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NHKスペシャル 「人体」 第6集「”生命誕生”見えた!母と子 ミクロの会話」 3/18放送

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プロローグ 1集 2集 3集   4集   5集

番組紹介     第6集概要

 

司会・進行 タモリ、山中伸弥 
ゲスト:木村佳乃、パトリック・ハーラン(パックンマックン)

 

卵子と精子の模型。卵子がリンゴ大とすると精子は米粒。その時の胎児のサイズは身長500m(いかに卵子が小さな存在か)。


精巧なプログラム。胎児の成長にメッセージ物質が深く関与。

昨年一月からある夫婦(松永夫妻)を追跡。
子宮筋腫の手術をした。子宝に恵まれず、卵子の数も少ない(三年以内に作らないと、もう出来ないかも)→体外受精を決心。

 

受精のプロセス
父の核と母の核が混ざり合う。その直後に核が消える。特殊な造影でその様子を視覚化(核の集合)。


二時間後に分裂。五日で細胞100個→子宮に着床。この段階で母親の子宮に戻される。
最大の難関→受精卵が子宮の壁に根付くか。このためにメッセージ物質(hCG)が関与。
黄色い物質が増える。 10→120(hCG)。
受精卵が根付くために大切な役割り(生理が来るのを妨げる)。更に子宮の壁を厚くする(受精卵が包まれる)。
受精卵を戻してから三週間。成功の確率は1/3。

検査結果ではhCG 172.4。受精卵は根付いている。

 

受精卵から体をどう作るのか? 臓器や体内構成要素は二百種以上。元は一つの受精卵。どうやって分かれて行く?
究明の原動力がiPS、ES細胞。

受精卵に近い、枝分かれを再現出来る。
ドミノ倒し。ドミノ式全自動プログラム。

 

最初の臓器が生まれる。
ES細胞にメッセージ物質WNTを加えると、細胞の一部が動き出す。WNTは受精卵に大量に含まれている。
最初は心臓。
受精卵に対し、メッセージ物質が臓器作りを導く。
取材中に新発見。先端医科学研究センター 武部貴則。心臓細胞のすぐ横に肝臓細胞が発生。心臓が肝臓を作り出す。
次々と作られて行く臓器(単一の臓器だけを作ることは出来ない)
着床時の胎児は3mm。だがもう心臓は動き始めている。二ケ月後、心臓、肝臓、肺、腸、胃等、人体の基本が出来る。


全ての細胞がメッセージ物質を出す。奇跡のようなメカニズム。

次の難関→大きく育つこと(七ヶ月)お母さんが大活躍。

 

タモリを赤ちゃんに見立てて模型の子宮に入れる。胎盤を持たせる。胎盤は赤ちゃんの細胞で出来ている。その中には赤ちゃんの木(突起)が生えている。
子宮の壁には穴が無数に開いている。

お母さんの血管の出口(恵みの窓)


それを互いに接続する。母親の血液そのものは、胎児には入らない。胎盤こそがカギ。

三ヶ月の胎児。胎盤に栄養を頼る。赤ちゃんの木が栄養、酸素を吸収。その後母親側からメッセージ物質を送る「もっと伸びなさい」 木が森になって吸収を増す。母子間でメッセージのやりとり。

四ヶ月。つわりがひどい。安定期まであと一ケ月。

母の体に驚くべき変化。
恵みの窓は、妊娠中期で十倍の大きさになる。

 

そこに赤ちゃんの細胞が現れる。
大きくなった赤ちゃんの木の枝が黒ずんで来る(栄養不足)大ピンチ。メッセージ物質PGF。もっと大きくなりたい。
それを母体が受け取ると、恵みの窓を広げる。
それで終わりではなく、枝が子宮に届き、入り込む。

壁を突き破って割り込む。
大量の血液が枝を潤す。母親が身を切って栄養を与える。

赤ちゃんは大きく成長。

 

松永さん(妻)の心配。子宮筋腫は多発性で十数個あった。手術で全摘は免れたが子宮の壁が薄い。栄養が送れているか心配。
検査で胎盤の血流がしっかり運ばれている事を確認。
7月12日に出産(女児)。子宮が弱いため帝王切開だった。
木村が涙を流す。お疲れさま。

 

壁の突き破りは、人間にごく近い仲間だけの特徴(大きな脳を作るためか)
母体の骨がもろくなるのは、胎児がカルシウムを求めるメッセージ物質をだすから。
つわりのメカニズムは判っていない(真の意味での治療法はない)

内臓に傷害がある少女、ランドリー・マルホランド。胎児の時、メッセージ物質がうまく働かなかった可能性。

 

武部貴則氏の研究。iPS細胞から肝細胞を作って戻す。
細胞は作れても、臓器までは無理(複雑)。人の手では作れない。
母親の胎内で起きている事の再現。

メッセージ物質のコントロール→数ミリの肝臓が再生出来た。
肝機能が落ちたマウスに移植。生存率が22→94%にアップした。
人間に活かす研究を進めている。

 

iPS細胞の可能性が広がっている。
メッセージ物質が判って来たから出来る事。
現在指定難病が300種以上。

なんとかこれらをやっつけて行きたい(山中)

 

全ての母親に感謝。

生まれ変わっても女性をやりたい(木村)
オスは何をやってる・・・・(タモリ)


感想
iPS、ES細胞から様々な種類の細胞、臓器を作り出せるというが、その根源にあるのが受精卵。
驚異的なメカニズムで、今こうやって自分の体が世に送り出された。母親に感謝するしかない。
だが、その精密なシステムも、ほんの僅かな綻びで先天的な病気、奇形等の原因となる。
五体満足で生まれて来た事を、本当に感謝出来る番組。

 

子宮がなかなか人工的に作れないとは、SFの世界でも旧くから言われている事だが、今回改めてそのシステムの詳細を知り、驚異としか言いようがない。
血液を介さずに栄養と酸素を送り込む。だからこそHIV患者であっても、非感染で子供を産む事が出来る。
しかし、妊娠後期で胎児側から栄養を摂り込むために、母体へ枝を食い込ませるとは。まさに身を削って出産をする母親。

 

再放送のチャンスはあるだろうから、是非観ておくべき番組。

 

 

 


名古屋行き最終列車 2018  第十話 3/20放送

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番組紹介    第一話  第二話  第三話  第四話  第五話

                 第六話 第七話  第八話  第九話

 

第十話  松井玲奈 渡辺いっけい 矢本悠馬

ラジオドキュメンタリー「私が最終列車に乗る理由」の取材を相変わらず続ける吉川一美(松井玲奈)。
そこで相手をする高校教師の高橋(渡辺いっけい)。

ほぼ毎日終電に乗る生活。


卒業式を控えて悩みがある。彼は卓球部の顧問。部員は一人しかいない。一年の時に入部させた木下雄介(矢本悠馬)。内気で一人で居ることが多く、半ば強引に入部させた。
才能は全くなく、そもそも運動神経がない。

一人しかいないため、常に試合には出られるが、常に負ける。
それでも弱音は吐かない。

そんな彼を、時には追い込んで特訓もした。

 

三年になった公式戦の最終で、一回戦初めて勝った(不戦勝)。二回戦は相手が骨折して勝利。だが三回戦ではシード選手が出て来てボコボコにされる。3対1で負け。

相手はその後の全試合を全勝で勝ち抜き優勝。

 

自分は雄介の青春を奪ったのではないか、と高橋。

彼はおとなしいうえに優しい。顧問の自分に付き合ってくれた。
卒業までに雄介のためになる事をやってあげたい。ラリーをしていると何か悩みを感じるが、詳しくは判らない。
一美は、それを自分に探らせて欲しいと申し出た。

 

名鉄名古屋の落とし物係ネタ 
一美が訪れる。森本宗太郎がレコーダーを渡す。一美が上機嫌なのは暖かくなったから?

 

雄介に会って話をする一美。彼の就職先は知多のえびせんべい工場。不安はあるが、それが悩みではなさそう。

雄介と卓球を始める一美。打ち易い球を返してくれる。


雄介の悩みは卓球部の存続問題。

一美が高橋に話すと、今日がその会議だった。

 

各部顧問の教師が集まり協議。高橋に話題が集中。三年間で部員一人。試合でもまともに勝てていない。
先生がやりたいだけでしょう。シニアの部で優勝していらっしゃる。

部員を先生の練習に付き合わせているだけでは?・・・
結局卓球部は廃部の方向で会議は終わる。

 

部室に入ろうとして、中に居る女子生徒に会った雄介。来年度からこの部室を吹奏部が使う予定だと聞かされる。その上、三年間高橋先生の練習台で大変だったわね、と言われた。

 

次の日から学校に来なくなった雄介。
家を訪れる一美。「何たそがれてるの?」
廃部の事を聞いた。だから休んでるの?  

違う。だけど何で教えてくれない。
伝えようとしたけど、どうしても言えなかった。

その程度の関係か。ダメなのは僕。
一美は自分の考えをまとめたものを手紙にして、雄介の家に置いて来た。

 

翌日学校を訪れ、高橋と話す一美。

今日は学校名物の「卒業生の主張」
校舎の屋上から生徒たちに向けて、何でもいいから告白する。
先生の車のガラス割った→保険で直したから許すー。 好きです、と告白→ごめんなさーい。
そんな時に「3年2組、木下雄介君の主張です」

 

子供の頃から友達いなかった。母子家庭で貧乏だった。

だけど高校では充実した生活を送れた。
練習で先生とラリーが出来て嬉しかった。一人ぼっちではなくなった。
先生のための練習?冗談じゃない! 先生は自分の大会の前でも、僕のレベルに合わせてやってくれた。
最後の大会の相手は三歳から卓球やってた奴。だけどそんな奴から1セット取れた。彼が一回だけ負けたセット。

在校生の中で独りぼっちの人、卓球部に入って下さい。
最後に、高橋先生、最高の三年間を有難うございました。

 

高橋が拡声器で、涙ながらに「こちらこそ有難う!」
そのイベントの後、高橋の元に二名の生徒がやって来る、入部希望者。廃部を免れて喜ぶ高橋。

無事卒業式が終わる。
彼を題材にしたラジオドキュメントも3月末に無事放送された。

 

感想
一美の、相変わらずの取材ネタ。これも続ければ、定番という事か。
今、教師の負担増で問題となっているクラブ活動。毎日終電なんて問題提起したらあかんだろう(笑)
まあ、それはさておき。顧問にとって、部員が少ない事は本当に肩身が狭い様だ。

さほど深くはないが、渡辺いっけいの自信のなさそうな演技が絶妙で、それなりに楽しめた。

 

ただ、来年からはレビューを間引く事にしよう(10回も続けるなんて、ドラマの1クールと一緒じゃん)

 

 

100分 de 名著 松本清張 (3)「昭和史発掘:2.26事件」 NHK Eテレ 3/19放送

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番組紹介   第1回  第2回

 

第3回「昭和史発掘」 副題:歴史の裏側を暴き出す

進行役:伊集院光 君津有理子 ゲスト:原武史(放送大学教授)

 

清張は、生涯で千点以上の小説を書いているが、その中にはノンフィクションも多く含まれている。
突然ノンフィクション作家になったわけではなく、元々興味があった。オーラルヒストリー(口述記録)。
当時は昭和になって、たかだか三十数年。

当時を知る人がまだ多く居た。


「昭和史発掘」が連載されたのは昭和39(1964)年~46(1973)年の週刊文春。本書全13巻(文庫版)。

後半のほとんどを「2.26事件」に費やしている(7~13巻)。
伊集院光の知識→柳家小さんが、当時末端の兵隊として参加していた。直前に気を紛らわすために落語をやったが、緊迫し過ぎて全く受けなかったらしい。
セットで良く言われる5.15事件とは全く違う(こちらは関与が数名)。2.26事件は関係者が1400名超。

 

単なるテロではない、大規模な計画。

昭和11年2月26日未明。行軍する二十数名の青年将校たち。帝都防衛にあたる精鋭部隊。

 

首謀者
栗原安秀 中尉   野中四郎 大尉   磯部浅一 元一等主計 

安藤輝三 大尉   村中孝次 元大尉  香田清貞 大尉 

坂井直 中尉         中橋基明 中尉

 

政府要人を暗殺し、国家改造を目指していた。

大蔵大臣:高橋是清(死亡)、  内大臣:斎藤実(死亡)
侍従長 :鈴木貫太郎(重傷)、 総理大臣:岡田啓介(脱出)

 

政府要人を国家に巣食う悪の象徴と断じて警視庁を占拠。清張はこれが軍事クーデターだった事を明らかにした。

 

昭和初期の時代背景
大正から昭和にかけて、政府の演出により天皇の姿が国民から見えるようにした(狙いは明治天皇の再来をイメージ付ける)
君民一体の演出。こういう天皇なら、と直訴する者も出て来る(女性、差別を受けている者等)
青年将校らの気持ちも根底は同じ。天皇と臣民の間に邪魔をする存在があってはならない(君側の奸)

 

この事件の成否のカギを握っていたのが、中橋基明中尉とその部隊。大蔵大臣 高橋是清を殺害した後、皇居に向かった。清張は中橋に注目(最重要人物)。この計画の成功と挫折の分水嶺。

 

この部隊は大蔵大臣暗殺後、昭和天皇を手中に収めるため皇居に向かった。
そこで守衛隊に事件を報告し、警護目的で坂下門警備として入り込んだ。クーデターは成功寸前。だがそこから警備に着くまで1時間半を要した事が、状況に変化を生んだ。

 

守衛隊司令官 門間健太郎少佐。襲撃事件の情報が集まるうちに、中橋に対する疑惑を持つ。部下に命じて呼びに行かせたところ、中橋が、警視庁に向けて手旗信号を送る寸前だった。中橋は取り押さえられ、警視庁を占拠した500名の部隊が動く事はなかった(待ちぼうけ)。

 

清張の文には迫力がある(自負を持っている)。

清張が発表する前までの、2.26事件の見方。
クーデターを起こした後、沙汰を待つ姿勢。「君側の奸を排除すれば、天皇が褒めてくれる」。要人殺傷までの計画。

清張の見解はNO。青年将校の側に積極的な計画があった(天皇を手中に収める)。

 

だが、それが未遂に終わったのは何故か?
中橋は、取り押さえられた時、本気であれば相手を銃殺してでも信号を出す事は出来た。だがそうなると皇居自体が銃撃の現場になってしまう(恐れ多い)。それが中橋を怯ませた。

 

清張が注目したもう一人の人物。秩父宮(昭和天皇の弟)。事件の首謀者 安藤輝三と友人だった。
秩父宮は事件直後に、赴任先の青森弘前から汽車で東京に向かった。安藤の参加を知って、事件の収拾に努力しようと考えていた(清張の推定)。でなければクーデターの黒幕が自分であると疑われるような行動を起こす筈がない。

 

天皇は、この事件に激怒。また秩父宮との面会にも不機嫌だったという。秩父宮は変心し、決起将校らに自決を勧める。
2月28日に、陸軍首脳部により決起軍の討伐が決定され、帰順が呼びかけられた。次々に従う兵士たち。小さんに代表される、ほとんどの兵士は実情を知らず、ただ動いただけ。

 

天皇はなぜそこまで激怒したか?
重臣たちを殺されたというのが第一だが、それだけではない。
秩父宮が上京した時、貞明皇后(昭和天皇の母)と長い間話し合っていた。二人には青年将校に肩入れする考えがあった。
また皇太后は、次男の秩父宮の方を可愛かったという説あり。
それらが昭和天皇にとって不気味に映った。

タブーへの踏み込み、皇室の実体、家族の関係性等をかなり大胆に描き出している。

 

本書の、世間からの評価は?
学者たちは冷ややかな見方。清張のイメージは小説家(フィクションを書いている人間)。蔑むような扱い(逆にそれが彼の原動力になる)。
エリートではなかった事が、こういう著作を生み出した。

 

これらの資料を駆使した未完の小説がある→「神々の乱心」

次回のテーマ。

 


感想
自分が「昭和史発掘」を読んでいたのは高校生の時であり、当時単行本としては5巻までしか出ていなかったので、今回のテーマは読んでいなかった。
その後清張対応は小説主体に移行したため、この2.26事件に接する事がなかった。

 

当時クーデター未遂事件として扱われていたこの件が、実際にはもっと規模の大きい、政府転覆とも言える本格クーデターとして計画された。
それを公式に出されている供述書の中から炙り出して行く、清張ならではの方法。これはまさに「発掘」。

しかしこの連載が週刊「文春」で始まったというのは驚き。確かに文春の母体は「文藝春秋」。元々文化の伝道者だった。「文春砲」なんてのは汚名以外の何物でもない。

もう少し知的な方向に巻き戻して欲しいものだ。

 

話を戻して
昭和天皇とその周囲の皇族に対する、清張の鋭いアプローチにも驚く。昭和天皇への心酔は、私の母方の実家にも両陛下の写真が飾ってあり、日本国民に広く浸透していた。

そういう背景の下にこの様な事件が起こり、次第に政府が天皇を政治に利用して行く下地が出来て行った。

 

昭和天皇は、軍部の誘導もあったろうが、戦いを好む様な要素もあったのだろう。それは弟・秩父宮との確執から来たものかも知れない。

 

だが、こういうネタもNHKで堂々と番組作れるというのは「言論の自由 有り難し」てなとこか。

 

 

15時17分、パリ行き  2018年 アメリカ

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監督 クリント・イーストウッド
脚本 ドロシー・ブライスカル
音楽 クリスチャン・ジェイコブ
     トーマス・ニューマン


キャスト
スペンサー・ストーン       - 本人
アンソニー・サドラー       - 本人
アレク・スカラトス          - 本人
ジョイス・エスケル         - ジュディ・グリア: スペンサーの母
ハイディ・スカラトス        - ジェナ・フィッシャー: アレクの母
アヨブ・エルカザニ         - レイ・コラサーニ: 銃乱射事件の犯人
マーク・ムーガリアン       - 本人: 列車の乗客
イザベラ・R・ムーガリアン   - 本人: 列車の乗客。マークの妻
クリス・ノーマン          - 本人: 列車の乗客

 

 

予告編

 

あらすじ
導入部(Movie Walkerより抜粋)
2015年8月21日。

アムステルダムからパリに向けて高速列車タリスが発車。
列車は順調に走行を続け、やがてフランス国内へ。
ところが、そこで事件が発生する。
乗客に紛れ込んでいたイスラム過激派の男が、自動小銃を発砲したのだ。突然の事態に怯え、混乱をきたす500名以上の乗客たち。
その時、犯人に立ち向かったのは、ヨーロッパ旅行中のアメリカ人の若者3人組だった。
なぜ彼らは、死の恐怖に直面しながらも、困難な事態に立ち向かうことができたのか……?


キーマン三人の少年時代から始まる。
学校のロッカーで話をするスペンサーとアレク。スペンサーは生徒会長に立候補したが落選。廊下でウロウロしている所を教師に見つかり校長室に行かされる。
そこで校長室から出て来る黒人の少年とすれ違う二人。

あいつとは付き合うな、と校長。
二人の母親同士も親しく、学校に呼び出された母親たち。アレクの母親に女教師が、アレクを多動性障害だから、と言って薬の服用を勧める。憤慨して帰る母親。スペンサーの母親も別の日に、シングルマザーである事について苦言されていた。

 

黒人の少年はアンソニー。
体育の授業で、教師がバスケのチーム分けをアルファベットで行い、この三人が同じグループとなる。
次第に気の合う仲間となる三人は、サバイバルゲームにハマる戦争ヲタクのスペンサーに引っ張られて一緒に遊ぶ。


話の判る教師から第二次大戦の資料をもらって興奮。

だが、アンソニーは別の学校へ転校。

アレクもオレゴン州へと引っ越した。
落胆するスペンサーを母親が励ます。
その後も連絡を取り合い、三人の友情は続く。

 

青年になった三人。
アレクはオレゴン州兵として軍人になり、アンソニーは大学生。

スペンサーは、軍施設前のスムージー店でバイトをしているうちに空軍に憧れる様になり、パラレスキュー隊を目指す。

 

元々肥満傾向だったスペンサーは、ダイエットとトレーニングで、兵役に対して合格となるが、奥行視覚のテストが通らず、パラレスキューには入隊出来ない。気落ちするスペンサーを母親が励ます。
スペンサーが配属されたのはサバイバル関係の部署。だが寝坊で訓練に遅れ、裁縫の腕も劣るため、落第となる。
最終的に、後方支援関係の部署に落ち着く。

ダミー人形を使っての救命訓練。
そこでの柔術の訓練で、自分の特性を見出して行くスペンサー。

 

夏休暇をどうするかについて、アレクにパソコンのスカイプで話すスペンサー。退屈な毎日を過ごすアレクは、ドイツに居るガールフレンドを訪ねた後で合流する事にした。
次いでアンソニーに連絡するが、彼は金がないとボヤく。

 

結局イタリアまで来たアンソニーは、スペンサーと落ち合う。

ローマのバチカンで観光し、その後ベネツィアに下って、船で知り合った女性と三人で食事をする。
その晩立ち寄ったバーで、カウンターの隣に座った老人からアムステルダムの素晴らしさを吹き込まれ、予定を変更。

 

ベルリンで合流したアレクと共に、アムステルダムのクラブ(STAAT?)で夜通し酒を飲んで踊る。

翌朝は二日酔いで、昼近くに起き出す三人。

レストランで出されたビールに「下げてくれ~」
人から聞いた話でも、パリ行きはあまり推奨されなかったが、結局パリ行きのタリス号に乗る事を決める三人。


オープニングの、武装した男の場面に戻る。
銃声と共に男性が倒れる。男がドアを開けて、落ちているマシンガンを拾おうとする。三人の中で一番近い所に居たのがスペンサー。

「行け!」というアレクの言葉で、シートから跳ね起きて通路を走り出すスペンサー。銃を構えた男が引鉄を引くが、弾が出ない。

 

体当たりしたスペンサーは、男を羽交い絞めにしてシートに倒れ込む。
アレクが銃を取り上げて確認すると、薬莢が詰まっていた。メカトラブルが幸いした。持っていた袋には多量の弾倉と銃弾。
男はナイフを取り出して後ろを突いた。傷を負うスペンサー。

アンソニーも加勢に来て、男が取り押さえられる。

男に撃たれた男性、マークは首元から多量の出血。スペンサーが血の吹き出ている所に指を当てて必死に止血。

意識を失わないよう、常に声をかける。

 

次の駅で列車は停止。警察と医療関係者が乗り込み、容疑者の確保と負傷者の処置。手当てを受け、ホームのベンチに座るスペンサー。

後日、フランス大統領からレジオン・ドヌール勲章を授与される三人。


感想
公開日から出遅れて、月末の入れ替えを前に「何観ようか」と悩んだ末にコレを選定。先日「グラン・トリノ」を観たせいか。

事件発生当時は、実はあまり強く認識していなかった。テロはしょっちゅうあるし、学校での銃乱射で十人以上の死者が出る事件もザラにある(アメリカでの話)。

 

そういう意味では、今回一歩間違えばとんでもない事になっていた、という再認識を迫る上で、いい映画を作ったと言える。

 

事件発生から一人撃たれるところまで、事実をなぞるように展開され、その後キーマンたちの少年時代に飛ぶ。
三人とも、言ってみれば「落ちこぼれ」の部類に入る。

しょっちゅう校長室に呼び出され、遊びはサバゲー。
離ればなれになっても友情が繋がっていたのは、お互いが満たされない環境にあったから。この辺りの気持ちは良く判る。

中でもそれを必死で繋ぎ止めていたのがスペンサー。

 

兵士になったアレク、大学生のアンソニー、と二人がそこそこのポジションを得ていたのに対し、スペンサーはスムージーの店でバイト。空軍に入る事を目指して精進するも、結局思い通りには進めていない。
だが、それにもめげずに、与えられた環境で身に付けたスキルが、ここ一番の危機で実を結んだ。
問題ありそうだと思っていたスペンサーが一番活躍したという事が、心に迫る。

 

映画化にあたって、本人を使うというすごい事をやった、監督のクリント・イーストウッド。元々は俳優を使う予定だったらしいが、本人を使った事が、この映画の価値を高めている。
「ハドソン川の奇跡」でもエンディングで、あの事故の当事者たちが実際に集まった様子に、一番感動したし。
ただし、いつの場合にも通用するとは思わない。今回は三人の持つ素の姿に感じるものがあったから、監督も、そう決めたのだろう。

 

音楽が控えめで良かった。特にエンディングは、最初ピアノソロ、次いでベース、そしてドラムが入り、静かなストリングスが最後に加わる。

音楽担当のクリスチャン・ジェイコブ(ピアノ)は「ハドソン川の奇跡」でも起用されており、イーストウッドのお気に入り。

 

エンドロールでざわざわと出て行く連中が居たのが減点・・・・何とかならんか。

 

テーマ曲

 

Christian Jacob - I'm Old Fashioned

 

 

 

 

NHKスペシャル 「人体」 第7集「”健康長寿”究極の挑戦」 3/25放送

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プロローグ 1集 2集 3集   4集   5集

番組紹介    6集 

 

司会・進行 タモリ、山中伸弥 
ゲスト:樹木希林、石原さとみ

 

タモリ、山中がバーベル上げのパフォーマンス。今日のテーマは?(タモリ) 「ピンピンコロリ」(山中)
石原:両親がタモリさんと同い年なので、セットで気にしている。
樹木:20年以上前のNHK特集の人体シリーズに出演。

当時のCG撮影、待ちが大変だった(内容覚えていない)。

 

今回注目するのは「ガン」と「心臓疾患」。

日本人の死因の一位と二位。
樹木:10年以上前に乳ガン手術→医者から全身ガンと言われている。

ガンは最大の敵。未来への挑戦。

 

ガン患者、村串栄一。元新聞記者(69)。今も執筆活動をしている。
54歳の時に胃ガンで一部切除。その後食道、舌、喉と身体ネットワークに沿って転移。手術を繰り返す(14年で13回)。

あんな思いはもうしたくない。

今までガン発生のメカニズムは謎に包まれていたが、実体が明らかになった。
乳房の毛細血管の画像。

ガン細胞が血管を引き寄せる。また免疫細胞も手なずける。
人体ネットワークを利用した、ある働きかけ。

 

国立がん研究センター 落谷孝広。
特殊なメッセージを、生き延びる手段として分泌。
白く輝く光(メッセージ物質)。突起が付いた丸い玉(1/一万ミリ)→エクソソーム(メッセージカプセル)。メッセージ物質がまとめて入っている。


メッセージカプセルが血管壁に向けて侵入「もっと栄養が欲しい」→血管が伸びてガン細胞に血液を供給。
免疫細胞にメッセージカプセルが作用「攻撃やめて」

人の健康、命を支える大切な役割りを利用、乗っ取り。
目的は何か?ガンは元々私たちの細胞。それがある時、増えるしかないものに変貌。
樹木:今の地球の私たち(人類)みたい。

 

ガン細胞の様々な悪だくみ→転移。メッセージ物質を巧みに操る。
卵巣ガンの腹膜転移→あちこちに広がる。
腹膜播種。サイレントキラーと言われ、転移の状況は謎だった(腹膜はバリヤーの役目を持つ)。
腹膜表面に細かい突起物があり、ガードしている。

そのすき間を抜けてメッセージカプセルが基部に着地。

表面の細胞と同じ成分のため侵入を許す。
そこでメッセージ物質を放出「あなたの役割りはもう終わり」。

その部分の突起物が死滅→クレーターが出来る。
そこへガン細胞が入り込み増殖。

 

エクソソームの分身がバリヤ機能を破綻させる。

樹木:乳ガンは切ればいいと思っていた。再発して「えらいこと」。

13年で30ケ所治療した。
石原:母親が以前卵巣ガンの手術をした。今のところ再発はない。

転移の内容を知ってびっくりしている。

エクソソームは全ての細胞が出している(いい働きもしている:傷を治せ、とか)。100兆個ある(究極のメッセージ)

エクソソームは全ての臓器が発している(いくつものメッセージ)。

状況によって命令が変わる。
ここ10年で発見された。時にはいい仕事をし、時には悪い仕事をする。

エクソソームの模型(スタジオいっぱい)

 

メッセージでガンに対抗する
先の村串さん→2ケ月に一回の通院時に血液を提供。5万6千人のガン患者の血液ストックからメッセージ物質の解明を模索。
村串さん:早く病気から解放されたい。

 

最先端の研究(デンマーク)
ガン撃退パワー
筋肉が出すメッセージ(2集でレポート)。うつ症状の改善、記憶力アップ。そのメッセージ物質がガン治療にも役立つ。
「敵がいるよ!」というメッセージを出すと免疫細胞が活性化する。この時に運動をするとガンの増殖が1/2に抑制される(マウス実験)。

前立腺ガンでの試験(治療の一環)。

運動を薬として処方する時代が来る。

 

日本での研究(落谷氏)
エクソソームを叩いて転移を抑え込む。
エクソソームに目印となる抗体をくっつける→免疫細胞が食べる。マウス実験で大きな効果(90%減)。

 

転移で亡くなる人が多い。
光免疫療法
メッセージ物質を標的にした治療法の最新版。ガン細胞に直接目印を付け、それを光の反応でガン細胞を破壊(消滅)。アメリカで研究中。


もう一つの課題→心臓病、心筋梗塞。心臓病で死ぬ患者は20万/年。
心臓から出るメッセージ物質
疲れると ・おしっこ出して心臓の負担を軽くする ・どんどん細胞を増やす ・炎症を抑える ・強くする

 

心筋細胞は普通の細胞と違う
普通は半年程度で細胞が入れ替わるが、心筋細胞は50年かけて3割程度しか入れ替わらない→傷付くと元通りになり難い。
どうしたら新しく出来る?

