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新聞小説 「国宝」 (15)  吉田 修一

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新聞小説 「国宝」  (15)   12/27(351)~1/21(375)

作:吉田 修一  画:束 芋

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第十五章 韃靼(だったん)の夢
雨降る中、料亭「新喜楽」に向かう喜久雄。

同じ席に呼ばれた伊藤京之助もそれに加わる。

喜久雄より七つほど年長で、人気の二枚目役者。
今回は竹野の仕込みで、矢口建設の若社長夫妻の接待。

若社長と言っても五十代半ば。
酒も進み、竹野が口火を切ってお座敷遊びの「虎々」を始める。

元は演目「国性爺合戦」の中の武人、婆さん、虎のいずれかを演じてジャンケンするもの。
一通りの遊びを終えて喜ぶ若社長。

この会合の目的は、映像録画技術が進歩したこの時期に、喜久雄たちの歌舞伎を後世に残そうという話の具体化。
若社長のリクエストが、先の「国性爺合戦」を京之助の和藤内、半二郎の錦祥女でやること。

 

年の瀬の俊一たち一家を追う撮影隊。来年の秋に予定されている二代同時襲名に向けてのドキュメント番組の収録。
これから豊一が入っているバスケット部の試合に出掛けるところ。
役者なので怪我が心配だが、卒業するまではやりたいように、という俊介の方針。
体育館での春江と豊一を追うカメラ。撮影はその後も続き、新居でおせち料理の準備をする幸子、お勢の様子も撮られた。

 

丹波屋での正月。俊介、豊一と幸子、春江が訪問客たちを迎える。
来客も一段落した頃、勝手口から「松野さんがみえてます」の声。
春江の「明日にでも出直して」の言葉に俊介が「正月くらいええやないか」ととりなす。
松野は春江の義父。春江が三歳のころに母親と所帯を持ったが、酒に酔っては母や春江を殴る蹴るの毎日。

喜久雄を知って家を出る事で逃れた。
俊介が豊生を亡くし、薬物にまで手を出して廃人になりかけていた時、松野は母とよりを戻してのヒモ生活。
それでも暴れる俊介を押さえ付けたり、治療のための闇医者への口利きなど、男手として頼ったのも事実。
俊介が、春江の母親の十三回忌を思い出す。

一人で行くという春江に一家で行こう、と俊介。

 


喜久雄が、近所で借りている稽古場で観ているビデオは、次の演目とされる「国生爺合戦」。ここで和藤内を演じているのは十一代目伊藤京之助であり、今度共演する京之助の祖父。
そのビデオ鑑賞を最後まで付き合った徳次が、喜久雄に話がある、と言う。中国に行って、勝負がしたいという。

商売でも始めて、成功したら何でも買ってやる。
そう言って昔、北海道に行ったんだよ、と呆れる喜久雄。

だが徳次の意思は固い。
今まで一心同体で続いて来た間柄。簡単には承諾しかねる喜久雄。徳次も次の「国生爺合戦」まではきっちりやるという。

 

時は流れ、はや「国生爺合戦」も既に中日を迎えた頃、喜久雄が幕間で徳次にこれからの事を聞く。送別会を開くという話にも乗って来ず、喜久雄に日本一の女形になれ、と励ます徳次。
その舞台が千秋楽を迎えた翌日、誰にも知られず姿を消した徳次。

アパートもきれいに引き払っていた。

 

楽屋で遅い昼食を食べる俊介を訪ねる一豊と春江。一豊が大学進学を決心したという。エスカレーター式の一貫校に入学させたが、常に成績下位で進学は難しいと担任にも言われていた。
綾乃に勉強を見てもらおうという話もあるが、綾乃は就職活動。その先は思い出話でうやむやに。
幸子が顔を出す。襲名の演目で「曾根崎心中」をやる事に不安だと言う。その演目は、かつて二代目半二郎が交通事故を起こした時に、喜久雄が代役として立ち、俊介が出奔した原因でもあった。
その逆や、あの事があったから今の自分がある、という俊介。

 

久しぶりに相撲観戦に行った喜久雄。二段目の取り組みの中に懐かしいものを思い出し、後で調べると「荒木」という十五歳。若い頃親交のあった荒風の息子だった。
秋田に戻って居酒屋をやっている荒風に電話を掛ける喜久雄。

 

楽屋で出番の準備をしている俊介の元へ、付き人の恵美が、襲名披露公演のチラシを持って来た。
喜久雄が襲名の口上に同席してくれるのを喜ぶ俊介。丹波屋一門とはいえ、俊介の復活がなければ白虎をつぐのは喜久雄の筈だった。
「源さんの具合はどうなんやろ?」と聞く俊介。春江が見舞いに行ったと聞いて、悪いのだと直感する。
出番の前に小用に行こうと立ち上がった俊介の足元を見て、恵美が足の痣を指摘。
小指の付け根がうっすらと紫色になっている。痛みはないが、こそばゆい感じ。

 

 

 

着々と進む襲名披露の準備。テレビ、ラジオ関係への出演。中でも俊介復帰を強く印象付けたNHKのトーク番組も、今回のために一年密着の取材を行っていた。千七百年代まで遡る丹波屋の歴史。

 

そして迎えた京都南座での襲名披露公演初日。
俊介演ずる「曾根崎心中」、そして喜久雄の「鷺娘」。夜の部では俊介親子の「連獅子」。その前に最も大事な襲名の口上。
出番の前、緊張の一豊に、彼が子供の頃の、将棋のエピソードを話して和ませる俊介。
舞台には小野川万菊も列席。俊介がその手を取って案内する。

幕が上がって始まった口上。
筆頭の五代目生田庄左衛門、一豊に続いて、いよいよ五代目白虎、俊介の口上。
形通りの枕の後、一度はこの世界から逃げ出した自分を親不孝と悔やみ、そして幼くして亡くした豊生の話。
初日の今日だけは私と一豊、そして長男豊生の三人で、この襲名披露を勤めさせて頂きたいのでございます、と結んだ。

 

 

 

感想
俊介の白虎襲名までの大まかな流れ。松野の正体がようやく判明。

徳次との別れ。まあ北海道からの出戻りの事もあるから、これでおしまいではないかも知れないが・・・

 

そして再び指摘される右足のアザ。不安を感じさせるが、さすがに先代白虎のようなことはなく、襲名は滞りなく終わった。


今回の副題「韃靼(だったん)の夢」の意味を考える。

だったん【×韃×靼】
モンゴル系部族の一。8世紀ころから東モンゴリアに現れ、のちモンゴル帝国に併合された。宋ではモンゴルを黒韃靼、トルコ系部族オングートを白韃靼と称し、明では滅亡後北方に逃れた元の遺民を韃靼と称した。タタール。

 

俊介は、一度歌舞伎の世界から逃げ出した。それを韃靼と卑下したのだろうか。

 

 

 

 


NHKスペシャル 「人体」 第5集「脳すごいぞ!ひらめきと記憶の正体」 2/4放送

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プロローグ 1集 2集 3集   4集

番組紹介

 

 

司会・進行 タモリ、山中伸弥 ゲスト:又吉直樹、菅野美穂

芸人で芥川賞作家の又吉直樹。脳の中で通常の人より3割増しの部分がある→縁上回(言葉を司る)2万人に一人。
今回のテーマは神経細胞。神経細胞のネットワークは1000億個。
又吉のひらめき極意

→アイデアに詰まると散歩。目に入る風景がヒントを与える。
何かを見た瞬間に何が起きるか、又吉の脳で実験。

(タモリの顔の認識)
視覚野(輪郭)→側頭部(顔領域)→前頭前野(感情)。

これらを0.2秒で処理。

 

電気信号伝達のからくり
細胞間のスキマをメッセージ物質が流れて伝える(速度:一万分の一秒)。メッセージ物質も数十種。

電気信号の伝わり方にバリエーションを持たせる。
素敵な女性に出会う→神経細胞が活性化。表情が印象に刻まれる。

脳も他臓器からのメッセージ物質を受け取る。

レプチン→エネルギー十分のメッセージ→食欲をセーブ。
受け取るだけでなく、独自のネットワークを持つ(ほぼ無限の組み合わせ)。

 

ひらめきの秘密
又吉実験。小説のストーリーがひらめいた瞬間にボタン押し、その時のネットワーク活動を記録。
集中時→活動場所はこま切れ
ひらめきの時→ネットワークの太い幹が活性。特別な状態
どうすれば作り出せるか(誰でも出来る)
8分間何も考えない→ひらめき時とそっくりのパターン。

 

デフォルト・モード・ネットワーク(脳が何もしない状態)が新たな発想が生まれ易い。通常の7割のエネルギー消費。

幹の先には大脳皮質(記憶の断片)があり、即座に反応。
タモリ→今後頑張り方が難しくなる。
山中→脳科学のパラダイムシフト。

かつての逍遥学派にも根拠があった。
又吉調査。先輩の多くがネタを思いつくのは散歩中。
山中→iPS細胞のアイデアがひらめいたのはシャワー浴びている時、突然に。記憶の断片を準備しておくのが大事。

 

記憶力を高める
ケネス・ロング。テロリストの顔を記憶して見つけ出す。スーパーレコグナイザー。2011年英国暴動時、防犯カメラ映像から200人抽出。

AIでは一人がやっと。
人の顔の記憶で何が起きているか
映像を数秒見せて多数の顔の記憶→海馬の中の歯状回が活性。
電気信号の辿るルートが記憶の正体。海馬から歯状回を通って大脳皮質につながる。固有ルートとして生涯保存される。脳の中に記憶物質があるわけではない。

 

フレッド・ゲージ(ソーク研究所)
歯状回で新しい細胞が作られている。これが記憶力アップのカギ。
増やすには→全身の臓器からのメッセージ物質。例えばインスリン(すい臓)、カテプシンB(筋肉)。
なぜか?生きるため。

どこに食べ物があるかが重要。理にかなっている。

 

認知症
症状→顔の識別出来なくなる(記憶のネットワークが損なわれる)。
アミロイドβが神経細胞を壊す事は知られている→薬が届かない。
脳血管にはスキマがない。なぜか?
脳が混乱するのを防止(血管とは別の神経細胞+メッセージ物質というネットワーク)。
ごく一部のメッセージ物質が血管を通過→例えばインスリン。
カプセルに包まれて移動。インスリンが接触すると血管内の突起が凹んでインスリンを膜で包み、引き込む。

ウィリアム・パートリッジ教授。

インスリンに薬剤を結合させて脳内に運ぶ。
ハーラー病(アルツハイマー病と類似)で成果が出ている。

スウェーデンのウプサラ大。脳細胞がいつ生まれたかの分析装置。
歯状回では90歳近くまで細胞が生まれている事が判明。


感想
何も考えていない時の効能については、以前「瞑想」のテーマでスペシャル番組も観たことがあり、さほど意外な情報ではないが、インスリンが脳血管を突破するメカニズムには感心した。

それから記憶の正体が、神経ネットワークの一単位というのも巧妙な仕掛け。

これだと、記憶を映像として保持出来る人の事など説明がつく。

 

山中教授、京都大の論文不正問題で、この番組の出演も微妙な気がしていたが、一応減給として所長は辞めないみたいだから、セーフと判断したのだろう。
だが過去にSTAP細胞の件があったんだから、脇が甘いと言われても言い訳出来んわな。

 

他山の石・・・・・・

 

 

 

名古屋行き最終列車 2018  第四話  2/5放送

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番組紹介    第一話   第二話   第三話

 

第四話  六角精児 宇野実彩子(AAA) 関太(タイムマシーン3号)

      谷花音

健康診断で判定「F」となってしまった森本宗太郎(六角精児)は、ダイエットのためジムに通う事になり、そこのトレーナー相楽真紀(宇野実彩子)と出会う。
ベンチプレス10回、スクワット20回、マシンプレス10回・・・
食事メニューは卵の白身と鶏のササミ。毎日続けてようやく慣れた頃、真紀が、次の日曜は好きなものを好きなだけ食べていいと言う(自分へのごほうび)。

 

宗太郎が、日曜に安城の北京本店に行くと、そこに真紀が並んでいた。名物の「北京飯」を仲良く食べて意気投合した二人は、これから日曜ごとに「食べ鉄」しようと約束。
次の日曜は真紀の選定で笠松競馬場の「どて飯」。

その日は宗太郎が競馬で勝って居酒屋で夕食。
1ケ月後、体重は劇的に改善された。菜々子(谷花音)はインストラクターのおかげだと言って、結婚したら?とけしかける。

 

ジムに新人が入って来た。堀内(関太(タイムマシーン3号))といい、宗太郎よりチビでデブ。

お互い親近感を覚え、堀内は宗太郎を「兄さん」と呼ぶ。

 

 

「食い鉄」は堀内を加えて三人になった。堀内はラーメン屋で修行中。店は「清楽」、そのまた師匠の店が「えん楽」。
せっかくの休みに、こんなむさ苦しい二人につきあっていいんですか、と聞くと、ポッチャリが好きなんだという(母性本能をくすぐる)。

将来どちらかと結婚したりして・・・・と聞いてうろたえる二人。
真紀がB級グルメにハマったのは、昔メデリンという洋食屋で食べた、白いオムライスの味が忘れられないから。

その店は閉店してしまい、探しているが見つからない。
もう一度食べられたら恋も始められるかも、と言う真紀。

 

 

真紀と別れてホームで宗太郎と話す堀内。女性と話すのが初めて。

真紀さんが好きです、と言う堀内に、ボクも、と言えない宗太郎。

 

菜々子がオムライス好きだったので、白いオムライスの事をメールで聞いていた宗太郎。彼女の友達のおじいさんが、そのシェフ本人だった。料理はもう作れないが、レシピを貰って来た、と菜々子が渡す。

 

ある日、店に呼ばれる真紀。そこは堀内が修行をしている店。

時間外で、ごちそうをしてくれるというので、ラーメンかと思っていた真紀の前に、白いオムライスが。

見た目も味も、以前食べたそのままだったので、真紀は感激。

探し回って、レシピを知っている人を見つけたという堀内に「ありがとう!」と飛びつく真紀。

 

宗太郎独白 人はどうして生き様を変えられないのか・・・・
菜々子は機嫌が悪い。どうして敵にレシピ送っちゃうのよ。 

弟です・・・・・・


感想
鉄道沿線のB級グルメを食べ歩く「食い鉄」をテーマにしており、ちょっと食べに行きたい気分にさせる。

ドラマの内容的には他愛なく、ほとんど引っ掛かるものがない。
やはり宗太郎の、鉄道ヲタクならではのディープなネタが絡まないと決まらない。安易なまとめ方をした脚本側の責任だろう。

 

今年は第五話まであるようだ。

 

 

 

ジオストーム    2018年

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監督・脚本 ディーン・デヴリン

 

キャスト
ジェイク・ローソン      - ジェラルド・バトラー
マックス・ローソン      - ジム・スタージェス
サラ・ウィルソン       - アビー・コーニッシュ
ウーテ・ファスベンダー  - アレクサンドラ・マリア・ララ
チェン・ロン           - ダニエル・ウー ダッチボーイ香港職員
アル・ヘルナンデス    - エウヘニオ・デルベス
レイ・デュセット        - アムール・ワケド ICSS職員
エニ・アディサ        - アデペロ・オデュイエ
アンドリュー・パルマ   - アンディ・ガルシア: アメリカ合衆国大統領。
レオナルド・デッコム   - エド・ハリス: アメリカ合衆国国務長官。
ダンカン・テイラー     - ロバート・シーハン:ICSSのシステム担当
トーマス・クロス       - リチャード・シフ: バージニア州知事。
デイナ             - ザジー・ビーツ:庁内のシステム担当

 

 

予告編

 

 あらすじ
2019年、大規模自然災害を制御する防衛システム「ダッチボーイ」が構築された(命名は、指で水洩れを止めてダム崩壊を防いだ、オランダの少年に由来するもの)。

国際気象宇宙ステーション(ICSS)を中心に、全世界に張り巡らせた人工衛星が協調して気候を制御するもの。現在はアメリカ主導で運用している。システム責任者はジェイク・ローソン。

 

 

ある日アメリカ上院の査問会に呼び出されるジェイク。

弟のマックスもこのシステムの責任者の一人。
政府要人の警護を担当するサラ・ウィルソンは、マックスの恋人でもあった。
日頃行っているジェイクの問題発言、命令違反等が問題とされ、関係者に対する暴力まで披露された。

マックスがメールで「自重しろ」と言っても聞かず、議長のトーマス・クロス バージニア州知事を罵倒するジェイク。

結局ジェイクは責任者を降ろされ、マックスが後任として起用された。

 

3年後、アフガニスタンで村が村人ごと凍り付くという事件が発生。調査チームでは原因特定出来ず。
ICSSでは、アフガニスタン上空の衛星を回収して調査したが、作業した技術者がデータを抜き取り、そのデバイスをロッカーに隠す。その後、誤作動によって彼は宇宙空間に放り出された。

気象コントロール衛星のトラブルが疑われたが、ダッチボーイは2週間後に国連へ管理を移す事になっており、それまでに解決せよと大統領が指示。
事態の公表を主張していたマックスの顔を立てて、ICSSには兄のジェイクを送り込む事を、国務長官のデッコムが推奨。

 

ジェイクにこの件を伝えに行くマックス。今まで、兄弟で多くの確執があった。ジェイクには離婚した妻との間に娘がおり、ジェイクと一緒に暮らしていた。最初は断るも、システムに対する愛着もあり、派遣に応じるジェイク。娘は母親のところに戻る。
その頃、香港で気温の異常上昇によりガス管の爆発事故が発生していた。ダッチボーイ管理の担当者チェンもそこにおり、危ないところを助かる。

 

ICSSに入ったジェイク。司令官のウーテ・ファスベンダーからスタッフに紹介される。3年のブランクでジェイクと面識があった者はウーテだけ。
香港での異常を受けて、そこを担当する衛星をチェックするが、故障のメッセージ。

