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ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー  2016年

監督  ギャレス・エドワーズ

 

キャスト
ジン・アーソ        フェリシティ・ジョーンズ <ゲイレンの娘>
キャシアン・アンドー   ディエゴ・ルナ 

              <反乱軍の将校。スパイ等ダーティーな仕事専門>
K-2SO     <元帝国軍のドロイド。再インストールされキャシアンの相棒>
チアルート・イムウェ   ドニー・イェン<盲目の武闘家。フォースを信じている>
ベイズ・マルバス     チアン・ウェン 

              <チアルートの相棒。マシンガンの達人>
オーソン・クレニック   ベン・メンデルソーン <帝国軍将校>
ソウ・ゲレラ             フォレスト・ウィテカー<ジンを育てた元反乱軍の戦士>
ボーディー・ルック      リズ・アーメッド <パイロット>
ゲイレン・アーソ        マッツ・ミケルセン 

              <帝国軍に強要されてデス・スターの開発を行う>

 

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=EEGnxUzdfmA

 

あらすじ
辺境の惑星で静かに暮らしていた男の元へ帝国軍のクレニック長官が現れ、連れて行こうとする。男は帝国軍で新兵器の開発を行っていたゲイレン・アーソ。
妻が逆らって指揮官を撃つが、射殺される。
娘を「スターダスト」との愛称で愛した父親。父の指示でその場から逃げた少女。岩を模したハッチから中に入って帝国軍の兵士をやりすごす。
帝国軍が去った後、少女を助け出す男。

 

ゲリラ戦の中で惑星ウォバニで捕虜となったジン。宇宙人と同房。反乱軍の救出作戦のドタバタで逃げようとするが、キャシアン、K-2SOに連れられて、反乱軍の本拠地、セヴィン4に行く。
帝国軍の秘密兵器「デス・スター計画」の情報を掴んでいたキャシアン。以前は同胞だったソウ・ゲレラがその情報を持っている。その話の流れでジンがゲイレンの娘であり、かつてソウに育てられていた(16歳まで)ことが判明。ソウとのコンタクトを要望され、いやいやながらキャシアンとのミッションに参加するジン。裏でキャシアンは上司から、ゲイレンは殺してもいいと指示される。

 

ソウの居る惑星「ジェダ」を訪れるキャシアン、ジン、K-2SO。ゲリラ戦に巻き込まれるが、その状況を救うチアルートとベイズ。
一方、帝国軍からの情報を持って来たというパイロットのボーディーが信用されずに捕らえられていた。

 

目隠しされてゲリラの本拠地に連れて来られたジンは、ソウと再会する。ソウは度重なる戦いで吸入が必要なほどの満身創痍の体。

ボーディーが持って来た情報はゲイレンのホログラム映像。ゲイレンは、もし自分か居なくてもデス・スターの開発は可能だと考え、むしろその計画の中枢に存在し続けた上で、デス・スターの中に弱点を仕込んだ。
リアクターモジュールを叩けば連鎖反応でデス・スターは破壊される。それにはデス・スターの設計図が必要であり、帝国軍支配下の惑星「スカリフ」のシタデルタワー内にある、とのこと。

帝国軍では、デス・スターの威力を疑問視するターキン提督がクレニックに詰問しており、クレニックはその実証をするため、惑星ジェダの攻撃を指示。
ジンたちは辛くもそこから脱出するが、ソウは残って命を落とした。

 

ゲイレン・アーソから情報を得るため惑星イードゥに向かうメンバー。不時着したところから目指す研究所へ一人で向かったキャシアン。

それを怪しんで独自に向かうジン。キャシアンはクレニックと話すゲイレンを見つけて射殺しようとするが、出来ない。
そこへ別ルートから接近するジン。反乱軍が連携のないまま攻撃を開始し、その巻き添えで瀕死の重傷を負うゲイレン。最後の死に目にかろうじて会えたジン。
ジンたちは敵の複葉シャトルを奪って反乱軍の基地に帰還。

 

ジンはデス・スターの存在を主張し、その設計図を奪いに行く事を司令部に提案するが、敵設計者の娘という事で信用されない。
挫折するジンにキャシアンが声を掛ける。今まで汚い仕事もやって来たメンバーを集めて戦闘に志願する。チアルートとベイズも参加。
敵のシャトルを使って無断出動する彼らは「ローグ・ワン」と名乗って出発する。

 

敵惑星「スカリフ」への潜入。幸い機種コードが通り、シールド・ゲートを無事通過。受入れの担当官をやり過ごして、設計図奪取のキャシアン、ジン、K-2SOのチームとチアルートたち攪乱部隊とに分かれての作戦。

タワー内通信網を使ってK-2S0が設計図のありかを見つけ出し、皆でそこに向かう。
設計図はセキュリティを考慮し、物理データで格納のため、取り出しにはアームを使った機械的手段が必要。膨大なデータの中から探すのにキーワードが必要。ジンは思い出して「スターダスト」をK-2S0に指示。そして位置が特定されたが、アームで取り出す直前に停電。やむなくキャシアンと共にデータの塔を登る。
情報を得てこの星に来ていたクレニックが二人を妨害。キャシアンは撃たれる。
ジンは何とか設計図データのファイルを取り出し、最上階の発信タワーへ。だがデータ送信のためには星のシールドを解除しなくてはならない。
地上部隊のボーディーが有線ケーブルを引いて回線を繋ぎ、チアルードが命を賭けてマスタースイッチを入れた。
一方反乱軍が帝国軍のバトルシップに体当たりをかけ、シールドゲートもろとも破壊し、送信可能の状態になった。
データ送信しようとするジンを阻むクレニックだが、キャシアンがそれを阻止した。
何とかデータを送信したジン。

 

帝国軍、ターキン提督の命令で、デス・スターによる惑星スカリフへの攻撃が実行された。それに巻き込まれてジンたちは全員抹殺される。

データを受け取った反乱軍のシンパ。そこに向けてダース・ベーダーの部隊が急襲をかける。
反乱軍の兵士をライトセーバーで次々倒すダース・ベーダー。
危ういところでそのデータはレイア姫の手に託された。それを「HOPE」と呼ぶ姫。

 

感想
「スターウォーズ」のエピソード4に繋がるスピンオフ・ストーリー。まあ、いい悪いは別にして一連のシリーズはずっと観続けているので、お約束の様に視聴した。

 

いつもの調子で、言いたい事は結構ある。
最強のデス・スターに弱点を仕込んだ開発者とその娘、という設定はなかなか良いと思う。だがホログラムで父親が伝えた情報が具体的すぎて、こんなものがよくバレもせずに持ち出せたもんだ、との疑問。
ソウ・ゲレラに育てられたと言っても、その経緯は全く現れていないので、感情移入もし難い。
ターキン提督はCGらしいが、あのキャラクターをそこまで無理して復元せんでもいいものを。最後に出て来るレイア姫もちょっと笑えた。

ただ、批評的に観すぎるのは、このテの映画を楽しむためにはあまり良い事ではない。
で、良かった点を以下重点的に。

 

戦闘機類は、今までのシリーズに縛られてあまり新鮮味がない、というのがエピソードを遡る時の悩みだが、キャシアンの乗る機体が低速時にはスリムな翼が左右に開き、高速になると前方に畳まれる。この動きがなかなかシャープ。
それから帝国軍のベーダーが乗っていた指令船(翼が下半角になるヤツ)の複葉バージョンが今回、敵から奪った機体として新たに登場。

やはり目新しいメカを出すのは目先が変わってイイ。
それから従来の機体、メカもCGの進歩でずいぶん動きが良くなり(本物感が増し)画面に入り込めた。

 

盲目の武闘家、チアルード役のドニー・イェン。あまり知らない人だが、ジャッキー・チェン的な位置付けで有名らしい。確かにちょっと異質な雰囲気はあるが、フォースを信じ、盲目なるが故に研ぎ澄まされた反射神経、という事ではさほど違和感は感じなかった。彼をサポ

ートするベイズについても、なかなかの男気で好印象。

まあ、言ってみれば「七人の侍」的なアクション巨編と言った感じ。メンバーのキャラの立ち方もそこらへんをわざと狙っている。それはそれで「アリ」かな。

 

ただ、C3-POやR2-D2を出すんだったら、レイア姫が追い詰められてR2-D2にデータを埋め込むところまでの話を描いて欲しかった。
「それはそれでもう一話あります」なんて言ったら怒るで。

 


クリスマスの約束 2016  12/23放送

毎年小田和正がクリスマス付近に行う音楽イベント。

 

1.夜空ノムコウ   小田和正
ピアノの弾き語りでしみじみと歌ったので、ゲストはSMAPか、もしくはスガシカオか、と思っていたら、まさかの宇多田ヒカル!
場内ざわめく。
15年前、初めてこの企画を立てた時に宇多田にも出演オファーとして直筆の手紙を出していた。
結局初回はだれ一人として参加はなかったが、数人の返信の中に宇多田の父親からのものもあった。その文を読みながら思い出を語る小田。
宇多田 照實氏。金髪のチャラいおっさんと思っていたが、当時15歳そこそこの娘の父親として、すごくキッチリとした対応。感心した。

宇多田ヒカル自身も小田を訪れて挨拶したという。

 

2.Automatic   宇多田ヒカル、小田和正
最初は小田のギターのみの伴奏。次第に各パートが入り、小田もコーラスでサポート。
最近は息子の写真を撮るのが楽しい、と何気ない日常を大切にしている宇多田。

 

3.花束を君に   宇多田ヒカル、小田和正

朝ドラ「とと姉ちゃん」の主題歌でもあった。宇多田の希望で、ギター1本のみの伴奏で歌い切った。

 

4.たしかなこと   宇多田ヒカル、小田和正
この詩について、改めてリスナーとして聞いた時、ウルっとしたとのこと。

 

続いては TRICERATOPS の和田唱。昨年好評につき、とのこと。まずは女優 上野樹里との結婚を祝福。
昨年はマイケル・ジャクソンだったが、今年はポール・マッカートニー。
特に「Silly love song」はヴォーカルの人数が足りないから、観客に手伝ってもらおうという事で「アーイ、ラーヴ、ユー~」のところを練習させてから曲のスタート。

 

5.JUNK         和田唱 小田和正

6.Silly love song    和田唱 小田和正

7.My Love           和田唱 小田和正

 

次は、通称「委員会バンド」。この番組で常連になった人たちが組んで、時々コンサート活動も行っている。

 

8.Breaking Up Is Hard To Do   常田真太郎、大橋卓弥(スキマスイッチ)
  水野良樹(いきものがかり) 根本要(スターダストレビュー) 小田和正
この曲は大橋のリクエスト。こういうリクエストは毎回ボツになるが、今回は通ったらしい。60年代の曲という紹介。ニール・セダカの持ち歌だが、我々にとってはカーペンターズの方がお馴染み。

 

9.君は天然色   常田真太郎 大橋卓弥 根本要 水野良樹 小田和正
数年前に亡くなった大瀧詠一の7枚目シングル。

 

10.約束   常田真太郎 大橋卓弥 根本要 水野良樹 小田和正
委員会バンドのオリジナル曲


次いで、常連の松たか子の登場。
松の子供と仲が良かったのが突然冷たくされる様になり、また最近回復したという小田。

 

11.風をあつめて   松たか子 和田唱 小田和正
はっぴいえんどの曲。当時この詩が「訳わかんない歌詞」と作詞の松本隆に言ったら夢に出て来たことばを組み合わせたと聞いて、ナットク。松は1曲で後退。

 

次いでJUJU。こちらも常連。昭和歌謡ばかり集めたアルバムの話でひとしきり盛り上がり。

 

12.Both Sides,Now   JUJU  和田唱  小田和正
邦題「青春の光と影」。ジョニ・ミッチェルの曲だが、ジュディ・コリンズの方がお馴染み。こういうJUJUもいいなぁ。

 

松が加わってJUJUとのデュエット。

 

13.赤い花白い花   JUJU、松たか子  小田和正
「赤い鳥」の曲、40年前に「みんなの歌」でもやっていたという。

 

14.僕等がいた   小田和正
小田の持ち歌。ソロ。


全員集合(除く宇多田)。最後はボブ・ディランで。

 

15.The Times They Are a-Changin’ 全員

和訳はこちら
昔のボブ・ディランだったら、ノーベル賞はもらわなかったかも、と小田

 

感想
今回は、何と言っても宇多田ヒカルが最大の目玉。出演者がマンネリ傾向だった事もあって、気合いが入った。
その反動か、それ以降は常連さんだけで、ちょっと惰性に走った感あり。

 

ボブ・ディランにノーベル賞をやったのは間違いだと思う(まあいいけど)

 

 

 

NHK BS アナザーストーリーズ「ユリ・ゲラー」 12/14放送

今から42年前の1974年3月7日に放送された「木曜スペシャル(90分)」。
確かこの番組、観たと思う。さすがにスプーンは持たなかったが。
UFOでおなじみの矢追純一氏が仕掛けた。

 

矢追氏の経歴、番組を作るまでの経緯、ユリ・ゲラー氏の生い立ち、またその後の暮らし。
それから、このスプーン曲げのおかげで仕事をなくし、そこから這い上がったMr.マリック氏や研究者の石川幹人氏の話。
丹念な取材で、いい番組を作った。


詳細は以下のBlogで

 


みんなの家庭の医学(BDNF、Tレグ、カルシウム) 12/20放送 テレビ朝日系

番組詳報
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/ex/22298/1021867/

詳細は詳報に譲る

 

ポイント

BDNF
年齢と共に脳が委縮するが、記憶力と脳の萎縮の割合の相関は低い。
重要なのは海馬の活性度。海馬を大きくするための物質→BDNF。
たん白質の一種で、認知症を予防。
増やすためには運動が効果的。筋肉からも分泌される。
ウォーキングなどの有酸素運動で10%程度増える。

 

Tレグ
制御性T細胞のこと。アレルギーを起こす物質を抑え込む役割り。
元々人体に備わった抗体機能。家畜等に幼児期から触れ合いそれによって各物質に対するTレグ細胞を作り易くなる。
アーミッシュにはアレルギーが少ない。
大人でもTレグ細胞を増やす方法がある。
弱めたアレルゲンのエキスを錠剤にして舌下に入れ、体内に取り込む。
ダニ用とスギ花粉用が保険適用になっている。

 

カルシウム
体内のカルシウムの99%は骨や歯、それ以外が全身に分布する。
カルシウムは金属。ミネラルの一種。骨成分の形成以外に筋肉の収縮、ホルモン調整等の役割りがある。
日本人がカルシウム不足なのは水道水が軟水だから(欧米は硬水:ミネラルを多く含む)。
ストレス回避にカルシウム摂取が有効。
1日、男性で650~700mg以上、女性で650mg以上が推奨。最も効率の良い摂取法は牛乳。
カルシウムが、発がん性物質を捕らえ、排出する。


感想
娯楽番組に近いノリで時々観ているが、ただ観ただけで終わるのはもったいないので・・・
海馬が記憶を司っているのは良く聞くが、それに寄与するたん白質という観点は面白い。
回虫持っている人にはアレルギーが居ないという話も、昔聞いたことがある。アレルギー持ちとどっちがいいのか・・・

 

NHK モーガン・フリーマン 時空を超えて「死からよみがえることはできるのか?」 12/16放送

番組情報
http://www4.nhk.or.jp/P3452/x/2016-12-16/31/9872/1988019/

 

死んだ患者がいる。心拍はなく、呼吸もしていない。
心臓外科医ジョン・エレフテリアセスが行う手術。低体温にする事で細胞のダメージを回避する。
体温18℃。細胞の活性が止まる。生死判定で言えば「死」。手術出来る時間は45分。手術は7分の余裕を残して完了し、決められた手順で患者は蘇生された。この手術では死の定義が変わる。

 

死者のよみがえりは出来るのか。

ランス・ベッカー(ペンシルベニア大 蘇生科学センター)。蘇生のカギが細胞にあると見る。
冷たい場所での肉の保存の例。温度が決め手。
細胞は、調節遺伝子により指示を受けている。毎日500億の細胞が死んでいる。例えば心臓発作。傷付いた細胞は、それを周りの細胞にも伝える→次々死ぬ。
死のプログラムの引き金は何か。正常な細胞の酸素を遮断しても死なない→酸素を与えたとたんに死ぬ。
死のシグナルは冷却で抑えられる。

 

死のシグナルはどこから発せられるか。
全てはミトコンドリアに繋がっている。栄養、酸素を取り込み、エネルギーを取り出す。ミトコンドリアに硫化物、シアン化物、一酸化炭素を加える事でミトコンドリアのリセットが出来る→エネルギーの生産(死んだ人の蘇生につながる)。

ロバート・ランサ(生物工学の権威)。数々の動物のクローンを作って来た。
2001年、絶滅に瀕した牛、ガウルを誕生させた。ガウルの凍った細胞からDNAを取り出して牛の卵子に注入。
クローン作りに反対する者が居る。人類は数千年に亘って植物のクローンを作って来た(品種改良)。
人間のクローンが可能かどうかは不明。倫理的問題の前に卵子の確保が困難。
人間の場合、5個の卵子を取るのに1年以上かかる。

 

しかし、ある人間のクローンを作ったとしても、その人の完全なコピーにはならない。遺伝学的には同じでも、育つ環境によって全く別の人になる。
ランサは言う。死からのよみがえりは、新しい体を作るのではなく、元の細胞の修復の方がいいのかも知れない。

 

ドリス・テーラー(ミネソタ大)。命を吹き込む研究。旧い細胞から新しい臓器を作り出す。
建物建築がヒント(レンガが細胞)。細胞一つづつを組み合わせれば臓器を作り出せる。
テーラーは肝臓、肺、心臓を作ろうとしている。
細胞を全て取り除いた心臓の外形が示される。ここに細胞を注入すると正しい形になる→心臓は鼓動を始める。
本人の細胞を使えば拒絶反応は起きない。ブタの心臓の外形にヒトの細胞を入れて臓器を作ることも出来る。