細胞再生のメッセージ→どんどん細胞を増やす
心筋細胞からのメッセージ物質は、放出量が少ない→人工的に増やして投与。
急速な蘇えり。マウス実験で大きな成果(心臓の壁が厚くなる)。
一年以内にヒトでの臨床試験を開始する。強力な薬となる。


すごい事。究極の薬。iPSは外で作って移植。
樹木:細胞が急に増えたらまたガンにならないか?
山中:副作用や増え過ぎ、ガン化などを疑うのは研究者にぴったりの資質。

 

シリーズ「人体」を振り返って
臓器と病気の関係を明らかにした。
腎臓:メッセージ物質が起こす高血圧→手術で治療
腸:アレルギー発症のカギ(腸内細菌によるコントロール)
臓器のメッセージに耳を傾けるのが治療の切り札

今は全体のネットワークを理解しないと治療に繋がらない。

 

この半年の間にも研究は進んでいる。
国際宇宙ステーションに骨を送り込んでいる。

メッセージ物質発生のメカニズム解明。
米ベンチャー企業による老化防止の研究。

骨芽細胞を培養し体内に戻す。

どうすればこの命を全う出来るのか
想像をはるかに超えた情報ネットワーク

 

始まりは一つの受精卵
メッセージ物質に導かれ、誕生した私たち
そして、人生を終える瞬間まで、ミクロの物質が、この体を支え続けている。私たちの命を守る、臓器同士の会話。

かけがえのない営みが、あなたの体にも秘められている。


思想、哲学、幸不幸、生きがい等、人間生きて行く上でいろんな問題がある。しかしまず人間、生まれて生きているだけで、ものすごい事を既に成し遂げている(タモリ)

 

生まれて来るだけで、すごい事(山中)
いろんな事に対して、もう少しゆとりが出て来る(タモリ)
感謝しなくてはいけない(山中)

 


感想
「健康長寿」と題して、日本人の死因の一位と二位である、ガンと心臓疾患を取り上げるとは、キャッチーなテーマ。
まあ健康にとっては最大の関心事だからね。

メッセージ物質の親玉「エクソソーム」を、ガン自体がコントロールして自分の肉体を騙すのだからタチが悪い。
今までのゲストの中で一番鋭いのが、今回の樹木希林。人類が、地球にとってのガン細胞なんてNHKでなかなか言えない・・・・
ここ数年で、更に研究は進み、ガンもどんどん「治る」病気になって行くだろう。
この、伸びた寿命をどう活かすのか・・・・まあ、ね。


全体感想
昨年10月から始まって半年。

やはり公共放送はこういうものを作ってこそ存在意義がある。
メッセージ物質による臓器間のネットワーク。

その全てに関与するガン細胞の「エクソソーム」。

 

今後持病と付き合って行く上でも、一つの指針となるだろう。

よくやった!NHK。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

100分 de 名著 松本清張 (4)「神々の乱心」 NHK Eテレ 3/26放送

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番組紹介   第1回  第2回  第3回

 

第4回「神々の乱心」 副題:国家の深層に潜むもの

進行役:伊集院光 君津有理子 ゲスト:原武史(放送大学教授)

 

晩年、歴史小説の執筆が多くなった清張。今回は未完の作品だが、原が一番好きな小説。フィクションとノンフィクションの融合。

昭和8年10月。埼玉。特高警察の吉屋謙介は、新興宗教の「月辰会(げっしんかい)」に不審を抱いていた。


占いを受けた有力者、軍関係者が多数頼って来る。
そこから出て来た女に目を付けて尋問すると、女は宮中の女官。宮中に宛てた封書を持っていた(御霊示)。だが女は数日後に自殺。背景にあるのは国家転覆のクーデター。

 

ありそうもない設定に思える。

どうして清張はこれを盛り込んだ?(伊集院)
これは実際に起きた事件を参考にしている(島津ハル事件)
宮中の女官長(君津治子)が新興宗教に入信し、昭和天皇の崩御を予言。不敬罪で逮捕された。

 

宮中における神道の扱い→祭祀であって宗教ではない。よって他宗教とは矛盾しないという立場を取っている。

ドラマでは封書の中味は明らかにされていない。
昭和8年12月23日に皇太子(現平成天皇)誕生。この時代設定から言って出産前の性別は判らない。

御霊示は、男子誕生の占いだったと推定。

当時の昭和天皇の皇位継承第一位は、秩父宮。だが皇太子が生まれると、継承者が皇太子に移る。そのため教団が計画を急いだ。

 

教団の正体。
秋元伍一。満州で自分の野望を実現するための宗教を探していた。そこで見つけたのが霊媒師:江森静子。強い霊能力を持つ。
二人は意気投合し、月辰会を立ち上げる(秋元は教祖として平田有信と改名)。

その占いはよく当たり、軍関係者、宮中からも入信者を得た。


だが静子は次第に暴走し始める。秋元は静子の娘、美代子を仕込んで霊媒師としたかったが、静子の下では実現せず。

教団は事実上静子が権力を握っていた。

 

小説は教団の話で終わらない→宮中を描く。
背後に皇太后(昭和天皇の母:貞明皇后)の存在。息子の昭和天皇との間に確執があった。天皇と皇太后を巡る二重構造。
日中戦争、太平洋戦争とも、軍部は天皇に戦況を報告していたが、その後皇太后にも報告する習わしとなっていた。

皇太后の力が強かった。
この背景から、宮中が透けて見える。

昭和史の、ノンフィクションの限界。

 

平田の野望は、裏からの日本の支配。そのために皇太后を入信させたい(皇太后は秩父宮を溺愛)。
昭和天皇の呪い殺しの企みが露見。
平田は古物商からニセの三種の神器を調達(鏡、剣、勾玉)。


三種の神器を持っていないと天皇として証明されない。逆に秩父宮が三種の神器を持っていれば天皇になれる。

ニセモノと言っても、誰も見たことがない(天皇さえも)。島津ハル事件では、犯人が神器を持っていると主張。

 

昭和天皇の独白録に、なぜ戦争終結の決意をしたかの言葉がある。
鏡本体は伊勢神宮にある。剣は熱田神宮、と別の場所に奉納されていた。もし接収されて神器を失う様な事があっては先祖に申し訳ない。これが戦争終結の真意。神器の確保が最重要。

 

剣と勾玉をセットで剣璽(けんじ)と言い、天皇が退位した時には、次の者がまず剣璽を継承する儀式を行う。
これから行われる→生々しい話(平成から次の元号)。

 

こんな小説を出版していいのか?(伊集院)
言論の自由はあるが、不敬小説と見做される可能性もあった。しかし清張は自分の死を意識。最期だからと全部投げ込んだ。
清張は平成4年、83歳で死去。

 

書かれなかったエンディング(原の推理)
美代子に静子が嫉妬するが、平田は美代子への代変わりを強行。
宮中では皇太后が入信。支配に王手をかける平田。


一部将校らによる軍事クーデターが始まっていた。
平田は秩父宮に、ニセの三種の神器を献上して即位を促す。
その瞬間、稲妻が平田の全身を貫いた。静子が呪いの相手を昭和天皇から平田に変えた。

 

教祖が稲妻で死ぬというプロットは、編集者にも話していた様だから、多分外れてはいない。
清張は何を伝えたかったか?
昭和から平成に移り、新天皇になった。その環境で人生のタイムリミットを感じながら昭和を描きたかった。
古代日本、シャーマニズムといったものが、皇室に残存している事を示そうとした。


シリーズを振り返って
1作品ずつ100分やりたいぐらいの内容だった。
昭和史発掘は、ノンフィクションの限界に挑み、専門家からは邪道とも言われた。
だが神々の乱心では、小説家、ノンフィクション・ライターとしての意地を見た(伊集院)

 

清張には他に書きたいテーマがたくさんあった筈。
残り時間がない中で最後にこれを選んだ(原)


感想
若い頃、全集まで買って入れ込んだ作家だったが、結婚した頃にはその全集も手放す有様。
この、遺作となった本作品も、題名だけはかすかに知っていたが、内容は全く知らなかった。

皇室の、皇位継承に関わる陰謀を描いた小説。フィクションと言いながら、実際にあった事件を下敷きにしている。あったかも知れない「皇位継承クーデター」。

「昭和史発掘」以降、昭和天皇と秩父宮との、兄弟間の問題をずっと温めていたのだろう。
壬申の乱も、皇族の兄弟間係争。

フィクションという形を取って、皇室が抱えるものの危うさを知らしめたいという清張の執念が強く感じられる。

 

平成の世で言えば、皇太子徳仁親王と秋篠宮文仁親王との関係が微妙に見える。男子が生まれなかった雅子様に対し、39歳で悠仁様を出産した紀子様。秋篠宮の深慮遠謀。

皇室典範が変わらない限り、悠仁様が皇位継承。

 

これは読まないとアカンなー。


関連情報をアップ

島津治子  関連Blog

 

「松本清張の遺言」書評
本書は原武史が「神々の乱心」のガイドブックとして書いたもの。

本レビューは良く書けている。

 

 

冷蔵庫ラプソディ

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ヤスミン家では冷蔵庫を買い替えたらしい・・・・
その顛末はリブログ三唱じゃない参照。

 

 

わが家も2回ほど買い替えている。初代はヤスミン家と同じ三菱製(やっぱモーターの信頼性を評価)。
それが15年ほど使ったところでパッキンがイカれて二代目に。
二代目も15年使用。

こちらは、今は亡き三洋製→コンプレッサーが昇天。

 

三代目は、納期と扉開閉方向の関係でシャープ製に(詳細はこちら)。
ウチを担当した店員はぽてっとした「岡崎体育」タイプでした・・・

以来4年ちょっと。二代目の様な初期不良もなく、順調に稼働しております。
しかし、22年も持たせたヤスミン家、恐るべし・・・・

 

ウチは、氷はロックアイスを購入してます(のほほ・・・)
ていうかカミさんが、すりおろした玉ねぎやらシメジやらを、ガンガン冷凍しているので製氷皿が使えないだけなんどす。

 


わが家ではカミさんがいつも「おとーさーん!」と叫びます。
「俺はおめぇのオヤジじゃねぇ!!」といつも返していたんだけど、
義父が他界してからは、そんな返しも言い難くなった・・・・

 

 

 

虐殺器官(アニメ映画)  2017年

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年末にberobeさんのアニメ・レビューを読んで、ずっと観たいと思っていた。今回ようやく視聴。

 

監督 村瀬修功
脚本 村瀬修功
原作 伊藤計劃  小説はこちら

 

キャスト(声の出演)
クラヴィス・シェパード      中村悠一
ウィリアムズ            三上哲
アレックス             梶裕貴
リーランド             石川界人
ルツィア・シュクロウポヴァ   小林沙苗
院内総務             土師孝也
ルーシャス            桐本拓哉
ロックウェル           大塚明夫
ジョン・ポール          櫻井孝宏

 


予告映像

 

あらすじ
2020年、グルジア。暗殺を目的とした米軍の特殊部隊に所属するシェパード、ウィリアムズ、アレックス、リーランドの4名。
標的は二名。独立に干渉する米国に反発し、国内で虐殺を強行している国務大臣を確保するシェパード。付近に流れるベートーベンの「月光」。大臣は、なぜこんな事をしたのか、と自問。

 

そこへ何らかの異常をきたしたアレックスが大臣を射殺。

戦場での対応ルールに基きアレックスを射殺し、現場を爆破して脱出したシェパード。もう一人の男は直前に立ち去っていた。
作戦命令の裏に米大統領。

 

9.11のビル激突テロ以来、内外のテロ脅威に対する恐怖が米国内に広がっていた。5年前に起きたサラエボでの手製核爆弾テロがそれに拍車をかけ、徹底した警備、治安の強化が図られた。
その揺り戻しとも言える、周辺国での内戦、虐殺の拡大が新たな脅威となっていた。

 

TVでアメフト観戦をするシェパードとウィリアムズ。

ファウル判定に「過保護だ」と断ずるシェパード。

 

査問会にかけられるシェパードとウィリアムズ。戦場での対応には問題なく、咎めはなかった。アレックスに対する感情調整が上手く行っていなかった事によるP・T・S・Dが原因との結論。

 

シェパードらに対する新たな任務。前回逃したもう一人の男、ジョン・ポール。インターメディア・グループに属し、国の文化、宣伝をサポートする業務を数国掛け持ちしていた。そこで次々に始まった内戦、虐殺。

 

ジョン・ポールが元凶だと判るまで対応が後手に回った。その上、彼がどんなやり方でそれを実行しているかも判らない。

ジョンが、チェコに住むルツィアという女性語学講師と、数日前に接触した情報があり、その調査を命じられるシェパードとウィリアムズ。

 

語学の生徒としてルツィアに接触するシェパード。

講師と生徒という関係で契約する。
親しくなったところで、ルツィアがシェパードをカフカの墓に誘う。その後若者たちが集まるバーへ誘われるシェパードは個人認証を要求されない事に驚く。経営者のルーシャスが語るセキュリティ議論。

 

店からの帰りに乗った電車の中で、ルツィアが語るジョンの話。彼と愛し合っている時に、サラエボで妻と娘が核爆発により消滅した。

それ以来姿を消したジョン。

 

尾行者に気付き、ルツィアを連れて電車から降りるシェパード。

追跡者を難なく倒すが、突然体の自由を失い、倒れる。
目覚めた時には縛られていたシェパード。相手はジョン・ポール。

ジョンの語る真相。虐殺には文法がある。残虐行為の予測。

暴力行為の前兆が判るようになったジョン。
ジョンの仕掛けた言葉のマジックで気を失うシェパード。

次に目覚めた時にジョンは居なかった。
逃げようとした先にルーシャスたちが。

彼らの手引きでジョンとルツィアは既に逃げた。
いよいよ始末されようとした時に、シェパードの残した痕跡により救援が駆け付ける。

 

軍の施設で手当てを受けるシェパード。ビールに混ぜたナノマシンの作用で自由が奪われた。体内から排泄されるのに数日かかる。

 

シェパードらに下る新たな指令。

インド奥地で活動するインダス原理主義同盟の幹部8名の逮捕。

航空機からのパラシュート降下による攻撃。

作戦は成功し、煽動に加担していたジョンもそこで拘束。


航空機から発進した三発機のヘリで護送されるメンバー。機内で続くシェパードとジョンの議論。途中襲撃を受けてヘリが墜落。

結局幹部連中は全て死に、ジョンだけが奪還された。

 

航空機からポッドで発進するシェパード。その直後に航空機は爆破される。ジョンたち関係者の、ニセID情報を削除して行った残りの外郭から、アジトが判明した(ヴォクトリア湖)。そこへの潜入。

 

建物内に侵入したシェパードは兵士が「マダム」と言う声を聞く。姿を現したルツィアが部屋に入る。続いてその部屋に入るが彼女はいない。
机の上にあった手帖に目を通すシェパード。

手帖の間から落ちるメモリ。
「虐殺のエディタ、さ」とジョンが銃を持って現れる。

 

再び繰り返される議論。人の脳に組み込まれた虐殺に関する本能は、種の保存のため。

飢饉などで個体数維持が困難になった時、その数を減らす手段。

そこに現れたルツィア。ジョンがこうなったのは自分のせいだと言う。サラエボで妻子を失った事への自責の念が引金。
そうではない、とジョン。愛する者を守るためだと言う。サラエボで妻子を亡くした時決意した。もう、こんな悲しみは十分だ、と。

 

ジョンの願いは平和な世界と、殺し合う世界の分離。死にたい奴らには勝手に殺し合ってもらう。
それを否定し、ジョンをアメリカで裁判にかけてくれと頼むルツィア。
その直後、頭を銃で撃たれて倒れるルツィア。

ウィリアムズの狙撃だった。

 

ジョンを連れてその場を逃れるシェパード。ルツィアの遺体を残して来たことを悔いるジョン。今の社会を維持するために必要な人口調節。

だがその考えは母国では認められない。
君だけに出来ることがある、とシェパードを見つめるジョン。
銃声が響く。

 

友軍の車に回収されるシェパード。頭を撃ち抜かれたジョン。

ウィリアムズは戦死したという。
シェパードは公聴会で事実を公表し、告発される事になった。

 

感想

原作者、伊藤計劃による小説の映画化。本人は2009年に、作家デビューから僅か2年で死去。
原作をほぼ忠実にトレースしており、小説の世界観(空気感)の再現もそれほど違和感はない。

ただberobeさんの指摘通り原作にあった、脳死状態になった母親を前に、延命中止の決断を下す場面は全てカットされており、このドラマには盛り込まない、とあらかじめ判断したのだろう。

 

原作では、殺人マシンとして任務遂行するシェパードが、意外にセンチメンタルな部分を持っており、それ自身が小説の色合いに好ましいバイアスを与えているが、2時間程度の映画にそこまで織り込むのは多分困難。

 

原作では、ジョンの遺志を受け継いだシェパードが、音楽に虐殺の文法を仕込み、それをアメリカ社会に浸透させて行った。アメリカ以外の全ての国を救うために、と明確に書かれているが、映画ではそこまでの表現はされていない。

ただ、公聴会の前後に、メモを貼り付けたボードの前で作業をするシェパードの姿があり、パソコンとエディタも認められる。

虐殺の文法を英語化して浸透させる作業か。

 

最後のナレーションで「愛しい人たちを失う事になるが、それはきっと新しい世界の始まりになる。これが、僕の物語だ」と結んでおり、深読みする事で、アメリカ社会を破滅させる結末を暗示させている。

 

要するに、認証によりガチガチに固める事で、国としてのセキュリティが守られるという幻想を、真っ向から否定するという物語。
まさに現代の社会状況の中で、出るべくして出て来た作品。

 

 

 


ゲド戦記Ⅳ 最後の書 「帰還」 作:K・ル=グウィン

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2018.1.22に亡くなった原作者に敬愛を込めて・・・

5作まであるので、冷めないうちに・・・・

 

ゲド戦記Ⅳ  最後の書 「帰還」 作:K・ル=グウィン 訳:清水真砂子  
                     国内初版:1993年

 

 

1.できごと
亭主のヒウチイシが死んで、その後中谷の農園を維持しているゴハ。羊ひと群れ、四区画の畑、小作人の小屋に古い母屋。

資産はそれだけ。娘のリンゴは若夫婦。歩いて通える距離に居るが、同居はしていない。

 

ゴハと古くから付き合いのあるヒバリが駆け付けて、ひどい事が起きたという。宿なし連中の子供が大やけどをした。
宿なし連中というのは、ここひと月ばかり川原で野宿をしている者。

男二人に女とその連れ子。
その中のひとりがヒバリに、子供の具合が悪いと言って来た。行く支度をしているうちに男は居なくなり、ヒバリが川原に行くと、くすぶった焚火に子供が放り込まれていたという。

 

ヒバリはその子を抱いて家まで運び、まじない女のツタに応急処置を頼んだが、不安に駆られてゴハに頼った。部屋に入ると、ツタがゴハを見てイヤそうな顔をした。ゴハがゴントに来た時、最初はル・アルビの大魔法使いオジオンの世話になっていた。

だからゴハにも人並み外れた力があるかも知れないと思っていた。
子供は顔の右半分と右手に、骨まで達するやけどを負っている。
ゴハは歩み寄って子供の左手を両手で包み、祈った。

 

2.ハヤブサの巣へ
それから一年以上経った夏の終わりに、男がゴハを訪ねて来た。

ル・アルビのオジオンが呼んでいるとの事。病気だという。
ゴハが男を台所に迎えると、子供が牛乳とパンを出した。

子供を一目見るなり目をそむける男。

ゴハは旅支度を整え、子供を連れて家を出た。男は本来の用事である羊の買い付けのために別れた。
ゴント山に入って行く二人。日が暮れるまで歩き続け、山の中で野宿。
翌朝、おかゆを食べてからまた歩く。ゴハは子供をテルーと呼び、歩きながらオジオンの事を少しづつ教えて行く。ゴハがごく若かった時、親がわりをしてくれた人。魔法使い。
呼び名のこと。普通の呼び名とは違う、真の名をもらったら、絶対に人に話してはならない。
更に竜の話へと続く。キメイのばばがオジオンにしてくれた竜の話。

 

水を飲んで小休止した後に歩き出した時、前方から四人の男が歩いて来た。ヒバリも話していた、ごろつきや強盗の話を思い出すゴハ。
男らとすれ違う時「よう、よう」と声を掛けられる。「どいて!こっちはオジオンに用があるんだから」と言ってテルーを抱えてすり抜けるゴハ。ほっとけ、と言う男たちの中で一人だけ見送る男。革の帽子、革のチョッキを着て、ハンディと呼ばれていた。
男たちから離れて、ようやく落ち着くゴハ。
日が沈んでだいぶ経ってから、ようやくオジオンの家に着いた二人。

ドアを開けると「おはいり、テナー」とオジオンの声がした。

 

3.オジオン
付き添いが誰もいない事に驚くテナーは、疲れた子供を寝かしつけ、火を起こした。これじゃあ、誰にもみとられずに死んでしまう、と言うテルーに「そうさせてくれ」。
「ゲドか来てくれるといいんだが」と呟く老人。
「あれは西に向かった。わしは大事なタカをなくしてしまったよ」
「いいえ、そんなことない。きっと帰ってくるわ」

うわごとを話すオジオン。夜明けに鳥の群れの羽音で目を覚ますテナー。家の周りを一周しただけで去って行った。

ル・アルビの村から次々と人がやって来て、何かオジオンのために出来ることはないか、とたずねた。
多少具合が良くなったオジオンは、子供の名前を聞き、その名前では皆があの子を恐れるようになるだろう、と言う。

もう、今でも恐れている、とテナー。
そしてオジオンは「あの子に何もかも教えてやってくれ!ロークではだめだ。なぜ、わしはお前を行かせた?なぜ、お前は行った? あの子をここへ連れて来るためだ。だが、遅すぎただろうか?」
やさしく介抱するテナー。それからぐったりとして、昼の間眠り続けるオジオン。

夕方近くなって目覚めたオジオンは、起こしてくれと頼んだ。何とか起き上がれそうだったので、手を貸すテナー。

テルーがその後ろ姿を真剣に見ていた。
数歩歩いて止まり、を繰り返して森に入って行く二人。
ブナの大きな幹の根元に腰をおろしたオジオン。
長い間目を閉じていたオジオンだが、やがて西の空を見上げると「竜か・・・」と呟いた。
日が沈み、風も落ちた。
「終わったよ」「何もかも変わった!変わったんだよ、テナー!待ってごらん、ここで待ってごらん、あと・・・」
最後にオジオンはテナーに自分の名をあかし、息を引き取った。
テナーは、死者としばらく座っていたが、やがて立ち上がると、人を迎えにおりて行った。