香港でもチェンが「ダッチボーイ」を調べようとしたが、アクセス不能になっていた。
チェンはマックスにコンタクトし、アクセスできなくなったことを伝え、もし今後も故障による異常気象が続けば、世界規模の異常気象「ジオストーム」が起きる可能性があることを警告。
マックスも自身がアクセスができなくなっていることに気がつく。
不審者が訪れ、隠れるチェン。

 

翌日マックスは庁内のシステム担当のデイナに、自分の端末からアクセスができなくなった理由を探らせる。

異常は故意に操作されている事が判った。

ICSSでは香港担当の衛星を回収し、調査を開始しようとしていたが、衛星を掴んでいたクレーンアームが暴走し、衛星を破壊。ハードドライブも解読不能。

 

その後、先の事故で技術者が宇宙に放出された際に、誤作動で開放されたドアの一つが、ステーションのアンテナに引っかかっていることが判明する。

ジェイクとウーテは、そのドアのハードドライブを回収するため、ステーションの外へ出る。
無事にドアを回収したものの、ジェイクの姿勢制御装置が暴走を始める。その衝撃でドアは飛散。

ステーションの端を掴むことで遭難を免れるジェイク。

ステーション内に戻ったウーテは嘆くが、ジェイクはドアを放す前にハードドライブを抜き取っていた。
他のクルーには失敗だと告げる。

監視のないところでハードドライブを調べた結果、故障による誤作動ではなく、プログラムされた作動だった

ことが判明。先の技術者を殺した同じ人物がジェイクも殺そうとした。

 

何が起こっているか全てを解明したチェンは、アメリカに来てマックスに話そうとしていた。
待ち合わせの場所でサラと一緒に待つマックスだが、目の前でチェンは交通事故に遭う。
チェンは「ゼウス」とだけ言って死ぬ。

 

ジェイクはマックスにTV会議で、少年時代のエピソードを話し謝罪する。だが兄弟で釣りなどした事はない。話は暗号で、一連の災害が故意によるもの、そして政府関係者にその犯人がいる、とのメッセージ。
政府のシステムにログインが必要だが、マックスの権限では入れない。サラに頼み込み、断られるが、結局協力するサラ。
その結果、「ゼウス」プロジェクトとは、世界中で異常気象を起こさせて、遂には「ジオストーム」を発生させる計画。

ジェイクとウーテは、先の技術者が、死ぬ前にアフガニスタンの気象衛星からログデータを抜き取っていたことを発見する。チーム員のデュセットの協力でそのファイルを見つけ出し、一連のトラブルはコンューターウィルスによって起きている事が判明。

 

マックスとジェイクは、デイナによって繋げられた通信会話で、それぞれが掴んだ情報を交換。
ジェイクは、大統領が裏にいるのでは、という可能性を話す。
2週間後に控えた「ダッチボーイ」システムの受け渡しに際し、異常が多発することで国連側が受取りを拒否すれば、アメリカが今後も維持管理の主導権を握れる。
ウィルスの除去にはシステムの再起動が必要で、そのためのリセットコードは大統領が持っている。

 

ジェイクの仮説を信じないマックスは、フロリダ州のオーランドで開催される、民主党全国大会に参加する大統領に無理やり同行する。
サラの協力もあり、オーランドまで同行出来たマックスは、大統領に接触を試みるがうまく行かない。

そんなとき、日本の東京、ブラジルのリオデジャネイロで異常気象が発生し、大きな被害が出ているニュースが入る。しかも次の異常気象地の予想はオーランド。

 

 

デッコムがマックスの様子に気が付き、問いただす。

マックスはデッコムに状況を説明し、大統領の持つリセットコードが必要だと言ったが、リセットコードは大統領の指紋と虹彩を使用、つまり大統領自身がコード。

協力を約束したデッコムだが、突然、マックスを殺そうと発砲。
デッコムこそが黒幕だったことに気付くマックス。
それをサラに伝え、異常気象が迫っていることも教える。

 

サラは大統領を誘拐する覚悟を決め、マックスに車を用意するように言う。
会場で銃を発砲。無線で「銃を持った不審者が大統領を狙っている」とでっち上げて他のSPを誘導し、大統領をマックスの用意した車(タクシー)に乗せて脱出。

その直後、デッコムの手先が追跡して来るが、異常気象が始まり、落雷がそこかしこに起こる。その一つが大会が行われていたスタジアムに落ち、大爆発を起こす。

待ち伏せしているデッコムたち。大統領を乗せた車をバズーカ砲で爆破。だがそれはオトリだった。
デッコムは身柄を拘束されるが、偉大なアメリカを取り戻すためにやった事だとうそぶく。
デッコムの計画は、副大統領の担ぎ上げだった。

 

ICSSではウィルスによって暴走が始まる。ジオストームまであと1時間半。モスクワは熱波、インド・ムンバイでは4つの大竜巻、ドバイでは津波が街を襲う。
また、ウィルスはICSSの自爆装置も作動させていた。ジェイクはウーテに指示し、全乗組員の退去を命じる。

ジェイクは、ソフトウェア技術者のダンカンが怪しいと最初からにらんでおり、締め上げる。
銃で反撃され、なんとか隣の部屋に逃げるジェイク。ダンカンは銃弾でヒビの入った窓が割れて宇宙空間に放出される。

 

 

最後のシャトルの前でウーテはジェイクを待っていた。
現れたジェイクは、一人残ると言う。リセットコードを受けて再起動させる者が必要。
ウーテが、本来は私の仕事だと主張するが、脱出を促すジェイク。

大統領がNASAのケネディスペースセンターに到着し、リセットコードを発動させる。
だがリセットコードは、ジオストームの発生を止めることはできてもICSSの自爆装置を止めることが出来ない。悔しさを滲ませるマックス。

ジェイクは、入力装置への部屋に入るために扉の暗証キーを押すが開かない。
そこにウーテが現れる。扉を間違えており、ジェイクを正しい扉に導く。
そして二人でリセットコードを入力し、ジオストームの発生は止められた。

 

ICSSの破壊は進み、壊滅的な状況。そんな中でジェイクは予備の衛星を見つける。
衛星にたどり着き、ICSSから脱出するジェイクとウーテ。退避していたシャトルが衛星を回収して二人が救助された。

6ヶ月後、ジェイクは新しい衛星システム対応のため、再びカムバック。

 

 

感想
映画館の予告編でけっこう流れていたもの。海岸で沖から凍結が始まり、女は逃げて男は凍る・・・・
全世界の気象コントロールが可能になった世界での綻び。

視点は良く、兄弟ネタというのも悪くないが、ちょっと料理の仕方を間違えたという印象。

 

例によってツッコミを・・・
何でもコンピューターウイルスと言っておけば説明がつくという、杜撰な感じ。再起動すればウイルス除去出来るって?。

そらーセキュリティのアップデートをした時には、再起動を要求されるけど、世の中そんなに甘くない(そういえば、再起動で治るって「バイオハザード」でもやってたような・・・)。
コンピューター技術者を抱き込めば何でもやれるという、シナリオ製作側の杜撰さも目立つ。

 

それにステーション、あそこまでブッ壊れてしまったら、制御どころではないだろう。何でも壊せばいいってもんじゃない。

脱出は、一体どれだけシャトル持ってるの?てなぐらいの違和感。スターウォーズのノリ。

 

言い出せばキリがないが、一番残念だったのは、ジェイクが宇宙に行く必然性がなかった事。ミッションの中でジェイクが、この危機を救うためのキーマンとなった場面がない。単にハラハラドキドキしただけ。
ジェイクしか知り得ない、起死回生の解決策とか、却ってそういうものをデッチ上げた方が、映画としての収まりは良かった。

 

そもそも論として、権力をつかむためには地球のダメージも辞さないという、狂気の発想にゲンナリ。

まあこの昨今、そんな気の狂った権力者が居ることも確かだが。


ただ、悪役ではあるがエド・ハリスを拝めたのは良かった。「ライトスタッフ」 「アポロ13」等で宇宙関係の映画に存在感を出している、好きな役者。
アンディ・ガルシアも、パッセンジャーの時よりは出番が多くて、出演していたという実感があった。

 

 

 

 

 

 

 

「荒神」のTVドラマ化!

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今から5年ほど前、朝日新聞の新聞小説で連載されていた「荒神」(宮部みゆき原作)が、今回NHK BSでテレビドラマ化される。

放送日はBSプレミアム 2月17日(土) 21時~

弊BLOGでもこの時期あらすじを掲載していた。

新聞小説「荒神」あらすじ

         荒神(1) (2)  (3) (4) (5) (6) (7) (8)   

 

関東北部の小藩「永津野藩」と「香山藩」を巡る確執の中で出現した怪物。貧しく、慎ましい村人たちが、それにどう立ち向かったか、という物語。

 

番組紹介

 

紹介ムービーを見る限り、怪物の形状が、連載時の挿絵とかなり違うが、一応原作者も了解しているようだ。一目見て「シン・ゴジラ」の第一形態をパクったのかな?と思ったが、結構形は違っている。
ただ、巨大怪獣の割りに動きがシャープすぎて、ちょっとイメージが違う。
まあ、後は番組観てからレビューしよう。

 

怪物映像

 

 

シン・ゴジラ第一形態

 

 

 

 

 

 

 

名古屋行き最終列車 2018  第五話  2/13放送

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番組紹介    第一話   第二話   第三話  第五話

 

第五話 松井玲奈 内山信二 梅沢昌代 嶋崎伸夫 山口千景

 

ラジオ局の先輩(山口千景)の指示で、相変わらず名古屋行き最終列車内でのインタビューを続ける吉川一美(松井玲奈)。
ある日、太った男性に声をかけると、学校に通っているという。アナウンサースクール。男性は川井信一(内山信二)。アナウンサーになりたい訳ではなく「話し方教室」に通っている。
信一は寺の住職をしているが、説法でTV出演している父親(嶋崎伸夫)に引き換え、全くそれが出来ない。

 

 

取材のため寺に行く一美。母親(梅沢昌代)が交際相手と勘違い。
お経を聞いて質問する一美。数珠は何のため(パワーストーン?)→何回お経を読んだか確認するため。
そのポクポク音のするものは?→木魚。眠気覚まし(魚みたいに目を開けて、寝ないように)。

 

 

喋れない原因が何かあるんじゃない?と聞く一美。
小六の時、友人の松田と好きな女の子の話をしていた。自分は小林りさが好き。すると友人が自分の好きな子のイニシャルK・Rを言うと、その小林りさだと理解。
ある日その小林りさから、松田が好きだという相談を受ける。男気を出して松田に伝言を伝える。
1ケ月後、学校内で松田と川島ルリ子が付き合っているという噂を聞く新一。同じK・Rで名前を間違えた。

小林りさは学校に居られなくなって転校。
それ以来、相談に答えようとすると口が固まる。
ゴルファーが陥るイップスのようなものだと繰り返す信一に、一美が逆ギレ。僧侶でもプロ。腹くくれよ!

 

名鉄の遺失物係に行く一美。レコーダーを落としていた。宗太郎の格言:いつも大切なものを忘れる、そういうもの。

 

 

信一が、スクールを辞める、諦めると言い出す。
そんな事に構わない母親が、祖母から受け継いだという指輪を押し付けて行った。困惑する一美に、もらっておきなさい、と信一。結婚しないと宣言するが、それも含めて慈悲の心だと言う。
もう一つ質問する一美。すぐキレる性格。瞬間的にカッとなってコントロール出来ない。
それには刹那という言葉で応える。変化は当然、熱くなってもいい。
一美が「そういうの、説法じゃないですか?」
ハッと気付く信一。世の中は刹那の連続。余計な事を考えず対応して行けばいい。
やったー、とハグし合う二人。調子に乗って「結婚して下さい」と言い、「ムリです」と断られる。
でも大丈夫、気持ちを伝えただけ。

 

ラジオ局に戻って取材結果を先輩に聞かせようとする一美だが、一切録音されていない。
新しい機械だから、入れ忘れたか、録音を消去したのだ、と先輩。
次の取材に行かされる一美。


感想
坊さんが話し方教室に通うという設定は、案外面白い。
お寺での質問も、けっこう「あるある」問題で楽しめた(正しいかどうかは不明)。

今までの中ではいい方かな?

 

だが、今回も録音トラブルで取材失敗、はもう少しヒネリが欲しいところ。


第六話まであるそうです・・・

 

ゲド戦記 Ⅱ「こわれた腕輪」 作:K・ル=グウィン

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2018.1.22に亡くなった原作者に敬愛を込めて・・・

ゲド戦記 Ⅱ「こわれた腕輪」 作:K・ル=グウィン 訳:清水真砂子
                                   国内初版:1976年 

 

 

プロローグ
「帰っておいで、テナー」
ひとりの少女が駆け下りて来る。それを見守る母親。
「あいつを思うのはよせ。来月には迎えが来る。

連れてったらそれっきり」。
「墓所の巫女にと言うた日から、もうわしらの子どもじゃなくなった」

 

1.喰らわれし者
玉座の神殿での儀式。引き出された少女は玉座までの石段を登り、台木の前に跪いて頭を乗せる。
覆面の男が大刀を振り上げ、少女の首を刎ねる寸前、黒装束の男が押しとどめる。一連の儀式。
少女は立ち上がり、石段を下りる。巫女が少女に黒い頭巾、マントを着せる。「娘ごは喰らわれぬ」との言葉で儀式は終わり、少女は神殿から神殿へと連れられ、様々なことを施される。
そして何年かぶりに開かれた羊の毛皮の間に寝かされた。

外から「テナー」と声をかける、つるつる頭の男。

「わたしはもう、テナーじゃないの」
「小さな子供がなあ、さぞきつい一日だったことだろう」
その男、マナンは静かに去って行く。
今では喰らわれし者を意味する「アルハ」という名前になった少女は、静かに目を閉じた。

 

2.石垣
長じるにつれて母親の記憶をなくして行った少女。自分がどうして選ばれたのか、巫女から暗誦出来るまでに聞かされていた。
アチュアンの墓所を守る大巫女が死ぬと、その者が死んだ同じ日の夜に生まれた女子を何人か選ぶ。

そしてその子の成長を見守り、一点の傷もなく五歳を迎えた時に、大巫女の生まれ変わりとして、この神殿で一年間教育される。
アルハは、アチュアンでの一年間は、他の巫女見習いと共に暮らしたが、名前が取り上げられてアルハになってからは、一人で決められた部屋で寝ることとなった。それは死ぬまで続く。

娘たちは歌や舞いを習い、カルガド帝国の歴史の勉強もした。指導的立場の巫女であるサーとコシル。アルハだけは特別に、日に一時間ほど、名なき者たちに仕える心得の勉強をさせられた。
その一時間を除いては、概ねアルバも皆と一緒の生活を行った。

マナンはその頃からアルハ専任の付き人として、十人の付き人の中にいた。
そんな暮らしの中での楽しみは、川での魚釣り。だがそれも騒いではいけない等の制限があった。

神殿の周囲を石垣が囲んでいた。それは神殿と居住区域を区別するものであり、石垣の外に暮らす者が中に入るのは許されない。

 

晩秋のある日アルハは、ペンセという少女と共に、石垣の上に腰かけていた。共に十二歳。
アルハが日頃の不満を口にするとペンセは、あと二年したら私たちは十四歳になって、あなたは大巫女。

サーやコシルはあなたのいいなり、と返す。
帰る時刻になってもアルハはそこに居続け、ペンセもつき合わされた。

ミサに遅刻して戻った二人は、コシルに捕まって神殿に連れて行かれる。
ペンセの上着が脱がされ、サーがアシの束でその背中を打つ。

血がにじむ。彼女は二日続けて食事抜き。
それをじっと見続けるアルハ。
あなたはアルハさまだから、必要な事だけすればいい。

全てを食べつくされているから、とサーが言う。

大巫女の館に戻るところでマナンに会った。
「私は罰がもらえないのよ」とアルハ。うん、そうだった。
少女をやさしく抱き、髪をなでるマナン。

 

3.囚われの者たち
十五歳になったアルハは大巫女として一切の権限を持っていた。

そんなアルハに、そろそろ名なき者たちに対する仕事を移譲したいと申し出るコシル。彼女が言うのは地下の玄室での勤め。
やっと自分の世界が見られる、と内心喜ぶアルハ。

 

アチュアンの墓所の唯一絶対の巫女として、全ての権限を握ったアルハだが、実際には何の力もない。儀式が終わった後は、全て元に戻った。自分の一生はこうして終わって行くのか。
マナンにそれを話すと、彼は答えを用意して待っていた。
かつてこの地が帝国として統一される前は、各地でいさかいが絶えず、それを収めるために大巫女が「名なき者」に伺いを立てた。

そうして自治が守られた。
その後、神を名乗る者、すなわち大王が現れて力づくで制圧。だから名なき者たちへの伺いも必要なくなった。

現在の大巫女がやっているのは全て形式だげ。

玄室に向かう途中でのコシルとの会話。今まで大巫女が若かったから言ってなかったが、罪人である生け贄を捧げる儀式も大巫女の仕事。既に罪人が準備されている。
玄室への入り口は鍵が必要。

腰帯に下げた十三個の中からコシルが指さす。
中に入って続く狭い通路。広い所に出ると、ここが玄室。
更に先へ促すコシル。壁にある穴の印を頼りに進んで行く。

コシルの指示する扉を開けると、煙が立ち込めた部屋に出た。

ここに囚人が居るという。
三人の裸の囚人が、顔を隠され繋がれている。

囚人に問いかけるが、舌を切られて喋れない。
囚人の処置について指示を出すと、アルハは元来た道を正確に戻った。だが扉は開かない。
ようやく追いついたコシルが、扉は入ることしか出来ない、出口は別にあると言って先導した。

はねあげ戸から出たところは、神殿の「玉座の間」の裏手に並ぶ部屋の一つ。これからは一人で来てくださいまし、とコシル。
アルハは部屋がぐるぐると回り始め、気を失った。

 