脳の再生も可能か?→多くの困難がある。
脳は柔らかい組織のため、細胞を取り除くと原形を留めない。更に研究が必要→生きているのなら修復は可能。

 

死からの蘇えりで一番大切な事→心を移せるか。
デジタル技術で心の蘇えりが可能になる?
誰かのデータを一生分集めたら蘇えりが出来るのか。

ある学生。毎日の出来事をデジタル化。カサル・ガーリン(コンピューター科学者)が推進。1日3000枚の写真(人の記憶を補う)。
過去データ→自分の記憶と差がある。ライフログを取ることで過去の出来事を正確に知る。
今ではネット上にライフログを残す時代。
本研究では1年に100万枚の写真データを撮る→検索システムに負担。
データだけでは無意味。便利に使える事が重要。

人格は記憶や経験によって作られる→再現可能。その人が生き返った様な感覚を得るのも可能になる?
人の心は脳の複雑な活動から生み出される。

 

心の中身を脳から切り離すことは出来るか。

ケン・ヘイワース(神経科学者)。脳保存財団の代表。目的:死者の心を蘇らせる。
脳の神経回路→電車の線路の様なもの。長さはオモチャの数十億倍。情報伝達の分岐点はオモチャの何百兆倍。脳内神経回路、分岐点全体

→コネクトーム。
コネクトーム丸ごとのコピーが出来れば心の再生は可能。壊れたPCもハードディスクをコピーすればデータは生き続ける。
脳の神経回路に保存されたデジタルデータの保存、再生は人間でも可能。
人の脳を取り出して樹脂で固め、ダイヤモンドナイフで超微細の断片にする。それをイオンビームスキャナで読み取り、デジタルデータ化。これは既に実現している技術。

 

PC上で人を生き返らせる事が出来る。現在では人の脳の全解析に数百億ドルかかる→将来は数千ドルで可能になる。
ただし、PCのプログラムとして生きる事に耐えられるのか。死ぬよりひどい体験かも知れない。

心を蘇らせるだけでは不十分。触れたいという気持ち。
新たな体を作ることは可能→ロボット。
石黒浩(ロボット工学者)。生身に近いアンドロイドの研究・開発。目的は「人間とは何か」を理解する事。

人の心を宿したアンドロイド→死から蘇った人の姿か。
将来誰にもさよならを言わなくていい日が来るかも知れない。
生と死の境界があいまいになる。オリジナルか、人工の体かという違いが新たな境界となる。


感想
このシリーズもけっこう繰り返し再放送されているので「これ観たっけ?」と自信がない時がある。
ただ今回は初回の6/3を見逃し、再放送の8/5も見逃していた。

「不老不死」の概念と並んで「よみがえり」も人類の大きな願いの一つ。
支配者がこの世を去る時、必ず願うこと。

 

低温下の挙動で死の概念が変わる、というのはややこじつけめいているが、ある物質を加えることでミトコンドリアのリセットが出来るというのは非常に興味深い。
ちょっと脱線:ミトコンドリア・イブの話が面白い

 

脳内情報のデジタル化についても異論はないが、脳を樹脂で固めて断片にしてから読み取るという事には、どうしても違和感がある。分離する時、必ずその断面にはダメージがある筈であり、細胞レベルでそんな事をやれば極端な話、情報の半分はダメになる。
非破壊で何とかデータを吸い取る方法がない限り、その先はないと思う。

確かに蘇えった時、そこがPCだったら悲惨だろう。

 

人の心を宿したアンドロイドって、まんま「Ghost in the Shell」。ロボ・コップは生身の脳だったっけ。
いずれにせよ、こういう事が真剣に議論されるところまで技術が進歩して来たのが、果たして幸せなのかどうか。

 

ライフログ。まあこのBlogというヤツもそれに類するのかも。
生きた痕跡を残すことに重きを置くか、生き続ける事に重きを置くかでも、取り組み方が変わるのだろう。

 

 

NHK ファミリーヒストリー 北野武~父と母の真実 阿波国徳島に何が!~ 12/21放送

番組詳報
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/23759/1022112/

詳細は詳報に譲る。

 

お笑い界の大御所であり、映画監督としても高名な北野武。自分のルーツは親までしか判らないという。

義太夫節の演者だった祖母の北野うし。また母の小宮さきは小作人の娘として奉公に出され、辛酸を舐めた。
奉公先で知り合った、うしとさき。
うしが一人息子の嫁としてさきを迎え、洋品店を始めるが、息子は1年足らずで他界。
その後うしが甥と言って漆職人の正瑞菊次郎を連れて来た。菊次郎は北野家の養子に入る。これが武の父親。
とんでもないお人よしで、飲み屋でおごる、頼まれればいやと言えない、見栄っ張りのため。

店は5年で倒産。

 

家族は足立区に移り、厳しい生活。菊次郎はペンキ屋をやるが、生活を支えたのは母親。
昭和22年に武誕生。「とにかく勉強」が方針。菜切り包丁で毎日子供の鉛筆を削る母親。
「貧乏は教育で断つ」の執念。長男エンジニア、次男明治大。
武は遊びの天才。素質はあり、明治大の機械工学科に現役入学。だがいやで仕方がなかった。
3年の時家出同然で家を出た。絶対に帰って来るな、と母親。だが大学の授業料は払い続けていた。

 

浅草のフランス座(ストリップ劇場)で働き始めた。当時笑ったのはコント55号ぐらい。他はつまらなかった。
昭和49年に「ツービート」でデビューするも、全くウケなかった。
古本屋で買ったあらゆる本を読みまくった。徹底的な勉強。ネタをゼロから作る。
出来たのが「毒舌漫才」→赤信号 みんなで渡れば 怖くない。
家出から20年。兄弟は驚く。恥ずかしさで「他人だ」と嘘をついた。

さきは武のテレビを観ていた。新聞の番組欄にマジック。だが最後まで笑って観ることはなかった。

 

平成11年、さきは95歳で他界。遺品にタケちゃんマンの人形があった。

武のことば:死んでから何年も経っているのに「母ちゃん」と思ってしまう。偉そうになっていると顔が浮かぶ。

 

小学校の恩師だった藤崎敬氏。
武が表彰された標語「ちょっと待て 赤い目玉が光ってる」を披露。
父親の菊次郎が教室の壁のペンキ塗りをしてくれた事を話す。そんな事をしてくれたのは、後にも先にも菊次郎さんだけ。
菊次郎は昭和54年に80歳で他界。

 

よくぞ北野さきの息子に生まれた、と目をうるませる武。
その口で、お盆の時、母親がよその墓から供花を取って来て供えた事を話し、今田がコケる。

 

感想
ちょっとマンネリ化して来たかな?と思っていたところにひょこっと出て来た大物。
本人が知らない家族の歴史を、良く見つけて来る。ただ父方のルーツ、正瑞家の人たちのくだりは蛇足か。

 

 

バイオハザード シリーズⅠ~Ⅴ 2002~2012年

映画「バイオハザード」が今年で完結するので、一応今までのシリーズを整理。

 

1.バイオハザード 2002年

監督・脚本 ポール・W・S・アンダーソン

原案    カプコン「バイオハザード」

 

キャスト
アリス・アバーナシー       ミラ・ジョヴォヴィッチ
マット・アディソン        エリック・メビウス
スペンサー・パークス(スペンス) ジェームズ・ピュアフォイ
ジェームス・P・シェイド(ワン)  コリン・サーモン
レイン・オカンポ         ミシェル・ロドリゲス
チャド・カプラン         マーティン・クルーズ

 

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総合医薬品企業「アンブレラ」社が研究中のTウイルスがラクーンシティ地下の研究所「ハイブ」で漏れだす事故(バイオハザード)が発生する。

 

一方、洋館の中で目覚めるアリス。記憶をなくしている。謎の男マットとの出会い。
武装した精鋭部隊との接触により、研究所の事故現場に辿り着くアリス。途中の連絡用列車に倒れていたスペンス。

研究所内は、封鎖のために緊急の対処をしたコンピューター「レッド・クィーン」が支配していた。
部隊は内部調査とレッド・クィーンの停止を命令されていた。
徐々に記憶を取り戻すアリス。アリスも実は特殊部員で、スペンスと偽装結婚をして研究所の警備要員として入り込んでいた。同様にスペンスも記憶を取り戻す。
Tウイルスに感染した者は人を捕食し、噛まれた者も捕食者となる。また研究所で関連研究していた怪物「リッカー」が逃げ出していた。
マットは、実は研究所で働いていた妹を助けるために侵入してたのだが、妹はゾンビ化してしまった。
スペンスは自分の利益のためにTウイルスの解毒剤を持ち出していた。仲間を助けるため、解毒剤を取り返そうとするアリス。スペンスは結局リッカーに殺される。
傷付いてTウイルスに感染したマットと共に洋館まで戻ったアリスは、そこで白い防護服を来た者たちに拘束される。

 

ベッドで目覚めるアリス。部屋は病室の様。
その建物を出て通りに立つが、人の気配はない。捨てられた新聞の見出しには「DEAD WALK」。

 

コメント
日本で作られたTVゲーム「バイオハザード」を原案として作られた映画。ゲームの方は知らないが、細菌パニックという事で、描かれるのはほとんど地下の密室内。よってそれほど大規模なセットもなく低予算で作られた映画と言える。
細菌パニック映画は、旧くは「復活の日」「カサンドラ・クロス」等あるが、それらは基本的に感染して「死ぬ」のが前提。それがこの映画では噛まれたらゾンビになり、被害者が加害者となって増えて行く。この救いのなさというか、やりきれなさがちょっと辛かった。


2.バイオハザードⅡ アポカリプス 2004年

監督  アレクサンダー・ウィット

 

キャスト
アリス・アバーナシー    ミラ・ジョヴォヴィッチ
ジル・バレンタイン     シエンナ・ギロリー
チャールズ・アシュフォード ジャレッド・ハリス
アンジー・アシュフォード  ソフィー・ヴァヴァサー
カルロス・オリヴェイラ   オデッド・フェール

 

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予告編
https://www.youtube.com/watch?v=a5N03Y65weg

 

アンブレラ社のバイオハザード事故から2日後、Tウイルスが市内に蔓延。ラクーンシティーはゾンビだらけになる。
アンブレラ社は外部との唯一の連絡通路の封鎖を検討。同じ頃、Tウイルスの開発者アシュフォード博士の娘アンジーが行方不明の事態になる。

アンブレラ社の私設部隊のカルロスは、警察関係者のジルと共に、一般人も助けながら教会まで辿り着く。だがそこには怪物リッカーが三匹も居た。
そこにオートバイに乗ったアリスが助っ人に入り撃退。

 

アシュフォード博士は電話システムを使ってアリスとコンタクトを取り、アンジーの救出を依頼(自身は車イス生活)。他の者も連れて学校へ向かうアリス。
その流れでアシュフォード博士がTウイルスを開発した経緯が判明。遺伝病で歩けないアシュフォード博士は、娘アンジーも発症したため、Tウィルスを投与していた。ウィルスは病気の治療にのみ作用しアンジーはゾンビ化しなかった。

博士から、街への核攻撃の計画と、脱出ヘリの場所の情報を聞き、みんなと共に向かうアリス。途中でアンジーを救出。

 

ヘリまで辿り着くが、そこには人型の怪物ネメシスがおり、アリスとの戦いを始める。戦いの途中で、その相手が共に連れ去られたマットである事を知り、自分もまた能力的にはその怪物と同じである事を知るアリス。
戦いの中でマットはわざとアリスに負け、ヘリに乗れるよう支援する。
辛くも核攻撃前に脱出したアリスたちだが、その爆発に巻き込まれて墜落。

 

研究施設で目覚めるアリス。徐々に記憶を取り戻しながら、隙を見て外に脱出。
カルロス達がアンブレラ社員に化けて施設からの脱出を計画。出口ゲートで係員に止められるが、所長はアリス達と知りながらそれを許可。
その車の動きをアンブレラ社の衛星が追っていた。

 

コメント
Tウイルスの開発動機が、娘を救うためだったというのが、このテのパニックものに少し深みを与えている。
前回ではさほどその能力を見せていなかったアリス。Tウイルスに冒されても自身の外見を変えずに特殊能力を獲得した事に気付く。同じ環境で特殊能力を得たマットの外見との大きな違い。
この辺りから、アリス自身が特殊な存在としてアンブレラ社の追い求めるものに変化し、今後の話の展開に影響を与える。


3.バイオハザードⅢ  2007年

監督  ラッセル・マルケイ  

 

キャスト
アリス・アバーナシー   ミラ・ジョヴォヴィッチ
カルロス・オリヴェイラ  オデッド・フェール
クレア・レッドフィールド アリ・ラーター
サム・アイザックス    イアン・グレン
アルバート・ウェスカー  ジェイソン・オマラ

 

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予告編
https://www.youtube.com/watch?v=waHVxzucLMs

 

アリスがレーザー光線のトラップであっさり殺される。その処分される先に累々と転がるアリスの遺体。
アンブレラ社の研究幹部アイザックスの指示で続々と作られるアリスのクローン。

 

カルロスは仲間と共に安住出来る場を求めて車を走らせる。リーダー的存在のクレア。
大量のカラス群に襲われる仲間たち。その時アリスが現れてカラス達を特殊能力で焼き払う。そのエネルギーを感知するアンブレラの衛星。
安住の地「アルカディア」がアラスカにあるというメモを信じ、まず補給のためラスベガスに立ち寄る。
しかしそこは大量のゾンビが溢れていた。またアンブレラ社の罠により数々の攻撃を受ける。
戦いの中でアリスはアイザックの居場所を割り出す。クレアたちはヘリでアラスカへ向かい、アリスはカルロスと共にアイザックの研究施設に。
カルロスのトラックによる暴走で施設内に侵入。アリスはアイザックと戦う。
Tウイルスに侵されたアイザックは大量の抗ウイルス薬の副作用で怪物と化していた。
危機に陥ったアリスを、彼女のクローンが助け、アイザックは倒された。

 

東京の地下にあるアンブレラの支部でウェスカーを筆頭とする会議が開かれている。
そのモニターに映し出されるアリス。自分の友達を連れてそちらに行く、との予告。


コメント
アリスの超能力全開!といったシリーズ。衛星のセンサーまで破壊するとんでもない能力。
また、アリスのクローンという概念が新たに組み込まれる。
ラクーンシティーという限定地域から、世界全土に広がった厄災。こうなって来ると、この先どう世界観を維持して進めて行くのか、はたまたどう崩すのか、興味のあるところ。


4.バイオハザードIV  アフターライフ  2010年

監督  ポール・W・S・アンダーソン

 

キャスト
アリス・アバーナシー    ミラ・ジョヴォヴィッチ
クレア・レッドフィールド  アリ・ラーター
アルバート・ウェスカー   ショーン・ロバーツ
クリス・レッドフィールド  ウェントワース・ミラー
ルーサー・ウェスト     ボリス・コジョー

 

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予告編
https://www.youtube.com/watch?v=QvODEWW_P6M

 

東京地下のアンブレラ支部を、アリスが数名のクローンと共に急襲し壊滅させる。
ウェスカーはVTOL機で脱出。残された支部は大規模な爆破で消滅。
だがその機体にはオリジナルのアリスが乗っていた。だがウェスカーがアリスの首に注射器を打ち込んだ。
それはTウイルスを中和するものであり、アリスの特殊能力は消滅してしまった。その直後、VTOL機は富士山麓へ不時着。

 

それから半年後、安住の地アルカディアを求めて単発のプロペラ機で飛ぶアリス。
途中で立ち寄った飛行機の墓場で女に襲われるが、それは以前一緒に行動したクレアだった。だがアリスを覚えていない。
胸に付いた蟹の様なデバイスを外すと、徐々に記憶を取り戻す。他の仲間を求めて再び飛び始める二人。

 

ロサンゼルスの刑務所の屋上に人を見つけたアリスは、そこに着陸。刑務所の周りはゾンビで溢れている。
元プロバスケの選手だったルーサー他数名と、そこの檻に閉じ込められていた男、クリス。軍属だが刑務所で暴動が起きた際に誤って閉じ込められ、ルーサーらが来た時から囚人と間違えられていた。
設備には軍関係のものがあり、クリスの力が必要。解放されたクリスは、クレアを見て兄だと言うが、彼女には記憶がない。
アルカディアは、アラスカの地名ではなく、そこから肉眼で見える場所に停泊しているタンカーだった。

隙を見てベネットが飛行機を奪い屋上から離陸。
脱出の手段を失った皆は、地下の下水に通じる穴を通って脱出。ルーサーは取り残されアリス、クレア、クリスの三人でアルカディアに乗船する。
操舵室に行くが誰もいない。通信は2日前から途絶えていた。またそこのデータによれば2000人の生存者がいる事になる。
皆を捜しに船内へ降りる三人。扉を開けるうちに、白い巨大な部屋に出る。端末を操作するとカプセルに入った人が下から持ち上がる。
そこには以前の仲間だったKマートも居た。
その先の扉を開けるアリス。そこにはウェスカーが居た。
戦いの末、何とかウェスカーを倒すアリス。クリスとクレアがウェスカーを銃でメッタ撃ちにする。

生存者を助けているうちに、ウェスカーがVTOL機で逃げ出した。慌てて屋上に上がるアリスたち。
だがしばらく遠ざかった後、VTOL機は大爆発。アリスが逃げる機体に爆弾を仕掛けていた。

 

みんなを助け出した「アルカディア」号に向けて集中するVTOL機の大群。そのボスと思われる女。その胸には蟹の様なデバイスがあった。

 

コメント
能力を失ったアリスというのは、前作がド派手だっただけに、ちょっとつまらないという印象。
やはり娯楽なんだから、超人的な活躍を期待してしまう。
毎回のパターン同様、最後の所で次回予告的な造りにするのは、多少うんざり気味。
あと、オスプレイタイプのVTOL機を大量出演させるのは、日本への配備を意識しているのかな?
ところで、アリスが乗っていたプロペラ機はYak-52。ソ連の機体。次回に出て来るアンブレラの海底施設がソ連のものだから、一応の整合性は取れているのね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Yak-52_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)