 

ル・アルビの領主付きの魔法使いと、ゴント港からの魔法使いが別々に登って来る。

オジオンの葬送の儀式は、村付きのまじない女のコケばばが行った。通夜に呪文を唱え必要な事を行った。
埋葬の儀式のために来た二人の魔法使い。

市中の墓に葬りたかったと愚痴る、港から来た魔法使い。
テナーが、この人の名前はアイハルと言って、ここに眠ることを望んでいました、と話す。
「あんたは誰だね」とゴント港からの魔法使いが聞く。

領主付きの魔法使いはそっぽを向いている。
腹立ちまぎれに、それを明かすのがおまえさま方の仕事、と言ったテナーにいきり立つ魔法使い。

一応テナーが謝った時、コケばばが、オジオンはこの人が来るのを待って死んだ。そしてわざわざここまでのぼって来て死んだのは、ここに埋めて欲しいから、と引き継いだ。
魔法使いがオジオンの本名を忘れていたのに再び驚くテナー。

アイハルという名を再度告げ、墓はここに作るようにと念押ししてテナーはそこを去った。

 

4.カレシン
オジオンの家で部屋の片付けをするテナー。ひびの入った皿、穴の明いた鍋を見て胸を痛める。
中谷に残して来た羊と果樹園の世話は二組の小作人夫婦(シャンディとスンダガワ、ティフとシス)に任せ、しばらくはここに留まろうと考えたテナー。
毎日モモの木の実を見ていたテルー。とうとう「ふたつ、真っ赤よ」と告げた。二人でそれを食べる。その種を植えたテルー。

 

こちらに来てどんどん変化したテルー。ヤギ飼いの娘、ヘザーに気を許す。ヘザーはテルーの外見を全く気にしなかった。それからコケばばも大丈夫だった。25年前、オジオンの養女で弟子の立場としてここに来た時のテナー。女たちからは特権階級の人間と思われていた。

大巫女の位にあった時もそうだった。
オジオンが差し出す学問や技からも身を引き、百姓の女房になった。ヒウチイシの女房ゴハ。
男を受け入れ、子を産み、パンを焼き・・・・
初めは好奇の目があったが、テナーが年をとって来ると、男たちの目に入らなくなっていた。

コケばばは、テルーとはうまく行っていた。

他愛もない昔話も教えていた。
このままテルーに、コケばばがいろいろ吹き込むのを放置していいか判断出来ないテルー。
オジオンはこの子を見て、みんなが恐れるようになるだろう、と言った。自分自身もこの子を恐れている。

 

「ゴハ、竜ってなに?」テルーが聞いた。
コケばばに聞いたの?と聞くと、ゴハが教えてくれたという。竜と人が同じものだった頃の話を以前してやっていた。
テナーは、家のある高山台地の外れに腰かけて海を見ていた。
西の方から一羽の鳥が飛んで来る。かなりの高空を飛んでいる。

それから目が離せなくなったテナー。
いよいよはっきり見えだしたのは、赤い翼の竜。

 

テナーの居た岩棚に降り立つ竜。「アビヴァレイブ、ゲド」と言って首をぐっと下げた。竜の背で眠っている男。

再び竜が声を上げるが、男は動かない。
「ソブオリスト」と竜の声。オジオンから教わった天地創造の言葉。上れという意味。竜が足で形作った階段を上ってテナーは男の腕を取る。男の顔が見え「さあ、起きて、ゲド、さあ」と言うテナー。
男は立ち上がろうとしたが、竜の背から岩の上に落ちた。
竜は体の向きを変えて「テッセ カレシン」と言い、それに「テッセ テナー」と返すテナー。
舞い上がり、去って行った竜。

男の体を何とか崖から遠ざけ、ヘザー、コケ、テルーを呼んだ。干してあった帆布に男を乗せ、何とか家まで運び込む。
この人がハイタカだと言う、テナーの言葉を否定するコケ。だいたいどうやってここへ来たのかと聞くコケに、竜が飛んで来たことを誰も知らないの、と驚くテナー。
コケは、これはいたずらだと言う。大魔法使いが死んだから、悪さをする者がたんと増える。
しつこく否定するコケを言葉でやり込めると、テナーは火を起こしにかかった。とにかくやるべき事をやらなくてはならない。

 

5.好転
眠り続けるゲドを見つめるテナー。

もうお葬式はたくさん!とテナーは思った。

翌朝目覚めたテナーは、娘のリンゴの事を思い出していた。そして息子のヒバナ。姉と五つ違い。幼い時は気管支炎で虚弱だったが、成長して丈夫になった。十三で名付けが済むと、商船の乗組員として海に出た。ここ三年会っていない。

父親の死も知っているのか、いないのか。

 

テルーが起きて来て、眠っている男を見つめている。顔についた四筋の白い傷あと。「やけどしたの?」
モモを取りに行かせるテナー。
コケばばがやって来た。この頃、灯心草の茎を使ったカゴ作りを教わっていた。その合い間にいろんな話をする。
時折りハイタカの様子を見ながら、コケばばとの話を続けるテナー。
アチュアンでの話をする。巫女になるよう育てられた。宦官に守られ、女だけで固まって暮らしていた。宦官を知らないコケに「去勢された男」と言うと悲鳴を上げた。
そのうちの一人マナンは、ことのほか可愛がってくれた。だがそのマナンを殺してしまった。
今まで、宦官のことなど闇に葬り去ってしまっていた。

 

次の日になって、ゲドはようやく目を覚ました。コケは、看護の腕は良かったが、ゲドの弱り方を見て、死ぬものと思っていた。

二口、三口スープを飲んだだけのゲド。
翌日ゲドは目を覚ました時、悲鳴を上げた。落ちると思ったのか。そっと声を掛けるテナーに「テナー」と一言言った。そしてまた眠る。

コケばばは毎日来て、薬草の煎じ薬をゲドに飲ませ、ゲドもまたコケばばをちゃんと名前で呼んだ。
まもなくオジオンの事を聞き始めるゲド。十日前に亡くなったことを告げる。そしてゲドが四日前の夕方に来たことも。
二人でアチュアンからこちらにきてから、もう二十五年が経っていた。
「はてみ丸は今どこ?」突然聞いて自分でもびっくりした。「セリダーほどにも遠いところに・・・」

「じゃあ、あなたはセリダーからカレシンに乗ってやって来たわけね」
ゲドはカレシンと聞いてテナーを見つめる。そして訂正。
「セリダーからロークへ戻って、そのあとロークからゴントに来たんだがね」
テナーは、ゲドがまた、船か竜が来て連れ去ってしまうのではないかとの危惧を口にした。
「ロークからは誰も来ないと思う」

 

ロークからは誰もやって来なかった。大賢人がこんなに長く放っておかれる事が不思議だった。
ル・アルビの領主の館からも誰も来ない。領主とオジオンの関係は良くなかった。人を寄せ付けない領主。今女はおらず、年老いた領主とその孫、ロークの学院から雇い入れたアスペンという魔法使いだけ。

数日後、畑で話をするテナーとゲド。亡くなる時アイハル(オジオン)が「何もかも変わった」って言った、とテナーが言うと「一つの災いにはけりがついた。そして・・・」
と言いかけてゲドは25年前、テナーとハブナーに帰って来た時の事を話した。腕環を持ち帰り、エレス・アクベの塔に戻した。
「予言は成就された。平和な日々が来た。彼は・・・彼は私を死の世界から生の世界へ連れ帰ってくれた。エンラッドのアレン。

彼は本名のレンバネンを名乗ってアースシーの王になった」

「今はハブナーに王がいるんだ!」
「よくやったわね!」ゲドが泣くのを見るのが耐えられなくて、仕事に戻るテナー。

 

6.悪化
コケばばと薬草を探して、毎日疲れ果てて帰るテルー。疲れすぎて眠れないテルーを抱いてあやすテナー。
テルーのやげどをしている方の顔は、ひどいケロイドになっている。右手の指も親指以外は固まっている。
テルーをベッドに移し、家の外に出るテナー。
丁度ゲドがこちらにやって来るところだった。

テルーの事を頼んで散歩に出るテナー。
なぜ自分がここに居るかを考えるテナー。オジオンに言われて待ったら、竜がやって来た。

そしてゲドは、今では元気になった。もうここに用はない。

部屋に戻ってゲドに、そろそろうちに戻るべきだと思うの、と話すテナー。しばらくの沈黙の後、ゲドはオジオンの本を持って行って欲しいと頼む。
あなたに残したのよ、と返すテナーに、私にはもう力がないんだよ、出し尽してしまった、と話すゲド。
乾ききった土地に、コップ一杯の水をそそぐように。
死の世界から戻って来るなんて、たいへんな事。時間も、休養も、静けさも、沈黙も、もっと必要。傷ついたんだもの、癒されなくちゃ。
「あの子どものようにとでも?」鋭すぎて、ほとんどそれと感じない言葉が、テナーの心に突き刺さる。
「なぜ癒されないと知っていてあの子を引き取ったのか」「そうするしかなかったから。私が自分の敵に会いに行ったように」

高い夜空に星が見える。故郷アチュアンではテハヌーと呼ばれていたものだった。
ゲドは自分の言ったことを謝罪したが、寝るから部屋の外に出てくれ、と追い出すテナー。
そして服を脱いでテルーの横に滑り込む。
「この子の将来が判っていて・・・か」ゲドならテルーを治せると思っていた。
でも決してこの子がいけなかったんじゃない。

 

コケに教わりながら、テルーが草かごを作っているが、ハイタカに気を取られているのに気付くテナー。
巣から出たばかりのチョウゲンボウがネズミを追い立てようとしていた。ゆっくり手を上げて何かを言ったハイタカ。チョウゲンボウは一鳴きして飛び去った。それを突っ立ったまま目で追うハイタカ。
オジオンが以前、ゲドがハヤブサになって帰って来た事を話していたのを思い出すテナー。あれの中にはタカが住みついていた。

 

7.ネズミ
羊の仲買人のタウンゼントが訪ねて来た。

オジオンのことづてを伝えた男。
この家にあるヤギの商談を持ちかけて来た。
話のついでに、ゴント港にハブナーからの大きな船が来ているという。

商談がまとまらないまま、タウンゼントが帰り、テナーは改めてゲドと自分の事がどう村人たちに思われているか、気になり出していた。
野菜畑でゲドを見掛けて何気なく「ハブナーの市から船が来てるそうよ」と声をかけると、ぎくっとした様に身構えるゲド。

まるでタカに気付いて逃げようとするネズミ。
「無理だ、会えない」「会えないって、誰に?」「王からの使いの者だ」
両手で顔をおおうゲド。

何とかして話をそらすために、見つけたワインを飲もうと持ち掛けるテナー。どうでもいいおしゃべりを続けながら、注いだワインを差し出した。
ワインを一杯飲んでから、自分はここから出て行くのがいいと思う、と言うゲド。どこへ行くにせよ、今のゲドでは危ない。
「向こうが真っ先に来るのはオジオンの家」「来たらどうだっていうの?」「もとの私になれ、と言われる」
その言葉で、アチュアンの大巫女を投げ捨て、テナーになった事、子供も出て行き一人になって、少しづつ年老いて行く事を思ったテナー。だがゲドの無念さや屈辱までは判らない。

テナーは、オジオンがテルーの事で最後に言ったことを話す。

あの子に何もかも教えてやってくれ。
私、ゲドか来る、来たら判るって思ってた。

あの子に何を教えたらいいか。
「私にもわからない。ただ、あの子にひどいことが行われたのは見てとったが、邪なことが」
戸口で音がして、とたんにゲドが身構えた。
少しドアを開けるとコケばば。「港から立派な身なりの人たちが来たそうで、大賢人の後を追って来たとか」ハイタカがコケの前に出る。
「連中は私の家には来やしません。よかったら、さあ」とコケばば。
そのまま付いて出るハイタカ。

 

ヘザーとテルーの夜食を準備しようとしていた時に、正装の男たちの来訪を受けるテナー。
王のもとから来たという五人の男。レバンネン王の戴冠式のため、ハイタカ様を探していると言った。
あの人はここには居ません、と言い、どこにおられるか、との質問にも「さあ、それは・・・」
状況を更に詳しく話す者たち。だがテナーの返事は同じ。

男たちが去って、ヘザーとテルーが顔を出した。
「あの人たち、ハイタカに何をするの?」テルーの言葉に決心するテナー。
神聖文字の本の最後の空白ページを切り取り、四半世紀書かなかった文字で、手紙を書いた。ヘザーに託そうとしたが、テルーが「あたしが行く」と言った。必ずハイタカに渡すのよ、と言って送り出すテナー。

 

8.タカ
テルーがハイタカの「今夜発つ」との返事をもらって帰って来た。
ハイタカがなぜ逃げなくてはならないのか。理不尽な思いのテナー。
そこへコケばばがやって来る。ハイタカはさっき発ったという。道中で食べるよう、パンとチーズも持たせたのを聞いて感謝するテナー。
コケばばと話す、魔法使いに関する問答。ばばの長年の経験に多少の敬意を払うテナー。

テルーは、村に行って機織りのオウギを訪ねる。布きれを分けてもらえないかと考えていた。

オウギはほとんど人と付き合わず、隠者のように暮らしていたが、テナーには優しかった。目がほとんど見えず、今は一人だけ居る弟子に織らせていた。

 

オウギは客を歓待してくれた。
テナーは豚のエサの残飯を提供する代わりに、子供の服の布地が欲しいと申し出た。喜んでリンネルを引っ張り出すオウギ。

だが機を織る弟子は機嫌が悪い。

帰り道で、テルーが機を織る姿を想像するテナー。人目にさらされずに仕事が出来る。そんな事を考えたが、あの右手では杼は投げられない。
家の近くでテルーを呼ぶが、返事がない。あらゆる所を探し、コケばばのところへも行ったが見つからない。次々と悪い予想が巡る。

探し疲れ、台所でテナーが水を飲んだ時、ドアの陰で杖が動いた。ちぢこまって、子犬ほどにしか見えないテルー。震えながらしがみつくテルーを抱いてゆすり続けるテナー。
「あの人がここに来たの」最初に思ったのはゲドの事。

でもそんな筈はない。改めて聞くテナー。
「男ね。革の帽子をかぶった男ね」頷くテルー。「あの四人、覚えているでしょ?あのうちの一人?」
「テルー、あんた、知ってるんじゃない、あの男」「うん」「川のそばで一緒に暮らしていたの?」頷くテルー。

テルーと一緒に食事を食べ、テナーは二人でコケばばの家に行った。
家に隠れていた事を話すと、そうでしょうとも、と返すコケばば。
探し出しのまじないをかけた時に、別のものが見えたようだ。
明日、領主の館に行きたいから、あの子を預かって欲しいと頼むテナー。

 

9.ことばを探す
牧草地で草刈りをしている男女。

テナーは革の帽子をかぶった男の事を聞いた。
ヴァルマス近くから来た男だ、と女が答えた。
そこに領主の館の魔法使い、アスペンが待っていた。
男の事を聞こうと思ったが、それは止めて、雇い入れた男の中に悪い事をした者がいる、と文句を言った。
テナーに対する軽蔑を見て取って、ゴハの声で「失礼しました。どうかお許しを」と立ち去ろうとしたテナーに、「待て!」と制止するアスペン。
「あんたはここに不和の種を撒きに来た。あんたにくっついて歩く小汚い鬼っ子。あの魔法使いの遺体の前で俺に挑みかかった。いいか、ばばあ。もし俺の意思に逆らうような事があればル・アルビから追い出してやる!」
「あんたみたいな男の言うことなんか、判ってたまるもんですか」と言い返すテナー。
だが背筋がぞくっとして振り返ると、アスペンが杖を出して魔法をかけようとしていた。ゲドが魔力をなくしたので、皆なくしたと思っていたのは間違いだった。

その時「おやおや、どうしたことで」とハブナーから来た使者のうちの二人が助け舟を出した。
「この方は、エルファーラン以来、女は誰一人はめた事のない腕環をはめた方だから、敬意を表していただきたい」とアスペンに聞こえるように言って片膝をつき、テナーの手を取った。

憎しみがこみ上げるアスペン。
「ここにいる友人が私を放してくれるまで、少しだけ待って下さい」と言い、そこを立ち去るテナー。
あの二人は避難所そのものだった、と感謝するテナー。

だがその後アスペンと使者が仲良く話しているのを見て、水を差された気になるテナー。

 

ハブナーからの使者は領主の館に数日滞在した後、帰って行った。あれ以来テナーに聞くこともなかった。
テナーは、これからどうするか決めなくては、と思っていた。

アスペンとハンディは脅威。だが中谷に戻れば、自分はただのゴハになり、オジオンを失う。
チーズ作りだけは済ませようと作業を続けた。
コケばばに頼んでいた館の情報。三年前までは領主とその孫が住んでいたが、孫の母親が亡くなってすぐアスペンがロークから派遣されて来た。それ以来、孫は生気を失い、病気の赤ん坊みたいだという。仕えている者の話では、アスペンが孫の命を吸い取って領主に与えているとの事。ハンディの事はどこからも情報がなかった。

 

ある日、テルーを連れてオウギの所へ行った帰り、体の震えに気付くテナー。家に帰ったとたん、誰かが家に入ったと知る。頭が混乱して、ハード語ではものが考えられない。
カルガド語でなら何とか考えられる。

幼い頃のアルハに頼って考えようとした。
ヘザーに、ヤギはもうあんたにあげるわ、と言おうとしたが、言葉が出ない。あろうことか「このバカが!アホで脳たりん女が!」と口走り、慌てて手でふさぐ。身振り手振りで何とか意思を伝えるテナー。

テルーと一緒に出掛ける準備を始めるテナー。

 

二人はそれぞれ、ここに来る時に使った杖を持って家を出た。

テナーは、ここに来た時に使ったのとは違う道を通ってゴント港に向かった。言葉も次第に戻って来た。
ゴントの港町に着いた二人。15マイルを歩き通しで疲れ切っていた。
人の群れを縫って歩いた。市街から南に向かう道を聞こうと女に近づいた時、テルーが身を隠すようにテナーにしがみついた。
そちらを見ると、革の帽子をかぶった男が近づいていた。テナーは、テルーの腕をつかむと足を速めた。
目指す船は、桟橋の向こうに停泊していた。うしろを振り返ると、男はすぐあとをつけている。
テナーは桟橋に飛び出すが、テルーが転ぶ。それを抱き上げて何とか船のデッキに渡してあるタラップに辿り着いた。
頭の禿げた船員がそれに気がついて声をかけた。
「こ、この船はハブナーから?」「ああ、王様のいる市からだが」「乗せてください!」
それは無理だ、と言った船員だが、すぐ後ろから近づく男に目をやった。
「逃げなくてもいいじゃないか」ハンディが言い、手をのばして来た。
「この人に何の用だ?」別の若い船員が来て言った。「こいつ、俺んとこの子どもを取ったんだ」とハンディ。口がきけないテナー。
だが若者の顔をみているうちに、やっと言うべき言葉が見つかった。
「お願いです、この船に乗せてください」若者は、テナーの手を取り、船のデッキへと引っ張り上げた。
ハンディはそのまま止め置かれた。
デッキにへたり込んだテナーだが、子どもは手放さなかった。

 

10.イルカ号
男ばかりの船内で、テルーはマントを毛布がわりにして、いつの間にか眠っていた。
若者がテルーの方に近づいた。「アチュアンのテナーと申します」と挨拶し「王でいらっしゃるのでは?」と続けたテナーに、彼が「エンラッドのレバンネンと申します」と名乗った。

私のところへ来て下さるところだったのでしょう?という若者の言葉に、あの男から逃れて家に帰ろうとしていたと話すテナー。
アチュアンへ?という問いに、とんでもない、中谷の私の農園と答える。最寄りの港はヴァルマス。
そちらに送りましょう、と答える若者。

王はテナーをキャビンに導き、ワインと果物、パンを勧めた。
そのおかげで何とか正気に戻ったテナーは、今朝からの出来事を話した。
必要以上のことは聞かなかったが、農園に帰ってからも大丈夫か、という気遣いをするレバンネン。
そっと王の様子を窺うテナー。若者にしてはあまりにも悲しげだった。
「あの人を探しにいらしたんですね。大賢人を、ハイタカを」
「ゲドを」私たちの間では真の名前でいきましょう、とレバンネン。

レバンネンは、ゲドの魔法使いの力が消え失せたことが信じられなかった。
「でも事実なんです。あの人は傷が癒えるまで一人で居たいと思っているんです」。
レンバネンは、ゲドと共に超えた山脈の事を話した。

そして自分の手を見た。ゲドの傷付いた手を思い出すテナー。

船上でロークの風の長を紹介されるテナー。あの方を昔からご存じですの?と聞くテナーに、ローク学院に来た当時の事を話す風の長。
現在、大賢人がいない状態。長が集まり、不足の一人はレバンネンが補って賢人会議を開いたが、どうしても決まらない。そんな中で様式の長が「ゴントの女」と言ったのを名付けの長が聞いた。様式の長は、それを映像で見たという。
そんな経緯で彼らはゴントに来なくてはならなくなった。
彼らは「ゴントの女」がテナーの事ではないかと考えたが、種々考えてそれはないとの結論。

 

結局アースシーには目下のところ大賢人はいない。でも、とにもかくにも王様はいてくださる、と結ぶテナー。
陽が傾く頃、船はヴァルマスの港に入った。息子が船乗りをしている事をレバンネンに話すテナー。
王と話す機会はもうない。テナーは話し出す。
ゴントにそういう女がいるなんて考えられない。そしてその女をみんなで探すという事も。
「かも知れませんね」静かに答える王。
息子に聞かれた時のためにこの船の名前を聞くテナー。

「イルカ号といいます」

最後に、ル・アルビに来たような者がまたやって来るのかを訪ねるテナー。私が止めます、とレバンネン。
ただし新しい大賢人、様式の長が、幻に見た女を探すために来るかも知れません。

 

11.わが家
ヴァルマス中の人々が、ハブナーからの船を見ようと港に来ていた。そして若き王に手を引かれて現れた女と幼い少女。人混みの後ろからその姿を見たリンゴは、母親を見て仰天する。
船を降りる前に、テナーは王からの抱擁を受け、テルーへの抱擁では、王が跪いた。
イルカ号は去り、その時になってようやくリンゴがテナーに声をかけた。
リンゴ夫婦の家で一晩を過ごすテナーにリンゴは言う。神聖文字も、腕環の話も、たくさんある歌の一つだった。だけど、あれ、本当に母さんだったのね。

村に帰るとヒバリの抱擁、そして質問攻め。しみじみと故郷に帰った喜びを味わうテナー。

 

賑やかなヒバリ親子が帰り、シャンディと洗い物をしている時に、先月こちらに送り込んだ男の事を聞くテナー。
タカとかいう人でしょ、と思い出したシャンディ。山の上で羊番をしているという。ここでは仕事がないから、とスンダガワが農園をやっている人を紹介したら、自分で話をつけてすぐに行ったという。秋になったら山から降りて来るという。羊なのかヤギなのか、本人も良く判っていない。
会えると思っていただけに、ほっとしたと同時にがっかりもした。でもその方がよかった。

農園での生活が戻り、忙しい毎日。
秋分の日が来て、その日が若き王の戴冠式である事を思い出すテナー。あの若者に冠を乗せるのは、やはりゲドだった筈、と思う。
当のゲドは雇われで山の上、羊だかヤギの番をしている。

村に行く時、テナーはツタばあさんの家のわきを通る事にしていた。ル・アルビでコケばばを知ってから、こちらのツタの事も知りたいと思った。
相変わらず冷たいツタだったが、テナーの示す敬意はつんつんしながらも受けた。

秋の終わりに、まじない師のブナノキが、金持ちの農家に呼ばれ、しばらく滞在した折りに、テナーの農園を訪れた。テルーの様子見とテナーとのおしゃべりが目的。ブナノキはオジオンの孫弟子で、オジオンを心底から尊敬しており、彼の事は何でも聞きたがった。
ブナノキからの情報。
新しい王は行動的で、この地域の役人を、立派な人かどうかの吟味を行って運営するよう指示している。一方従来からヒーノ公という海賊のパトロンが、今までゴントの代官、海の保安官らを意のままにして来た。そういう勢力に立ち向かう者も出始め、時代が変わりつつある。
「何もかも変わった」というオジオンの遺言を伝えるテナー。
ブナノキは話をテルーに向けた。他の誰がやっても、今以上にはならない、とテナーを称賛。だが不安な気持ちを隠せないテナー。怯えてばかりして暮らしていたら、いずれあの子は誰かに危害を加える。
ブナノキは、あの子に才能があるのなら、まじない女としての正式な魔法の訓練をさせてはどうかと提案。
「何もかも教えてやってくれ」というオジオンの言葉を思い出すテナー。だがツタの手ほどきを受けては?という言葉には強く反発。
敏感なブナノキは言葉を選んでツタを弁護。

 

夕食を終えたテナーとテルー。糸紡ぎを始めようとするテナーにお話しをねだるテルー。「陸地のお話」がいい、とテルー。
お話が終り、テルーを寝かせると、暖炉に戻ったテナー。火の具合を見ている時に、家の裏手で音がした。
再びドシンと何かがぶつかる音。火かき棒を持ったまま裏に向かう。
冷蔵室の入り口に立った時、その窓がこじ開けられるような音と、小声でささやく男たちの声。

鍵をかけようとして却って大きい音を立ててしまい、男たちがやって来る音がする。
よろい戸を挟んで対峙するテナーと男たち。
「この男が自分のチビちゃんに会いたいんだよ」
何とかしなくては。台所に飛び込んで肉切り包丁を掴むと、かんぬきを抜いてドアを開ける。
戸口に仁王立ちになると「さあ、どこからでも、かかっておいで!」
その直後、わめき声が聞こえて、じきにあえぎ声に変わった。「気をつけろ!」「こっちだ、こっちだ!」の怒鳴り声。
その後ふっつりと静かになった。