4.夢と物語
アルハはその後数日体調が悪かったが、あの日の事をコシルに質すような事はしなかった。
ある日ペンセが、多くのリンゴを持って訪れた。

今は大王の神殿でコシルの指揮下、働いている。
見舞いだが、アルハに勧められてそのリンゴを食べるペンセ。
コシルを巡る面白い話で、アルハを笑わせる。
この神殿に来たいきさつをアルハに話すついでに、こんなところで働きたくないと話すペンセ。神殿の事も何とも思っていないという。
アワバスの宮殿に住む大王もただの人間、年は五十ぐらいで禿げていて、銅像の通りだと。
神を信じないペンセに、あんたをこの墓所の巫女にすることも出来ると言うアルハ。青くなるペンセ。

 

大王は、あれ以来囚人を送って来なかったため、行事であの場所にも行っていない。
アルハは勇気をふるい起こして、またあの場所に行った。行ってみて、何も怖いものがないと判ってからは、何度も地下の暗闇に出掛けた。
そして地下の道路を全て覚えてしまった。だが大迷宮にはまだ入れない。サーは、大迷宮のいくつかの部屋と、その道順をアルハに教えた。アルハはそれらを全て暗記した。

知識を得て、十分に準備してから、アルハは大迷宮に入って行った。

ここでは明かりが許される。
用心に用心を重ねて進んで行くアルハ。

日を重ねるにつれ、次第に深くまで進めるようになった。

サーに、大迷宮には何があるのか、と訊ねるアルハ。

主だった宝は全て確認していた。
もっと古く、はるかに価値あるものがしまわれていると言う。
その宝庫へは大巫女一人で行かなくてはならない。

それを破ると生きては出られない。
その道順を聞いたアルハだが、まだ行く決心はつかなかった。
サーが言う、お亡くなりになる前に・・・という物言い。アルハが死ぬたびに次のアルハが引き継いで、延々と繋いで来た。永久に生まれ変わり続ける。ああ、覚えている、と時に思うことがあった。

 

墓をあばこうとやって来る者の事をサーに聞くアルハ。
サーは魔法使いの話を始める。
大王がまだカルガド帝国を治める前は、魔法使いどもが略奪に来て、今大王が住むアワバスまで入り込んで来た。
その中でも賢人の誉れ高いエレス・アクベが、神殿の神官との戦いを始めた。それは長く続き、神殿が破壊された。だがついに神官が相手の杖を砕き、向こうが持っていた強力なお守りを、まっぷたつに割って打ち負かした。
敵は西の果てまで逃げて行き、そこで竜に殺されたという。
それから何百年後に、その神官の血筋から王が現れ、また何代か後にカルガド帝国の大王に引き継がれた。

その後何度か魔法使いが、エレス・アクベの割れたお守りを取り返しに来たが、今の場所に隠されて守り続けている。
ただしここにあるのはお守りの半分。あとの半分は永久に失われた。
それは、魔法使いの手に渡り、なぜか一緒に戦ったユバンのソレグという小国の王に渡してしまったという。
その意図は内乱の種にするため。実際ソレグの子孫が反乱を起こし、初代の大王に刃向かったという。ソレグは死に絶えた。
この反乱の時まで一族に伝えられていたお守りの半分は、その時になくなり、行方が判らなくなってもう六、七十年になる。

魔法使いに興味を持ったアルハは、更にサーに聞く。
大事なのは言葉。捕虜にした魔法使いが、言葉を発するたびに棒から花が咲き、そこからリンゴの実をつけ、それが消えた時に魔法使いも消えたという。その魔法使いは真っ黒で、ひどく醜かったと話すサー。

 

5.地下のあかり
その年の秋にサーが死んだ。夏頃から衰弱していった。
無信仰で権力好きのコシルに対しサーは、厳格ではあったが冷酷ではなかった。

サーがまだ病気の初期のうちに、彼女はアルハに必要な教えを極力伝えていた。サーの指導を受けるようになって十一年、アルハは僅かな暗示で十分理解した。
サーの弔いが終わってからは、アルハはコシルを避け、時間があれば地下に通った。迷宮のほとんどを把握していた。

 

ある日アルハは、地下で壁画の間に行くために大洞窟を通ろうとした時、ごく弱い光を見た。密かに歩を進める。地下道の最後の角を曲がった時、見た事もない光景が広がる。
自然に出来た巨大な丸天井の洞窟。アメジストと水晶が輝く。
その先をゆっくり動く光があった。杖の先が光り、それを握っているのは人間。男の黒い顔。

動けないアルハ。男は洞窟の中で何かを探している。理解出来ないのは、なぜ名なき者がこの男を殺さないのか?
「消えろ、消えてしまえ」と叫ぶ。ぎょっとした男と一瞬目が合う。直後に男は姿を消した。
入り口の扉に先回りして待ったが、男は来なかった。
その後も探し回ったが、結局男は見つからなかった。アルハの頭をよぎる「魔法使い」という言葉。
外に回り迷宮の出入り口を閉じるアルハ。これで男は出られない。

男が持っていた杖の明かりを思い出し、迷宮の中を見るのぞき穴を明け確認すると、ひとすじの光が見えた。
男は扉の前で、外に出ようとまじないをかけていたが、失敗に終わった。奥に向かって歩く男。だがすぐに戻って来た。
その後男が「イーメン」と叫ぶと鉄の扉が音を立てたが、びくともしない 。男が諦めて目を閉じると、炎の明かりが次第に消えて行く。
のぞき穴をそっと閉じて自分の部屋に戻ったアルハ。いつまでも寝付かれなかった。

 

6.捕らわれた男
翌日、神殿の行事を済ませてから、例の穴から地下の迷宮を覗いたが、男の姿はなかった。
他の場所の覗き窓も次々と見て回ったが、どこにもいない。早く見つけないと死んでしまう、という思いからアルハは男の事をコシルに話してしまう。仰天するコシル。しばれく放置して、死体を回収しましょう、と言

う。いや!と叫ぶアルハ。あわててその理由を言い足す。
コシルに相談した事を後悔するアルハ。

墓から一番遠い所の覗き穴から見た時、あの魔法のあかりが見えた。男の背中と腕だけが見える。
「そこの魔法使い!」と声をかけるアルハ。気付いた男は姿を隠した。
アルハは、壁画の間までの道順を一気に教えた。そこでうっかり外の光を入れてしまい、その先の男の顔を見た。

顔に傷があった。あわてて身を引いて穴を塞ぐアルハ。
だがこの先どうすればいいか。

三日間、どうすべきか決められずにいたアルハは、とうとう壁画の間の覗き穴から中を見た。だがそこにはいない。道が曲がりくねって、思いのほか時間がかかっているのかも。それとも途中で死んだか。
更に翌朝、同じ覗き穴に、ろうそくを付けたカンテラを降ろすと、男の足と片手が見えた。
「これ、そこの魔法使い!」と声をかける。
男はゆっくりと体を起こす。ミイラのように黒ずんで、恐ろしい形相。
アルハは、墓所の秘宝が見たいなら、と言って再びその道順を早口で伝えた。男は杖にすがってその部屋を出た。

コシルが男の事を聞きに来た。こうなっては自分で何とかしなくてはならない。アルハはマナンを連れて迷宮に入った。

 

二人がその男を見つけたのは、宝庫に行く途中だった。

狭い地下道にボロきれの様に倒れている。
「まだ生きている」。男をマナンに担がせて進むが、まだどうするか決めかねている。
結局、鍵もかけられる壁画の間に連れて行き、男に枷をはめた。
アルハは持って来た水差しから、男の口に少しづつ水を与えた。

やがて男は自ら飲めるようになった。
アルハは男の杖を取り上げ、首に下げていた飾り物も取り上げた。

大したものには見えない。
「効用も知らないくせに」とつぶやく男。
その晩、アルハはパンと水を持って再び男のところへ行き、手の届くところに置いて館に戻った。

 

翌日、アルハは再び男に会いに行った。

男の顔には生気が戻っていた。
名を聞くと「ハイタカで通っている」。

アルハと聞いて彼女が大巫女だと知る男。
どこから来て、何をしに来たかを聞くアルハ。
男は、自分のものを取りに来たと言った。
アルハは男の顔の傷の事を聞く。男はその理由を濁し、いわば名なき者の一族につけられたものだ、と答える。
名なき者と聞いて、激高するアルハ。
あんたは、まだ闇の主たちに仕えて日が浅い、と話す男に、お前など、私ががこのまま行ってしまえば死んでしまうんだ!と返す。
男は静かにうなずいた。
アルハは逃げるように部屋を出ると鍵をかけた。

 

7.大宝庫
男を壁画の間に繋いてから三日が経った。コシルはあれから何も聞いて来ない。だがもし男が死んだものと思われていたら、食べ物を頼む事は出来ない。
アルハは、巫女の館から食べ物をくすねる以外に、自分の食事も男に回した。

運び込んだ食事を、男はすぐに平らげ、心からの感謝を示した。
内海はどんなものか?と聞くアルハ。男は一番美しいと言われるハブナー市の事を話した。
わざとエレス・アクベの事を聞くアルハ。

竜王だったというエレス・アクベや男を指して、それは何者かと聞くと、竜と話し合いが出来る人間だ、と答える男。
みな作り話だと否定するアルハは、今まで殺さずに来たのは、魔法を見せて欲しいと思ったからだと言う。

何でもいいから、これはと思うものを見せよ、と迫るアルハ。
男は自分の手を見つめる。しばらく時間が経つが、何も起こらない。

落胆したアルハが立ち上がろうとした時、彼女はコバルトブルーのドレスに包まれていた。ふくらんだスカート一面に真珠や水晶がちりばめられている。うろたえたアルハは、早く消してしまえ!と叫ぶ。

すぐに魔法は解けた。

 

アルハは部屋を出ると鍵をかけた。そして地下道の途中で待っているマナンのところまで行き、男を私が行くところまで連れて付いて来るようにと命令。
両腕をうしろ手で縛られて、男がマナンに押されて出て来る。アルハは複雑に曲がりくねる地下道を手探りで進む。
地下道は次第に狭くなり天井も低くなる。その先に扉があり、アルハは今まで使ったことのない鍵でそこを開けた。
マナンには入るなと制して、男と二人でその部屋に入るアルハ。

ここが墓所の大宝庫。男が来たかったところ。ここまではコシルも来ることが出来ない。
お前はもう逃げられない、と言ってアルハは男の鎖と革ひもをほどいた。そして私を信じて従え、と。
「ああ、そうしよう」
水と食料は出来る限り持って来る。十分ではないかも知れないが、約束は必ず果たす、というアルハの目をじっと見つめて
「気をつけてな、テナー」と彼は言った。

 

8.名前
館に戻ったアルハは、あまりの疲れにすぐ眠りに落ちた。

亡霊に取り囲まれる夢。
わたしはテナーなんだ。名前を取り戻した。

だがどうしてあの人が私の名前を知っていたのか。
朝食の後、コシルにあの盗人は片付けたと話すアルハ。

引き下がらないコシルは、生き埋めにしたというアルハの話に、数々のしきたりを示して、それをやったかと迫る。
力で押さえ付けようとするアルハに、私には通用しない、と逆らうコシル。

その日一日、玉座の石段に座って動かなかったアルハ。そこへアマンが来る。あの男は生かしておいてはいけない、と言う。

コシルはこのままでは済まない。
こっそりとおまえさんを毒殺する事も出来る。
殺さなくても、閉じ込められるだろう。そうなれば信仰は永久に忘れ去られる。アマンを諭して帰らせたアルハは、玉座の裏から地下の迷宮に入って行った。

 

9.エレス・アクベの腕輪

アチュアンの墓所の大宝庫。その石櫃の上に横たわる男。

身動きひとつしない。
鍵をあけてアルハが入って来る。水を持って来ていた。

男は少し飲んだだけだった。
どれぐらい経つ?の問いに二昼夜、と答えるアルハ。
力ない男を見て泣き出す少女。
「テナー・・・」
「私はテナーじゃないの、アルハでもないの、神様は死んでしまったの」
男は彼女を抱き上げて石櫃に座らせた。
アルハがやった事に対し、コシルが男の死体があるか調べに来た形跡があった。

アルハが呪いをかけた筈だが、それは何の効果もなかった。
だがらここでさえも安全ではない。

「主たちはここにいる」と話す男。この地下に入ってから、彼らを起こすまいと力や術を使い果たしてしまった。

だが私を救ってくれたのは人の手の力。
闇の者たちの話。
アルハは石櫃の上に座っている事を思い出した。まだ誰も中を覗いていないと言うと男は「実は覗かせてもらった」と言い難そうに言った。
「あの環?」「そうだ、あの環の半分、あとの半分はあんたのところ」
驚くアルハ。男から取り上げたものがそれだった。

男が話す環の由来。かのエルファーランが身につけていたとされる。穴が九つ空き、内側には九つの神聖文字が彫ってある。それがエレス・アクベの手に入った。これは統治のしるし。

それが割れ、一つの文字が割れた

「失われた神聖文字」。
それ以来今日まで優れた王は生まれなかった。
多島海(アーキペラゴ)諸国の王、魔法使いは失われた神聖文字を復元させるためにエレス・アクベの環を手に入れ、一つにしたいと願った。だがそれは揃わないと言われて何百年も経った。

そして男がアルハより少し年長の頃、ある者を追って島に打ち上げられた事があった。そこで老人の男女に世話になったが、そのうちの老女が、自分が立ち去る時に一つの贈り物をくれた。

それがエレス・アクベの環の片割れだった。
その後竜と向き合う出来事があり、その竜が環の事を教えてくれた。
内海に戻って念願のハブナーに出掛けた男は、自分が何を持っているかを皆に話し、平和の鍵である、失われた神聖文字を見つけ出すために、環の残り半分を求めて、アチュアンの墓所までも行きたいと申し出た。
そうして自分はここへ来た、と男は言う。
アルハは自国で魔法が封印されている事を話した。

竜の話をせがむアルハに男は、話のしっこをし続けるわけには行かない、どちらかに決めなくちゃいけない、と諭した。
逃げ出せっこない、というアルハ。やってみる価値はある、という男。

自分たちにはエレス・アクベの環があり、信頼がある。
男は続ける。
聞いておくれ、テナー。私は盗っ人としてここにやって来た。ところがあんたは私を信頼し、親切にしてくれた。

そして私もあんたを信じるようになった。
私は何のお返しもしていない。

だが、今は全てのものをあんたにあげよう。私の名はゲドだ。
そして、この名はもう、あんたのものだ。

男は立ち上がると、銀の環の半分を差し出した「合わせてみよう」
少女は自分の首から銀の環を外して両者を合わせた。完全だった。
「いっしょに行きます」少女はうつむいたまま言った。

 

10.闇の怒り
ゲドは、合わせた腕環に指を置いて呟いた。そしてテナーの右手にくぐらせて手首に落ち着かせた。女か子供のための腕環だった。はがれないか心配するテナーに、ものづくりのまじないで一つにした、とゲド。
早くここを脱出しなくてはならない。

鍵を回して扉を開け、外に出る二人。

出るための道順はテナーしか知らない。一歩づつ数を数えながら進む。底なし地獄の淵が近づいている。
岩だなが緩んで危険な状態。ゲドが呪文で直そうと明かりをつけた時、その先にマナンが現れた。
いきなり杖を突き出すゲド。マナンは真っ逆さまに淵に落ちて行った。
重なるショックでテナーは戻る道を忘れていた。しきりに明かりを点けて欲しいと頼む。だが今は余分なものに割く力はない。

迷いながらもようやく石段に辿り着いたが、その先の枝分かれでまた迷う。
迷いながらも何とか迷宮を出た。玄室を抜け出すには?と聞くゲドに、入り口は中からは開かないから、神殿の玉座の裏から出る道しかない、と答えるテナー。だがそこにはコシルが居る。
もう、いないよ、というゲドの声で、地下道を進むテナー。振動するような音が聞こえる。急ぐんだ、とゲド。
神殿の下に辿り着き、はねあげ戸を開けようとするが動かない。

コシルの待ち伏せ。
こうなると、入り口の扉から出るしかない。

コシルはそこが内側からは開かないと思い込んでいる。
入り口まで戻って、ゲドの杖から白い光がさんぜんと放たれる。

その光の中を突っ切って二人は逃げた。
墓所の西方の谷に降り立つ二人。
巨大な石柱が揺れ動き、そして傾いていった。

玉座の神殿も形を変え、なだれを打って崩れ落ちて行った。
テナーは、脱出するまでゲドが必死で崩壊を食い止め、そして地震を鎮めた事を知る。力を使い果たしたゲド。

 

11.西方の山
二人は峠を越え、超えた山を風よけにして横になり、そのまま眠ってしまった。目覚めてから枯れ茎を集めて火をおこすテナー。

ゲドが目を覚ます。
巫女の館の者たちを心配するテナーに、大丈夫だと言うゲド。
ゲドは、寄れるだけ火のそばに寄って再び眠ってしまった。
夜明け近くなって二人は歩き始め、墓所の西方に連なる山を登っていた。テナーは倒れた木のうろに、リスが隠した木の実を見つけて喜んだ。それを割ってゲドにも分ける。

ゲドはハブナーを目指していたが、テナーはあまり気乗りがしなかった。すばらしい市だと言うゲド。
ずっとここに居たい、この山の中に、と言うテナー。じゃあ、いることにしよう、と言うゲドに、だだをこねているだけだと否定するテナー。
ほかの事は何一つ習って来なかったと言うテナーを見て、辛そうに顔をそむけるゲド。

 

連山の頂きを超え、豊かな沃野を進む二人。
きらきらと輝く水平線を見て「あれは何?」と聞くテナー。「海だよ」
部落に辿り着いた時、ゲドは自分とテナーの姿を魔法で白人の姿に変えた。
村では食事と寝床が提供された。魔法使いの特典。その見返りは必要に応じてやっている。

大きな村に入った時、二人は大王の軍隊に属する兵士を見た。テナーはかつて神殿で、貢物を護衛する兵士を見たことをゲドに話した。
ゲドは、子供の頃に奴らがゴンドに侵入して来た事を話した。

