を持ち上げるものを装着しており、隠すものではなかった。女からのジョークに応えるドース。場がなごんだ。
だが男たちの中で、セルダンを知っているという青年が進み出た。リンドーが制する。
名をユーゴ・アマリルと言い、セルダンをホロビジョンで見たという。心理歴史学のスピーチだったと記憶していた。その青年に興味を持ったセルダンは、仕事が終わったら会う約束をする。ティザルバーが不服そうだったので、自分の部屋で会う事にした。

 

熱溜め人夫(ヒートシンカー)を家に入れる事に反対するカシリア・ティザルバー。本日の家賃を二倍にする、また今回限りという事でようやく納得。
セルダンを訪れるアマリル。態度がおどおどしている。
数学者になりたいと言うアマリル。だがダール人である事がそれに対する一番の障害。教育を受ける金もない。図書館員の彼女の助けで知識を得ることが出来た。書き溜めた論文を見るセルダン。新しいと言えるものはなかったが、その意欲は貴重。

 

何らかの奨学金を取って無料で勉強出来るようにすると言うセルダン。ドースも賛同。だがトランターではダールの人間は入れてくれないと悲観するアマリル。

セルダンは、故郷のヘリコンの大学に入れるよう約束した


アマリルの言う「地球の人々の子孫」との言葉に反応するセルダン。地球は、人類が発生した一つの惑星だという。なおも聞き直すセルダンに、その話を聞きたければリター母さんが居るという。彼の母親ではなく、そう呼ばれている人。ビリボトンに住んでいると言った。
会いに行くというセルダンを止めるアマリル。治安が悪く、ナイフを持ってそれが使えるぐらいでないと生きて帰れない。大学の話の確約と共に、絶対ビリボトンにいかないようドースに頼むアマリル。

 

ビリボトン
本当にリター母さんに会いに行くの?と聞くドース。地球という言葉への好奇心。アマリルについても本当に助けたいと思っている。
ティザルバーにビリボトン及びリター母さんの事を聞く二人。占いをする婆さんとして、噂は聞いていた。
ビリボトンは人間の屑が住むスラムだと言った。
ナイフについては、家にもあるが渡せないとのこと。買うなら道具屋。

道具屋でナイフを買おうとするドース。女性用と男性用。いずれも自分で使うと言った。取扱い方を主人に教わり、装着用のベルトも買った。

 

店を出てエクスプレスウェイに乗り「ビリボトン」で下車した二人。
通りかかった子供レイチに話しかけるセルダン。リター母さんを知っている様子。
ハンディ・コンピューターを餌にして彼女の部屋まで案内させる。
リター母さんは七十歳以上。背が低く太っていた。
早速地球の事を聞くセルダン。忘れられた、非常に古い惑星、との言葉。オーロラは邪悪の始まり。それは地球を滅ぼしかけた。地球は反撃して邪悪を滅ぼした。
地球はその邪悪より何百万年も前から存在していた。
これらは母親からの伝承。ずっと昔に遡る。
ロボットの話を聞くと老女は身震いした。地球を助けた人造人間がいた。ダ・ニーという名で、バ・リーの友達だった。どこかに生きていて復帰の時を待っている。
ここまでの話に二十クレジット払い、残りの話をディスクに吹き込んでくれる様頼む。謝礼は千クレジット。

 

帰ろうとした時、一群の男たちに襲われる二人。
セルダンは捕まってナイフを突き付けられる。
首領と思われるマロンと対峙するドース。ナイフを突き出すマロンだが、それはよけられ、マロンのTシャツに赤い筋が付いた。
本気で相手を始めるマロンだが、それを受け止めて反撃するドース。
敵が掴む腕の力が弱まったのを感じて、それを振りほどき、敵の股間に蹴りを入れるセルダン。そしてナイフを二丁手に取って構えた。
やみくもに突っ込むマロンを倒し、喉元にナイフを突きつけるドース。
男たちは戦意を失って逃げ去った。
ドースの活躍に感嘆するセルダン。噂はすぐに広がり、二人は安全にビリボトンを脱出した。

 

地下組織
借りている部屋に帰って風呂に入り、寛いでいるとティザルバーが入って来た。ビリボトンでの武勇伝は既に知れ渡っていた。彼の後ろに居たカシリアが重ねて苦情を言う。そして外に街の屑が立っていると言う。
来たのはビリボトンで道案内をしてくれた少年レイチ。ダヴァンという男が彼らに会いたいというのを伝言に来た。
多少の危険を予想しながら、行こうと考える二人。
外に出ると人が集まっており、記者風の男が取材を申し出た。ビリボトンでの騒ぎの一件。記者が帝国のスパイだと群集に伝えると不穏な雰囲気に。それに紛れて立ち去る三人。

 

レイチの道案内でその男ダヴァンに会うセルダンとドース。
彼はユーゴ・アマリルが話した、未来を予言出来るという話を繰り返した。ため息をついて、未来を予言する事は可能だが、その可能性を見出すことは不可能かも知れない、と説明。
ダヴァンは、抑圧されているダール人を代表する抵抗者。政権転覆のためにセルダンの研究に興味を持っている。反帝国を標榜しているワイ市長との協調も考えているが、それにはドースが批判。
ダヴァンに助けるとも助けないとも言えないセルダン。

