Quantcast
Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1566

ファウンデーション対帝国(銀河帝国興亡史②)発表:1952年 アイザック・アシモフ

$
0
0

ファウンデーション

 

前作「ファウンデーション」あらすじ
何世紀も前から崩壊を続けていた銀河帝国。中心となる首都トランターでそれに気付いた心理歴史学者ハリ・セルダンは、帝国滅亡後の早い復活を目指して二つのファウンデーションを銀河の両端に設置。
その一端「ターミナス」は五十年後に迎えた四つの隣国からの脅威を、サルヴァー・ハーディンの指導で乗り切る。宗教を加味した技術浸透により、絶妙なバランスを保って四つの国をコントロールした。
それから三十年後。隣国アナクレオンがターミナスの支配を目的に攻撃を宣言。だがその前兆を掴んでいたハーディンにより未遂に抑え込み、隣国を含めて条約で縛る事に成功。
更に七十五年後。貿易商人のホバー・マロウが、銀河帝国の影響が残るコレル共和国を、自分たちの小規模な機器類の貿易により服従させるに至った。銀河帝国に次ぐ力を持ったファウンデーション。

帝国との戦いの道が開かれる。

 

超あらすじ
第一部 将軍
帝国艦隊の司令官ベル・リオーズ。魔法使いと呼ばれるファウンデーションの者たちを追っていた。ホバー・マロウの時代から四十年後。ファウンデーションへの進攻を行うリオーズ。
セネット・フォレルの指示で、貿易商人ラサン・デヴァーズが捕虜として送り込まれる。
デヴァーズは、かつてホバー・マロウに協力したオナム・バーの息子ドゥーセム・バーの協力を得て、トランターに行き、リオーズ及びその上司ブロドリッグの失脚を側面から支援。
結局リオーズは失脚し、ファウンデーションは守られた。内部の敵を示唆するデヴァーズ。

 

第二部 ザ・ミュール
ファウンデーション紀元三一○年。
環境の厳しいヘイヴンから、新婚旅行を兼ねてカルガンに向かった貿易商人トランとベイタの夫妻。

トランの叔父ランデュの話す「ミュール」の噂。
カルガンの海岸で、ミュールのお抱え道化師マグニフィコを保護するベイタだが、軍とトラブルを起こす。
諜報部員ハン・プリッチャ-の手引きでカルガンを脱出する一行だが、ファウンデーションの船に拿捕され、フリッチャーは投獄される。

科学者エブリング・ミス。セルダン研究の第一人者。ベイタ、トラン、マグニフィコとの接触。
ミュールは周辺国を次々に落としてターミナスに迫っていた。
時間霊廟が開くが、セルダンの予言ではミュールの危機には触れていなかった。
その直後にミュールからの攻撃とファウンデーション占領の布告。
ミスがベイタたちを連れて脱出。
独立貿易世界だけが持ちこたえていた。そこに向かうミュールの軍勢。

 

地下組織に潜り込んだプリッチャー。準備期間を経て、ターミナス市長の公舎に居るミュールのところへ自爆覚悟で行くが、その行動は察知されていた。

 

ファウンデーション設立時、同時に作られた第二ファウンデーションの情報を得るため、トランターに向かうミス、ベイタ、トラン、マグニフィコ。
ミスは文献の分析に没頭し、次第に弱って行った。
次に姿を現したプリッチャーは、ミュール側の人間になっていた。

強力な感情操作。

衰弱したミスが最後に、第二ファウンデーションの場所が判ったと皆の前で話そうとした時、ベイタがミスを撃ち殺した。ミュールにその場所を知らせないため。

 

ミュールの正体は、道化師のマグニフィコだった。
腺病質で、奇妙な子供として迫害を受けながら育ったマグニフィコ。成長して、他人の心を操作出来ることに気付いた。自分は表面に出ず、支配を進める。
全てを征服するために第二ファウンデーションの場所が知りたくて、ミスらに付いて行動した。

だが間違いを犯した。それはベイタに対する感情。能力を使わなくても好いてくれたのはベイタだけ。だから彼女の感情を読むことをしなかった。去って行くミュール。

 

文庫第一期

文庫第二期

 

ミュールのイメージ SCIENCE FICTIONより

 

感想
ミュールという、得体の知れない者に対する疑念をずっと引っ張りながら、支配されつつあるファウンデーションの暗い未来を読み進む。

最初に読んだ時は、ミュールの正体に「そうだったのか!」とけっこう感動した。
今回読み返してみると、マグニフィコがミュールであるというヒントが、そこかしこに伏線として張られており、別の意味で面白かった。
登場人物も生き生きと描かれている。

まずハン・プリッチャ-。優秀な諜報部員としてミュールに疑いを持ち、その出生に肉薄するも、近づき過ぎてミュール側の人間にされてしまう。ベイタらの活動に制限を加える事をしなかったのは、第二ファウンデーションの位置を知りたがったミュールの指示か?