5.バイオハザードV  リトリビューション  2012年

監督  ポール・W・S・アンダーソン

 

キャスト
アリス・アバーナシー    ミラ・ジョヴォヴィッチ
アルバート・ウェスカー   ショーン・ロバーツ
ジル・バレンタイン     シエンナ・ギロリー
エイダ・ウォン       リー・ビンビン
レオン・S・ケネディ     ヨハン・アーブ

 

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予告編
https://www.youtube.com/watch?v=hoyMT-7wEqs

 

VTOL機の大群の攻撃を受けるアリスたち。そのリーダーはかつての仲間、ジル。胸のデバイスで洗脳されている。
機体の墜落に巻き込まれて海に落ちるアリス。

 

アリスが目覚めると、そこはごく普通の家のベッド。夫(と思われる男)が優しく声を掛ける。娘(と思われる少女)は耳が悪いらしく、父親と手話で話をしている。ごく自然にその会話に入って行くアリス。
そこに突然ゾンビが現れ、娘と共に逃げ出すアリス。夫はゾンビに襲われた。
通りかかった女性の車で脱出するが、途中で横転。近くの民家に逃げ込む。
娘をクローゼットに隠してゾンビを撃退するが、途中で気を失う。

 

円筒形の大きな部屋で目覚めるアリス。白い布だけの覆いしか身に着けていない。
高い窓からジルが尋問する。問い返すと強烈な音で痛めつける。

ある時、突然照明が落ち、その後システム再起動のアナウンス。引き出しから黒いサバイバル・スーツが出て来た。

 

部屋から脱出したアリスは、東京と思われるエリアに入り込み、そこでゾンビの襲撃に会う。街の一部が開いたところに逃げ込み、追って来るゾンビを撃退するアリス。

次に入ったところは指令室。そこでアンブレラ社の元工作員エイダ・ウォンに会う。ナイフを突き付け、一触即発の状況で、ディスプレイからウェスカーの顔が現れる。
ウェスカーの解説。
ここはアンブレラ社の主要実験施設。東京、モスクワ等の街は作り物。高さは90m、夜の設定。
アンブレラ社はウィルス兵器の販売に頼って来た。だがその実験は現実世界では不可能。
仮想的にニューヨークを再現し、感染の様子をロシアに見せてウィルスを売った。モスクワのシミュレーションはアメリカに見せ、東京の様子を中国に、また中国の様子は日本に見せた。
どの国も買った事により、ウィルスは新たな軍拡競争を作り出した。核兵器の代わりの生物兵器。
そのための見本がこの施設。アンブレラ社最高の作品、悪の根源。
ここはカムチャツカ海峡の海底にある(ロシア北部)旧ソが作った潜水艦シェルター。
冷戦終結後、アンブレラ社がシェルターを拡張した。

だがゾンビでダメージを受けたアンブレラ社の残った機能を全て掌握したのが研究所「ハイブ」に居た「レッド・クィーン」と同じもの(コンピュータシステム)。ウェスカーはレッド・クィーンと戦うためにアリスを救い出そうとしていた。救出のための別部隊がここを目指している。エイダもそのメンバー。
ウェスカーの話を怪しむも、脱出のため行動を共にするアリス。

 

救出部隊と合流して何とか施設から脱出するが、氷の平原を走る途中で潜水艦が氷を割って浮上。
出て来たジルとの戦い。能力を奪われているアリスはジルの攻撃に対抗出来ない。ジルに吊り上げられた時、とっさにジルの胸のデバイスをむしり取り、銃で破壊。
力尽きて倒れたところへ救援ヘリが到着する。

 

ヘリで目覚めたアリス。ジルは正気に戻っていた。
ヘリが到着したのはボロボロになったホワイトハウス。押し寄せるゾンビ。大統領執務室の椅子に座っているウェスカー。
レッド・クィーンは地球の生命体の抹殺を決めている。
ウェスカーは素早い動きで再びアリスの首に注射を打ち込んだ。
Tウィルスの取り込みに完全に成功したのはアリスだけ、と話すウェスカー。

だからアリスの能力を再び戻したのだ、と。。
共通の敵、レッド・クィーンを倒すための最終兵器がアリス。
人類としての最後の戦いの始まり。

 

コメント
Tウィルスが、最初は病気を治すためのものだったのから、軍拡競争の道具にすり替わっている
クローンの大量生産にしても、Tウィルス以降に計画されたとなると、ゾンビ騒ぎで基本がガタガタになっているのに、それどころじゃないだろう、というのが印象。
まあ、ゲームをネタにした映画だから、骨太のシナリオなんてムリか。

 

終わりの場面で訳のわからない怪物がバンバン空を飛ぶ姿は、何かオカルト映画みたいでちょっとヘン。
ただ、ここまで続くと、どうでもいいから最終の結末まで行ってくれ~、という気持ちだけ。
だから「ザ・ファイナル」もやっぱり観に行くんだろうな。

 

 

バイオハザード・ザ・ファイナル 2016年

監督  ポール・W・S・アンダーソン

 

キャスト
アリス      (ミラ・ジョヴォヴィッチ)
クレア      (アリ・ラーター)アイザックス  (イアン・グレン)
ウェスカー   (ショーン・ロバーツ)
レッドクイーン (エヴァ・アンダーソン)
アリシア    (ミラ・ジョヴォヴィッチ)
ドク       (オーエン・マッケン)
コバルト    (ローラ)

 

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=pawXaGKWxJw

 

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アリスの独白による今までのあらすじ
アンブレラ社は、アレクサンダー・アイザックス博士とジェームズ・マーカス博士が50%ずつの出資で共同設立したバイオベンチャー。
元々「早老病」の治療薬として開発されたTウィルス。マーカス博士の娘アリシアがこの病気に罹っていた。
Tウィルスの発売後、人間、動物をアンデッド化してしまう副作用が判明。
発売中止を訴えるマーカスをアイザックスが殺し、アリシアの後見人となる。
コンピュータシステム「レッドクィーン」はアリシアの脳内データを利用したもの。

 

ホワイトハウスでの闘いで一人生き残ったアリス。散発的に出て来るアンデッドと戦いながら立ち入った建物の中で、端末映像のレッドクィーンと対峙する。
現在残された人類は数千人足らず。アンデッド達が殺到して全滅するまでの猶予は48時間。
ラクーンシティ地下の研究所「ハイブ」にあるTウィルス用ワクチンを撒布する事でアンデッドは死滅すると言うレッドクィーン。
相手を信じきれないが、今打てる手は他になく、その作戦に乗るアリス。

途中、アイザックスの指揮する装甲車に捕まるが、何とか脱出。その時、アイザックスの左手首を切り落とす。

 

ラクーンシティーに到着した時、知らない敵に襲われ、気絶するアリス。

目覚めたアリスは、アンデッドに対抗する組織に捕まっていた、仲間だと言っても信用されない。組織のボスはドク。
険悪な雰囲気の中で、以前の仲間だったクレアがアリスを見つけ、拘束を解かれる。

アリスの機転で一度はアンデッドたちの攻撃を退けたが、次は持ち堪えられない。アリスはワクチンの話を彼らにして、一人で行くと言ったが、クレア始め数人が助っ人を志願。そのメンバーでハイブへ潜入。

 

ハイブ入り口に何とか辿り着き、そこでアイザックスが役員会議で演説する動画を見つける。
環境破壊等により、人類は早晩亡びる。その速度をTウィルスにより速めて、残った世界を少数のアンブレラ関係者が支配するという図式。

ハイブ内でアリスたちを持ち構えるウェスカー。レッドクィーンに各種の指示を出す。表面上は従うレッドクィーン。アンブレラ社々員には逆らえないようプログラムされている。ワクチン奪取も、自分で手を下せないためアリスに頼った。
ウェスカーは、冬眠装置を作動して、ある人間を覚醒させた。それはアイザックス博士。この男がオリジナル。

数々のトラップをかわして地下の本部に向かうアリスとドク。途中冷凍睡眠されたアンブレラ社幹部のエリアを抜ける。

 

本部に辿り着くと、ウェスカーとアイザックスが待っていた。アイザックスはワクチンを手に持っている。

そこに車イスで入って来た老女。アリシアだった。Tウィルスによりいったん早老病の進行は止まったが、それは一時的なものだった。
またアリスがアリシアのクローンだった事をアイザックスが暴露。アリスに幼少の記憶がないのは、記憶喪失ではなかった。
また仲間の筈だったドクがアリスに銃を向ける。アンブレラ社側のスパイだった。

絶体絶命の中、アリシアはウェスカーの解雇を通告。経営者としての命令を受け、社員でなくなったウェスカーを、レッドクィーンが攻撃し、ウェスカーは扉に半身を潰される。
慌ててドクが発砲したが空砲。アリスが事前に疑って弾を抜いていた。何故だ!と問うドクに「死ななかったからよ」と返すアリス。アリスは手を下さなかったが、後から到着したクレアが止めをさした。
アリシアは自らを犠牲にして、冷凍冬眠されている幹部もろとも地下の施設を爆破。

 

逃げ出すアイザックスを追うアリス。レーザーの廊下で、施設を知り尽くしたアイザックスに指を切り落とされるが、ポケットに手榴弾を押し込んで爆破させ、何とかワクチンを奪う。
地上に出てワクチン容器を破壊しようとしたアリスだが、再びアイザックスが追って来る。
支援システムの作用で容易に倒す事が出来ない。
その時、アンデッドを引き連れて、先に腕を切り落とされたクローンのアイザックスが到着。アイザックスに、お前はクローンだ、と言われても信用せず、強烈な意思でオリジナルを倒してしまう。
そのクローンもアンデッドに食われる。
アンデッドに囲まれ、襲われる寸前にワクチン容器が破壊され、周辺のアンデッドは即刻死亡、どんどん広がって行った。
自身の消滅を覚悟して目を閉じるアリス。

 

目を開けたアリスに寄り添うクレア。Tウィルスは死滅したが、正常な細胞は壊れなかったため、死ななかったという。
アリシアは死ぬ前に自分の記憶をレッドクィーンに移植しており、それがアリスにも移植された。涙を流すアリス。

ワクチンが世界中に行き渡るまで、まだ数年かかる。そう言ってバイクで走り去るアリス。
エンドロールの後、レッドクィーンの声で「ここで みんな死ぬことになるわ」

 

感想
良くも悪くも、やっと終わった、という感じか。
冒頭でアリス自身が話す物語の経緯には「それちょっと違うんじゃね?」と突っ込みたくなる。
そもそもTウィルス開発のいきさつは第二作で、アシュフォード博士が自分の娘が歩けるように、と作ったものをアンブレラ社が利用したと理解していたが・・・・
展開で言えば、第五作における海底の都市シミュレーション基地での出来事が、全くなかったものとされているのにも、ちょっと不満はある。
ただ、あまり内容を知らない者も含めた公約数的な落しどころを考えての事なのだろう。

 

前作までで、あれほど君臨していたウェスカーが、単にアリスを待っているだけで、地下本部で対峙しても戦いの場面はなく、レッドクィーンにあっけなく潰されてしまったのは何ともザンネン。

 

オリジナルのアリスも実はクローンだったというオチは、ちょっと拍子抜け感がある。予告でアリスが婆さんになった姿が出ていたので、Tウィルスの副作用によるものか、と思っていた。

アクション映画としては、まあまあだと思うが、期待が大きい分「こんなもんか」という印象も。

 

さすがに第一作から10年以上経っているので、アリスの動きも衰えている筈だが、よく頑張っている。また、顔が確実に優しくなっているのは、子供が出来たためもあるのかも。

 

何か続編ブームっぽい雰囲気だが、今年公開予定の「ブレードランナー2049」も楽しみ。

 

 


新聞小説 「クラウドガール」(4)金原ひとみ

作:金原ひとみ 画:山城えりか

 

89~117最終回(12/1~12/30)

母の遺作?と聞き返す理有。高橋の言うには冒頭の20枚程度であり、未完。
読みたくない、母の存在に惑わされるのはもう嫌、と答える理有。
作家だった母のおかげで被って来た数々の惨めな思い。
高橋は、ユリカの思考を弁護するが、普通の母娘の幸せが欲しかった理有。
更に高橋は、ユリカが自殺だったと思う理由が、別にあると言った。
原稿を送ってから数日後、ユリカが高橋に2枚分程度のテキストデータを送って来た。ユリカの死を聞いて、それが彼女の遺書だったと感じている高橋。そして、読みたくなったら連絡を欲しい、と名刺を出す。
小説とのみ、溶けあっていた母。気付くと理有自身もそうなっていた。
光也との関係。相手からの触れたい、近づきたいという欲望を、知っていながらやり過ごす。いっそ襲ってくれないかと思う自分がおぞましい。

 

法事を途中で辞して新宿行きの電車に乗る理有。幼い頃の杏を思い出していた。
スマホのチェックでも杏からの連絡はやはりなく、フェイスグックも閉じていた。光也にメールを入れ、晴臣ともし連絡先交換をしていたら、杏の様子を聞いて欲しいと頼む。
状況をすぐに察した光也はそれを引き受ける。

 

新宿に着いてメール確認すると、光也からLINEも電話も繋がらないという連絡。
杏との価値観の違い。あらゆる因果関係に無頓着。母親との類似。

マンションに着き、中に入ると僅かな物音。不審者を疑い、傘を取って、杏の部屋のドアを一気に開ける。
そこにはベッドに並んで布団をかぶっている杏と広岡の姿が。
その人、既婚者だよ、と言う理有に「知ってるよ」俺は誘われたんだ、と広岡。
部屋を出て、マンションを出る。やみくもに歩き続けてしばらく経ち、ようやく歩調を落とした。
光也からの電話。届いていたメールを読んでいなかった。晴臣と杏のいきさつを説明する光也。
光也が心配して、そちらに行くという。最寄り駅を教えてスメホを切る理有。
この街に越して来た頃を思い出す。あらゆる場面で二人は手を取りあって生きて来た。それが今では既婚男性を捉える邪悪な者になってしまった。

 

部屋の広岡と杏。あの日、晴臣との一件の後、イプシロンへ行き、広岡に手の怪我の手当てをしてもらってから三日間、仕事以外の広岡を独占し続けている。広岡は、杏の予想に反して理有とは寝ていなかった。
広岡は、本棚にあったユリカの著書、母娘三人で写っている写真などを見て驚く。広岡はユリカの髪を、今の店長になる前の店で切っていた。通算で8年ほどは切っていたという。
理有は広岡にはその事を黙っていた、というより店では長政理有と名乗っていた。父親の苗字。
理有は4年前から広岡の店に通っていたが、その時から母親はもう死んでいると言っていた。
何かが体の中から落ち、空白感が杏を襲った。

 

広岡が帰った部屋で、晴臣の部屋から持って帰った荷物を開く杏。この三日間を思い出していた。
スマホを取ると、メールの受信、SNSのチャット、各履歴類、全てを削除した。
また裏切られる、という蟻地獄からようやく抜け出せる。

「会いたくなったら連絡して。いつでも、どこでも行く」とのメッセージを広岡に入れた杏。
しばらくしてから広岡からのチャット。しばらくやりとりしているうちに、晴臣からのチャットが入った。迷わず消去。

 

携帯のバイブで目覚めた杏。午前0時。理有は帰っていない。
出掛けようか、迷いながら着替えをする。悩んだ末、ようやくスニーカーの紐を締め始めた時、理有が帰って来た。
「ただいま」とは言うものの無表情の理有。スニーカーを放り出して部屋に戻る杏。
今しているのは不倫だと断ずる理有。理有自身はどうだ、と聞くが、何とも思っていない、と返される。
今まで通り、仲良くして行きたいと言う杏に、今まで通り面倒見て下さいという事?と突き放す理有。

真面目ですって顔して、理有ちゃんママを見殺しにしたじゃん。喉を掻き切ったママの映像が鮮明に蘇える。
意味が判らない、ママは心臓マヒで死んだんだよ、と諭す理有。
全く噛みあわない会話。あの夜の事を全て否定する理有。
広岡に、ママが死んでいるって言ったのはどうして?と聞く杏。
あの頃、ずっとママの真似をしていた。だから店の名前を知って、行ってみたくて。広岡の前では私が中城ユリカだって気持ちでいた。だからママは死んでるって言った。

杏の記憶は確実に偽りない過去を映し出しているのに、自信が持てなくなっていく。
ああ、発作だと諦めの様な気持ちで胸に手をあてる杏。理有は水を持って来て飲ませ、様子を心配する。
手をつないで、という呟きに応える理有。次第に呼吸が楽になり、苦しさが緩和されていく。

 

杏が多少落ち着いてから、ママの話を始める理有。ママが好きで、ママになりたいとまで思ったけど、見た目も性格も似てなかった。杏は本当にママそっくり。
理有ちゃんにはパパが居るじゃない、と返す杏。何言ってるの。
いつも理有ちゃんが、誰もいない画面に話しかけているのを知っているよ。何のこと?
ママの死はあんなに簡単に受け入れたのに、どうしてパパの死は受け入れられないの?
理有は、黙ったまま立ち上がり、リビングから自分の部屋に戻って行った。

ねえパパ、杏ちゃんはおかしくなっちゃった。
真っ暗な画面に話し掛ける理有。そうしながら母親との事を思い出す。
小説の成就だけを考えていたママ。そんなママへの反発、他人への激しい執着。
中学の頃のエピソード。明け方近くまでママを待っていた理有に「心配されると死にたくなる」と拒絶された。
反発しながらもママ自身になりたいという矛盾。
ママのインタビュー記事はネットも含め、全て読み尽した。小説は、本になる前の原稿で読んでいた。

「パパにとってママは何だったの」
「俺とユリカはフェアだった。理有はユリカの奴隷で杏の保護者だった」
真っ暗な画面を見つめ、外付けのカメラを外す理有。このシチュエーションはママの小説にあったもの。習慣になってしまったが、今はその自分がおぞましい。
高橋のメールアドレスを打ち込み始める理有。

 

杏に起こされ、目を覚ます理有。だが杏はいない。夢か、と再び目を瞑る。
再び目覚める理有。光也の挽いてくれたコーヒーを淹れる。杏の姿はない。少しづつ解き放たれて行くのを感じる。