闇に慣れた目に、倒れている黒いものが見える。あえいでいた。その先でさっと動く影。
「テナー!」「止まれ!」「テナー、私だよ、ハイタカだ!」
戸口の明かりで浮かび上がったのは、熊手を持ったハイタカ。
ハイタカが倒れた男を台所に運び込んだ。熊手の四本の刃のうち三本が腹に刺さった。シーツとリンネル類で応急処置をする。
ゲドの話。山から降りる途中でうしろから人声がして道をそれた。その男の一人が「かしの木農園」と言うのを聞いて後をつけ

て来た。ずっと子どもの事を話していた。取り返すって。あなたの事も仕返しするって。
だがこの男はハンディではない。
残りは二人。逃げて行ったという。
どうすればよかったのか、堂々巡りの会話。
夜があけたらこの男を運び出す事にして、その日を終えた。

 

12.冬
テルーとの朝食を終えた後、スンダガワとゲドが帰って来た。昨夜の男はゲドがツタのところへ運んでまだ生きている。その他に一人畜殺場跡で殺されていて、その犯人は明け方納屋で見つかった。
連中は山の中で女を殺していた。その死体を畜殺場跡に置いて来た。今まで男たちが女に乞食をさせて生活していた。

その後テナーの家に向かった。
捕まった男二人は酒蔵に閉じ込められている。
一段落して汚れた靴を脱ぐと、暖炉の前に座るゲド。
「テルーの母親だったのね」と聞くテナーだったが、ささやく様な声しか出ないゲド。

疲れのひどいゲドは、テナーに促されてベッドに向かった。

事件を知って、ヒバリを始め多くの友達がやって来た。事件の説明をするテナー。テルーが駆け込んで来て、ヒバリに抱かれる。
どこの人なの?と聞かれてテナーが名前を挙げる。男はハンディ、シャグ、ヘイク。女の人は確かセニーとか。「セニニ」と訂正するテルー。
生き残った男たちもいずれくくり首になると聞いても反応のないテルー。

ヒバリが、助けてくれた羊飼いの話を聞いた。今までのいきさつを簡単に話すテナー。

ここに置くつもりなのね、との問いに「あの人がその気なら」

 

起き出して来たゲドにテルーが飛びついた。「天地創造」のいっとうはじめのとこ、知っている、というテルーは、それをゲドに聞かせる。
次の節をゲドが教えた。王様に会った時の話をするテルー。

テルーを寝かせてから話し合うテナーとゲド。
変わって行くテルーへの戸惑い。そして、ここに一緒に居て欲しいと頼む。「ここで働きたいな」
部屋にある二つのベッド。私はどちらに寝ればいい?とテナー。よかったら私の方に。
ふたりはその晩、暖炉の炉石の上で寝、そこでテナーは、もっとも知恵ある男でさえゲドに教えられなかった神秘をゲドに教えた。

ゲドが同居するにあたっての手続き。小作人たちへの報告。ヒウチイシ亡き今の相続人は、息子のヒバナ。だが当面はゲドが入っても状況に変化はない。

 

新たな生活は、特に違和感なく馴染んで行った。

その年の冬は長く、ゴントはたびたび大雪に見舞われた。
テルーにどういう知識を与えて行くか、この問題をゲドとテナーは話し合った。
ゴントの女、の言葉から、魔法使いがなぜ男なのか、女の力とは。話はあちこちに飛んでとりとめがない。
なぞなぞが判っていない。判っているのは「ゴントの女」という答えだけ。
ゲドは、レバンネンが王になった事は、ほんの始まりじゃないか、彼は戸口で番をしているだけじゃないか、と話す。

 

13.賢人
春の訪れ。王に抵抗していたヒース公は結局裁判所に送られた。
ハンディとシャグ、傷の癒えたヘイクも含め三人はその後裁判にかけられ、ガレー船送りとなった。

テナーとゲドは毎日忙しく働いていた。
そこにやって来たほっそりとした人影。ヒバナ!ヒバナじゃないの!。テナーが駆けだした。
「おやじは?」の問いに三年前に脳卒中で死んだ事を伝える。
テナーの出す食事をがつがつ食べるヒバナ。
「農園は誰がやってるの?」「それがお前に何の関係があるの?」「おれのもんだもん」
じゃあ、ここで暮らすわけね。「まあな」
テルーの顔を見てぎょっとするヒバナ。「なんだ、こいつ」
「テルーはあんたの妹よ、養女にしたから」母親を睨み付けて出て行くヒバナ。

夕方、ゲドとヒバナは別々の方角から帰って来た。ヒバナはスンダガワから事情を聞いていた。ゲドもこの事態について考えていた。
翌朝、ヒバナは朝食が食べたいと言い、当然の如くじっと座って待っていた。かしずかれるのを当然として。
ヒバナはスンダガワとティフのところでおおかたの時間を過ごした。
テナーはみじめな思いをする事が多くなった。
ヒバナは海に戻る事を怖がっている。そしてゲドに嫉妬している。
それをとりなすゲドだが、息子が情けなく、恥ずかしいテナー。
それにテルーに対する辛らつな態度にも許せなかった。
私だったら、またヤギ飼いになって出て行ってもいいんだよ、とゲドが言う。だったら私も行く、とテナー。

翌朝、ヒバナは早く起きた。ティフと釣りの約束。食事の後、テナーがテーブルの片付けをヒバナに命じるが「女の仕事だろ」

と無視するヒバナ。
「今となっては、もう、だめね」とテナー。
その日の仕事の終わりに、ヒバナが誰かと話している。テナーが、羊の仲買人のタウンゼントだと教えた。近づいて来たタウンゼントが、だんなと羊の話をしに来た、と言う。そしてコケばばの具合が悪い事を伝えた。死ぬ前にあんたに会いたい、とも。
夕食の準備をしながら、テナーはゲドとテルーに「私は行かなきゃならない」と伝える。「もちろんさ」「良かったら三人でね」

夕食が終わると、テナーはヒバナに、明日の朝ル・アルビに三人で行くと宣言。家の財産の説明をし、金貨三枚だけは、自分の才覚で得たものだから持って行くと言った。

 

朝まだ暗いうちに農園を出た三人。ゲドが知っている道を歩き、険しい上り坂を超えて行った。
その晩野宿し、翌日まだ明けきらない時にゲドは起き出していた。続いて起きるテナー。キスをする二人。
テルーを起こして出発。今日はル・アルビに着く。コケばばを心配するテナー。
ゲドは足取りも軽く歩くが、テナーは頭がぼうっとして来た。なかなか足が進まない。ル・アルビの家々の屋根が見えて来る。
右の道なりに登れば領主の館だ。こっちね。
「だめ」子どもは左の村の方を指さす。
「こっちよ」構わず右の道を進むテナー。後に続くゲド。

 

進んで行くと、男が館の方から道を下って来た。見覚えはあるのに名前が思い出せない。
「ようこそ!」と言って二人に笑いかける男。
ゲドに大賢人さまと言い、テナーにはアチュアンのテナーさまと言って頭を下げる。つられてひざまずくテナー。だが更に手をついて、しまいには口まで地面に押し付けていた。
「さあ、這え」言われるように這うテナー。止まれ、と言われて止まる。
「口はきけるか」と言われてもテナーは喋れなかった。ゲドは「大丈夫だ」と言う。
男は、ゲドが魔法使いの能力を失っている事を知っていた。
そして王を嘲笑し、女を探し回っていると罵った。
「四年前、ロークでの私の名前を憶えているか?」「そなたはアスペンと呼ばれていた」
アスペンが聞く自分の真の名を知らないと聞いて、ゲドに大魔法使いじゃないという言葉を何回も言わせる。そして自身の事を大魔法使いだと言わせた。

領主の館へ入って行く三人。テナーはその間、全て四つん這いで歩かされた。男はテナーをビッチと呼んで蔑み、男たちにペットだと言って紹介した。転がってみろと言われ、その通りになる。
首に輪を嵌められ、部屋に連れて行かれたテナー。小便と肉の腐りかけた臭い。泣き叫ぶ声。私の子どもだ!

 

14.テハヌー
左に折れて歩いた子どもは、途中で気付いて連れて行かれた二人を追った。子どもはアスペンの真の名イライズンを知っていた。イライズンは二人を中に入れて閉じ込めてしまった。
子どもは全速力で走り、オジオンの家を過ぎて崖の外れまで行き、ある名前を呼んだ。そしてまた走ってコケばばの家に行った。
コケばばは、自分には呪いがかかっているから来てはだめだと言ったが、構わず触れる子ども。
わしを名前で呼んでおくれ、と言われて「ハーサ」と答える。コケはずいぶん呼吸が楽になった。
眠りにつくハーサ。そのかたわらで子どもも眠りについた。

 

夜が明けると、アスペンがテナーを引き出しに来た。歩かされ、首に巻かれた紐が別の男に渡された。大好きなあの男。だが名前も判らない。三人の後を数人の男が続く。
一行は崖まで行き、その淵ぞいに歩いた後、狭い岩場に着いた。
テナーは崖の淵に立たされる。男が突き落とし、その後男自らが落ちる事になる。
アスペンが、テナーに言いたいことがないか尋ねた。
黙って空の一点を指すテナー。うろこのある体をくねらせて、あの竜がまたたく間に飛んで来た。
口が自由になり「カレシン!」と叫び、次の瞬間ゲドの腕をつかんでしゃがませたテナー。
その直後、炎が二人の頭上をかすめた。岩の上に舞い降りる竜。

 

ゲドが竜のことばで「礼を申す」と言ったのが理解出来たテナー。
そこに走って来るテルー。子どもを抱きしめるテナー。
「テハヌー」と竜が声をかけると「カレシン」と応える子ども。
ゲドが立ち上がって「最も年多き者よ、誰がそなたを呼んだか、わかったぞ」
「そうよ、あたしが呼んだの」「だってね、セゴイ、他にどうしたらいいか、判らなかったんだもの」
「子どもよ、よくやった」と言い「わしは長い間そなたを探していたのだ」

「行かない?」と言ったテルーだが、テナーたちが行けないと知ると、自分も残ると竜に伝えた。
「やがて迎えに来る」と言って去って行く竜。
「テハヌーか。あの子はその名を天から与えられていた」

コケばばの家で、彼女の手当てと家の整備を済ませた。
すっかり疲れ切ったゲドは眠り込む。その隣に座るテナー。そこへ来た子ども。「ああ、テハヌー」眠そうに呟くテナー。

「家は大丈夫だった?」「うん、でも、からっぽ」
「これからあそこで暮らさない?」今後の希望を話すテナー。

 


感想
舞台は、前作でゲドとアレンが旅を始めた頃のゴント島。

テルーという少女。瀕死のところを助けられ、テナーに育てられる。
次第に明らかになる、テナーの歩んだその後の人生。魔法からは手を引き、農家の女房として生きて来た。あれから25年。
死が近づいたオジオンを看取り、その後ゲドとの再会。
魔法使いとしての能力を完全に失ってしまったゲドは、痛々しいというか、ごく普通の初老の男として描かれる。

 

中盤まではテナーとゲドの愛の物語。愛とは言っても、ゲドはもう50代。そこに激しさはないが、人生の大きな転換に自分を引き込んだ男と、25年ぶりに再会したテナーの心のときめきを、女性作家ならではの言葉で表現する。
これが少年少女向けとは・・・・言えんわな。

 

そこにテルーに迫る不穏な者たちを織り交ぜ、緊張感を維持する。
最後十数ページの大ドンデン返し。これには読んでてびっくり。
テルーには何らかの力があるという示唆はあったが、まさか竜の子供だったとは。
いかにも唐突だが、要するに遠い祖先では、人と竜は同じものだったという前提に立てば、まあナットク。

 

シリーズは、この4巻までで終わりと思われていた(副題に「最後の書」)が、11年後に「アースシーの風」が刊行された。

 

 

 

歴史秘話 ガンダムヒストリア BSプレミアム 4/2放送

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タイタンバーさんが観たので、録画を気合い入れて視聴。

 

放送開始以来、そのスタイルを少しづつ変えながら、今年40年目を迎えるガンダムシリーズ。
各媒体を含めた関連作品は56タイトル。

登場人物200、モビルスーツ900種に上る。

全ガンダム大投票の告知 受付4月20日まで


シリーズがこんなに何十年も続くのは珍しい。日本のアニメを変えた秘密→ある発明

 

episode1
リアルSFアニメ誕生
機動戦士ガンダム 1979年4月7日放送開始

スペースコロニーに移住した多くの民。そのうちの一つがジオン公国を名乗って独立宣言をした事が発端。地球連邦との間で一年に亘る戦争が始まる。
モビルスーツという人型ロボットに人間が搭乗して戦う。
最新戦艦ホワイトベース。正規の乗組員がほとんど死亡し19歳のブライトが艦長。あとは少年兵と民間人。
ガンダム操縦者アムロ・レイ。

偶然からパイロットになり、戦いと共に成長。
シャア・アズナブル。天才パイロット。

ジオン公国初代首相の息子。ザビ家に父を殺され復讐を誓う。

宇宙要塞における最終決戦では、アムロとシャアの一騎打ち。アムロとの決着を避け、ザビ家への復讐を果たすシャア。
アムロはテレパシーで皆の脱出を助け、最後に大破したガンダムからコア・ファイターで脱出し、皆のところへ戻る。
「まだ僕には帰れる所があるんだ、こんなに嬉しいことはない・・・・」

 

ガンダムには三つの発明がある。
①正義の見えない戦争 同じ人間同士が自分の正義を信じて戦う(勧善懲悪ではない)。何のために戦うのかという疑問。
ララァがアムロの心の中を見て言う言葉「あなたには守るべき人も、守るべきものも、何もない」
圧倒的なリアリティ。
総監督 富野由悠季の言葉:幼い頃、子供向けの映画観て、誰が悪人かすぐに判るのがイヤだった。
②ニュータイプ 
進化した新しい人類。超人的な感覚や能力を持つ。アムロ、シャアなど何人かが覚醒して行く。

人類はどのように進化して行くべきかという深いテーマ。
③モビルスーツ
ジオン軍が発明した量産型兵器「ザク」がその原型。戦えば壊れ、修理が必要。ロボットを戦闘機、戦車のように大量生産される兵器として描く→世界観にリアリティを与える。
ガンプラと呼ばれるプラモデルも大きな支えになった。人型のモビルスーツに対して、人型をしていないものをモビルアーマーとして区別。
リアルSFアニメとして社会現象を起こした。
十五少年漂流記のような、成長を見守る群像劇。

 

episode2
広がるガンダム世界
機動戦士Zガンダム  1985年

1作目から7年後の世界が舞台。新たな戦争。
地球連邦軍から生まれた二つの組織「ティターンズ(ジオン軍の残党狩りが目的)」と「エゥーゴ(ティターンズに対する抵抗組織)」
少年カミーユ・ビダンが主人公。ティターンズ将校に名前をバカにされた事をきっかけにエゥーゴに参加。クワトロ・バジーナ(シャア)と出会う。ニュータイプの素質を見込まれてZガンダムのパイロットとなるカミーユ。
そこにアクシズ(ジオン軍の残党組織)が参戦。組織を牛耳るハマーン・カーンとパプテマス・シロッコ。新モビルスーツ「キュベレイ」「百式」

 

機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ) 1986年

Zガンダムの続編(翌年)
アクシズが「ネオ・ジオン軍」となりハマーン・カーンが率いる。それとエゥーゴとの戦い。
主人公ジュドー・アーシタ。Zガンダムを奪って一儲けしようと企むが、結局エゥーゴに雇われ、ZZガンダムでネオ・ジオンと戦う事になる。勢いで参加したため、戦争に意義を見出せない。
だが前任のパイロット、カミーユ(戦死)の思念に接するうちに、同じニュータイプ同士何かを感じ取り、変わって行く。
ハマーン・カーンとの一騎打ちに臨むジュドー。

 

劇場版 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア  1988年

ZZから4年後。大人になったシャアとアムロの戦い。シャア34歳。ネオ・ジオン軍を再興し、巨大隕石アクシズを地球に落とす作戦を決行。地球に生き続ける者の粛清。対する地球連邦軍のアムロ29歳。νガンダムで参戦。隕石が落ちる中、シャアとの最後の決戦。新デザインのモビルスーツが多く誕生した作品。

 

ポケットの中の戦争(機動戦士ガンダム0080) 1989年

ファーストガンダムの一年後を描いたスピンオフ。

OVA(ビデオ販売)作品。
田舎町に暮らす少年の目から見た戦争を描く。主人公アルフレッド・イズルハ(小5)。両親が離婚し、鬱屈した毎日。こんな生活を変えてくれるかも知れない→戦争に希望を抱く。

ジオン軍新兵バーナードと出会うアルフレッド。アルフレッドの幼馴染みクリスチーナは地球連邦軍のパイロット。
バーナードとクリスチーナがモビルスーツで戦う姿を見て戦争の現実を知るアルフレッド。

 

劇場版 機動戦士ガンダム F91 1991年

逆襲のシャアから30年後。
平和が続く地球連邦政府で進む腐敗。そんな政府に異議を唱える軍事組織「クロスボーン・バンガード」と地球連邦軍との戦い。
主人公シーブック・アノー。避難先で、人手不足を理由に地球連邦軍へ加入させられる。シーブックはニュータイプの素質を見込まれ、ガンダム専属パイロットとして戦争に参加する。
ある時、同級生セシリーがクロスボーン・バンガードの指導者である事を知る。彼女からクロスボーン・バンガードの陰謀を聞くシーブック。共にセシリーの父親との対決に臨む二人。

 

機動戦士V(ビクトリー)ガンダム 1993年

F91から30年後の世界。
各地のコロニーで戦争が勃発する宇宙戦国時代。
マリア主義というカルト宗教を背景にしたザンスカール帝国と、抵抗組織の「リガ・ミリティア」との戦い。
主人公ウッソ・エヴィンは13歳。幼馴染みを守るため、リガ・ミリティアに参加してヴィクトリーガンダムに乗る。戦いの中で、憧れの女性カテジナがザンスカール側と知る。
最終決戦でウッソの前に立ちはだかるカテジナ。
80年に亘る宇宙世紀の物語は、この作品を以て一つの区切りが着いた。誕生から15年、成熟期を迎えたガンダムは、新たな挑戦に乗り出す。
三つの発明にも捉われない、全く新しいガンダム。

 

episode3
新たな世界を求めて
機動武闘伝Gガンダム 1994年
必殺シャイニング・フィンガー ローゼス・ビット
キャラクターたちが、攻撃時に必殺技を叫ぶ(ドラゴンボール的な)。 
ネオ・ジャパン、ネオ・アメリカ等のコロニー国家が誕生。

戦争に懲りた人類が、4年に一度、各国の主導権を決めるためにガンダムファイトを開催。
主人公ドモン・カッシュは、ネオ・ジャパンのガンダムファイター。ドモンが、戦いながらも各国のファイターと友情を築き、最大の敵デビル・ガンダムを倒すまでを描く。各国のガンダムはそれぞれの特徴を持ち、万博の様相。
当時ブームの対戦型格闘ゲームを反映。熱血と友情を描いたガンダムは小学生だけでなく、十代のファンにも受けた。

このヒットを受け、更に自由で大胆なガンダムが登場。

 

新機動戦記ガンダムW(ウイング) 1995年
宇宙に進出したスペースコロニー国家群と、それを制圧しようとする地球圏統一連合。コロニー国家群が地球に送り込んだ5体のガンダム。それぞれのガンダムに乗るヒイロ・ユイ、デュオ・マックスウェル、トロワ・バートン、カトル・ラバーバ・ウィナー、チャン・ウーフェイの5人。
やがて、コロニーの武装勢力と地球軍が激しい戦争を始めてしまう。

コロニー側代表:ゼクス・マーキス、地球側代表:トレーズ・クシュリナーダ。5人は、この戦争こそが人類の本当の脅威だと感じ始める。
個性ある少年たちを集める事で、女性を始めとする多くのファンを獲得。ガンダムワールドの裾野を広げた。

 

機動新世紀ガンダムX(エックス) 1996年
新しいタッチの物語作りに挑戦。

ニュータイプを前面に押し出したもの。 
大きな戦争により人工の95%が死滅。新しい世界を作るためにニュータイプの能力を利用しようとする組織と、ニュータイプを守る主人公たちとの戦いを描く。
主人公はジャンク屋で生計を立てるガロード・ラン。ふとした事からニュータイプの少女ティファ・アディールを守る事になる。
自分たち以外のニュータイプを抹殺しようとするフロスト兄弟。
シリアスな中に織り込まれるコメディタッチが新たなファンを引き付けた。ガンダムXに搭載されたシリーズ最大の武器「サテライト・キャノン」。一発で都市を消し去る。
①熱血格闘 ②複数主人公 ③コメディタッチ の3要素でガンダムを支持する層が広がる。

 

誕生から20年を経て、当時の十代が大人となり、かつてのガンダムの復活を望む声が出始める。
それに応えるべく富野監督が帰って来るが、それは驚きの世界観。黒歴史は、ガンダムから始まったことば。

 

episode4
原点回帰と再起動

∀(ターンエー)ガンダム 1999年
富野:ジャンル分けがいやだった(全部入れちゃう)。
オープニングから過去の映像を使用。
アムロとシャアの時代から何万年も経った遠い未来。

地球文明は相次ぐ戦争で滅び、地球に残った人は科学知識をすっかり忘れてしまった。
かつての滅びた地球から月に逃れ、高度に進化した月の民は、再び地球に戻ろうとして、対立を招く。
月の民は、滅びる前の地球の歴史を「黒歴史」と呼ぶ。
地球人は、そんな歴史を知らず、ようやく小型戦闘機が作れる程度にしか科学が戻っていない。

月の民との戦いに全く歯が立たない地球人だが、かつての兵器モビルスーツが発掘され、それを操縦できるようになる。
主人公ロラン・セアックは月の民。偵察のため地球に住んでいたロランは、偶然見つけたガンダムで月の民と戦う事になる。
ロランの乗る∀ガンダムはヒゲを持ち異彩を放つ。
月の民と地球との争いは激化する。

当初の三つの発明がパワーアップして戻って来た。
今までのガンダムを「黒歴史」にしてしまう事で、新しい地平を開いた。

 

機動戦士ガンダムSEED 2002年
遺伝子操作をされ、宇宙により適合したコーディネーターと、地球に住む人類ナチュラルとの対立を描く。

21世紀のファーストガンダムを目指した。
主人公のキラ・ヤマトは、ふとした事からコーディネーターでありながら地球軍に参加。ガンダムのパイロットとして戦う。
だが親友だったコーディネーターのアスラン・ザラと、敵として戦う事になってしまった。
やがてアスランは、コーディネーター側の組織「ザフト」の行動に疑問を抱き、キラに合流。地球軍に付く。
ザフトの巨大兵器に挑むキラとアスラン。

ファーストガンダムから20年。新しいスタッフで作られたこのシリーズは大ヒット。新しい世代の多くのファンを獲得。

 

この人気を受けて作られた続編が

機動戦士ガンダムSEED DESTINY 2004年
コーディネーターとナチュラルとの大戦から2年後。平和への道を歩んでいる筈が、コーディネーターたちが新しいガンダムを開発。そのガンダムが何者かに強奪されてから、世界は再び戦乱に巻き込まれる。

 

ガンダムSEEDヒットの理由 氷川竜介氏(明治大客員教授)
21世紀のファーストガンダムをスローガンとしたが、結果的に十代の女性ファンを増やした(アニメ業界全体にプラスに作用)。
ガンダムが持つ人間の魅力。人はなぜ戦争してしまうのかを掘り下げる作品になった(画期的)。

様々な世代のファンから期待が寄せられる→バラエティ豊かな作品が次々登場。

 

episode5
百花繚乱ガンダムワールド。

機動戦士ガンダム00(ダブルオー) 2007年
時代設定を初めて西暦にした。西暦2307年。
化石燃料が枯渇し、太陽光エネルギーを熱源とする世界。この主導権争いにより各地で起きる紛争。戦争の根絶を目指す私設武装組織「ソレスタルビーイング」が登場。ガンダムによる武力介入。
主人公は4人のガンダムパイロット(ガンダムマイスター)。刹那・F・セイエイ、ロックオン・ストラトス、アレルヤ・ハプティズム、ティエリア・アーデの4人。
次第にその正体が暴かれて行く4人は窮地に追い込まれて行く。だが戦争の抑止力として戦い続ける事を決意する。

 

機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) 2010年 OVA
宇宙世紀0096年。アムロとシャアの闘いから3年後の世界。
主人公のバナージ・リンクス16歳。ある日ユニコーンガンダムに出会い、地球連邦政府の陰謀渦巻く世界に巻き込まれて行く

。ザビ家を継ぐミネバ・ザビ。シャアの再来と言われるフル・フロンタルが登場し、旧作のファンからも注目される。

本作はOVAの後、昨年TV放映された。

 

機動戦士ガンダムAGE(エイジ) 2011年
突如地球を襲って来たUE(Unkyown Enemy)との100年に亘る戦いを描いたもの。
主人公フリット・アスノが開発したガンダムから始まった戦いは、その子供アセム・アスノに引き継がれ、更に孫キオ・アスノの世代に引き継がれる。親、子、孫に連なる壮大なストーリー。

 

SDガンダムフォース 2004年
スーパーデフォルメされた喋るガンダム。

ガンダムビルドファイターズ 2013年
ガンダムのプラモデルを使ったバーチャルバトルが世界的に流行。世界大会優勝を目指す少年たちの戦いの日々を描く。
オリジナリティあふれるプラモデルは多くのファンを魅了。

 

ガンダム Gのレコンギスタ 2014年
富野監督が、新たな世代の子供たちに作った作品。
主人公は楽天的なベルリ・ゼナム。多くの国が絡むエネルギーの覇権争いに巻き込まれる。複雑で奥の深いストーリー。

 

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 2015年
これまでのガンダムの知識がなくても楽しめる作品。
文明を退化させるほどの大戦争から300年後の世界。経済は不均衡を極める。貧困にあえぐ火星では人身売買が公然と行われていた。
民間警備会社で奴隷のように働かされている三日月・オーガス。親友オルガ・イツカと共に反乱を起こす。
ロード・ムービーとしての魅力と共に話題になったのは、ビーム兵器を持たないモビルスーツ。泥くさい戦闘シーンが見る者を熱くした。