ベイタは、元々ファウンデーションの人間であり、トランの妻になったのは、何らかの偽装が感じられる。
マグニフィコに対する偏見のない好意が結局自らを救うが、最終場面でミスを射殺したのが、第二ファウンデーションの秘密を守るためとはいえ、ショッキングだった(普通に言って殺人だし)。三作目でも違う形で影響を与える。

 

キーマンのミュール。自らの肉体的欠陥を補うように身に付いた超能力。これは以降「地球(テラ)へ」のミュウなど、SFモノにはお約束の設定となった。
銀河の支配という壮大すぎるテーマに対し、ベイタへの感情との対比がハンパないが、まあこれもドラマとして成立させてしまうところが小説の良さか。

ハリ・セルダンの予言には具体的に入っていなかった、ミュールに対する危機。だがそれも含めた危機的状況に対応するため、セルダンが準備していたのが「第二ファウンデーション」。
それが第三巻目に繋がる。この長いドラマをどう組み立て、進めて行くのか。本当に良く考えられている。

 

 

あらすじ詳細

第一部 将軍

1 魔法使いを探して
帝国艦隊司令官のベル・リオーズ。

シウェナに住む老人ドゥーセム・バーを訊問。
叛乱の気配を秘めている「魔法使い」に関する情報収集。
ドゥーセムは、四十年以上前、貿易商人の訪問を受けたオナム・バーの息子。個人用のフォース・シールドを持っていた。帝国の技術ではあり得ないもの。
父の研究を引き継いだドゥーセムは、ハリ・セルダンを知る。

その名を知らないリオーズ。セルダンの予測した帝国の衰退と、その後の野蛮化。
否定するリオーズ。帝国はこの千年期で最も隆盛期を迎えている。
セルダンの計画した二つのファウンデーション、第二銀河帝国の事について、四十年の研究により導いたドゥーセム。
証拠を得るためにファウンデーションを見つけるというリオーズ。

 

2 魔法使いたち
隔離された部屋で話し合う四人の男性。そのうちの一人はセネット・フォレル。ホバー・マロウの私生児。
議論しているのは、拿捕した帝国の戦艦で捕えた若い軍人の扱い。帝国の軍事指導者でありながら、外縁部の小君主を装っていた。ホバー・マロウの時代に、帝国から一度攻撃されている。
帝国からの攻撃を受ける可能性。セルダンの四度目の危機かも。
独立貿易商のスパイを送り込もうとするセネット・フォレル。

 

3 死者の手
帰還しない「スターレット」号の探知を指示するベル・リオーズ。
ドゥーセム・バーを呼び寄せて作戦に利用するリオーズ。半年前に魔法使いの話をして以来の再会。
反撃の方法をバーに乞うリオーズだが、例え帝国が総力を上げても押し潰せないと言う。
バーは歴史心理学の観点から、死者の手のために帝国は負けると言う。

 

4 皇帝
病気を抱えベッドに横たわる生活のクレオン二世。側近ブロドリッグを最も信頼している。リオーズの、ファウンデーションへの進攻と増援の申し出を伝えるブロドリッグ。
シウェナの軍政長官ベル・リオーズ将軍。

帝国のための征服事業を申し出た男。
十年前に仕官候補生となって以後、功績により特進した。
そのリオーズからの連絡。事情が判るまで増援は認めない、と皇帝。列候会議の招集。

 

5 開戦
帝国宇宙軍が、シウェナを起点としてファウンデーションへ侵攻する。
ファウンデーションの船に乗る、ラサン・デヴァーズと名乗る男を捕える。
ファウンデーションが計画している第二帝国の創建について質問するリオーズ。はぐらかすデヴァーズ。
デヴァーズはバーに預けられた。バーと話すデヴァーズは、彼をオナム・バーの息子との確信。