レイチが、帰り道のために待っていてくれた。無事にビリボトンを脱出。
帰ると、共同住宅の入り口にカシリアが。例の記者がらみで暴動が起きたと苦情を言う。
彼女を見送ったセルダンは居直る「だからといって、彼女に何が出来る?」

 

警察官
翌朝ドースの部屋を訪れるセルダン。腰から下だけの衣服で髪を乾かしていたドース。セルダンは慌てて目を逸らすが、彼女は動じない。
セルダンの質問。ダヴァンまでもがワイ地区の事を話していた。一体それは何か?
説明するドース。ワイ地区は南極に近く、大きくて人口も多い。ワイはトランターで生じた熱の90%を放出している。もしこの放出をやめれば、トランター全体の温度が上昇する。だから皇帝はワイに対して慎重。
朝食を摂ろうと階下へ降りる二人。だが朝食の用意もせず、カシリアが大がかりな準備をしていた。

警察官と思われるダール人二名。カシリアの訴えで来たという。昨日の記者をスパイだと言って周りを煽動した罪。それに加えてビリボトンでの傷害事件。ナイフの不法所持も含め、何を言っても相手は説得されない。

 

レイチは二人と別れた後、寝入ってしまった。
次に目を覚まし外に出ると「宇宙船に太陽」の紋章が付いた地上車。直感が働き二人のアパートに行くと人だかり。大声を上げてドン、ドン!とドアを叩いた。
中から警官が出てレイチを捕まえる。逮捕されるところだとドースが言うと暴れ出すレイチ。警官が神経鞭で打ちすえるとレイチが転がった。
セルダンがもう一人の腕を捻り上げ、レイチを助け上げた。
ティザルバーに手伝わせて倒れた男と武器を部屋に運び、ドースに指示してもう一人の警官を気絶させる。
その場から逃げ出す三人。レイチは肩を押さえながら自ら走り、二人を先導。

 

レイチが二人のために見つけてくれた隠れ家。。
ヒューミンには連絡を取った、とドース。だが場所も判らず、いつ来るかも不明。ダヴァンに会わせたからトラブルになったと責任を感じるレイチに、自分たちの方が追われていたのだと言うドース。
しばらくするとドースが追っ手の足音に気付く。だがハイチが「ダヴァンだ・・・」

ダヴァンに状況を説明するセルダン。ダヴァンは、この窮地を脱するためダール市長を動かせる人を知っているという。それを聞いてヒューミンが手を回したと微笑するセルダン。
だがその対応が速すぎる事が納得出来ないドース。
ダヴァンはセルダンたちを熱探知器で見つけたという。
彼の有力な友人が近づいているという。ドアをくぐって入って来たのは・・・・ヒューミンではなかった。

 

ワイ
その男は背が高くて筋肉質の軍人。エマー・サルス軍曹と名乗った。
それでもセルダンはこの男がヒューミンの代理だと思っていた。だが彼はセルダンだけを連れて行くという指示しか受けていなかった。三人連れて行くという要望を拒否。
無理に連れて行こうとするのをセルダンは払いのける。ドースがナイフを抜いた。
軍曹が攻撃に移るため神経鞭に手を伸ばしかけた時、レイチが軍曹の銃と神経鞭を奪った。
セルダンは、軍曹に与えられた指令を確認する。言われたのはセルダンの移送だけ。だがそれ以外の者を連れて来るなとは言われていない。軍人の名誉にかけて、この三人の安全確保と移送を約束させるセルダン。

エアジェットでの移動。レイチは初めてで少し緊張。豪華な大型ジェット。ヒューミンが手配したものとは思えない。機は寒い方に向かっている。北か南。機が降下し、翼が畳まれてトンネルに入った。

機が停止し全員が降りると、今度は地上車に乗せられた。広い幅の道路、高層建築。

 

侍女二人に先導されて奥の間に導かれると、中年の女性が現れて挨拶した。彼女は「ラシェル」といった。やや装飾過剰。まず入浴して休み、その後晩餐の時間を取りましょうとの提案。
ドースの「ここはどこですか?」の問いに「ワイ地区です」。そしてセルダンの事を、十年会議で講演をした日から欲しかったと言った。

入浴して着替え、十分に睡眠を取った後、到着二日目の夕方が晩餐となった。
広い応接室。多数の給仕。食後、十年会議の時から欲しかったという話の意味を聞くセルダン。当然心理歴史学のため、との返事。実用的でないという否定をしても認めない。
またドースとラシェルとの会話が噛み合わないが、その理由が判った。
「わたしがワイの市長なんですから」

ワイ家はダシアン家の末裔で、ダシアン家は、五千年前に地域を支配していた。だがドースが、ワイの支配者は「反皇帝」と言われていたと指摘。
ラシェルは続ける。内乱で政権を取ることは出来るが、それには惨事が伴う。セルダンの予言を安全保障として利用したかった。ワイは銀河全体の支配は望んでおらず、トランターとその周辺二、三の惑星系があれば十分。
ラシェルは父マニックス四世の娘。セルダンの論文を機に権力の移譲を決めた父。
心理歴史学の一人歩きに閉口するセルダン。だがラシェルはいたって本気。