 

作家 福井晴敏氏談 長く続いた理由
富野監督が、全部自分で作る、という事に固執しなかった。面白い事だけをやるガンダムや、アクションだけを追求するもの等

、バラエティの広がり。それと富野が作った太い幹との両立。

 

人気投票の告知。
既に100万を超える投票があった。現時点でのランキング。
キャラクター 
①シャア・アズナブル ②オルガ・イツカ ③アムロ・レイ ④キラ・ヤマト ⑤グラハム・エーカー
モビルスーツ
①νガンダム ②Zガンダム ③ストライクフリーダムガンダム ④ウィングガンダムゼロ ⑤フリーダムガンダム

 

 

感想
いやはや、「歴史秘話」でガンダムを料理するとは、NHKも柔軟になって来たものだ。それも進行役の渡邊あゆみは例の和服。平然とこの違和感を克服してやりこなしたのは見事。
それで人気投票(中間発表)もやっている。キャラクターではシャアとアムロが上位に入っているが、モビルスーツでは、ファーストガンダムは10位。

 

ガンダムを見始めたのはファーストガンダムの初回放送から。
就職して数年で尿タンパクが多く出て入院。結局1年以上の入院を経て、慢性腎炎と言われたまま職場復帰。
そのタイミングで放送が開始され、自分の復帰と重ね合わせて妙に入れ込んでしまった。
続編を切望したが、それはなかなか叶えられず、その間に結婚。二作目のZガンダムが放送開始された時には子供も生まれ、とても連続アニメを観る気持ちにはならなかった。

だがその後様々な経緯を経て、ガンダムが営々と続いて来た事に感嘆する。

 

ガンダム第1話の「つかみ」の良さについては庵野秀明も「新世紀エヴァンゲリオン」でかなり意識した、と本で書いている。
ただファーストガンダムは、元々スポンサーのバンダイの意向とは微妙にズレがあり(要するにマニアックすぎ)、初回放送ではあまり視聴率が取れなかった。またプラモ供給のために、あまり戦術的に有効とも言えない登場も多々あった(Gファイター等)。

ガンダムシリーズが再開出来たのも、再放送やレンタルビデオでの拡散による再認知からだろう。

 

その後のシリーズ数作は、初期メンバーの香りを残していたが、以降は新しい設定で進められる。

自分が把握しているのは「ファーストガンダム」 「Zガンダム」 「ガンダムZZの途中まで」 「逆襲のシャア」 「ガンダムSEED」 「ガンダムSEED DESTINY」 「ガンダムUC」ぐらいか。

数年前からファースト含め見直している最中。

 

ガンダムSEED~DESTINYのストーリーは、ファーストのイメージを継承しつつ、物語として良く出来ていたが、いかんせんキャラクターの造形が画一的(細いアゴ)なのが陳腐。実に惜しい。

 

ガンダムUCは「ラプラスの箱」を巡って話を引っ張り、最終的にニュータイプをどう扱うかの、憲章の秘密を暴いて行くという、少年にはやや難しい落としどころ。

 

いずれにせよ、このタイミングでガンダムシリーズの全体構成を理解出来たのは、それなりに収穫だった。

ただORIGINは気になる(劇場には行ってませんが・・)

 

それから、投票しますた・・・・

 

NHKスペシャル ゴースト血管が危ない ~美と長寿のカギ 毛細血管~ 4/1放送

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番組紹介
放送内容  
危険度チェック

 

毛細血管の減少はシワ、たるみの原因になる。20代→70代で毛細血管は半分以下に。
肌だけでなく、深刻な病の原因にもなる。
毛細血管には重要な役割り。細胞に栄養を届ける。通らない状態が続くとゴースト化。いずれ細胞が死んで健康に影響が出る。

脳→認知症。骨→骨粗しょう症。肝臓、腎臓→機能低下。
脳MRI画像の白質病変は、ゴースト血管が原因と言われている。
毛細血管はφ0.005~0.01mm。

スキマがあり血液成分が染み出す構造。

 

大調査を行った(東京80人、大阪120人)。ゴースト血管スコープによる観察(指の爪付け根付近の血流)。数値化(指定範囲の毛細血管の総延長)。40代で800μm程度(女性は700程度)。

加齢と共に減る。
指先での測定が全体を反映している。

 

脳で起きると認知症(白質病変がその形跡)。

発症リスク 病変なし12%。あり24%
不要なものの排出が出来なくなる。アルツハイマー病患者は毛細血管少ない(29%減)。アミロイドβ増加。
脳は体全体の酸素の20%を消費。酸素が足りないと毛細血管は減る。

骨粗しょう症。細胞の可視化。毛細血管が減ると造骨が遅くなる。

細胞は数年で入れ替わる。
たるみ、シワ→ゴースト化したところから落ちる。
ガンの中の血管はゴースト化する→薬が効かない。

 

Q&A
脳卒中に関係する? →リスク3~4倍
復活出来る?       →Yes。ただしなるべく早い対策が必要
メタボとの関係は?   →全て悪く作用


対策
回避すべきもの 大食いは有害物質が出る。
加齢。これは避けられない・・・
睡眠不足。睡眠中に血管修復物質が出る。 
アルコールは少々ならいい(一合程度?)
タバコは一番悪い(毛細血管が収縮)
その他悪いもの 高血圧(動脈硬化を起こす) 運動不足

 

オススメ
スキップ運動 その場で20回を朝昼晩。
ふくらはぎは第二の心臓。スキップで血管の壁が丈夫になる。

効果ある食品 ケイヒ(シナモン)。ただし摂り過ぎはには注意。

 


感想
毛細血管が大事というのは聞いていたが、スコープでその状況を簡単に可視化、数値化出来るとは驚いた。
毎朝起床直後にストレッチと腹筋、スクワット等をやっているが、スキップも追加しよう。


朝の運動メニュー
・指のグーパー                100回
・腹筋                         45回
・足の屈伸左右各              10回
・股関節回転左右各            10回  
・スクワット(運動20秒、休止10秒)約130回 
・後ろ反り左右各                 1回
・腕立て伏せ                   45回
・ハムストリング伸ばし左右各     20回
・片足立ち左右各               1分
・スキップ                      20回←今回追加

全部やっても15分。日課にすれば苦ではない。

 

 

 

レッド・スパロー  2018年 アメリカ

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ネタバレですのでご注意

 

監督 フランシス・ローレンス
脚本 ジャスティン・ヘイス
原作 ジェイソン・マシューズ

 

キャスト
ドミニカ・エゴロワ                - ジェニファー・ローレンス
ネイト・ナッシュ                  - ジョエル・エドガートン
ワーニャ・エゴロフ               - マティアス・スーナールツ
マトロン監視官                 - シャーロット・ランプリング
ステファニー・ブーシェ主席補佐官  - メアリー=ルイーズ・パーカー
コルチノイ将軍                 - ジェレミー・アイアンズ
ザハロフ                      - キーラン・ハインズ
ニーナ・エゴロワ                - ジョエリー・リチャードソン
マキシム・ボロントフ              - ダグラス・ホッジ
シミオノフ                      - セルゲイ・オノプコ
マルタ                        - テクラ・ルーテン

 

 

予告編


あらすじ
ボリショイ・バレエ団のプリマドンナとして踊るドミニカ・エゴロワ。持病で体の不自由な母親ニーナとの二人暮らし。

公演の途中、パートナーのミスで左足を骨折。
3ケ月後、杖を突いて歩くドミニカを伯父のワーニャ・エゴロワが見舞う。ワーニャはロシア情報局の幹部。踊れなくなった団員に住まいを与え続ける楽団はない。

いつでも助けると言って封筒を置いて行ったワーニャ。
封筒にはケータイと写真数枚。バレエのパートナーと、若手のバレリーナが写っている。ボイスメッセージには、自分がプリマになりたいと彼に話す女性の声。

楽団の更衣室に入るドミニカ。練習が終わった例の男と女がシャワー・ルームに入るのを確認し、そこに入り込んで二人をゴルフクラブでメッタ打ちにする。

 

足の傷は概ね治ったが、もうバレリーナとしてはやって行けない。

ワーニャを訪れるドミニカ。

女はあごを砕かれた、とやりすぎを咎めるワーニャ。
ワーニャはドミニカに、ある指令を出す。

政治家のドミトリーに接触し、隙を見てスマホを取り換える事。

二人を襲った事が足かせになって断れないドミニカ。

 

用意されたドレスを着て、ホテルのカウンターでドミトリーに会うドミニカ。軽い会話の中で、うまく部屋まで入り込む。

ドミトリーはドミニカに脱げと命じる。

下着姿になった彼女をベッドに引き上げてショーツを脱がし、腹這いにさせてのしかかって来た。いきなりの強姦に声を上げるドミニカ。
その時、ドミトリーの首を後ろから締め上げる、黒ヘルにライダースーツ姿の男。そしてドミトリーをサイレンサーで射殺。返り血を浴びたドミニカにコートを着せ、駐車場に置いてあったバイクで脱出。

 

連れて来られた部屋でワーニャに会うドミニカ。スパイになるか、暗殺現場を見た者として殺されるかの選択。
ワーニャの上官、コルチノイ将軍への面会。

 

スパイになるための養成施設(第4学校)に連れて行かれるドミニカ。
スパロー(雀)と呼ばれるスパイになるための訓練。

厳しく指導するマトロン監視官。


技術的なスパイ訓練だけでなく、異性を心理面でコントロールするための訓練も行い、ドミニカはこの面での能力に優れていた。

 

モスクワに住むCIAエージェントのネイト・ナッシュ。ロシア側の内通者から情報をもらい、別れたところで、巡回中のパトカーに見つかる。

内通者が捕まるのを防ぐため、発砲して注意を引き付け、自分はアメリカ大使館に逃げ込んだ。
アジトで不始末を咎められるネイト。活動がバレたため、本国帰還を勧められるが、内通者「マーブル」とは自分しか接触出来ないと反発。

結局ブダペストへ移動して、活動を続ける事で折り合いをつけた。

 

同僚で、反感から襲おうとした男を殴って断念させたドミニカ。訓練の一環でその男を満足させなさいと、訓練生の前で命ずる監視官。

ドミニカは平然と全裸になり、机にもたれて股を開いた。その高圧的な様子に気力を削がれて男は勃起出来ない。

 

訓練が終りドミニカは、ブダペストに住むネイトに接触して親しくなり、内通者「モグラ」の名前を聞き出すという指令を受ける。
ブダペストで既に活動しているマルタと、ルームシェアして住み始めるドミニカ。ネイトが通うプールに会員登録するが、あえて本名で会員証を作る。そ知らぬ顔で泳ぐドミニカに注目するネイト。
ドミニカがプール施設から出たところで声をかけるネイト。

夕食に誘われるがそれを断って電車に乗るドミニカ。

 

翌日、会員証の紛失を告げる係員。
アジトでドミニカの素性を調べ上げて検討するネイトたちのチーム。

叔父にロシア情報局のワーニャが居ることに警戒するが、本名で会員証を作っている事から、自分側のスパイとして寝返らせる事も想定して接近したい、とネイト。

家に帰り、マルタの部屋を調べるドミニカ。合衆国上院議員の主席補佐官ステファニー・ブーシェとの接触を匂わせる情報。
ドミニカの動きに気付き、けん制するマルタに「時間が惜しいから」と言うドミニカ。
マルタは組織の上司マキシムに、ドミニカの弱みを教えてくれと頼みに行く。

 

大使館主催の会食の場に居るドミニカ。ブーシェの確認。そこへネイトが声をかけて来る。ネイトには通訳をしていると言ってあった。食事の誘いに、明日の8時と答えるドミニカ。

 

ネイトとの会食をスッぽかしたドミニカ。部屋に帰るとマルタが殺されていた。凄惨な拷問の跡。そこへ以前政治家のドミトリーを暗殺したシミオノフが現れ「仕事をしないと殺す」と脅して去って行った。
ドミニカの様子を見に来るワーニャ。情報の入手に25万ドル必要だと話すドミニカ。彼が帰る時、隣室にあるコートを取りに行くが、手帳の中身を確認してから渡す。

 

ネイトの家を訪れるドミニカ。二重スパイを受けると言う。ロシアスパイの過酷さを嘆くドミニカに、安全の保証をするネイト。
打ち合わせに基き、交渉場所での下見。鏡台下の隠し蓋のチェック。別室で待機するネイトのチーム。

 

ホテルロビーで待つドミニカ。マキシムが顔を出すが、ブチ壊しだと言って交渉場所の部屋へ追い払う。ブーシェが現れてウォッカを注文。ドミニカが隣に座り、交渉相手が変わったと伝える。不審に思うブーシェに、これを断れば今の地位を無くすと言って従わせる。
ホテルの部屋で、まず金の確認を要求するブーシェ。引き換えに情報を要求するドミニカに、数枚のフロッピーディスクを渡すブーシェ。

内容を確認すると言って隣室の鏡台に置いたPCの前に座るが、肝心の隠し蓋が開かない。もたついているうちに不審に思うマキシム。

時間を稼ぐために、チームの女性がドアをノックし、係員を装って御用聞き。
その間に蓋が開き、フロッピーの差し替えを行うドミニカ。

金を渡して、プーシェに一時間待ってから外に出るよういい残して

二人は外へ。

 

アルコール依存症のブーシェは、一時間が待てずにホテルを出てしまう。出たところでCIAに気付き、バッグをゴミ箱に捨てて逃げようとしたブーシェは車に撥ねられて死亡。
一方マキシムと一緒に車でホテルを出たドミニカだが、マキシムにフロッピーを取り上げられ、本人もモスクワへ一緒に帰るよう命令される。

部屋で本物のフロッピーを回収したネイトだが、ブーシェが死んだ事でドミニカが疑われると気付き、急いで空港に向かう。ゲート前まで来たが、間に合わず中に入るドミニカ。ネイトと視線が合った。

 

モスクワでは、ブーシェが死んだ事で、マキシムとドミニカが裏切り者として拷問を受けた。「ブーシェを売り渡したか?」の連呼。マキシムは頭を撃ち抜かれた。
頑として二重スパイの疑いを否定するドミニカ。頭に突き付けられた銃の引き金が引かれた。だがそれは空砲。
ワーニャが引導を渡しに来るが、ドミニカは、この私を向こうに戻せば信用される筈だと交渉。幹部に諮ってそれを通すワーニャ。

 

ブダペストに戻り、ネイトと再会するドミニカ。母親も含めてアメリカに亡命したいと申し出る。亡命にあたっては、25万ドルを指定の口座に入れて欲しいと頼むドミニカ。そして結ばれる二人。ネイトが流すクラシック曲に、その思い出を話すドミニカ。

 

目覚めたドミニカは、ネイトが居ない事に気付き、隣の部屋に行くと、シミオノフが椅子にネイトを縛り付けて首を絞めていた。それに加勢して足を縛るドミニカは、ネズミの名前を言うようネイトに要求。

だが喋らない。シミオノフが皮膚を剥ぐ拷問具を出して腕に滑らせる。絶叫するネイト。
ドミニカがその拷問具を受け取って、ネイトの足に持って行く。

再び絶叫。
シミオノフが背中を向けた時に、ドミニカが刃物で切り付ける。そしてネイトを縛った紐を切る。
シミオノフがムチの様な武器で逆襲すると、ドミニカの腕から血がほとばしる。ネイトも援護してまたシミオノフが倒れると、馬乗りになって彼の脇腹に刃物を突き立てるドミニカ。
シミオノフは動かなくなり、ネイトに言われてアメリカ大使館に電話した後、ドミニカも気を失う。

 

目が覚めると、医療機関に居たドミニカ。体は手当てされている。廊下でタバコを吸うドミニカに近づく男。コルチノイ将軍だった。彼が実は「モグラ(マーブル)」だと告白。ロシア内部の腐敗に失望し、アメリカに情報を流していた。

妻の治療をアメリカで受けられなかった事も関係していた。
国に帰ったら自分を告発する事によって手柄とし、跡を継いで欲しいと言った。

 

ロシア大使館で、モグラの名前が判ったとワーニャに伝えるよう係官に要求するドミニカ。係官が、自分に言えば伝えるというのを鼻で笑う。

 

ヘリを使った捕虜交換。ロシア側が引き出す「モグラ」とドミニカとの交換。ネイトがその男を「モグラだ」と嘘の証言をし、交換は成立。ドミニカがロシア側ヘリに着いた時「モグラ」が遠方からの射撃で死ぬ。

 

ロシアに戻って、ドミニカは「モグラ」が叔父のワーニャだと証言。
証拠は米側から振り込まれた25万ドル。ドミニカが以前手帳からワーニャの個人情報を引き出して口座を作っていた。
またワーニャは受け取った偽のフロッピーを、確認せぬまま上層部に提出していたため、裏切り者の一味として疑われていた。
ドミニカの陰謀に嵌められたと気付くワーニャだが、今まで彼女に指導して来た結果だと諦める。そして殺されたワーニャ。

 

今回の功績を国から認められ、ワーニャの地位を引き継ぐドミニカ。その式典に参加しているコルチノイ将軍と目が合う。

 

母親との穏やかな暮らしの中で、電話が掛かって来る。そこに流れる音楽は、ドミニカがネイトと結ばれた時、彼がかけていたもの。彼女が初めてバレエで認められた時に使われたグリーグのピアノ協奏曲。

 

感想
国営バレエ団のプリマドンナとして、順調な人生を歩んでいた娘が、スパイの道に足を踏み入れる話。
先日に観た「アトミック・ブロンド」とはずいぶんテイストが異なる。

 

事故に遭った姪に手を差し伸べる叔父、と言えば聞こえはいいが、事故の原因となった団員間の秘密を入れ知恵。どう行動するかの適性を見るためのテストでもあったのだろう。
それに続けての、肉体を使った政治家へのアプローチ。

強姦から殺人へと、突然非日常に突き落とされるドミニカ。
それまで受け身だった彼女は、叔父ワーニャを見る目付きがガラリと変わり、ここでスイッチが入ったように見えた。

 

ドミニカが、スパイとしてのスキルを次第に身につけて行く姿を見るのは楽しかった。
だが第4学校で行われる、異性を意のままにコントロールするための訓練が、どうにも稚拙な感じ。

ロシアのやっている事はこんなもんだという軽さ、か。

 

やや長尺の映画であり、事故に遭う→スパイ養成→ミッション→裏切り と続く中で一回観ただけでは把握し切れなくなって来る。

特に上院議員の主席補佐官:ブーシェとの取引き前後は山場の一つであり、もう少し説明的でも良かった(ジャッキー・ブラウンみたいに3回繰り返せ、とまでは言わなが・・・)。

 

それにしても媒体のフロッピーディスクって何よ。車がBMWの7シリーズ使っているから、時代設定はバリバリの現代。

 

受け取れる媒体はこれしかダメってロシアが指定したとか?これがこの映画での最大の違和感。
第4学校の施設・設備も、まるで戦前のノリ。ここまで露骨にロシアを蔑む映画作りは、現大統領に対する「忖度」かな?

 

コルチノイが自分をモグラだ、と告白するシーンは、ネイトとの接触シーンでの長身や、ヘッドライトに手で顔を隠した時の、顔輪郭等のフラッシュバック映像で「なるほど」。ただ、それほどの「びっくり」感はなかった。

 

ネイトが拷問されるシーンで、ドミニカが皮膚剥がしの拷問具をネイトの股間に持って行った時は、机の陰で良く判らなかったため思わず「やめとけー!」。ただ紐を外されてアングルが変わった時、やられたのが太ももだったので(ああよかった・・・)。

 

スパイ映画としては、カーチェイスなし、ドンパチの銃撃シーンなしといったところで、地味ではあった。
でもドミニカという普通の女性が、自らに備わっていた資質を頼りに、母を守るため、次第にプロ意識を研ぎ澄まして行く過程を追う楽しさがあり、自分としては面白かった。

 

ジェニファー・ローレンスは「パッセンジャー」で初めて認識したが、あの時はパートナー役でもあり、あまり印象がなかった。
今回も、プリマドンナの時は「ちょっと足太い」ぐらいでさほどに感じるものはなかったが、次第にその存在感が増して行く持って行き方がうまかった。
なかなかエロいシーンもあり、彼女としてはかなり頑張った。
蛇足:政治家がショーツを脱がせる動作が全く素早くて、ある意味感動(そこかよ・・・・)

 

追記
そういえば彼女、「X-MEN」のミスティークなんよね・・・

 

登場したクラシック作品
 チャイコフスキー:無言歌Op.40-6
 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第1番第2楽章
 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番第1楽章
 モーツァルト:幻想曲ハ短調K.475
 グリーグ:ピアノ協奏曲第2楽章
 バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番
 チャイコフスキー:『眠りの森の美女』より〈Pas de Deux〉

 

 

 

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 2018年 アメリカ

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監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー
製作 エイミー・パスカル
音楽 ジョン・ウィリアムズ

 

キャスト
キャサリン・グラハム     - メリル・ストリープ
ベン・ブラッドリー         - トム・ハンクス
トニー・ブラッドリー        - サラ・ポールソン
ベン・バグディキアン      - ボブ・オデンカーク
フリッツ・ビーブ           - トレイシー・レッツ
アーサー・パーソンズ     - ブラッドリー・ウィットフォード
ロバート・マクナマラ       - ブルース・グリーンウッド
ダニエル・エルズバーグ   - マシュー・リス

 

予告編


あらすじ
1971年。ニクソン政権下のアメリカ。ベトナム戦線に集う兵士たち。

その中に報道関係の者がいた。山林で敵からの攻撃を受け、撤退を余儀なくされる。多くの負傷者、死者。

政府専用機の中で「ダン」と呼ばれて上司の前に出される男。ベトナムでの戦況を聞かれ「泥沼です」

 

タラップを降りて報道陣の前で報告するマクナマラ国防長官。

我が国の優勢を笑顔で話す。
その対応に失望したダン→ダニエル・エルズバーグは、自分の属する「ランド研究所」から機密文書を持ち出してはコピーして原本を戻す作業を続けた。

 

地方紙のワシントン・ポスト社。その社主であるキャサリン・グラハムは、娘婿として父の跡を継いだ夫の死後、その後を継いでいた。

女性社主は珍しく、経営安定のために株式を公開し、取締役も増やして創業家の影響度を減らすよう進言されていた。
一方、辛らつな取材をする記者に閉口して、ニクソン大統領が自分の娘の結婚式で、ポスト社取材を外すと警告した事を聞き、対応する記者を変えるよう編集主幹のベンに頼むキャサリン。

だが、記事内容への介入は断る、とつれなく断るベン。

ベンは、全国紙のニューヨーク・タイムズ紙の動きが気になり、若手に交通費を渡して探りを入れさせる。

 

 

キャサリンはある日の夜、タイムズ紙の幹部から謝罪めいた言葉を聞き、ベンに話す。

あわてて頼んでいた若手のところへ走ると、何も書かれていないコマ割りの紙にスクープを意味する記号が書かれていたと言う。

 

翌日のタイムズ紙のスクープ記事は、ベトナム戦争の経緯・戦局に関するものであり、戦争を始める前から不利である事を示していた。
政府は、機密漏えいの罪でタイムズ紙を訴える。

出し抜かれて悔しがるベンは、国防長官のマクナマラがキャサリンの友人である事から、彼女にその文書を貰う事を頼む。
だが重要な友人である事と、機密保護法の関係もあり出来ない、と言うキャサリン。

 

ベンは独自で情報を得ようと、古参の記者バグディキアンに調べを頼む。元々疑われていたダンはなかなか見つからなかったが、ようやく連絡先を突き止めて電話するバグディキアン。相手は違う電話からかけ直せと言って電話番号だけ言い、切る。
慌てて隣の電話に向かうバグディキアン。

 

ようやくダンとモーテル風の貸部屋で出会うバグディキアン。

部屋いっぱいに置かれた書類の山。数千ページにもなる。
ダンは、記事として公表する事を条件に書類を提供した。ダンボール数箱の書類を持ってベンの自宅に入るバグディキアン。

集結する記者たち。

 

書類には「TOP SECRET」を削除するため、通しページも含めて切り取られている。読み込み、原稿入れまでに残された時間は8時間。
記者たちが必死で作業する間に、ベンは顧問弁護士を呼ぶ。

弁護士はリスクが高いと警告。現在株式公開直後であり、国から訴えられたら社の存続にも関わる。
奇しくもその当日はキャサリンの誕生パーティ。新聞関係者も多く居る中、スピーチ途中に緊急の電話だとの連絡を受けるキャサリン。
複数の受話器での会議。ベンは推進派。役員、弁護士は反対。

しばらく双方の話を聞いていたキャサリンは、皆の声を制して「Go!」と決断。

 

記事化の作業が進められる。原稿はエアシュートで逐次送られ、植字に回される。
弁護士はバグディキアンにも話を聞く。情報源がタイムズ紙と同じという可能性。苦渋の顔で「その可能性は高い」と答えるバグディキアン。

 

パーティも終わった深夜。キャサリンの家に集まる関係者。弁護士は、裁判所が記事差し止めを言っている以上、法廷侮辱罪を問われると警告。だが法律は国民のための真実の報道も保証している。

キャサリンの信念は変わらなかった。
電話で印刷にGoをかけるベン。

 

新聞は配られ、改めて政権がベトナム戦に関わる重大な情報秘匿を行っていた事が明らかになった。タイムズ紙同様告訴されるポスト紙。
最高裁での法廷。仲良く並んで出廷するタイムズ紙とポスト紙。

判決は6対3で無罪。

 

この判決が出てほどない1972年6月17日。民主党の入っているウォーターゲート・ビルで警備員が、部屋のドアがロックされない様に細工されているのを見つけた(後のウォーターゲート事件のプロローグ)。


感想
先日の「15時17分発、パリ行き」に続いて実話モノ。
実は、ペンタゴン・ペーパーズの事はほとんど知らなかった。

ベトナム戦争についてもアメリカが手を引いて、結果的に終結、ぐらいの認識しかなかった。

 

