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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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ザ・コンサルタント  2017年

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監督  ギャヴィン・オコナー
脚本  ビル・ドゥビューク

 

キャスト
クリスチャン・ウルフ        ベン・アフレック
デイナ・カミングス         アナ・ケンドリック
レイモンド・キング         J・K・シモンズ 
ブラクストン             ジョン・バーンサル
フランシス・シルヴァーバーグ   ジェフリー・タンバー
メリーベス・メディナ        シンシア・アダイ=ロビンソン
ラマー・ブラックバーン      ジョン・リスゴー
リタ・ブラックバーン        ジーン・スマート
エド・チルトン           アンディ・アンバーガー
ジャスティン            アリソン・ライト
神経学者             ジェイソン・デイヴィス
クリスチャンの父         ロバート・C・トレヴァイラー
クリスチャンの母         メアリー・クラフト
少年期のクリスチャン       セス・リー
クリスチャンの弟         ジェイク・プレスリー
少女期のジャスティン       イジー・フェネック

 

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=6or2Z629qmQ

 

 

ビルの中での銃撃現場。多くの死体を見ながら銃を構えて階段を上がる男。先の方で命乞いをする男の声と、もう一人ささやく様に歌のようなものを歌う男の声。そして銃声。

 

ジグソーパズルをやるメガネの少年。指先に息を吹きかける癖。それを見る弟らしい少年と、行動異常の少女。夫婦と医師との会話。医師は少年を施設に預ける事を提案するが、父親がそれに反対。
ジグソーが一個足りなくて騒ぎ始める少年。その時、少女が落ちていたピースを少年に渡す。完成した絵はモハメド・アリの雄姿だったが、それまで少年が嵌めていたのは裏側からだった。

 

小さな会計事務所を営むクリスチャン・ウルフ。老夫婦の節税相談を受けていた。妻が手作りのネックレスを作る趣味を持っている事を知り、リビングを事業所として申請する運用をアドバイス。
後日、老夫婦の農場で射撃の練習をさせてもらうクリスチャン(以後クリス)。1.5キロ先のメロンを撃ち抜く腕に驚く夫。

 

商務省局員のマリーベス・メディナ分析官。局長のレイモンド・キングに呼び出される。レイモンド・キング(以後レイ)は、メディナが実力の割りに出世願望を持たない事を指摘。彼女の秘密である、十代の時の逮捕歴をPC上に出した。犯罪履歴を隠して商務省に入ったメディナはやむなくレイの直属として働き始める。

 

規則正しいクリスの生活。就寝前の儀式はフラッシュライトの点滅と大音量の音楽。その中で足のスネに木の棒をこすり付けて苦痛を味わう。そして精神安定剤の服用。
子供時代を思い出すクリス。家から出て行く母親を見ながら泣きわめくクリスを父親が押さえつけて歌を聞かせる。
「マザーグース」の中に出て来るソロモン・グランディ。月曜に生まれ、火曜日に洗礼、水曜日に結婚、木曜日に病気になり、金曜日にそれが悪化、土曜日に死に、日曜日に葬儀をする。
その歌で落ち着きを取り戻すクリス。

 

電話で女性の声と話すクリス。女性が、裏の仕事だけではなく表の仕事もやるべきだと言い「リビング・ロボティクス」社の、会計監査の仕事を請けていた。早速ロボティクス社に出向くクリス。
社長はラマー。電気製品と軍需、義肢製造を主体としており、妹のリタと、友人であり財務担当のエドが面会。財務課の女性が横領を見つけたため、正しい監査を行うというのが依頼。社長指示であり、リタ、エドの意思ではない。
最初過去10年分との話だったが、エドが財務を担当して15年だと聞いてクリスは15年分の記録を要求。

 

翌日クリスが出社すると、徹夜で書類を用意していた女性ディナが寝ていた。彼女を起こし、手伝うというのを「一人でいい」と言って追い出し、精力的に調査を開始するクリス。

 

出社したディナに不正がある事を伝えるクリス。約6100万ドルが架空会社に流されていた事が判明。その承認はエドが行っていた。途中から話を聞き始めたリタはディナを追い払う。

エドの自宅。夜中ダイニングへ水を飲みに来たエド。椅子に座る男に気付く。机にはインスリンの瓶が二つ。これを摂取して事故死するか、上に居る妻も含め強盗殺人の被害者になるか。妻を助けるため、事故死を選んだエド。

 

翌日クリスは社長から、監査の中止を言い渡された。

殺し屋集団は、クリスの顧客の老夫婦を襲っておびき出す作戦。だがクリスは遠距離から一人づつ仕留めて行き、老夫婦を人質にして車で逃げようとする男を捕まえ、ディナも標的になっている事を吐かせる。

ディナが自分のアパートで殺されそうになる寸前、クリスが助ける。

 

自分が住居にしているトレーラーハウスにディナを連れて来るクリス。生活スタイル、大金、武器、高級絵画等、会計士とはどうしても繋がらない

事に混乱するディナ。特に目を引くポロックの原画。

 

メディナは、探せと言われたレイの言う闇の殺し屋が、年間100万ドル以上の収入を持つ会計士、という条件を意識しつつも、自閉症、数学の天才の偽名などプロファイリングを駆使して、クリスのZZZ会計士事務所を割り出した。単体での収入は少ないが、関連会社を合わせると100万ドル以上になる。
だがその利益はハーバー神経学研究所に注ぎこまれていた。ZZZ会計士事務所に向かうレイとメディナ。

 

クリスは場所をホテルに移してディナを匿った。
自分が闇の会計士である事、過去の生い立ち、高機能自閉症である事などを告白するクリス。
クリスは、ロボティクス社の裏金の真相を知っていると思われるリタに会いに行くが、先を行く殺し屋の一人に遭遇。駆け付けるも、リタは頭を撃ち抜かれていた。

 

ZZZ会計事務所に向かったレイとメディナだが、そこは引き払われていた。そこでレイはこの男の正体について話を始めた。
自閉症だったクリスに対し、彼の父親は厳しい環境で生き抜くための技術を教え込んだ。そして入隊。クリスは一流の軍人になった。

クリスの母親は、彼の事が原因で離婚、新しい家庭を築いていたが、突然亡くなった。父親はクリスを連れてその葬儀に勝手に出席、再婚相手の男性とトラブルになった。父親を守るため警察官に暴行したクリスだが、父親は銃を抜いた保安官に撃たれて死んだ。
それが原因で刑務所に収監されたクリス。

その刑務所に入っていたフランシス。裏帳簿を預かるマネーロンダリングの達人。だがマフィアに命を狙われたため、財務省に保護を願い出て、収監された。短い期間だが同室になったクリスとフランシス。その間に裏社会のテクニックをクリスに伝授するフランシス。
だがフランシスの危険を軽く見ていたレイは、彼を短期間で釈放してしまった。
すぐマフィアに殺されたフランシス。それを知ったクリスは刑務所から脱走。

 

後日、フランシス殺害の証拠を掴むため、マフィアのアジトを張っていたレイだが、それを先回りして襲撃された。現場に入るレイ。マフィアの男たちは始末されている(冒頭の場面の繰り返し)。
マフィアが皆殺しされた中で、頭に銃を突き付けられるレイ。だがその男(クリス)は、家族の事、子供にとっていい父親だったか、との質問をした上で、レイを殺さなかった。

その失態の責任を取るため、退職しようとしていた時、一本の電話。出ると、女の声でマフィア検挙のための情報提供。それ以降のレイのチームによる華々しい事件解決は、みなその情報のおかげだった。あきれるメディナ。

 

ロボティクス社の社長宅に向かうクリス。資金流出の黒幕は社長のラマーだった。自社の資産価値を高めるための裏帳簿。邸内は雇った殺し屋たちで固めていたが、高射砲並みの火器で外の連中を倒して行くクリス。
モニターでクリスの戦いぶりを見ていたリーダー格の男。敵を倒す時、クリスが「ソロモン・グランディ」を口ずさむのを聞いて、同じように歌う。
最後の手下も殺され、クリスの前に出るリーダー格の男。「久しぶりだな」とクリス。男はクリスの弟ブラクストンだった。激しい殴り合いの結果、座り込む二人。
ラマーの頭をクリスが撃ち抜いて、この事件は一件落着。再会を約して別れる二人。

 

ディナの許に大きな荷物が届く。以前クリスと話していた、ポーカーをする犬たちの模造画。だがその下に絵が隠れていた。上を破いてみると、クリスの部屋にあったポロックの原画。

 

財務省での記者会見。ロボティクス社の、一連の殺人事件に関するもの。レイはメディナを紹介。メディナはチーム捜査の成果だと言って、今後のリーダとしてやって行く決意をする。

 

ハーバー神経学研究所。クリスの寄付が大きな助けになっている。入所の検討をされている少年に手であいさつする、障害のある女性。言葉が話せず、行動障害があるが、パソコン操作には抜群のスキルを持つ。キーボードを打ってスピーカーからあいさつする声。

 

感想
オモテ向きは冴えない公認会計士、裏では凄腕の殺し屋。そんな設定にちょっと興味が湧いて観に行った。
自閉症という障害を持った子供が社会に適合して行けるよう、幼い頃から鍛えた父親。そして軍隊でのスキル獲得もやり遂げたクリス。
設定としては悪くないが、何か自閉症すなわち超能力アリ、といった逆ステータスみたいな扱いには少し違和感を持つ。

それから、タマには表の仕事もしないと、と言うわりに裏の仕事ぶりの紹介がない。メディナの調べるクリスの裏稼業も、殺人現場での監視カメラ映像ばかりで「どういう仕事をした」のかの説明がないから、裏社会での位置付けも判らない。

 

それと観ていてちょっと勘違いしたのが、レイがクリスの父親か?ってこと。クリスがマフィアを皆殺しにした現場にレイが飛び込み、その時クリスに後方から銃を突き付けられる辺りで、もうこちらの方で「クリスは息子」という思い込みが出来てしまった。その後の「子供は居るか」「子供に対していい親だったか」という問いに、「何で自分の息子に気付かないんだよ」なんて思ったり。
正しい理解は、レイが男の子二人の親であり、その事に対して多少クリスの心が動いて見逃したという事。何か顔のフンイキも似てたんだよな。
  
ツッコミというわけではないが、もう一息という点についてちょっと・・・
・超一級のスナイパー、という事なら、父親の教えや軍隊で身に着けたというよりも、彼自身の特性がそうだった、という持って行き方でサラっと流すのもあったと思う(会計士としての数字に対する能力も含め)。
・ディナの扱いが微妙。会社の財務課勤務で不正を見つけたと言っても、会計士を雇う前に消されるのがオチ。もう少し合理的な設定はなかったものか。
・クリスの経歴が、レイの話す説明で全部明らかにされ、確かにそれで全ての伏線が回収されているのだけれど、ちょっと情報ぶっ込みすぎで、観終わってからネタバレサイトを巡回してようやく把握出来るというのではツライ。イーグル・アイの時もそんな感じ。

 

基本的にクリスとディナとの絡みには好感が持てる。ディナからのアプローチに、ちょっと事件の話をするフリで逃げるところなどもイイ感じ。

もう少し脚本に手間をかける、と言うより、映画なりのペースを認識した上での構築を工夫すれば、もっと魅力ある映画になると思う。

 

ところでこれ、シリーズ化前提?

 

 

 

 


NHK あさイチ あなたも危ない!? デジタル遺品 1/18放送

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番組詳報
https://www1.nhk.or.jp/asaichi/archive/170118/1.html

 

「あさイチ」は朝ドラとセットで録画して、時々観ている。
パソコンを使っていた人が突然死んだ場合、その遺品であるデジタル情報の取り扱いをどうすべきかという話。
番組の例では、交通事故で死んだご主人の遺産相続調査のため、パソコンを業者に頼んでパスワード解除してもらったところ、証券会社からのメールが多数あり、FX取引で1500万の損失が出ているのが判明。

また、ブログ放置によりコメント欄に不正URLを記入され、それをクリックした友人が不正請求を受けた例も。


自分が突然死ぬ事を認識している人は、ほとんど居ない。
だがそれはまさに「突然」起こる。

自分が死んだら、誰が自分のパソコン、スマホ等を見るだろうか、という事を意識して、あらかじめの備えをしておくのが大事。

火の鳥 宇宙編 単行本 ④ 作:手塚治虫

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宇宙編 初出:「COM」1969年3月号 ~ 1969年7月号

 


2577年 オリオン座ペテルギウス付近の宇宙空間を進む宇宙船。
冷凍睡眠から醒めたクルーたち(想定外)。この一年の当番は牧村だったという。
ブリッジに上がると、手足を縛ってミイラ化した牧村が。クルーの一人が、牧村は孤独に耐えられずに、発狂寸前で自分の手足を縛ったと推定。
窓の外に浮かぶ小惑星。これが宇宙船に衝突し、その衝撃で残りの4人が起こされた。船の損傷がひどく、燃料も消失して航行不可能。
それぞれが個人用のカプセルに乗り込んで脱出する事を船長の城之内が決定。食料は半年分、酸素は一年半分積み込める。出来るだけ行動を共にするが、燃料は乏しく、後は運任せ。
残りのクルーは猿田、奇崎、一宮ナナ(女性)。奇崎はナナを愛していたが、牧村を愛していたナナは避ける。
出発直前、城之内は牧村が最後に残した「ぼくはころされる」のメッセージを読んだ。

4人は宇宙空間を進む。カプセルのコントロールは効かないが、相互通信は可能。城之内は、牧村が残したメッセージの事を伝える。この4人の中に牧村を殺した犯人が居る。
牧村と、ナナを巡って恋敵だった奇崎が疑われた。だが、避けていたのは牧村だったと言う奇崎。
牧村五郎とみんなとの関係。天才的な技術者。地球帰還への水先案内人だった。
ナナは、牧村の脳が機械である事を知っていた。その事に苦しんでいた牧村。

ある時、カプセルが付いて来るのを猿田が見つけた。牧村のカプセルだが、誰が乗っているかは判らない。通信にも応答がない。
何日か過ぎ、奇崎のカプセルが次第に離れ始めた。奇崎は、ナナとだけ話したいと二人に頼み、城之内と猿田はスイッチを切った。
再度、ナナに求愛する奇崎だが、牧村を裏切れない、とナナ。
奇崎は昔を思い出していた。

彼らが住んでいたのは、ペテルギウス第三惑星ザルツ。この星の資料を、650光年離れた地球まで送るためのミッションに参加した。この仕事に人生の大部分を捧げる。地球を知っているのは7年前にザルツへ来た牧村だけ。
奇崎とナナは結婚の約束をしていた。ザルツ最後の晩に入ったダンスホールで体調を崩したナナを介抱した牧村。その事でケンカになる奇崎と牧村。だが圧倒的に牧村が強かった。驚く奇崎に、自分は282歳と言った。ザルツ人の平均寿命は150歳。自分は歳を取らないと牧村は言う。
出航してから35年ほど経った時、ある事件が起きた。

ナナから奇崎に当番を引き継いだ時、奇崎が牧村の装置の換気バルブを閉めていたのに気が付いたナナ。重要な違反行為としてみんなを起こすと言ったナナを必死で止める奇崎。結局その事はナナが胸に収めた。
奇崎に対するナナの気持ちは、そこで終わっていた。だがナナは、牧村とは肉体関係はなかった、と奇崎に話す。
奇崎のカプセルが離れて行き、交信不能になった。だが、誰が乗っているか判らない牧村艇はそのまま付いて来る。

城之内が、牧村から聞いたという火の鳥の話を始める。ラトマスという恒星系で出会ったという。
火の鳥が結婚したいと言い、その代償として牧村に血を舐めさせた。その時から牧村の老化速度は1/100に落ちた。
猿田は牧村から、ある星で女と懇意になり、一種の魔力で不老不死になったと聞いていた。
ナナは、牧村の脳が機械だった事を告白。ナナの思いは「あの死体は牧村さんじゃない!」。

何ケ月か過ぎ、彼らは彗星に引き寄せられて行く。彗星の核は12km程度。引き寄せられる途中で、城之内の機体は小隕石に衝突して彗星を周回する軌道に取り込まれた。
ナナと猿田、牧村艇は彗星から離脱。
二人だけになって、猿田が自分もナナが好きだったと告白。だが肥大した鼻のため諦めていた。
ナナを巡って話をするうち、牧村が告白。ある女から不老不死の薬をもらったが、それ以来肉体が若返りつつある。
この話は絶対に秘密という事で、猿田はそれを守った。
牧村艇に鳥の形をした光るものが近づくのを見る猿田とナナ。だが去っていく。

更に時間は過ぎ、食糧がほとんど尽きた頃、知らない恒星系に引き込まれて行くのを感じる二人。
幸いにも恒星への衝突は回避され、猿田とナナは近くの惑星の引力圏に取り込まれる。
目覚めた猿田。水も空気もある。空を飛ぶものを石で落し、食べてみると植物の味。
一方、同じように辿り着いたナナ。水を求めて植わっている植物を傷付けると、そこから血が出て来た。移動出来ないが動物だった。
牧村艇を見つけたナナ。扉を開けると、そこには赤ん坊がおり、ナナを見て泣き出した。その赤ん坊を抱きしめるナナ。

何年もサバイバル生活を続ける猿田。ある日近づいて来る人影に、ナナか?と思ったが鳥の足先を持つ女性だった。テレパシーによる会話。
女性はラトマス星系の惑星フレミルの住民。ラトマスは牧村が以前派遣されていたところ。だがここはその国ではないと言う。牧村を待っていたと言い、許せないとも。