 

6 寵臣
惑星ワンダでブロドリッグと話し合っているリオーズ。ファウンデーションへの進攻を正当化するリオーズだが増援について否定的なブロドリッグ。

 

7 賄賂
見張り役、モリ・ルーク軍曹を買収したデヴァーズ。リオーズの暗殺を提案するデヴァーズに、その上のブロドリッグが重要だと言うバー。下賤の生まれだが、あらゆる点について皇帝の顧問。
そのブロドリッグが会いに来て、リオーズが戦さをする理由を聞く。ファウンデーションが持っている秘密は元素の変成。それが手に入れば帝国全体の経済を支配できる。鉄の、イリジウムへの変換が出来れば資源に悩む必要がなくなる。
ファウンデーションが和睦のためにイリジウム提供を申し出ているのを蹴っている、リオーズの態度の背景を理解したブロドリッグ。金をバラ撒いてデヴァーズに口止め。
二ケ月に及ぶ戦闘で疲労しているリオーズ。ブロドリッグが副司令官として加わり、戦艦の補強もされたが、腑に落ちない点がある。
デヴァーズが簡単に捕まった事に疑念を持っていた。機械を持参して精神探査をすると言う。バーが隙を見て飾りのクリスタル像でリオーズの頭を打撃。二人はルークの案内で商船まで走って脱出。
ブロドリッグに吹き込んだ話が効きすぎた。彼はリオーズと手を組んだ様だ。

 

8 トランターへ
ファウンデーションが攻撃を受けている事に苛立ち、バーに八つ当たりしたデヴァーズ。だがバーは、逃亡した事で、残した息子らの身が危なくなっている。
思い出してカプセルを取り出したバー。リオーズが受け取ったもの。ブロドリッグからリオーズへの書簡。ブロドリッグらの謀反の証拠としての利用を考えるデヴァーズは、クレオン二世に会うためトランターに向かう。

 

9 トランターにて
正規の手続きでは入国出来ないデヴァーズ。ブロドリッグからもらった紙幣が効いて、賄賂により手続きが進む。
ひと月かけてようやく要職の部署に辿り着いたが、ブロドリッグの紙幣である事を咎められる。担当者を倒し、商船に乗って脱出するデヴァーズとバー。ニュースでリオーズとブロドリッグの逮捕を知る二人。

10 終戦
故郷ターミナスで勲章を授与されるデヴァーズだが、彼らの行動の前にリオーズは逮捕された。今回の解説をするバー。
ファウンデーションに害が及ぶケースは、強い皇帝と強い将軍が組み合わさった時だけ。今回の強い将軍リオーズに疑惑を感じた皇帝。それに加えて側近のブロドリッグがリオーズに肩入れ。この「うさん臭さ」がファウンデーションを救った。
帝国からの攻撃はもうない、と喜ぶフォレルに第二ファウンデーションの存在を語るバー。「おそらく内部に敵がいるよ」と言うデヴァーズ。
例えば、誰だ?」というフォレルに「たとえば人民だ」と返すデヴァーズ。
富の分散を願う者。どこかに集中しているのを防ぎたい。

見つめ合う二人。

 

第二部 ザ・ミュール

11 花嫁と花婿
ヘイヴン第二惑星に降り立った夫のトランと妻のベイタ。ヘイヴンはファウンデーションの支配を受けている。トランはヘイヴンの出身。

ベイタはファウンデーションの出身で、先祖を辿ればマロウにまで行き着く家系。
刺すような寒さ。出迎えるトランの父フランと、トランの叔父ランデュ。彼らは貿易商人。
最後の危機からもう一世紀経とうとしている。支配階級の安定。

それに重ねてフランが貿易商人の貧困を叫ぶ。
ランデュが、ここ一、二年の噂を口にする。ミュールという男。

勝ち目がない戦いに何度も勝っているという。
ランデュは、トランたちの新婚旅行を、そのミュールが居るという「カルガン」にする事を提案。ここから七千パーセク。ファウンデーション人のベイタと組めば、何か探り出せるかも知れない。

 