だがやっと腕環はひとつになって、これからは侵略や殺し合いはなくなるだろう、と話す。

自分がこれから先に行く世界に不安ばかりが募るテナー。
「向こうへ行っても一緒にいてくださる?」
ゲドは言う。私は行けと命じられるところへ出掛ける、どこへ行くにもひとり。あんたが私を必要とする間は一緒に留まる。

だがいつまでもあんたとだけ居るわけには行かない。
向こうに行けば、私などすぐ用なしになる、きっと幸せになるから。
その言葉に素直にうなずくテナー。

 

12.航海
ゲドが乗って来た舟「はてみ丸」は、地元の村人が隠してくれていた。食事も恵んでくれた。
出航の準備を進めるゲド。ずっとこの男についてきた。だが男は腕環が手に入り、墓所が崩れ、そこの巫女が力を失ってしまうと、もはやその巫女には用がなくなり、どこかへ行ってしまう。

置き去りにされる自分。

テナーはゲドの腰から小刀をすばやく抜き、それを後ろ手にしてゲドの前に立ちはだかった。
ゆっくりと顔を上げてテナーを見るゲド。恐ろしいものをまのあたりにしたような顔をしたゲド。ひどく辛そうな。
だがテナーをしかと見つめ、次第に彼女の姿をはっきりと捕らえるにつれて、表情は明るくなった。そしてテナーの手首の腕環に触った。相手の手に握られている小刀には目もくれない。
「さあ、出発だ・・・行かなくちゃ」
その声を聞いたとたん、テナーの中で煮えたぎっていた怒りが引いた。かわりにもたげて来る不安。
「奴らのことは忘れるんだ。あんたはもう自由だ。ここから出て行くんだよ」。テナーに手伝わせて舟を押し出し、彼女が飛び乗った後に自分も続いた。

 

舟が進むにつれて、数々の島を過ぎた。それぞれの名前を教えるゲド。舟は西に進んだ。
夜の闇の中で、テナーはゲドが貰った腕環の半分の話をした。
それをくれた人の話は、大巫女の知識としてサーから聞かされていた。その話と、ゲドが知っている言い伝えとが繋がって、完全な話となった。

再びテナーは、内海へは行きたくないと言った。自分はよそ者。誰一人住まない島に降ろしてほしい、と。この腕環は私とは関係ない。
三人の囚人を処刑した罪の意識も、マナンが死んだ事も背負っていた。
ゲドは、テナーをかつての恩師オジオンのところに連れて行こうとしていた。自分もかつてこの人のところに置いてもらったことがある。だが何もわかっていなかった。邪なるものを求めてそこを飛び出した。
あんたは邪なるものを逃れ、自由を求めてやって来た。
ゴントへ行けばあんたはきっと、静寂と、人の心の温かさに触れられる。行ってみるかい?
「行きたい」と言って長いため息をつくテナー。

 

幾日か過ぎ、二人は内海にやって来た。そして真っ直ぐハブナー港に向かった。
冬の陽にきらきらと輝く家々。
出迎えの人々がひしめく桟橋。ふいに右手を上げるテナー。そこには銀の腕環。歓声があがる。
ゲドに促されて桟橋に立つテナー。
ゲドの手にしっかりとつかまって、雪の通りをゆっくりと登って行くテナーは、家に帰って来た子供のようであった。

 

 

感想
舞台は、前作でゲドが幼い頃、ゴント島へ襲って来た、あのカルガド帝国。アチュアンの墓所で千年続く大巫女の歴史。

先代の逝去で次の大巫女となったアルハの物語。
様々な儀式、形式的な決まりなどは皇室、王室を連想させてなかなか興味深い。

女たちと一緒に暮らし、世話をする、マナンを代表とする男たちに違和感を持ったが、4作目の「帰還」を読んでナットク。ネタバレを言えば、彼らは宦官。本作ではその言葉は全く使われないが、アルハがペンセに話す内容で”あの半人前の男たち”という表現がある。
けっこうあちこち伏線やらその回収があって、この作者の周到さを感じる。

 

喰らわれし者として、幼い頃から教育を受けて来たアルハだが、それでも彼女自身の個性の発露で、自ら地下の大迷路を極めつくす。

それが結局、腕環を手に入れようとするゲドを助ける事になる。
 
さすが女性作者だけあって、ゲドを捕らえてからのアルハの心の動き、脱出を決心した後の不安と期待など、そのキメ細かさに感動。
特に終盤でゲドに剣を向けた時のテナーの、愛憎半ばする気持ちの動きは印象に残った。

 

腕環が元に戻り、アーキペラゴの平和が回復された。その後、この冒険がどう変容して行くか、期待が高まるが、ある意味裏切られる。それは次のお楽しみ・・・・

 

 

スペシャルドラマ「荒神」NHK BSプレミアム 2/17放送

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先週こちらで紹介していたドラマを鑑賞。

スペシャルドラマ「荒神」

 

原作      宮部 みゆき
脚本      山岡 潤平
演出      松浦 善之助
音楽      羽岡 佳
制作統括   加賀田 透
         櫻井 壮一


キャスト
朱音       内田 有紀
曽谷弾正    平 岳大
榊原宗栄    平岡 祐太
菊池圓秀    柳沢 慎吾
音羽       前田 亜季
小夜       竹野谷 咲
茂左衛門    中本 賢
多江       角替 和枝
おせん      蔵下 穂波
蓑吉        高村 佳偉人

じい         中原 丈雄
明念和尚     品川 徹
佐田義昌     田中 要次
竜崎高持     加藤 雅也
柏原信右衛門 柴 俊夫
源一         大地 康雄


あらすじ

永津野藩の名賀村。養蚕小屋の完成を喜ぶ朱音と村人たち。
そこに浪人風の男が子供を背負って走って来た。子供が怪我をしている。浪人は榊原宗栄と名乗った。人狩りか?と村人の声。

すぐに子供を小屋に入れようとする朱音。その子供が下げていた手拭いには、香山の庄屋の屋号が。香山の者を匿うのは良くないと言うおせん。だが朱音は、全て自分が責めを負うからと、構わず運び込む。
子供には粘液がべっとりと着き、着物を脱がすと横腹に三本の深い爪跡。

首の付け根に記号の様なアザがある朱音。普段は髪に隠されている。

一段落して着替えた宗栄。

なぜ香山の者を匿ってはいけないのか、と朱音に聞く。
関ケ原以降、永津野藩と香山藩はいがみあって来た。永津野藩の筆頭家老、曽谷弾正の厳しい年貢取立てのため、村人が香山に逃げ出す事態となった。それを引き戻すだけでなく、香山の者もさらって強制労働させている。
それについては私にも負い目がある、と朱音。曽谷弾正は私の兄。自分は八年前からここに居る。国は上州。

そこに最近逗留している絵師の菊池圓秀が、子供の傷を見せて欲しいと乗り込んで来た。傷の手当てをしたばかりで、拒否する朱音。

 

永津野藩 津の先城。弾正に人狩りを止めるよう願い出る朱音。

上州の寺ではもっと優しかったのに、と言う朱音に、昔俺を殺そうとした女がいた、と弾正。

弾正の妻、音羽にも弾正の行動を止めさせるよう頼むが、私の言うことなど聞いてくれない、と音羽。そして朱音に、城に戻って欲しいと懇願。そうすれば弾正の機嫌がいい。

香山、二谷村が全滅になったと聞いて視察に行く弾正。

側近の畑中佐平次。畑に付けられた巨大な足跡を見て笑う弾正。

 

名賀村。目を覚ました子供は蓑吉と言った。

ここが永津野と聞いて怯える。
村で何があった?という問いに「山ががんずいとる」。蓑吉の祖父源一が逃がしてくれた。じっちゃは怪物に食われたと泣く蓑吉。
朱音の付き人として来ているじいの話では、がんずいとる、とは飢えて怒りに身を焦がすという意味。絵馬に描かれた怪物の言い伝え。

 

川の中のお堂に集まる武士たち。絵馬がない事に動転。人目に晒すと大きな災いが起こると聞いていた。

 

永津野藩主、竜崎高持の酒席に呼ばれている弾正。息子の高由の代になっても盛り立ててくれ、と頼む一方、香山の件はほどほどにしておけ、とクギを刺す。

蓑吉を介抱する朱音。朱音の歌う子守歌を蓑吉も知っていた。

香山と縁がないのに、と不思議に思う朱音。

 

怪物の件を、国境の番屋へ話しに行くという庄屋について行きたいという朱音。だが険しい道のり。宗栄が同行しようと申し出た。

行程の途中で圓秀の筆入れを見つける。

 

番屋に着いた一行。番屋と言っても砦のように頑丈。そこの代官は、ここがやられる筈がない、怪物などやっつけてやる、と豪語して歓迎の宴会を始めてしまった。

その時、建物に大きな衝撃が来る。窓の外に怪物の巨大な目。

建物が外部から壊され、宗栄は朱音を連れて地階に逃げた。

逃げる途中で牢に入れられている圓秀を見つけて助け出す。

だが怪物の絵を描くと言って階段を上がる圓秀。
宗栄と朱音は番屋から離れるが、逃げきれないと判断して、枯れ井戸に身を隠した。

番屋の事件から一人生き残って帰った家来が、弾正に事の次第を報告。
弾正の説明。怪物は香山が永津野と戦うために作られたもの。

だから竜崎の血の者をぶつければ鎮めることが出来る。
音羽を生け贄として捧げる、と指示する弾正。
畑中が、音羽と娘小夜を逃がす。

 

怪物から逃れた朱音と宗栄は、砦で生き残った圓秀を連れて山の中に入る。洞窟を前にして老人から銃を突き付けられた。それは蓑吉の祖父、源一だった。

怪物に襲われた蓑吉を村で匿っていると話す朱音。
源一が父親から聞いた話。香山の村はいくつも潰され、永津野と戦うために呪いの力を借りようとした。
怪物を作り出す、呪いを扱う瓜生一族が土をこね、トカゲ、ガマの死骸、香山の者たちの生き血も加えてそれを作った。
だが太平の世となり、怪物は無用のものとなったため、それを封印した。その封印が解かれた。
圓秀がそれは自分のせいだと告白。一ケ月前、旅の途中、香山の村で出してはならないという絵馬の話を聞いて、どうしても見たくなり、お堂から持ち出した。そこには怪物が描かれていた。

 

香山藩の柏原信右衛門。絵馬に怪物を描いて百年封じて来たが、封印は解かれた。絵馬を盗んだ者、見た者、全て抹殺せよ。

焚火にあたりながら話す朱音と宗栄。朱音に求められて自分の事を話し始める。
国は江戸。父は貧乏な御家人。自分は次男坊。ある日兄が下男を手討ちにした。切って当然と思っていた。そんな兄を責めなかった。せめて下男の遺髪を持って出羽の国を訪ね、その時にあの子を見つけた。
私も兄を止められなかった。貴女こそ自分を責めることはない。

 

名賀村に戻った一行(朱音、宗栄、圓秀、源一)。蓑吉と源一の再会。庄屋の茂左衛門の死を嘆く妻の多江。
そこに弾正から逃れて来た音羽と小夜が来る。
源一が早くここを出ろ!と叫ぶが、村人、朱音、そして蓑吉までも残って戦うと言うのに根負け。

「このバカタレ共、おいぼれの命くれてやる」。

 

圓秀は、怪物の原因になった絵馬を返しに行くと言い、走り出した。やむなく追いかける宗栄。

川のお堂に着いた二人のところへ、佐田義昌ら香山の武士数人が襲って来た。我々を守るもののために殺された、封印を解いたせいだ、と怒る佐田。圓秀を斬ろうとして揉み合ううちに、佐田が誤って絵馬を割ってしまう。もうおしまいだ、と取り乱す佐田。

 

朱音と音羽との話。お蚕作りがやっと実ろうとしている。ここで放り出せない。領内が豊かになるのは兄の願いでもある筈。
音羽は言う。あなたはあの方の恐ろしさを知らない。
弾正が変わったのは八年前。朱音様が来てから、私を見る目が変わった。目の底に憎しみ。

優しいまなざしは朱音様に向けられるようになった。
なぜ永津野に来たのですか。

 

そこへ怪物が林から現れた。村人が作った火の壁、柵など何の役にも立たない。にげまどう村人。

朱音らも逃げるが、小夜が見つからない。怪物が迫る中、源一が鉄砲で怪物の腹を撃ち、屋根に上った武士が怪物の目を矢で射抜いた。
だが腹の傷はすぐ回復し、目は外れた後に次の目が現れた。
怪物が迫る中、ようやく小夜を見つけて逃げ出す朱音と音羽だが、追いかけて来る怪物。

万事休す、というところで、じいが怪物の前に進み出た。そして着物を脱ぐと、その腹に丸に二の字の紋が。

それは瓜生家の家紋だった。
「つちみかど様ぁー、お鎮まりくだされー!」とじいが叫ぶと、少しづつ後ずさりする怪物。そして方向を変えて戻って行った。

じいは、はるか昔に香山から放たれた者だった。代々に亘り永津野藩を監視していた。
そこへ弾正が来て皆を捕らえる。
じいが、朱音様なら怪物を鎮めることが出来ると言った。
弾正が来て、絵馬と怪物は関係ないと言った。

自分が人狩りで香山の血を流させたから。
なぜ奴がここへ来たか。それは音羽がいるからだ。

鎮めるためには音羽の血が要る。
愛する人なのに?と言う朱音に「愛する人、誰のことか?出世するために竜崎を利用した。心から愛しているのは・・・・

これは宿命。香山を根絶やしにするのだ。それは俺が香山だから。この傷は香山への恨み」と眼帯を外す。
六歳の頃、香山の者に殺されかけ、片目になった。父は殺され、母と共に山奥の寺に逃げた。
上州の寺でお前と二人きりで育った。復讐のためここに来た。

首のアザは瓜生一族の証し。

お前だけが俺の生きて行く喜び。
みんな偽りだと言って、昔の兄さんに戻って、と懇願する朱音。
だが弾正は、音羽を食わせる、と言って妙高寺へ連れて行った。

 

縛られている朱音、宗栄、源一、圓秀、蓑吉。そこへ捕われていたと思われていた小夜が短刀を持って来た。

そして朱音の縄を切る。
これ以上の犠牲を出したくない。私になら怪物を鎮めることが出来る。
一人では行かせない、と皆が言う。

小夜を蓑吉に託して妙高寺に向かう一行。

 

妙高寺に着き、母の記憶を思い出す朱音。子守歌の「鬼をぺろりと平らげた・・・・」全てを思い出した朱音は、寺の明念和尚の前に出る。
久しぶりだ、と話す明念。
二人は瓜生の末裔。首筋のアザが同族の印。怪物を追い払える者。
誰かが命を吹き込んだ。元々呪いで生まれた者。鎮めるのも呪い。
明念が法衣を脱いで背中を見せる。絵と呪文が混在した紋様。これを二人のいずれかに写し、食われることで鎮めることが出来る。だが写す時に呪文を読むと、書いた者が呪いにやられる。

 

圓秀に、この紋様を絵として描いてほしいと頼む朱音。
あの怪物は私の子供。二十年前に兄が去った時、どうしても行くなら、と腹を刺した。必ず迎えに来ると言った兄。そして私たちはあやまちを犯した。その時に怪物に命を吹き込んだ。

二度と会うまいと心に誓ったが、八年前兄がここへ呼び寄せた。断ることが出来たのに。
私と兄の子。私が鎮めなくてはならない。私の宿命。
紋様の写しを引き受ける圓秀。
宗栄が、そんな事はダメだと止める。貴女には死んで欲しくない。
私を愛してくださるなら、必ず殺してください。全てを終わらせて欲しい、あなたに。

 

寺に向かって来る怪物。生け贄のために、音羽が引き出される。羽織を被って顔は見えない。
とうとう本堂の前に来た怪物。羽織を取ると、そこには朱音の姿が。

驚く弾正は、怪物と朱音の間に割って入る。しばし見つめ合う二人。

そして弾正は怪物に向かって行き、一飲みにされた。

倒れていた朱音はゆっくりと立ち上がり、怪物に向かって歩き出す。
つちみかど様・・・ との言葉を残し、朱音が食われる。

もがき苦しむ怪物。体表に呪文が浮かび上がってゾロゾロと動く。
怪物の黒い皮膚が剥がれて白い体が現れる。朱音の心が投影されたもの。

怪物が朱音の心を持っているうちに倒さねば、と宗栄。

だが躊躇しているうちに、黒い皮膚が戻り始めた。
そこに源一が怪物の眉間へ鉄砲を撃ち込む。

再び黒い皮膚が剥がれて、動きを止める怪物。
そして怪物の目から涙が。

「今だ、介錯を」と圓秀。
意を決して、木に駆け上がって怪物の頭に剣を刺す宗栄。
息絶える怪物。

 

それから一年後。
村には平和が戻り、音羽も絹糸作りに精を出す。

圓秀は襖に怪物の絵を描いた。
弾正と朱音の墓に手を合わせる宗栄、音羽、小夜、蓑吉。
一陣の風が吹いて、小夜の首元が露わになる。そこに記号のアザが。

 


感想
五年ほど前に、朝日新聞で連載されていた小説。単行本になって、そこそこ評判を取ったためのドラマ化。

連載中から、登場人物の多さにはかなり苦しんだが、ドラマ化の脚本ではうまくコンパクトにまとめたと感心している。

 

原作と一番異なるのは、香山藩で中盤までの中心人物だった、小日向直弥の関連を全て切った事。香山藩で起きた、後継ぎの若君が病気で亡くなった件に絡む一連の出来事。
この話は、絵馬の事件と関連するが、結局怪物の話とは関係がないため、完全にない事にして、その関連の登場人物も出さない。そして絵馬は怪物と関連付けられる構成となった。
元々小説を読んでいて、結局絵馬が怪物と無関係だと判り、「なんや、それ」と失望した記憶があるので、この脚本には賛同出来る。

 