高橋からの返信メール。母親のワード原稿と、遺書めいたテキストデータの二通の添付ファイル。
先にワードを開く。一文一文がぎしぎしと音を立てて入って来る。
ものの十五分で突然途切れた文章。
次いでテキストデータを読む。ブツ切れの文章。これはパパの言葉ではないか。
離婚からものの二年で癌を発症したパパ。父方の祖父の話では、パパは全ての見舞いを断っていた。
ママは、パパが死んで初めて、フェアな関係が結べていたのがパパだけだったのに気づき、パパを題材にした小説を書こうとしていたのではないか。
でも、もう何も分からない。

私はもう、パパともママとも対話出来ない。記憶や情報を引き出しながら形作って行くしかないが、現実だったママとは別物。
何よりママの死因すら杏と共有していない。私たちは中城ユリカの死因の中から別々のものを採用した。
文字、画像、映像、あらゆるデータを無制限に保存出来るようになった私たちは、それらがどれも修正可能な、

不確かなものでしかないと思い知らされる。
でも光也とだったらどうだろう。話し合い、二人にとっての真実の基準を作って行けるのではないか。
ずっとママの全然素敵じゃない魔法にかかっていた。

 

杏からのスナップチャット。晴臣と一緒にパンケーキを頬張っている。受信してから数秒で消滅してしまうもの。幻ではなかったか、とさえ思える。
杏に自殺幇助したと言われ、パパと嘘のスカイプをしていたと言われた。このチャットも幻想なのかも知れない。
杏がいつも晴臣に裏切られ、それでも許してしまうのは、人間の連続性を認めていないからかも知れない。
刑罰の意味を認めない。だがそれは別段不幸な事ではないのかも。

晴臣君と仲直りしたの? というチャットに、しばらく晴臣と広岡、両方と付き合ってみる、との返信。
光也に会って、杏の顛末を話し、困った子だね、と笑い合いたかった。
私と光也は、父と母が結んでいたフェアな関係とは全く違うフェアな関係を築くことが出来るだろう。
互いの幸福を追求し、互いを幸せにする努力をし、互いを求め合うだけの関係を築くことができるだろう。

 

感想
ユリカの編集者だった高橋の出現で「さあこれから」と思った矢先に、年明けからの新連載の告知。
え?なにそれ、という驚き。
こりゃあ、作者が例によって途中で放り出したパターンかな?とも思ったが、1月6日から単行本で出版されるという。そうなると計画通りという事か。でも4ケ月でおしまいというのは、真剣に新聞小説を読み始めた12年前から振り返っても最短。単行本もかなり薄いナ。でもこのご時勢、若者に読ませようと思ったらこっちが正しいか・・・

 

前回で理有に感じていた「ちょっとヘン」だと思う感覚。
死んだ筈の父親と仮想スカイプをする事で、心の平静を保っていた理有。母親が自殺した事も、心臓マヒだった

と自分を誤魔化しているのか、それとも杏の妄想だったのか。

奔放な妹と知的で冷静な姉、という構図で始まったが、結局は姉の方が深刻な心の闇を抱えていた。
チャットをしていた相手(父親)が既に死んでいたとは。
自分の事を唯一理解していた元夫に死なれて、心のバランスを失って行ったユリカ。その死がまた理有にも感染

して行く。
騙されても騙されても許してしまう杏の姿は、人としての一種の理想を現しているのだろう。
母親に対するこれだけ屈折した思い。作者自身、実生活でも何らかの確執があったのかも。
身を削って仕事をする・・・こういう仕事を選んだ者の宿命か。林真理子の「マイストーリー」にも同じ空気を感じた。

 

短くはあるが、理有の変化を通じて、心が浄化(昇華?)されて行く経緯を共有出来たような気がした。
もう一度読み返してみたい。

 

あと、毎日読んでいてちょっと残念だったのは「挿絵」。画像によってイメージが膨らんだという経験が、今回ほとんどなかった。
最初、かわいい女性の描き方だな、とは思ったが、その類型的な顔が金太郎飴の如く延々と繰り返される。
タッチも鉛筆画なのか印象に乏しい。
挿絵の効果で、作者自身もインスパイアされるという事はあると思うが、今回の場合短く終わったのは、この辺りにも理由があると思っている。

 

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100分de手塚治虫  NHK Eテレ 1/3放送

番組紹介
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/2016special2/

字幕書き起こしを読みたい人は
http://kakiokoshi.hatenablog.com/entry/2016/11/14/165725


昨年11/12の本放送は見逃していた。手塚治虫は何と言ってもマンガ業界を最初にメジャーにした最大の功労者。享年60歳。

 

進行役 伊集院 光、磯野 佑子

 

コメンテーター(講師)
斉藤 環(精神科医)
ブルボンヌ(女装パフォーマー)
園 子温(映画監督)
釈 徹宗(宗教学者)

 

生涯で生み出した作品700タイトル以上。原稿15万枚。
日本初のアニメ「鉄腕アトム」 日本初のカラーアニメ「ジャングル大帝」
「100分de名著」でマンガを取り上げるのは今回が初めて。

 

一言コメント
園      子供時代、当たり前のようにあった
ブルボンヌ 直接ではなく、ちょっと上の人たちが尊敬する人、とか
斉藤     「COM」での出会い。人がバタバタ死ぬ。不死を描く。
釈       初めて読んだ絵本が「鉄腕アトム」。
磯野     初めて接したのは「ブラックジャック」
伊集院    印象が強いのは「日本発狂」。あの世でも戦争があり、人が足りなくなる。あの世で死ぬとこの世で生まれる。物語がすぐに消化できない。

 


ブルボンヌの語る名著「リボンの騎士」
LGBTを扱ったもの。
王家に生まれた女性が、王子のフリをして生きて行く。
1953年、少女クラブに連載開始。日本初の女性向け長編ストーリーマンガ。
歴史的にエポックな作品。少女が戦うというアイコンは日本独自。手塚が宝塚出身だった事も関係(宝塚歌劇団)。サファイアのモデルは淡島千景?
天国では神様が性別を決める。天使チンクのいたずらで男と女、両方の心を飲み込んで生まれたのがサファイア。女性が男装をする話ではなく、トランスジェンダーの概念。
最近多い概念「Xジェンダー」。男、女、そのどちらでもない感じ。リボンの騎士ではどっちの性も入れ替わる。最新の概念に近い感覚(ジェンダー・フルイディティー)。
装いの魔術。衣装を変えることで心も変わる。越境の喜び。メタモルフォーゼ(生物としての変態)→手塚のテーマ。
「リボンの騎士」は最終的にどうなった→ハッピーエンド。王子と結ばれて姫として。
魔女の娘「ヘケート」の先進性。外見は女性的だが男っぽい面を持っている。死んだ時に男の心を持っていた。

性別を超越した魅力。

 

ブルボンヌの推すもう一つの作品「MW(ムウ)」1976年からの連載。黒手塚。
主人公・結城美知夫。殺人を繰り返す希代の犯罪者。一方そんな結城を救おうとする賀来神父。
結城と賀来は化学兵器事故(毒ガスMWの漏えい)の生き残り。ガスの影響で残虐さ他の後遺症に苦しむ結城。
まだ残されているというMWガスで大規模テロを計画する結城と、それを阻止する賀来。
だがその事故以来、二人は特別な関係を持っていた(同性愛)。

この時代に青年誌でやったのがすごい。キャラが立っている。先進的。同性愛へのまなざし。
作中、レズビアンがゲイのスキャンダルから守る描写がある。
アカデミー賞取った「スポットライト」。神父の性的児童虐待の話。カトリック神父のダークサイド。

MWの意味。MがMANでWがWOMAN。反転しても形が変わらない。
手塚がここまでやった理由は?
人気の陰りに対する負けん気。劇画調が流行すれば「もっとできる」と反映。
「やけっぱちのマリア」は当時有害指定を受けた。無害→面白くない。
もともと漫画は反逆的。世の中の道徳観念をひっくり返す。

 


園 子温の語る名著「鉄腕アトム」全部好きだがやっぱりこれ。
理由→描写、線。あの線だがらいい。タッチが重要。
彼はコンパスを使わずに完璧な円が描けた。迷いがない。
マンガ家になりたかったが、手塚は「はるかなる壁」。

手塚が描く線。特別な質感。柔らかい皮膚感(今までなかった)。いきなり柔らかいところから行く。
手塚はアトム以前から丸い線を多用。1948年「地底国の怪人」のウサギ耳男。1949年「メトロポリス」のミッチィ(10万馬力の人造人間)。スイッチで男にも女にもなれる→アトムのルーツ。後にサファイアにも発展。

意外な事実。アトムは元々女性の設定。少年雑誌への連載が決まったので「鉄腕」が付いた→アトムの柔らかさがナットク出来る。
谷山浩子(シンガーソングライター)の指摘「アトムはエッチだ」目からウロコ。
手塚キャラは両性具有的。
手塚以降、エロい表現が進む。ジブリ、ピカチュウ。
萌えの元祖。吾妻ひでお→手塚のエロスのパロディ。その発展でロリコンブーム。ケモナー。
手塚自身の考え。1986年のインタビュー。
動物の動きそのものにエロチシズムを感じる。円運動。宇宙は円運動で始まっている。
円は角がない。滑らか。ディズニーは丸から始まった。

夏目房之助の解釈。
アニメに憧れた手塚。漫画の中で動かしたいという欲望。だからカット割りや描く線自体が動こうとしている。
それに色っぽさを感じた夏目。

手塚は漫画で得た収入をアニメにつぎ込む。それが「鉄腕アトム」。
毎週の放送をこなすために編み出されたコマ数減らし(リミテッドアニメ)。それでも膨大な作業量。
これが後の手塚の線に影響を与えた。レオの顔に代表される「記号化」。アニメと共によりシンプルになった。
1986年のインタビュー。
最近苦しんでいる。丸が描けなくなった。閉じる時ふるえる。ジレンマ。
それは洗練かも知れないという見方もあるが・・・
読者としては安心して読める。量が質を生んだ。モーツァルトしかり、ドストエフスキーしかり→天才の証し。

 


斉藤 環の語る名著「奇子(あやこ)」1972年
本当の意味での長編漫画作品を描けたのは手塚だけ。
ポリフォニー(多声性)。同時進行、ハーモニー。群像劇。声の積み重ねでドラマを構築する。

 

終戦直後の東北。大地主「天外家」に男が復員して来る。天外仁朗。妹、奇子が生まれていた。
父が兄(市朗)の嫁に手を出して生まれた不義の子。
仁朗はGHQのスパイ。ある時列車を使った謀殺の現場を近所の娘、お涼と奇子に見られる。
警察に疑われ、仁朗はお涼を殺すが、それも奇子に見つかる。事情を察した市朗は奇子を土蔵の地下に幽閉。
長い年月の後、危うい色気を放つ女に成長した奇子。
その後地上に出た奇子を巡る様々なドラマ。

ドロドロ、複雑なストーリー展開(これが魅力)。
これが出来たのは、手塚が最後の教養人だったから。
教養人とは→それまで吸収した膨大なもの(文学、映画etc)を自己流に消化して出力出来る回路を備えた人。
手塚は、いわゆる立ったキャラを作るのがあまり得意でなかったという説がある。
アトムは居るが、全体に見て「ドラえもん」的な立ったキャラはあまりない。
キャラとキャラクターの違い。
キャラ→単体で存在出来る。
キャラクター→ストーリーの中で成長、葛藤。他作品に移植出来ない。
手塚→キャラに依存しないストーリーテラー。

手塚は悲劇的な話が多い。「運命」は手塚の重要なキーワード。
「ロストワールド」1948年 「来るべき世界」1951年
本人談。空襲体験は、言い方は悪いがスペクタクル。大規模破壊をどうしても画面に描いてしまう。
自分の弱点は人物不在。ストーリーそのものが主役で、人物が描けない。
戦時中の娯楽(フィクション)に対する飢餓体験。
そこから生まれた俯瞰的視点→悲劇が多い理由。
「地底国の怪人」1948年。初の悲劇。生命とはそういうもの。死ぬことにリアリティを感じる。生命賛歌。生の連続性。
あしたのジョーは作れない→どっちが上という事はない。
キャラに依存したマンガ作りはむしろ作り易い。

 

 

釈 徹宗の語る名著「火の鳥」
20年以上に亘って描き続けた未完の長編。過去から未来まで、火の鳥を介して人類の歴史を描く。
壮大すぎてめまいがする。十数編が刊行されているが、全部がリンクしている。小説でも経験したことがない。
全てが生命体→ガイア理論。70~80年代にニューエイジの流れはあった。
華厳経に部分は全体という考え方がある(入れ子構造)。マクロとミクロが同形。
未来編で火の鳥が主人公に見せる素粒子から宇宙まで。

 

鳳凰編を取り上げる。
奈良時代の日本。我王:片目、片腕の乱暴者。
茜丸:我王に利き腕を切られる仏師。その後も精進し、その後鳳凰像を3年以内に作るよう命じられる(出来なければ死)。夢で火の鳥に出会い、その姿を形にして名声を得る。
我王は妻とも言える女速魚(はやめ)を怒りに任せ、手にかけてしまう。かつて命を助けた、てんとう虫の化身が速魚だった。
我王は僧侶良弁に付いて諸国を回り、庶民の苦しみを知る。雑木に思わず彫った仏像。
仏像彫りが我王を変えて行く。
二人は大仏殿の鬼瓦作りで対決する事となる。

何が善で何が悪か。かなりグラデーションがある。
漫画だから伝わるものがある。宗教のテーマ。輪廻。

我王は良弁の即身仏になった姿を見る。死ぬために生きるのか。
生きとし生けるものはみな仏。
回心体験の内面描写→強度な体験。笑いと言葉と絵。漫画ならではの表現。

 

宗教的シンボル性について。
キリスト教文化を持っている欧米人に対し、日本人は永遠を理解出来ない。
火の鳥は輪廻の象徴→手塚のスターシステム。
同じ顔をした者が何度も出て来る→歴史の反復。
猿田彦が生まれ変わっては苦しみ続ける。

鳳凰編での救い。二人が仏像彫りに打ち込む姿。手塚自身にも重なる。
表現することで自分の価値を作り出す。
どんな表現もコミュニケーション→自己肯定。
二人の彫って、彫ってという表現は手塚自身の実感。
手塚が生きること→漫画を描くこと。手塚の表現する事が火の鳥っぽい。
表現の輪廻。

 

手塚治虫を読むということ。皆の感想。
膨大な作品の量。今回読み返してようやく気付く意図→末恐ろしい。
未来のロボット社会の不安も描かれている→読み継がれて行くべき。
自分は素直に影響される人間ではない→手塚は別格。自分の中に流れている。
手塚作品を「漫画」とは言われたくない、という気持ち。
手塚の最後のことば→「仕事をさせてくれ」。
凄すぎてすこし「うっとうしい」と思った事もあった。読み返してみて→抵抗してもしかたがない。すごいと認めるしかない。


感想
手塚作品については、幼少~少年期はアニメ主体。鉄腕アトム、ジャングル大帝、ビッグX、W3(ワンダースリー)等々、身近な存在だった。
長じるとそれに並行して単行本へ。「ゼロマン」「どろろ」「奇子」「なないろ仮面」等々。
成人するまでの間になにがしかの影響を受けたのは間違いない。
「火の鳥」は就職してからもずっと読み継いでいるが、残念ながら現時点で手許にあるものが一冊もない。

多少「マンネリ」と言われた時期もあったが、やっぱりすごい人。
昔彼の特集をやっていた時、気分転換に時々逆立ちをする、と言って自宅の柱に向かって「エイヤっ!」とやっていた場面があった。かつて私の父もよくやっており、あの年代の人はそうだったのかな?と親しみを持って観ていた。

 

「火の鳥」は何とか読み返したいものだ。

 

 

村山斉 宇宙をめぐる大冒険 NHK 1/6放送

番組詳報
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/71040/1025878/

細かい内容は詳報に譲る。

村山 斉(むらやま ひとし、1964年3月21日 - ):物理学者。専門は素粒子理論。
                東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構初代機構長。

 

ダークマターはものを引き寄せる作用を持つものであり、宇宙の始まりにおいては水素、ヘリウムなどをまとめる役割りをしていた。

 

現在私たちの居る宇宙はビッグバンにより膨張を始めて138億年。その膨張速度は加速している。
作用しているのはダークエネルギー→宇宙に存在する重力とは反対の力。宇宙が膨張するにつれ、ダークエネルギーは増加する。
水槽を宇宙、魚をダークエネルギーに例えた説明。普通の発想では水槽が大きくなれば、相対的に魚の密度は減る。これが増大する→考えられない性質。

マルチバースにより、宇宙と言われる単位が10の500乗個ほども作られている。

 

ダークエネルギーの多寡により、宇宙は「ビッグフリーズ」あるいは「ビッグリップ」という終焉を迎える。
我々の様な形態を維持する宇宙は、実際には非常に少ない。


感想
村山 斉のナビゲートで数回行われるシリーズ。
いつも思うが、宇宙の概念の難解さ。それでも、どうしても観てしまう。
追加情報によると、この宇宙ではダークマター26.8%、ダークエネルギー65.3%、残りの4.9%が通常の物質(原子等で構成される)だという。

我々の宇宙は、奇跡に近いバランスの上に成立している、という事か。


参考サイト

ダークマター(暗黒物質)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%97%E9%BB%92%E7%89%A9%E8%B3%AA

ダークエネルギー

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC

マルチバースに関する説明
http://ameblo.jp/hoshitukiyoru7/entry-11800106934.html

ビッグリップ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97

 

ビッグフリーズ

 

 

尿酸値を下げる秘策SP ガッテン NHK 1/4放送

番組詳報
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/64689/1025326/

 

要点のみ。
動物の尿酸値は低い(ヒト:5mg/dl、トラ:0.6mg/dl、ブタ:0.2mg/dl)
尿酸は抗酸化力が高いため、体内に取り込む事で炎症を抑え、長寿に貢献(進化の必然)。
ただし尿酸値が7を超えると体内で結晶化→痛風(現代の飽食の弊害)