12 大尉と市長
諜報活動を業務としているハン・プリッチャー大尉は、ファウンデーションのインドバー市長に謁見していた。同じインドバー名での三代目。プリッチャーの記録を見る市長。紀元二九三年に入隊してから十七年の四十三歳(よって現在は紀元三一〇年)。優秀な勤務状態で勲功章を授与されているが、その一方で上官に対する不服従も繰り返す。
緊急事態にも関わらず、重要な問題が無視されていると主張するプリッチャー。
プリッチャーは一年半前からカルガンで、引退した商船員を装って、カルガンの将軍の政策チェックを行っていた。カルガン及びその星系はファウンデーションにとって戦略的に重要な存在。
二ケ月前に一旦帰任し、一ケ月前に戻った時、得体の知れない者がカルガンを征服していた。この不思議な傭兵隊長-ミュールについての噂が広まっている。
プリッチャーの危惧を否定する市長は、彼をヘイヴンへ出張させた。
だがその命令に背いて進路をカルガンに取るプリッチャー。

 

13 中尉と道化師
カルガンは、レジャーの売り手として、征服者の蹂躙を受ける事なく存続して来た。

だが最後に征服した将軍は、熱心に自国の防御に力を入れた。
だがおかしなニックネームを持つ者が新たにカルガンを征服した。

今まで通りの繁栄を続けるカルガン。
カルガンに到着したトランとベイタは、もう四日間もここに滞在している。叔父のランデュが言っていた、ミュールの事を気にしていたが、探す手立てがない。

ベイタは海岸で、道化師と警備員のイザコザを見る。道化師がベイタの方に近づき、彼女の知性を讃える。ベイタが優しく話しかけた。
あの警備員が追って来て、道化師を引っ立てようとする。トランが道化師を庇う。道化師に金を渡して芸をさせるところだとけん制。
警備員はその男を領主さま(即ちミュール)のお抱え道化師だと言った。
道化師に暴力を振りそうになる警備員の麻酔銃を取り上げるトラン。事態が険悪に。
そこへ中尉の制服を着た大男が来る。警備員が事情を話す。
ファウンデーションの市民だと言うトランに、今の行為が不法だと警告する中尉。
身分証は船にある、とトラン。群集は電気鞭で追い払われた。
自分のやった事に改めて驚くトラン。「まるで別人だったわ」とベイタ。乗せられた小型機のシートで寝ている道化師。

報告する中尉に「君の役目は終わった」と言う大佐。「ミュール様は大衆の面前で面子を失いました」と付け加える中尉。その措置は取った、と大佐。

 

14 突然変異(ミュータント)
格納庫の船の中。道化師は食べ物にぱくついていた。この一週間ろくなものを食べていない。道化師の名前はマグニフィコ・ギガンティクス。彼にとってもファウンデーションは有名だった。ちょうどそこに訪問者。
男はベイタをファウンデーション人と見抜き、地下組織の一員である事も知っていた。男は秘密情報部のハン・プリッチャ-大尉と名乗る。

 

プリッチャーはミュールを、ファウンデーションへの脅威として認識していた。その出生についても調べていた。

三十年前に生まれ母親は死んでいる。
生き残っている者の話によれば、彼は人類ではない。

彼はミュータント。無名から身を起こして、二年でカルガンを征服したのは、その能力が並みでない事を示している。
マグニフィコの話すミュールの風貌。立派な体格で髪は赤毛。そして不透明な眼鏡をかけている。目で人を殺すという。
大尉の提案でカルガンを脱出。
不思議なことに追跡はなく、道化師を連れ出す事を彼らが望んでいたとも思える。
その後報じられたニュース。(ミュール)の宮廷の一員が誘拐され、それについてファウンデーションに抗議したという。我々の立場は悪くなった、とプリッチャー。

 

15 心理学者
科学者のエブリング・ミスは、市長インドバーに面会するため、請願書は出したものの、その許可を待たずに宮殿に押しかけた。
市長の苦情を無視して「セルダン危機」の言葉を出すミス。市長がセルダン危機を恐れている事を承知している。
心理歴史学を研究している彼は、併せて時間霊廟についても調べていた。

その関係で今度のセルダン危機、五回目のものがいつ来るかを知った。それは四ヶ月後。何年も前から準備されていたという事。
そこへ秘書が市長へ報告。命令にそむき、カルガンに向かっていたハン・プリッチャ-が戻って来たため投獄し、処刑を待っている状態。同伴の者は抑留。
プリッチャーの言うカルガンの新将軍の企み。ミスは、プリッチャーの釈放を進言。

 