小説では弾正と朱音は双子の設定であり、ドラマでは三つ違い。まあこれは瓜生の、呪術者の能力を有する者が、ごくまれにしか出ないという小説の設定だと双子が必然だが、それに触れていないため、兄妹の関係でも、同様に能力を示す首筋のアザがそれぞれにある、としている。

 

怪物は、小説の描写とはかなり異なる。小説では、オオサンショウウオのイメージで、目がない事を強調していたが、ドラマでは基本形がワニをかなり太らせたような印象。目はしっかりとあり、逆に体中、目だらけといった感じ。これは多分、数多くの生け贄を使って作られたという事の象徴だろう。
吠える時の動作が、巨大な割りにシャープなのがちょっと気になったが、シン・ゴジラでもサイズに対してシャープ過ぎる動きだったので、CG特有のものかも知れない。
予告ではてっきりシン・ゴジラの第一形態をパクったのか?と思ったが、形状自体は相当異なる。しかし本当に良く出来たCG。実物感がハンパない。

 

最後に朱音が食われるシーンも多少アレンジがあった。原作では、まず朱音が食われて、人間の形態に近づいた怪物。それを支配しようとする弾正を、怪物が一飲みにして、最終的に源一、宗栄らに倒され、灰となって散った。
このアレンジも、さほど違和感はないが、朱音の心となった怪物が弾正を食らう、というところに原作者が意味を持たせていたかも知れない。

エンディングのヒネリ(小夜にも呪術者の能力が受け継がれている)は原作にはないが、宮部みゆきテイストと言えなくもない。

 

キャストについて
朱音役の内田有紀は、なかなかいい配役だと思う。優しさと芯の強さを併せ持つ、絶妙なバランス。
弾正役の平岳大も文句なし。あの冷酷さ。最近父親にホント良く似て来ている。
圓秀役の柳沢慎吾は、ちょっと外した感じ。もう少し美男子にしたかった。
おせん役の蔵下穂波。時代劇の脇役で良く見るが、いかんせん、この時の年齢設定が十四歳。

発言もけっこう朱音に逆らったりして、ちょっとキャラが違う。

大地康雄の源じいは、一番ハマっていたかも知れない。

アパッチ賢の庄屋様。久しぶりの出演だが、早々に死んでしまった(原作では生き残る・・・)

加藤雅也、柴俊夫の殿さまも、久しぶりに見て懐かしかった。

 

しかし、そもそもこの小説の挿絵が、漫画作家の、こうの史代なので、バイアスが掛かってキャスティングの時の妨げになったことだろう。

いずれにしても、一年以上連載された長編小説を、キチンとまとめ上げた脚本家、演出家はよく頑張ったと思う(娘がTV制作会社のプロデューサーをやっているので、この辺が気になる)。

 

 


名古屋行き最終列車 2018  第六話(前編) 2/20放送

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番組紹介    第一話   第二話   第三話  第四話  第五話

 

第六話 野間口徹 今野浩喜 関太(タイムマシーン3号) 

      中村静香 他

 

名駅前の高級クリニックで人間ドックを受診する男(野間口徹)。

ホテル並みの待遇。抽選で当たった。

その上ミッドランドスクエアでの映画無料招待券も当たり、絶好調。
だがその映画の終了が手違いで遅れ、終電に乗るために地下街を走る。同じような人が集団を作って走る。
だが名鉄の入り口でシャッターは無情に閉まる。

そこにスマホから電話。

明日から出なくていい?・・・・あいつがバラしたのか。
そこへチケット配りが来る。BARの割引券。

 

どこかに泊まるしかないので、とりあえずその BAR「F」に向かう男。
バーテン(今野浩喜)にハイボールを注文。駅でチケットもらってここに来た、と男。映画館のミスで電車に乗り遅れ。映画の券は大名古屋電力の招待。聞いてみると、そこに集まっている客みんなが同じ条件で集まっていた。

 

 

バーテンの提案。百物語をもじって、ついてない話をみんなに話してもらって、一番の人の飲み代をタダにする。
①清楽ラーメン屋のバイト(関太(タイムマシーン3号))
スマホをエレベーターの隙間に落とした。そこは五階。スマホ大破で機種変→70点。
②農家の主婦(和泉ちぬ)
家の近くのレンコン畑。置いてあったスマホにTEL。

バイブレーションにしていたから、動いて泥に落ちて沈没。データのバックアップなし→75点。
③錦のホステス(中村静香)
仲の悪いホステスのスマホ盗んで、悪口書いて全アドレスに一斉メール出したら、その女は電子工学部。PCからデータ吸われてスッピン始め彼氏とのエッチ写真も公開された→90点。
④会社の広報担当(平塚直隆)
社長が出演するCM撮り。小麦粉が飛び散って掃除機で吸ったら、吸ってはいけない社長の頭・・・・ヅラだった。

秘密公開により、知らない倉庫へ移動→95点。
⑤美容整形医院の事務長(野間口徹)
デブの女に、たまたま置き忘れた医院でのビフォーアフターの情報を取られた。整形(脂肪吸引)を要求され、自費で対応していたが、こらえ性のない女で、4ケ月に一回来る。頭に来て、次からは自費だと言ったら逆ギレして院長にバラされた。病院はクビ。使った金は300万。家のローン30年残ってる→100点。

 

音楽でも掛けましょう、とバーテン。クラシックが流れる。
⑤の男。フルート聞くと、学校の吹奏部にいた男を思い出す。

フルートが下手でいじわるした。隠してもすぐ見つける。吹き口にタバスコ。南田北吉と言った。
②の女。元小学校教師。教え子に南田北吉いた。
③のホステス。アフターで一緒だった。イヤな奴。

ここに集まったのは、南田北吉に集められた?  復讐か?

 

追加で身に覚えのある話がゾロゾロ。無言電話かけた。生ゴミを玄関に出した。タバスコ以外にもいろんな嫌がらせをしたら転校した。
更年期のヒステリーで、学校で良く叱った。
アフターの時、母の入院費が・・・と言ったら金くれた。それ以来どんな理由でも、ことごとく金をくれた。最後は書置きを書いて姿をくらました。

南田は何をしようとしている? 返り討ちにしてやる。でも銃持ってたらどうしよう。
手榴弾で武装、ナイフ、なぎなた・・・・・

「マスター、その人知ってる?」と聞くと、バーテンが

「ここのオーナーです・・・」
そして男が現れる (続く)


コメント
まさか、まさかの前、後編。こんなローカル番組のくせにナマイキな!!  と少しムカっとした・・・
同じシチュエーションで集められた男女5人。

南田北吉の目的は何か? さあ、どうなる?
感想は来週・・・・・

 

 

猫の日にちなんで
猫年の歌を・・・・・

 

 

 

 

あのスターにもう一度逢いたい 「横山やすし・井沢八郎・田宮二郎」 2/20放送

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まず、2/21に亡くなった大杉 漣さんのご冥福をお祈りします。
本Blogで過去にレビューした出演作品 名古屋行き最終列車 2017

 

あのスターにもう一度逢いたい  BS11

第95回 横山やすし・井沢八郎・田宮二郎

            家族が語る父親・衝撃の実像

番組紹介 

 

新聞で、たまたま「田宮二郎 自殺の裏側」とあったので視聴。

 

 

1)横山やすし 本名:木村雄二
昭和41年コンビ結成(やすし・きよし)
坂田利男コメント
豪快さに驚く。モーターボートで道頓堀通って通勤した(もちろん違法)。出番遅れの言い訳(エンジン故障)。

妻啓子。何で結婚したのか、不思議。
妻のマッサージ(頭)が楽しみ。やきもちやき。
宮川 大助・花子コメント
可愛がってもらった。会いたくないB型→織田信長とやすし。

絡まれないための花子の秘策→先に酔う。オデコ叩いて叱られなかったのは花子だけ。やすしのカセットを毎日聞いて練習した。
娘:木村ひかり
思い出の場所は飛行場。本人所有のセスナがあった。

うどんを食べに、四国へ行った事もあった。
家ではおとなしかった(TVを観ていた)。筆まめ。ホンネは「もうこのキャラしんどい」(妻に告白)。脱ぐに脱げない→しんどかった。
H8年1月21日。アルコール性肝硬変で死亡。51歳。

その時ひかり15歳。自分の娘(やすしの孫)が、会ったこのもないのに、写真撮る時のポーズで指1本立てる(やすしと同じ)。

 

2)伊沢八郎 本名:工藤金一
昭和38年デビュー。
娘:工藤夕貴コメント
お腹が痛いと言った時、ステージがあると言って無理をした→虫垂炎だった。腹膜炎を起こしかけていた。
子煩悩。夕貴が風邪で鼻が詰まった時、母親でもやらなかったのに、父が鼻を吸って通してくれた。だが酒を飲むと怖い。男傘がヒット。
H17年に食道ガン。体調不良を訴えた。
だが末期になっても、歌った時には目に命が宿った。キーが変わらないのが自慢だった。
H19年1月17日に死亡。69歳。奇しくも夕貴の誕生日。
担当医のことば。普通だったらもっと長生き出来たが、歌えないと思った事が命を縮めた。
父は大きなステージでないとダメだった。

最後に歌わせてあげたかった。
工藤夕貴の唄う「北海の満月」

 

3)田宮二郎 本名:柴田吾郎
1956年、本名でデビュー。その後1959年に田宮二郎と改名。
タイムショックの司会者。「白い巨塔」で活躍。
息子:柴田光太郎コメント
家族に縁がなかった人。
五社協定で映画界を追放され、生活のためにキャバレー回りもして家族を養った。なりふり構わず仕事をしてTVの世界に入って行った。
家では優しい父親。直筆の手紙を良く出してくれた(出先から)。
自作映画の失敗、裏切り等に遭い、多額の借金を負った。ある仕事は何でも受けたが、白い巨塔では命を削った。
妻幸子はその仕事には反対。ダメ、ダメと言っても「やりたい」。
タイムショックを10年やって辞めた時、そううつ病だった(自ら降板)。
白い巨塔でも長ゼリフ入らないで苦労した。
光太郎が風呂の湯を入れて待っているが、いつまでも帰って来ず、その度に湯を足したが、結局寝てしまった。

→翌日「お風呂気持ちよかった」のメモ。(入ってないのに)。

 

S53年12月28日、猟銃を胸に当てて自殺。享年43歳。
多額の負債等、当時様々な理由が言われたが、ちょっと違う。
あの日事故が起きていた。妻幸子の母親が腸ねん転で病院に運ばれた。父はそれに耐えられなかった。
遺書には「お母さんが倒れました。もう生きて行けません」。

死のうと思っていた母。祭壇の前から動かない(日が暮れても)。そして「お正月だから、おしるこ作ろうか」。その言葉で、母は生きると決めたと知った。当時光太郎12歳。弟と「おしるこ作ろう!」と叫んだ。


感想

工藤夕貴が井沢八郎の娘だとは知らなかった。

井沢八郎の北海の満月。ホント久しぶりに聴いた。

 

田宮二郎が自殺した年は、自分が慢性腎炎と言われて3月から入院して、そのまま年越しをする見込みだった年末。先輩からの差し入れの小型TVを、ふとんで隠して「白い巨塔」を毎週観ていた。
自殺の後「白い巨塔」の放送はあと2回を残していたが、かなりの視聴率を取った(30%超え?)。

今回の話は、ウィキペディア情報でも書かれておらず、新事実と言える。

義母が倒れたことに、それほどの衝撃を受けた背景には、生後すぐ父を亡くし、母親も戦後すぐに亡くして、親族に育てられた彼の人生が関わっていると思われるが、やはり彼自身を蝕んでいた、躁鬱病によるもののきっかけがそれだったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

新聞小説 「国宝」 (16)  吉田 修一

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新聞小説 「国宝」(16)  1/22(376)~2/16(400)

作:吉田 修一  画:束 芋

                   10  11  12  13  14  15

 

第十六章 巨星墜つ  1~25
小野川万菊の通夜に駆け付ける喜久雄と俊介。
万菊は、山谷のドヤ街で、死亡後通報を受けて発見された。

万菊が公の場に出た最後は、三年前の俊介襲名披露。その後風邪をこじらせて三ヶ月あまりの長期療養をし、その後自宅に戻ってからは、人を寄せ付けず、付き人や身内も拒絶。
そのうちに万菊が住むマンションでの、彼によるゴミ問題が起こった。管理人が見に行くと、万菊がゴミの中で暮していた。

 

三友で何とか部屋を清掃し、万菊は入院させた。認知症の兆候もなく、九十歳にしては健康状態も良かったが、万菊は身ひとつで病院から出奔。そのまま亡くなるまで消息が判らなかった。
住んでいた場所は、ドヤ街の一泊二千円ほどの旅館。同宿の日雇い労働者の間では、元おかまバーをやっていた様に話していたという。
戦前から戦後の歌舞伎界で活躍した小野川万菊。各紙は九十三歳の大往生、と記した。

 

阿古屋の芝居稽古の場で、喜久雄が岩左衛門役の役者に小言を言う。伊藤京之助のとりなしで何とか収まるが、万菊の葬儀関係で寝不足もあって機嫌が悪い、と三友社員。

 


阿古屋の稽古を終えた喜久雄に、娘の綾乃からの電話。会って欲しい人がいるという。老舗の出版社で毎日忙しくしている綾乃。

三日後、指定の日本橋にあるすき焼き屋に出向く喜久雄。綾乃が連れて来たのは、相撲取りの大関、大雷(おおいかずち)。三年前、喜久雄が荒風に御馳走した時に、彼の息子が連れて来た中に大雷が居たのを思い出す。立合いが美しいと喜久雄も褒めていた。
食事も終わりかけた頃、綾乃がお腹に子供が居るという。大きな体を縮めて謝る大雷。
そして披露宴の時だけ、三代目花井半二郎の娘として嫁に行かせて欲しい、と頼む綾乃。

気まずいまま帰宅した喜久雄は、この話を彰子にした。まだ四十六で「おじいちゃんだ」と茶化す彰子。
彰子自身、花井半二郎の妻として、跡取りに対するプレッシャーを強く受けていた。
だが披露宴で出れば、自分の隣に立つのは市駒。
「いいのか?」という喜久雄に、綾乃ちゃんが初めて親を頼ったのだから、恥をかかせてはいけない、と彰子。

 

この月に「阿古屋」の舞台が開き、初日から大入り。観客は、喜久雄の美しさと凄みに圧倒された。
高評価を得て、また娘が天下の大関と結婚する喜びもあって、喜久雄は連日の深酒。

一方、「女蜘」を当てた俊介に、その女蜘をTVの時代劇連続ドラマでやるというオファーが来た。
若手の脚本家を充て、斬新な演出。慣れないながらもそれをこなして行く俊介。
ドラマは、初めこそ低調だったのが、回を追うごとに視聴率も上がり、俊介自身も時代の顔として注目される存在となった。
その後続編のオファーを受け、本業の歌舞伎「女蜘」も、再演が全国規模で計画された。
さすがに俊介の体も悲鳴を上げる。

 

九州熊本での「女蜘」公演での事故。女蜘に変化した俊介が花道へ駆け出す時に、足がもつれてそのまま客席へ転げ落ちた。
客に怪我はなく、俊介を引き上げて、何とか幕までの間を繋いだが、俊介の、尋常でない痛がりよう。
幕が下り、皆が駆け付けるが、立てない俊介。痛みのある右足の血色が甚だ悪い。

 


救急車で到着した病院の医師の診立てでは、右足先の壊死。原因はまだ特定出来ないが、糖尿病などで起こり易いという。早く東京に戻って、ベテランの医者に診てもらおうと考える俊介。

昼の部の休憩時間に、春江からかかって来た電話を受ける喜久雄。俊介が右足を切断しなくてはならない、と話している様だが要領を得ない。昼の舞台を勤めてから、喜久雄が築地の病院に入る。
俊介は、こんな時に綾乃の結婚の話など始める。
「おまえ、足を・・・・・」と喜久雄が言うと、足に掛けられた布団を捲った俊介。「・・・膝下から切断らしいわ」
この段階だと、本来ならもっとどぎつい変色になるらしいが、特殊なケースで色が出ず、その上白粉で隠れて、今まで気付けなかった。
一本足でもやれる役があるか、と聞かれて初めて事態を理解した喜久雄。「あかん、あかんて・・・・」
医師から言われ、既に覚悟を決めている俊介。

だが手術、リハビリで時間がかかる事を心配していた。
「一豊のことやろ?」喜久雄の気持ちは伝わっていた。
「俺がしっかりと預かる」
俊介は、それからすぐ切断手術を受けた。

幻肢痛という、失ったはずの部分の痛みに苦しむ。

 

楽屋見舞いに来た遊び仲間と、賑やかに笑い合う一豊。父親がわりとして、同じ楽屋に出入りさせている。
仲間たちが帰って、素直に「うるさくしてすみません」と謝る一豊は、もう二十歳。今度「娘道成寺」をやるという。喜久雄らがそんな歳の時、地方巡業で演じた「娘道成寺」が劇評家、藤川の目に留まったのがきっかけ。だがそんな大事な事も一豊は父親から聞いていなかった。
一豊が話を逸らして、綾乃の結婚式には親父も出たい、と伝えた。それを目標にリハビリをしているという。
腹が目立つ前に、という事で婚礼を早めて計画している。元国会議員の媒酌人を始め、豪華な招待客。
綾乃は元々派手な事を嫌う。この大規模な結婚式は、全て夫となる大関大雷の世間体のため。

 

披露宴は素晴らしいものになった。何より感動的だったのが、親方からの祝辞に涙を溢れさせる大雷。綾乃の幸せを確信する喜久雄。
更に嬉しい事。俊介が、手術後初めて、義足姿で公式の場に出席した。松葉づえもつかず、人の支えもなく歩く姿に、彼の復活をイメージした出席者。
披露宴から数ケ月後に、綾乃が女児を出産。まさにその日、大雷の横綱昇進が決定。
舞台がはねてから病院に駆け付けた喜久雄は、赤ん坊を抱いて涙ぐむ。孫の名は「喜重(きえ)」と綾乃らがつけた。