 

転覆
豪華な朝食の後、レイチはラシェルが近いうちに動物園へ連れて行ってくれると話す。
ヒューミンとの連絡の事をドースに聞くセルダン。ダールで連絡を入れたけど彼は来なかった。
彼は心理歴史学の問題を解決したと言った。だがそれは実用的であるという確信だけ。時間と平和と施設が必要。そして帝国はまとまっていなければならない。

レイチが公式の衣装を着るのを手伝うドース。今日が動物園に行く日。全ての話を聞いて来るよう指示するドース。

元気に出発するレイチ。
ラシェルの目的に対する議論。セルダンに関する情報を適当に誇張、美化して少数に伝える戦略。好意的か否かの餞別。そして新秩序を早く打ち立てる。帰って来たレイチ。内容を聞くドース。
動物園は貸し切り状態。終わり頃に制服の男が入って来てラシェルと話をしていた。
士官たちは父マニックス四世に忠誠を誓っている。それに怒っているラシェル。

 

ワイに来て十日目の朝、レイチが「戦争だ!」と叫んで皆を起こした。
皆がホロビジョンに集まるとニュース映像。帝国の提供でマニックス市長が写っている。
帝国軍が市長を人質に取って市を鎮圧。「彼女は長くは無事でいられない」と話す後ろで「たぶんそうね」の声。ラシェルだった。驚く三人。
本来ラシェルがやろうとしていたクーデター。裏切られた。女性のために戦う事を拒否して古い主人に走った士官たち。
ラシェルは、デマーゼルがセルダンを手に入れるために我々を攻めたのだと言った。
最後まで残っているエマー・サルス軍曹。
むざむざセルダンは渡さない、と彼を撃つよう軍曹に命令するラシェル。
だが打つのをためらう軍曹。ラシェルの命令とセルダンとの約束とのはざまで、ブラスターを床に落とす軍曹。
それを拾って軍曹を撃ったラシェル。次いでセルダンにそれを向けた時、レイチが前に出た。躊躇するラシェル。その間にドースが体当たりしてブラスターを落とさせた。拾うレイチ。
そこに新しい声。「ヒューミン!」と嬉しそうに声を上げるセルダン。
だがラシェルはヒューミンを指さして「これは誰?」と聞く。
「チェッター・ヒューミン。私の保護者」と言うセルダンに
「この男はデマーゼルよ。そしてこのドースという女はそれを知っている。あなたはずっと騙されていたのよ」

 

食事の後、セルダンに話すヒューミン。
心理歴史学を、帝国の衰退と滅亡を防ぐためと、そのコースを辿った後の早い再生のための二つの点で信じた。
だが皇帝に説明した時点でのセルダンは自分自身でそれを信じておらず、真に実用的な心理歴史学を探求するために仕向けた。
それは有用だった、とセルダン。単純な世界を扱うための示唆をマイコゲン、ダールで得た。また最後にワイへ来て、ラシェルが「欲しいのはトランターと僅かな周辺世界」と言い、それ以外を遠方として退けた。
探し求めた単一の世界は「トランター」だった。
それを聞いてホッとするヒューミンは研究への援助を確約した。
そしてついにセルダンは言った「ヒューミン/デマーゼル? 君はロボットなのだ」

 

ドース
今までの旅で集めたロボットに関する情報を当て嵌めて行くセルダン。それから関わった人たちの、誘導される様な行動。リター母さんが話したダ・ニーというのは君のこと。
二人の会話は続く。セルダンの言葉を穏やかに否定し続けるヒューミン。トランターだけで心理歴史学を構築するにあたっても、基礎事実を知ればもっと仕事は容易になる。
もし心理歴史学が欲しいなら君はロボットだと認めなくてはならない。ロボットでなければこの研究の成功の可能性は低くなる。

 

「私はR・ダニール・オリヴォーです。「R」はロボットを表わします」

真実を語り始めるダニール。二万年たつと、彼がロボットだと気付く者はいなくなった。感情の探知は容易だったが感情に影響を与えるのは困難だった。必要最小限の干渉。
ロボット三原則の説明。もう一台いたロボットが提唱した第零法則は人間を「人類」に置き換えたもの。彼は途中で活動を止め、銀河系の将来をダニールに託した。
帝国の衰退に対しての様々な干渉が困難になる中で、人類にとって何が良くて何が悪いかを識別出来る道具が心理歴史学の中にある事を、公演を聞いて覚った。それからダニールの行動が始まった。
今後は必要な情報は教えるが、私のことは他言無用。
ドースはこの事を知っているという。秘密の共有者。
ダニールの忠告。もし計画が固まったら、そういうものを二つ作りなさい。

 