牧村が派遣されたのは調査のため。彼女らは優しく迎えたが、牧村は狂ったように暴れた。
潜在意識を調べた結果、恋人との破局が原因と知り、ラダという娘が牧村の世話係として遣わされた。
最初はバカにしていた牧村も、料理、踊り、物語など、次第にラダの提供するものに依存して行く。
ある日、牧村のシャツを洗濯したラダは、恋人との思い出のシミを消したと激怒。元に戻せとの難題。だがラダは元通りにした。牧村の事は何でも覚えておきたいというひたむきな心。
愛し合うようになった二人。牧村はラダの兄に結婚の願いを伝える。兄はフレミル人と地球人は結婚出来ないと反対するが、それを押して結婚した二人。

ラダが兄を訪れ宇宙集像機を作ってくれと頼む。牧村の希望。反対するが、懇願されやむなく渡す。
集像機で地球の歴史、自身の生い立ちを説明する牧村。生まれた時から宇宙飛行士として育てられた牧村は、肉親の情愛とは無縁だった。
ある日美しい女性に会った牧村。彼女は牧村を誘惑した。牧村は初恋だったが、彼女にとっては遊び。センターを脱走して女性に会いに行ったが、冷たくあしらわれた。その時の不始末が原因で宇宙に飛ばされた牧村。

牧村は試しに、と言ってその女性を集像機に出した。だが今になってあなたを愛していると言う女。
兄に相談するラダ。牧村はその女を時々出して愛し合っているという。元々牧村の願望が形に現れたもの。だから反対した、と兄。
虚像の女にそそのかされて、牧村はラダを撃ち殺し、そしてその足の肉を焼いて食った。
残忍な性格が爆発し、牧村は村人を皆殺しにした。最後に残った女を追い詰める牧村。女は私を撃たなかったら不老不死にしてくれるという。彼女の生き血を飲めばそうなると言われ舐めてみたが、何の変化も感じない。笑い出す女。
怒って女を撃つが、すぐに生き返る女。逃げ出した牧村。

女は、牧村がその後どんどん若返って行ったと話すが猿田は、ロケットでは若返らなかったと言った。牧村はそれを隠していた。
自分そっくりの皮膚ケースを来て、赤ん坊の肉体でそれをコントロール。薄れる意識の中で、これは宇宙人の復讐だと気付き、最後のメッセージを書いた。残されたミイラはケースの抜け殻。
その赤ん坊を牧村艇に入れて送り出したのはこの女。この星は流刑星。ここで牧村はまた育ち、大人になったらまた若返り、を永久に繰り返す。
猿田が「お前はだれだ?」と聞くと、女は鳥の姿になり、飛び去って行った。

赤ん坊の声を聞きつけて洞窟に入り、ナナと赤ん坊になった牧村を見つけた猿田。ナナは火の鳥から牧村のいきさつを聞いていた。
ナナは、この星で最初に見た、血の出る動けない動物の話を猿田に聞かせる。足だけが放射状に集まった形。流されて来た囚人はつらい生活に耐えられなくなって、あの姿にメタモルフォーゼ(変態)してもらうという。そうすると永久に生きられ、嵐にも耐えられる。
女性の、この動物は乳も出るので、赤ん坊をそれで育てていた。動物たちと友達になったと言うナナ。
改めてナナに求婚する猿田。だが未だに牧村を愛しているナナは、この赤ん坊を育てると言って断った。

荷物を取りに行ってから戻った猿田。ナナはおらず、足の動物の下で泣いている牧村の赤ん坊。猿田はそれを槍で突き刺し、谷底へ捨ててしまった。
猿田の心に呼びかける声。ナナと一緒になるために赤ん坊を捨てた猿田に、ナナには永久に会えないと言う。
ナナは、この星に留まっていつまでも牧村の世話がしたい、とメタモルフォーゼを願い、火の鳥はそれを叶えた。

 


猿田の目の前に居るのがそのナナ。
牧村を殺そうとした罰として、猿田は醜い顔を孫々まで刻まれる。そして地球に送り返された。
単行本 第4巻 第一刷 1980年


感想
火の鳥のもたらす不老不死は、どんどん若くなるという事象として描かれる。恋愛を巡るイザコザの裏で必死に取り繕う牧村。
どんどん若返って行くという話は、ブラット・ピットが主演の「ベンジャミン・バトン」があるが、この話を参考にしたのだろうか。

流刑星でナナが牧村を見守り、生き続けるために「植物動物」になってしまった場面は、ずっと重い印象として胸の奥に残っている。

 



 

プリアンプのトラブル

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オーディオは、若い頃(20代前半)アンプ作りにのめり込んだ事がある。
毎月「無線と実験」を買って安井章氏と金田明彦氏のバトルを真剣に読みふけったものだった。安井氏はディスクリート派、金田氏はオペアンプ派。
私の方はその頃 ICそのものが音のためにいいとは思えず、安井氏の方に傾き、数点の製作例を統合して、自作アンプの製作を始めてしまった。

元々電気の知識はそれほどない。ただ安井氏の記事は実際ていねいで、自作する事を前提として書かれており、名古屋でもほとんどの材料を調達出来た。
今使っているのは、プリアンプが2作目、パワーアンプが3作目になる。実働30年以上(!)

そのアンプが最近「ブーン」というハムノイズを出す様になった。ラジオでそこそこの音声が出ている時は気にならないが、無音状態になると圧迫感となる。
プリアンプ、パワーアンプのどちらに要因があるかを確認するため、プリアンプ電源のみを落とすと、スッとハムノイズが消えるから、犯人はプリアンプ。
プリアンプを作った時、このハムノイズにはずいぶん苦労させられ、各基板のアース位置をとことん模索して要因をつぶして来たので、ハムノイズ素性については自信がある。
ただ、結婚以来とんとオーディオから離れ、FMラジオを聞くだけの状況が長く続いた。カセットもいつの間にか動かなくなり、気が付いた時にはUSB再生によるデジタルオーディオ全盛。

しかし毎日聴いている、FMのない生活は考えられない。そこで久しぶりにコードを全部外して中身のチェック。

 

箱は当時の流行りだったテクニクスの真似で薄型を狙ったのだが、市販のものでは見つからず、会社の現場のおっちゃんに頼んで1.2mm厚の鋼板を曲げてもらった。塗装は黒の艶消しスプレーで。付きが悪くて所々剥がれている。

 

基板はガラスエポキシ。無極性のコンデンサはジーメンス製(側面黄緑のサイコロ状)。初段の差動アンプは東芝製のFET 2SK30A。ペアリングで特性を揃えたものを2つ、熱結合している(エポキシで接着)。

しかし蓋を開けてみたものの、原因が判るわけではない。どこかアースが浮いていないか確認したが、そんな箇所はない。
長年の使用でボリュームを動かすとガサガサ言ったため 、数年前に部品交換している。入手性の関係で安物になったが、その交換当時、ハム音などは皆無だった。
結局何も為すことなく蓋を閉じる・・・・(おいおい)。

ネットで調べると、旧いアンプがハム音を出すのは、電源部の電解コンデンサの容量抜けでリップルが乗って来るというもの。記事はコチラ
ただ、この例では、分解掃除でたまたま治ったという結論。そうなるとプリアンプだけに時間がかかりそう。
そんなわけで、これまたネットでつなぎのアンプ探し。DENON製 PMA-390RE。こちら
価格.comの口コミでもそこそこ。プリアウトがあるから、まだ生きてるパワーアンプを活かすことも可能。で早速楽天から発注。価格は送料、代引料サービスで\28,000。

 


2日ほどして到着。早速配線して、まず新しい方でスピーカを鳴らしてみたところ、ラジカセみたいなペラペラな音が出て来る。そんなバカな、と改めてリスニングポイントで聴いてみると、さっきよりはマシだが、やっぱりいつも聴いている音とは違う。
そんなら、とプリアウトをいつものパワーアンプに繋いでチェック。あー、やっぱりいつもの音だ。アンプ自作はしてみたものの、初めて買ったパイオニアのモジュラーステレオ以降は、全て自作アンプの音しか聴いておらず、自信がなかった。
ただ、慣れた音が「いい音」なのかどうかは判らないのだが・・・

しかし今回のアンプでは、連動する電源コンセントの総容量が100Wまでであり、FMチューナー、CDプレーヤーに加えてパワーアンプまでは繋げそうにない。日常の取り扱いを考えると、連動コンセントBOXを作ってからの運用になりそう。
今のところは、新アンプのBASSを少し持ち上げて聴いている(ちょっとニュアンスが違うんだよな)。

プリアンプは機会を見て、電解コンデンサの総取っ替えを考えている。

今回の事が刺激になって、ちょっとオーディオも見直そうかと思っている。スピーカだって30年以上経ってるんだから、アルニコだったら完全にアウト(幸いフェライト磁石ですが)。
耳を傷めるほどの大音響で聴くわけじゃないから、小さくてもイイ音が出るスピーカが欲しい。

 


 

ドクター・ストレンジ 2017年

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監督スコット・デリクソン

 

ベネディクト・カンバーバッチ    ドクター・ストレンジ
キウェテル・イジョフォー      バロン・モルド
レイチェル・マクアダムス      クリスティーン・パーマー
ベネディクト・ウォン        ウォン  
マイケル・スタールバーグ      ニコデマス・ウエスト
ベンジャミン・ブラット       ジョナサン・パンクボーン
スコット・アドキンス        ストロング・ゼロッツ
マッツ・ミケルセン         カエシリウス
ティルダ・スウィントン       エンシェント・ワン

 

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=SXS78ZivzE8

 

 

医師のクリスティーン。撃たれて脳内に弾が入っている患者の手術を、天才外科医ストレンジに依頼。余裕で手術をするストレンジは手術室で音楽を流させる。手術は成功した。
その夜、晩餐会に出席するため車で向かっていたストレンジは、ちょっとわき見をした隙に対向車と衝突して瀕死の重傷を負う。

 

同僚のウエストが手術したが、ストレンジの両手はやっと動く程度で、とても手術の執刀は無理。最先端の医療を試し、手を尽くすストレンジだが回復しない。寄り添っていたクリスティーンも離れて行った。
ある日。脊椎損傷の患者が歩ける様になったという話を聞いて、本人に会いに行くストレンジ。バスケをしているジョナサン・パンクボーンがその本人。
ネパール、カトマンズのカマー・タージに行けという言葉だけを聞く。

 

カトマンズに着くも、誰もカマー・タージを知らず手掛かりはない。そんな彼の後を追う男。ストレンジは物盗りに遭い、時計や荷物を奪われそうになる。そこをつけて来た男に助けられる。
カマー・タージを捜している、と言うと男は、ある建物の扉を開けて案内する。
そこで皆を指導するエンシャント・ワン。男は弟子の一人モルドだった。
手の治療を期待していたストレンジは、エンシェント・ワンの言う、精神によるコントロールを信用しない。そんなストレンジに手荒い方法で多元宇宙のイメージを見せつけるエンシェント・ワン(アストラル照射という、幽体離脱)。
傲慢な性格のため、追い返されるが、何時間でも入り口で待つストレンジに、モルドが助け船を出す。何とか入門を許される。ストレンジにカマー・タージを教えたジョナサンは、かつての弟子だったが、自分が歩けるようになったところで道場を退き、普通の生活に戻っていた。
この道場にはかつてカエシリウスという弟子が居たが、禁断の書から重要なページを盗み出していた。

 

修行に励むストレンジ。基本技の、呪文によりリングを出現させ、任意の場所に瞬間移動するものが、なかなか出来ない。エンシェント・ワンは、その技でストレンジをエベレスト山頂に置き去りにする。30分以内に呪文を使って戻れないと凍死。
何とか生還するストレンジ。技をマスターした。

 

カマー・タージで熱心に勉強するストレンジ。書庫係のウォンの目を盗んで、高度な技についても知識を積んで行く。
ある日、ウォンが不在の時に禁断の書「カリオストロ」を読み進める。アガモットの眼というブローチを首から掛け、書の通りにすると、食べかけのリンゴが元に戻った(時間の巻き戻し)。その技を使ってカエシリウスに持ち去られたページを呼び戻す。その内容を読むストレンジ。

戻って来たウォンは、ストレンジの行為を戒める。アベンジャーズが実世界の脅威から世界を守る一方、この道場の役目は魔法の脅威から世界を守っていると説明。
またウォンはストレンジに、この世界のニューヨーク、ロンドン、香港の三ヶ所に「サンクタム」という時空間のゲートがあり、それを魔術師のマスターが守っていると教える。

 

そこにカエシリウスが部下らと突然乱入。加勢に来たモルドと共にストレンジはロンドンのサンクタムに押し出される。

慣れないながらも部下らを倒し、カエシリウスとの一騎打ちに持ち込むストレンジだが、戦いに慣れておらず劣勢に。その危機を展示物だったマントが救う。
マントのアドバイスで、カエシリウスを拘束具で捕らえるが、彼の話を聞かされる。
時間を超越する暗黒次元こそが、人類を幸福に導く事だと言う。そのため暗黒次元からドルマムゥを召喚するのがカエシリウスの目的。
またカエシリウスは。エンシェント・ワンが不老長寿を維持しているのも、彼女が暗黒次元から力を得ているからだと断言した。

 

話につられている隙に、カエシリウスの弟子に胸を突き刺されるストレンジ。とっさにリングを作ってニューヨークの自分の病院に移動。クリスティーンに「心タンポナーデだ」と言って倒れ込む。心膜から血液を抜き取るために胸を刺そうとするクリスティーンに、離脱した体が「もう少し上」とアドバイス。仰天するクリスティーン。
何とか助かり、去って行くストレンジを見送るクリスティーン。

 

戻ったストレンジ。カエシリウスは逃げていた。その元に合流するエンシェント・ワンとモルド。マントを使いこなしているストレンジを見て、マスターの称号を与える。そしてロンドンと香港のサンクタムを守るよう指示。
そこにカエシリウスが戻って来た。ストレンジは全員を実世界に影響のない「ミラー空間」に引き込む。ねじれ、回転する街の景色の中で繰り広げられる戦い。
最後にエンシャント・ワンがやられ、実世界へ転落した時に瀕死の重傷を負った。ストレンジの病院に担ぎ込み、緊急手術。だがストレンジの指は思うように動かない。
エンシェント・ワンが体から離脱し、ストレンジもそれを追う。エンシェント・ワンが暗黒次元からパワーを得ているのは事実。未来を救うためにやっている事だが、状況は良くならないと嘆く。
最後に、闇の支配者、ドルマムゥを阻止するよう遺言するエンシェント・ワン。

 

香港のサンクタム。ウォンが守りを固めていたが、カエシリウスがドルマムゥの力を使って暗黒次元を開こうとしていた。そこへ救援に駆け付けたストレンジとモルド。
開かれ始めた暗黒次元に飛び込んだストレンジだが、ドルマムゥの前に全く歯が立たずあっさりと殺されてしまった。だが再び現れるストレンジ。アガモットの眼を使って「カリオストロの書」の時間巻き戻しループの中にドルマムゥを取り込んでいた。何度殺されても復活するストレンジ。
ストレンジは、この無限ループを解除する条件としてカエシリウス(含む部下)の永久追放を求めた。そして香港は時間巻き戻しにより復元された。ドルマムゥに取り込まれるカエシリウスたち。

 

平和が戻ったが、モルドはエンシェント・ワンが暗黒次元を使っていた事が許せず、仲間からは離れて行った。

久々に自宅へ戻ったストレンジ。魔術師としての自分の運命を受け入れようとしていた。ふと気が付くと指が自由に動くようになっていた。

 

エンドロール(その1)
「マイティソー」のソーと語り合うストレンジ。弟のロキと共に父親を探しに来たと言う。喜んでサポートすると言うストレンジ。

 

エンドロール(その2)
かつての同僚、ジョナサンを訪れるモルド。ジョナサンが魔術により歩けている状態を、再び魔術で奪い去った。「この世界には魔法使いが多すぎる」との言葉を残して去って行く。

 

 

感想
「アベンジャーズ」関連は、「アイアンマン」のシリーズと、TVでやっている「エージェント・オブ・シールド」ぐらいしか知らないが、予告動画が面白そうだったんで、ついフラフラと・・・

ストレンジが手術の時にかけていた音楽が、チャック・マンジョーネの

Feels so Good」。手術でキモチい~、は確かに不謹慎だわ。

 

自分の腕に自信満々だった男が不慮の事故で技術を失い、一縷の望みをかけてネパールまで行く。話の持って行き方としては自然で、印象は悪くない。モルドとの出会いのわざとらしさも、まあ許そう。

エンシェント・ワン役のティルダ・スウィントン。ナルニア国では、ちょっと逝っちゃってる系の魔女やってたが、本当にスキンヘッドになって、体当たりの演技。
ストレンジに見せる多元宇宙は、最近の天文学で言われている

パラレルワールド」。この辺りはなかなか面白かった。

リングを作って、くぐると別の場所、ってのは「どこでもドア」かい。

 

カエシリウスとの戦いの中、劣勢のストレンジを助けるマントがイイ。要するに徳の高い魔術師でないと使いこなせないと言われていたものが、勝手にストレンジを助ける、そのやり方が人間っぽい。

 