俊介の復帰舞台は、春日八郎の「お富さん」の元になる「与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)」。

お富と、切られ与三とのかけあい。
花井白虎の復帰舞台とあって、客席は満員。俊介も舞台を勤めあげ、「奇跡の復活」と讃えられた。

 


出来を聞く俊介に、世辞を言っても詮ない、とばかりに「無理に隠そうとするな」、とアドバイスする喜久雄。
ふと弱音を吐く俊介に、白髪の話などして務めて明るく振る舞う喜久雄。

 

深夜、彰子の携帯に春江から電話がかかる。ベッドから起きてそれを受け取る喜久雄。俊介が暴れているという。
タクシーで俊介の自宅へ入った喜久雄。部屋には割れた皿やグラスが散乱。座敷では俊介が肩で息をしている。
俊介の話では、今日、病院の検査で、左足も壊死のため切らなくてはならないという。言葉が見つからない喜久雄。
以前彰子が調べた情報では、糖尿病性腎症で透析している患者が足を切断すると、五年生存率は二割を切る。

だが俊介の場合、糖尿病の家系ではあるものの、透析まではしておらず、楽観していた。
割れたものの始末をする声。それを聞かせたくなくて襖を閉める喜久雄だったが、却って言葉が詰まる。
長い沈黙の後、口を開いたのは俊介。
「喜久ちゃん、もうあかん・・・。悔しいけど、ここまでや」
喜久雄に浮かんで来たのは、ほぼ盲目となった時の先代白虎。喜久雄が両手を取って楽屋から舞台まで連れ立って歩いた。あれが役者の意地。本当は息子に見せたかった。
「俊ぼん、旦那さんはな、最後の最後まで舞台に立ってたよ」


感想
俊介の復活に手を貸してくれた、小野川万菊の死。
喜久雄の側は綾乃の結婚、出産とめでたい事づくめだが、俊介の側には悲惨な試練が重なる。
両足を無くして、果たして歌舞伎役者を続けることが出来るのか。

それにしても、恐ろしいのは糖尿病。毛細血管が絡む場所に、ことごとくダメージを与える。要するに糖分が毛細血管を詰まらせる。
腎臓、網膜、指の末端、脳・・・・
自分も、通常の半分程度の腎機能だが、糖尿病なんかで詰まらせない様、食事管理はキチンとして行きたい。

 

しかし、ドラマ構成で若干疑問点が。
俊介が女蜘の演目を始めたのは襲名前。それから三年以上経っても、まだその演目の人気が維持され、それからの延長でTV番組化、とは考え難い。どうも時間経過にバラつきがある様に感じる。

 

 

 

 

名古屋行き最終列車 2018  第七話(六話の後編) 2/27放送

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第七話 野間口徹 今野浩喜 関太(タイムマシーン3号) 

      中村静香 他

            前編はこちら

 

バーテン(今野浩喜)の声かけで姿を現したヒゲ面の男、南田北吉(米山伸伍)。
集められた五人は、てんでバラバラに、許してとか、復讐なんてヤメロとわめく。

 


五人を前にして、復讐はもう始まっていると言う南田。毒を盛ったという。突き出しで出したシチュー。南米産のキノコ「笑い天国だけど地獄ダケ」。放っておくと笑い死にする。
解毒剤は日本にはない。私の言う通りにしたら考えてやる。
謝罪しよう、と言い出す元事務長(野間口徹)が、まずフルートにタバスコをかけた事を謝罪。続いて元教師(和泉ちぬ)、ラーメン屋(関太(タイムマシーン3号))、ホステス(中村静香)、と続く。
だが会社員(平塚直隆)だけが、復讐されて死ぬのもいいかもな、と謝罪を拒否。
これじゃあ助けてあげられない、とバーテン。

そして決定権は私にある、と言い出した。
南田北吉は、実は東野西男。そしてホントは、この私が東野西男、とバーテンが言う。ヒゲの男がこの店のマスターだった。
昔いじめた男の名前も顔も覚えていなかった事に、東野西男は改めて激怒。

 

みんなの、心からの称賛を聞きたいと言って、フルートを持ち出し演奏を始める東野。「あれから十数年、上達したので聴いてください」
その内容は、前にも増してひどいもの。
だが全員、ウソをついてごまかす。
気持ちが晴れた東野西男は、解毒剤を与える、と言って瓶を取り出す。だがここにあるのは四人分。笑い死ぬ人を一人決めて下さい、と言って隣りの部屋に消える。

 

五人の間で、誰が犠牲になるかの醜い争い。死にたいと言っていた会社員が第一の標的。だが、引き止めたのは君らだろう、と反論。
金銭的な犠牲を与えたのが一番大きいのはホステス、と元教師。
生ゴミ置くのはひどい、とラーメン屋に話が飛んだ時「あれを毎日聞かされる身になってくださいよ」との反論に、皆でナットク。
それをカーテンの裏で聞いていた東野西男は、お前たちには解毒剤をやらない、と言ってそれを全部飲んでしまった。

そこでマスターが「今の何色?」と聞く。言ったよね、赤が解毒剤、青が毒。東野が飲んだのは青。
笑いながら救急車で運ばれる東野。

 

未明の町を歩く五人。ただで映画が観られて、タダで酒が飲めたから、まあいいか。
元事務長にメールが届く。院長から「クビは撤回する」。
名鉄電車入り口のシャッターが開き、みんなが吸い込まれて行く。


感想
前・後編に分けて、登場人物も多いが、全く最低のドラマ。

時間のムダだった。
バーテン役の、今野浩喜。見ていてホント腹が立つ、ムカつく嫌われキャラ。逆に言えばキャストとしては成功、という事かな?

目的が、単純に復讐だけというヒネリのなさと、オダてられれば撤回もアリ、というこれまた芸のない展開。
また、ここでは書かなかったが、復讐としてオシッコかけてもいい、などという謝罪の話も出て来た。
ホントに、こんなに下らない脚本書いて、恥ずかしくないのか。

 

大杉 漣さんの出演する回も今後あるから、観るけど、さ・・・・

全く、モウ。

 

グレイテスト・ショーマン  2018年

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デブヤマさんが高評価しているので、ちょこっと視聴。

良かった~(そだねー)。

 

監督 マイケル・グレイシー
脚本 ジェニー・ビックス、ビル・コンドン
音楽 ジョン・デブニー、
     ベンジ・パセック、ジャスティン・ポール

 

 

キャスト
P・T・バーナム       - ヒュー・ジャックマン
フィリップ・カーライル   - ザック・エフロン
チャリティ・バーナム   - ミシェル・ウィリアムズ
ジェニー・リンド       - レベッカ・ファーガソン
アン・ウィーラー       - ゼンデイヤ(空中ブランコの女性)
レディ・ルッツ         - キアラ・セトル(髭女)
ゼネラル・トム・サム    - サム・ハンフリー(小人男)
W・D・ウィーラー        - ヤーヤ・アブドゥル(アンの相方)
キャロライン・バーナム  - オースティン・ジョンソン(姉)
ヘレン・バーナム      - キャメロン・シェリー(妹)
ジェームズ・G・ベネット  - ポール・スパークス(批評家)
コンスタンティン王子   - シャノン・ホルツァプフェル(タトゥー男)
チャン              - ユーサク・コモリ(結合双生児:兄)
エン                - ダニアル・ソン(結合双生児:弟)   
フランク・レンティーニ   - ジョナサン・レダヴィド(三本足男)
ヴィクトリア女王      - ゲイル・ランキン


あらすじ
仕立屋の父に付いて仕事をするバーナム。得意先で、主人に仮縫いをしている時に、そこの娘チャリティを笑わせた事で、主人にビンタを張られるバーナム。
その後も仕事の折りに顔を見るうちに、惹かれ合う二人。

チャリティが、寄宿舎のある女学校に入ってからは、文通をしてその繋がりは続いた。
そのうちに父親が死に、バーナムは孤児に。パンを盗んで殴られたりする日々の中、彼にリンゴを恵んでくれる少女がいた。

顔に傷害があった。

 

大人になったチャリティは、反対する両親と別れ、バーナムとの生活を始める。

 


貧しいながらも娘二人を作りつつましく暮らしていたが、バーナムの勤める貿易会社の船が台風で沈没し、会社は倒産。
銀行に金を借りに行くバーナムは、そこで小人のような大人をチラりと見る。
銀行に借金を申し込むバーナム。「担保は?」と聞かれても自信満々。
一万ドル借りられたと聞いて驚くチャリティ。担保は?と聞くと船の積み荷の証明書だと言う(沈没しているが、どこかにはある)。
その金で大きな建物を買い「バーナムのアメリカ博物館」を開く。
一家でチラシを配るが、ほとんど客は入らない。

 

ベッドで娘を寝かし付ける時、姉のキャロラインが「博物館のみんなは死んでいる。生きているものがいい」。
街のユニークな人たちを集め、見世物興行を思い立つバーナム。手始めは銀行で会った小人男。
そして歌がうまいという髭女。

 

 

興業は成功を収め、バーナムは金持ちになる。
だが街の者たちからは低俗だと排斥される。

批評家もさんざんに酷評。
そんな中で、若い劇作家として人気の出始めたフィリップ・カーライルを、協力者として勧誘する。今の生活で十分、リスクを負う気はないと断るフィリップを、辛抱強く説得。
とうとう利益の10%を支払う条件で、パートナーに取り込む。

 

 

フィリップの持つ上流階級へのコネで、劇団を英国ヴィクトリア女王に謁見させるチャンスを掴んだバーナム。

ユーモアも理解され、謁見は大成功。
女王主催のパーティに招待されるバーナムとフィリップ。女王に挨拶する女性が誰かと聞くと、欧州で有名な歌手のジェニー・リンドだ、とフィリップ。
フィリップの仲介でジェニーに挨拶するバーナムは、アメリカでの興業を持ちかける。
バーナムに興味を持つジェニー。彼女も、自分が婚外子だと告白。
パーティ会場に入ろうとするルッツらを押しとどめ、ドアを閉めるバーナム。

 

アメリカでの、ジェニーの公演は大成功を収める。一方フィリップは空中ブランコの踊り子アンに心を寄せる。

 

 

ジェニーの歌を聞きながら指を絡ませる二人。だが客席からの老夫婦の視線を感じてその指を離すフィリップ。失望して去るアン。

それを起点に、バーナムは彼女をメインにした、全米を廻るコンサートツアーに注力して行く。
興業面でのリスクを危惧するチャリティが忠告するが、構わずジェニーと馬車に乗るバーナム。

 

フィリップがサーカスを面倒見る形になるが、バーナム不在で次第に人気は落ちて行く。

順調にコンサートツアーを消化する中、バーナムはツアーを彼女に任せて手を引こうとしていた。バーナムに対し、異性としての愛情を感じていたジェニーは、それに失望。
その日のコンサートのラストで、バーナムに情熱的なキスをしてから別れを告げた。

 

高級な劇場にアンを誘うフィリップ。だがそこでたまたま以前会った老夫婦、フィリップの両親に再会。フィリップがバーナムと一緒に働いている事さえ許し難い。その上メイドと付き合っているのか、と罵る。たまらず逃げ出すアン。
父親と決別し、アンを追うフィリップ。

そしてロープを介しての愛の告白。

 

バーナムの劇場で、街の者と劇団員が揉めていた。街の者の一人が火をつける。
街に戻ったバーナムは、チャリティ、娘らと再会。だがそこへ劇場が火事との知らせを受ける。
燃え盛る火を前に、アンがまだ中に居ると聞いたフィリップが火の中へ飛び込む。だがアンは無事に助けられていた。
その後到着したバーナムは、それを聞いて自分も飛び込む。

直後に上階が崩れる。
火の中から、フィリップを抱いたバーナムが飛び出した。

煙を吸っているが、死んではいない。
救急搬送された病院で付き添うアン。

 

焼け落ちた建物の前で座り込むバーナム。そこに訪れる批評家のベネット。新聞記事を見せて、ジェニーとのキスがスキャンダルになっている事と、コンサートツアー中止を告げる。
家に戻ると、チャリティが鞄一つで出るところだった。

実家に帰るという。
どうして?と聞くと「この家は銀行に差し押さえられたのよ」。

 

バーで飲んだくれるバーナム。劇団のみんなが心配して集まる。バーナムは単に金儲けのためだけに集めたかも知れないが、私たちは初めて家族が出来た、と話すルッツ。
励ましの言葉に、次第に力を取り戻すバーナム。
フィリップも危機を乗り越えた。

 

焼け跡に集まるみんな。人は残ったが、再建するにも金がない。文無しのバーナムに対して、何が起こるか判らないと慎重だったフィリップは、堅実に貯金を溜めていた。その金を資金にしてくれるという。

ただし今後はパートナーとして利益は五分五分。

再建するにしても、この場所は何でも高すぎる。もっと安い場所に仮設のテントを建てればずっと安く興業出来る。

 

妻の実家へ戻り、チャリティに深い謝罪をするバーナム。

それを受け入れるチャリティ。

大盛況となったサーカスショー。

フィリップに、その主役を譲るバーナム。

 

 


感想
「ラ・ラ・ランド」でミュージカルへのハードルが低くなった事と、そのラ・ラ・ランドで曲を担当した二人が関わっているという事で、期待度も高かった。

会社が倒産して、これからどうするという時に、紙きれの担保使って一万ドル借りるなんて、そもそも発想が山師(笑)。
サーカスの原型は「見世物小屋」だった。日本でも「親の因果が子に報い~~」てな口上で見世物が流行った時期があるし、人の嗜好は洋の東西を問わない。

 

それにしてもヒュー・ジャックマンの若いこと。先日観た「ローガン」では、もうヘロヘロの感じだったのに。踊りのキレも半端ない。

親に死なれて辛酸を舐めたバーナム。成長するまでのバックに流れる「A Million Dreams」。顔に傷害を持つ娘からリンゴを受け取った事で、障害者に対する偏見が取り払われた。

金儲けが出来る、とゲスには考えたくないが・・・・

 

ヒゲ女ルッツ役のキアラ・セトルがイイ。バーナムにドアから締め出されて唄い出す「This is Me」のパワフルで心揺さぶる姿に、思わずウルっと来た。情報はコチラ
それから、ジェニーが一人で唄う「Never Enough」も感動的(実際の歌はローレン・アレッド)。結局彼女自身が、どこまで行っても満足出来ない人だったのだろう。

 

例によってツッコミ(今回は控えめに)
さすがに成功、挫折、そして復活するまで数年レベルの歳月は必要だろうから、娘がいつまでもあの年齢のまま、というのには違和感があった。子役使う時は、そこに注意が必要。

 

「南極」 氷の下のタイムカプセル   BSプレミアム 2/24放送

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紹介記事


話のスタートはオーストラリアの熱帯雨林。地球では、植物の光合成により二酸化炭素を吸って酸素を放出する。西部ピルバラ地区に、地球が酸素豊富だった時の証拠がある。
縞状鉄鉱層。地球上にある鉄のほとんどがこの時代に作られた。
原因は酸素。海の中で鉄と結びついた(酸化鉄)。
20数億年前に、大酸化事変が生じた。酸素の星へと変貌し、今の繁栄を支えている。そのきっかけはミステリーに満ちている。

 

生物学者 デール・アンダーセン含め五人の研究者。
出発地はケープタウン。そこから真南に4000km。専用機には室内の内張りもない。到着地は南極のノボラザレフスカヤ基地。氷上の滑走路。

目的地のアンターセー湖までは130km。スノーモビルで移動。
到着後3日がかりでキャンプ設営。6km×3kmの淡水湖。不思議な生態系を持ち、35億年前の地球の姿を残している。

厚さ3.5mの氷をドリルで貫通させ、銅パイプの器具に温水を通して、その穴を広げる。

水中は青一面の世界。太陽の光は5%しか届かない。
海底にはコブの様なふくらみが一面に広がっている(大きいもので50cm)。世界で、ここだけでしか見つかっていない。

針状のものが生えている場所もある(高さ5cm)。海底には他の植物、魚等一切なく静かな世界。
湖の縁は海底と接しており、完全密閉されている。
ヒゲの先に気泡が見える(直径2mm)。

見上げると、氷の層の下に泡の固まり。
コブの一つをサンプル採取。コブはシアノバクテリアの集合体。シアノバクテリアは初めて光合成を行った生物。普通は平らに広がるが、ここのようにコブ状、針状になるのは極めて珍しい。

固まりの中身はどうなっているか。断面は縞模様になっており、上へと成長。10cm成長するのに2500年。

この光景がなぜ太古の地球そっくりと言えるか。

証拠が見つかっている。
オーストラリア西のピルバラ。30億年前の海底が隆起した地層。

34億年前の化石。微生物の大きな生態系があった。

コブの形の化石。今回のものとそっくり。

なぜそんな生物が出現したのか。
シアノバクテリア以前は微生物のみの世界。火山、温泉等の周囲で発生するエネルギーを利用。硫黄等を使って有機物を合成。
シアノバクテリアは太陽を使う(光合成)。
二酸化炭素と光から有機物を合成。地球の至るところで生きられる。その副産物が酸素。

 

どうやって酸素が作られるか? その謎解明に貢献したのが日本の「SACLA」。原子の動きを観察して、酸素発生のメカニズムを解明。
光合成に関わる分子は数万の原子数。そのうちの一単位は10個の原子で構成される(ゆがんだ椅子:不安定)。ここに水分子と光を取り込むと酸素分子を放出する。岡山大 沈建仁教授。

分解反応文献  

 

調査後半。湖中心の最深部での、シアノバクテリア生息限界の把握。かつて地球の歴史で、氷河期に「全球凍結」の時期があった。

厚さ1000mの氷漬け状態が数百万年続いた。

この危機をどうやって乗り越えたか。
湖は水深100m以上あり、人では到達出来ない

→ROV(無人潜水機)の利用。
湖底まで160m。紫の短い帯が一面に散らばっている。固まりの採集。
分析の結果、シアノバクテリアであり、光を集める組織を持ち、光合成を活発に行っていた。
ほぼ真っ暗な状況での光合成に驚き→シアノバクテリアにとってはそうでもなく、ごく僅かな光でも利用する能力があった。