予備知識が全くない状態だったので、最初ニューヨーク・タイムズ紙がスクープしたってんで「アレ?」と思ったが、情報源の探索からブツの入手、報道するか、しないかの攻防まで緊迫した流れで、時間を忘れた。

スクープを求めてゴリゴリ突き進むベンに対して、自殺した亭主の後を引き継いだ、社主の地位を持て余し気味のキャサリン。

それがここ一番でGoの決心をして、追い打ちをかける様なリスクを聞いても揺るがなかった。改めてキャサリンの立場を思い、絶句するベン。実話ならではの感動。

 

この映画はスピルバーグ製作の中でも、最も短期間で作られたものだという。すぐに映画化しなくてはならなかったのは、もちろんトランプ政権に打撃を与えるため。

 

音楽のジョン・ウィリアムズはスターウォーズやインディ・ジョーンズ等、映画音楽では欠かせない人。「レディ・プレイヤー1」を蹴ってこちらに専念したとの事。
残念ながら劇中ではストーリーに気を取られていたが、エンドロールではピアノとストリングスの、静かで素敵な旋律が心に残った。


オマケ
ペンタゴン・ペーパーズについては様々な切り口がある。
「ペンタゴン・ペーパーズ(ベトナム機密文書)を世に出した3人の男たち」にその核となるものがある。本作にも出ているダニエル・エルズバーグが、機密文書を持ち出した最大のキーマン。
エルズバーグ支援のためにチャリティーコンサートが行われ、ジョン・レノンやオノ・ヨーコも参加したらしい。
次にマイク・グラベルが、当時の上院小委員会で、エルズバーグから託された文書の内容を読み上げ(法廷戦術)、議事録に残させた。
そしてロバート・ウェストは各方面の圧力にも屈せず、自社「ビーコン・プレス」から「グラベル上院議員版ペンタゴン・ペーパーズ」の出版を行った。
説明と動画 その1 その2 その3

 

この映画の主人公キャサリン・グラハムは、この事件よりもニクソン大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」の報道で広く知られる人となり、これを契機に同紙は全国紙にのし上がって行く。
写真からも判るように非常にチャーミングな女性。

2001年に84歳で死去。

 

「事実」を報道する新聞の役割りの重さ。

 

 

新聞小説 「国宝」 (18)  吉田 修一

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新聞小説 「国宝」(18)  3/14(426)~4/7(450)

作:吉田 修一  画:束 芋

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第十八章 孤城落日
新春花形歌舞伎と銘打って毎年一月に催される舞台。その中心となっているのが、花井半弥を継いだ一豊。毎夜酒を飲み、二日酔いの一豊に小言を言う春江。
今年は一豊の父俊介の七回忌。

喜久雄と母の幸子との話し合いで、亡き二代目白虎の半二郎の三十三回忌と一緒にやろうという事になっている。
プレッシャーを感じつつ、祖母幸子の様子へ話題を変える一豊。
俊介が亡くなる頃、弱った幸子は進んで養老ホームに入ったが、春江がそれを許さず自宅に戻した。それが幸いして幸子も元気を取り戻し、今も大女将として丹波屋を束ねている。

 

新春花形歌舞伎の開演にあたっての挨拶に立つ春江に集まる、若い後援会の女性たち。贔屓の客も多く通り、賑やかなロビー。

 

深夜一時すぎ、細々と聞こえる泣き声に訝る春江。

裏庭から聞こえて来るのは一豊のすすり泣き。
尋常でないものを感じ、裸足のまま外に出る春江。人を撥ねたという。そして「・・・逃げてきた。怖くなって・・・」
死んでたらどうしよ・・・・と髪をかきむしる息子を見て「誰か見てる人おった?」と聞く春江。「いない・・・いないよ」

春江は向かいに建つ安アパートに走った。そこは松野の住まい。
寝ていた松野が電気を点けてドアを開けると、春江が転がり込む。
「あんたの事長いこと面倒見て来た。いっぺんぐらいうちのために働いてえな! 一豊が人撥ねてしもた・・・」
松野は全てを悟り「その車、運転してたん俺や」

 

着替え始めた松野を眺めているうちに、正気に戻った春江は、一豊が撥ねたという公園裏に駆けだした。
救急車の赤いライトが見え、人が集まっている。担架のもとに走り込む春江の先に、警察官に囲まれた一豊の姿があった。

 

翌朝早く、喜久雄と彰子に伝えられる事故の件。

彰子が携帯で話す内容を聞いている喜久雄。
撥ねた後に逃げたがすぐに戻った。相手はランニング中の学生。

肩を骨折したが意識ははっきりしている。
そこまで聞いて、喜久雄の体から力が抜けた。

その後、着替えて三友本社に出向いた喜久雄。

一豊付きの社員、湯本の顔には絶望の色が。
社員から行われる事故の説明。そこに入って来た社長の竹野。

今日の午前中に自分と三代目で記者会見をやろうと言い、湯本に手配を命じる。

 

数時間後、三友本社に集まった報道陣は三百人超。

社長室に待機する喜久雄。事故の情景が頭を巡る。
湯本に声をかけられ、会場に向かう喜久雄。
会場で、目眩がするほどのフラッシュを浴びる喜久雄。

轢き逃げをした一豊への問いに考えを支配され、竹野の話が終わらないうちに、深々を頭を下げてしまう喜久雄。

その異様な間の悪さに、更に多くのフラッシュが焚かれる。

 

謝罪記者会見はワイドショーを通じて全国に流された。

こういう時まで色っぽく見えてしまう喜久雄。
謝罪会見は、世間的には受け入れられた。その場から逃げた事の追求を受けるたびに、徹頭徹尾、被害者の両親に許して頂けるまで謝罪を続ける、と頭を下げる喜久雄。

その事が皮肉にも世間に好感を与えた。
そして結果的にそれが、これからの若い役者を抹殺した。

 

一豊の事件は、被害者の学生の骨折も治り、事故の裁判も執行猶予がついた事で一応の決着を見た。
それを受けての喜久雄の公演が「沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)」。大阪落城の際、千姫の脱出を知り半狂乱になる淀の方を描いた演目。もちろん淀の方を喜久雄が演じる。
歌舞伎のイメージアップも賭けて、喜久雄の意気込みは相当なもの。
初日を迎えた舞台裏では、喜久雄の乗るエレベータに同乗する者もいない。「遠慮するんでしょ」とは弟子の蝶吉。

 

綾乃が切り盛りする相撲部屋を訪ねる彰子。若い弟子たちの洗濯物や食事に忙殺される綾乃だが、父の名声については見聞きしていた。
ちょっと顔が見たかっただけだと言って帰る際に、喜久雄の孤独を象徴する出来事を漏らす彰子。夜中、台所に立つ喜久雄の姿がとても遠くに見えた。
綾乃は、かつて自分の母親も似たような事を話していたと言う。
そこに綾乃の娘、喜重が学校から帰って来ると、挨拶もそこそこにサッカーボールを持って外に出て行った。
時の流れが有り難く身に沁みる彰子。

 

東名高速を都心へ向かう車。中に居るのは弁天。

今では冠番組のゲストに首相を呼ぶまでになった。
週刊誌の喜久雄に対する記事に閉口。「生き血を欲する希代の女形」との見出し。過去の悲劇をみな踏み台にし、その呪いが一豊に向かったような書かれ方。

 

そこからコースを変えて、春江たちが暮らす丹波屋に行くよう指示を出す弁天。

俊介なきあと、弁天と喜久雄の交流は途絶えていた。

二人の間を取り持っていた徳次の不在も一因だが、口達者な自分の引け目も心に持っていた。
俊介の仏壇に手を合わせた後、春江との話を始める弁天。

一豊の様子を聞けば、生殺しの状態で上にいると言う。

復帰のメドは立っていない。
毎日テレビに出ている弁天に感心する春江。だが弁天自身は最近何でも自分の言う事が正解になってしまうのにイラついている。

だがその一方、テレビに出ていないと不安で仕方がない。

 

青山通りの一角で、アストンマーチンのシートに身を沈めている喜久雄。亡き母マツの仕送りで買ったジャガーから数えて九台目の車。
一豊が轢逃げ事故を起こして謹慎中という時期、当然彰子は大反対したが、その件と自分の車購入とが結び付かない喜久雄。
喜久雄の車好きは、過去に受けたインタビューでも話している。

 

この時期、歌舞伎座での喜久雄が演じていたのは「藤娘」。最近ではどんな舞台に出ても喜久雄が突出してしまうため、一人で踊る演目が多くなっていた。そこで起きた事件。

「藤娘」は特にストーリーはないが、笠踊りから始まる。
この日もその笠踊りから始まるが、その気品と愛らしさに最前列の客の頬が赤らみ、それが後方の客にも伝わって行く。別世界に居るような感覚。
第一幕の終わりにもその感覚に客席が包まれていた。

特に五列目中央の若い男性客が、うっとりとした表情で、舞台に釘付けになっている。
第二場でもその視線を感じていた喜久雄は、気分が良くなって、その客だけを相手にする様な気持ちで踊りを続けた。
だが一連の流れで客に背を向け、再び客席に向いた時、その客が席にいなかった。
一瞬焦ったものの、客が中座する事は特に珍しい事ではなく、踊りを続ける喜久雄。次の舞いで客に背を向け、再び振り返った時、なんとその男が喜久雄の目の前に立っていた。
どよめく客席。男は焦点の合わない目付きのまま、喜久雄を見つめている。
初めて舞台に上がった時から舞台と客席を隔てていたものが、崩れ去ったという感覚。
一瞬のあと、舞台上で黒衣や大道具のスタッフが男を引き摺り出した。呆然と見つめる喜久雄。
取り繕うように長唄や三味線が再開したが、舞台の上で喜久雄だけが踊るに踊り出せず、そこにぽつんと取り残された。


感想
順風満帆に歌舞伎道を進んで行くと思われていた一豊の起こした事故。怖くなって現場から逃げたのは言語道断だが、松野を替え玉にしようとした春江も相当なもの。
気が動転すると、人はとんでもない事を思いつく。
一豊がすぐ現場に戻ったのが不幸中の幸い。

 

結果的に、人の不幸を踏み台にしてのし上がって来たかの様に思われてしまう喜久雄。
自ら求めてか、状況に押されてか、双方の作用で孤独な立場になって行く喜久雄の舞台で起きた事件。
傷害は受けなかったものの、精神に相当なダメージを受けた事だろう。

 

喜久雄も、もう五十七歳。とは言っても人間国宝と言われるにはまだ早いか・・・・さて。

 

 

 

 

アイアンマン2 2010年 アメリカ - アベンジャーズ強化月間①

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今度の4月下旬に「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」が公開されるのに先立ち、代表的なアベンジャーズ映画を5週連続で放映するという「dlife」の企画。

いわゆるマーベル・シネマティック・ユニバース(マーベル・スタジオが製作するスーパーヒーロー映画作品が共有する架空の世界)。
これらの中で代表的な5作『アイアンマン2』、『アベンジャーズ』、『アイアンマン3』、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』をやるという事。
今までアベンジャーズ系はけっこう歯抜けなので、補完する意味で付き合って行こうか。
その割りに今年の「ブラックパンサー」を観落としているが・・・・・


アイアンマン2 (2010年)

監督         ジョン・ファヴロー
脚本         ジャスティン・セロウ
製作総指揮   スーザン・ダウニー


トニー・スターク         ロバート・ダウニー・Jr
ペッパー・ポッツ        グウィネス・パルトロー
ジェームズ・ローズ中佐  ドン・チードル
ナタリー / ロマノフ       スカーレット・ヨハンソン
イワン・ヴァンコ         ミッキー・ローク
ジャスティン・ハマー     サム・ロックウェル
ニック・フューリー       サミュエル・L・ジャクソン
フィル・コールソン       クラーク・グレッグ

 

予告編


あらすじ
横たわる老人、アントン・ヴァンコ。息子のイワンに遺言。同時にトニー・スタークがアイアンマンを公表したニュース映像が流れる。
イワンが開発した青白く光る物体(アーク・リアクター)。

 

それから6ケ月後。スターク・エキスポの開会を宣言するトニー。

自社技術の誇示。
エキスポはトニーの父、ハワード・スタークが、未来へのビジョンとして1974年に予言していた。
その開会宣言の日に、上院軍事委員会に召喚されるトニー。

 

軍事委員会。アイアンマンが兵器であるとして、軍への引き渡しを要求。露骨に攻撃するスターン議員。

トニーは「ハイテクギプス」だと言って譲らない。
トニーとライバル関係のジャスティン・ハマーが武器の専門家として軍に取り入っていた。アイアンマンの技術は各国とも進めつつある、と危機をあおるが、トニーはディスプレイを乗っ取ってハマーが行っているロボット開発の失敗を暴露し、この技術は10年以上追い付かれないと豪語。そして世界平和を民営化した、とうそぶく。

 

ラボでのトニー。血中毒素24%。動力源のパラジウムが人体に悪影響を与えているが、これ以外の元素はない。アイアンマンになる事で、ダメージが加速している。
助手のペッパーがトニーに対し、コレクションを寄付した事を抗議。またエキスポにも反対(自己顕示欲丸出し)。
矢継ぎ早に文句を言うペッパーに「君が社長をやれ」と宣言するトニー。
そこに書類を持って来た美人。ナタリーと言い、法務部の者だ、とペッパー。トニーは「秘書に欲しい」

 

モナコ。F1レースのスタート前。スターク社もレースに参加していた。ペッパーが目を離したスキにレーサーをクビにして自らレースカーに乗り込むトニー。またナタリーを秘書に取り込んでいた。
順調に順位を上げるトニー。レース場にイワンが装備を付けて乱入。胸に付けたアーク・リアクターのパワーを受けたムチで打つと、レースカーが簡単に切断された。


事件を知って、ポータブルのアイアンマンスーツを持って、コースを逆走させるペッパー。
イワンは、トニーの車も真っ二つに切り離した。絶体絶命のピンチでペッパーがスーツの入った箱を投げる。辛くも間に合ってアイアンマンに変身し、戦うトニー。

何とかイワンを捕らえたトニーに、お前の一族は盗っ人だと言うイワン。人殺し、とも。
父の発明でお前は生きている、胸のパラジウムは地獄の苦しみだな。
連行されるイワン。それに目を付けるハマー。

 

留置場に入れられたイワン。配給された食事のポテトサラダがプラスチック爆弾。身代わりの者が送り込まれ、爆発のどさくさでイワンは脱獄。ハマーが手引きした。
アジトで、ハマーはスポンサーになる代わりに、自分が開発中のスーツの改良を頼んだ。瞬時にセキュリティロックを外し、プロブラムの書き換えを行うイワン。

 

一方トニーは自分の誕生日に、アイアンマンスーツを着て泥酔の上醜態をさらす。ローズ中佐はそんなトニーに怒り、マーク2のスーツを着てトニーと殴り合う。
そしてアイアンマンスーツを装着したまま軍に戻ったローズ。

軍ではハマーが武器の売り込み。ローズはそれらをマーク2の装備として付けさせた。

 

トニーを訪れるS.H.I.E.L.Dのニック・フューリー長官。ナタリーからトニーに関するレポートを受け取っていた。トニーをアベンジャーズのメンバーに入れようとしている。君は問題の種、というフューリー。

ナタリーは、実はS.H.I.E.L.Dエージェントのロマノフ。
注入された薬品で、症状が改善されるトニー。二酸化リチウム。効果は一時的だと言うロマノフ。

 

イワンはハマーのスーツをロボットに改良。ハマーは次第に相手のペースに嵌って行く。

 

フューリーは、トニーのアーク・リアクターはまだ未完成だという。

ハワードが話していたのはもっと大きなもの。新しいエネルギー。フューリーの話す経緯。ロシアの元物理学者アントン・ヴァンコがハワード・スタークの共同研究者だったが、金で裏切り、ロシア送還された後はシベリア生活。息子のイワンがその技術を受け継いだ(彼も技術者)。
トニーが、フューリーの言う、全ての元素を試していないという事について聞くと、ハワードが、自分の仕事を成し遂げられるのは息子だけだ、と言っていたという。
自分は認められていなかったと否定するトニー。冷たい父親だった。
親父を良く知っているな、と皮肉るトニーにフューリーが「彼はS.H.I.E.L.Dの創設メンバーだ」

 

スーツケースを置いて去っていくフューリー。コールソンがカメオ出演。

スーツケースの中身はアーク・リアクターの設計図、アントン亡命の記事、そして映画のフィルム。
再生すると、父のハワードが模型のアーク・リアクターを前に話している。そこに写っている子供時代のトニー。
トニーに向けたメッセージ。お前は世界を変える。私が生み出したもので最も素晴らしいのはお前だ。

 

急に思いついて出掛けるトニー。道端でイチゴを売っている男に、高級腕時計を渡してひと箱掴むと、ペッパーの居るオフィスに向かった。
プレゼントにと持って来たが、ペッパーはイチゴアレルギー。却って怒らせてしまう。
そこにあった、父ハワードが残したエキスポ全景の模型を見るトニー。「未来のカギはここにある」という言葉を思い出し、それを車に積み込んでラボに戻る。

ジャービスに指示して、模型のワイヤーフレームをデジタルスキャン。そのデータを立体投影したところに、新しい元素の情報が現れた。だがジャービスは、合成は不可能だと言った。
ラボの壁をブチ抜いて加速器を設置するトニー。そしてレーザーの光を収束させて元素の合成に成功する。
安全性を確かめないとダメだと言うジャービスを無視して、新しい元素を組み込んだアーク・リアクターを取り付けるトニー。
パラジウムの毒で黒く浮き出た血管が、徐々に消えて行った。

 

イワンは、ハマーの知らないところで自分用のスーツと武器を作っていた。そしてハマーがエキスポ会場で新しい武器のプレゼンを始める。陸、海、空それぞれに特化したロボット軍団。そしてローズ中佐が操縦するアイアンマンスーツには、新たな武器が装着されていた。

 

ハマーらを阻止するために会場に向かったトニーだが、イワンがシステムをハッキングして、ロボット兵による、トニーと市民への攻撃が始まった。ローズのマシンも乗っ取られてトニーを攻撃。中であせるローズ。
ペッパーが警察を呼んでハマーを逮捕させるが、ロボット兵はハマーのラボでイワンが指令を出している。ロマノフがラボに急行。

 

スターク社のボディガードが一人に手こずっている間に、ロマノフが数名の男を倒して部屋に入る。だがそこにイワンは居ない。
イワノフはローズのマシンのハッキングを解除し、ようやく味方として復帰。

 

ロボット兵に囲まれるトニーとローズ。多勢に無勢の中、トニーが一回きりの全周囲攻撃でロボット兵をせん滅させる。
そこにイワンがやって来る。二人で迎え撃つが、歯が立たない。二人同時にレーザーを照射して何とか倒す。
だがイワンは「貴様の負けだ」と呟く。倒れたロボットたちの自爆装置にスイッチが入った。
急いでペッパーを助けに飛んで行くトニー。間一髪のところでペッパーは助かるが「こんなストレスはもういや!」とブチ切れ、もう会社を辞めると言うペッパー。

 

社長交代の手続き等の話の途中で、トニーが突然ペッパーにキス。
「変かな?」と言うトニーに「変じゃない」「問題ない?じゃあもう一度」
そこに茶々を入れるローズ。途中からずっと聞いていた。

 

ラボでフューリー長官と対峙するトニー。トニーをアベンジャーズに参加させるかの検討中。ロマノフの報告書では、アイアンマンとしては資格ありだが、トニー・スタークは「なし」。
正式メンバーではないが、コンサルタントとしてならOKと聞いて握手するトニー。
コンサル料は高いが、今度軍から表彰を受ける受賞式で、ある事をしてくれたらタダでいいと言う。

 

授賞式。プレゼンターは、以前上院軍事委員会でトニーを吊し上げたスターン議員。

数日後、フィル・コールソンらはアズガルドの神・ソーの持つ魔法のハンマーをニューメキシコ州の砂漠で発見。この出来事が「マイティ・ソー」のプロローグとなる。

 

 

感想
アイアンマンを公表したものの、アーク・リアクターの動力源、パラジウムが自分の体を蝕むジレンマに陥るトニー。これとの戦いと自分の見栄とのせめぎ合い。
アイアンマンのおかげで正義には目覚めたものの、ちょっと前まではバリバリの武器商人。生来の性格はそう変えられない。
自分とは関係ないと思っていたイワン。

彼の父親アントンが、自分の父親ハワードと関わっていた。

 

SFアクションの中で父と子の物語を描いており、なかなか見応えがあった。父親からは全く愛されていなかった、と断言するトニーに、父の残したスーツケースを置いて行くコールソン。
そこから先の、父の写るフィルムを見てからエキスポ会場の模型をスキャンして、最終的に新しい元素を合成していく過程は、アクションシーンよりも心に残る時間だった。

 

イワンは、ミッキー・ローク使うのなら、もう少しアクションシーンを深刻なものにしたかった。ローズとのタッグであっさり勝ってしまうのではもったいない。
ミッキー・ロークといえば、一番記憶にあるのは「エンゼル・ハート」。

あの頃は精悍な印象が残っていたが、最近はムチムチして、どうもイメージが良くない。

 

 

 


ヴァレリアン / 千の惑星の救世主 2018年 フランス他

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監督 リュック・ベッソン
脚本 リュック・ベッソン
原作 ピエール・クリスタン
音楽 アレクサンドル・デスプラ

 

キャスト
ヴァレリアン少佐      - デイン・デハーン
ローレリーヌ軍曹      - カーラ・デルヴィーニュ
アルン・フィリット司令官  - クライヴ・オーウェン
アイゴン・サイラス(声)   - ジョン・グッドマン
バブル              - リアーナ
ギブソン少佐        - オーラ・ラパス
客引きジョリー       - イーサン・ホーク
国防大臣          - ハービー・ハンコック
ネザ軍曹          - クリス・ウー
オクト=バー将軍     - サム・スプルエル
海賊ボブ          - アラン・シャバ
世界連邦大統領     - ルトガー・ハウアー

 

 

3分で分かる映画『ヴァレリアン』


あらすじ
1970年代から始まった宇宙開発構想。その後宇宙ステーションとして地球の各国を結びつけるだけでなく、違う惑星の民も受け入れて巨大化して行った。
西暦2700年代。地球の低軌道上にあった宇宙ステーションアルファは、異星人を受け入れ増殖するうちに、その質量が地球に影響を与えるまでになった。世界連邦大統領の演説。
推進用エンジンを取り付けて地球の引力圏から離脱したステーションアルファは、その後も他惑星の民を受け入れ、巨大な人工都市に成長して行った。それから400年後。

 

青い海と美しい海岸。そこに住む白い民は、パール状のエネルギー物質を糧として暮らしており、小動物にそのパールを与える事で数を増やしていた。


ある時、空に黒煙が広がり、多数の飛行物体が落ちて来た。不時着した機体の調査を行う人々。その後、巨大な母艦が地面を目がけて墜落。強烈な爆風が広がりつつあった。あわてて機体に乗り込む人々。だが妃と思われる女性が一人残された。

ドアは壊れて開くことが出来ない。
諦めた妃は爆風に向かって手を広げる。

 

南国の砂浜で寝ている男。衝撃を受けて目覚める。その後飲み物を持った女性とじゃれ合う。風景はホログラムで、男は連邦捜査官のヴァレリアン少佐、女は同じくローレリーヌ軍曹。

 

小型宇宙船「イントルーダー」で船内コンピュータ「アレックス」の誘導により惑星キリアに降下。


国防大臣からの連絡。使命は盗まれたコンバーターの回収。闇商人のアイゴンから奪う。それを終えたら宇宙ステーションアルファに向かえ、との命令。惑星キリアはバーチャル空間のビッグマーケット。
ツアー客に混じって潜入するヴァレリアンだが、その前にローレリーヌにプロポーズ。

しかし何十人と彼女を作っては離れているため信用されない。

多少予定の変更はあったものの、アイゴンからコンバーターを回収したヴァレリアンとローレリーヌは「イントルーダー」で脱出。回収したコンバーターは、先の、破壊された星の小動物だった。

 

ローレリーヌが小動物を容器から出して治療ポッドに入れる(ハイグレードウランによる治療)。
ヴァレリアンは小動物と共に持ち帰った、パール状の物体をアレックスに分析させる。1個でこの船の10倍のパワーを持つ。QN34座にあった惑星ミュールで産出。下等な種族しかいない。だがその星は30年前に消滅。それ以上の情報はアクセス制限により閲覧不可。

 

宇宙ステーションアルファに着いた二人は上司のオクト・バー将軍に報告。もう一人の上官、アルン・フィリット司令官。
司令官の話すアルファでの問題。
一年前、ステーション中心部に高放射能ゾーンを発見。探査機、特殊部隊を送ったが帰らず。この区域は空気も汚染されている。取り除かなくては1週間でアルファを滅ぼす。

国防大臣と司令官の会話。安全保障理事会に出席する司令官へ、ヴァレリアンとローレリーヌを護衛に付けろという指示。

 

アルファ内の各星人の代表が集まり、司令官が状況の説明。そこに外部から敵の侵入。防衛システムが無力化されている。武器を持った白い民の攻撃で皆が倒れる。撃たれると膜で包まれて意識を失う。
司令官だけを運び出す侵入者。

 

撃たれたが、メディカルパーツを起動させていたヴァレリアンは、何とか膜を切断して脱出し、ローレリーヌを助け出す。
追うヴァレリアンだが、相手はかなり先行している。最短コースを通信で聞くと、ローレリーヌは目の前の壁を行けと言った。
壁をブチ抜き、時には水中も通って追いかけるが、相手は三角錐状の宇宙船で逃げる。

それをイントルーダーで追うヴァレリアン。追跡するヴァレリアンが攻撃すると、敵はバラバラになった。元々小型機の集合体。ローレリーヌが、センサー情報で司令官を乗せた機体を教え、それを追うヴァレリアン。だがこの機体では大きすぎて小回りが利かない。一人乗りの「スカイジェット」に乗り換えて追跡を継続。ロープを撃ち込み、繋がった状態で追うが、宇宙船は危険区域に向かっている。
とうとう通信圏外まで出てしまい、交信不能になってしまった。