「ミラー空間」の中での戦いは、見ている時はけっこうダイナミックで面白かった。CGと実写の組み合わせも、そこそこうまく行っている。そこそこ、というのは、建物などがどんどん巻き込まれて行く時のエッジで、空のかけらが残っていたり、部分的に白く抜けていたり、とか。
その点で行くと「インセプション」でのビル群がぐにゃりと曲がる描写と比べれば少し劣る。
だがスピード感でそれを補っており、これはこれで好感が持てるか。

 

無限ループの繰り返しは「ルーパー」とか「オール・ユー・ニード・イズ・キル」で繰り返し使われているから、さほど目新しくはないが、そんな話に乗って来る暗黒次元のボスがイマイチ、かな。

 

アベンジャーズの世界とは違う次元での話、という事で、これからもシリーズが続いて行く前提。
このテの映画であんまりツッコミ入れてけなすよりは、どっぷりと楽しむのがよろしいようで。

しかし「心タンポナーデで心膜から血液を抜き取らないと死ぬ」なんて、Dlifeで「緊急救命室(ER)」観ていたから、サクっと理解出来たのが良かった。

 

新聞小説 「国宝」 (1) 吉田 修一

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作:吉田 修一 画:東 芋

第一章 料亭鼻花丸の場1~25 (1/1~1/26)

長崎、丸山町の老舗料亭「花丸」に集まる黒塗りの車。黒紋付の正装で降りる親分衆。立花組の新年会。長崎丸山は、三大遊郭の一つとも呼ばれる。時は昭和35年。

組を仕切る立花権五郎が女房マツを伴って登場し、新年の挨拶を皆の前で行う。乾杯の音頭を取るのは宮地組の大親分。戦後は時代の変遷と共に立場を変え、宮地自身は土建屋として実業家然としている。
権五郎とはかつて杯を交わし、一応兄貴分ではあるため、宴席では権五郎、と呼び捨てにするが、実力としては権五郎が数段上。

 

 

マツが愛甲会の溜まりに居る男を見て、どっかで見たことがある、と権五郎に話しかける。若頭の辻村の隣で座っている垢抜けした男。踊りの手振りを芸者に披露する姿を見て「あ」と合点する権五郎。
二代目 花井半二郎。関西の歌舞伎役者で、映画俳優としても世間に知られていた。
権五郎が辻村を呼ぶと、長崎で映画の撮影があり、この新年会の話をしたところ、来てくれたという。
挨拶に行きたい権五郎だが、お歴々の前で彼だけのために立つわけにも行かない。そんな権五郎の様子を見て、半二郎が挨拶に来た。権五郎の出す杯を受ける半二郎。

半二郎から、権五郎の名前を歌舞伎の演目(「暫(しばらく)」の鎌倉権五郎)から取ったそうでんなあ、と問われ、それまでの事を思い出す権五郎。

愛甲会の元は、興行師だった熊井勝利が興した組であり、戦後すぐ権五郎と手を組み、当時長崎で名門だった宮地組を追い詰めて行った。
昭和27年に起きた宮地組と愛甲会との抗争。愛甲会の5人の組員を待ち伏せした20人の宮地組。勝負には勝ったが卑怯だと笑い者にされ、これを潮目に宮地組は勢力を落とす。後に15年続く「長崎抗争」の始まり。
この乱闘から4年後、愛甲会の打った興業の挨拶当日に、熊井が宮地組に襲われた。素手で日本刀に立ち向かいながらも、28歳の若さで絶命した熊井。その弔い合戦の先頭に立った権五郎。熊井が常々「お前の名前は弱々しい」と言っており、歌舞伎の狂言「暫」の主人公、権五郎はどうかと提案。これこそが自分の名前だと思った権五郎。

半二郎は既に席へ戻っていた。8年前、熊井がこと切れた時の事を思い出す権五郎。
熊井の死で報復を恐れた宮地組は大阪、神戸からの助っ人を頼み、一気に愛甲会、立花組を潰そうとした。だが開戦の直前、長崎県警がようやく動き、事前に鎮圧された。
立花組と宮地組の睨み合いはその後も続くが、商売に長けた宮地は本格的に土建業に進出、娘婿などの身内を議会に送り込んで、公共事業の予算を確保。
一方、権五郎の立花組は、裏社会との繋がりを深め、拳銃、麻薬の密輸に手を染めて行く。

再び潮目が変わったのが昭和34年(5年前)。長期化する睨み合いから若い組員が暴走。立花組の組員が出所したところを宮地組が襲撃。死人こそ出なかったが、一般市民が巻き添えで大ケガをする惨事となった。
自分の保身のため、権五郎に手打ちを申し入れた宮地だが、これにより宮地組は一気に傾く。
権五郎はこの機に乗じて、長崎の裏稼業の仕切りを一手に集中させた。

宴もたけなわになった頃、舞台に突然幕が引かれた。舞台裏からはドタバタと音が。何が始まるのかを知っていて、ニヤリと笑う権五郎。
大太鼓のドロドロドロ・・・の音と共に幕が上がり、現れたのは遊女墨染。半二郎が「関の扉でっか?」と驚く。
歌舞伎舞踊の名作「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」の名場面。桜の巨木に控える関守の関兵衛。
巨木の中から立ち出でる遊女墨染。幻想的な舞いで関兵衛を誘惑。座敷の誰もが釘付け。
見事な墨染でんなあ、こんな達者な芸妓さん、と言う半二郎に、あれは立花親分のとこの、中学生の息子だと教える辻村。

見事に繰り広げられる墨染と関兵衛の踊りと掛け合い。演目が終わって幕が引かれても延々と続く拍手。この演目の仕掛け人はマツ。根っからの芝居好きで、新年会の余興には見合わぬ大金をはたいて準備して来た。
演じた二人をねぎらうマツ。墨染の喜久雄と、関兵衛をやった部屋住みの組員徳次は、おしろいも流れるほどの汗だく。促されて風呂に向かう。喜久雄は十四、徳次は十六。妙に気が合い、コソコソと悪さをする仲。

徳次は、華僑が芸者に生ませた子で、終戦の混乱が収まると妻子・妾を捨てて中国へ戻った。徳次の母は芸者に戻ったが、原爆症で徳次が四歳の時に他界。遠縁の家で育てられたが、三年ほど前に立花組の若頭がスマートボール屋で見つけ、何度か会ううちに組へも出入りするようになった。

風呂場で体を洗いながらじゃれ合う喜久雄と徳次。徳次を通じて彫師の辰に入れ墨を頼んでいた喜久雄。徳次の背中にはスジ彫りの虎。辰は、立花組の惣領息子の背中に、親に内緒で彫り物をする事を恐れていた。
喜久雄と恋仲の春江。春江と一緒に入れようと思っている絵柄はミミズク。ミミズクは一度恩を受けた人間は決して忘れないという。

喜久雄が湯船に体を沈めた時、地震と間違うばかりの地鳴りと男たちの怒鳴り声が聞こえて来た。

 

 

宮地の殴り込みかも、と言う徳次。出ようとする喜久雄をマツと徳次が必死に止める。喜久雄の視線の先の座敷ではとんでもない修羅場が繰り広げられている。

二階へ逃れた権五郎。立花の男たちが守るが、武器を持っていないため食い止めるだけで精一杯。そんなところへ愛甲会の辻村と半二郎が逃げ延びて来た。二階に上がる追っ手。権五郎は、二人を逃がすため、襖を外して振り回す。宮地と立花の間で繰り広げられる乱闘。
奥の間に逃げていた半二郎の肩を引く者。そこに拳銃を持った辻村。
辻村が襖を蹴破り、権五郎の後ろに出た。振り返る権五郎。「なんの真似や?」と言う権五郎の腹に向かって銃が撃たれた。

 


感想
吉田 修一氏については「悪人」「さよなら渓谷」「横道世之介」などの映画、ドラマ等の原作を書いている中堅作家。ただ、まだ作品を読んだ事がない。
今回の作品は「お知らせ」によれば題材が「歌舞伎」との事。

まず読み始めで、のっけからヤクザの話。朝日新聞が右翼の方棒担いどったらいかんだろう、と突っ込みたくなるところだが、まあ気にせず読み進む。
舞台は昭和35年の長崎。被爆の傷跡も書き込みつつ、ヤクザの抗争の中で育つ主人公(と思われる)喜久雄の周辺が描かれて行く。
無理のない文体でグイグイと引き込まれて行く。喜久雄が演じる女形の墨染が演じる動きも、数回読み返して堪能した。

 

第一章では、父親の権五郎が、新年会の最中に殴り込みをかけられて命を落とすところまで。
さて、喜久雄少年はこれからどんな人生を歩むのだろうか?

それから挿絵を描く束 芋氏。この絵にはびっくり。墨流しの技法だろうか、人の顔が墨でぼかされて流れている。まるで幽体離脱。
挿絵にここまで心奪われる経験というのが、今までなかった事であり、今度が楽しみ。
 

NHK モーガン・フリーマン 時空を超えて「重力は幻想なのか?」2/10放送

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番組紹介
http://www4.nhk.or.jp/P3452/x/2017-02-10/31/9886/1988015/

字幕起こし
http://kakiokoshi.hatenablog.com/entry/2017/02/11/021317


最先端の科学で重力の謎に迫る。
幼い頃の遊び。木の上から狙った場所に石を落とす。重力を疑わなかった。
重力は、宇宙における最も基本的な力。ナルギス・マヴァルヴァラ(天体物理学者)はそれを疑う。

ニュートンの説。質量が大きいほど、距離が近いほど互いの引力が大きくなる。その理由を明らかにしたのがアインシュタイン。

 

時間と空間は「時空」の織物に組み込まれている。質量を持つ物体が動くと、時空という織物にさざ波「重力波」か立つ。
重力波を観測する「LIGO」長さ4kmの直交する検出器。検出精度は原子の直径の1/100万。2002年から観測を開始したが、10年間成果がなかった。
2015年にLIGOは遂に重力波を検知。科学界の大きな反響を起こした。

物理学者は、重力の正体も素粒子だと考える。

 

ツヴィ・バーン(量子物理学者)。パターゴルフに例えて重力を考える。
光子(素粒子)をボール二つのモデル(グルーオン)としてあらわす。素粒子に加わる4つの力(①電磁気力 ②強い力 ③弱い力 ④重力子)が作用して原子核を構成している。
この中の重力子の働きを導き出すのは非常に困難。それを可能にする手法が「ユニタリ性メソッド」→パターゴルフに例えれば、道のりを細かく区切って進め、確実にホールへ入れる。
その結果、重力子の正体は、二つのグルーオンがペアになったものだと考えると説明がつく。
その説を採用すると、宇宙は「グルーオン」に満ち溢れ、物体同士でグルーオンのペアが交換される事で物体が近づいている事になる。

 

ドラガン・ハジュコヴィッチ(物理学者)。反物質の研究。
反物質こそが宇宙を膨張させている。宇宙を占める空間→量子真空。物質と反物質のペアが生成と消滅を繰り返す。見かけ上、重力はゼロ。
銀河は物質で出来ている。全体のバランスを考えれば、銀河と銀河の間には反物質の方が多く存在→斥力として引き離す。現在、ダークエネルギーによる重力の説明が多くの説として言われている。どちらがシンプルか?

 

ある大胆な説→重力が熱力学的に生じた現象。エリック・ヴェリンデ(物理学者)が提唱。
エントロピーと重力との深いつながり。質量を持つ物体が重力を感じるのは、宇宙がその物体の内部でエントロピー量を増大させているため。
重力の正体を突き止めるためには、強烈な重力が働く場所を調べる→ブラックホール。だが光さえ出る事が出来ない。どうやって観測するのか。

 

シェップ・ドールマン(天文学者)。ブラックホールの縁「事象の地平面」の周辺では光が曲がるため、ブラックホールの影が作り出される→その様子を観察する事で、重力の作用が判るかも知れない。
いくつもの天体望遠鏡を連携させ、ブラックホールを観測するシステム(国際共同研究プロジェクト)。


感想
リンゴを落としてすぐ認識出来る、自分たちにとって身近な「重力」。
それが、我々が思っているより、かなりやっかいなものだという事は良く判った。

 

ただ、このシリーズの悪い癖で、無理やり身近な例えを当てはめて、却って理解を妨げるようなところがある。

重力にまつわる最新研究を寄せ集めるのはいいが、全然消化不良のまま無理やりくっつける(PPAPみたいに)のは頂けない。

 

このシリーズも、結構当たり外れがある。テーマの咀嚼と見せ方へのアプローチが、チームによってかなり異なるのだろう。

 

 

NHKスペシャル 見えない“貧困”~未来を奪われる子どもたち~ 2/12放送

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番組紹介
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170212

番組詳細
https://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/1009/1036211/


今、子供たちに広がる見えない貧困。
1/18に大阪で行われた実態調査(全市町村の小5生、中2生とその家庭5万世帯)。収入が中央値の半分以下の世帯(困窮度1)は12.3%(四人家族で年収244万相当)
調べたのは「剥奪指標」。200の質問より抽出。

 

指標の例(%)
                                困窮度1  標準世帯 
医療機関への受診が出来なかった         7.7    0.6
学校から帰っても親がいない         50.1    37.7
家族旅行が出来なかった           46.2   7.8
塾に通わせられなかった             35.7   3.6
誕生日、学校行事に参加出来ない    標準世帯の10倍以上
子供に新しい服等が買ってやれない   27.6   2.3
スマホがある                       61.5   27.6
ゲーム、TVがある                   標準世帯と同等
知識を深める「本」がない             29     16.8
運動用具がない                   28.3   19.1

 

スマホは困窮家庭の連絡手段として必須。ゲーム、TV等はあるので、表面上困窮度が把握し難い。

 

スタジオトーク
高橋みなみ:自分も母子家庭だったので、自分ながらに我慢を覚えてしまった。
           
東京都大田区での調査。小5生とその保護者を対象にしたもの(3500世帯)。

                               要支援世帯  標準世帯  
頑張っても報われると思わない        23.7      16.4
自分は価値がある人間と思えない    50

 

千葉県内の公立高校のアルバイト調査。アルバイトをしている生徒の55%が、進学費用の一部又は全部を自分で負担。奨学金を借りる生徒は二人に一人。
高3の真央さん。成績はトップクラス。父親は年金生活者。家のローン残があり母親はパート。奨学金を借りるため進路相談。だがその前に入学金78万が必要。教育ローンを借りる必要がある。真央さん:入るのは出来るけど「しんどい」。

教員:勉強に専念すべき時に、心苦しい。

 

スタジオトーク
子供の貧困の放置は進学率低下、非正規雇用増加を招き、40兆を超える損失。
高橋みなみ:世間や国は、目に見えるものは助けるが、声を上げられない人の救済が重要。子供が子供として生きる権利、親は親として生きる権利。それを守るのが国。

 

感想
今の子供たちが抱える問題を知って、本当に驚いた。
特にかわいそうなのは真央さん。定年後まで残る住宅ローンなんか組むのがそもそもダメ親。子供が建物の犠牲になっていいわけがない。
奨学金についても、国がやっている割に、返済の要求など、かなりえげつない事をやるとも聞いている。

 

それにしても高橋みなみ。AKB48のリーダーとして、かなり鼻についた時期もあり、トーク番組でのバカ過ぎるリアクションも、本当に嫌いだった。だが母子家庭の環境で、彼女なりに家のため、芸能界に飛び込んだのだろう。リーダーだった時の、あの迫力のバックボーンを見た気がした。

 

 

 


名古屋行き最終列車  2017  2/6 ~9放送

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番組紹介
http://www.nagoyatv.com/nagoya_saishu2017/


第一話   大杉漣  波岡一喜  関太(タイムマシーン3号) 

 

 

落とし物センターでレードル(ラーメンのつゆを入れる道具)を受け取る男。
ラーメン屋「円楽」の経営を引退したタケシ(大杉漣)。久しぶりに元弟子の店「清楽」へ行く。元弟子の清(波岡一喜)、バイトの青年(関太(タイムマシーン3号))を雇って忙しく働いている。
券売機、セルフの水サーバ等を見て少し違和感を持つタケシ。清が自家製麺の件で一週間ほど店を開けるので、その間店を見て欲しいとの申し出。
快く申し出を受けて働き始めるが、セルフ対応、ロットを守るための麺茹で用タイマー、はては子供連れで小鉢に取り分けて欲しい、との客も断る始末。だがそれはバイトが単に指示されてやっている事。
3日目になってタケシは券売機、水サーバを撤去させ、客の顔を見て商売をしろと叱咤。最初は戸惑うも、次第にタケシのペースを理解するバイト。

 

「殿、ご乱心」のメールを受けて一日早く帰って来た清。清にタケシは、タイマー設定通りに茹でて作ったラーメンを食べさせた。少し柔らかいと言う清。タイマー通りなのになぜ?
そのタイマー設定を決めた時は、多分冷房がガンガン効いていたのだろう。今は気候が違う。また工事現場の男と、OLでは好みも違う。そういう事も含めて考えたらタイマーには意味がない。
ネットで注目されてから、客をこなす事ばかりを考えていた、と反省する清。

 


第二話     吹越満  松下由樹  小林豊(BOYS AND MEN) 宮﨑香蓮

 

 