 

今回の様な調査は、地球外生命の存在調査にも影響を与える(どこを調べたらいいのか)。木星のエウロパ、土星のエンケラドス等、氷の下に液体が存在する惑星がある。

 


感想
久々にNHKらしい、いい番組を観た。
それにしても南極の、氷に閉ざされた湖で、3.5mもの厚さの氷に穴を開けて潜るなど、常人では想像もつかない。

研究者魂とは、そういうものか。
バクテリアが、目に見える形まで増殖するとは、何と旺盛な生命力。

 

光合成のメカニズムが非常に興味深かったが、反応の時に外れた水素原子がどこへ行くのか、ちょっと気になる(光合成で水素を発生するとは聞いていない)。何らかの有機物を作り出すのだろうが、その解析はまた先の話か・・・

 

 

名古屋行き最終列車 2018  第八話 3/6放送

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番組紹介    第一話  第二話  第三話  第四話  第五話

                 第六話 第七話

 

第八話 日比美思 手塚とおる 岡山天音 狩野健斗

高校生の工藤愛子(日比美思)。幼い頃から父にゴルフを教えられており、高校はゴルフの強豪校へ越境入学。

そのため祖母の家から通っている(乗車駅は山王)。
クラブでは木村コーチ(手塚とおる)の厳しい指導。コーチの持論は質量保存の法則。何かを犠牲にして夢を掴む。君の場合は青春を犠牲にしろ!(プロになるため)。

そんな愛子の楽しみは電車通学時、途中(栄生駅)から乗って来るセイイチ君(下の名しか知らない)を見る事。

だが見つめるのも秒数制限して自制。

ある日、練習疲れで帰りの電車を寝過ごして終点の「吉良吉田」まで来てしまった愛子。そこで偶然同様に乗り過ごした男子生徒に見覚えがあった。セイイチ君と一緒に居た田中陽助(岡山天音)。

同じ駅から乗り込む関係で、愛子の事を知っていた。

翌日の電車で、陽介から桐野誠一(狩野健斗)を紹介される愛子。

また帰りの電車を寝過ごした愛子。起こそうとした陽助は、寝言で「誠一クン」と言うのを聞いてしまう。

その後何事もなかった様に愛子を起こす。

 

翌日電車に陽介はおらず、誠一と会った愛子は、次の日曜、映画に誘われる。
誠一とのデート。映画を観てカフェにも立ち寄り、ご機嫌で帰宅する愛子だが、家に木村コーチが来ていた。

デートなんかしている場合じゃない、と厳しい指導。

 

次に誠一、陽助と会う愛子。ゴルフ部は辞めたという。俺のせいか?とあせる誠一。そこに女子生徒のリカ子が来て、誠一に愛子の事を「例の彼女?」と言った。

そこで誠一は、愛子とのデートは陽助からバイト代一万で頼まれたのだと言って、リカ子と逃げる。
愛子は、どういう事か全部教えて、と陽助に迫る。
一年半前、陽助は愛子の祖母から声をかけられ、愛子のボディガードをしてくれる様頼まれた。バイト代は月二万。
乗り過ごしもバイトのうちだったの?・・・喜ぶかと思って。
からかって楽しんでいたのね!とショックを受ける愛子。
愛子が帰って、全部バレた事を知って謝る祖母。

 

次の日から、乗る電車を二本早めた愛子。

ゴルフ部にも戻ってメキメキと上達。
久しぶりに乗り過ごして「吉良吉田」まで来てしまった愛子。

ホームで座っている陽助を見つける。
またバイト?と責める愛子に「バイトじゃない、心配だから、ただ見守りたかった」と陽助。
それじゃ、ただのストーカーじゃない!と更に怒る愛子。
陽助は、10年前から愛子を知っていたという。

 

10年前の正月、ゲームを買いに行く途中で金を落とした。その時近くにいた女の子が一緒に探してくれた。
結局お金は出て来なかったが、その女の子が、自分のもらったお年玉の半分をくれた。その時、お返しはいらないから、私がプロゴルファーになった時に応援団一号になって、と言った。

祖母と知り合いになってから、愛子の写ったアルバムを見る機会があり、子供の頃の愛子もそこにいた。初恋の女の子だった。
嬉しい愛子だが、今は全日本選手権の直前。プライベートで浮かれている場合じゃない。
見守ってもらうのはギリギリセーフ・・・かな?
「わかった」

 

大会が終わって逢う二人。
「応援団一号はもう止める」と陽助。
これからは彼氏という事じゃだめ?と聞くが、プロになるまではラッキーはゴルフに使う、とNG。
「ラッキーってことは」と言って愛子の腕をつかむ陽助。
「こういうのが普通になればいいってことだね」
「頭いい」と笑う愛子。


感想
高校生の淡いラブストーリー。
通学時に気になっている男子生徒。そんな人からデートに誘われたら乙女心はトキめくわな。
構成にちょっと苦しいところはあるものの、ストーカーっぽくなるところを、幼い頃の記憶とドッキングさせてイイ話に転換しているところはうまい。
そして、寝過ごして、吉良吉田から最終電車で名古屋行きに乗り、ギリギリ山王駅に帰れる(名古屋駅の一コ手前)のも、このシリーズの趣旨にマッチしている。

 

実は、通った高校は電車で一駅のところにあり、ギリギリ通学時のハラドキ経験あり(ただし年間の6割はバイク通学)。

 

 

 

 


100分 de 名著 松本清張 (1)「点と線」 NHK Eテレ 3/5放送

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番組紹介
今回から4回に亘って松本清張の小説を紹介。

二回目以降は「砂の器」「昭和史発掘」「神々の乱心」。


第1回「点と線」 副題:人間と社会の暗部を見つめて

作品あらすじ

進行役:伊集院光 君津有理子 ゲスト:原武史(放送大学教授)

 

松本清張は、高度経済成長期の描写が、そのまま戦後史の資料となっている(貴重)。
仕事の根底にあるのは「ノンフィクション」。

事実に立脚した上での小説。

 

九州の田舎「香椎」駅近くの海岸で心中した佐山健一と女中お時。

ベテラン刑事の鳥飼重太郎が、佐山の残した一人だけの食堂車領収書に疑問を抱く。

心中の道行きなら、男が食事に行ったら、同行するのが人情。
心中の証拠となる目撃証言→4分間の壁。

 

この小説は1957年に雑誌「旅」に連載されたもの。
福岡での記述が長いのは、清張のこだわり(福岡での暮らしが長かった)。「あさかぜ」は寝台特急(東京-博多を結ぶ)。当時一般的なのは急行。刑事でもあさかぜには乗れない。
小説で、三原警部補が急行で東京に帰った時「二晩寝たから大丈夫」との記述あり(逆に言えばダメージ回復に二晩必要)。

格差が可視化されている。

 

4分間のトリック(模型を使って実演)
あさかぜに乗る佐山とお時を、証人のホームから見通すためには、間に二本ある線路に電車が居ないという条件が必要(あさかぜは⑮番線、証人ホームは⑬番線)。5:49にあさかぜ到着。5:57に⑬番電車が発車。だが6:01には横須賀線が入る(見通せるのは4分間)。

当時、本当にある時刻表に基いたトリックであり、大反響を呼んだ。

 

目撃者の三人中二人は女中仲間。あとの一人は常連→安田辰郎。

どちらとも繋がりのあった安田の企み。
佐山の目撃証言であると同時に、安田のアリバイ証明でもあった。

 

鳥飼の疑問。駅でのアベックを見た目撃証言。一つは国鉄「香椎」付近で9:24に西鉄方面へ歩く姿。もう一つは西鉄「香椎」駅付近で9:35に海岸へ歩く姿。
鳥飼は歩いて確認。二駅間の徒歩は11分必要。このアベックは一組ではなく、二組いたのでは?という推理。エリートではない者が、自分の足で確かめながら真相に迫る。清張の下積み生活が二重写しになっている。

一組は佐山とお時、もう一組は安田と共犯者。だが組み合わせが違う。安田とお時は愛人関係だった。

 

佐山の相手は、安田の妻亮子。別々に殺されて心中にさせられた。
亮子は結核を患い、安田が愛人を持つ事を半ば黙認している関係。
療養のため、どこにも行けない亮子の楽しみは、時刻表の上での「擬似旅行」。いかなる小説よりも面白い。
夫婦合作での殺人。お時殺しに興味を持った亮子。

人一倍の嫉妬心が、機会を見つけて燃え上がった。

 

戦前は、亭主が正妻以外を持つ事が、良くある事だった。

イヤだけど仕方がない。
清張の考え。女性は脇役ではない。女が力を握っている。

最後で前面に出す演出。

 

清張が現代に伝えていること。
本来の目的だった課長補佐 佐山殺しは、上司の保身のため。

一番の悪は生き残る。
今でもこういう事はあり、現代でもインパクトがある小説。

これだけの才能が、一人の中に同居していたのがすごい(伊集院)。

 

感想
松本清張の作品は、中三の時に「高校殺人事件」を読み、高校に入ってから「影の地帯」。学校に置いてあった「昭和史発掘(全5巻)」読んでからは、就職後清張全集(全48巻)を月2冊購入して読破。
ただ、結婚を期にそれを全て処分した(惜しい・・・)。

当時は「読んだものは覚えているから要らない」と思い込んでいたが、そんなワケないだろ(と今なら断言)。

 

この小説の「4分間」のトリックは良く覚えていたが、それ以外はあらかた忘れていた。
だが話が進むうちに、この犯罪を立案した亮子が、自分が助かるためではなく、最終的に亭主と心中するつもりだったのだった、と腑に落ちた事を思い出した。
げに恐ろしきは女の怨念よ・・・・・

 

 

ベン・ハー  1959年

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監督:ウィリアム・ワイラー
原作:ルー・ウォーレス
音楽:ミクロス・ローザ

 

キャスト
ユダ=ベン・ハー     チャールトン・ヘストン
メッサラ           スティーヴン・ボイド
クインタス・アリウス    ジャック・ホーキンス
エスター                   ハイヤ・ハラリート
族長イルデリム          ヒュー・グリフィス
ミリアム                    マーサ・スコット
ティルザ                   キャシー・オドネル
ポンティウス・ピラト     フランク・スリング

 


予告編

 

あらすじ
キリスト生誕の場面。若い二人の間に生まれた赤ん坊。
西暦26年。ユダヤ人の住むイスラエルに、帝政ローマ軍司令官として戻って来たメッサラ。

ユダヤ貴族のユダ=ベン・ハーは旧友との再会を喜ぶ。

 

人望のあるユダを味方にして、統治を進めようとするメッサラだったが、反抗的な者の名前を言うよう要求するメッサラに対し、それを断ったユダ。
屋敷で召使いのサイモニデスから娘のエスターを紹介されるユダ。

これから嫁ぐと聞いたユダは、彼女に結婚の許可と今度の自由を与えるが、その夜エスターの魅力に負けて口づけをした。

彼女の指から奴隷の印の指輪を抜いて自分の小指に嵌め、今度結婚するまでは外さないと言った。

 

新総督をイスラエルに迎える日、屋敷の屋上から隊列を見ていたユダと妹のティルザ。ティルザがちょっと手を触れただけで屋根の瓦が隊列に落下。新総督は落馬して怪我をする。
屋敷に乗り込む兵士たち。ユダは事故だったと弁明するが聞き入れられず、母妹と共に連行された。

何とかメッサラと話をするため、警護の者を倒して司令官室に行ったユダだが、メッサラは冷たくあしらい、旧友をも容赦しない事は統治に役立つ、とうそぶく。

 

母妹を人質にされていいなりとなったユダは、囚人として多くの者と一緒に引き回される。
ある村での休憩。水を飲もうとしても、申し合わせのためか、ユダだけは水を与えられなかった。倒れているユダの許に、水の入った器が差し出された。むさぼる様にそれを飲んで、与えてくれた男を見上げる。長い髪の痩せた男の姿。

 

ユダは、ローマ軍のガレー船に漕ぎ手として押し込められ、3年の月日が流れた。その船に総司令官として赴任して来たアリウス。41号と呼ばれる、ユダの鋭い目に興味を持ち、様子を見るようになる。
敵との交戦に入り、奴隷たちは逃げ出さないように鎖で繋がれたが、41号だけは鎖をかけるなと指示するアリウス。

 

やがて激しい交戦が始まり、敵艦が横っ腹に突っ込んで来た。浸水する中で、護衛の者を倒してカギを奪い、奴隷たちを逃がすユダ。
敵が乗船して来る中で苦戦するアリウス。危ないところを槍で助けるユダだが、アリウスはとうとう海に落ちた。
迷わず飛び込んで、アリウスを船の残骸に引き上げるユダ。

 

漂流中、何度も死のうとするアリウスをその都度押しとどめるユダ。奇跡的にローマ船に助けられ、ユダを命の恩人として扱うアリアス。
皇帝の認を得て、ユダの処遇はアリアスに委ねられた。

ユダを戦車(四頭立ての馬車)の騎手として抜擢すると、卓越した腕で連勝を重ねる。

 

ある宴の夜、アリアスは亡き息子に代わって、ユダを自らの後継者にする事を宣言する。
ユダは長年の気がかりだった母妹を探すため、イスラエルへの帰還を申し出る。

 

帰還の途中でアラブの族長イルデリムと知り合い、戦車の扱いに詳しい事から晩餐に誘われる。イルデリムの話により、メッサラが戦車の試合で常勝している事を知るユダ。イルデリムに騎手を頼まれたが、帰還を優先してエルサレムに向かうユダ。

 

かつての屋敷に戻ったユダはそこに、嫁いだ筈のエスターを見つける。父親と共にこの屋敷を守っていた。父親はユダが捕まった後、抗議しに行ったが、拷問を受けて足をダメにされた。ユダの姿を見て涙を流すサイモニデス。拷問に耐えて、屋敷の財産は守られていた。

 

アリウス二世として現れたユダに驚くメッサラ。母妹の事を知らないというメッサラに「探せ、失望させるなよ」と言い残して去るユダ。

急いで彼女らの生死を確かめさせるメッサラ。
牢獄の一番深いところでまだ生きていた母娘。投獄から4年経っていた。牢の扉を開けて驚く兵士たち。疫病にかかっていた。

 

ユダの屋敷で動く人影。エスターが不審に思い声をかける。

母のミリアムと、娘のティルザだった。疫病に罹っている事を告げ、ユダには絶対に言わないようにと懇願する。

二人は死の谷に行くと言い残して去った。
入れ違いに戻るユダにエスターは、母妹は父が拷問された時、既に死んでいたと嘘をつく。復讐に燃えて逆上するユダに、そんな事はもう忘れてと叫ぶエスター。

 

イルデリムを訪れて騎手になる事を承諾するユダ。喜んだイルデリムはメッサラに面会を申し出て、賭けの倍率を1:4にする事を飲ませた。
そして戦車の試合の当日。新たに総督として赴任したピラトは、アリウス一世の親友だった。

 

競技が始まる。競技場を9周。徐々に順位を上げて行くメッサラとユダ。メッサラは車軸に取り付けた破壊器具で、相手の車輪や車体を破損させる汚い手を使っていた。
何度も危ない目に遭わされながらも、何とかメッサラの後ろを走るユダ。チャンスを得てユダが並ぶと、メッサラはユダに向かって鞭を振るって来た。それを手でつかむユダ。そうした攻防の中で、鞭を奪い取られたメッサラは、その反動で馬車がバランスを崩し横転。

そのまま後続の馬に次々と轢かれる。

 

瀕死のメッサラを訪れるユダ。メッサラは最後に、母と妹は死の谷で生きていると言い残して絶命。
ローマ人に絶望し、ピラトを訪れてアリウス二世の座を返上したユダ。
死の谷まで母と妹を探しに来たユダ。そこに食料を持って来たエスター。なぜ黙っていたのかと責めるユダに、無残な姿を見せられないという二人の気持ちが判らないの、と返す。
エスターは、ナザレの人の話をして、一度会いに行こうと説得するが、聞く耳を持たないユダ。

 

ある日エスターの後をつけて、とうとう母と再会するユダ。妹のティルザはもう歩けない状態だという。ティルザを探し出して、抱き抱えて洞窟を出るユダ。エスターに従ってナザレの人に会いに出かける。
だが街に近づくにつれて異様な雰囲気。そのナザレの人は、十字架を担がされて階段を上っていた。

何の罪だとユダが人に聞くが要領を得ない。人心を惑わすと考えたローマ軍が、見せしめとして行っているものらしい。

ユダら四人の前を過ぎて行くその人を見て、あの時に水をくれた人だと知ったユダは愕然とし、人混みの中、その人を追った。

 

階段を上がる途中でその人が倒れた。もう十字架を担ぐことは出来ない。代わりの者がそれを持った。倒れたその人の口元に水に入った器を差し出すユダ。だがそれは兵士に弾き飛ばされた。
十字架に磔にされる「その人」。

使徒と共に三つの十字架が立てられた。

 

ユダと別れてから山に向かった三人。天候が急変し、暗くなって嵐となる。「あの人」が召されたのだと感じる。

その時ティルダが急に顔に痛みを覚えて叫ぶ。

 

ゴルゴダの丘から戻って来たユダは、そこで疫病が完治した母と妹、そしてエスターを抱き寄せて喜ぶ。

 

感想
一年以上前に放送されたものの録画を、ずっと放置していた。

今回ようやくの鑑賞。

「十戒」と並んで大スペクタクル映画の代表作。

チャールトン・ヘストンの当たり役。
最後に観たのが20年以上前なので、記憶は本当に断片的でしかなく、今回は新作映画のように楽しめた。

 

一番の圧巻は戦車競技。あの頃だから、CGなんぞは使えないから全部実写。実際けが人も多数出たのだろう。
それからエスターの美貌にも圧倒された。

特に印象に残ったのは、メッサラが自分の命を賭けてまで母、妹の事をユダに話し、憎しみを終わらせないよう仕向けた事。

結果、肉親二人は全快するものの、あの時のユダの心に満たされた憎しみ。一番深く心に残るユダの表情。

 