プリン体の影響は、食事由来は2割、細胞由来が8割。
肝臓が尿酸を生成。運動によって細胞が壊れるとプリン体を生成。

 

若手のガッテンボーイ

→意外に尿酸値が高かった。尿酸の排泄が良くなかった。

尿酸値を下げる食べ物

牛乳、ヨーグルト等の乳製品(牛乳ならコップ一杯程度)。
メカニズム→成分のガゼインが胃腸でアラニンに変化

→アラニンが腎臓の扉を開けて尿酸を排出。
水を飲むのは結石予防にはなるが、その事だけで尿酸値が下がるわけではない。

尿酸排出を妨げるのは肥満。インスリンの分泌過多が尿酸の排泄を阻害。
ビールのプリン体を気にする前に、アルコールそのものが尿酸を生成する(甘いものも)。

 

感想
腎機能が40%程度で、尿酸の排出が悪いため、その方面の薬を飲んでいる(フェブリク)。
牛乳は一日にコップ2杯程度飲んでいるので、まあ今の生活でいいか。
酒は、以前は毎日晩酌をしていたが、ここ5年ほどは週2回程度。おとなしくなったものだ。

 

尿酸値を下げる薬の知識
ザイロリック

:体内での尿酸生成を阻害。ただし尿で排出されるため腎臓に負担をかける。
フェブリク

:尿酸生成阻害の点ではザイロリックと同じ。ここ数年で承認された新薬。腸から排出されるため腎臓に対するダメージが少ないと言われている。

 

だが、以下のようなサイトもあり、フェブリクの評価にはまだ数年を要するかも知れない。
http://drug.tokyo.jp/archives/725

 

火の鳥  黎明編   作:手塚治虫

 

黎明編(前編)    初出:「COM」 1967年1月号~

火山の噴火の中、現れた生命。不死鳥とも、火の鳥とも呼ばれるもの。
火の鳥を追う若者。とうとう見つける。シビキのおばばの言った通り。
射止めるが死なずに飛び上がる火の鳥。執念深く追い、とうとう素手で捕まえるが、その炎で焼け死んでしまう。

 

ある集落(クマソの国)。義兄のウラジを待つナギ。姉ヒナクの病気を治すためにウラジは火の鳥を捜しに出掛けていた。
ウラジは黒焦げの遺体となって帰って来た。
そこに村人が海辺で打ち上げられた男を連れて来た。名はグズリ。医者だという。
村長がヒナクを見せると「くされ病」と診断するグズリ。
治すためには青いカビを取って来いと指示。そしてそれを大豆油で練って飲ませた。
解説:ヒナクの病気は多分破傷風。青カビはペニシリン。
何日か過ぎ、ヒナクは回復。グズリは死を免れた。
助かったヒナクは、グズリに弟ナギへの教育を頼む。
人の生死についてグズリに聞くナギ。そして火の鳥の話をする。驚くグズリ。ナギは海から火の鳥の羽根を拾った。それから三ケ月。

 

グズリとヒナクの祝言。多くの村人はグズリに命を助けられ、尊敬を受けていた。
その晩海岸に出掛けるグズリを見つめるナギ。見張りを祝宴会場に行かせ、その後不知火の方向にたいまつを回すグズリ。不知火の正体は大船団のかがり火だった。それに駆け寄るグズリ。その様子を木の陰から見ているナギ。

 

グズリは猿田彦と呼んだ相手に、妻だけは殺すなと頼んだ。
軍船の者は村に夜討ちをかけ、女子供まで皆殺しにした。
村の長カマムシと猿田彦との戦い。互角の戦いの中でカマムシが主人の名前を聞く。ヒミコと答え、カマムシを刺す猿田彦。気をつけろ、と言い残して息絶えるカマムシ。

残った者を全員集め、皆殺しにした猿田彦。ナギが物陰から矢を放ち、猿田彦に当てるが致命傷ではない。捕まって引き出されるナギ。
猿田彦はナギを殺さず、国に連れて帰る事にした。

 

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失神したヒナクをかついで山に入るグズリ。目覚めたヒナクはグズリを罵る。ヒミコに仕える身、との言い訳。
だがヒナクを助けて逃げた事で、グズリも追われる身となった。
逃げるように山を登るヒナクだが火山が噴火し、熱した泉に落ちてしまう。飛び込んで助けるグズリ。泉からは出るが二人とも瀕死の状態。そこに降り立つ火の鳥。

 

ヤマタイ国に戻った猿田彦。スサノオに報告。召使いとして連れて来られたナギ。スサノオの姉がヒミコ。
呪術、占いで政治を決めるヒミコ。歳を取る事を異常に恐れる。
歳を取るのは摂理だと諭すスサノオは猿田彦の帰国を知らせる。火の鳥の噂は本当だった。猿田彦の聞いて来た火の鳥の性質。それを欲しがるヒミコ。

自分の住居にナギを連れて来ると、猿田彦は態度を柔らかくしてナギに弓矢を渡し、国一番の名手になった上で火の鳥を射止めよと命じる。
反発するナギは猿田彦を殺そうとするが、寝ていても全く隙を見せない。
何も食べないナギに猿田彦は、弓矢の名手になってから自分を討てばいいではないかと諭す。意地を捨てて飯を食べるナギ。

 

牛の死骸でおびき寄せた山犬の群れを弓矢で打てと言う猿田彦。必死で矢を射るナギ。討ち洩らした犬は猿田彦が倒した。
ナギが倒したのは三十三匹。褒められても、その場で眠り始めるナギ。
猿田彦の訓練は続く。イノシシとの戦いで吹っ飛ばされ、意識を失うナギ。必死で介抱する猿田彦。
無事に目を覚ますナギだが、なぜ助けられたのか訝る。自分を介抱したくせに村人を皆殺しにしたのはどうしてかと責める。ヒミコ様の命令は絶対だと呟く猿田彦。

 

ヒミコが猿田彦と歩いているナギを見つけ、災いをもたらすから、この場で斬り捨てよと命じる。
猿田彦は、この者を狩り部に仕込み、火の鳥を射止めさせると弁明するが、ヒミコは殺せと叫ぶ。
猿田彦は剣を抜いたがどうしても殺せない。
逆上するヒミコをスサノオが何とかとりなしてその場は収まった。

 

それから一年。ナギは立派な狩り部になった。火の鳥の前に射止めたいものがあるというナギ。猿田彦ではない。誰かは答えず笑うナギ。村の若者を協力者にして、ヒミコを討つ計画を立てるナギ。

呪いにより国を治めようとしているヒミコに意見をするスサノオ。逆上するヒミコだが、次第に老いて行く顔を見るたび、不安が増して行く。
そんな場面でナギがヒミコを狙って矢を放つが、手前に飛び出した侍女に刺さって失敗。
猿田彦の指図だと思い込んだヒミコは、捕らえて来た猿田彦を蜂の穴倉に閉じ込める刑を課した。
猿田彦をすぐに出すよう談判するスサノオだが、聞く耳を持たないヒミコ。
酒を飲んで暴れるスサノオを捕らえようとする家来たち。
その時、太陽が欠け始めて辺りが暗くなる。民衆が騒ぎ出し、ヒミコに助けを求めるが、岩戸を閉めて逃げ込んでしまった。
この機に乗じてナギたちが猿田彦を助け出す。助ける途中で若者たちは皆殺され、ナギだけが猿田彦を担いで逃げた。
逃げ続けてようやく海に出た時、欠けた日が少しづつ戻り始める。小舟で脱出する二人。
目覚めた猿田彦。蜂に刺されて鼻はとんでもなく肥大。今度は自分がクマソ国へ連れて行くと言うナギ。

 

国に戻ったナギだが、村は皆殺しにされたままの状態。すぐに追っ手が来ると言う猿田彦。目的はナギを討つためでなく、火の鳥を捕らえるため。
もともと猿田彦たちが村を全滅させたのも、ここを火の鳥捕獲の前進基地にするためだった。怒りに燃えるナギ。

自ら軍船に乗って火の鳥捕獲に乗り出したヒミコ。弓矢の名手天弓彦(あめのゆみひこ)をヨマ国から引き抜いていた。
鉄の矢を使い、繋いだヒモで刺さったら逃げられない。海鳥を射て実力を見せつける。

ヒミコたちより先に火の鳥を捕らえるため、ナギと猿田彦は山を目指した。猿田彦の鼻の炎症は収まったが、肥大は元に戻らない。
火の鳥を見つけ、更に奥へ登るナギ。
ナギの前に火の鳥が降り立ち、直接心に話し掛けて来た。ナギは単純に長生き出来ればそれが幸せだと言ったが、火の鳥は虫の短い一生も貴重だと諭す。

 

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火の鳥を追っているうちに崖から転落してしまったナギ。そこにはグズリが居た。姉は生きていると言い、更に子供も産んだと言った。信じられないナギ。
姉ヒナクとの再会。何故裏切者のグズリの子供を産んだのかとの問い詰め。
グズリを殺しても村人は戻ってこない。子供を百人でも産んで、村を元のようにするという。コマを飛び越えて驚くナギ。
産んだ子供は五つ子。自分が死んでも遠い未来、孫の孫の孫は生きている。
でも、姉自身、死んでしまったらもうおしまい。グズリも「そのとおり」と言った。だから彼も火の鳥を狙っている。

山を登り始めたヒミコたちの一隊。天弓彦が居なくなっていた。
山でばったりと出会う猿田彦と弓彦。弓彦は猿田彦に弓矢を作る猶予を与える。
決闘の準備が出来、両者構えた時、それを見つけたナギが弓彦に矢を放つ。腕を刺される弓彦。
弓彦は、五百もの兵が来る事を伝え、火の鳥など追わず逃げた方がいいと忠告して去る。
火の鳥を追い続ける、と言い張るナギとの間で揉める猿田彦だが、大好きだとのナギの言葉に感動する。

ヒミコたちに合流する弓彦。何か悪い事が起きる、と忠告するが無視して山頂を目指すヒミコ。
突然噴火が起き、兵士、ヒミコらはそれに巻き込まれる。山よ、もっと怒れ、と叫んで飛ぶ火の鳥。
溶岩はグズリ、ヒナクたちの住居にも迫っていた。  

単行本第1巻 第一刷 1978年

 

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黎明編(後編)  初出:「COM」 1967年 ~11月号

子供を抱え、溶岩から逃げるグズリとヒナク。だが凄まじい異変のため、何人かの子供は谷底へ落ちて行った。動物たちと共に逃げるが、洞窟に逃げ込んだ時、入り口がなだれで塞がり、閉じ込められてしまう。

噴火を何とか逃れた猿田彦とナギ。猿田彦は、弓彦の言っていたマツロの国に行こうと言うが、ナギはあくまでも火の鳥を捕まえると言ってきかない。

 

閉じ込められているグズリとヒナク。動物たちは半数が死に、その死体を食いつないで生きている。死んだ子供を抱き続けるヒナク。
ある日、かすかな風を感じて掘り進み、地上に何とか出るグズリ。だがそこは巨大な竪穴に続いていただけ。上から光がさしているが、そそり立つ崖はとても登れる高さではない。新たな絶望。
だが、その光がさしている部分に植物が生えており、それは食うことが出来た。生きる希望を見出すグズリ。
そこへ火の鳥が舞い降り、崖の中腹に止まる、ここは火の鳥のかくれ場所でもあった。

 

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山を離れてマツロ国の方に向かう猿田彦とナギ。途中大きな動物に乗った者に出くわし撃退。残された動物(馬)を何とか乗りこなすナギ。
二人は部隊に出会う。馬に乗ったナギを咎める。相手は高天原族(たかまがはらぞく)のニニギと言い、マツロの国は滅ぼしたという。
奴隷になるのがイヤだと言うナギに、殺せとの指示を部下に出すニニギ。
そこへ醜女のウズメが二人の命乞いをする。男を夫にすると聞いて兵士どもは大笑いした。
猿田彦にその話をすると、不細工な相手だけに猿田彦は拒絶。だがこれを飲まないとナギも殺される。
やむなくその話を受ける猿田彦。結婚の宴のスキを突いて逃げる作戦をナギに話す。

 

国に戻ったヒミコ。噴火の爆風で耳をやられていた。ヒミコの力を疑い、民衆が宮殿に押しかける。
王位を誰かに譲っては、という侍女を謀反者と言って殺すが進退窮まり、幽閉していたスサノオを牢から出し、助けを乞う。スサノオは、呪いによる政治を止めろと同じ事を言った。
怒ったヒミコは部下に命じてスサノオを目を潰し、放逐した。
火の鳥の悪夢に苦しむヒミコ。

 

猿田彦とウズメの祝言。似合いの夫婦とはやし立てる兵士たち。
宴も終わり、部屋に戻るとウズメは夜の化粧と言って席を外す。次に出て来たウズメは見違える美人。
ウズメは滅ぼされたヨマ国の女。男は殺され、女はなぐさみものにされた。顔が醜ければ相手にされない。
結婚したのは哀れみからか?と聞く猿田彦に、好きだから、と言って飛びつくウズメ。見ちゃいられない、とナギ。
ニニギの隙を狙って討とうとしたナギだが、彼が飼っている金色のトビをけしかけられる。そのトビを殺してしまったため捕まったナギ。ナギは馬で引きずり回される刑を受け、瀕死で戻って来る。
ナギがヒナクからもらっていた薬を飲ませる猿田彦。ニニギが来て、ヤマタイ国を攻めるから近道を教えろと迫るが無視。
奇跡的に助かるナギ。

 

延々と火の鳥を待ち続けた天弓彦。とうとう火の鳥を見つけ、鉄の矢で射止める。鉄のため炎で燃やす事が出来ない。首を切り落としてヒミコの所へ持って行く。

ヤマタイ国に逃げ延びたマツロ国の避難民たち。高天原族が攻めて来る事を知り、村人はヒミコに助けを求めるが、火の鳥の事にしか興味がない。
やむなく自ら防戦の準備をする村人たち。

 

弓彦が火の鳥を持って帰って来たが、それを受け取る寸前に絶命したヒミコ。

進撃する高天原族。小競り合いでどんどん殺されるヤマタイ国兵士の姿を見せつけられる猿田彦。
ウズメが、囮になるから逃げてと二人に言う。素顔をニニギに晒して時間稼ぎをするウズメ。
ヤマタイ国に向かって逃げる猿田彦とナギ。

 

凄腕の防人が帰って来たので喜ぶ兵士たち。ヒミコの死を知り嘆く猿田彦だが、防戦の準備に力を尽くす。
弓彦が、ナギに火の鳥を埋めてある地図を渡す。猿田彦に頼まれたと話す。
高天原族の攻撃が始まるが、雨のため馬を止める草玉に火が点かず、簡単に打ち破られるヤマタイ側。
ニニギと猿田彦の戦い。矢の集中攻撃に会う。
弓彦がニニギを討とうとするが、ヨマ国の女が居る、とウズメを差し出す。不意を突かれ首を刺されて絶命する弓彦。

 

一方、火の鳥を掘り出したナギ。だがその体には一滴も血が残っていなかった。そこに攻め入るニニギ。ナギは殺され、その場が火に包まれる。
その火の中から蘇った火の鳥。

 

死んだ猿田彦の許で涙を流すウズメ。ニニギが妻になれと迫るが、お腹に猿田彦の子供が居ると告げるウズメ。
女には武器がある。勝ったあなた方の子供を産んで、育てた子供はいつかあなたを滅ぼす。
去って行くウズメを見送るニニギ。

 

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グズリたちの洞窟に火の鳥が帰って来た。喜ぶグズリ。狂ったヒナクとの間に、更に数人の子供が出来ていた。
いつか外の世界に出る、と子供らに話すグズリ。

子供たちの最年長のタケル。外の世界に出てみたいとグズリに話す。反対するグズリだが、妹との結婚はゆがんだ子供が生まれると聞いていたタケルは、外から連れて来ると言って聞かない。
ヒナクはそれを賛成し、タケルは骨で作った道具で壁を登り始める。
だが登っても登っても、出口はどんどん遠く感じる。
もうだめだ、と思った時、頭の中に「生きるのよ!」という声。火の鳥からだった。生まれた時からタケルを見て来たという。
とうとう壁を登り切って外界に出たタケル。 単行本第2巻 第一刷 1978年

 

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感想
火の鳥は、最初に出会ったのが中学生の時。確か「COM」の古本。それ以来、不定期に出るものを、タイミングが合った時に、雑誌だったり単行本だったりと読み繋いで来た。
だから系統立った記憶として定着していない弱みがある。
今回TVでの手塚治虫特集を機会に読み返す事とした。

 

黎明編:物語の軸になるのは猿田彦とナギの関係。ヒミコの命で火の鳥を捕獲するため、クマソ村を全滅させてしまう猿田彦。村人、家族を殺されて復讐に燃えるナギ。憎みながらも共に行動するうちに芽生える親愛の情。
グズリにしても、最初スパイとしてクマソ村に入り込み、村全滅の手引きをした。だが妻のヒナクを助けるために国を捨てる。
愛憎、あざなえる縄の如し。小説が得意とするテーマでもあるが、絵と込みでインプットされるとイメージが膨らみ、独特の印象を残す。
まだ本巻はプロローグであり、この猿田彦のキャラクターは延々と生きて不死の残酷を味わい尽くす。
これから気長に読み進めて行きたい。

 

 

 

火の鳥 未来編 作:手塚治虫

未来編  初出:「COM」1967年12月号 ~ 1968年9月号

西暦3404年。地球は急速に死にかかっていた。人類は「永遠の都」として世界に5ケ所の地下都市ユーオーク、ピンキング、レングード、ルマルエーズ、ヤマトを作り、それぞれ500万の人が住んでいた。

 