落とし物センターでサイリウム(コンサートの光り物)を受け取る主婦。
金魚の販売を夫婦でやっている深見(吹越満)。妻の奈美(松下由樹)を名古屋駅まで迎えに行くのが週末の日課。娘の美咲(宮﨑香蓮)が進学で東京に行ってからは、金曜夜から日曜夜までお互いに干渉し合わないという取り決め。親の面倒も、娘の世話もしたと言う奈美。
深見も自分のやりたかった金魚の研究をやるようになった。親から継いだ仕事だが、過去に挫折して新品種から遠ざかっていた。今、5年かけて生み出した新品種がモノになりかけている。
奈美は友達の主婦と、アイドル歌手の追っかけをやっていた。
深見が迎えに行った夜、奈美がもう一人の相手とラブホテルに入るのを目撃。実は主婦仲間だったが、奈美からのメールは「友達の家に泊まる」。
奈美が帰ってからその事で口論になるが、深見が突然ギックリ腰で倒れる。脊髄に損傷があるかも知れない、と一週間の入院を言い渡される。
金魚の世話は奈美が見る事になっていたが、ある日追っかけ仲間の主婦が、なかなか取れないチケットが取れたと誘いのTEL。3時間程度なら大丈夫、と奈美は出掛けてしまうが、酸素供給をセットするのを忘れ、帰宅した時には新品種の四匹が全滅。
深見が無事退院して、水槽の金魚を見に行くと、新品種の金魚がいない。訳を聞こうと家に戻るが「金魚は、酸素不足でお亡くなりになりました」との置手紙を残して奈美が姿を消した。その晩は帰って来ず。

 

翌日の晩、妻から名古屋駅まで迎えに来て、とのメール。奈美は業者仲間から新品種を買い戻して来たのだった。深見はいつも新品種が出来ると、決まった仲間に売って、互いに育てるという手法を取っていた。その情報は、娘の美咲から教えてもらった。
家に戻ると、美咲が父から頼まれていたプレゼントのバッグを持って待っていた。

 


第三話    松井玲奈  浜野謙太  JOY  

 

 

落とし物センターでトロンボーン用のマウスピースを受け取る男。
勤める会社が倒産して無職になった吉川かすみ(松井玲奈)。やる事がないまま終電に乗る。
富士松駅前でトロンボーンを吹く柏木タカシ(浜野謙太)。学生の頃、モテようとしてリサイクルセンターでトロンボーンを買い、それ以来独学で練習している。人に聞かせようと駅前に立つが、いい場所はみな取られ、小さな駅でしかやれない。
そこに訪れるかすみ。自分の演奏を聴いてくれていると喜ぶタカシ。
タカシは「安全太郎」のメーカー「トクデンコスモ」で働いていた。
かすみは虫歯のため、叔父の歯科医院で治療を受け、その帰りにまた富士松駅に着いた。痛みのため失神するかすみだが、それを感動と勘違いするタカシ。
ハローワークの指定日に間に合わずヤケ酒を飲んで帰ると、またタカシに出会う。ビールを飲みながらタカシの演奏を聴くうちに「案外いいかも」と見直すかすみ。
酔った勢いで調子に乗ったタカシは、かすみをラブホに誘う。
翌日自宅でトロンボーンを抱いて目を覚ましたかすみ。母親が、かすみの事がネットで話題になっていると言って来る。

タカシとのやり取りが動画にアップされていた。見出しは「ラブホに誘ったが全否定で断られ泣かされる男」。記憶になかったが、相当辛辣にやり込めている。
トロンボーンを返しがてら、タカシの会社に行くが、無断欠勤しているという。アパートまで行くと、例によってウジウジと愚痴の羅列。逆ギレしたかすみは、客を集めてやるから堂々とトロンボーンを吹けとハッパをかける。
翌日、集めて来たのは会社の人たち。同僚の男(JOY)。みんなタカシがトロンボーンを吹いている事を知らなかった。

 

その後突然タカシは姿を消した。
しばらくしてから突然ネットで注目される様になったトロンボーン奏者。タカシだった。3ケ月で7千万ダウンロード。

会社でもその話でもちきり。
社長が声をかけるとオレンジの「安全花子」を持って笑うかすみの姿。ここでバイトをやっていた。

 


第四話   六角精児 、入山法子、 谷花音

 

 

名鉄の落とし物センターに勤める宗太郎(六角精児)。乗り鉄にのめり込み、婚期を逃している。
宗太郎の母親は、乗り鉄の弟子の菜々子(谷花音)に出会いのチャンスを作ってくれと、お菓子をエサに頼む。ブログ仲間の篠山あやめ(入山法子)を候補として引き合わせる。
あやめは電車関連の音を追いかける「音鉄」であり、以前車掌をしていた宗太郎の声も覚えていた。菜々子を含めて三人で毎週録音旅行に行くうちに、どんどん親しくなって行く。
途中ダイヤモンドクロスを通過する音の場面(大江-東名古屋駅間)。カタタタンという四分音符。

ある日、急に菜々子の都合が悪くなり(母親の作戦による指示)、宗太郎とあやめ二人だけでの録音旅行をする機会があった。いい雰囲気になったが、帰りの電車の車掌の声に釘づけになるあやめ。聞くのは二回目だが、あの人の声は宇宙で唯一、だと言って聞き入る。

 

別の日にあやめを食事に誘う宗太郎。偶然か、その日のアナウンスも前回の車掌だった。一宮で下車して別れる宗太郎。

「ありがとうございました」と頭を下げる姿に違和感を感じるあやめ。
終点の名古屋駅に着く直前に、例の人の声で「篠山あやめ様に落とし物が届いています」とのアナウンス。ホームで待っていると、その車掌、唐沢が来て忘れ物センターの森本主任から、と言って紙袋を渡す。その中にはパノラマカーのミュージックホンが鳴るキーホルダーが入っていた。


感想
昨年から観るようになった。名古屋テレビの深夜枠で、この時期に四夜連続で放送される。全四話中、三話が昨年の人間関係を継承しており、ある程度安心感が持てる。

第一話。
昔ながらのやり方を守って来たラーメン屋が、元弟子に教えを思い出させる。行きつけの店や、店までの通いに使う名鉄電車とか、演出になかなか好感が持てた。

第二話
弥冨の金魚業者が舞台。業者としての専門性がある程度反映され、酸素供給チューブが重要な役割をしているところなどは、下調べを良くやっていると評価。
ただ、弥冨を通る線は近鉄が主導権を握っているので、この話の出番は名古屋駅ばかり。ダンナが弥冨から毎回名駅まで軽トラで来るのでは、電車の出る幕がない・・・

第三話
中身のなさにびっくり。でも、まあ深夜枠だし気楽に観るという話もあっていい。浜野謙太は朝ドラ「とと姉ちゃん」でイイ味出していたが、在日ファンクのリーダーでレッキとしたミュージシャンであり、腕のいいトロンボニスト。
内容はともかく十分楽しめた。またここに出て来た「トクデンコスモ」は、道路の旗振り人形「安全太郎」を実際に作っている会社デス。

第四話
第一話~第三話まで、話の枕でチョイ役として出ていた六角精児の主演。今回は「音鉄」というディープな世界を表現してくれた。番組の最後に出て来たパノラマカーのキーホルダーはこちら

 

 

 

ネットワークプレーヤー

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前回書いた様に、オーディオについてはカセットからCDへの乗り換えに失敗して、ずっとFMを聴いているだけの状態が長く続いた。
それでも5年ほど前にネットで見ていたら、CDプレーヤーでUSBメモリから再生出来るものを見つけて、遅まきながら購入したものの、フォルダの階層は全く制御出来ず、曲名もディスプレイに出て来ない。そんなわけで、音楽の録音はネットのアナログ情報を「午後のこーだ」でMP3化してCD-Rに焼き込み、カーステレオで聴く、というパターンが定着。
ただ、そうこうしているうちに、買い替えた車のカーステレオにUSBの差し込み口が。使ってみたら、こりゃあ便利。そんなわけで、車だけが進化。

それはさておき。
先日買ったアンプの梱包を開けてみると、ご親切にネットワークオーディオプレーヤーのチラシが。あざといなー、と思いつつも、英語だけの表記なので、ちょっと気になってネットで内容を調べてみた。

 


USB再生と、インターネットラジオが聴ける。それで¥32,000かー、ちょっと高いな、と思いながらも、いつの間にか「カートに入れる」をクリック(安直ダ・・・)。

それで例によって2日ほどで到着。スイッチを入れてからの動作準備にけっこう時間がかかる。インターネットラジオの方は、ルータから引っ張った線を繋ぐだけで簡単に認識し、すぐに聴く事が出来た。だが日本を選択してから名古屋とやっても、知ったラジオ局は全く出て来ない。FM OKAZAKIとかSUZUKA VOICE FMとかのローカル局ばかり。

 


ネットで調べて判った事は、このプレーヤーでは「ラジコ」は聴けないらしいです(TEACのプレーヤーは聴ける)。どうもそれはDENONブランドでFMチューナーを発売している関係で「大手の局はFMチューナーで聴いて下さい」という事なんだとか。
ちょっと肩すかし・・・てな雰囲気だが、気を取り直して「vTuner」の登録。これをやる事でパソコン側でお気に入りのラジオ局をピックアップしておく事が出来る。こうなりゃ、全世界対応で聴いてやろう。

 


一応JAZZ系とPOPS系で数件ずつ登録。今のお気に入りは「AceRadio - Smooth Jazz」局(アメリカ)。時々入るCMがちょっと気になるが、どぎついものではないので聞き流せる。音楽の方は、JAZZと言ってもけっこう守備範囲が広くSADEもあればチャック・マンジョーネもある、マッコイ・タイナーもあればジョー・サンプルもある、といったところ。

まあ、大手の局はそれこそチューナーがあるし、録音がやりたければ「ラジコ」でパソコンから録れる。
USBからの再生も問題ない。これで次の課題は自作パワーアンプ連動のためのコンセントBOX、だな。


 

落語鑑賞(古今亭 文菊) 2/19

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我が市でも落語の独演会をやると言うので、昨年の暮れにネットで申し込んだ(一人¥2,500)。演者は「古今亭 文菊」。

当日行ってみると、市民会館に併設されたフォーラム建屋の中に300人ほど入れる小ホールがあった。開場13:30、開演14:00であり、13:30丁度を狙って行ったのだが、自由席のためみんな事前に並んで待っていたらしく、前方中央は押さえられていた。
中段左手の空席になんとか「滑り込みセーフ」。

定刻に始まり、前座は「春風亭 一猿」。
演目は「松竹梅」。神無月は、出雲では神有月と言う。神たちが集まって縁結びを執り行う。
大店の婚礼に呼ばれた職人三人(松五郎、竹三郎、梅吉)。何か出し物を教えてもらおうとご隠居を訪ねる。縁起物という事で、まず一人目が「なった、なった、ジャになった。当家の婿殿ジャになった」次が「何のジャになーられた」三人目で「長者になーられた」というもの。
例によって本番では梅吉が「大蛇になられた」とか「亡者になられた」とかずっこける。
詳細はこちら

続いて本題の「古今亭 文菊」。
枕としてご当地の話題から入り、演目は「宿屋の富」。
夫婦二人だけでやっている旅籠に、ふらりとやって来た男。実は大金持ちなのだが、大げさな応対がイヤで来ているのだから、あまり構わないでくれと言って、家の蔵に金がうなっている話を亭主に聞かせる。

それを素直に感心する亭主。実は頼まれて当たれば千両の富くじを売りさばいており、最後の一枚を買ってくれないかと頼む。男は、金などいらないが、と言って嫌そうに一分でそれを買う。そして、もし当たったら五百両やると亭主に約束。
実は男は金などなく、大ぼらを吹いて接待させ、頃合いを見てトンズラするつもりだったので、出した一分はなけなしの金。
たまたま散歩に出ると、富くじの当り番号を決める行事をやった後であり、期待もせずに見に行くと、なんと一等が当たっていた。
詳細はこちら

休憩をはさんで、次の演目は「子別れ」
大工の熊五郎。腕はいいのだが、酒が入ると乱暴になりどうしようもない。また吉原の大夫に入れ込んでいる。女房と五つの息子が居たが、酒に酔った勢いで女房に手を上げてしまい、女房はあいそをつかし、子供を連れて離縁。
吉原の大夫を身請けしたものの、家事一切出来ず結局たたき出す。
以来三年。酒はきっぱり断って真面目に仕事をしていた。
ある日近所の家の床柱を直すのに、材料を見に行ってほしいと御贔屓さんに誘われて、隣町まで出掛ける熊五郎。
旦那が見つけて「あれはあんたの息子じゃないか」。三年ぶりの再会。
詳細はこちら

感想
実は、ナマの古典落語を観るのはこれが初めてだった。
前座の一猿。入門して三年目の割りには出だしの枕もこなれており、そこそこだな、と思っていたが、本題に入って来ると、三人の職人の演じ分けがゼンゼン出来ておらず、この辺はやっぱまだまだ。

落語に詳しいわけではないので、文菊は知らなかった。それを知ってか、最初の枕ではTVに出ている有名な人を引き合いに出して笑いを取っていた。
始め小さな声で、注意していないと良く聞こえないぐらい。だがそれはテクニックだったようで、枕が終わる頃には普通の声になり、本題に入ってからは声も張りが出て来た。

二題目の「子別れ」は、笑わせながらも、子供と父親のやりとりではついホロリ。やっぱり本職の技はすごいもんだと感心した。

 

前座も含めて三題を二時間弱。なかなかいい時間を過ごさせてもらった。


 

火の鳥 鳳凰編  単行本⑤ ⑥  作:手塚治虫

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鳳凰編(前編) 初出:「COM」(1969年8月号 ~ )

 

村で男の子が生まれる。父親は喜んで赤子を抱いて山神様へ知らせに行くが、途中崖から落ちて死ぬ。赤子は重症。
それから十年。その子は我王。片腕、隻眼。握り飯を賭けた力比べで勝つ。母親へそれを持って行くが、嫌がらせで泥水を掛けられる。執拗に相手を見つけて仕返し。そして村から逃げ出す。
人家に押し込み、子供を人質にして飯を食い、金を出せと脅迫。父親が人を呼びに行ったのを知り、子供を刺殺して逃げる。

 

山で焚火をしている大和の茜丸。永宝寺へ菩薩像を見に行くところだった。そこへやって来た我王。服を脱いでこちらによこせと脅迫。更に服を脱いだ茜丸の右腕を切りつける。

 

 

我王を追って来た、茜丸の妹だという女性。我王を咎めるが、逆に捕まり道連れにされる。
茜丸は、永宝寺に何とか辿り着き、住職に手当てをしてもらうも、腱が切れており、右手はもう使い物にならない。嘆く茜丸に住職が庭の彫刻を見せる。鹿やサル。見事な出来栄え。それは住職が水のしずくで作ったもの。最初のものは十二年かかった。
残った左手でやり直そうと考える茜丸。寺男として置いてくれるように頼む。親は死に、兄弟も、姉も妹も居ないと言った。

 

山を下りても我王は女を解放せず、無理やり女房にした。里で一家を皆殺しにして金を奪った。女を速魚(はやめ)と呼んだ。自分には生き続ける権利がある、とうそぶく我王。
道で老僧とすれ違う我王。老僧は「死相が出ている。鼻の病で、あと2~3年が命の分かれ目だ」と言う。

住職の元で百日の滝行を続けた茜丸。今までの思い上がりを反省する。住職は茜丸に惚れ込み、彫り物をする部屋を準備していた。勇んで彫り始める茜丸だったが、思うようには行かない。

 

我王は相変わらず強盗、殺人を繰り返していた。ある日奪った鏡を速魚にやるが、彼女の姿が鏡に写らないのに驚く。速魚は、男が写る鏡と女が写る鏡があると言ってごまかす。
しばらくして、鼻の不調に苦しみ始める我王。
ある日手下に、鼻へ薬を塗ってくれと頼むが、男はそれが毒だと言った。速魚がいつも買ってくれている薬。
怒り狂った我王は速魚を斬ろうとする。速魚は必死で否定するが、我王はとうとう斬ってしまう。こと切れる前に速魚は、自分がかつて我王に助けられた者だと言った。仏師とは関係なかった。本当は心のやさしい、いい人、と言って死んで行った。その足元に、動かなくなったてんとう虫が。

街をうろついていて捕らえられた我王。腑抜けのようになっていた。市中引き回しの上、大内裏に引き出された。そこにはかつて我王の寿命があと2~3年と言った僧がいた。
僧は我王を供に連れて行脚をするつもりだった。僧の名前は良弁(ろうべん)僧正。自分の事を悪いと思っていない我王を否定せず、輪廻についてを説く良弁。
我王は夢でうなされ、人間のままでいたい!と叫ぶ。

 

茜丸の名声を聞いて訪れた橘諸兄(たちばなのもろえ)。鳳凰を彫る依頼を持って来た。見た事もないものは彫れないという茜丸に三年で彫れとの命令。間に合わなければ打ち首。この依頼を断っても両腕を切り落とし両目をえぐられる。
鳳凰の情報を求めてあらゆる所を捜し回る茜丸。だがどこへ行っても判らない。
茜丸の業績に注目しているという住職が、古文書を見せてくれた。四百年前のクマソという国の記録。そこには火の鳥の詳しい記述があった。
筑紫国を目指して出発する茜丸。

 

ある日、茜丸はすれ違った男の顔に見覚えがあり、あわてて戻った。それは間違いなく我王。いきさつを聞く良弁。殺すなら殺せ、と居直る我王に、自分を守ることで精一杯だと言って無視し、良弁に鳳凰のうわさを聞いたらぜひ教えて欲しいと言い残して去って行く茜丸。