単なるユダの復讐劇、ではなく、キリストの誕生と昇天を織り交ぜる事で、物語に奥行きを与えている。

最後のハッピーエンドがやや出来過ぎではあるものの、映画というものを堪能出来る名作と言っていいだろう。

 

吹替え版では「疫病」と言っていたが、この病気は「ハンセン病(ライ病)」の事。
キリストの奇跡でハンセン病が治る、などととは患者にとっては酷な話。苦しむ患者は当時まだたくさん居ただろうから、無用な期待を持たせたかも知れない。

 

ハンセン病と言えば、今放送中の「100分 de 名著」松本清張 の二回目は「砂の器」。こっちのライ病ネタも辛かった。

 

 

オマケ

アメリカではチャールズ・ヘストンと言うらしい(文通仲間の情報)。

 

 

名古屋行き最終列車 2018  第九話 3/12放送

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大杉漣さん追悼

大杉さんは、元ラーメン屋の店主、という設定で、この番組の常連だった。今回の石野真子さんとは2016年の番組で共演して以来。

2017年は、朝ドラ「わろてんか」の団吾師匠でメジャーになった波岡一喜さんと共演。今回はその二人がダブル共演で参加。


第九話 大杉漣 石野真子 波岡一喜 黒川芽以

 

セントレア空港に到着した小夜子(石野真子)。

急に行って驚かせてやろう、と今村武雄(大杉漣)の家に行くが、武雄は赤ちゃんをあやしていて、若い女性も一緒にいた。

赤ん坊相手に「ママは忙しいですからネー」とか「俺に似てかわいいなぁ」とか・・・・

信じられない!と怒った小夜子は自宅に帰ってしまう。
武雄宅。麻耶(黒川芽以)が明日の出迎えは大丈夫?と聞く。小夜子の帰国日と聞いていた。小夜子は二年間のタイ旅行をしていた。

 

武雄が空港に迎えに行くが小夜子は来ない。メールを送ると、昨日着いたとの返事だが、妙によそよそしい。
小夜子の家まで行った武雄。久しぶり、と声をかけ、私の勘違いだった?と聞くが、一日早く帰ったと言うだけ。
怒ってる? 別に。 怒ってますよね? 怒っている人間に怒ってますよね、なんて聞いたら火に油ですからっ! と剣もほろろ。
ヨガ教室をやると聞いて「私も運動しようかな」と言う武雄に「そちら様は十分体を動かしてる」(子供作っちゃうほど・・・)とイヤミ。

 

神宮小路の行きつけの店で飲んでいる武雄。店主が「小夜子さんと来ればいいのに、ケンカでもしたの?」と聞くが「わからん・・・」
そこに町内会長が来て「相談に乗ってくれ」
町の再開発の話が持ち上がって、商店街がピンチ。そのために、閉めたラーメン屋の「えん楽」を再開してくれないか、と。
けじめを付けた、終わった事、と取り合わない武雄。「子守りもあるし」。

 

自分の店「清楽」の開店準備をしている清(波岡一喜)を訪ねる麻耶。

麻耶が申し訳ない、と話すのに「はるとが生きがいだから」と清。
そこへ小夜子が訪ねて来て、店にヨガスタジオのビラを貼って欲しいと頼む。そこで麻耶の顔を見て、慌てて去って行った。清が聞いても麻耶には面識がない。

小夜子が前の日に驚かそうとして来たら、武雄らが三人で居るところを見てしまったのではないか、と話す清。誤解を解くためにキチンと話したら?と言うが「何で言い訳がましい事をする必要がある!」と武雄。

 

麻耶はえん楽の再開の話も聞き、自分が誤解を解こうと、小夜子に会いに行く。
今村と知り合う前にこの子を宿した。今は准看護師だが、正看になりたい。だが今のままでは続けられない。
たまたま終電で一緒だった武雄と話す機会があった時、家から通えばいい、部屋も余っているから、と言ってもらった。
でもそれが今、ラーメン屋再開の障害になっている、申し訳ない。
だから今村さんに会いに行って下さい、という麻耶に「そんな大事な話、どうして事前に教えてくれない、そういうとこ許せない」と小夜子。

 

行きつけの店。清が、いい考えがある、と提案。麻耶の学校は月、水、金だから、店は火、木、土でやればいい。
だが、けじめはけじめ、と言い続ける武雄に、男が入って来た。21年前に食い逃げをしたという。その日ラーメンを食い終わってから金が足りないのに気付き、パニックになって逃げてしまった。
返そうとしたが、店が閉まっていた。そう言って頭を下げる。
武雄は、そういう客は当時けっこう居たから気にしなくて良かった。長い間苦しんで、却ってすまなかった、と言い、自ら頭を下げた。
清に促されて金を受け取った武雄は、急に思いつき、閉めた店にその男を連れて行ってラーメンを作ってやった。

涙を流してそれを食べる男。
「けじめを付け切れていない人がまだ居る」と清。

会長に再開を告げる武雄。

 

開店の朝、客が列を作って待っていた。「何かしたのか?」と言う武雄に、手伝いの清は知らん顔。
盛況の一日が終り、清がのれんを下げようとした時に、小夜子が訪れた。「ラーメン下さい」

「ここがあなたのえん楽なんですね。おいしかった」と小夜子。

 

帰りの電車で麻耶母子に会う武雄と小夜子。知り合いの二人に驚く武雄。小夜子が「あと一年子育て手伝ってください」

 

感想
二年前の時は、弟子の清の計画で婚活サークルに参加してしまった武雄が、小夜子と気が合って交際を始めるところまで。
昨年は、弟子が店を出してからのサービス低下を戒める話。

 

今回は、たまたま子育てママに協力している事が、ちょっとこじれて仲たがいの種になる話。

食い逃げの男にラーメンを振る舞うところは、何年も休んでいた店で、どうやって作るの?とツッコミ(まあいいか)

 

映画で見せるような厳しい顔は一切出さず、本当に伸び伸びと軽く演じている。

共演者二人との人間関係も深くなって行き、これから何年も楽しめる、と思っていたが、本当に残念。
ご冥福をお祈りします。

 

 

 

100分 de 名著 松本清張 (2) 「砂の器」 NHK Eテレ 3/12放送

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 番組紹介   第1回

 

第2回「砂の器」 副題:生き続ける歴史の古層

進行役:伊集院光 君津有理子 ゲスト:原武史(放送大学教授)

 

この小説は1960年に読売新聞夕刊で連載されたもの。
当時は池田勇作内閣が成立し、経済重視、所得倍増の掛け声の下、都市部中心の開発で地方との格差が広がった。
社会の光と影。格差を描こうとした。

 

国鉄蒲田駅始発。始業前の点検で死体が見つかる。年配の男性で、首を絞められ、顔を潰されている。
被害者は前日の晩、近くのバーで若い男と話し込んでいた。従業員の話では東北弁を話しており「カメダは今も相変わらずでしょうね」と言う若い男のフレーズを覚えていた。

 

事件を追う刑事、今西栄太郎と吉村。カメダを東北の羽後亀田と判断して聞き込みに行く。

だが特段の情報はなく、濃い日本海の色を見る今西。
羽後亀田を発つ前に、マスコミの注目を受ける若者四人組を見かける。「ヌーボー・グループ」。既成の権威を否定した若い知識集団。

その中心に居たのが和賀英良(音楽家)と関川重雄(評論家)。

 

若者が父親を探して警察に届けを出した事で、被害者の身元が判明。三木謙一。島根県の亀嵩出身。カメダは亀嵩の事だった。
聞き込みの結果では、三木は善良で親切。怨恨の線はなく、捜査は暗礁に。

 

ヌーボー・グループを出した背景は?
当時は現実にも若手の表現者が台頭した時期(石原慎太郎、武満徹等)。各所で目立ったのは間違いない。

清張はヌーボー・グループの様な存在に対しては、シニカルな目線を持っていた(観念的で、頭だけで先走り)。
評論家 関川の文章を引例にして説明。

分かり易い文章ではいけない→彼らのアイデンティティ。
それらに嫌さを感じていた(エリートと無縁)。皮肉っていた。

 

和賀、関川があやしいとにらむ今西。和賀は大物政治家の娘、田所佐知子と婚約。関川は銀座のバーの女給、三浦恵美子と交際(世間には隠している)。
当時女給には風俗的な意味合いがあった。また恵美子の住んでいた新宿西側は、木造アパートが林立する劣悪な場所(木賃ベルト)。

プライバシーもなく、当時の住宅事情を表現。

 

方言をトリックに
当初ズーズー弁(東北弁)に聞こえた→実は出雲弁(似ている)。

民俗学まで駆使(東北弁に決まっているという思い込み)。
ヌーボー・グループの、羽後亀田への出現も捜査のかく乱が目的。

 

今西は考え方を変えた。被害者の行動を追う。
当時伊勢に旅行していた三木は、映画館ロビーで大物政治家と一緒に写った人物の写真を見て、懐かしさに上京を決心。
亀嵩での情報収集。
当時巡査だった三木が若い時のエピソード。村にお遍路の親子が来た。ホイタ(乞食)と罵る村民たち。父親の本浦千代吉はライ病であり、三木の手配で療養所に入れられる。息子の秀夫は三木が預かった後、託児所に委ねた。その後秀夫は姿を消す。

 

真相:大阪で戸籍を改ざんした秀夫は、和賀英良として成功。過去を知る人間、三木を生かしてはおけなかった。
公演のためアメリカに発つ寸前の和賀を、空港で逮捕する大西。

 

戸籍の改ざんが簡単に出来た?(伊集院)
1945年3月10日の東京大空襲の時、実は3月14日に大阪へも空襲があった。その時に戸籍の原簿が焼失し、住民の申請により戸籍の再生が可能だった。当時を知る者ならではの視点。

 

ハンセン病について
明治から、政府による隔離政策が続いていた(強制収容)。
戦後、それは治る病気であり、隔離の必要性も低いとされたが、政策は続いた(1996年に終結)。
差別、偏見が続いた。

誰が悪いというわけじゃない。ハンセン病を扱う勇気。

タブーへの挑戦(戦後から解決されていない問題)。
リアルが入っている、珍しいパターン(推理小説として)。
ここまでストーリーが判っていても、なお読みたい小説。


感想
小説の「砂の器」は今までに多分3~4回読んでいる。
「ゼロの焦点」ほどには戦後を引っ張っていないと思っていたが、今回の番組で、思いっきり引っ張っていたのだと再認識。
ドラマの背景となった、大阪大空襲とハンセン病。

清張の、社会派作家としての真骨頂と言える。

つい最近でも訴訟がニュースになっている、優生保護法の下に行われた強制避妊手術。あの法律も1996年まで成立していた。

 

ヌーボー・グループのネーミングに「ダッせぇー」と当初あきれたが、発表当時の1960年頃は、まあそんなもんだったのだろう。
当時、現実社会にも居た若い知識集団に、清張自身がシニカルな目を向けていたという事は、興味深かった。
やはり権力、集団による力などに対する反発心はダテじゃない。

 

映画(1974年)では和賀英良を加藤剛が熱演。この作品は、日本映画としてトップクラスの完成度と言える。ただ、本浦親子の、お遍路を含むエピソードがかなり強調されていて、そこが小説を読んだ者から見て、若干違和感があった(映画としては成功しているが)。

 

また映画では三木が、まだ存命の父親に会いにいけ、みたいな追及をしたため殺した事になっているが、原作では一度会っただけで殺している。これは映画の方に軍配が上がるかも。

 

そういえば、和賀が犯行時に汚したシャツを、愛人の成瀬リエ子に処分させた話(切り刻んで列車からバラ撒く)なんてエピソードもあった。どうも和賀が行った数々の隠滅工作が、何とも矮小な気がしてイヤだった。映画版の和賀の方がずいぶんマシ。

 

それも含めてもう一度、読むか観るかした方がイイな・・・・・・・・


映画は、音楽が良かった

砂の器  ピアノ協奏曲 「宿命」

 

 

 

 

新聞小説 「国宝」 (17)  吉田 修一

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新聞小説 「国宝」(17)  2/17(401)~3/13(425)

作:吉田 修一  画:束 芋

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第十七章 五代目花井白虎  1~25
次の出番までの間、小休止している喜久雄。たまたま自分に付いた若衆が誰かを弟子の蝶吉に聞く。中堅どころを守って来た三國屋権十郎の息子武士。若衆役の割りに、首筋の風情に色気があった。

 

俊介が、両足義足の体で顔を出した。慣れた様子で座布団に尻もちをつく俊介。


リハビリに苦労する身だが、一刻も早く舞台に立ちたいと「隅田川」を提案する。それを物陰で聞いている一豊。

俊介は続ける。自分が班女をやり、喜久雄が舟人をやる。
「喜んでやるよ」と喜久雄。二人がまだ十六の頃に見た万菊の「隅田川」。当時、美しい化け物や、と言った俊介。

次の出番があり、俊介に「何でもやるから連絡しろよ」と言って舞台袖に向かう喜久雄。
先ほどの武士が来て挨拶する。大学も中退したと聞いていた。唐突に「おまえ、女形やれ」と言われて驚く武士。

立役失格と言われているようなもの。
そう言い残して舞台に向かう喜久雄。
俊介から預かっている一豊。喜久雄の見立てでは女形よりも立役に向いており、その相方を探すのも親代わりの務め。それが武士だった。

 

出番の前に大相撲の中継に見入る喜久雄。娘婿、大雷の優勝決定戦。相手は横綱の鷲ケ浜。
その戦いを制して優勝した大雷。万歳三唱する喜久雄。
大雷の優勝パレードが終わり、喜久雄の公演も終わろうとした頃、綾乃から孫娘の喜重の七五三に付き添って欲しいとの連絡があり、二つ返事の喜久雄。
その当日、大雷の両親、市駒も交えた大人数。優勝力士と歌舞伎役者の登場で、参拝客も集まる。早々に退散する一行。
ホテルでの昼食時、綾乃が俊介の様子を教える。

復帰を焦るあまりの、常軌を逸したリハビリ。
喜久雄自身も漢方医局で薬を調合してもらっている身。

無理が利かない年代。老眼を嘆く市駒。

 

俊介の懸命なリハビリの結果、「隅田川」での舞台復帰が決まる。

だが三友側にも信用を与える必要があり、一度通し稽古を見せる事となる。
俊介と喜久雄はそのテストのための稽古を始める。

だが贔屓目に見てもよたよたした動き。
「隅田川」の演目説明。もともと能から歌舞伎となった。我が子を商人にさらわれ、その行方を尋ねて東国まで流れて来た女の話。
元々の、能の「隅田川」に戻してはどうかという喜久雄の提案。歌舞伎のように、最初から狂った女として行う動きより、能での、心地よく酔いしれた様に踊る、という解釈の方が、今の俊介に合っている。
すぐにそれを理解する俊介。
その後も続く苦しい稽古。激しすぎる稽古に倒れ込む二人。

俊介が、子供の頃父親に仕込まれた時の思い出を話す。

 

俊介の復帰公演「隅田川」が始まってようやく五日目。開いてみれば新解釈の舞台は、同情ではなく、子を失った女の悲しみに対して絶賛の拍手を受けた。
俊介の疲労は凄まじく、抱き抱えられて楽屋に戻る毎日。
万が一の時には代役を立てるという状況の中、何とか千秋楽まで勤め上げた俊介。その三日前の公演では花道で立てなくなり、舞台まで這ったという事まであったが、気力だけで持ちこたえた。

 

楽日の翌日、貧血で意識障害を起こした俊介は、そこから長期入院。
その後、喜久雄が義父の吾妻千五郎から借り受けた、鎌倉の別荘で療養させると、気力も戻って来た。

そんな俊介の努力は報われ、「隅田川」の演技に対して「日本芸術院賞」が授与される事になった。四十年前、先代の白虎も受賞していたもの。夫婦して喜ぶ俊介。
俊介が受賞した直後、逗子の老人ホームへの入所を決めた幸子。俊介の看病に忙しい春江を気遣っての事。車椅子の母親は、息子の寿命が長くない事を感じていた。


療養中の俊介の姿が、週刊誌にスクープされた。やせ細った姿。

喜久雄の立つ舞台は、以前俊介と踊った「娘道成寺」を一人で踊る「京鹿子娘道成寺」として演じていた。

 

そんな時の部屋入りの場で、突然報道陣のライト。

白虎の病状を聞こうとするレポーター。
「お前ら、よってたかって、何待ってんだよ!」と怒りをぶつける喜久雄。昨晩俊介が緊急入院した事を、喜久雄も聞いていた。

俊介入院の知らせは、舞台裏の楽屋にも知らされており、皆緊張している。
白拍子花子の衣装で喜久雄が舞台に出る寸前、蝶助が声をかけたまま息を飲む。目で次を促す喜久雄。
「丹波屋の旦那さんが、今、亡くなったそうです・・・」
浄瑠璃の流れる中、揚幕係が緊張する中、「はい」と言って喜久雄が進み出て幕が開く。
観客たちが見たいのは、当代一の美しき女形。

どんな言い訳も通用しない。
俊介と共に踊った場面を思い出しながら舞う喜久雄。

幕間の着替えで蝶助が、立ち位置のズレを指摘。

「もう大丈夫」と喜久雄。
そして再び舞台に戻り、花子の顔に蛇が宿る。
鬼気迫る喜久雄の演技に湧き立つ喝采。
「俊ぼん、ここなんやけどな・・・・」と独り言を言う喜久雄。


感想
両足を失った俊介の、壮絶な復帰への執念。だが結局力尽きる。
中盤で戻って来た俊介の描き方を読んで、主役はどっち?とも思ったが、結局喜久雄、か。

 

しかしこのまま話が続いても、長いばかりで最近は疲れる・・・・・
最後の興味は、題名にある「国宝」への収斂という点だけだが、さてどんなものか。

 

 

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