16 協議会
ファウンデーションとは異なる貿易世界で繋がっている二十七ケ国が、ラドール市に集まって会合を行った。
カルガンがミュールに支配された話が語られる。

ミュールはミュータント。
ファウンデーションに対して敵対しているが、ミュールも大きな脅威。ミュールは狂人。また敵は新兵器、原子フィールド抑制機を持っているという。

 

17 ヴィジ・ソナー
ターミナスの、エブリング・ミスの自宅に連れて来られたベイタとマグニフィコ。ミスがやって来てマグニフィコにたくさんのキーが付いた楽器を見せた。ヴィジ・ソナー。音だけでなく視覚や精神にまで影響を与えるもの。
ファウンデーションにはこれをキチンと弾ける者はいないという。

一心にそれの調律を始めるマグニフィコ。
用意が出来て、電気を消し、彼の音楽を聞くミスとベイタ。めくるめく様な体験。聞き終えたベイタは涙ぐむ。
この演奏を、もっと多くの人に聞かせたくないか、と言うミス。大きな名声を得るチャンス。

インドバーと会見するミス。ミュールの情報を要求する市長。マグニフィコに軽い表面探査を行ったが、ほとんど新しい事は判らない。
市長は、独立貿易世界連合が、ミュールに対して宣戦布告した事を告げた。協力ではないが、ファウンデーション艦隊が増強されたのと同じ効果。
また、市長は時間霊廟の話を持ち出した、あと九週間で時間霊廟が開く。もしミュールの攻撃が危機でなかったら、真の危機はどこにある?

 

18 ファウンデーションの陥落
ハリ・セルダンの出現を前にして、時間霊廟に人が集まりつつあった。
最初に来たのはインドバー市長。星間中継も準備出来ている。後援者や指導者が集まる。
その中にヘイヴンのランデュが姿を現した。独立貿易世界連合の代表。市長から出ている、連合の宇宙戦艦をファウンデーションの艦隊に分配する指令の撤回を求める。その様な措置には従えない。
統一されるべきだ、と譲らない市長。決裂する二人。

ベイタ、トラン、マグニフィコも来場。ランデュとの再会。
そして時間霊廟が開いた。ハリ・セルダンの姿。ファウンデーションの内乱に対する言及。独立貿易世界の叛乱。
エブリング・ミスがランデュに詰め寄る。内戦の計画をしていたのか?
確かに計画していたが、ミュールの事があったので取り消した、とランデュ。

その時、ミュールからの攻撃が告げられる。時間霊廟の中の時計が止められていた。
次々と入る敗北の報告。気絶したインドバー。気付けのワインで目覚めた時の言葉は「降伏だ!」

ミスがベイタ、トラン、マグニフィコを連れて脱出。
ファウンデーションに対する占領の布告。
独立貿易世界だけが持ちこたえていた。そこに向かうミュールの軍勢。

 

19 探索開始
孤独な惑星ヘイヴン。ファウンデーションの瓦解から四ヶ月後、通信網は断ち切られ、戦闘基地として孤立したヘイヴン。
ベイタは今日、生産局へ行った。工場の士気が落ちている事の訴え。ヘイヴン自体がそれに陥っている。

 

ランデュとエブリング・ミスとの会話。この敗北感は群集心理だと言うミス。ミュールについて、セルダンは用意をしていなかった。

我々は自力で戦う事になったが、勝つ事は出来る、とミス。
ミュールについての仮説。ミュール自身のミュータント能力は、噂に助けられている。そしてミュールが持っているという原子反応を抑制する放射線。それがもし精神エネルギー抑圧にも有効なら、ファウンデーションを襲っているものの説明がつく。
だが理屈に合わない事もある。ファウンデーションの宇宙軍を簡単に打ち破ったミュールも、独立貿易商の艦隊には勝てない。我々が知らない要素がある。
ランデュは、ミスを最も偉大な心理学者と讃え、ミュールを打ち破る最後の望みだと言った。だがここでそれを行う事には無理がある。

トランターなら中心部にまだ記録が残っている、とトランター行きを勧める。そしてセルダンが設立したという第二ファウンデーションを発見して欲しいと重ねた。

 

20 陰謀者
かつての市長の宮殿に入るハン・プリッチャ-大尉。四ヶ月前の、時間霊廟の前での事件。セルダンの見当外れの言葉。そして起きたミュールからの攻撃。
トランが道化師を担いで逃げる姿を見た。