 

助けに行こうとするローレリーヌだが、将軍はこれ以上の犠牲を出せないと、彼女を拘束。
だが見張りの二名を難なく倒してしまうローレリーヌ。
情報屋のドーガン=ダギーズ(アヒル顔の小人3人組)に金を払い、ヴァレリアンの正確な居場所を聞く。
案内された海洋エリアに海賊ボブを訪ね、巨大海獣に寄生するコンテックスクラゲの捕獲を頼む。命がけでそれを捕まえて来ると、ドーガン=ダギーズはローレリーヌにそれを被れと言う。時間は1分以内。それ以上やると脳が侵食される。
それを被ると、ヴァレリアンの行動がそのまま再生された。
スカイジェットが、どこかにぶつかって放り出された所の扉に書かれた「630 ESUL 作動停止」の文字に心当たりがないか聞くと、区画名を教えるドーガンたち。そして「詳しい地図は欲しくない?」

 

ヴァレリアンが落ちた区画に到着したローレリーヌは、何とかヴァレリアンを見つけて助け起こす。
だがそんな時に、付近を漂う蝶に手を出したローレリーヌは釣り上げられてしまう。気付いたヴァレリアンも蝶を掴んで上昇。
ローレリーヌは、釣りをしていた屈強な男にカゴへ入れられ、屋敷に連れて行かれた(惑星ゴーラの移住民居住区)。

通信が復活したアレックスにアドバイスを聞くが、外交問題を引き起こさずに入るには彼らになりすます事、との返事。そしてグラムポッドを探しては?と提案。

 

歓楽地域に行き、見世物をやっている所を探すヴァレリアン。そこで見つけた客引きジョリーの店に行く。
ステージの女が、一瞬で様々な衣装に変身してポールダンス。体つきや肌の色も自由自在。ピアノを弾く客引きを気絶させ、女に本当の事を話せと迫る。彼女は自由に姿を変えられるグラムポッド。名前はバブル。密入国者であり奴隷同然に扱われていた。仲間を助けるために協力してくれと頼むヴァレリアン。

ローレリーヌをさらったボーラン人に化けるため、バブルがヴァレリアンに重なって変身。少し訝しむ者たちの間を通って扉の中に入る。

 

中ではローレリーヌが白いドレスに着替えさせられていた、王に食事を出すための行列。その長い列の最後に並ぶローレリーヌ。実は彼女自身が食い物だった。王がローレリーヌの頭を切る寸前に、暴れ始めるヴァレリアン。
大立ち回りのあげく、地下のゴミ捨て場に落ちて逃れる三人。
バブルは戦いの中で致命傷を負っており、ヴァレリアンに別れを告げて息絶えた。

 

部族の地域から脱出した二人は、危険区域に到着した。

だがそこは特に汚染されていなかった。
虹色に光る膜状のフィールドを前にして、中から白い民が現れ、二人を中に導いた。多くの白い民。
彼らがミュール星の生き残りのパール人だった。皇帝の話す真相。
かつてミュール星の近くで艦隊戦が起こり、多くの宇宙船が不時着。その後母艦に相当する巨大戦艦が墜落した事で、星が壊滅した。

 

その時妃が一人船に入れず命を落としたが、寸前に精神を解き放ってエネルギーを放出した。
その波動がヴァレリアンに届いた。パール人の思念は、これはと思う宿主と融和する事があり、ヴァレリアンの夢もそれが原因。

残ったパール人は、シェルターとしての戦艦から様々な知識を得、更にアルファへ辿り着いた事で、知識を蓄え、自分たちの故郷を再現出来る宇宙船を作り上げた。
だが宇宙船を作動させるためにパールと、それを増やすコンバーターが必要だった。彼らは、星を滅ぼした者に対する復讐で今までの事をやったわけではないと説明。

 

ヴァレリアンは、司令官を起こして事実を確認。
パール人の説明は正しく、その戦いの当事者が司令官だった。戦闘を終結させるため、母艦への核攻撃を強行。星へのダメージを承知の上での作戦。
パール星のことも、下等なものしか居なかったと情報操作。そして、一連のパール人の行動も把握しており、ミュール・コンバーターの回収、パール人の根絶やしまで想定に入れていた。
司令官はパール人の逮捕を二人に命じるが、彼を殴って失神させるヴァレリアン。

 

ローレリーヌが、パールとコンバータを返そうとした時、ヴァレリアンがそれを止める。彼は兵士。政府の命令で回収したコンバータを何の手続きもなく返す事には反対だった。
猛然と反発するローレリーヌ。これだけの事をされたパール人なのに、過去は許し、これからの生活のためにコンバータを必要としているだけ。これこそが愛であり、ルールも法も関係ない。
君のためなら死ねる、というローレリーヌへの気持ちに思い至った事で全てを理解し、彼らにコンバータ渡す事を決めるヴァレリアン。

 

だがその時、危険区域の回りは軍隊で固められていた。ドーガン=ダギーズが情報を横流ししていた。また司令官の指示だけ聞くロボット「ケイトロン部隊」の存在。
外に居るパール人から、包囲されている事の情報が入って来る。攻撃を止めさせる通信をするため、妨害電波を止めるよう頼むヴァレリアン。だがバリヤーも無防備になる。皇帝はそれを受け入れた。

本部のオクト=バー将軍に通信を入れるヴァレリアンとローレリーヌ。攻撃を止めるように訴えるが、本人確認が出来ないと形式にこだわる将軍。

 

言い合っているうちに将軍は「司令官を呼び出してくれ」と依頼。司令官を起こしてマイクの前に引き出すヴァレリアン。
将軍は、司令官の命令通りに軍備を整えて待機している。何かお言葉は、と言われヴァレリアンは「告白タイムだ」と促すが司令官は「殲滅せよ」との指示。それがケイトロン部隊への指令トリガだった。
数体のロボットが攻撃を開始して、バリヤー前のパール人が次々に倒れる。味方の部隊も見境なく攻撃するロボット。

ヴァレリアンはロボットたちを交戦で次々に倒して行き、時限爆弾も何とか1秒前に停止出来た。
その間にパール人の宇宙船はコンバータを使ってパールを増やし、そのエネルギーでアルファから離脱した。

 

退避したアポロ宇宙船の中で救助を待つヴァレリアンとローレリーヌ。改めてプロポーズを受けるローレリーヌ。

 

 

感想
リュック・ベッソンの作品は、SFでは旧いのだと「フィフス・エレメント」、新しいものでは「ルーシー」辺りを観ている。

カラフルな予告編に惹かれて視聴。

 

宇宙ステーションがどんどん拡張して都市化して行ったといういきさつから、エンジンを取り付けて地球外へ離脱するところまでは、オープニングとしては悪くない。世界連邦大統領にルトガー・ハウアーが出て来たのにはびっくり。でも物語はそれから400年後の話だから、彼の出番はこの先にはない・・・・

 

惑星キリアでのバーチャルとリアルとの混在は、なかなか見応えがあった。この辺りの華やかなゴチャゴチャ感は嫌いじゃない。しかし動物がコンバータという命名には、どうも違和感あり。
ボンネットバスにジェットエンジン付けた乗り物はナイスだった。

軍の扱いでは、将軍と司令官が同時に出て来たので、ちょっと混乱。また連邦捜査官と軍隊の関係についてもイマイチ判りにくい。

 

国防大臣のハービー・ハンコックにはびっくり。以前「ラウンド・ミッドナイト」で役者の経験はあるのだが、あの時は実際と同じピアニストの役。今回まともにセリフ喋って、ホントの役者みたい。今後仕事が増えるか・・・

 

ハービー・ハンコックといえば

 

 

全体として観て、それほど悪いとは思わなかったが、なーんか華がない・・・キャストのせいなのかな?

ヴァレリアン役のデイン・デハーン。なんとなく若い頃のディカプリオみたいな感じだが、プレイボーイと言っている割りに、そのオーラが全くないので「そのネタ必要?」という感じ。
ヒロインのカーラ・デルヴィーニュもイマイチ。

配役だけに押し付けるのもかわいそうだが。


突っ込みどころはイロイロあるが・・・

まず、本編とちょいズレの小ネタが多過ぎ。
行方不明になったヴァレリアンを探す場面で、海獣に寄生するクラゲを取って来て頭に被って知るとか、変身するためにポールダンスしている女と交渉とか、こういうのはリュック・ベッソンが好むパターン(フィフス・エレメントでも良く出て来た)。彼らしいと言えばそれまでだが。
リアーナのポールダンスは、まあ・・・・良かった。

 

宇宙船「イントルーダー」は、何となくファルコン号にテイストが似ている。それから追跡場面で出て来た「スカイジェット」はトヨタがデザインしたらしい。ノーズ回りがレクサスそっくり(そんでもってエンブレムのLはそのまんまレクサス)。

 

ネット情報を見ると「失敗作」との評判みたいだが、まあ、こんなもんでしょ。スターウォーズだって、それほどとび抜けて優れたシナリオってわけでもないし。そこそこ楽しめた。

 

原題は「Valerian and the City of a Thousand Planets」だから、ヴァレリアンと千の惑星の都市、てな直訳になり「救世主」なんてどこにも書いてない。このムダな邦題が、映画のニュアンスをやや損なっている様な気がする。

 

最初はステーションアルファが、消滅の危機に瀕しているというインプットがあったものの、結局ミュール星の生き残りがアルファから脱出するというドメスティックな話に収斂するので、題名から壮大なドラマのイメージを持った者には、やや肩すかし。


観終わった後でネット検索して、バブルの吹替えをやったのが、ゆりやんレトリィバァと知った。まあ、普通に違和感なく映画に溶け込んでいたが。
それからドーガン=ダギーズ三人組の吹替えはアルフィーのメンバー。こっちは別にどうでもいいか・・・・

 

 

 

 

アベンジャーズ 2012年 -アベンジャーズ強化月間②

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dlife企画第二弾

 

監督・脚本 ジョス・ウェドン
原作    スタン・リー
音楽    アラン・シルヴェストリ

 

キャスト
トニー・スターク / アイアンマン             - ロバート・ダウニー・Jr
スティーブ・ロジャース / キャプテン・アメリカ  - クリス・エヴァンス
ブルース・バナー / ハルク                   - マーク・ラファロ
ソー                                                 - クリス・ヘムズワース
ナターシャ・ロマノフ / ブラック・ウィドウ       - スカーレット・ヨハンソン
クリント・バートン / ホークアイ              - ジェレミー・レナー
ニック・フューリー                               - サミュエル・L・ジャクソン
フィル・コールソン                               - クラーク・グレッグ
マリア・ヒル                                       - コビー・スマルダーズ
ロキ                                                 - トム・ヒドルストン

 

予告編


あらすじ

神々の国アスガルドから追放されたロキ。

宇宙種族のチタウリと手を組んで、現在地球にある四次元キューブを手に入れ、制服しようと考えている。

 

国際平和維持組織S.H.I.E.L.D.。ここでエネルギー体「四次元キューブ」の研究を進めるセルヴィグ博士。

不明な点が多く、制御までには程遠い状況。
急にエネルギーレベルが上昇し、長官のフューリーが避難命令を出す。
四次元キューブの照射先が輝いて、男が姿を現した。手に持った杖から光線を出して攻撃。杖の先をセルヴィグとバートンの胸に押し当てると、二人とも洗脳される。
男はアスガルドのロキと宣言して四次元キューブを奪う。

脱出を助けるバートン。

 

捕われの身となっているナターシャ・ロマノフ。敵側の男に電話が掛かり、ロマノフを出せ、とコールソンの声。縛られた状態で電話を受けるロマノフ。ある大物に会うため帰って来いとの指令に、縛られた椅子ごと暴れ回って敵を撃退する。

 

インドで住民の治療をしているブルース・バナー。少女の「パパが熱を出した」との訴えを聞き、村外れに行くが、それは口実。待っていたのはロマノフ。S.H.I.E.L.D.の使いとして来たという。フューリーが頼りにしている。「イヤだと言ったら?」と聞くバナーに「説得する。今さら変身したくないでしょ?」

 

S.H.I.E.L.D.の空母に連れて来られたバナー。フューリーは四次元キューブを見つけて欲しいと頼む。バナーはガンマ線に詳しい事から指名された(怪物退治ではない)。


本部に説明するフューリー。今回の敵はアスガルドではなくロキ。対策チームを考えている。

目覚めたばかりのスティーブ・ロジャース。70年間眠っていた。

英雄と称えるコールソン。
状況の説明。ヒドラの秘密兵器、四次元キューブがロキに奪われた。

ニューヨークのスターク・タワーを訪れるコールソン。トニー・スタークは、アーク・リアクターで作った新しいエネルギーによる自家発電システムを起動させたところだった。
アベンジャーズ計画はなくなったと聞いていたスタークは訝るが、一応参加。

 

空母に集まるロジャースとスターク。空母は船体の左右から巨大ファンを4基出して空中に浮遊した。逆反射パネル起動(透明化?)。

ロキがドイツで発見され、急行するロジャース、スタークとロマノフ。パーティー会場を襲い、人々を跪かせて悦に入るロキ。逆らった者を殺そうとした時、ロジャースが助けた。
スタークも加勢してロキとの戦いが始まるが、あっけなく捕まるロキ。
そこにアスガルドのソウが割り込んで来てロキをさらう。ロキはソウに、俺はいつも日陰に居たと抗議。
誰に操られている、とソウ。

キューブなど捨てろというソウに「預けてある」とロキ。
スタークがソウに攻撃「邪魔するな、鉄の男」
頑としてキューブの場所を言わないロキに手を焼いたソウは、仕方なく皆と一緒に空母へ戻る。

 

強化ガラスで囲われた牢に入れられるロキ。元々はハルク用。

ロキが時間稼ぎしていると感じるメンバーたち。チタウリは異世界の軍隊。
キューブの活性化、重イオン核融合・・・ 科学者として話が合うスタークとバナー。ロキの杖はキューブから動力を得ている。

ソウは杖の事を知らない。

フューリーがなぜ皆を集めたのか訝るメンバー。ロキはスターク・タワーの事を知っていた。アーク・リアクターが動力である事も。
四次元キューブが新たなエネルギーである事から、S.H.I.E.L.D.はスタークの事を敬遠していた。

 

ロキは我々を煽っている。キューブの位置発見に全力をかけるスタークとバナー。

フューリーがキューブの行方を聞きに来る。スタークとバナーは、データの中から兵器の試作モデルを突き止めていた。その実物を持って来るロジャース。それはキューブの力を利用した兵器。疑問をぶつけるスターク。
元々はソウのせいだ、とフューリー。先のトラブルで町ひとつが破壊された。宇宙の脅威は山ほどある。
キューブ研究のせいで、ロキとその仲間を呼び寄せた、とソウは反発。
核と同じだな、と言うスタークに「武器商人がよくいうな」と言い返すフューリー。皆で言い合い(内輪もめ)その間にロキの杖が光り出す。

 

空母に近づく航空機。味方を装っているが、バートンたちだった。
空母の第三ファンが破壊され、傾く。船内に侵入するバートンたち。
スタークとロジャースがエンジンの修理に出向く。この間に、侵入した敵と争ううちにハルクに変身するバナー。ロマノフを襲うが、それをソウが助ける。外から攻撃した戦闘機に飛び乗って破壊したハルクは、そのまま地上に落ちた。

 

ファンは、ローターに破片が刺さってロックしていた。それを取り除き、自分の力で回転を与えるスターク。ロジャースが何とかエンジンを再起動させて墜落を免れた。

バートンの手引きで牢から出るロキ。その場に駆け付けたソウが入れ替わりに牢へ閉じ込められる。
バートンを見つけたロマノフは、頭への攻撃で彼を正気にさせる。
ロキが牢ごとソウを落とそうとした時、コールソンが例のキューブを使った兵器でロキを狙うが、瞬間移動により杖で刺されてしまう。結局ソウは落とされる。

激突寸前に、ハンマーで牢を破壊して脱出するソウ。

 

空母から脱出するロキ。コールソンを看取るフューリー。
コールソンの死をメンバーに伝えるフューリー。四次元キューブで兵器を作る計画、スタークも知っているアベンジャー計画。力を合わせれば強大な力に勝てる、フィルは信じていた、と訴える。

コールソンの事で言い争うスタークとロジャース。一人で戦うなんて無謀だった。だがその話から、自分たちも一人づつ相手をされていた事に気付く。ロキの性格、目立ちたがる、そびえ立つ塔に名を刻みたい、とまで言って「まずいな」と慌てるスターク。
ロジャース、ロマノフ、バートンらとスターク・タワーに向かう。

 

スターク・タワーの屋上に機械をセットしているセルヴィグ博士。四次元キューブが仕込まれている。スタークが破壊しようとするが、バリヤーが強固で受け付けない。
ロキがそこに居た。スーツを脱いで対峙するスターク(ジャービスに新モデルの準備をさせる)。
会話で抑え込もうとするが、結局窓から突き落とされるスターク。それを追跡する赤い物体が人の姿に変形して、落ちつつあるスタークの体を包み込み、アイアンマンになった。

その時、機械から光が真上に出て、上空に時空の穴が広がる。チタウリの軍隊が飛び出して来た。
軍隊との対応に追われるスターク、ロジャースたち。

 

一方ソウがロキと戦っていた。ロキは軍隊の乗り物に乗って逃げる。

ソウはロジャースたちと合流して軍隊と戦っていた。


戦いの最中、バイクに乗って駆け付けるバナー。小屋に落ちて助かっていた。変身して思う存分にハルクとして暴れる。

 

機械を止めようと、軍隊の乗り物を奪ってタワーに向かうロマノフ。それを追うロキ。タワーに辿り着いたロマノフだが、同時にロキも来る。そこへやって来たハルク。ロキはハルクに思い切り痛め付けられる。

 

ロマノフは、正気に戻ったセルヴィグ博士から、ロキの杖が安全装置として機械を止める事が出来ると聞いて、その準備を始める。

 

一方、本部が指示を出し、核攻撃でニューヨークを破壊しようとしていた。フューリーが一機は止めたが、もう一機が発進。ミサイルが発射された。ミサイルに取りつき、方向を上に変えるスターク。装置を止めるのは少し待てと言って、時空の穴に向かった。
穴の先にあったのは軍隊の母艦。ミサイルはそこに撃ち込まれた。地球上の軍隊は、コントロールが切れ、全て沈黙。
だがスタークも力尽き、自然落下。そんな中、装置が停止された。縮んで行くホールが閉じる寸前に、スタークが落ちて来た。

 

このままでは墜落する。その時ハルクが飛び出して来て、スタークを抱え込み、ビルの側面で衝撃を緩和して地上に落ちた。
だがスタークは目を開かない。数秒経ってハルクが大声を出し、仰天して目を覚ますスターク。

 

ロキはソウを連れて自国に戻った。

四次元キューブをセットした装置を使って。
フューリーは、アベンジャーズのメンバーを解散させ、組織から責められる。
世界中が地球にアベンジャーズあり、という事を知ったから大丈夫だと言うフューリー。

 

 

感想
アスガルドの王ソウの弟、ロキが起こした問題を解決するために集結したヒーローたちのドラマ。
四次元キューブをS.H.I.E.L.D.がどうやって入手したかは詳しく語られていない。途中ロジャースにヒドラの秘密兵器とか言っていたので、元はヒドラがアスガルドから盗んで来たものか。知ってて使おうとしていたのなら、S.H.I.E.L.D.もたいがいのもんだ。
それで大量破壊兵器を作ろうなんざ、確かにスターク、バナーが怒るのも無理はない。

 

このスタークとバナーが科学者同士、意気投合する姿が面白かった。やはりSFである以上、技術面での「確からしさ」が気になってしまう。

超人たちの中にあっては、どうしても生身の人間であるスタークは異質な存在。また発言自体も協調性を欠いて、そもそも孤立する要因がある。
そんな状況でも、やはり一番の見せ場(ミサイルの処理)はアイアンマンが持って行った。

 

ロマノフ役のスカーレット・ヨハンソン。やっぱ華があって、イイ。全身スーツもいいが、もう少し露出があっても良かった(何言ってんだか・・・)

ジェレミー・レナーは、ミッション・インポッシブルのブラント役のイメージが強いが、どうしても寝返り感(?)があるのは、単なる役どころなのか?


つっこみどころ
まあ、SFだから半分「いいがかり」っぽいが・・・
空母を浮揚させるメカとして、今回のファンは非力すぎる。良く出て来た小型のSTOL機(クインジェット)もだが、もっと推力の出るターボファンエンジンとかの設定が必要。ブレードをまともに見せるのではなく、径は小さくしていいから、タッパをもう少し長く取って、中が素通しで見えない様にするとか。

 

それから、バートンがメインシステムを無効にしてエンジンストップしたのに、ロジャースががローカルのスイッチ入れて回復するのはオカシイ(まあいいけど)

 

殺されたフィル・コールソンは、TVの「エージェント・オブ・S.H.I.E.L.D.」のシーズン1で復活する(4月末からシーズン4開始 by dlife)。

 

 

 

 

アイアンマン3 2013年 -アベンジャーズ強化月間③

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dlife企画第三弾

 

監督 シェーン・ブラック
脚本 ドリュー・ピアース
原作 スタン・リー
音楽 ブライアン・タイラー

 

キャスト
トニー・スターク           ロバート・ダウニー・Jr
ペッパー・ポッツ         グウィネス・パルトロー
ジェームズ・ローズ       ドン・チードル
アルドリッチ・キリアン   ガイ・ピアース
マヤ・ハンセン            レベッカ・ホール
ハーレー                   タイ・シンプキンス
エリス大統領              ウィリアム・サドラー
ロドリゲス副大統領      ミゲル・フェラー
マンダリン                  ベン・キングズレー 
“ハッピー”・ホーガン   ジョン・ファヴロー

 

 

予告編


あらすじ
1999年のクリスマス・パーティーのため、スイスを訪れているトニー・スターク。植物学者マヤ・ハンセンと意気投合して彼女と一夜を共にするが、その前に若い科学者アルドリッチ・キリアンが面会を強く申し込む(A.I.M.の名刺)。

屋上で待てと言ったトニーだが、マヤとの逢瀬で失念。

放置されたキリアン。

 

2013年。ニューヨークでのロキとの戦いから一年後。会社をペッパーに任せ、カリフォルニア、マリブの自宅でアイアンアーマーの開発に明け暮れるトニー。遠隔操作や自動装着等、42体にも及んだ。

だが前回の戦いでパニック障害を起こしたトニーは不安神経症を抱え、不眠症に陥っていた。また、どこでもアーマーを装着していないと不安を感じる依存症にもなっていた。

 

アメリカでは「マンダリン」率いるテロリスト集団が電波ジャックで犯行声明を出し、爆破テロも9件発生。だが爆弾の破片一つ見つからず原因不明。
トニーの親友ローズ大佐が新型アーマー「アイアン・パトリオット」で捜査を行っていた。

 

スターク社を訪れるキリアン。ペッパーは以前デートに誘われたが、それ以来の再会。キリアンは研究所A.I.Mの規模を拡大しており、人間の脳の未使用領域を拡張するため、ハードドライブ(脳)をハッキングしてDNAを書き換える技術「エクストリミス」を推進しようとしており、ペッパーにも協力を求める。
だが軍事的な危うさを感じてそれを断るペッパー。

 

警備主任のハッピーが、キリアンに同行していた男を注視していたが、その男が浮浪者風の男にスーツケースを渡す現場を押さえる。

だがその直後浮浪者が高熱を発して爆発。

周囲の者多数とハッピーが重傷を負う。
ハッピーの見舞いを終えて、病院前でインタビューに臨むトニーは、加害者に向かって「受けて立つ」と言い放ち、自分の住所まで公表してしまった。

 

自宅で、今回の事件に内容が酷似している事案を探し、テネシー州で起きた最初の事件を抽出するトニー。
そこへかつて一夜を共にしたマヤが訪れる。キリアンの開発したエクストリミスに関する話。ペッパーが丁度トニーに愛想づかしをして家から出ようとするところと鉢合わせ。
だがその直後自宅が、多数の武装ヘリからロケット攻撃される。


スーツを装着してペッパーとマヤを逃がすが、建物の倒壊と共に海に引きずり込まれるトニー。
何とか海中から脱出し、空に逃れたがエネルギーの残量に乏しく、トニーも疲労し切っていた。

 

ほとんどエネルギーを使い尽くし、地上に落下するアイアンマン(トニー)。場所はジャービスが入力した、最初の事件現場のテネシー州。
動けなくなったアーマーを引きずりながら、ガレージに入り込むトニー。
そこはオモチャ工作場であり、少年ハーレーに見つかるが、彼はアイアンマンの大ファンだった。整備士だ、という言葉に全てを呑み込むハーレー。

 

爆死した青年の母親を訪ねるトニー。母親は息子から書類を託されており、それを受取ろうとした時、女に襲われる。体が高熱になる能力を持っている。辛くもそこを逃れるトニー。
書類によりキリアンとA.I.Mがこの特殊能力に関係している事を知る。
更に「アイアン・パトリオット」のローズと連絡を取り合い、マンダリン率いるテロ集団がA.I.Mに繋がっている事を知る。
この状況でも不安神経症が出て動けなくなるトニー。ハーレーの「整備士なんだから自分で作ったら」との言葉に自分を取り戻し、ホームセンターでパーツを買い、自作の武器を作り始める。

 

フロリダにあるマンダリンのアジトに潜入するトニー。自作の武器で敵を次々に倒す。
そこでマンダリンを見つけるが、その男は指導者でも何でもなく、ただの役者。マンダリンなど実在しなかった。黒幕がキリアン。だがそこでトニーは捕らえられる。マヤもその仲間。
また、誘拐されたペッパーはその体にエクストリミスを注入されていた。それに体が耐えられるかは未知数。

マヤの良心に訴えるトニー。マヤはキリアンを止めようとするが、躊躇なく彼女を撃ち殺すキリアン。
一方「アイアン・パトリオット」のローズも敵に捕まり、アーマーを奪われていた。
ハーレーのガレージで充電作業をしていたスーツを呼び寄せるトニー。何とか全パーツが飛んで来て敵を倒したが、キリアンは既に去っていた。