荷物を担いで倒れている男に食べ物を与えるよう指示する良弁。だが我王は、この男の積み荷は米でありペテンだと言って中の米をぶちまけた。良弁は、これが年貢米であり自分で食べることが出来ないものだと言って叱責。男は息絶えた。
世の中の理不尽に憤る我王は、くるい病にとりつかれたという村で、供養をしてくれと皆から言い寄られる。経も知らず、供養も出来ないという我王。
近くにあった木で、形ばかりの供養柱を作ると、村人は喜んでそれを拝んだ。
良弁はそれを見て見事だと言い、改めて気のむくままに好きなものを彫ってみよと、そばにある木を指さす。
猛然と彫り進める我王。出来た面からはうめき声が聞こえるようだった。
次いで粘土で像をどんどん作らせる。二時間足らずで百体以上。
良弁は、我王がこの像を作るために生まれて来たのだと説き、その腕で何万人も救うと言った。
他の人間を救うつもりなどない、と反発する我王。

 

火の鳥の情報を求めて一年を費やした茜丸だが、成果はない。
ある村で「石子詰め」の刑罰を受けている少女に出会う。年貢米を盗んで食っていた。いきがかり上それを引き取る茜丸。名はブチと言った。
火の鳥の居場所を知っていると言って沼に入らされ、森の中で焼け死にそうになったり、と散々な目に。しまいには自分が火の鳥だと言い出した。
小屋で食事の後、鳥になってやろうか、と裸になるブチ。だが茜丸は相手にしない。初めてそんな男に会って、ブチは泣き出す。

二年目も過ぎようとしていた。ブチは茜丸に連れ添っていた。
ブチに身の上を話す茜丸。ブチは逃げればいいと言うが、それは不可能。
殺される前に観音像を彫りたいと、ブチにモデルを頼む。
一心に彫る茜丸。そのうちにブチは自己催眠のためか硬直状態となってしまった。
茜丸が彫る姿を見て、見物人が増え、中には食べ物の差し入れをする者も出て来た。
そんな時、橘諸兄の部下が、あと十日で三年だと言って茜丸を引っ立てて行く。だが大嵐に見舞われ、役人は一日だけ観音像完成の猶予を与える。
それでようやく観音像を完成させたが、一緒について行こうとするブチを役人が殺してしまった。

 

橘諸兄の前に引き出された茜丸は、あと五十年必要だと言った。首を切られようとする時、以前鳳凰の事を訪ねた吉備真備が助けてくれた。
吉備は、茜丸の彫った観音像に惹かれ、それを手に入れたかった。鳳凰を一目見たいという茜丸。遣唐使に加えて欲しいという願いは無理だが、正倉院の御物の中にある鳳凰を見ることが出来るよう計らってくれた。
鳳凰像を見て感動する茜丸。

 

唐に向かう船に乗っている茜丸。時化の中で海に落ちる。目が覚めると自分が微生物になっており、その後はカメ。魚に食われ、その後カメとなって一生を過ごし、最後は捕まって首を切られる。次に鳥として生まれ、親に連れられて火の鳥の元へ連れて行かれる。私の姿を良く覚えておきなさいと言う火の鳥。

 

 

鳳凰の絵の前で目覚めた茜丸。夢に出て来た火の鳥をはっきりと記憶している。
吉備に鳳凰像の制作を申し出る茜丸。
単行本 第5巻 第一刷 1983年


鳳凰編(後編) 初出:「COM」( ~ 1970年9月号)

吉備真備の元で九割方鳳凰像を完成させた茜丸。だがこれにはまだ魂が入っていないという。
帝と接見する橘諸兄。帝が大仏を作り、我が国を仏教国家とする事業を吉備にやらせよう、という案に真っ向から反対した。
そこへ、茜丸の作った鳳凰像を献上に来た吉備。そして大仏の件を茜丸にやらせて欲しいと願い出る。

 

良弁と我王。我王が付き人になってから、三年が経とうとしていた。良弁の言葉を真に受けて一千体の石像を作る願掛けをやっている我王。
寺の修繕現場を通りかかると、盗賊に放火されたという。村人が我王を見て犯人だと騒いだ。ケガをさせるなという良弁の言葉を守り、捕まってしまう我王。牢に入れられ、拷問を受ける。良弁は逃げてしまったという。
いっそ殺してくれ、と叫ぶ我王の元に速魚の幻影が。牢の土壁に、皿の破片で何かを削る。拷問は続き、寺の鐘の突き棒にまでされた。
延々と続く拷問の中で、我王は壁に仏像を彫り続けた。知らせを聞いて驚く修行僧たち。だが僧正への連絡は見送られた。

 

二年の歳月を経て、盗賊の真犯人が名乗り出た。我王の彫った仏像を見て絶句する僧正。

 

 

僧正は我王を牢から出し、アカを落とさせた上で食事をふるまった。二年間で別人の様に穏やかになった我王を見て驚く修行僧たち。
そのまま寺を辞そうとする我王に僧正は、この国分寺の金堂の鬼瓦を作って欲しいと申し出た。
気乗りのしない我王だったが、いつまでも逗留して良いという僧正の言葉を受け入れた。それにしても我王を見捨てた良弁の気持ちが未だに判らない。

それから一ケ月。我王は毎日食っては寝の生活を繰り返す。僧正は辛抱強く待った。
ある日、気晴らしに酒を持って出掛けた先で、大量の材木を運び出す現場に出くわす。大仏殿建立のためだという。人足らが事故で倒れても無視された。死んだ人足を見て「お前の領分だ」とうそぶく役人。
我王は怒りに燃え、寺に戻り猛然と鬼瓦作りを始める。見事な出来栄えに驚く僧正。そして、良弁が奥州平泉の国分寺に居ると教えた。そこで即身仏になるという。

 

深い雪山を超えて寺に辿り着いた我王。住職は、良弁が即身仏になるため穴に入ってもう、十日経つと言う。
土に埋められた良弁の元に駆け付けると、まだ良弁は生きていた。死んで何になる、と泣く我王に、いま都で作られているという大仏の話を始めた。
王は釈迦如来、家来は仏たち、そして政治は「仏の教え」だ、という体制作りの道具として、大仏がその最大の象徴を担って作られる。
実は帝に大仏作りを進言したのは良弁だった。そのために全国を回って金集めをしていた。我王に会ったのはその頃。
この平泉から多くの金が出る事になり、大仏建立の事業は吉備に渡され、良弁の手から離れた。今になって良弁は、自分が道具に使われただけだと悟った。残された道はこれしかないと言う。

我王は、良弁が仏になるまで、そこにずっと座り続けた。
そして修行僧らの手で掘り返される良弁。十日ほど陰干しすれば完成(まるでシイタケの陰干し)。
即身仏となった良弁の前に座り、悟りの境地を味わう我王。

なぜ生きものは死なねばならないのか、いや、なぜ生きるのか? 死ぬために生きるのか。
虫魚禽獣、死ねば・・・どれもみんな同じ。人が仏になるなら、生きとし生けるものはみんな仏だ!
生きる?死ぬ?それが何だというんだ。宇宙のなかに人生など一切無だ!ちっぽけはごみなのだ!

 

それから三年。我王は各地をさまよいながら、請われるままに仏像、鬼瓦を作り続け、次第に名を知られるようになった。
役人が我王を訪れ、東大寺大仏殿 金堂の鬼瓦作りを命じに来た。気の進まないものは作らん、と断る我王。

その年の夏は三ヶ月もの間、雨が降らず、地方だけでなく大仏建設の現場でも多くの人が死んだ。
大仏建立の責任者となった茜丸は、大仏が涙を流しているとの話を聞き、工事を進めるのは無理だと吉備に訴えた。だが聞かない吉備。
そこへ良弁が即身仏になったという報が。帝への報告で、良弁の身代わりを立て、工事は何がなんでもやり遂げろとの叱咤。雨さえ降れば、と呟く吉備。

橘諸兄に呼び出される茜丸。吉備は失脚して、大仏建立の仕事は橘が引き継いだというのだ。打ち首を覚悟したが、大金を渡されて家来になれと言われる。
増長する茜丸の元に、死んだと思われていたブチが姿を現した。ひどい肩の傷は自分で治したという。パトロンを乗り換えてでも大仏を完成させようとする茜丸を、バカだと言うブチ。名を残したいという茜丸に、こんなものを作っても日照りは収まらない、とも。

 

橘が、鬼瓦を作る名人だという我王の事を聞きつけて茜丸に話す。作らせてみるか、という提案に「腕くらべ」をしたい

と言い出す茜丸。呼び出された我王を見て驚く茜丸。
腕くらべの要領は、東大寺大仏殿大屋根の鬼瓦八体を七日間のうちに作り、いずれか一者を採用するもの。
構想が全く湧かず、あせる茜丸。
一方、怒りの感情で生い立ちからの人生を振り返る我王。その呪いと恨みに血塗られて来た姿に絶望する。
お前だけではない、との言葉。そして処刑される男。一千年後の子孫だという。流刑星でさまよう男も子孫。
生きもの創造に一生をかけた猿田博士も子孫。もうたくさんだ、と叫ぶ我王の元に現れる火の鳥。
目を覚ました我王は、猛然と粘土をこね始めた。

 

鬼瓦の審査をする時が来た。茜丸に次いで、我王の作品が現れた時、その迫力に皆が声を上げた。
だが審査員の投票結果では、辛くも茜丸の勝ち。だがこれは橘の裏工作だという異議が出される。
茜丸の負けだとまで言われて、茜丸はとうとう、この男がかつて彼の利き腕をだめにした者であり、東大寺の瓦を作る権利はないと言い放った。
罰として我王の残った右腕を斬り落とし、都から追放する事を要求。
両腕を失って都から去る我王。

茜丸の鬼瓦が大仏殿に取り付けられ、我王のそれは正倉院の北倉に納められた。

 

その北倉から出火。カラカラに乾いた状態のため一気に燃え広がる。大仏殿を守るため、火を消そうと走り回る茜丸。だが丸焦げの姿に。その時火の鳥が来て、お前は死ぬのです、と告げる。

 

 

焼け跡から茜丸と思われる骸骨。ブチはそれを拾って持ち帰った。
七五二年四月九日に行われた大仏の開眼式。未曾有の国家的儀式。民衆をにらみ下ろす大仏。

山中に暮らす我王。美しい景色に涙を流す。
日課の仏像彫りをしていると、ブチが骸骨を持って、供養してくれと頼んだ。兄の茜丸だという。

単行本 第6巻 第一刷 1982年


感想
我王と茜丸。全くタイプの違う男の人生が交互に描かれ、東大寺の鬼瓦造りという仕事で再びクロスする。
罪の量(と言ってはおかしいが)から言えば、圧倒的に我王の方が悪。出生の悲劇はあるものの、生きるため、簡単に人を殺して金品を得る人生。
それに対して茜丸は、我王に斬り付けられ、利き腕が使えなくなっても精進を重ね、鳳凰像造りで才能を開花させた。

だが、冤罪で二年もの間投獄された事により、我王の人格に何かが芽生える。良弁は意図して我王にその試練を与えた。
逆に茜丸は、名声を得たがために、それを守ろうと、自分の受けた傷を暴露して我王の残された右腕も奪う。

 

善と悪の狭間で人が何を考え、どう動くか。単なる勧善懲悪と言えない。悟りを開いたとも思える我王の末裔に、今後更に続く災難を思うと・・・・・気が滅入る。

 

 

火の鳥 復活編  単行本 ⑦ ⑧  作:手塚治虫

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復活編(前編) 初出:「COM」 1970年10月号 ~ 1971年9月号

 

2482年のある日、少年が事故死。少年の名はレオナ・宮津。
レオナは再生手術により生き返った。主治医のニールセン博士。だがレオナが人間を見る時は、土くれの様にしか見えない。無機物はそのままに見える。

 

 

手術のやり直しが試されたが、結果は悪く、博士の姿は更にギザギザに見えた。
原因を、大部分取り替えた人工頭脳にあると考える博士。

 

自宅に戻ったレオナ。母親、家族の姿も声もまともには感じられない。
草木もまともには見えない。だが写真は普通に見える。ハンド・ビデオで撮った映像は普通に見えた。

ぼんやりと外を見ている時、土くれの人々の中に、まともに見える女性が居た。

 

 

慌ててその人を追いかけるレオナ。ようやく追いつき、誰だと聞くと「チヒロ61298号です」。ロボットの筈だが外見、肌ざわりとも人間としか思えない。
また会いたいというレオナに、仕事以外の対応は出来ない、と冷たいチヒロ。

 

チヒロと出会ってから一年。レオナはチヒロを使っている建設会社へ乗り込み、社長に売って欲しいと申し出るが、機密情報も持っているため不可能、と断られる。
会社の人間はチヒロ型の写真を見せると、そこには機械らしいロボットの姿。これじゃない!と写真を投げ捨てるレオナ。
社長がチヒロを呼び出していた。レオナには女性にしか見えない。社長は写真と同じだと言い捨てた。怒りに任せてつかみかかろうとするレオナは外につまみ出された。

ニールセン博士に苦情の電話を入れる建設会社の社長。博士は、手術のいきさつを話し、彼が人間でありながらロボットの心を持ってしまったと伝える。
その事を聞いたチヒロ。新しい感情が芽生えて来て、作業の能率が落ちるようになっていた。この事を大問題と感じる管理者。

 

あるアパートを訪れるレオナ。自分が事故を起こした場所の真向かいの部屋。一瞬体がしびれ、エアカーから放り出された。麻痺銃で撃たれたとの推理。
部屋を借りていたのはトワダという米国人の男。事故の日に部屋を解約していた。
家に戻ったレオナは一堂に集まった親族を紹介される。こんなに集まったのは相続問題から。弁護士の説明では、事故によりレオナは死亡として、戸籍上抹消された。
憤慨するレオナは、トワダを捕まえて真相を暴く、と言って家を出た。
チヒロを呼び出したレオナ。抱き合って愛を確かめる二人。

 

3030年。
作業ロボットのロビタが、突然高熱炉に投身自殺するという事件が突然起こった。その数3万6千余体。
月面でロビタを労働ロボットとして使っている男(月潟宇宙運輸株式会社)。ロビタの集団自殺騒ぎを聞いて、自殺なんかさせてやらない、とうそぶく。
女性ロボットのファーニィと戯れる月潟に、自分は人間だと言うロビタ。怒った月潟は、ロビタを電線で縛り上げ、高電圧をかけて「痛さを感じるか」と挑発。
ファーニィの要求でエネルギーの充填をするロビタ。ファーニィは月潟と外出するという。出先でファーニィと抱き合っている時、ファーニィのエネルギーが切れ、月潟は挟まれて身動きが取れなくなる。

地球の管理者に連絡を入れるロビタ。ボスを殺したと聞いて、信じられない管理者。人間だという事を確かめたかった。

地球での兄弟の集団自殺で、自分の意識の中に人間だという信念が生まれた。

 

2484年
トワダを捜しに来たレオナ。トワダはシャイアンのインディアンだという。家まで来た時、突然銃撃され左腕を飛ばされるレオナ。トワダだった。乗って来たエアカーの遠隔操作でトワダを押し潰す。
トワダの部屋に入り、痛みで気を失うレオナ。次に目覚めた時、部屋にあった光る鳥の羽根を傷口に近づけると、痛みが消えた。
更に部屋を捜すと、レオナが訪れる警告の電報と日記。レオナが事故に会う一ケ月前に書かれたもの。フェニックスを捜し続け、とうとう見つけてその血を2cc採取。フェニックスはその後再生して去った。
ばかばかしいと思ったが、あの羽根が証拠。
レオナは突然、ここに住んでいた事を思い出す。

レオナは、日記の主がやろうとしていたフェニックスの捕獲を自分もやるつもりで、羽根を使って仕掛けを作った。現れるフェニックス。
レーザー・ガンでそれを撃つと「あなたは何度私を襲えば気が済むのか」と脳に直接話しかける。覚えのないレオナ。レオナは、もう血はいらないから、自分が殺されたわけを教えてくれと頼む。
トワダはレオナの相棒だった。日記を書いたのも自分。血を抜き取り、羽根と一緒に持ち帰った時、トワダは怖気づいた。そして血を飲んだらレオナを憎むと迫った。
レオナが血を手に入れた事は、世界中のニュースになった。
フェニックスは言う。トワダはレオナの一族の誰かに、レオナを殺せと指示された。レオナが死んだので、血がまだ飲まれていない事が判り、それを手に入れるため親族が寄って来た。愕然とするレオナ。
こんな命ならいらない、というレオナに、あなたは何度死んでも科学の力で生き返らされる、と言って去って行くフェニックス。

 

目覚めたレオナ。近づくエアカーに気付く。乗っていたのはレオナの親族たち。全てを理解したレオナは、日記を盗み出して、そこに書いてある血のありかを掘り出させ、出て来た箱の中の、血の付いた布を燃やした。驚く親族。
永遠の命はもう、簡単に手に入る。問題は、なぜ生きるのかということ。

片腕はすぐに付けてあげると言うニールセン博士。だが死にたいと言うレオナ。
「僕はロボットになりたい」と言うレオナ。チヒロを愛している。機械と愛し合ってどうなる?という博士に「僕なりに方法があります」と返すレオナ。

単行本 第7巻 第一刷 1983年

 


復活編(後編) 初出:「COM」 1970年10月号~1971年9月号

3009年。
一日520人ものロビタが誕生。タイプとしては旧式だが、人間のように疲労を訴え、休養が必要なロビタは子守り役などには好適で、一定の需要があった。

 