ドースはセルダンに、あなたは皇居地区に戻ると言った。そして自分は大学に戻ると。
心理歴史学のプロジェクトを一緒にやって欲しいと懇願するセルダン。
様々な理由を付けて逃げようとするドースに「僕は君が欲しいんだ」
「私は一人のヘルパー」と言うドースに「君は違う種類のヘルパーだ」
「どのように?言ってみて」と挑発するドース。
「それを言うつもりはない。なぜなら・・・僕はかまわないからだ」
彼はドースにキスした。---ゆっくりと。

「もう一度キスして、ハリ。--お願い」

 

 

ソロモンの偽証 2012年

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監督  成島出
脚本  真辺克彦
原作  宮部みゆき

 

キャスト
藤野涼子   - 藤野涼子
神原和彦   - 板垣瑞生
三宅樹理   - 石井杏奈
大出俊次   - 清水尋也
浅井松子   - 富田望生
野田健一   - 前田航基
柏木卓也   - 望月歩
井上康夫   - 西村成忠
藤野剛     - 佐々木蔵之介 涼子の父

藤野邦子   - 夏川結衣    涼子の母
三宅未来    - 永作博美    樹理の母
森内恵美子  - 黒木華    
佐々木礼子  - 田畑智子
浅井洋平    - 塚地武雅
浅井敏江    - 池谷のぶえ
小林修造    - 津川雅彦
河野良介    - 嶋田久作
上野素子   - 余貴美子
北尾教諭   - 松重豊
今野努     - 大河内浩
津崎正男   - 小日向文世
中原涼子   - 尾野真千子

 

 

 

予告編(前編)

 

予告編(後編)

 

感想
TVで放送していたもの。その前週に「前編」やっていたのは知っていたがスルー。後編で急に観る気になった。
長い、登場人物が多すぎる、という宮部みゆきらしい映画。

 

中学校の屋上から転落死した生徒を巡る話。学校が抱える校内暴力の歪みと、内向的な少年の心の闇が絡み合う。

複雑に入り組む伏線と、それの回収、後半での和彦の告白。原作がしっかりしているので、長編ながらも破綻なく進められている。

ただ、和彦の行動には違和感が残る。

酒乱の父親が、母親を殺して自身も留置場で自殺。

その後養父母に引き取られて、穏やかな生活を手に入れた和彦。
そんな身の上の和彦に、一種の羨望を抱いていた卓也。

 

この映画で、どうしても気持ちの悪い感覚が残っている・・・・
この告白は、あくまでも和彦の側だけからの証言。そんなに死にたきゃ勝手に死ね、と突き放して自分が有罪だと叫んではいるが、追い詰められて発した言葉だ、という予防線もキッチリと張っている。
これがもし卓也に、生きては行けない様な辛らつな言葉をぶつけ、彼が飛び降りるところまでを和彦が確認していたのだとしたら・・・・

 

この涼子と和彦が、結婚した事を匂わせるような表現もあるが、題名にある「偽証」の一枚下に何かあるかも、と考えるのもひとつのミステリー・・・・


エンディングの、U2の「With Or Without You」。U2が、邦画の主題歌として曲を提供するのは初めてとの事で、この映画の格調を格段に引き上げている。映画の画像とマッチさせたものは全て削除されているので、オリジナル曲で。
和訳を読むと、このドラマとのマッチングの良さを感じる。

 

主演の藤野涼子は当時、役の名前を芸名にしてデビューし、話題になったようだ。
最近では朝ドラ「ひよっこ」の豊子役で、メジャーになっている(ナマイキで、ちょっと嫌いだったが・・・)

 

前編ストーリーはウィキペディアに譲る。

あらすじ
<前編・事件>
江東区立城東第三中学校。クリスマス・イブの夜に、学校の屋上から転落して死亡した男子生徒:柏木卓也。
警察は自殺と断定したが、告発状が学校、担任、クラス長:藤野涼子に配られ、クラスの不良少年、大出俊次が犯人として名指しされる。
告発状がマスコミに流れ、注目が集まる中、女子生徒:浅井松子が事故死。
柏木の友人だった他校生の神原和彦の出現。
真相に近づけず、騒ぐばかりのマスコミに失望した涼子は、生徒たちだけで裁判を行う事を計画。
告発状を真実として検察側につく涼子と、大出の弁護側に立つ和彦。

 

<後編・裁判>
大出家の火事は、父親の自作自演。だがその実行者が、前日の俊次のアリバイを証明した。
涼子は以前、俊次が三宅樹理をいじめている所を見ながら咎めなかったところを卓也に見られており「偽善者、一番悪質だ」と罵られていた。一方野田健一と和彦の説得で、裁判への出廷を決める俊次。

 

卓也の死の直前の行動が問題になっていた。公衆電話からの四本の電話が、午後4時半から一時間半おきに掛けられていた。生徒らで電話近くの聞き込みをするが、誰が話していたかは不明(卓也の可能性含め)。

告発状を、松子と共に出した三宅樹理。松子の死によるショックで声が出なくなっていた。学校の屋上に居て、卓也や俊次を見たという証言を確認する涼子に、筆談で「裁判で話す」。

和彦に対する疑惑。ニュースで知ったという和彦に対し、通夜に来ていたと話す友人。
それに対し「今はまだ話せない」。

 