メガロポリス・ヤマト。
海で泳ぐ山之辺マサトとタマミ。呼び出しのベル音で現実世界に戻される。バーチャル体験。
マサトはテレビ電話でロックに呼び出される。同期なのに上司の立場のロック。
ロックはヤマトに、同居しているのはムーピーではないかと尋ねる。タマミは親戚だと否定するヤマト。
ロックの解説。ムーピーは50年前にシリウス12番星から連れて来られた不定形生物。望む形になれるため、ペットとしてどんどん繁殖。中には人間の姿をさせ、家族としたケースもあった。
ムーピーの持つ、人を心地よくさせる能力。ムーピー・ゲームという疑似体験。それが人々の気力を奪い、亡びつつある太陽系の中で人類生き残りの妨げになっている。ムーピーは危険な生物。
中央本部は3年前からムーピーを絶滅させる命令を出していた。
ロックはムーピーを今夜のうちに始末しろと命令。仕方なく命令を受けるマサト。

 

自宅に戻ってタマミを殺そうとするが、どうしても出来ない。マサトはタマミを連れて逃げ出す事を決心。
だが証明書のないタマミには列車の乗車券も入手出来ない。やむなくいかがわしいホテルにいったん投宿。支配人に口止め料を渡す。マサトが追われていると知って通報しようとする支配人。
電子頭脳「ハレルヤ」に面会するロック。ムーピーの生き残りが居ると伝えると「お殺し」と一言。
ホテルから逃げ出したマサトとタマミ。行き場を失ったマサトは地上への脱出を考える。タマミは反対するが逆らえない。

極寒の地表に出る二人。

 

地表にある建物。研究所だった。人造生物ブラドベリィに話しかける猿田博士。外に出たいというブラドベリィに、その羊水から出れば死ぬと警告。どうしても出たいと言うブラドベリィに、一度だけ、と羊水を抜く。
歩き出したブラドベリィだが、すぐに倒れて溶けてしまった。
猿田博士は、滅びゆく人類を前にして、新たな生物の創造を試みていた。だが人造生物はみなガラス管の、人工羊水の中でしか生きられない。天に向かって生命の秘密を教えて欲しいと叫ぶ。
そこに姿を現した火の鳥。神か?と問うと否定。
地球が死にかかっている、私は地球の分身だと言う。
どうすれば治せる?と問う猿田に、これからここへ来る人間なら治せる、と言う火の鳥。
そこへやって来る人影二つ。ロボットのロビタに回収を命じる。
ロックの指示で追跡隊が出発。

 

目覚めたマサトは猿田博士に、タマミに会わせろと迫るが、別室で治療しているという。
タマミは羊水の中で治療を受けていた。猿田博士の名はマサトも知っていた。
伝説の人。宇宙生命に関する膨大な研究の後、地球に戻ったが地下生活を嫌って一人地上で暮らしている。

 

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追っ手がドームに迫っていた。迷惑がかかるから、とタマミを出して逃げようとするマサトに、ムーピーはしばらく養生させると言う猿田博士。
追っ手に対抗するため、女性型のロボットを多数出す。
ロビタの話す女性ロボットの理由。醜い顔で生まれた猿田博士。何度手術しても良くならず、恋人も作らず、結婚もせず・・・
ロボットで恋人を作り、夫人を作り、娘を作り、何人も何人も。
口先だけの愛情に辟易してロボットの声帯を外した。そして役に立つ日を待ちながら、ロボット達は長い間保存されて来た。敵に立ち向かって次々に自爆するロボット。追っ手は全滅した。
ここに留まる決心をするマサト。

 

代表者会議。電子頭脳ハレルヤの指示を優先させるため、市長を不信任にする動き。
ロックは追跡隊の全滅を知り、隣りの都市レングードの仕業だと先方に抗議。先方の電子頭脳ダニューバーの命令だと決めつけるロック。逆にハレルヤのを間違いだと言うレングード側。
コンピューター同士の対決になる事をハレルヤに知らせるロック。私の計算は変わらないと言うハレルヤ。
市長については危険思想だから追放を命令。更にロックの恋人についても、幸福になれないから別れろとの指示。
指示通り恋人と別れるロック。

コンピューター同士を、対決のため接続する12時が来た。お互いが正しいと言い張るハレルヤとダニューバー。延々と続いた論争の結果、両国の間で24時間以内に戦争を開始する事が決定した。
途方に暮れるロック。

 

猿田博士の助手として働くマサト。外に出られない人造生物たちを哀れだと思うが、猿田博士は電子頭脳の言いなりになって地下で暮らす人間の方が哀れだと言った。
猿田博士はマサトに、ムーピーのタマミを研究のために貸して欲しいと申し出るが、断るマサト。
タマミに会いに行くマサト。タマミはもう治ったからここから出して欲しいと懇願。
だがあと1ケ月はここに入っていないと、人の形を保てない。
動物の世話をしに行くマサトと入れ替わりにタマミに話しかける猿田博士。
人造生物をいくら育てても外界で生存出来ず、研究を進めるために君の体をくれないかと申し出る。それをすると、多分タマミは死ぬことになる。
人類にはこだわらない、何かひとつが生き残ればいいと言う猿田に、明日まで返事を待って欲しいと言うタマミ。

戦争に向かってカウントダウンが始まったヤマト市とレングード市。
スパイを使って20時間後に、レングードの司令部を破壊する爆弾を仕掛ける、というハレルヤの指示を遂行したロック。だが相手も同じような事を考えている筈。
このまま死ぬのがばからしくなり、都市から脱出するロック。

 

エアカーで地上を走るうちに、猿田博士の研究所を見つける。中に入ってマサトと出くわす。タマミを殺しに来たと思ったマサトが殴りかかり、闘いとなる。
殴り疲れて休んだ時にロックが、あと1時間でヤマト市とレングード市が消滅すると話す。
開戦時刻になり、大きな地震がドームを襲う。更に他の三都市からも応答なく、五つ全ての都市が核爆発で消滅した。
今までの人類の推移を振り返るロック。二十一世紀にはまだはつらつとしていたが、二十五世紀に文明が頂点に達した後、衰退が始まった。
皆昔の生活やスタイルにあこがれ、二十一世紀ごろの文明に戻ってしまった。老化現象を辿った人類。
電子頭脳の奴隷だと責めるマサトに、ロックは体外受精でチューブの中で生まれたと言う。ハレルヤが選んだ精子と卵子から生まれた。

 

タマミは猿田博士の申し出を受ける。
その後タマミを見つけるロック。タマミを連れ、ここにある自家用ロケットで宇宙に出るつもりだった。マサトが気付いて、再び殴り合いになる。
その時火の鳥が二人の前に現れる。そしてマサトの魂を引き出して、素粒子の世界から外宇宙までを見せる。今地球は愚かな人類のため、瀕死の状態。それを救うためマサトを不死の体にすると言う。

 

目覚めた時、そばに居たロックは、マサトがほんの少し気を失っていたと言う。火の鳥は消えた。
不死を確かめるため、腕を刺したり銃で胸を撃つも、何ともない。
絶望するマサト。

ガラスが割れ、外に出たタマミ。一方ロビタは猿田博士の本心を知っていた。タマミに恋をした猿田博士。研究するというのは嘘だった。冷酷にそれを暴くロビタ。
研究所内にも放射能が侵入し始めていた。そこにフラフラで辿り着くタマミ。逃げるのはもう間に合わない。猿田博士はタマミに言った通り、研究用のデータ取りを始める。
一方、ロケットの発射準備をしていたロビタを破壊してしまうロック。居なくなったタマミを追って猿田博士のところに行く。マサトもそこへ。
人の体を維持出来なくなったタマミのムーピーを見て猿田博士につかみかかるマサト。タマミの体の分析で、細胞の秘密を解くことが出来たという。
後はロビタの力で細胞転換手術をすれば助かると言ったが、ロビタは既にロックが破壊してしまった。
ロックはタマミと共に宇宙へ逃げるつもりだったが、猿田博士の言うには、この放射能の量ではもう命がもたない。
ロックはエアカーで研究所を飛び出すと、一番好きな景色の見える場所で最後の時を過ごした。

死を間近にした猿田博士。マサトが火の鳥の力で不死になった事を知ると、研究を受け継いでくれるよう頼む。
そしてこの体をロケットで打ち上げて地球を周回する軌道に乗せてくれとマサトに頼む。
周回する猿田博士の元に現れる火の鳥。あなたはまた復活するでしょう、と言い残す。

 

何百回か山が持ち上がり、地層をくつがえした。
だれ一人いない世界。何度頭を撃ち抜いても死ねないマサト。エアカーであてどなくさまようが、誰にも出会わない。
ある日壊れていない観測所を見つけ、中に入る。そこで一つの棺を見つける。その棺には、五千年は開けるなと書かれていた。
研究所で延々と続く時間。もう五百年も経っただろうか。タマミはムーピーの姿で生きていた。時折りムーピー・ゲームでマサトを楽しかった時代に戻してくれた。
人の姿で抱き合いながら、タマミはマサトに別れを切り出す。そろそろムーピーとしての寿命が尽きようとしていた。そして死んで行ったタマミ。

二千、三千と過ぎ、ついに四千年経った。棺に通って待つ日々。
五千三百年経った時、マサトはとうとうレーザードリルで蓋を開けてしまった。中の存在は こなごなに砕けていた。

 

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更に時は過ぎ、マサトは話し相手のロボットを作ろうとした。タマミの顔を模して作ったロボットに命を吹き込む。だがそ

のロボットは不完全でマサトの言うことを聞かない。やむなく壊す。
そうして試作と破壊を繰り返したのは二百体以上。
嘆き、もうろうとするマサトの頭の中に火の鳥が出現。「ロボットではなく、新しい人間を作りなさい」

 

更に数千年。マサトは合成生物の創造に取り組む。
何とかタマミに似せた合成人間を羊水の中で生かすところまでは漕ぎつけたが、知能までは育たない。

そんな時、ここ千年でついぞなかった大地震に見舞われる。設備は破壊され、ガラス管から出た合成人間も泡となって消えた。
残された方法は、自然のなりゆきに任せて、いつか人類の祖先が現れるのを待つだけ。
原始のスープを準備して海に流し、ただ待つ・・・・
マサトの肉体は風化し、消え失せたが、まだ生きていた。ただ見守るだけの超生命体として。

 

膨大な時を経て単細胞から多細胞、下等生物へ。
そして爬虫類の登場。恐竜を経て、もうすぐ哺乳類が出現する。
だが恐竜を滅ぼしたのはナメクジだった。哺乳類もナメクジに征服された。
どんどん進化するナメクジの中から突出して生まれた二匹。凄いスピードで繁殖を始め、マサトはそれをアダムとイブ、と命名した。
どんどん進化するナメクジ。そのうち腐敗ガスで空を飛ぶ乗り物まで作り出した。
進化する中で北方系と南方系に別れる種族。
北方系の策で溶岩噴出が起き、南方系は全滅。だがその前に南方系は地球上の水を枯渇させる復讐を仕込んでいた。
最後に生き残った北方系の一匹が水たまりを見つけて一息つく。それに問いかけるマサト。
なぜお前のような下等動物が命を惜しむのか、と。
下等動物じゃない、死ぬのは怖い、と言っていたナメクジだが、死の間際にグチを言う。
なぜ私たちの先祖は賢くなろうとしたのか。下等動物のままで居れば、もっと楽に生きられたろうに、進化したおかげで・・・・

 

ナメクジに代わって体温を持つ生き物が現れ始めた。鳥や哺乳類。
待ちに待ったサルの出現。そして直立猿人へ。人類は進化のスピードを早めた。
雨乞いの儀式を行う者たち。人間の愚かさを嘆く意識体のマサト。

 

そこに現れる火の鳥。何十億年ぶりの再会に驚くマサト。火の鳥は三十億年ぶりだと言い、あなたに新しい人間を作って欲しいと頼んだ話をする。
人間たちからは「創造主」「神」とか言われているが、そんな気がしないマサト。
あなたは宇宙生命として生きていると言う火の鳥。そしてこの世界の至るところに宇宙生命があるという。
宇宙生命が物質に飛び込むことで、初めて生きてくる。宇宙、惑星、地球、動植物、その細胞、分子までも、全てに宇宙生命が入り込んでいる。
私の中に飛び込め、と言う火の鳥。この体には宇宙生命が何十倍も入っている。
それに従い、入って行くと、マサト!と呼ぶ声。ムーピーのタマミだった。全ての宇宙生命の中に吸い込まれて行く二人。

 

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世界中を飛び回る火の鳥。中国では鳳凰鳥、ロシアでは火の鳥、ヨーロッパでは不死鳥と呼ばれた。
世界中でそのエネルギーにあやかろうと、鳥を追いかけた。

 

---鳳凰編の繰り返し----
ヒナクの夫ウラジが素手で火の鳥を捕まえるが、焼け死んでしまう。
火の鳥を追ってクマソに攻め入るヒミコ。噴火に飲まれてみな死んで行く。

火の鳥は思う。あのナメクジでさえ高等生物だったこともあった。ここではどうしてどの生物も間違った方向へ行くのだろう。
どんどん文明を進歩させて、結局は自分で自分の首を絞めてしまう。
でも今度こそ、今度の人類こそきっとどこかで間違いに気付いて・・・・
生命を正しく使ってくれるようになるだろう、と。
単行本 第3巻 第一刷 1980年


感想
黎明編の続きか、と思いきや、はるか未来の話。
核戦争の末に地上で住めなくなった人類。5ケ所残っただけの地下都市も愚かさのために全滅。
それから三十億年にも亘るマサトの見守り。ちょっとバカらしいほどの時間的スパンの長さ。
特に印象に残ったのは「ムーピー」。好みの容姿で、楽しい体験をさせてくれる・・・そらー人間、堕落するだろう。

物語の終盤で「黎明編」と組み合わさる事により、最小的な「火の鳥」の構成として完結(連環)可能となっている。
後に描かれる各編は、時代としてこの話の間に含まれる形。
手塚の、この構想は最初から意図していたのか、未来編が終わってから延々と描き継ぐ決心をしたのか、その辺は判らない。

 

人類の愚かさが何度も繰り返し語られる。
現実世界でも、地上にある核兵器で、人類を含めた動物を何十回も絶滅出来るという。本当に愚かとしか言いようがない。

 

宇宙は意識体である、という概念は小松左京が「果しなき流れの果に」で表現している(書評   ガイド版)。この小説の発表が1965年だから、手塚がこれに影響された面があったのかも知れない。

 

それにしても、現在の最新研究で言われている「宇宙は生きている」という概念をあの時代に、これほどの確信を持って描けたというのは、本当にすごい。

 

 

プリズナーズ  2014年

監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本 アーロン・グジコウスキ

 

キャスト
ケラー・ドーヴァー      ヒュー・ジャックマン
デビッド・ロキ刑事      ジェイク・ギレンホール
ナンシー・バーチ       ヴィオラ・デイヴィス
グレイス・ドーヴァー     マリア・ベロ: ケラーの妻。
フランクリン・バーチ     テレンス・ハワード: ナンシーの夫。
ホリー・ジョーンズ      メリッサ・レオ: アレックスの叔母。
アレックス・ジョーンズ    ポール・ダノ
ラルフ・ドーヴァー      ディラン・ミネット: アンナの兄。
イライザ・バーチ       ゾーイ・ソウル:ジョイの姉。
アンナ・ドーヴァー      エリン・ゲラシモヴィッチ
ジョイ・バーチ        カイラ・ドリュー・シモンズ
リチャード警部        ウェイン・デュヴァル: ロキの上司。
パトリック・ダン神父     レン・キャリオー
ボブ・テイラー        デヴィッド・ダストマルチャン

 

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予告編
https://www.youtube.com/watch?v=852kXtkpKlY

 

ペンシルベニア州の田舎町で工務店を営むケラー・ドーヴァー。隣家のフランクリン・バーチと親しくしており、家族で感謝祭を祝っていた。
そんな時、ケラーの娘アンナとフランクリンの娘ジョイが、家から居なくなった。アンナの兄ラルフが、近くに止まっていたキャンピングカーの梯子にアンナが乗ろうとしていた事を告げる。

 

警察が動き出し、キャンピングカーの所在を確認。だがその車は突然走り出し、木に激突。確保されたのはアレックス・ジョーンズ。保護者の叔母ホリーに話を聞くと、知恵遅れで運転免許はあるが、知能は10歳程度だと言う。
ケラーは事件担当のロキ刑事に、拘留を続けるよう頼んだが、確たる証言、証拠もなく署長の指示により48時間で釈放。だが釈放の時アレックスは、ケラーにだけ聞こえるように「僕がいる間、泣かなかった」と言う。
アレックスの犯罪を確信したケラーだが、その話を警察にしても相手にされない。

 

アレックスを監視するケラー。犬の散歩で吊り皮を持ち上げる残酷さを見せるアレックス。散歩の途中で、娘たちが作って歌っていた替え歌を、同じセリフで歌っているのを聞いて、アレックスが犯人だと確信したケラー。アレックスを拉致して自分の実家に連れ込み、自白させようと拷問。フランクリンもそれを知り、驚くがやむなく協力。

 

難航する調査。警察では半径10マイル以内での性犯罪歴のある者の調査を始める。そのうちの一人がパトリック神父。ロキの行った家宅捜索で、地下から男のミイラ化死体が出て来る。神父の話では、16人の子供を誘拐したと言って懺悔に来た者だと言う。
この近辺であった過去の誘拐事件を調べるロキ。20数年前にあった少年失踪事件の母親を訪ねると、その事件の時もキャンピングカーが目撃されていた。

 

誘拐された両家の前にロウソクを捧げる人たち。ロキはその中に不審な男を発見。捕まえるが、スキを見て逃げられる。記憶から似顔絵を作り、公開。
通報により、容疑者としてボブ・テイラーを逮捕。
だが、調べて行くうち、ボブが真犯人だという確信が薄れて行く。子供服に付いていたのは豚の血。そして拘留中にボブが書く迷路の様な模様。
イラ付いたロキは取調室に入ってボブを締めあげるが、隙を見てボブがロキの銃を奪う。ボブはそれを口にあてて自殺。
後に、ボブは単に連続誘拐事件を真似ただけの模倣犯と判明。

 