 

一人っ子の行夫。忙しい母親と、時間外は働かない秘書。ロビタだけが話し相手。
チャンバラごっこを教えるロビタ。斬られたら死んだフリ。そこに駆け付ける父親は、ロビタが暴力をふるったと勘違いして怒鳴りまくる。

 

アイソトープ農園行きとなったロビタを捜す行夫。ここは放射能で危ないからと、帰るように言うロビタだが言うことを聞かない。そこへやって来た母親を模したロボットが、連れ帰る途中で故障し、行夫はそのまま放置される。

治療室に運び込まれた行夫。放射能で血液や組織が破壊され、ロボット化しか手がない。結局ロビタは亡くなり、父親は雇っていたロビタを捕まえろと言って、農場のロビタを全て連行。だが全員が犯行を否定。
行夫の過失死の可能性もある中、裁判は繰り返され、10年以上が経過。

 

そして3030年。農場のロビタ全員を有罪として溶解処分とする判決だ出された。被告として発言を求められたロビタは、一人でも死刑になれば、ロビタは一人残らず死ぬでしょうと言った。それは人々からの反感を買った。

処刑が行われた後、働いていたロビタが一斉に職場を放棄して一ヶ所に終結。何万台ものロビタが溶鉱炉の中に消えて行った。

 

2484年
チヒロに会いに工場へ行くレオナ。チヒロは長い間閉じ込められていた。会っているところを社長室に居た男に見つかる。勢いで相手を殴ってしまい、チヒロを乗せてエアカーで逃げるレオナ。
雪山に突っ込んで遭難してしまう二人。寒さに震えるレオナ。体のエンジンをオーバーヒートさせてレオナを温めるチヒロ。
怪しい連中に氷の中から救い出されるレオナ。女ボスが連れ帰るよう指示。
目覚めたレオナ。手当てした医師は失っていた左腕の代わりを取り付けていた。
女ボスに尋問されるレオナだが、チヒロを置き去りにされて抗議する。この者たちは、移民星相手に人体や人体パーツを密輸する事で食っている。宇宙では消耗がひどいため、いい商売になる。
いずれパーツにして送ると言われ、また閉じ込められるレオナ。

 

老医のドク・ウィークエンドが、レオナに興味を持ち、今までのいきさつを聞きに来る。
話し始めると、ドクはニールセン博士の事も知っていた。元はちゃんとした研究者。レオナを元に戻してやると言うが、余計なお世話だと言うレオナ。
女ボスに呼ばれるレオナ。殺されないのは彼女が止めているから。ドクからレオナの身の上を聞いて興味を持っていた。

そして、チヒロを回収してくれるという、だが治すとまでは言わない。
商売のためのプレアデス星行きをやめ、部下に任せる女ボス。
動かないチヒロを前にするレオナ。ドクにチヒロの修理を頼むが、ドクはそれとは別に、ボスが地上に残った事を話す。

ボスの体はもう宇宙の旅には耐えられなかった。ボスはお前が気に入ったのだと話すドク。
チヒロを連れて逃げ出そうとするレオナの前にボスが。行くなら一緒だと言うボスを撃ち、逃げようとするが、機体がバランスを崩して墜落する。

 

建物の研究室で目を覚ますレオナ。隣にはボスが眠っている。ドクが、これは最初から仕組んであったと言う。ボスの体は元々もう長くない。レオナと一緒の体にして、離れないようにしてくれとドクに頼んでいた。

 

 

観念したレオナは、体は要らないから、記憶を電子頭脳に移し、更にチヒロに移して欲しいと頼み、息絶える。
ドクの一生の願いをかけた手術が行われる。次いでレオナの脳から電子頭脳への記憶の移植。そしてチヒロへの移植。
電子頭脳の中で混じり合う二つの意識。

 

 

レオナとチヒロの意識を持ったロボットとして目覚めた者。不格好な体に不満を言うが、レオナの意識を組み込んだ電子頭脳の規模に見合う体が必要だった。体が不安定のため、足を使わず尻のローラーで動く様にドクがアドバイス。
隣の部屋に案内され、自分の体を見て驚くロボット。結局ボスの体はほとんどだめで、脳だけが彼女のもの。嘆くロボット。

部下たちがロケットで帰って来て、ボスが若造の体になっている事に驚く。だが部下たちはどうも気に入らない。手術の副作用に苦しむボス。苦し紛れにロボットを銃で撃ち、その騒ぎが部下たちにも広がって銃撃戦になる。
制御装置が破壊され、建物が大爆発して、みんな死んだ。その後、ロボットだけが起き上がる。

 

2917年
レオナとチヒロだったロボットは、その後ある家に拾われ、召使いとして仕えていた。
どこか人間くさい動作で、ロビタと呼ばれ、家族のように扱われた。
ロビタの回路に寿命が来た時、あるロボット業者がそれを引き取り、全く同じ仕様で複製を作った(記憶中枢も含め)。

ロビタは次第に数を増やし、ロビタは子供たちの友達として馴染んで行った。

 

3444年
惑星に降り立つ猿田博士。転がっていたロボットを再起動させる。ロボットはロビタと名乗り、今から300年前に人を殺し

たという。自分が人間である事を確かめたかった。そして自分の意思で動力を切ったという。
猿田は宇宙をさまよって生命の秘密を探している。意気投合する二人。

単行本 第8巻 第一刷 1983年

 


感想
「火の鳥」の中でも随所に出て来て印象の深いロボット「ロビタ」の誕生秘話が語られる。
レオナの、人工脳に替わったため、人間が異物に見えるというロジックが何とも微妙だが、まあマンガで見せられると不思議にナットクしてしまう。
同様に、チヒロだって数あるロボットの中の一体に過ぎない。なぜヒチロがまともに見える事だけが語られているのか(チヒロ以外のロボットは???)。ただ、そんなヤボな事は言うまい。

 

私たちが子供の頃から、アシモフの提唱する「ロボット三原則(人間に対する安全性、命令への服従、自己防衛」は有名だったが、これを打ち破るのが「人間らしさ」だという考え方で手塚氏が取り組んだのだろうか。

無数のロビタが「ドボ、ドボ」と溶鉱炉に落ちて行くシーンを最初に読んだのは、書店で「COM」を立ち読みした時だったろうか(中学生?)。旧い記憶と強烈に結び付いている「手塚マンガ」。

 

セッション  2014年

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「ラ・ラ・ランド」が評判だというので、まずつい先日TV放映された本作から視聴。

 

監督・脚本 デミアン・チャゼル

 

キャスト
アンドリュー・ニーマン     マイルズ・テラー
テレンス・フレッチャー     J・K・シモンズ
ジム・ニーマン             ポール・ライザー
ニコル                     メリッサ・ブノワ
ライアン・コノリー         オースティン・ストウェル
カール・タナー             ネイト・ラング
フランクおじさん           クリス・マルケイ
Mr.クラマー                デイモン・ガプトン
エマおばさん               スアンヌ・スポーク

 

 

 

 予告編

 

アメリカで最高と言われる、シェイファー音楽院で学ぶ19歳のアンドリュー・ニーマン。幼い頃からバディ・リッチのようなドラマーになるのが夢。

 

一人ドラムの練習をしているところへ、同学でも最高の指揮者と言われるテレンス・フレッチャーが、アンドリューに声を掛ける。かすかな希望を持つが、その場では特に感触なし。
父親のジムと一緒に映画を観に行くアンドリュー。

 

ある日、アンドリューが通う初等教室を訪れたフレッチャー。各パートに演奏させるが、みな僅かなフレーズでダメ出しを食らう。そして同様にアンドリューにもその機会が来た。結局ダメ出しは受けるが、帰る時に自分の率いるバンドに顔を出すよう指示される。
有頂天になったアンドリューは、映画館の受付をしていたニコルにデートを申し込む。

 

スタジオ・バンドの練習初日。フレッチャーの指示された時刻に遅刻したアンドリュー。そこにはもうフレッチャーは居ない。
練習開始時刻になり、何事もなかったように現れるフレッチャーは、有望な新人だとアンドリューを紹介。だが練習風景の異様さに驚くアンドリュー。僅かなミスも徹底的に直させる。あるパートで楽器の音程が狂っているのを指摘し、各個人を追い詰める中で、一人が目をつけられる。そこで自分が音程を外したと白状すると、即刻退室を命じられた。
実は音程を外していたのは別の者だったが、結局自分に自信がない者は居ても仕方がないということ。
優しくされていたアンドリューも洗礼を受ける。「Whiplash」のドラムパートで、何度やってもテンポが合っていないと責められる。限りなく浴びせられる罵倒。しまいには椅子も飛んで来た。

 

フレッチャーを見返そうと必死で練習を行うアンドリューだが、コア・ドラマーのタナーの楽譜めくりしかやらせてもらえない。ある日タナーに頼まれて楽譜を預かったアンドリューだが、ドリンクを飲んでいる隙に無くしてしまった。楽譜を無くしたらクビだとフレッチャーから常々言われていた。
その日はコンテストの当日であり、穴をあけるわけには行かない。タナーは楽譜がないと演奏出来なかった。曲は「Whiplash」。楽譜は暗譜しているので自分にやらせて欲しいと願い出るアンドリュー。フレッチャーはその申し出を受け入れた。その結果コンテストでは優勝。
それを受けてアンドリューはコア・ドラマーに昇格。

 

親戚での食事会に参加しているアンドリュー。従兄弟たちがスポーツの事で皆から褒められているのを聞いて、面白くない。

 

バンドに新たなドラマーとして入ったライアン。明らかに腕は劣るが、フレッチャーは露骨にライアンを褒める。フレッチャーに食ってかかるが相手にされない。ストイックに練習にのめり込むアンドリューは、練習の妨げになる、とニコルとの交際も止めると彼女に申し出る。


重要なコンテストに向けて練習を行う前に、フレッチャーはかつての教え子ショーン・ケイシーが交通事故で亡くなった事を話し、涙を流す。
だがそれも束の間、フレッチャーはタナー、ライアン、アンドリューの三人に極端なテンポでの演奏を要求。納得出来るまで続けると団員に宣言。三人は交替で演奏するが、全く及ばない。
演奏は数時間に及んだが、アンドリューだけが最後まで演奏をやり通した。

 

時間に余裕を持って集合せよと指示したフレッチャーだったが、コンテスト当日、アンドリューの乗ったバスがパンクで動けなくなった。レンタカーを借りて何とか到着したが、遅刻を認めないフレッチャーはタナーにやらせると言う。自分にしか出来ないと言い張るアンドリューだが、レンタカー会社にスティックを忘れて来た事を思い出す。あと11分で取って来て、全てを完璧に演奏出来なかったら退学だ、と言い放つフレッチャーを尻目に車を走らせる。
スティックを取り戻し、猛スピードで走るアンドリューの左方から巨大なトラック。横転した車の下から這い出し、会場に走るアンドリュー。
血だらけの体でドラムの前に座るアンドリュー。やむなく演奏を開始するフレッチャーだが、左手を痛めた状態ではまともな演奏は出来ず、結果は惨憺たるものだった。
フレッチャーが冷たく「お前は終わりだ」と言ってから、会場に対して謝罪を始めた時、彼に殴りかかるアンドリュー。

 

アンドリューは音楽院を退学になった。父親のジムが、亡くなったというフレッチャーの教え子ショーン・ケイシーの代理人の弁護士と接触。実はショーン・ケイシーは交通事故ではなく、自殺だったという。フレッチャーの指導を受けるようになってから鬱になった。
フレッチャーを辞めさせるため、体罰に関する証言を求められるアンドリュー。最初は断るものの、結局匿名での証言を行った。フレッチャーは音楽院を辞めさせられた。

 

数ケ月後の夏、アンドリューは偶然入ったジャズクラブでフレッチャーがピアノ奏者として出演しているのを見つける。

アンドリューに気付いたフレッチャーは、彼を誘って酒を飲む。フレッチャーなりのジャズに対する思い。チャーリー・パーカーにシンバルを投げ付けたジョー・ジョーンズの逸話。
そして、今は民間ジャスバンドの指揮をやっており、今度行われるJVCジャズ・フェスティバルに参加する事、そのバンドでのドラマーが十分でない事を話す。曲はシェイファー時代のスタンダードだと言う。
フレッチャーの素直さに感銘を受けたアンドリューは、その話を受ける。

 

そしてフェスティバル当日、フレッチャーは団員たちに、この演奏はチャンスであると共に、もし失敗すればスカウトマンたちの記憶に永遠に残るため、二度とやれなくなる、と警告。
ドラムの前に座って、緊張のあまり汗をかいた手を見るアンドリュー。そこへフレッチャーが来て「お前の証言だったと知っている」。一瞬で気持ちが切り替わるアンドリュー。
演奏が始まったが、アンドリューから渡された譜面「Whiplash」とは違う曲の「 Upswingin'」。回りの雰囲気に合わせて叩くも、まともには行かない。他のメンバーからの罵声に加え、フレッチャーからも。
結局演奏は途中で中止となり、アンドリューはトボトボと舞台ソデに下がる。そこには父親のジムが。息子がドラマーとして日の目を見る事が出来ると期待していた。

 

だが、父親とハグした後、アンドリューは再び舞台に戻り、ドラムの前に座った。それを無視して「次は静かな曲を・・・」とフレッチャーが言いかけた時、ドラムの強烈なビートが響き渡る。
戸惑う団員たちに「キャラバン!」と叫ぶ。ベースから始まり、次いでピアノ。その頃からフレッチャーの指も動き出し、管楽器も鳴り始めた。見事なハーモニーのビッグバンド。

途中のドラムソロのパートで、フレッチャーが指示を出そうとするのを遮り「俺が出す」。そして続くドラムソロ。
ただ、その途中からアンドリューとフレッチャーの視線が交差。シンバルの消え入りそうな打音から次第に盛り上げて行く。そしてメインテーマの演奏へと続く。


感想
「セッション」は元々観たかったが、地元の映画館ではかからなかったので、つい行きそびれていた。
音楽院に通う若きドラマーと教官との掛け合い。
アンドリューは、才能ある者が持つ特有の不遜さが良く出ていて好演。フレッチャーも理不尽な鬼教官として君臨する姿が良かった。

 

監督のデミアン・チャゼルが自ら脚本を書いたという。本人自身が高校時代にジャズバンドに所属した経験も盛り込まれているらしい。

若者が精進してポジションを勝ち取って行く姿と、それに立ちはだかる壁としての教官。観ていて気持ちよかったが、やはり突っ込みたくなるのは性分か・・・・

 

そもそもフレッチャーが心酔するチャーリー・パーカーは「ビバップ」で鳴らした人。その基本は「アドリブ」。
このクラスのビッグバンドを云々するのならグレン・ミラーとかトミー・ドーシーとかに目が向いていないと。

それから、アンドリューの証言のせいでクビになったからと言って、自分が任されているバンドのジャズフェスをご破算にしてまで復讐するなんて、フレッチャーはちょっと器が小さすぎる。

 

ただ最終の、あの嬉しそうなフレッチャーを観ていて、あれは全てフレッチャーの演出だったのかも知れない、とも思える。アンドリューは最初手のひらにびっしょり汗をかき、客席を見てビビっていた。
だがフレッチャーの言葉を聞き、全く知らない曲だと判ってからは、緊張どころの騒ぎではなくなった。
そしてあの舞台は、まさにアンドリューを輝かせるための最高の場所になってしまった。

その辺りはフレッチャーにあえて語らせず、微笑みだけで余韻を残した。

 

 ラスト9分23秒

Don Ellis Whiplash

Dave Holland Big Band - Upswing

Charly Antolini: CARAVAN

Caravan-Buddy Rich Drums

  

ラ・ラ・ランド  2017年

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監督・脚本 デミアン・チャゼル

 

キャスト
ライアン・ゴズリング         セブ(セバスチャン・ワイルダー)
エマ・ストーン             ミア・ドーラン
ジョン・レジェンド           キース
ローズマリー・デウィット       セバスチャンの姉
フィン・ウィットロック          グレッグ
ジェシカ・ローゼンバーグ       アレクシス
ソノヤ・ミズノ                   ケイトリン
キャリー・ヘルナンデス         トレイシー
J・K・シモンズ               ビル  レストランの経営者
トム・エヴェレット・スコット   デヴィッド
ミーガン・フェイ                ミアの母親

 

予告編

 

 

プロローグ・冬
高速道路の大渋滞。オープニングナンバーと共に車から出て踊る若者たち。
同じ渋滞の中でセリフを覚えようとするミアだが、後続のオープンカーに乗ったセブにクラクションでせかされる。

 

ミアは、ハリウッドのワーナー・ブラザーズ撮影所内のカフェで働きながら女優を目指しているが、オーディションに落ち続ける毎日。
一方セブはジャズピアニスト。正統派ジャズを好み、ジャズの名門クラブ「Van Beek」がサンバとタパスの店になってしまった事を憂いている。最近も店を出す話で騙された様だ(姉との話)。

 

ある日ミアはルームメイトのアレクシス、ケイトリン、トレイシーらに誘われて映画関係者の主催するクリスマス・パーティに出席する。
特にいい事もないどころか、車がレッカーに持ち去られ、歩いて帰る途中、偶然聞こえて来たピアノに惹かれてレストランに入る。そこで雇われのピアノ弾きをやっていたセブだが、レストラン経営者のビルから「フリー(ジャズ)」はダメだと言われながら、それを守らずクビを宣言された。
ちょうどそこに向かって行き、素敵な演奏だと褒めたミアだが、クビ直後のセブはそれどころではなく、ミアを押しのけて店を出た。