夏休みに五日間かけて、生徒による裁判が開かれた。

 

初日
担当刑事:佐々木礼子の証言。
卓也は自殺だと断定。俊也の不良行為と昔から対峙して来た。俊也は、瞬間的に手が出るが、長い間恨み続けるような根気はない。
屋上のドアのカギは主事室にそのまま残っており、もし開けるとしたらドライバーの使用か。だが現場にはなかった。
涼子の追及。礼子のやった、俊也への確認に対して、アリバイも調べなかったと断じる。認める礼子。

 

二日目
前校長:津崎正男の証言。
自殺の可能性を指摘。俊也の不登校に対して、説得を続けたが歓迎されなかった。人生に悲観していた。
告発状を隠蔽した。学校運営上取り返しのつかない事をしたが、自分としては生徒を全力で守ろうとした。
涼子の指摘。先生は辞職した事で責任を取った。誠実だった津崎先生を忘れません、と礼をする。

担任:森内恵美子の証言。
告発状を盗んだのは隣人(許せない)。うそつき呼ばわりされた。
担任としての印象。教師二年目。担任は初めて。生徒の目を気にした。俊也には見透かされていた。扱いづらかった?→Yes。

面倒になって、それ以上考えなかった。
死んだと聞いた時、ショックだったが、同時に安堵した(場内ザワつく)。生徒に向き合う覚悟がなかった。申し訳なかった。

二度と教壇に立つつもりはない。

 

三日目
三宅樹理の証言。
出廷してくれた勇気に感謝します、と涼子。
12月24日夜の行動についての確認。夜、外出しましたか? いいえ、家に居ました。
目撃したのは松子。告発状をポストに入れるのにつきあっただけ。

疑うなら松子に聞いて!(怒号が飛び交う)。
本当の事を話して、と言う涼子に「今、話しました。私は何も見ていない」。母親に連れられて、逃げるように退廷する樹里。

 

四日目
大出家に放火した犯人の代理人が出廷。俊也に会った時刻をNHKニュースがやっていた午前0時と証言→喜ぶ俊也。だが、デタラメな告発で嵌められた、とわめく。

どうしてか、原因をどう考えているか?と弁護側の和彦。
そして俊也の今までの悪行を列挙。体育館裏での喫煙。女子生徒を土足で踏みつけ。同級生を殴打。父親の金と権力での揉み消し。
そういう相手は泣いて嫌がりませんでしたか?君を恨み、いじめられてどれだけ苦しかったか、一度でも考えましたか?
嵌められたと思うのは間違い。
暴力で傷付けられた差出人の気持ち判る。それは差出人の命綱。
どんなに苦しかったか。君が追い詰めた。

 

倒れた樹里が、医務室で涼子に話す真相。

告発状の事を俊也に謝ろうと言い出した松子に「あいつらに何されたか忘れたの?私を裏切るつもり?」と返した樹里。
樹里ちゃんの事、嫌いになりたくない、と言って走リ出した直後、車に轢かれた松子。

神原の両親に、ある事を訊ねる涼子。

四つの公衆電話の付近の写真。
・宮川産婦人科→和彦が生まれた場所

・亡くなった両親が住んでいた団地 など

 

五日目
本当の事が判ったら、お前も傷付くかも知れない、と涼子の父。

開廷時、追加の証人を二名申請する涼子。そのうち一名はまだ名前を公表出来ない。
一人目の証人。通話の最後の場所近くの電気店主:小林修造。
該当時刻に公衆電話で話していた相手。出された写真には居なかったが、ここには居るという。そして和彦を指さす。
涼子は、和彦を第二の証人として申請した。

和彦が指定された時刻に、指定された場所へ行き、卓也に電話を掛けた。二人の間では意味のあるゲーム。
久しぶりに会って、死のうと思っていると言われた。
親があんな風に死んで、何でやって行ける。
-平気じゃないけど、忘れたい。
自分の過去から逃げているだけ。口先だけの偽善者。
-どうしたらいいのか。どうしたら信じてくれる?

家族との思い出の場所から電話をかける→それを断らなかった。
僕自身、両親と向き合うのに逃げていた。辛かった、でも楽しかった事も思い出せた。
両親がいつも不幸せだったわけじゃない。七歳の時には判らなかった。
同じくらい、今の両親の事を思った。
卓也は、和彦が途中で落ち込む事を期待していた。

最後のチェックポイント。疲れていた和彦は、明日にしてと言ったが、卓也は11時半に学校の屋上に来いと命令(今日中に会えなけりゃ死ぬ、と)。
雪の降る屋上に卓也が一人。
いい事も思い出した、と言う和彦に怒った卓也。ウソをついている、と非難。
このゲームをやって良かったと言う和彦に「本気で思っているならもっと悪い」。

僕は生きて行く、という言葉に
アル中の人殺しの息子が偉そうな事言うな。お前もそうなる。
-決められたくない。
悪い血の人間は人並みに生きる資格ない。
-友達じゃなかったんだね。僕にはもう無理だよ。
お前が帰るなら、今すぐ飛び降りて死んでやる!
-そんなに死にたきゃ、勝手に死ね!