プリッチャーは彼らの後に脱出。
翌日に見た敵宇宙船の群れ。そこから旅に出たプリッチャー。

三十日かけて地下組織まで辿り着く。
そこで合流したフォックスという男は、共闘を希望するプリッチャーに、工場の労働者になる事を勧める。インドバーのための工場が今はミュール側に寝返っている。働くとなれば身分証も入手できる。

彼はアトム・フィールド・ベアリング社のシールド工 ロ・モロとなった。

 

四ヶ月後、再びインドバーの庭園に立つプリッチャー。口の中の原子爆弾の寿命はあと三十分。
工員となってから二ケ月。仕事の最中に男からメモを渡された。
フォックスの家に行くと知らない男が来ていた。ミュール暗殺の作戦。ミュールはインドバーが使っていた居室に住んでいる。あの場所のセキュリティを熟知しているプリッチャー。一ケ月かけて準備が行われた。暗殺者となったプリッチャー。

宮殿を静かに入って行くプリッチャー。残り時間は五分。
一緒に死ぬミュールを見たくてドアをめちゃくちゃに叩くプリッチャー。ドアが開き、そこには制服を着た大男が。来る事を予想されていた。爆弾の寿命は最後の一分。
その錠剤を吐きだす様に言う男。爆発しないよ、とも。最後の一分が過ぎ、銀の粒を吐き捨てるプリッチャー。
その男はミュールではないと言う。この計画は君がベアリング工場で働き始めていた頃から判っていた。
プリッチャーに対して、最初にミュールの力を見抜き、その若い頃にも関心を向けた者として、有能な男だと褒めた。
転向を勧める男。言下に拒否するプリッチャーに、私でさえ敵わなかった、と言う。カルガンの将軍だった男。「そして今はミュールの忠義な総督だ。彼には説得力があるのだよ」

 

21 宇宙の幕間劇
トランターに向かう宇宙船。クルーはエブリング・ミス、トラン、ベイタとマグニフィコ。通信によれば、ヘイヴンも占領された。
ベイタが、私たちはいつも間一髪で逃れていると指摘。
ここ一ケ月あまり、航行ルート計算を行いながら進んで来たが、ある日マグニフィコが、計器がおかしな動きをしていると報告。

自分たちが探知されている。
起こされて来たミスに、フィリア自治領に入ってしまったと話すトラン。
フィリア船から六人の武装兵が入って来て、質問を行う。そして次に技術者が居るかを聞く。自船のパワー・プラントに調整が必要だという。トランとマグニフィコが連れて行かれた。
先方の船に異常はない。機嫌の悪いトラン。別室に連れて行かれたマグニフィコが十五分ほどで戻った。
自船に戻され、フィリア側として二百五十クレジットを要求。そして解放された。

トランの言うには、あの船のエンジンはファウンデーション製。どうやって見つけたか訝るベイタ。尾行されていたとの疑い。
その上で釈放されたのは、我々の行き先に興味があるから。

腹を立てるトラン。
マグニフィコが、あのフィリア船で知った顔を見たという。それはハン・プリッチャ-。助けてくれた事で良く覚えていた。彼がミュール側の者となって追跡している事を知る。

 

22 ネオトランターでの死
五十年前は四百億の人が居たトランターも、今では一億程度。四十年前の大略奪により、皇帝の一族がこの地に逃れた。その時の皇帝がダゴバート九世。その息子ダゴバート十世。
今回来た者の話をするジョード・コマソンとインチニー。来た者たちは身分証を持っていない。コマソンは皇太子の臣下。その手下がインチニー。来た者の中の女を皇太子に与える案で話が合う二人。

ダゴバート九世に謁見するトランたち。旧トランターに入るため、皇帝の印が必要。

そちらの方へ話を進めるが、老齢により話の認識力が弱い王。
ベイタが具体的に、トランター行きを許可する命令書へのサインを願い出る。それにサインを与える皇帝。

部屋を辞して外に出たところで武装兵に囲まれ、麻酔ピストルで撃たれる一行。もうろうとする頭で男たちの声を聞くベイタ。

 

コマソンと話をする、殿下と呼ばれる男。トランたちは手足を固定されている。皇帝の通行許可証を持っていると言うトランに「きちがい皇帝」と言う太った男。それは二十歳のダゴバート十世だった。
ベイタの前で、この女が気に入ったという皇太子。