 


ミアは相変わらずオーディションを受けては落ち、の生活。あるパーティに参加したミアは、そこに出演しているバンドメンバーの中にセブを見つける(曲目はa-haのTake on me)。ミアがリクエストしたのはI Ran(So Far Away)。その選曲にカチンと来たセブは演奏の合間、ミアに話しかけるが、意外に話の合う二人。
パーティ会場から去るセブに「私のキーも取って」。プリウスのキーがずらりと並んでいるが、ミアのには緑のリボン。

車を捜しながら公園にさしかかる二人。息の合ったタップダンス。たそがれ時の夕焼けの美しさ。

 

数日後、セブは撮影所に入り込んで、ミアのカフェを訪れる。スタジオ内を案内するミア。二人はお互いの話をして、次第に親しみを持つ。
ミアが「ジャズは嫌い」と言ったため、セブは彼女をジャズクラブに連れて行った。ミアが脚本も書いていると言う割に「理由なき反抗」を観ていない事を知って、セブがリバイバル上映に連れて行くと約束。

 

その約束当日、ボーイフレンドとの会食だった事を思い出し、止む無くそちらを優先。だがセブの事も気になり、途中で抜け出して映画館に向かった。
一人で映画を観ていたセブは、喜んで迎え入れる。途中からお互いを意識して指を絡ませ、そしてキス。だがその時アクシデントで映画が中断。
ミアの提案で、その映画のロケ地にもなったグリフィス天文台を訪れる。そこのプラネタリウムの中で楽しくワルツを踊る二人。そして始まった交際。
セブは自分のジャズの店を持ちたいと言う夢を語り、チャーリー・パーカーにちなんで「チキン&スティック」という名の店にすると言うが、そんな名前では流行らないと、ミアは「seb's」という名前をロゴまで考えて提案。

 


セブの助言でミアは脚本を書き出した。二人は同棲を始める。
旧友のキースと再会するセブ。かつてバンドを一緒にやっていた。現在キーボードが居ないキースは、週1000ドルになると誘ったが、セブは断った。
日を改めてキースを訪ねるセブ。バンドのメンバーと演奏をするが、求めているジャズと方向性が違い、そこを去った。

 

だがミアとの生活の中、彼女が実家に電話でセブの話をするのを聞いて、生活安定のためにキースのバンドに入る事を決めた。
そのバンドのコンサートに招待されて喜ぶミアだったが、ノリのいい音楽に反し、セブが全く楽しそうにしていない事に気付いてしまう。
バンドは成功し、セブは急に忙しくなる。

 


キースのバンドはツアーで全国を飛び回る生活。ミアは一人芝居の準備をしていた。
ある日ミアがアパートに帰ると、セブがサプライズで食事の準備をしていた。だが明日の朝にはまたツアーに出なくてはならない。
一緒に居たいからと、セブはミアに、ツアーへの同行を頼むが、公演が二週間後に迫っており、ミアは断った。そして逆に、今の音楽をいつまで続けるつもりかと聞く。アルバムを出せば、またこの先二年はツアーが続く。セブ自身に止める気はなかった。
ミアは、セブが自分の信念を曲げている事を知っており、ジャズの店を開く夢はどうなったのかと問い詰める。黙って部屋を出て行くセブ。

 

ミアの一人芝居公演当日、雑誌の撮影でどうしても抜けられないセブ。
公演の観客は数名で、やり切ったものの、その後観客の酷評を聞いて自信喪失するミア。終演後駆け付けたセブに対し、夢は終わったと言って故郷のボウルダー・シティに帰る事を告げた。

 

数日後セブの許へ、ミアを探しているという電話。キャスティング担当者からであり、ミアの公演を観て興味を持ち、オーディションに参加するようにというもの。
セブは以前、彼女の実家が図書館の前だと聞いていたのを覚えていた。その前でクラクションを鳴らすセブ。
また落とされると決めつけているミアを励ますセブは、翌朝迎えに来た。
オーディションでは、自由に話す事を求められ、ミアは叔母とのエピソードを素直に話す。

オーディションが終わり、かつてのグリフィス天文台に行き、そこのベンチに座った二人。また落とされると思っているミアに、受かればパリでの仕事が待っている、この好機をつかんで突き進むんだ、と励ます。


エピローグ 5年後の冬
大女優になったミア。娘も居るが、パートナーはセブではなかった。

 

ある日、夫妻で高速を使って走っていると、あの日と同様の渋滞に巻き込まれた。高速を降りて食事にしようと提案するミア。
店を探していると、ジャズが聞こえて来た。夫に見に行ってもらい、良さそうだという事で通りから中に入ると、そこには「Seb's」のネオンサインが。ハッとするミア。
店内は賑わっており、小編成のジャズバンドもいい演奏をしている。
曲が終わり、各演奏者の紹介をするオーナー。セブだった。そして客席を見た時、ミアの姿に気付く。
来店を謝す一言、そしてゆっくりピアノの前に座り、静かにかつての曲を弾き始める。

ミアが初めてセブのピアノを聞いた場面からの巻き戻し。ミアを抱きしめキスをするセブ。そこから先は、セブとミアのもう一つの物語。二人共に成功し、子供も生まれる。輝く日々。
だが、曲の終わりと共に現実に引き戻される。もう少し聴こうかという夫に、帰ると言って店を出るミア。ドアの前で振り返るミアと視線を合わせたセブは、軽く頷いた。


感想
ミュージカルは好きだが、ミュージカル映画のわざとらしさはちょっと苦手だった(あの「レ・ミゼラブル」とか)。
だが皆さんの評価を読み、また先日第一作の「セッション」も観て、俄然その気になって鑑賞。なかなか上質な、いい時間を過ごさせてもらった。

 

正直言ってオープニングの、高速道路で皆が踊り出すシーン。これがこの先延々と続くのか、と思ってゲンナリしたのは確か。
だがそれからすぐ普通の会話に戻り、ホッと一息。
物語のシーンと歌のシーンで、ある程度棲み分け出来ており、ミュージカル映画「初級」の者にも違和感がなかった。

 

物語として、それほど深いわけではない。カフェで働きながらもそんなに悲壮さのないミア。一応車も持っているし(プリウスの年式がそこそこの古さなのはイイ演出だが)。
一方のセブも、旧き良き時代のジャズに心酔しているとは言っても、生活のために折り合いをつける知恵もある。

そんな二人が出会い、偶然が重なることで互いを意識して行く過程がすごくオシャレで、本当に観ていて気持ちのいい時間が流れているなー、と素直に感じられた。耳馴染みのジャズも心地いいし。

 

それにしても、ここでも出て来るチャーリー・パーカー。よほど好きなんだね。ストイックなピアニストなら、ビル・エヴァンスとかセロニアス・モンクとかでもいいだろうに(まあいいか)。

 

何と言っても、この映画の一番の見せ場は、最後にセブが僅かに頷くところ。
ミアをパリに送り出してから、彼女の活躍は知っていただろうし、現在でも店のすぐ隣にミアの写真がデカデカと貼ってある。ミアが必死で駆け上がったのを、一切邪魔せず見守ったセブの想いが、あの最後の頷きに込められている。

この映画観て、プラネタリウムに行きたくなった(あの場面も良かった)。

 

サウンドトラック

#1. Another Day Of Sun
#2. Someone In The Crowd
#3. Mia & Sebastian's Theme
#4. A Lovely Night
#5. Summer Montage / Madeline
#6. City of Stars
#7. Planetarium
#8. Herman's Habit
#9. City Of Stars DUET
#10. Start A Fire
#11. Engagement Party
#12. Audition (The Fools Who Dream)
#13. Epilogue
#14. The End
#15. City Of Stars (humming)
#16. Mia And Sebastian's Theme (Celesta)

 

 


SING  2017年 

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2月初めに行きつけの映画館で試写会応募のハガキを出しておいたら何と当選。そんなに観たい!!というほどではなかったが「タダなら」と観に行った。
本当なら字幕版に限るのだが、行ってみたらやっぱりと言うべきかの「吹替え版」・・・・・

いつもならネタバレ満開だが、ここは公開前という事に敬意を表して抑えめに。

 

 

予告編

歌唱シーン寄せ集め

 

監督 ガース・ジェニングス

 

キャスト
マシュー・マコノヒー      バスター・ムーン    内村光良
リース・ウィザースプーン   ロジータ        坂本真綾
セス・マクファーレン      マイク         山寺宏一
スカーレット・ヨハンソン    アッシュ        長澤まさみ
ジョン・C・ライリー       エディ            宮野真守
タロン・エガートン       ジョニー      大橋卓弥(スキマスイッチ)
トリー・ケリー          ミーナ          MISIA
ニック・クロール        グンター     斎藤司(トレンディエンジェル)
ジェニファー・ソーンダース  ナナ・ヌードルマン   大地真央
ガース・ジェニングス   ミス・クローリー     田中真弓


落ちぶれた劇場を経営するバスター(コアラ)が、起死回生のために音楽のオーディションを開催するというドタバタもの。小さいお子さん連れとか、内容を楽しみたい向きには吹替えでもいいけど、オトナが鑑賞するならゼッタイに字幕版にしましょう。
新旧取り交ぜてポップスのヒット曲満載。吹替え版でもある程度原曲が聴けたけど、メインとなる曲の吹替えはカンベンして欲しい。唯一聞くに耐えたのは、最後に近いところでミーナ役のMISIAが唄った「Don’t You Worry ‘Bout A Thing」。これは良かった。

 


ネット検索で、一応出て来た曲の元ネタをチェック。事前に聴いておくのもいいかも(数秒しかやらないものもあります)。

ワタシ的には「Venus」、「Bamboleo」、「Under Pressure」辺りがツボでした。にんじゃりばんばんまで出て来てびっくり。

 
Gimme some Lovin」Spencer Davis Group
The Way I feel Inside」The Zombies
Let’s Face The Music And Dance」Fred Astaire & Ginger Rogers
Venus」Shocking Blue
Bamboleo」Gipsy Kings
Hallelujah」Jeff Buckley
Call Me Maybe」Carly Rae Jepsen
Butterfly」Crazy Town
Under Pressure」Queen
Shake It Off」Taylor Swift
My Way」Frank Sinatra
Bad Romance」LADY GAGA
Firework」Katy Perry
Anaconda」Nicki Minaj
Don’t You Worry ‘Bout A Thing」Stevie Wonder (Tori Kelly)  
Golden Slumbers/Carry The Weight/The End」Paul McCartney
Ride Like The Wind」Christopher Cross
にんじゃりばんばん」きゃりーぱみゅぱみゅ
Faith ft Ariana Grande」  Stevie Wonder


字幕版も観ないとフラストレーションが溜まるかな?(これが狙いだったか・・・・・)

 

 

新聞小説 「国宝」 (2) 吉田 修一

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作:吉田 修一 画:東 芋     (1)はこちら

 

第二章 喜久雄の錆刀 1~25 (1/27~2/21)

 

 

春江の家に転がり込んでいる喜久雄。今年からカラーテレビになった紅白歌合戦を白黒テレビで観ている。母親がスナック「紫」をやっているところの二階。
タバコがなくなり、階下の店に降りて「ピース」に火を点ける喜久雄。火の用心の声がするが、何かおかしい。
バットで身構えて入り口のドアを開けると、そこには鑑別所に居る筈の徳次。大晦日が一番逃げやすいと聞いて実行した。なんで?と言う喜久雄に、親分の一周忌やろ、と返す。

 

宮地組の残党が、立花組の新年会に殴り込みをかけてから、もう一年が経とうとしていた。
凄惨な抗争事件は全国ニュースとなった。死者一名、負傷者五十名。事件後、宮地の大親分が、自分は潔白だと子分を切捨てたため、結局宮地組は解散となった。
権五郎を失った立花組も混乱。跡を継ぐべき若頭の真田征一は逮捕され、抜きんでた者のない中での派閥争い。これをまとめたのが愛甲会若頭の辻村将生。
権五郎の遺児である喜久雄の将来を慮って、ちゃんと学問をさせねば、と進言。気が付けば辻村が墓の建立、納骨まで仕切り、この体たらくが、以後立花組が愛甲会の下部組織に成り下がる要因となった。

 

徳次が鑑別所送りになったのは、権五郎の納骨が終わってすぐの頃。喜久雄、徳次らが取り巻きを連れて映画を観に行った際、彼らの特等席に座っていたのが梅岡中の悪童ども。
その中の一人が「ニッキの譲治」。建材屋の息子で、不良の中では名が知られていた。客が逃げ出す中、土下座しろという徳次の顔面を突然殴りつける譲治。
徳次を踏みつけにしながら譲治は、自分の親父が撃ち殺されて、敵討ちも出来ん腑抜け息子、と喜久雄を笑った。
対抗する喜久雄だが、先方も立花組の息子と知りながら因縁をつける連中であり形勢は不利。
取っ組み合いになり、騒ぎが大きくなる中、消火器が噴射される。近くの交番から駆け付ける巡査。そうなるとニッキの譲治を先頭に、我先にと逃げ出した。
坊ちゃん、逃げろ!と喜久雄の背中を押す徳次。そこに現れる警官。徳次は警官にしがみついて喜久雄を逃がした。その結果、徳次だけが逃げ遅れ、鑑別所入りとなったのだ。

 

年越しそばを温めてあげると言う春江。結局徳次は二階へ。
徳次は、親分の仇討ちが待ち切れずに鑑別所を抜け出して来た。だが肝心の喜久雄には全くその気がない。

権五郎が亡くなったことで、喜久雄は天涯孤独の身となった。マツは権五郎の後妻であり、実母の千代子は、喜久雄が二歳の頃に他界。結核でなくなったという。
時代は丁度、権五郎が愛甲会の熊井と共に暴れ回っていた頃であり、暮らしは楽ではなかった。長屋の隅に寝かされ、そこに近づいたら血を吐くようになる、と脅されていた記憶が喜久雄にはあった。
その頃から権五郎はマツを家に引き込んでいた。打ち捨てられるように千代子が亡くなった時、誰よりも気丈に葬儀を仕切ったマツ。

 

 

彫師の辰に背中を任せている喜久雄。翼を広げたミミズク。そろそろ終わりにしてもよか?という喜久雄の泣き言を聞いて嘆く辰。春江は、もう次で完成だという。
そこで作業を止めた辰。右脚がなかった。サイパンでの戦いで爆弾にやられた。
脚を失ったせいでとび職には戻れず彫師の道へ。
喜久雄の背中にたっぷりとワセリンを塗り、食品用のラップで保護。

 

思案橋界隈の描写。歌謡界の動き。青江三奈の「長崎ブルース」、内山田洋とクールファイブの「長崎は今日も雨だった」。
客引きのため路地に立つ春江に、肉まんを買って来て与える喜久雄。近くの年増の女たちも手を出し、いっとき喜久雄にお世辞を言った。そこでも言われる一周忌の侘しさ。
法要を仕切った愛甲の辻村が選んだのは、三流の寺と三流の坊主。だが辻村に意見出来る立花の者は誰もいない。

そんな時に背中をどつかれ、肉まんを落とす喜久雄。凄んで振り返ると、その大男が喜久雄の頭を殴りつけた。喜久雄が通う中学の体育教師、尾崎。日頃からヤクザを毛嫌いしており、悪さをすれば容赦なく喜久雄を痛めつける。
今度は春江の髪をつかみ、中学のくせにこのバカに騙されて、大切な体で何をしているか、と叱る。

抵抗するも、踏みつけにされる喜久雄。立花組を継いだら真っ先に玉を取ってやるといきがるが、尾崎は「どこにその立花組が残っとる?」と再び喜久雄を叩きのめす。
立花組の組員のほとんどが愛甲会に出入りし、本家は寂しい限り。鰻重を頼んでもツケ払いが出来ない始末、とマツが嘆くような状態では、尾崎の言うこともあながち嘘とは言えない。

 

翌朝、珍しく学ランを来て出掛ける支度をする喜久雄。古参の組員に茶化されるが無視し、ふと思い立って権五郎の位牌に手を合わせる。
外に出たとたん、徳次にぶつかり、電柱の裏に引き込まれる。徳次はまだ鑑別所から逃げ延びていた。春江から、喜久雄が久しぶりに学校へ行くと聞いて待ち伏せていた。
大阪へ行こうと思う、と話す徳次。だがそれは逃亡生活の厳しさから出たもの。
昼まで学校に行ったら俺も一緒に大阪へ行く、と告げる喜久雄に驚く徳次。
十二時に長崎駅で、と言い残して喜久雄は学校へと駆けて行く。

 

だが喜久雄は煙草屋の赤電話で110番し、鑑別所から逃げ出した早川徳次が、本日十二時に長崎駅で待っていると告げる。

そしてそのまま学校へ。バッグには事務所から盗んで来たドスが。
一階の便所に駆け込んでドスを腹に差し込み、朝礼に臨んだ。今朝の朝礼では、児童図書館の建設に寄付をしている慈善家、宮地の大親分改め「センチュリー建設」会長の宮地恒三が演説をする事になっていた。

 

 

前から五列目で機会を窺う喜久雄。それを体育教師の尾崎がじっと見ている。
いよいよ宮地の大親分が壇上に上がってマイクの前に立とうとした時、ドスを握りしめた喜久雄が一気に駆けだした。だが同級生の肩に当たって一秒遅れ。それでも突き進み壇上に上がって大親分に迫る。横から尾崎が叫びながら突進。無心でドスを突き出す喜久雄。
手応えはあったが、肩に強い衝撃を受け、次の瞬間ふわりと自分の体が浮いた。


感想
喜久雄の父、権五郎が死んでからの顛末。没落する立花組。敵討ちを期待されている喜久雄だが、その動きを全く見せない。

 

田舎歌舞伎で女形をやるほどの優男。何の因果でヤクザの家なんかに生まれたのか。喜久雄を庇って鑑別所にまで入った徳次の忠心は報われない。
だがやるときはやる、と宮地の大親分にドスで向かって行く喜久雄。
さあ、どうなる?