死んだのを知ったのは?-次の日のニュース。
怖かったですか?-ハイ。

和彦は、自分が有罪だと主張。卓也を見捨てて逃げた。殺意があった。
浅井さんも死ななくてすんだ。僕を殺人罪で裁いてください。

 

審議の後、評決の結果を発表。
大出俊也は無罪。
これで終わらせるな!と叫ぶ和彦に判事の井上は「この裁判は君を裁く法廷ではない」。

和彦は続ける。
母を酔った勢いで殺した父は、留置場で首を吊った。
弱い人。自分が出来る精一杯で清算した。

裁かれなくてはならないのは、あなただけじゃない、と涼子。
俊也にいじめられていた二人を見捨てた。浅井さん、三宅さんは泣き叫んでいた。踏み付けられて、口から血を出して。怖くて助けられなかった。二人を見殺しにした。
浅井さんがいたから、三宅さんは死ななくてすんだ。
勇気があれば、松子さんも死ななくてすんだ。ごめんなさい。

この裁判やった意味ない。→そんな事はない。

未来に立ち向かう勇気。
自分の罪は自分で背負って行くしかない。

いつか自分が乗り越えるために。


涼子の後日談。教師になっていた。
三中の校長と、昔の思い出を話す涼子。私たち、誰も負けなかった。

 

 

探偵はBARにいる     2011年

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監督 橋本一
脚本 古沢良太、須藤泰司
原作 東直己

 

キャスト
〈俺〉                 - 大泉洋
高田                 - 松田龍平
沙織                 - 小雪
霧島敏夫           - 西田敏行
松尾                 - 田口トモロヲ
佐山                 - 波岡一喜
田口幸平           - 有薗芳記
峰子                  - 安藤玉恵
近藤京子           - 街田しおん
則天道場の塾生  - 野村周平
札幌市長            - 上田文雄
大畑                  - 桝田徳寿
近藤百合子        - 竹下景子
田口晃               - 武井椋
源ちゃん            - マギー
岩淵貢              - 本宮泰風
近藤恵              - 吉高由里子
桐原組組長        - 片桐竜次
マキ                  - カルメン・マキ
南                    - 中村育二
田口康子          - 阿知波悟美
岩淵恭輔        - 石橋蓮司
相田               - 松重豊
カトウ             - 高嶋政伸

 

予告編

 

感想
そろそろ涼しくなったので・・・・
映画館では観ていない。

TVで過去に1回観ており、最近の放送で視聴。
シリーズ初作で少し気負ったか、俺と高田がいつもやるオセロになぞらえて「簡単に裏返る、人間と同じだから面白い」などと言わせて、少しクサいがまあいいか。

地域の有力者が殺され、その妻がより強い者に乗り換えてのし上がって行く話、と思わせて実は敵討ちの話だったというもの。

大泉演じる「俺」は、軽いには軽いが、頼まれたらイヤと言えない素性の良さが、何となく暖かい気持ちにさせる。
その相棒の高田を演じる松田龍平。3の時にも書いたが、以前は翔太の方を上に評価していた。
父親の松田優作が死んだ時、けっこうメソメソしていた印象が刷り込まれている。
それが今シリーズでの、いつもはボンヤリだがいざとなると強い、というキャラに出会い、ぴったり嵌って心地よい。

沙織役の小雪が初めて出たシーン。ここの写し方が最悪。もっと美人に撮れよ!といった感じ。
撮影技術でそんなものどうにでもなるだろうに、何か悪いところばかり目立つ映像だった。それとも醜く見せるための演出が何かあったのか?

物語としては、初見でサラっと観ただけだと、ちょっと判り難い。地上げ絡みで近藤京子が死んだ話に、火事を起こした田口晃の話が重なって少し混乱。
電話の京子の言うカトウが、俺を殺そうとした男と重なった事で、仇を特定した沙織。この辺りはうまいと思った。

カトウ役の高嶋政伸が良かった。軽薄で気違いじみた役の、なんとうまい事。

 

 

あらすじ
霧島グループの20周年記念パーティー。ピアノ伴奏で歌うマキ。そこで紹介される女性「沙織」。
パーティーに出席していた「北海道日報」の新聞記者・松尾に、ホモ相手との写真を見せて30万の口止め料をせしめる「俺」。
パーティーの後、一人歩く霧島。男らに襲われ、拉致されようとする女性を助けに入った霧島だが、男らにリンチされて倒れる。

 

行きつけの店「KELLER OHATA」で飲んでいる「俺」。近藤京子という女からの依頼。既に10万振り込まれている。法律事務所の南を訪ねて、昨年の2月5日にカトウがどこに居たかを聞くのが依頼内容。その時の相手の反応も知りたい。
害虫駆除業者を装って訊きに行くが、知らない、とつれない南。
その帰りに襲われる俺。