ミスは気を失っていたが、マグニフィコは目覚めていた。ヴィジ・ソナーを取られたと訴える。
皇太子はそれを手に取って鳴らそうとするが、全く音が出ない。「おまえ弾けるのか?」との問いに頷くマグニフィコ。
弾け、と命令されて弾き始めるマグニフィコ。鋭い光の虹が跳ね上がり、邪悪なリズムに合わせて光が点滅。
それは十五分も続き、終わった。いつもとは全く違う音楽。
足もとに皇太子が静かに横たわり、コマソンがよだれを垂らして呻く。
マグニフィコは皆の手足の固定を外して行った。

一時間後、宇宙船のキッチンでマグニフィコにパイを食べさせるベイタ。先のヴィジ・ソナーの事を聞く。
ヴィジ・ソナーは神経組織に深い影響を与えるという。

それは邪悪なもの。
皇太子をノックアウトした事を褒めるベイタだが、マグニフィコは、彼を殺したと言う。あの皇太子は邪悪な目であなたを見た。
不思議な思いが湧くベイタ。

 

23 トランターの廃墟
トランターに接近するベイタ号。金属で覆われた地表の一部に割れ目があり、緑が見える。そこを目指して着陸するベイタ号。
それを用心深く見上げるリー・センター。このグループの指導者。自然農業を行っている。
着陸して降り立った者たちはセンターに平和目的で来た事を告げた。

自給自足の生活。だが肉の供給は外国との貿易に頼っていると言う。輸出するのは金属。加工済みの金属なら無限に供給出来る。
大学構内での調査を申し出る年配の男。リーはその夜ネオトランターに連絡を入れた。

 

24 転向者
大学構内の図書館に入ったエブリング・ミスは、目録室にに留まる事にして、食べ物はそこに届けるようトランに申し入れた。
トランとベイタはこの一年の新婚生活の中で、最も正常な形の生活を過ごしていた。マグニフィコは図書室の映写機に夢中。
ミス自身は書籍研究に完全に埋没し、青白く痩せこけて行った。
暗い部屋で考え込むベイタに、トランはイライラを募らせた。
そんな時、マグニフィコが「奥様・・」と声をかけた。
そこに現れたのはハン・プリッチャ-。

ネオトランターの農夫に報告を命じていた。
そしてトランたちの行為が無益だと言う。

ミュールはミュータントであり彼を打ち負かす事は出来ない。
完全な忠誠心と、ミュールが勝つという完全な信念を沁み込ませる事が可能。
ミュールの力は絶望に関しても作用させる事が出来る。ファウンデーションやヘイヴンの要人たちがほとんど戦わずして陥落した理由。それが感情調節。
ミュールはこの七年間でファウンデーションの原子力技術まで手に入れ、最終的に老皇帝の死と共に新帝国を確立する事になる。
セルダンの歴史心理学があと七百年かけなければ達成出来ない事を、彼は七年間で成し遂げた。
だがプリッチャーは、ここに居る者たちの扱いが任務外だという事で、マグニフィコも含め、報告もしないと言った。
そしてミスたちが、第二ファウンデーションを探している事も知っていると伝えて、去って行った。

 

25 心理学者の死
図書館に籠りきりのミス。ベイタはトランと共にミスのところへ行き、プリッチャーが来た事を話し、ミュールの変異の話をした。
その事を承知していたミス。ミュールの感情調節を、様々な要因から導き出していた。そしてプリッチャーが感情調節を受けてその話をベイタらに話した事を聞いて、急がねばならない、と言った。
トランが、第二ファウンデーションの事を聞くと、その意義--それに関するすべてがより巧妙に隠蔽されていると話すミス。
翌日図書館に行ったベイタ。マグニフィコがミスをサポートしてじっと彼を見つめている。
マグニフィコに用事を言い付けて席を外させるベイタ。そしていつもマグニフィコが居る事について、邪魔ではないかと聞く。むしろ助けになっていると言うミス。
ミュールの道化師だった彼が感情調節されていない事に疑念を抱くベイタ。だがミスはそれに合理的な理由を見出しており、またマグニフィコの持つ情報そのものは重要ではないと言った。
更に第二ファウンデーションの事を聞くベイタ。
ミスの話。第一ファウンデーションは自然科学者の世界だった。セルダンが意図して心理学者を入れなかった。それゆえに発展した。
第二ファウンデーションは心理学者の世界。