 

解放されたローズからの連絡で大統領が狙われている事を知り、トニーはロドリゲス副大統領に連絡するが、それを揉み消すロドリゲス。彼の娘の片足が欠損していた。
大統領専用機に向かうトニー。敵のナンバー2のサヴィンと戦い、倒すが、機体に大きな穴が明き、乗員が全員パラシュートなしで放り出された。大統領はアイアンアーマーで拉致される。

落ちる乗員は13名。だが一度に救えるのは4名まで。乗員同士手を繋ぐよう指示し、何とか全員繋がったところで降下を減速させて海に落とす。犠牲者は出なかった。

 

大統領が拉致された場所を、フロリダのドックに停泊しているロクソン社の巨大タンカーだと突き止めたトニーとローズは、直ちに向かう。
大統領はアイアン・パトリオットのアーマーに入れられ、ロープで吊るされていた。公開処刑の放送が始められる。
自宅の地下に隠してあったアーマーの分身を発進させるトニー。ターゲットはエクストリミスの出す熱。
次々と敵を倒す分身。

 

戦いながらなんとかペッパーを探し出すトニーだが、キリアンが邪魔をする。あと少しというところで、ペッパーが空中のコンテナから、火の中に落ちて行った。
そしてキリアンとの戦いに苦戦するトニー。膨大な熱量でアーマーも溶かされる。やられる寸前にスーツから脱出し、次のアーマーに入るという繰り返し。
キリアンをうまくアーマーに閉じ込めて爆破し、何とか勝ったトニー。

そこにペッパーが歩いて来る。

エクストリミスの作用で肉体強化されていた。

 

無事を喜ぶトニー。だがキリアンは死んでいなかった。向かって来るキリアンに凄まじい攻撃を加えるペッパー。最後には超小型のミサイルを撃ち込んで、キリアンを木っ端微塵に吹き飛ばした。
ペッパーに「解毒剤を作るよ」と言って、ジャービスに「クリーンスレート・プロトコル」を指令。

すると分身たちが次々と爆発して花火の様に輝いた。

 

後日、ペッパーの体を元に戻したトニーは、自分の体の破片も手術で取り出した。
少年ハーレーのガレージは最新設備のラボになっていた。「整備士より」とトニーのメッセージ。

今まで胸に付けていたアーク・リアクターを海に投げ捨てるトニー。
アーマーは僕を包む繭。僕は生まれ変わった。だがこれだけは変わらない。僕は「アイアンマン」

 

感想
トニーが13年前に冷たくあしらった若き科学者が、パワーアップして再度現れる。マンダリンは、2011年に殺されたと言われている、アルカイダのウサマ・ビンラディンをイメージしているのだろう。
テロとSFアクションを組み合わせるのは、ちょっと微妙だが(まあいいか)

 

前作(アベンジャーズ)の時の戦いがトラウマになって、トニーが不安神経症になるという設定は秀逸。
もともとトニーは、他のアベンジャーズメンバーと違って普通の人間だから、当然そういう事になっておかしくない。

その恐怖から42体もの分身を作ってしまう。

 

2の時は、フューリー長官やフィル・コールソン等のS.H.I.E.L.Dメンバーが出ていたが、今回は全く出て来ず、これをアベンジャーズシリーズの一つとして入れるのには、ちょっと違和感がある。

ガイ・ピアーズは「プロメテウス」の時には人相が判らない程の老人だったが、今回ぐらいがイメージ相応か。こういう役は良く似合う。

 

まあ、普通にSFアクションとして楽しめたが、ハーレー少年がなかなか良かった。父親が宝くじを買いに行って6年帰って来ないとか(笑えないけど、笑うしかない)
それなりに使えるヤツで、トニーを慕う気持ちもそこかしこに感じられ、映画の中でもこの絡みが一番印象に残った。
どんな作品でも、心に訴えるのは人と人との繋がり。

 

今回、ペッパーがあんなにうまく適応したんだから、解毒剤じゃなく、より能力強化、安定化の研究を進めれば、彼女も立派なアベンジャーズの一員になれたかも(笑)

 

 

 

トレイン・ミッション(原題:The Commuter) 2018年

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監督 ジャウム・コレット=セラ
脚本 バイロン・ウィリンガー
音楽 ロケ・バニョス

 

キャスト
マイケル・マコーリー    - リーアム・ニーソン
ジョアンナ                    - ヴェラ・ファーミガ
アレックス・マーフィー     - パトリック・ウィルソン: マイケルの親友。
ウォルト                       - ジョナサン・バンクス
カレン・マコーリー          - エリザベス・マクガヴァン: マイケルの妻。
ホーソーン警部             - サム・ニール
ダニー・マコーリー         - ディーン=チャールズ・チャップマン
グウェン                       - フローレンス・ピュー
エヴァ                          - クララ・ラゴ
ガルシア特別捜査官      - キングスリー・ベン=アディル
トニー              - アンディ・ナイマン
ヴィンス                       - シャザド・ラティフ
ソフィア                        - エラ・レイ・スミス

 


予告編

 

あらすじ
主人公マイケルは保険会社の社員。毎朝妻カレンの運転で駅まで行き、電車で通勤。今度大学に行く息子は私立を目指し、金がかかる。新しい家を妻が検討しており、そちらもプレッシャー。
そんなある日、上司に呼ばれ、解雇を通告されるマイケル。

企業戦士として尽くして来たと言うマイケルに「戦士も時には負傷する」と冷たい上司。

 

行きつけのバーでビールを飲んでいると、警察の同僚だったアレックスが来て一緒に飲む。クビになった事を話すと、7年間、警察では世話になったから恩返しさせてくれと言う。
そんな時に、TVから都市計画がらみで人が死んだ事を告げるニュースが。少しその話題に触れるアレックス。
そこへ、アレックスと共にマイケルの上司でもあったホーソーン警部が、関係者と共に店に入って来る。マイケルを見つけて声をかけるが、アレックスは気のない対応。
そろそろ電車の時間だ、と言うと共に、奥さんに早く話せと言ったアレックスの言葉を背に、駅へ向かうマイケル。

 

いつも乗る時刻の電車に乗る前に、男とぶつかるマイケル。乗ってから胸ポケットのケータイがない事に気付く。その後顔見知りのウォルトが、君を見ている女が居る、と囁く。だがハイヒールしか見えない。

 

空いた車両まで行って、習慣となっている読書を始めると、向かいに女性が座る。先ほど見たハイヒール。
読んでいた本の内容に関する話をされて、読書を中断するマイケル。

人の心理に関する話をするうち、お互いに名前の紹介。彼女はジョアンナと言った。そして仮定の話として、トイレに封筒が隠されていて、そこに2万5千ドルある。、と言い出した。
興味があるかと言われて頷くマイケルに、これは実験と言って更に話を続けるジョアンナ。コールドスプリング駅に付くまでの間に、常連以外の乗客の中から、プリンという人物を探し出し、その人が持っているバッグにこの部品を入れれば、更に7万5千ドルを渡すと言った。

 

警察での経験から、それがGPSの追跡装置であると直感するマイケル。女はマイケルが元警官だった事を知っていた。まだやるかやらないかの意思表示をする前に、彼女は「この件は途中下車も他言もダメ」と言ってちょうど停車した電車から出て行った。

 

すぐには信じられなかったマイケルだが、一応試しにトイレに入ってみた。普通の確認では封筒など見当たらない。更に注意深く見ると、トイレ下部の換気吹出口からの風が、右側だけ止まっている。
換気口のガラリを開けてみると、そこに封筒がネジ込まれており、札束が入っていた。
それを鞄の中にネジ込みトイレから出る。

 

次の駅で、開いたドアから女が入って来てマイケルに封筒を渡す。そして「見張られている」と言ってすぐドアから出て行った。封筒の中には妻の結婚指輪が。
マイケルは、顔見知りの乗客トニーにスマホを借り、妻に電話をかけるが出ない。続いて警察のアレックスにも掛けるが不在のため、このスマホへの返信を頼む。
最初に声をかけてくれたウォルトの席へ行き、回りに判らないよう、新聞にメモを書いて渡す(警察への通報依頼)。駅で降りたウォルトは目で合図を返した。

 

その直後スマホに電話がかかり、女の声で窓の外を見ろとの指示。駅から出たウォルトが、信号待ちをしている時に、後ろから押され、バスの前に出て撥ねられた。

 

指令をやり遂げるしかないと悟ったマイケルは、切符の取り扱いルールを利用して、コールドスプリングまで行く乗客を絞り込んだ。

NY車掌のルールで、目的地に該当する番号にパンチ穴を開けた券をシート上に挟む事になっており、コールドスプリング行きの客には7の所にパンチ穴が明いている。

そうして絞り込んだ客に一人づつ話しかけて、ヒントを掴もうとするマイケル。ゴールドマン・サックスの銀行マン(ヴィンス)、彼氏に頼まれている偽ID運搬中の女(グウェン)等。

そんな時に逃げる様な態度の男(ディラン)を見つけて追うマイケル。揉み合いになり、相手がプリンの名に反応。殴り合いの最中に鞄へGPSを入れ込む事に成功する。

 

アレックスからの電話で、家に警官を送るよう頼み、女から頼まれた話をするとアレックスは、2日前に都市計画課の職員エンリケが殺害された事件の目撃者がプリンだと告げる。

女は目撃者を捜しているのだと言った。

 

電話を切ると、どこからか電話の着信音。音は床下からであり、フックを引いて点検口を開けると、先の男が殺されて押し込められていた。ポケットを探るとFBIの身分証が出て来る。

鳴っているスマホを開くマイケル。
盗聴器と思われる、家の中の妻と息子の声。だがその時、次の到着駅で警官の姿が見えた。先の乱闘で乗客が通報していた。

 

警官がくまなく探すが、マイケルは見つからず、警官は引き上げて行った。マイケルはとっさに死んだFBI捜査官の横に入って隠れていた。
だが警官が点検口のフックを踏み付けたため、内側からは開かない。床の下はすぐ線路のため、下に降りようとしたが、もたついているうちに電車が動き出す。
動く電車の中でレール間に落ちるが、どうやって外に出るか。横に転がり出るために、数回タイミングを計って何とかレール間から出ると、車両の繋ぎ目に飛び乗るマイケル。だが車速が上がって来て、肩にかけたカバンが手許に引き寄せられない。無理をしているうちに鞄が分解して札束が吹き飛んだ。手許に残ったのは100ドル札一枚。

 

マイケルが電車の冷房装置を壊し、最後尾に客が集まる様に細工。
トニーともう一人(怪しい者の一人)がポーカーをしている所に割り込むマイケル。様々な質問をするマイケルに閉口する男。
マイケルは、今まで自分が受けて来た状況を皆に話す。

そして、どうしてもプリンを探さなくてはならない、と言うと、その男は通勤の定期券を出した。
その時、ギターを持った男が部屋から出たのを見逃さず、マイケルが走った。そして乱闘が始まる。何とか男を倒すが、彼はプリンを暗殺するために雇われた者だった。

 

最後に残ったのは看護師の女性。常に連絡を繰り返していた。銃で脅すマイケルだが、彼女はスマホのLINE履歴を見せた。やり取りは彼氏とのもので、別れ話がこじれていただけ。

 

対象者が一人もいなくなった?
今までの事を思い出し、先に降りた銀行マンが、途中で隣と席を替わっていた事を思い出す。その時に居たのは黒人の少女。
イヤホンで音楽を聞いていた少女に近づくマイケル。「プリンか?」と聞くとソフィアと答える。

彼女が読んでいた本は「緋文字」。主人公の名前がヘスター・プリン。
話を聞くと、従兄であるエンリケが殺された時の目撃者。警察に言えなかったのは犯人が警官だったから。

エンリケを殺す時、犯人は「崇高な事などない」というフレーズを喋っていたという。FBIのガルシア捜査官と連絡を取り合い、証拠物件と共に保護してもらうため、コールドスプリングに向かっていた。

 

ジョアンナからの電話「今すぐプリンを殺しなさい」。

マイケルが拒否すると「全員、死ぬわよ」。

終点で待つ警官たち。

 

マイケルは車掌に停車を指示するが、仕掛けられた爆弾により運転士が倒れ、列車はどんどん速度を上げる。このままでは最終カーブを曲がり切れずに脱線する。
助かるには、最後尾の列車をあと2分以内に切り離して減速するしかないが、切り離しには連結器の上だけでなく下からも外すアクションが必要(走行中にやる操作ではないため)。上は年配の車掌がやるが、下の作業をやるのを若い車掌は拒否。やむなく下に回るマイケル。

 

作業に入るが、なかなか外れない。そのうちに前部車両が脱線を始める。やっとの事で連結が外れた時、脱線車両が宙を舞って後部車両に迫る。ぶつかる寸前に逃れるマイケル。
そのうち後部車両も脱線してレール上を横滑り。

しばらく滑ってようやく止まる。

 

すぐに警察車両が到着。だが先の通報で、この事態を引き起こしたのがマイケルだと誤解されていた。外に出ようとする乗客を引き止め、外からの射撃を避けるために、窓ガラスに新聞紙を貼り付けるよう指示するマイケル。

 

射撃班が構える中、ホーソーン警部の指示で車両に向かうアレックス。アレックスの交渉により、人質と言われている乗客は次々と解放される。乗客は全て出たと言われて中に入るアレックスだが、最後まで疑われていた数名の乗客も残っていた。

投降を促すアレックスは、話の中で「崇高な事などない」という独特な言い回しをした。乗客と共に、アレックスこそが犯人と知ったマイケル。そして自ら正体を明かすアレックス。

 

アレックスはマイケルに銃を向けて「プリンは誰だ?!」と叫ぶと、ソフィアが「私がプリン」と立ち上がる。すると横にいた男が「私がプリンだ」と言い、残った者も次々にプリンだと言い出した。
混乱するアレックスに飛びつくマイケル。外からは狙撃隊が透視カメラで追尾中。射撃指示が出ている中、マイケルがアレックスの追跡装置をむしり取り、彼を押し出した。

 

それをマイケルと判断して狙撃チームが発砲。アレックスは絶命。

車両に突入する警官たち。マイケルの身が危うくなったが、ソフィアがガルシア捜査官に説明して誤解が解ける。

妻子と再会するマイケル。

ホーソーン警部が「君のような警官が懐かしい」と呟く。

 

後日、列車に座っているジョアンナ。向かいに座った男が「通勤客だったとはな」と声をかける。マイケルだった。
平然と「あなたに何が出来るの?」と聞くジョアンナに警察の身分証を見せるマイケル。

 


感想
リーアム・ニーソンの「96時間」三部作は全部観ており「百人の中から一人を探し出す」というシチュエーションにはそれほど魅力を感じなかったものの視聴。
自分はクルマ通勤だからさほど感じないが、電車通勤者はけっこう「あるある」な感じで感情移入した事だろう。

 

亭主が60歳にもなるのに、35万ドルの物件に気持ちが動くなんて、この奥さんも相当ノー天気。
まあ、そんな事にも苦労しているという背景描写としては、いい味出している。
毎度の「巻き込まれ」型の構成は、リーアム・ニーソンに良く似合う。

 


例によってツッコミを・・・
新聞のメッセージを引き受けたウォルトが撥ねられるシーンを、電車内のマイケルに見せるのはほとんど不可能。ウォルトが改札を通って表に出るまでに、電車はとっくに通り過ぎている筈。

プリンという名前の者の荷物に、GPSの追跡装置を仕込むのがタスクだったのに、話が途中でぶっ飛んだのは、結局そんな話はどうでもよくて、最終的にマイケルが一連の事件の犯人として死んでくれればいいと言う事。

そう考えれば途中の不整合に目くじらを立てるべきではないか。

 

それにしてもソフィアの、プリンとの関連がマニアックすぎる。読んでいた小説「緋文字」の主人公の名前がヘスター・プリンだなんて・・・・ 
その上、この小説の作者がナサニエル・ホーソーン(警部の苗字と同じ)。こういうしょーもない小ネタが判ると気力が落ちる・・・


ちょっと気に入らないのは、ここまでの大がかりな揉み消しを画策するにしては、事件の本体がショボ過ぎる事。
都市計画に絡んで職員が死んだぐらいで(一部ネタバレサイトでは市長も死んだとあるが)、その証言をする者を殺すのに列車事故まで計画するとなると、関係者が相当な数になる。そっちの方から秘密を暴露されるリスクの方がよほど大きい。
都市計画の裏にある、もっと大がかりな「何か」を持って来る事が必要だった。映画のアクションばかりに気を取られていると、こういう結果になるのだなぁ。

 

でも、それを裏返して考えると、先日財務省の職員が自殺した話は、裏に一体どれだけ深い闇が潜んでいるのか。この辺り、国民の鈍感さに政府が救われている・・・・誰かに暴いてもらいたい。


音楽は、アクションシーンを除いてはピアノ、ストリングス系が多く、好感が持てた。
その音楽に乗って、エンドロールが電車の路線図になって下って(上って?)行くのが何ともオシャレで良かった。こんなに楽しいエンドロールも珍しい。

 

 

 

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン 2015年 -アベンジャーズ強化月間④

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dlife企画第4弾

 

監督 ジョス・ウェドン
脚本 ジョス・ウェドン
原作 スタン・リー
音楽 ダニー・エルフマン

 

キャスト
トニー・スターク / アイアンマン          - ロバート・ダウニー・Jr
ソー                                - クリス・ヘムズワース
ブルース・バナー / ハルク                - マーク・ラファロ
スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ  - クリス・エヴァンス
ナターシャ・ロマノフ/ブラックウィドウ        - スカーレット・ヨハンソン
クリント・バートン / ホークアイ           - ジェレミー・レナー
ジェームズ・ ローズ大佐                  - ドン・チードル
ピエトロ・マキシモフ                         - アーロン・テイラー
ワンダ・マキシモフ                           - エリザベス・オルセン
マリア・ヒル                                    - コビー・スマルダーズ
ペギー・カーター                              - ヘイリー・アトウェル
ニック・フューリー                             - サミュエル・L・ジャクソン
バロン・フォン・ストラッカー                - トーマス・クレッチマン
ジャーヴィス/ ヴィジョン(声)             - ポール・ベタニー
ウルトロン(声)                                - ジェームズ・スペイダー
ヘレン・チョ                         - キム・スヒョン

 


予告編

 


あらすじ
ヒドラ残党のストラッカーが、ロキの杖を使って特殊な実験を行っているとの情報により、アベンジャーズは東欧ソコヴィアにある研究施設を攻撃。
ストラッカーは、志願した者による人体実験で特殊能力を得た、双子の兄ピエトロと妹ワンダを解放し、アベンジャーズに対抗する。

ピエトロは瞬間移動でバートンを負傷させる。

 

トニー・スタークは施設内のコンピュータからデータを吸い上げる一方、その奥の部屋でロキの杖を見つける。だがそこに近づいたワンダに、アベンジャーズが全員殺される幻想を見せられる。

ロキの杖を持って自分の家に戻ったトニーは、ブルース・バナーと共同で杖を調べる。許された期間は3日間。

 

杖に埋め込まれた宝石の中に、人工知能らしきものを発見したトニーは、これを使って自身の人工知能を改良しようとしていた。
アベンジャーズのメンバーでパーティを行う事になり、ジャーヴィスに作業を任せて出席するトニー。
だがその間に人工知能が目覚め、莫大な知識を吸収するうちに、地球を救うためには人類の抹殺が必要だと判断。
ジャーヴィスを追放して、自分が活動するための体の建造を始める。そしてパーティ中のトニー達を襲う、体を獲得した人工知能ウルトロン。アベンジャーズが世界の混沌と破壊を起こしていると糾弾。
そしてトニーの支配下にあったアーマー軍団に自分の意識をアップロードして自分のものとし、アベンジャーズに向けて放った。

 

ウルトロンを作ってしまった事を皆に責められるトニー。
一方ウルトロンはソコヴィアの研究施設で実験を再開。
そしてウルトロンは、データベースから、ワンダとピエトロが幼い頃戦争に巻き込まれて両親を亡くし、それに使われた兵器がスターク社製だったという記録を引き出した。
ウルトロンと手を組むことを決めたワンダとピエトロ。そしてウルトロンはストラッカーを殺す。

 

ウルトロンは特殊金属ヴィブラニウムを手に入れるため、アフリカの武器商人ユリシーズを襲う。それを察知して戦いに向かうアベンジャーズだが、ワンダの能力でソー、ロジャース、ロマノフが動けなくなる。ロジャースはかつての恋人ペギーとの語らい、ロマノフはスパイ養成時代の辛い記憶が蘇える。だが洗脳経験のあるバートンが反撃してワンダを気絶させる。ワンダを救い出すピエトロ。

 

トニーがウルトロンを倒したが、別の場所で暴走を始めるハルク。複数合体したアーマーで何とかハルクを抑え込むトニー。
だがハルクが破壊した街の様子は全世界に配信され、アベンジャーズに対する批判が集中。
冷却期間を置くために、バートンの家族が暮らす農場に一時避難するメンバー。

 

ソーは、ロンドンに居るセルヴィク博士を訪ね、自分が観た予知夢の意味を知ろうとする。そして知識を得られるというノルンの泉へ行く二人。泉に入ってインフィニティ・ストーンの秘密を知るソー。

 

破壊されてもネット上に逃げて、新たなボディに意識を入れる事が出来たウルトロンは、次に有機学テクノロジー権威のヘレン・チョ博士を洗脳し、奪ったヴィブラニウムを人工肉体「再生クレードル」に組み込んで最強の肉体を手に入れようとしていた。
アップロード作業の中で、彼の心を読んだワンダは、ウルトロンの目的が人類の滅亡である事を知り、チョ博士の洗脳を解く。

チェ博士は作業を中止しウルトロンに撃たれる。研究所を攻撃するトニー、ロジャース。トレーラーにクレードルを入れて脱出するウルトロン。追うロジャース。トレーラーへの攻撃を受けて逃げ出すウルトロン。コンテナのみがアーマーで運ばれる中、クレードルをバートンの機体に入れ込む作業をロマノフが行う。
何とかクレードルは回収出来たが、ロマノフが拉致された。
ワンダは、クレードルをトニーに渡してはいけない、とロジャースに警告。

 

トニーの下に届けられたクレードル。トニーは人工知能ジャーヴィスが、自己の記憶も消去してネット上に退避していた事を明かす。これをクレードルに移植しようとするトニーに激しく反発するロジャース。
ピエトロが配線を全て外し、作業がストップした時、ソーが飛び込んで来て、クレードルの箱に雷を落とす。

そのパワーで覚醒するクレードル。
ヴィジョンとして誕生したそれは、自分の事をジャーヴィスでもなく、ウルトロンでもないと言い「私は、命の味方だ」と言った。
ヴィジョンの額にあるのが、ロキの杖にあったマインド・ストーン。六つあるインフィニティ・ストーンのうちの一つ。
疑いを持っていた皆だが、ヴィジョンがソーのムジョルニア(ハンマー)を持ち上げた事で信用する。

 

捕われのロマノフが出す信号をバートンがキャッチし、再びソコヴィアに向かうアベンジャーズ。ウルトロンは、装置を使って街全体を浮揚させた。高空まで上げてから地上に落とし、隕石として地球にダメージを与える計画。
街には多数の住民が残っている。ウルトロンの支配するアーマー軍団とアベンジャーズとの戦い。
終わりのない戦いが続く中、街はどんどん高く上って行く。
もう住民を救い出す出だてがない中、その横にS.H.I.E.L.D.の空母が出現。フューリー長官が密かに船体を修理していた。多数の救助ポッドが発進して住民を回収する。

 

一人残された少年を助けるためにバートンが向かったが、狙い撃ちにされる。それを助けたのがピエトロ。だがそのために命を落とす。

テレパシーでそれを知ったワンダが暴走し、周囲のアーマーをことごとく破壊。
だがアーマーの一体が装置に触れてしまい、街が急降下を始める。トニーとソーの協力で街全体を破壊し、危機は免れた。
一方ヴィジョンはウルトロンの最後の一体と対決し、それを倒す。

 

ニューヨーク州北部に建設されたアベンジャーズ施設。
ソーはインフィニティ・ストーンの謎を解明するためにアスガルトに戻り、トニーも今回の発端を作ったことから、アベンジャーズから去る決心をした。


感想
発端は「アベンジャーズ」でロキから取り上げた杖が発端。そういえば、四次元キューブはあの時ソーが持って帰ったが、杖はどうしたっけ?
とりあえず、ヒドラが研究していた杖を奪還する、というのが本作のプロローグ。
しかしトニーが研究していたウルトロンがトラブルの元凶を引き起こすとは、マッチポンプもいいとこ。

 

結局トニーは、元々が武器商人だから、平和も民営化出来るなんて考えであり、本質的な倫理観がスコっと抜けているようなところがある。
そういう意味で、今回シナリオのアイデアはそこそこ、かな?

 

今回はロマノフとバナー(ハルク)との恋愛が意外な取り合わせでびっくり。でも変身させたり戻したりするのにロマノフが重要なキーマンになっており、これはいいコンビ。

バートンの隠れ家の描写も、激しい戦いの中で、ホッと出来るひとときだった。ただ、盛り込まれているドラマが多数あるので1回観ただけでは不十分かも(これは封切り時には観ていないので・・・)

 

ウルトロン自身、人類が歩んで来た歴史を考えたら、地球のために人類は滅んだ方がいいという判断は正しい。ジャーヴィス、その先のヴィジョンも同じ考えの筈。

だが大人の理由でそれを退けてウルトロンを倒したヴィジョン。
彼に生じる深い苦悩が表現されると、単なるSFアクションから一歩出るんだけど。

 

ここでつっこみ
街一つを切り取って空高くまで持ち上げ、隕石として地球にダメージを与えるというのがウルトロンの目論見だったのだが、そもそも単なる地層を切り出しても、隕石ほどの硬度も密度もなくそのまま落下させても、とても隕石衝突の様な衝撃にはならない。

 

実体を破壊されてもネット上に逃げられるウルトロンを、最後の段階でネットに逃げられなくした仕掛けは何?

 

 

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