雪原に埋められたものの、辛くも脱出した俺。遅くに高田が回収。「ほどけるように結んであった・・・」これは警告だ、と高田。

事務所を見張る俺と高田。南が乗るバンに俺を襲った男も居た。車には「清輪コーポレーション」の字。後をつけると、そこは花岡組の絡む則天道場。


松尾からの情報で、最近花岡組が地上げのため、札幌の「偕楽会館」を放火した事件があった。

実行者の田口晃は口封じで殺されたとの事。
この時に焼死したのが近藤京子。
松尾に連れられてクラブ「コンチェルト」に行き、そこのママ沙織に会う俺。死んだ霧島の元妻だという。

 

死んだ近藤京子の周辺を調べる俺。そのビルに彼女の店があり、そこを持たせてくれた人に悪いからと、売却を断っていた京子。
一方放火して死んだ田口晃の実家は、父親が貧乏の割りに不釣り合いな金の使い方をしている事が判明。

近藤京子から再び電話で依頼「シンコーのカトウに会って」。南に電話して「カトウ」に会いたいと伝える俺。目印はマンガ週刊誌。

近藤京子の実家を訪ね、母親の百合子から話を聞く。京子に「足長おじさん」と言って金を出してくれたのは、百合子の再婚相手で、京子とは血縁関係のない人。その人が霧島だった。
そして放火事件があったのは、霧島が殺された昨年2月5日。

札幌で活動している「桐原組」の若頭 相田と腐れ縁の俺は、南の情報を仕入れる。南は花岡組と組んで偕楽会館の地上げにも関わっていた。

 

街で景気よく金を使っている田口晃の父、幸平を見つけ、ビル屋上で締め上げる俺。

息子の死の真相を証明するテープで花岡組から金を強請っていた。
翌日、記者を装って則天道場に行く俺と高田。相手をする塾長の佐山。だが途中でバレる。乗り付けて来た組の者の中に俺を拉致した男も居た。辛くも脱出する二人にくっついて逃げ出した少年。

カトウとの待ち合わせ場所で待つ俺と高田の元に乗り付ける黒のバン。サイドに「清輪コーポレーション」。

読み方を「せいわ」と思っていたが、実際は「しんわ」しんわコーポ・・・シンコー!そこで俺を拉致したのがカトウだという事をやっと理解した俺。必死でその場を逃げ出す二人。
だが自分の行動で田口の父に危険が及ぶと考えた俺は、必死で彼の家に行くが、夫婦とも殺された後だった。

相田からの情報で空港に行く俺。ヘリで関西ヤクザの銀漢興産幹部か来るという。
出て来たのは岩淵恭輔とその息子・岩淵貢、そして、なんと沙織。

沙織は近々貢と結婚するとの事。


相田は、沙織が悪女だと言う。

霧島殺害の主犯を沙織だと決めつける俺。

沙織の店に行き、そこで同席していた岩淵親子らにタンカを切る俺。
だがその翌日、行きつけのスポーツバーで顔見知りのマスターらに拉致され、半殺しにされる俺。

 

数日かけてようやく歩けるようになった俺。沙織に会いに行き「俺の依頼人には指一本触れさせない」と言って立ち去る。涙を流す沙織。

 

沙織と岩淵貢の結婚が迫る中、近藤京子からの最後の依頼。振込みは30万。沙織に電話をして(あるキーワードを言えば必ず承知する)、小樽まで呼び出しそこである者と一緒の所を写真に撮れば沙織は破滅だという。

指定した場所で延々と待つ俺。だが沙織は来ない。
結婚式を前にして、控室で待つ沙織。
ようやく真相を理解して沙織に電話を入れる俺。近藤京子は、沙織だった。

俺の座っている椅子の裏に手紙が貼り付けてあった。沙織の書いた、今回の真相を語るもの。
札幌行きの電車に乗る俺だが、間に合う筈もなく・・・・・

 

結婚式。貢と並んで、微笑みながら各テーブルを回る沙織。そして南のテーブルに来た時、ブーケの入ったバッグから銃を出すと、彼に向かって数発撃った。そして隣の貢にも数発。少し離れた恭輔のところまで歩いて行き、数発。
最後に自分の頭に銃口を向けて引き金を引く沙織。

俺がようやく式場に到着した時、ストレッチャーで移動される遺体。沙織のものはすぐ判った。シーツから下に垂れる白いドレス。

 

いつものバー「KELLER OHATA」に行くと、マスターが黙って小さな箱を差し出した。
それは沙織からの時計。霧島の遺品。

 

 

狼よさらば     1974年

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監督 マイケル・ウィナー
脚本 ウェンデル・メイズ
原作 ブライアン・ガーフィールド

 

キャスト
ポール・カージー      チャールズ・ブロンソン
ジョアンナ・カージー    ホープ・ラング
フランク・オチョア警部   ヴィンセント・ガーディニア
ジャック・トビー        スティーヴン・キーツ   キャロルの夫
サム・クロイツェル     ウィリアム・レッドフィールド
キャロル・トビー       キャスリーン・トーラン   ポールの娘
エイムス・ジェインチル   スチュアート・マーゴリン  銃をくれた友人
ハンク               ジャック・ウォレス
ポリスコミッショナー    スティーヴン・エリオット 
常務               クリス・ガンペル
ブリッグス警部補      エドワード・グローバー 
チンピラの一人       ジェフ・ゴールドブラム