第一ファウンデーションは科学的に進んだ世界。だがミュールの様な精神攻撃には準備がなかった。
第二ファウンデーションは何もしていないと言うベイタに「まだ十分に成熟していないかも知れない」
もし第二ファウンデーションがミュールを倒せないと、彼の子孫にホモ・サピエンスは太刀打ち出来ないだろう。
彼らに警告するため、その場所を知らなくてはならないが、その位置が判らない。
その晩、トランと話すベイタ。彼を信じると言うベイタだが、ミスは病気に罹っている。まさかの用意に原子銃を持つというベイタ。

エブリング・ミスの命はあと七日。

最後の日にマグニフィコが、学者の先生がお呼びです、と言って来た。
床に伏しているミス。仕事を引き継ぐと言った。
厳しい声でマグニフィコを上の階に追いやる。しぶしぶあとずさりするマグニフィコ。だがミスは居させてやれと言った。
第二ファウンデーションは、未成熟のうちにミュールに攻められなければ勝つ事が出来る。その所在は秘密にされなければならない。君たちはそこに行かなくてはならない・・・・」
トランの「どこにあるんだ!?」との問いに「今教える」
ベイタが原子銃でミスを撃ち、彼の上半身がなくなった。
力の抜けたベイタの手から銃が落ちた。

 

26 探索の終わり
今まで一度も泣かなかったベイタが一粒の涙を落とした。
ベイタはゆっくりと話を始める。
今まで何度も経験した、後をつけて来る様な災難。そしていつも間一髪で助かる。現実の世界ではこんな事は起こらない。
自分たちが伝染病の源を持ち運んでいた。トランが、それをエブリング・ミスかと言った。言下に否定するベイタ。ベイタでもない。
そうなると、残るはマグニフィコ。ベイタは続ける。
ネオトランターで、ヴィジ・ソナーを弾いて皇太子を殺した。恐怖のために何も出来ない者が、意のままに人を殺す能力がある・・・
演奏のほんの一部をベイタも聞いたが、時間霊廟での絶望感と同じものを感じた。

なおも否定しようと彼の方を見るトラン。

 

マグニフィコは背筋を伸ばし、自分の正体を明かした「私がミュールだ」

ミュールが話す、今までのいきさつ。
幼年時代、腺病質で貧弱な体のため、奇妙な子供として皆が避け、様々な出来事が起きた。彼の過去を調べていたプリッチャーがそれを気付くのに十分なエピソードがあった。
長じるにつれて他人の感情を、ダイヤルを回す様に指針を合わせて固定出来る事が判って来た。
二十二年間の嘲笑と虐待からの逆転。
だが自分自身に何もないという弱点。

権力を得るのは他人を利用してのみ可能な事。

自分の活動の助けとするため、道化師の姿でファウンデーションのエージェントを探していた。結局それがプリッチャーだったが、その時はベイタに引き寄せられた。それが致命的な失敗の出発点。
トランが、信じられない行動力でマグニフィコを助けたのも精神調節の仕業。
ミス博士に会った時、ヴィジ・ソナーを渡された事が、仕事を非常に楽にした。感情制御装置としての利用。
重要な発見がエブリング・ミス。彼に施した精神調整で、高能率で第二ファウンデーションの探索に没頭した。

だが間違いを犯したミュール。それはベイタ。
ベイタは唯一、感情をいじらなくても彼を好いてくれた人。笑い者にもしなかった。それが彼にとってどんな意味を持つか。
ミュールは彼女の心には立ち入らなかった。自然の感情をあまりにも大切にした。それが間違い。
トランは制御を受けていた。
ネオトランターでの失敗。自分の愚かな感情が、あの皇太子の、ベイタに対する意図を冷静に見られなかった。
殺さなくても用は足りたのに。

 

これからどうするの?と言うベイタに、第二ファウンデーションを探さなくてはならないだろう、と返すミュール。
あなたは負けた、とミュールを挑発するベイタ。
ミュールは、まだ自分は銀河系で最も強力な男だと言い、王朝を設立して適当な后を迎えても良いと言った。
その意味を覚って愕然とするベイタ。

 

だがそこまでで、ミュールは立ち去った。決して振り返らずに。

 

 

 

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1566

Trending Articles