相変わらずアレックスに拷問を続けるケラー。専用の拷問部屋まで作った。フランクリンの妻ナンシーにもバレるが、止めさせる勇気がない。
アレックスから「あの子たちは迷路にいる」との言葉を聞き、叔母が何かを知っていると考え、ホリーを訪ねるケラー。当り障りのない話から、迷路の話を聞き出そうとするが、知らないと返すホリー。

 

バーチ家の娘ジョイが保護されたという知らせが突然入る。アンナはまだ見つからない。見舞いに行ったケラーは「おじさんも居た」とジョイから聞かされ、ホリーが犯人だと確信。
再びホリーを訪れるケラーだが、疑われている事に気付いていたホリーは、隙をついてケラーに銃を向ける。そして特製ジュースと言って、動きを麻痺させるものを飲ませる。誘拐された二人もそれを飲まされていた。
外に出てスポーツカーを動かすように指示され、麻痺した体で何とかそれを行うケラー。板をどけると深い穴があった。娘たちも一時そこに居たという。
逆らおうとしたケラーの足を撃ち、穴に落とすホリー。そしてまた蓋をして車で押さえた。携帯の明かりで何とか穴の様子を知るケラー。そこに落ちていたアンナのホイッスルを握りしめて涙する。

 

ケラーが飛び出した時、ロキはケラーが実家に向かったと考え、すぐに向かう。だがケラーはおらず、そこでアレックスを発見し救出。署長に指示され、この事を伝えにホリーの家に。
そこで、ホリーが少女に何かを注射しようとしているのを発見し、止めるよう警告。だがホリーが撃って来た。ホリーを射殺するロキだが、自分も頭に跳弾を受ける。
頭から血を流しながら、注射を打たれたアンナを病院まで担ぎ込むロキ。アンナは無事に回復した。

 

ホリーの家の捜索を指示するロキ。事件の真相は、昔から子供を誘拐しては殺していたホリー夫妻が握っていた。夫はかつて神父にその罪を懺悔して、殺されていた男。ホリーの子供が癌で死に、信仰を失った二人は子供を誘拐して、迷路が解けた者は逃がし、解けなかった者は殺した。
模倣犯のボブは、実はかつて誘拐された子供。迷路を解いて助かったが、誘拐のせいで神経を病み、事件の再現に固執するようになった。
子供の死体は多分ホリーの家の周辺に埋められている。

 

夜も更けて、その日の調査が終わる頃、現場でかすかな音を聞くロキ。そら耳か、と立ち去ろうとするが、また「ヒョロロ・・」という音。


感想
ちょっと変わったタッチの誘拐映画。TV放送の録画を視聴。
娘を誘拐されたケラーが、アレックスを犯人と思い込んで拷問する。やり過ぎだとは思うが、犯人でしか知り得ないことを本人から聞いたら、自分だってやってしまうかも知れない。

 

しかし伏線張り過ぎ!。映画を観た後で、様々なネット情報を集めて、ようやく理解出来るってのは、果たして映画の正しい姿と言えるのだろうか。また伏線に凝った割に、誘拐プロセスの辻褄合わせが相当甘い。

 

主演のヒュー・ジャックマンは、ウルヴァリンで有名だが、逆にそれ以外ではあまり見かけないので、こういう普通の顔で見るのも新鮮。地下室に緊急用の物資を備蓄していたり、ロキの尾行に気付いてしつこく抗議したりという粘着な部分で、拷問を推進する背景を形成しているのは、いい演出。

 

ジェイク・ギレンホールは、今まで悪役、とまでは言わないが性格の悪い、信用出来ないタイプの人間を演じる事が多かったと思う。役どころは刑事、と言ってもあちこちタトゥーが彫ってあり、若い頃やんちゃだったのが丸わかり。
今回、なかなかいい役者だと再認識。だが、結局犯人を仕留めたものの、事件解決という観点では全て後手後手に回っており、刑事ものという観点ではやや不満。

 

この映画に対して「信仰」という切り口で評じたサイトがある。まあ、その通りと思う面もあるが、そこまで深読みしたくは、ない。
http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-484.html

 

もっと詳細のストーリーを知りたい場合は以下へ
http://godspeeddiary.blog84.fc2.com/blog-entry-403.html

 

 


火の鳥 ヤマト編 単行本 ④ 作:手塚治虫

ヤマト編 初出:「COM」1968年9月号 ~ 1969年2月号

 

ヤマトの国の王。語り部を多く雇い、ヤマト王朝の正しい歴史を作るよう指示されていた。だが進捗は芳しくない。
ついで自らが入る墓の建設予定地を視察する王。建設反対の学生運動。
捕らえられたのは王子のヤマト・オグナ。
九州クマソの川上タケルが正しい歴史を編纂していると聞き、その征伐にヤマト・オグナが駆り出される。

 

クマソの国。酒宴で地方の族長をもてなす王、川上タケル。ヤマト国の攻撃に備え、味方を増やしておく作戦。
タケルの妹カジカ。おてんばで手下と戦争ごっこをやって遊んでいる。
ヤマト国から遠征の者が来るとの情報を掴むタケル。それを知って先回りするカジカ。
オグナは侍従二名を連れただけで向かっていた。カジカが接触し、タケルの所まで連れて行った。

 

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途中で火の鳥を見つける。生き血を飲めば不死になる話を聞かせるカジカ。

タケルはオグナを歓待し、招待すると言ったが、オグナはそれを断った。
兵士のイマリ。カジカに求婚しているが、返事をもらえていない。
山で侍従と共に寝ようとした時、火の鳥が飛んで行くのを見つけ、それを追うオグナ。そこへカジカが現れる。
今まで誰も捕まえられなかった、というのを無視して更に追うオグナ。
湖の岩で休んでいる火の鳥に近づき、自分も岩に上がって笛を吹き始めるオグナ。一晩中吹いて戻って来た。意図が判らないカジカ。オグナはこれから毎晩聞かせに行くという。

 

翌日村に顔を出すオグナ。女たちには評判がいい。
タケルの許に赴くオグナ。タケルは自分が編纂している記録を見せ、ヤマト国がやって来た悪政も含め、正しく後世に残すと語る。殺しに来たのだろう、と問われるオグナだが、どうしてもタケルを憎むことが出来ない。

兵士たちの技くらべを見学するオグナ。そこにイマリが対戦を挑んで来た。いきがかり上それを受ける。高い丸太の上で棒を使っての打ち合い。
イマリの卑怯な手に負けそうになるが、逆転してイマリが落ちて死んだ。
報復を予感しながら寝所に戻った三人だが、オグナは火の鳥に笛を聞かせるため、湖に出掛けた。

 

タケルを訪れるオグナ。記録はもう少しで完成を迎えるところだった。タケルはオグナが火の鳥を笛で手なずけているのを知っていた。
火の鳥にこだわるオグナを、タケルは村一番の長老に会わせる。
深い竪穴から脱出した、かつてのタケル。外界で女を見つけ、家族を外に出して、次第に村を拡大して行った。
長老は言う。死なないことが幸せではない。生きている間に自分の生きがいを見つける事が大事だ、と。
自分の進むべき道に悩むオグナ。

 

湖で火の鳥に笛を聞かせるオグナ。心の中の直接語りかけて来た火の鳥。オグナは、自分がこれからどう進めばいいかを聞いた。
火の鳥は、それには答えず、ヤマト国の方に飛び去った。理解するオグナ。

 

長老が息を引き取り、タケルが采配して葬式が執り行われた。女に化けて葬列に加わるオグナ。埋葬場所で一人になったタケルの胸を突くオグナ。
タケルを尊敬しているが、クマソと縁を切るにはこれしかなかった。
死ぬ間際、タケルは自分の名前を与え、ヤマトタケルと名乗れと言い残した。

 

クマソ国を脱出するオグナたち。
兄に、理想の男性が出来たと伝えに来たカジカ。兄の死を知って怒りに燃え、オグナたちを追う。

追っ手に追い詰められたオグナ。カジカは大群を率いて、一対一で戦うために出て来いと叫ぶ。
そこに現れた火の鳥。自らの火で草を燃やしてオグナを逃がそうとする。オグナが足を挫いて歩けないのを知ると、足を差し出して捉まらせ、曳いて脱出。
カジカは自分の髪をヤマタイの者の形に結い直し、何年かけてもオグナを追う覚悟で出発した。

 

追っ手から逃げて辿り着いた山で、火の鳥に笛を聞かせるオグナ。この曲は墓地建設に反対した友人が死んだ時に自然に出来たもの。

曲を聞かせてくれたお礼にと、血を飲みなさいと言われたが、必要なのは自分ではないと言うオグナ。
墓の人柱にされる者に飲ませたい。血を布に含ませ、それを舐めさせれば大丈夫と言う火の鳥。
そこへ、笛の音を聞きつけてカジカが近づく。火の鳥は小舟までオグナを導き、そして逃がす。

 

帰国したオグナは、川上タケルを倒したことで王から評価され、墓の建設大臣に任命される。設計に手を加えるタケル。工事で追加された竪穴。
一方カジカは建設現場の労務者として紛れ込んでいた。
カジカは女ゆえの非力で咎めを受けそうになるが、そこを助けるオグナ。
二人だけでカジカと会うオグナ。恨みを抑えて話を聞くカジカ。
オグナは墓の完成を自分の生きがいとして取り組んだ。

 

墓の完成記念式典。だが施設の様子が違う。オグナは公園と遊園地を作ってしまった。
石牢に閉じ込められたオグナ。兄たちが来て王に謝れと詰め寄るが、言うことを聞かない。
王はショックで錯乱し、侍医はあと三日の命と診立てた。突貫で墓に戻す工事。
夢の中で生に執着する王。だが結局昇天。

告別の儀に参列するため、特別に解放されたオグナ。
だが殉死のための陪墳を作ると聞いて、また暴れ回り、逃げ出す。
宝物庫に逃げ込み、火をつけると言って時間稼ぎ。殉死者の代わりに埴輪を埋める事を思いつく。
事務方に行って殉死者が捕らえられている場所を聞き出し、そこに向かう。
牢にはカジカも居た。オグナは火の鳥の血を含ませた布を渡して、全員に舐めさせるよう指示。そして兄たちに殉死を止めさせるよう懇願する。
だが殉死に疑いを持たない兄たちはオグナを捕まえ、殉死者に加えてしまった。

みんなと共に埋められるオグナとカジカ。土をかぶせられても地中から歌声が続き、兵士たちは呪いだと恐れた。

 

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一年も経つと、その声は次第に少なくなって行った。隣同士で埋められたオグナとカジカ。最後にオグナが結婚したい、と言うと、その言葉を待っていたの、と言うカジカ。
そして声は聞こえなくなる。後世になって殉死の風習は廃止された。

奈良県明日香村に、石舞台古墳と呼ばれるできそこないの様な墓の跡がある。いろいろ家庭の事情があったのかも・・・・・
単行本 第4巻 第一刷 1980年

 


感想
黎明編で、深い竪穴から脱出したタケルが再建したクマソ国を巡る話。明日香村にある石舞台古墳をモチーフとして作られた。
小品として、あまり強い印象はないが、オグナが自分のためではなく、殉死を強要される者のために火の鳥の血を欲した、というヒューマニズムが好ましい読後感を残す。

 

 

イーグル・アイ  2008年

製作総指揮 スティーヴン・スピルバーグ

 

監督    D・J・カルーソー
脚本    ダン・マクダーモット

 

キャスト
ジェリー・ショー/イーサン・ショー  シャイア・ラブーフ
レイチェル・ホロマン          ミシェル・モナハン
トーマス・モーガンFBI捜査官         ビリー・ボブ・ソーントン
ゾーイ・ペレス空軍特別捜査官        ロザリオ・ドーソン
ジョージ・カリスター国防長官       マイケル・チクリス
ウィリアム・ボウマン少佐            アンソニー・マッキー
トビー・グラントFBI捜査官           イーサン・エンブリー
ラニーム・ハリド                     アンソニー・アジジ 
サム・ホロマン                       キャメロン・ボイス
ジェリーの父親                       ウィリアム・サドラー
アリアの声                           ジュリアン・ムーア

 

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=olRdPXwiSjk

 

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アフガンでテロリスト集団を監視中の米軍。指導者暗殺の命を受けているが、見かけ上は葬儀への参列。画像解析での指導者の確定率は51%。大統領に判断を仰ぐカリスター国防長官。大統領の指示は「GO!」。

 

コピー屋で働いているジェリー・ショー。生活は貧しく、家賃も滞納。
ある日連絡を受けて双子の兄イーサンの葬儀に参列。出来が良く国防省で仕事をしていたイーサンと常に比較され、父親と対立。

実家で兄の小切手(?)を拝借して現金化しようとATMを操作すると、大金が振り込まれており、引き出した金も桁違いに出て来た。

 

帰宅すると、大家が荷物を入れたという。だが身に覚えがない。数個開けてみるとバリバリの最新武器。そこに携帯から電話。出ると女の声で「今すぐ逃げなさい、あと30秒でFBIが来る」。
だが何の話か判らないジェリーは、集団で乗り込んだFBIに捕まる。
取調べを受けるが、何も知らないジェリーには答えようがない。モーガン捜査官が席を外した時、デスクの電話が鳴る。それに出るとさっきの女の声で「伏せなさい」。とっさにかがむと外からクレーンが直撃して窓を破壊。続けて電話の声は「飛び降りなさい」言われるままに、命がけでそこから脱出するジェリー。

 

母親(レイチェル)が息子のサムを見送る。楽団に所属する息子は、みんなとイベントでどこかに出掛けるところ。その晩、友人との飲み会の最中に電話。女の声で「言う通りにしないと息子が死ぬ」と言われ、指示に従い外へ出る。ビルの電子公告に写る息子の顔。
次いで、止めてあるポルシェに乗れ、との命令。
右、左とカーナビの指示が目まぐるしく出て、言われるままに走る。その先にジェリーが居た。乗り込んだジェリーだが、追っ手が迫る。お互いを怪しいと思いながらも協力して逃げる。逃げる途中でも、追跡車が様々な妨害で脱落して行く。
逃げた先が海辺の廃棄物処理場。乗っていた車がクレーンの爪に咥えられて持ち上げられる。迫る追跡の中で「飛び降りなさい」の指示。落ちた先はゴミ運搬船。吊られた車は海で落とされた。

 

場面変わって、運ばれつつある荷物。一つは楽器店に行き、トランペットの一部に部品として組み込まれる。もう一つは宝石店に行き、ネックレスに組み込まれる。

翌日、海に落ちた車を引き上げるモーガン。もう一人ジェリーを追うペレス空軍特別捜査官は、イーサンの居た空軍の所属。

間に挿入される、軍事防衛システム「アリア」の説明。

 

運搬船が陸に着いてから、携帯からの声の指示で一本道をとぼとぼ歩くジェリーとレイチェル。お互いの状況を話し合い、声の指示に踊らされてここまで来た事を驚く。
後方からバンが走って来て、二人に追いつくと、カバンを渡して走り去った。声が追うよう指示するが、もう追いつかない。

その時、上を走る高圧線が切れ、その男の体に垂れ下がって、男は感電死。
二人はバンに乗ってそこを逃げ出す。
カバンにはパスポートとチケットに銃。次の指示は、指定した建物から出て来た男が持つアタッシェケースを奪う事。男は二人で武装している。二人は協力してそのケースを奪い、逃げ出すが、次第にモーガンに追い詰められて行く。その時、大型バスのガイドに名前を呼ばれて乗り込む。日本人のバスツアー。一息ついた時にケース取っ手の扉が空き、タイマーがスタート。

モーガンが周辺の防犯カメラ映像を捜させて、ジェリーらが乗ったバスを突き止めた。行先は空港。
途中の休憩でまた指示を受け、着替えを指示される二人。命令に納得しないジェリーは電気店の視聴室に導かれ、そこのディスプレイで、相手がコンピューターである事を知る。着替えた後、バスに戻る二人。

空港に付いた二人はチェックインをして乗り込むばかりになっていたが、捜しに来たモーガンと一瞬目が合う。貨物運搬エリアでの逃走。
コンベアーの錯綜する中、何とか逃げ延びる二人は空軍の輸送機に乗り込む。女の声で、運搬用の箱に入るよう指示。そこでケースがタイムアップして開く。高空での生命維持のために必要な注射だという。嫌がるレイチェルに注射をし、自分にも打つジェリー。

 

一方ペレスがイーサンの部屋でコンピューターの操作をしたとたん、空軍の武装兵に押さえ付けられ、ペンタゴンまで連れ戻される。そこでカリスターから明かされる「アリア」の実態。より効率的な軍事運用を目指して開発されたが、先のアフガン攻撃ではアリアが作戦実行を否定したのに大統領の判断で攻撃し、結局誤爆だった。
イーサンがアリア運用の担当だった事を知り、イーサンが死ぬ前後のビデオデータをアリアから抽出するが、再生の途中で消去されてしまう。この部屋には一ヶ所だけ監視カメラの死角があり、イーサンが最後にそこへ入った映像が見えたため、ペレスはその部屋を探して音声メモリーを見つけた。明かされるアリアの計画。誤爆を決定した首脳陣を、国家を危機に晒した者として処刑する、という業務を遂行する。イーサンはそれを止めようとして、計画をロックし、その後アリアに殺された。
この話を共有するペレス、カリスター、ボウマンの三人。口唇術、テーブルの振動等で話の内容を理解したアリアはカリスターを殺す。ペレス、ボウマンも閉じ込められる。

 

空港に到着した二人。声の導きに従ってペンタゴンの地下37階に向かう二人。そこはアリアの居る「イーグル・アイ」。イーサンがロックした命令を解除するのにジェリーが必要だった。顔認証に続いて声認証もパスし、解除の命令をジェリーが口述して、ロックは解除された。
再びロックされないよう、アリアはレイチェルに、ジェリーを射殺するよう命令。だがレイチェルには出来なかった。

アリアの実行する「ギロチン計画」はネックレスに仕込んだ爆弾が、トランペットに仕込んだ発信器により、ある特定の音階の音を認識した時、爆発するもの。大統領始め首脳陣が一堂に会する記念式典がその実行場所。

 