 

 

 

予告編


感想
チンピラに妻を殺されたサラリーマンが、その殺した男本人ではなく、世間の悪者どもを粛清して行く話。
要するに警察がホシを挙げられないため、代償行為としてそうなった訳だが、出張先で銃に接したのがきっかけで深みにはまる。
一人目の時は衝撃で嘔吐していたのに、次第に神経がマヒして手口も大胆になって行く。
無差別殺人として警察も問題にするが、犯罪が減って市民は支持。背景として具体的な警察内部の腐敗もあり、ヒーローを逮捕せずに追い払うという発想も出て来たのだろう。
この男を市民のヒーローとして見るか、連続殺人に酔う狂人と見るかで意味がガラっと変わるが、この監督の視点はそのどちらにも偏っておらず、なかなかうまい落しどころを押さえている。

町山智浩氏は、このポールは西部劇の世界にドップリ嵌り込んでしまったのだと解説している。

 

ここで最初に出て来たチンピラの一人が、あの「ザ・フライ」でハエ男をやったジェフ・ゴールドブラム。あれほど濃い顔はなかなか忘れない。

 


あらすじ
ハワイで熟年旅行を楽しんだポール・カージーとジョアンナの夫婦。ポールはニューヨークにある大手の建築会社で都市計画を担当する技術者。

ある日ジョアンナは娘のキャロルとスーパーで買い物をして、荷物を配送に依頼した。その宛先を盗み見る男。

 

男らは三人組で、母娘を尾行。部屋に押し込みキャロルを強姦。電話を掛けようとしたジョアンナは殴打される。


連絡を受けて駆け付けるポールと、キャロルの夫ジャック。

だがジョアンナは死亡。
警察に掛け合うも、犯人が捕まる可能性は低いとの事。

 

ポールは気分転換も兼ねて南部への出張を提案され、それを受ける。
アリゾナ州のツーソン。そこで知り合う顧客の不動産業者エイムズ。土地を提供し、そこに住宅街を建設する。立地を生かしてのびのびした環境を維持したいという要望。それに応えて設計を進めるポール。
親しくなったところでエイムズがポールをガンクラブに誘う。気乗りのしないポールだったが、試し撃ちで的の中央に当て、驚くエイムズ。

ポールは朝鮮戦争経験者だが、反戦主義者だという。

 

出張から帰る日、エイムズはポールに「お土産だ」と言って箱をトランクに入れた。

ポールが帰宅してその箱を開けるとリボルバー式の銃と弾。

 

娘のキャロルは精神を患い、病院生活。ジャックともぎくしゃくするポール。
警察に行っても、ありきたりの事件として扱われ、進展は見込めない。
そんな時に妻の旅行の時の写真が届く。

大切なのは自己防衛、開拓精神だと呟くポール。

 

そんな時、銃をポケットに入れて深夜外出するポール。そこで銃を持った強盗に遭遇し、相手を撃ち殺す。慌てて帰宅し嘔吐するポール。
翌日の夜、老人から金を取ろうとしていた三人組の若者を見つけたポールは、彼らを撃ち殺す。
数日後、地下鉄の先頭車両で座っているポール。襲って来た二人組の男を射殺して、電車の到着と同時に脱出。駅員の追跡をかわす。

 

連続殺人事件として警察も動き出す。厄介な事件。使用された銃は32口径。
動機は復讐。この2~3ケ月で家族を殺された者。戦争体験者・・・
常識では考えられない。動機が何であれ許せない。
だがこの自警行為に市民は「幻の狩人」と称して喝采。犯罪件数も落ちているため、地方検事は逮捕に消極的。

 

街に行き、店でこれ見よがしに財布の札束を見せ、それを見ていた三人組を誘い出す。だが二人殺したところで一人に逃げられ、自分も重傷を負う。
警察は、ポールの自宅をガサ入れするが、銃は会社にあり検挙は出来ない。だが血に汚れた布があり、ポールの犯行を確信する警部。

そしてポールに警告するオチョア警部。

 

最後の処刑を考えるポールは、警察の監視を撒いて会社へ行き銃を持って人通りの少ない道を歩く。

ポールの不在に気付き手配を始める警察。
ポールを狙う二人組に出会い、殺すがもう一人いた。撃ち合いになり、足に銃弾を受けるポール。迫るパトカーの音。
お互い向き合い、ポールが「狼よ、さらば」と言う。何の事か判らない相手。そして「構えろ」と言って倒れるポール。男は逃げて行った。

マスコミが騒ぐ中、ポールを発見した警官から事情を聴くオチョア警部。そして押収した銃を受け取ると「全て忘れろ」と言った。マスコミには「民間人が巻き込まれた」と公表。
病室でポールと対峙するオチョア警部。今までの事は目をつぶるから、この街から出て行けと宣言。

そして「我々も言いたい、狼よさらば、とな」

 

シカゴの駅に降り立つポール。若い女性が男たちに囲まれて嫌がらせを受けていた。男たちが去って女性を介抱しながら、男の方向に向けて指で銃の形を作り、ニヤリと笑うポール。

 

 

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