 

まだプロローグだが、この小気味よさ。毎朝、新聞を開けるのが楽しみ。

 

 

火の鳥 羽衣編 単行本 ⑧

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羽衣編 初出:「COM」1971年10月号

 

芝居仕立ての進行。
遠州三保の浜。裸の女が松の木に薄衣をかける。
通り掛かった男がその衣を取って、売るために持ち去ろうとする。
女の声で、返して下さい、と懇願。男は姿を見せろというが、こんな姿では出られない。
男は別の着物を持って来る。初めて見る女の肌にうろたえる。
その隙に羽衣を取り返そうとする女だが、それを止める男。
空から来たという女に、勝手に天女だと思い込み、年貢を召し上げられるグチを話す。
そして、三年一緒に暮らしてくれたら衣を返すと言った。

 

男は、女を「おとき」と名付けて一緒に暮らし始めた。娘も生まれ、幸せな日々を送る男。娘が大きくなったら、いい男と結ばせると言うと、おときは結婚させない、と否定。
そろそろ三年の期限が近づいていた。ずっとここに居て欲しいと願う男。
おときの話では、彼女の国でも大きな戦があり山野も枯れ果てている。

そんな所に兵が来て、平将門反乱の鎮圧をするための兵として出仕せよとの命令。
無理やり連れて行かれるところに、おときが例の衣を差し出し、これと引き換えに亭主を見逃してくれと頼む。驚く男。

 

男:ズクは見逃してもらえたが、おときを心配する。
おときは千五百年の未来から来たという。未来のものを過去に持って来れば歴史が変わり、恐ろしい事になる。
ズクは、羽衣を取り返すために行ってしまった。

 

一年経ってもズクは戻って来なかった。
娘をあやしながら話すおとき。
千五百年の未来で大きな戦争があり、孤児だった彼女は収容所に入れられていた。その時に火のように燃えるふしぎな鳥を見た。鳥は好きな時代へ送ってあげると言われた。
ただし、昔の時代の歴史を決して変えてはいけないと約束した。
羽衣が人手に渡り、この娘も大きくなれば、未来人の産んだ子孫が出来てしまう事になる。
おときは娘を殺そうとするが、どうしても出来ない。
娘を連れ、かあさまの国に帰りましょう、と言って消えて行くおとき。

 

矢傷を受けながらも、羽衣を取り返して来たズク。
だがおときと娘は既にいない。
松の木のふもとに羽衣を埋めるズク。そして息絶える。

単行本 第8巻 第一刷 1983年

 


感想
芝居仕立てであり、一頁に横長のコマを四つ配し、各コマの右手に松の木、左手に家、というレイアウトのまま全てのコマを維持。その中で物語を進めて行く。
手塚にとっても実験的な試みだったのだろう。
話のベースは「羽衣伝説」。おときは1500年の未来から来た。手助けをしたのは火の鳥。
待っても帰らぬ亭主に、結局母娘は「かあさまの国に帰りましょう」と言って、どこに行ったのか?

 

初出の時は、生まれた子供が放射能による奇形で、それを嘆いて殺すという話だったようだが、単行本化される時に、全面的に手直しした様だ。
後半の暗転、スポットライト等、芝居の効果を楽しむような表現。

 

パッセンジャー  2017年

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「備忘録」なので、ネタバレすいません・・・・・

 

監督   モルテン・ティルドゥム

 

キャスト
オーロラ・レーン     ジェニファー・ローレンス
ジム・プレストン     クリス・プラット
アーサー         マイケル・シーン
ガス・マンキューゾ   ローレンス・フィッシュバーン
ノリス船長        アンディ・ガルシア


予告編

 

 

航行中の巨大宇宙船。小隕石をバリヤーで破壊しながら進むが、巨大隕石に遭遇して船体に被弾する。

多数の人が人工冬眠ポッドに入っている中で、一人だけ目覚める男、ジム・プレストン。目覚めをサポートする女性のホログラム映像。
船内を巡るが、他に人が居ない。様子がおかしいと案内表示に、出航してからの年数を聞くと30年だという。本来の航行期間は120年。この船はアヴァロン号。ホームステッド社が「ホームステッドⅡコロニー」と名付けた惑星への入植のため航行している。乗客は5000名、乗務員258名。

 

だがジムは90年も早く目覚めてしまった。何かの手違いだろうと、再び冬眠モードに入ろうとするが出来ない。船内をくまなく探しても彼以外に目覚めた者はいない。計画では到着の4ケ月前から覚醒して入植準備。

食事エリアに行くが、飲み物を選ぼうにも乗客のランクによって飲めるものが決まり、ジムは最も下のランクのレギュラーコーヒー。
異常事態であると地球に連絡を取ろうとしても、この事態そのものが想定外で、通信に数千ドルを要求される。構わずメッセージを送るジムだが、そのメッセージが届くのが十数年後だと伝えられ絶句。

 

バーに入ると唯一人の形の動く者。カウンターに居たのはバーテンのアーサーだった。
ようやく人に会えたと喜ぶジム。だがウィスキーを注文すると極めてスムーズな動きで移動。下半身がレールに繋がれたアンドロイドだった。落胆を隠せないジム。
だが接客のために作られたアーサーの的確な受け答えで、それなりに癒される。

乗務員室を開けようとするが、専用IDがないと入れない。あらゆる工具を使ってこじ開けようとするも無理。アーサーの「ここの生活を楽しみなさい」という言葉で、各種レクリエーション施設を試すが、全く楽しくない。
娯楽の一環としての宇宙遊泳もやれるのを知ってトライしてみるが、広大な宇宙の中に降り立って絶望感を味わっただけだった。宇宙服を着ずにエアロックを開けようとしたが、その決心も出来ずに頭を抱え込む。

 

延々と続く孤独。そんな折りに、人工冬眠をしている中の美しい女性を見つけ興味を持つジム。
乗客名簿によればオーロラ・レーン。小説家だという。彼女のプロフィールをつぶさに読み、食事の時には必ず彼女のポッド脇に座った。
そして冬眠ポッドの説明書を徹底的に読み、冬眠解除の方法を知る。
その気持ちをアーサーに打ち明けると、倫理判断まではしないため「良いアイデアですね」と返す。

 

その後もジムは悩み続け、一時はアーサーに彼女を起こす事はしないと宣言。だが結局孤独には耐えられず、装置に手を加える。
ポッドが開き、オーロラが覚醒を始めると、その場から身を隠すジム。
後は彼女が自分を見つけるのを待てばいい。ジムはアーサーに、この話は彼女に言うな、秘密は守れるか、と尋ねると「秘密は守ります」とアーサー。

 

 

目覚めたオーロラはジムを見つける。一人で一年間暮らしたと聞いて驚くオーロラ。だがこの事態に納得出来ず、ジムのやった事を同じ様に繰り返す。そして絶望。
だが、ジムが一人でも暮らして来たのを見て、気力を取り戻すオーロラ。

食事の時、上級クラスのオーロラは貧弱なジムのトレイを見て驚く。ジムは会社側が客集めのためにセットした「搭乗優待券」の乗客であり、惑星に着いてからも生涯渡航費用の不足分を支払わなくてはならない。自分のIDで食事を分け与えるオーロラ。

 

ジムになぜ入植を決めたのかを聞くと、元々モノ作りが好きで、そのためにエンジニアになった、新天地で自分の建てた家に住むのが夢だと話した。
オーロラは、同じく作家だった父親の影響で作家になった。彼女が十代の時に亡くなり、何事も経験、という教えを残した父親。新たな入植地で一年暮らした後、地球に戻り、それを伝えるのが夢だと言った。

その後急速に打ち解ける二人。ジムに次第に惹かれて行くオーロラ。そしてついに結ばれる。思いがけない出会いだったが、むしろこの状況に感謝し、この先も助け合って行こうと誓う。

 

その日はオーロラの誕生日。ジムはこの日のため、婚約指輪を作っていた。アーサーの前で談笑する二人。オーロラがアーサーに「二人の間に秘密はないの」と言い、それに頷くジム。「そうでしたか」とアーサー。
ジムが指輪を取りに中座した時アーサーは、ジムが貴女を起こすべきか悩んでいた、と言う。そこで初めて自分がジムに強制的に目覚めさせられた事を知るオーロラ。
戻って来たジムに怒りをぶつけるオーロラ。
全てを悟ったジムはアーサーに目を向けるが「秘密がない」と解釈したアンドロイドを責めても仕方がない。

 

ジムは会う度に許しを乞うが、オーロラの憎しみは増して行く。寝ているジムのベッドに上がり込み、顔面を殴打、腹を蹴り、最後は鉄棒で止めを刺そうとするが、全くの無抵抗で打たれる覚悟のジムを見て我に返る。

 

その後も船内に小トラブルが続く。ジムが目覚めてから二年ほど経った時にエレベータが止まる等の異常が発生。そんな時、知らない男の声を聞いて駆けつけるジムとオーロラ。黒人の大きな男が居た。服装は乗務員。名前はガスと言った。
彼は航行のクルーではないが、自身のIDで船内の全エリアに入る事が出来る。

 

船の状態を調べるガス。二年前の隕石衝突でシステム障害を起こしている事が判明。三人のポッドもそれが原因で開いたのだろうと言うガス。オーロラがジムを睨む。

だがその後も異常が拡大傾向にあり、操縦エリアでガスが調査を行った結果、船の動力源である核融合炉の制御部が隕石で破損している事が判明した。
これを直さないと船自体が爆発してしまう。だがこの重大な時にガスが倒れてしまう。

医療ポッドで検査の結果、ガスの体は末期の多臓器不全の状態であり、余命の判断も出来ない。冬眠ポッドの故障が原因だと推定するガス。
結局ガスは亡くなるが、お互いを大切に、と言い残した。

 

核融合炉の修復を決意するジムは、オーロラにも協力を求め、彼女もそれを受ける。
核融合炉のエリアでは重要な部品が破損し、警報が鳴り響いている。予備の部品交換で修理が出来たかに見えたが、エネルギーを放出するための扉が故障して開かず、このままでは爆発してしまう。

手動で外から扉を開けるため、宇宙服を着て船外に出るジム。既にジムを許していたオーロラは「必ず帰って来て」と叫ぶ。

 


核融合炉の扉まで辿り着いたジムだが、その手動の扉用レバーは、手を離すと戻ってしまい、最後までそこに留まっていなくてはならない。
排出のレバーを下げろと指示するジムだが、それをすればジムが死ぬ。躊躇するオーロラに警告メッセージは爆発が近い事を知らせる。
ジムの叫びで意を決してレバーを下げるオーロラ。過大圧力が炎となってジムを焦がす。そしてジムは宇宙空間に放出された。

 

船は爆発を免れた。また、死んだと思われたジムが生きていた。喜ぶオーロラだが、命綱が切れて、もう戻る事が出来ない。別れを告げて気を失うジム。
オーロラは船外活動エリアに走り、モニターでジムの居場所を特定すると宇宙服を着て船から出た。だがもう少しという所で命綱の限界。そこにジムの切れた命綱が。それをたぐってジムを引き寄せる。

動かないジムを医療ポッドに入れ、診断させると「死亡」のメッセージ。ガスのIDで、全ての蘇生プログラムを同時に走らせるオーロラ。その結果、息を吹き返すジム。

 

回復したジム。医療ポッドのオプション機能で一人分だけ冬眠させる事が出来る事をオーロラに伝え、彼女に入るように言った。ほほ笑むローロラ。

 

惑星への到着を前に、次々と覚醒を始める乗客とクルーたち。
船長を筆頭に中央ホールへ行くと、そこはジャングルの様に木々が生い茂っていた。ジムが作った光合成のシステムで発生したもの。
オーロラの残した手紙で二人のドラマを知った船長たち。


感想
「目覚めたのには理由がある」なんて言葉にほだされて・・・・
元々SFが好きな方。だからこんな予告編観ると、つい行ってしまう。

 

だけど開始早々から船体への隕石衝突で、理由も何もバレバレではないかー。
ジムが一人だけ覚醒して孤独な状況に陥るのは予告編通りだがら、まあさほどの新鮮味はない。だがオーロラを自分で起こしてしまうとは。一気にボルテージが下がり、逆にオーロラの方へ感情移入(狙いはこれか)。

二人の険悪な関係に割って入った乗務員。「モーフィアスぅ~~っ!」と思わず叫ぶ(心で)。まあ、好きな役者だからいいのだが、どこでも入れるIDをゲットするためだけに設定されたキャラみたいで、ちょっと切ない。

 

「重力ロス」が意味不明。基本船内の重力は、回転による遠心力により与えているのは、この船の形態からも明らか。それが制御のトラブルで重力が失われるという表現が、どうも納得し辛い。ただ、オーロラがプールに居て、重力のなくなった巨大な水塊の中でもがくシーンにはちょっと萌えたが・・・・

 

一番ナットク出来ないのは、核融合炉のくだり。まず動力部に、あんなでかい窓いらんだろう(映画だから見せないとアカンのはワカるけど)。
それから核融合炉からのガス放出受けたら、放射能汚染で即死んでしまう。当然船に連れ帰るのも不可能。架空の話と言いながらも、この辺りは気になる。

 

あと笑ったのはアンディ・ガルシア。超大物ではあるが、まともなセリフもなく最終部でちょっと出ただけ。却ってかわいそうだったか。

いつも思うのは、せっかく設定はいいのだから、もう少しシナリオを練って、確からしさとか意外性とかを上手に演出してもらいたいものだ。


最後に、宇宙船の構造が気になったので、予告編からピックアップ。
最外周に細長い居住区が螺旋状に3個あり、それが各二箇所の通路で繋がれている。先にも言った様に、旋回する事で重力を発生させている(のだろう)。

 

 

 

 

 

電源コンセントBOX

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自作のプリアンプにハムノイズが出るようになり、安いプリメインアンプを買ってお茶を濁している。
今まで特に意識もしていなかったのだが、やっぱりアンプが変わると音も変わる。スピーカみたく、電気を音に変えるプロセスだったら当然違いがある筈だが、アンプなんて単なる電力増幅。そんなに違いはあるまい、と自作派の割りに高をくくっていた。だが三十年以上同じアンプで音楽聴いてきたのは事実。ここ、あそこという指摘が出来ないものの「やっぱり違う」。
せめてパワーアンプだけでも、と買ったアンプのプリアウトを従来のパワーアンプに繋いで聞くと、精神が安定する。

 

だがそのアンプが連動で接続出来るコンセントの上限ワッテージは100W(少なっ!)。
そんなところにパワーアンプを直接繋ぐのは気が引ける。さりとて毎回スイッチの入り切りでパワーアンプまでON-OFFする儀式はやりたくない。

 

そこで電源コンセントBOXの自作。リレーを使い、コイルのON-OFFのみアンプ側の信号をもらうもの。意外にこういう商品が売られていない。
昔アンプを自作していた頃は、名古屋市内にパーツセンターが数ケ所あったが、今は大須の「アメ横ビル」にしかない。

わざわざ電車使って行くのも面倒。

 

ネットで調べたところ、通信販売主体の「マルツオンライン」があった。
ネット注文しようと思ったが、更に調べて行くと幸いにも車でさほど遠くない所に販売部門がある事が判明。


アルミケース                        640
プラグ付きコード(信号用)      180
プラグ付きコード(電源用)        -
リレー                                 840
ゴム足                                120
ゴムブッシュ(2個)                  40
ACコンセント(4個)                320

計                                 ¥2140

 

 

こんなものを買うのは相当久しぶり。電源用のコードは、たまたま他の機器で余ったものがあるので流用。
一番面倒なのは、コンセントを取り付けるための角穴を開ける作業。
それさえ終われば、後は配線だけ。ごく簡単なので配線図も不要。リレーは上下逆にして両面ソフトテープで固定。配線が繋がれば固定される。リレーは二回路あったので、安全のために両切りとした。

 

 

 

 

 

そしてセッティング。電源を入れた時に「カチョーン」という小気味よいリレー音。
これで聴き馴染んだ音に再会。レコードの音も違和感ない。こうやって比較してみると、プリアンプの違いは、残念ながら自分には聴き分ける能力がない様だ。

 

ただこのパワーアンプも、ボリュームを絞り切って注意深く聞いていると、時折りかすかに「ザザッ・・・」というノイズが聞こえる。まあ旧いから、いずれ手当てが必要になるだろうが、当面はこれで行くしかない。


しかし今回、プリ部だけでもメーカー品になったわけだが、今回変えて良かったと思った一番の出来事は・・・・
「リモコンでボリューム調整や入力切替が出来る!」
使ってみると、これがホントに便利。イージーリスニングでも、気に入った曲があればちょっと音量を上げたくなる。そんな時にすぐやれる快適さ。

 

こうやって人は堕落して行くのか・・・(大げさな)。

 

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