レイチェルは官庁職員と思われる者の案内で別行動。着替えをさせられ、ネックレスを着ける。
ジェリーはモーガンと接触して真相を話す。無人爆撃機で攻撃される事になって、ただ事ではないと認識するモーガン。トンネルに逃げ込むが、絶体絶命。腹に重傷を受けたモーガンはジェリーに、国会図書館からの通路を教え、通行証と銃を渡し、彼を送り出す。爆撃機に向かって車を走らせ、撥ねたポールで爆撃機を道連れにして死ぬモーガン。

 

式典場に着いたレイチェル。ネックレスの殺傷能力ではこの部屋がこっぱみにんになる。
警官の服を奪って会場に入り込むジェリー。だが演奏は始まっており、残された時間はもうない。
会場のテーブルに駆け上がり、上に向けて数回発砲するジェリー。演奏は中断し、狙撃されたジェリーは倒れる。

 

「イーグル・アイ」の計画は中断された。射殺を免れたジェリーが軍からの感謝状を受ける。
レイチェルの息子の誕生パーティー。そこに訪れるジェリー。

 

 

感想
これもTV録画の視聴。
暴走するコンピューター・システムに翻弄される二人の男女。設定も進め方もけっこうスピーディーで、前半のスリリングさは結構楽しめた。
だが例によってツッコミ炸裂・・・・

 

まず二人を追いかけて来た男。逃げ出した時に送電線が切れて感電死するが、これってさすがにネット使ってやれる事か?それとも無人爆撃機で切ったのだっけ?(記憶があいまい)

それから、男から渡されたパスポートとチケットで、旅客機に乗るのかと思いきや、空軍の輸送機に乗るとは。また奪ったアタッシェケースの中身が、高空での生命維持用なんて、ちょっとマニアックすぎ。タイマーでケースが開くとか、仕掛けに酔い過ぎて自滅している感じ。

 

アリアの描写、カミオカンデっぽくて、まあ好き嫌いはあるだろうが、こんなもんかな。口唇術は、やっぱ「2001年・・・」の記憶が鮮明なので、二番煎じの感あり。テーブル振動からの音声変換は良かった。
しかし一卵性双生児だと言っても、顔認証や声紋が一致するなんて、あるわけがない。それでパスする事自体、認証が甘すぎる。このネタは使うべきではなかった。

 

ジェリーが演奏を止めるために、撃たれるのを覚悟して発砲するところは、けっこう感動(結局は死なないところが映画なんだけど)。

 

全体的な印象は良かったので、小ネタの乱発は少し控えて、「まっとう」に作れば評価はもっと上がる。
アリアの声のジュリアン・ムーアは「萌え~」でした。

 

 

NHKスペシャル シリーズ 巨大危機 #3「ウイルス大感染時代」 1/14放送

MEGA CRISIS 巨大危機 ~脅威と闘う者たち~
 第3集 ウイルス“大感染時代” ~忍び寄るパンデミック~

 

番組情報
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170114

番組詳報
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/1009/1028095/

 

要約
鳥インフルエンザ。鳥→ヒトへの感染はしないというのが通例だが、エジプトで死者35名。
人への感染の障壁:①温度。鳥の体温42℃。ヒトの体温36℃との差が障壁。その間を取り持つのが豚(体温42℃)。豚の体内でウイルスの遺伝子が混ざり合う→ヒトでも増殖。
障壁②受容体の形状。現在は結合遺伝子の数:4と少ないが、突然変異で感染能力がアップするリスク有。

 

我々がいつも罹るもの→季節性インフルエンザ(2~3日寝ていれば治る)。病原性インフルエンザ→1~3日で発症。4~5日で死亡。
最悪のシナリオ。感染1人から2週間後に感染35万人。外出の自粛、社会機能マヒ、物流停止、食べ物の入手困難。外国の支援期待出来ず(世界中で感染拡大)。
日本人の1/4感染。火葬追いつかず空き地に埋葬。致死率2%で死者64万人。パンデミックは避けられない。致死率0.1%でも数万人死ぬ。
ワクチンもパンデミックの数ケ月後にしか出来ない(初期に間に合わない)。

 

対応は「いかにうつさないか」。日本人は会社に行ってしまう→NG。法律出来た(新型インフルエンザ等対策特別措置法)。場合により非常事態宣言を出す。

 

パンデミックの脅威はインフルエンザだけではない。
MERS→中東から拡大(2012年)。エボラ出血熱→アフリカから(2014年)。 
リスクを高める要因→温暖化。
①シベリアの永久凍土が溶けて未知のウイルスが放出。3万年前の地層からモリウイルス。
②蚊の生息域・生息数の拡大。ジカウイルス→ウガンダから(1952年)。ネッタイシマカにより媒介。日本ではヒトスジシマカにより媒介の可能性。現時点ではリスク小→気温上昇により成長早くなり、個体数アップ。

米国でのウイルス撲滅の取り組み→遺伝子組み換え。
オスの蚊幼虫に寿命が短くなる遺伝子組み込み。メスと交尾して出来た幼虫は短寿命→世代交代前に死ぬので個体数激減。ただし生態系に影響を与える(慎重さが必要)。

 

どうすればいいか
アフリカでの未知のウイルス調査、解析。ワクチン開発に繋げる。
新型インフルエンザの対策→ワクチン大量生産。現状は鶏の卵使用→質にバラツキ。
犬、サルの腎臓細胞を使って作る→従来の200倍の速さでかつ高品質。ワクチン製造の時間短縮。

追いかけっこ。
日本人はいったんは大騒ぎするが、忘れてしまう。長い目(10~20年)でのリスクを理解して対策を考える必要がある。
今年日本でジカウイルスの感染が拡大する確率→8%。


感想
「シリーズ 巨大危機」は、昨年9月に#1、#2をやってからずいぶん間が空いていたので、見逃してしまった。今回別の手段で#3を視聴。

 

ウイルス感染の話は、先日「バイオハザード」で認識したが、今度は実生活でのリスク。
インフルエンザについて、基礎知識が乏しかったため、ココでおさらい。
基本はA,B,Cと3タイプあり、鳥インフルも人インフルもAに分類される。その中で毎年流行しそうなものを予測してインフルエンザワクチンが供給されるという事。鳥インフルエンザは高病原性のものがあるため、こちらの方から変異して人に感染するものが出来ると、大変な事になる、というのが今回の前半の話。

 

いずれにしても、シーズン中は手洗い、うがい、部屋の加湿を忘れないように。

 

 

NHKスペシャル シリーズ 巨大危機 #4「地震大火災があなたを襲う」1/22放送

MEGA CRISIS 巨大危機 ~脅威と闘う者たち~
 第4集 “地震大火災”があなたを襲う ~見えてきた最悪シナリオ~

 

番組紹介
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170122

番組詳報
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/1009/1030332/

 

要約
先日の糸魚川(12/22)の大火災→火元は一軒。
昨年11月に国際会議が開かれ、火災の研究者が集まった。

阪神・淡路大震災の検証。1995/1/17。震度7。同時多発火災109件、7000棟全焼、火災死者400人超。
震災当時の風速3m/sec。もし風速15m/secだったら被害面積は4倍。
アンケート調査→いつ火災から避難したか。最初から:4%?、気付いてから:29%、気付いても避難しなかった:67%。このデータを入れた風速15m/sec時の死者シミュレーション→3000人。

火災の場所によってリスク変わる。世田谷区周辺のシミュレーション。風速8m/secで100ケ所抽出。3000通りのパターン。

中には数千人死ぬパターンもあった。避難場所に辿り着けないケースあり。避難場所周辺の出火確率を下げる事が重要。空振り覚悟で早めに避難する事が大事。

 

足立区。木造密集地。地震で建物崩壊→道路封鎖(逃げ場所なし)→スマホ使った災害情報共有システム。利用者が逐次火災情報をインプット→一元化して全員で共有。

 

新たなリスク。東日本でのガスタンク爆発。集合ガスタンクの一基が点検のため水を封入。地震で骨格破壊し、周辺のタンク損傷→爆発。
生きているガスタンクの爆発は怖い(鎮火に10日かかった)。
もう一つのリスク。津波による大量の油流出。炎上して大火災。南海トラフを想定した大阪湾の油流出→東日本の4倍。

 

新しい取り組み。拡大を防ぐ新たな方法→油分散剤。火をつけても油に燃え移らない。
タンク手前にフレキシブルパイプ。膨らませて防波堤にする。


感想
火災リスクについては、先日の糸魚川の火災で、その怖さが十分認識された(風の恐ろしさ)。
今回のポイントは「脱出行動」と「油火災」。軽視しているわけではないが、いずれも「NHKスペシャル」として特集を組むほどのホットなネタ、という気はしなかった。
タンク手前のフレキシブルパイプなんて、どう考えても机上のお遊び。もう少し確からしい実証実験とかも見せないと。

 

ただ、実際のタンク火災を想定した消防士の訓練には頭が下がった。我々の命を守ってくれている、という実感がある。

 

 

 

沈黙 -サイレンス- 2017年

原作  遠藤 周作
監督  マーティン・スコセッシ

 

 

キャスト
セバスチャン・ロドリゴ神父       アンドリュー・ガーフィールド
クリストヴァン・フェレイラ神父   リーアム・ニーソン
フランシス・ガルペ神父           アダム・ドライヴァー
通辞                               浅野忠信
モキチ                            塚本晋也
キチジロー                       窪塚洋介
イチゾウ                          笈田ヨシ
井上筑後守                     イッセー尾形
ジュアン                          加瀬亮
モニカ                            小松菜奈

 

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=aVw7MINWKu0

 

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雲仙岳。山奥の温泉で、熱湯の拷問を受ける隠れキリシタンの信者たち。役人に押さえつけられてそれを見る神父。

 

1637年のポルトガル。イエズス会の宣教師ロドリゴとカルベは、日本での布教をしていた自分の師であるフェレイラが、棄教したという話を聞く。
真偽を確かめるためマカオで日本人漁師のキチジローを紹介してもらい、日本へ密入国する。自分はキリシタンではない、と否定するキチジロー。

 

入ったのはトモギ村。村のリーダー的存在のモキチ。洗礼等の祭事は「じいさま」と呼ばれているイチゾウが今までやっていた。直接教えを乞うことが出来て喜ぶ村民。次第に進む布教。村人は形のあるものを欲しがり、ロドリゴは持っているものを分け与えた。だがキチジローだけはそれを受取ろうとしない。
キチジローはかつてキリシタンだったが、弾圧を受けた時、踏み絵に応じて免れた。だが家族はみな踏めずに処刑されたという過去を持っていた。

 

噂が広がり、五島からも来てほしいという使者が来て、ロドリゴが訪れた。五島はキチジローの出身地でもあった。
布教の成果を上げてロドリゴが戻って来ると、役人が来てイチゾウを連れ去ったという。翌日イチゾウを連れて再び来た役人は、イチゾウ、モキチを含め四人を長崎まで連れて行くと宣言、猶予は三日。取り仕切る奉行は井上筑後守。

結局志願した一人とキチジローを加えた四人が長崎まで連行される。連行の前にモキチがロドリゴに手作りの小さな十字架を渡した。ロドリゴたちが来るまでは、それだけが唯一の拠り所。踏み絵を強要される四人。みな形だけは踏むが、その後役人が、キリストが十字架に架けられた像を手に持ち、これに唾をかけろと命じる。キチジローだけがそれをやり、残りの三人は出来なかった。そして彼らは海岸で磔にされ、殉教した。隠れてその一部始終を見ていたロドリゴ。

 

村に迷惑がかかる、とロドリゴとガルペは別々に村を出た。再び五島に上陸したロドリゴは、偶然キチジローに出会う。裏切った事を詫び、手を合わせるキチジロー。食料と屋根のある所を捜してくれた。
だが、喉の渇きを訴えたロドリゴを川まで案内した後、姿を消すキチジロー。渇きを癒したロドリゴが顔を上げると、役人に取り囲まれていた。連行される途中で手を合わせるキチジロー。その許にばら撒かれる銀貨。

 

ロドリゴは屋敷内の牢に監禁された。同室の者は全てキリシタン。自らキリシタンだと騒いで、中に入れられたキチジローもそこに居た。裏切った事を再び詫び、告悔するから神の許しが欲しいという。形ばかりの許しの動作をするロドリゴ。

ある日、海岸に連れて来られるロドリゴ。良く知った人に会えるという通辞。牢で同室だった数人の村人の後ろにガルペが居た。ござを巻いて簀巻きにされる村人。船で沖まで連れられ、海に落とされる。ガルペが棄教すれば村人は助かる。
だがガルペは棄教せず、村人を助けるため、船まで泳いで行った。そして村人と一緒に殉教。

 

ある寺に連れて来られたロドリゴ。そこでとうとうフェレイラと再会。彼は沢野中庵という和名をもらい、名乗っていた。

フェレイラは、逆さ吊りの刑を、自分だけでなく他の信者も受けていたので、彼らを救うために棄教した。
更に続ける。日本人の信仰の源は太陽。キリストの教えは浸透しない。彼らが転ばないのは、君に殉じているから。
その晩、独房で大きないびきの様な音を聞かされて荒れるロドリゴ。フェレイラはそれを、逆さ吊りの刑を受けている、信者のうめき声だと言う。
そして、もしキリストが同じ立場なら、彼らのために喜んで棄教するだろう、と諭す。

 

ロドリゴに踏み絵が行われる時が来た。彼の目の前には逆さ吊りされた信者たち。踏み絵のキリストが「踏んでよい」とささやく声が聞こえた。その言葉に従うロドリゴ。

ロドリゴは、フェレイラの行っていた仕事(外国からの輸入品にキリスト布教に関するものがないかのチェック)を、共に藩に協力して行うようになっていた。

 

その後も、藩はその確認のため何度でも、棄教に関する証文の提出を要求した。ロドリゴが棄教した後も度々訪れるキチジロー。ようやく彼に対して心を開く事が出来たロドリゴは、キチジローに感謝の言葉を伝える。また踏み絵についても、藩は皆を集めて踏み絵を行った。

ある日、いつもの様に踏み絵を行った時、ロドリゴに次いで踏み絵をしたキチジローは、役人に見咎められて、首から下げた袋を取り上げられた。その中にはキリストを連想させる彫刻物が入っていた。いつもの調子で自分のものではないと言い張るキチジローだが、役人に連れて行かれる。何も出来ずに見送るしかないロドリゴ。

 

状況も落ち着いて来た頃、亡くなった武家の名前を継がないか、という井上筑後守からの提案。岡田三右衛門という名。資産、妻子も含めての引継ぎ。
そして四十年間、ロドリゴは日本に暮らした。

 

岡田三右衛門が亡くなり、妻だけが許される遺体の世話。彼は仏教徒として火葬された。重ねられた手の内側には、妻が握らせた、モキチの形見の十字架があった。


感想
この映画については先日「こころの時代」で取り上げたので、楽しみにしていた。
冒頭の、信者に熱湯を掛けるシーンから始まり、緊張が高まる。
ストーリーそのものは判っているので、興味はどう描かれるか、という事。

 

神の存在を素直に信じる若い神父ロドリゴとガルペ。その二人は日本に来て、キリシタン信者の壮絶な信仰の解釈に圧倒されて行く。その中でロドリゴは、命を守るために踏み絵を踏んで良いとモキチに言うが、ガルペは否定。この二人の間に立って途方に暮れるモキチの表情が印象的だった。
結局ガルペは最後まで棄教を選ばず、自らの死を以て意思を通した。

何度でもロドリゴたちを裏切るキチジロー。後半では役人さえ彼を転びの手本として扱う。それでもロドリゴから離れられず、何度でも近づく。

 

徹底的に「弱さ」の象徴として存在するキチジロー。だが棄教し、和名まで名乗っているロドリゴを、変わらず「パードレ」と敬い、キリストを思う心にいささかの変節もない。

またキリシタンの弾圧に力を注ぐ井上の執拗さ。ニコニコ笑って好々爺としか思えない笑顔で、残酷な事が出来る。信者をいくら殺しても、喜んで殉教するだけ。指導者を「殉教」ではなく「棄教」させて、生き続けさせる事こそキリシタンを根絶やしに出来るという信念。

 

巨匠マーティン・スコセッシが30年近く温めていた企画、という事ではあるが、あまり過大な期待をかけるのはフェアではない。
そういう点で振り返れば、いい映画だと言える。原作の思いである、「棄教すなわちキリストに対する裏切り、ではない」という思いは十分反映されている。
音楽も、エンディングで、音楽ではなくて波の音、虫の声等だけでずっとエンドロールが流れるのを見て、そういえば今まで音楽らしい音楽がなかった、と気付いた。
この題材に、中途半端な映画音楽は不要、と切り捨てた潔さは素晴らしい。

だが、そういう解釈から行くと、最後の最後でロドリゴがモキチの形見の十字架を握って焼かれる姿に、ちょっと違和感。

 

元々日本人は「八百万(やおよろず)の神」を信仰する民族。それが根底にあるため、仏教も中国から取り入れた。だからこそ、何らかの拠り所(形あるもの)があれば信仰を維持出来る。踏み絵が踏めないという怖れも、結局はモノに依存している事の現れ。
それに対して「踏んでよい」という啓示は、そもそもキリストの心は踏み絵というモノには宿っていない事の証し。表面上は棄教し、和名まで戴いてキリシタン弾圧の片棒を担いだロドリゴ。それが最後の場面で、十字架というモノに頼る。
まあ、握らせたのは彼の妻だが・・・。これは解釈が違うのではないか。

 

そのロドリゴの姿よりもキチジローの方が、よりキリスト教徒らしい。踏み絵などという「モノ」には全くこだわりがなく、ロザリオにも平気で唾を吐く。だから最後に「モノ」によって連れ去られたという表現はいかにも残念(そんな筈ないだろう)。

 

マーティン・スコセッシ監督については10年以上前に「アビエイター」でかなり辛口批評をしてしまったが、ここでもハワード・ヒューズという人間の本質を掴みきれなかった点が、非常に残念だった。
まあ、いろんな解釈をして楽しむというのも、映画の醍醐味、か。

 

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