Zeldaさんが「8月に観たい戦争映画」とのオススメ。
今回視聴は新しい方。何とか8月中の視聴にすべり込み。
監督・脚本 原田眞人
原作 半藤一利
音楽 富貴晴美
キャスト
阿南惟幾(陸軍大臣) - 役所広司
昭和天皇 - 本木雅弘
鈴木貫太郎(内閣総理大臣) - 山崎努
迫水久常(内閣書記官長) - 堤真一
畑中健二(陸軍少佐) - 松坂桃李
東条英機(陸軍大将、元首相) - 中嶋しゅう
米内光政(海軍大臣) - 中村育二
森赳(陸軍中将、近衛師団長) - 髙橋耕次郎
阿南綾子(阿南陸軍大臣の妻) - 神野三鈴
阿南喜美子(阿南陸軍大臣の次女) - 蓮佛美沙子
絹子(陸軍大臣官邸の女中) - キムラ緑子
館野守男(NHK放送員) - 野間口徹
予告編
あらすじ
1945年4月。鈴木貫太郎に組閣の下命。
陸軍大臣に阿南を据える鈴木。
戦局は困難な状況であり、本土決戦が口にされ始める。
阿南の家。次女の結婚。
4月にルーズベルトが亡くなり、記者からコメントを求められる鈴木。
5月に東京大空襲。
本土決戦に意欲を示す阿南。「六百万の無傷の兵士がいる」それに反論する米内に「海軍などキンタマ取られている」
6月22日。御文庫地下防空壕にて懇談会。天皇が「戦争終結の検討をせよ」。奔走する迫水。
天皇から阿南にお言葉「結婚式は出来たのか?」被災した帝国ホテルから軍神会館に変更して実施。
「それは良かった」の言葉に感激する阿南。
庭での天皇。ヒメジョオンは外来種だと言って自ら引き抜く。
7月27日。ポツダム宣言が行われる。
国体護持の点で紛糾し、受諾議論が進まず。
8月6日。広島に原爆投下。
8月9日。ソ連の参戦。同日長崎に原爆投下。
鈴木の決心。
それぞれの段取り考え、間違えないようにと迫水に指示。
鈴木が陛下に面会。陛下の助けをお願いするかも知れない。
8月10日。御前会議は二時間以上に及ぶ。
政府と軍の対立。皇室保全が前提。
後聖断を求められ、国民を守る事が重要だと発言する天皇。
それを元に連合国へ申し入れ。裏で青年将校らを煽る東条。
8月12日。連合国回答で天皇陛下の立場を原文「subject to」に対して陸軍は「隷属」と訳し、国体護持にならないと反発。
不穏な動きに走る(受諾阻止)。
8月13日。再度の御前会議。
8月14日。玉音放送の録音。その夜クーデター未遂(宮城事件)。
畑中は森近衛師団長を殺害。
8月15日。早朝に阿南は切腹。
録音盤は守られ正午、玉音放送。
畑中はピストル自殺。
感想
1967年版は予告編しか観ていないが、ちょっと見だけで阿南役のミフネと役所は全くタイプが違う。
敗色濃厚な中、東条内閣の後を継いだ鈴木内閣が誕生した所からドラマが始まる。
陸軍兵士六百万で本土決戦を行う、と言う阿南も家庭ではトランプで遊び、娘の結婚式に心を砕く、ごく普通の父親。
鈴木も阿南も天皇の信認が厚く、様々なエピソードが語られる。
鈴木が阿南を選んだ理由もそこにあったのだろう。
表面上は本土決戦を口にするが、天皇の決心を受けて心が動いて行く阿南に対して、どんどん過激な方向に転がって行く畑中たち若手。
海軍のキンタマとは戦艦大和の事か。
人間「昭和天皇」と、彼を支える者たちのドラマとして観るのが一番しっくりと来る。
本木演ずる昭和天皇は、ちょっとおとなしいか。人間宣言後の天皇は温厚な面しか見せなかったが、開戦当時は戦勝に声を上げて喜んだり、将校を叱責したりとかもあったらしい。
だが物まねに走らず、キチンと人間を描いたのは好感が持てる。
天皇の会話の中で一度だけ「あ、そう」という言葉が、確信犯的に入っていた。昭和天皇の口癖。
松坂桃李演じる畑中少佐。
初めの方では理知的な好青年のイメージだったのが、東条に決意表明を行った辺りから少しづつ変化が始まる。
あの「隷属」の解釈から陸軍のスイッチが入ったのだろうか。
それから先は理念というよりクーデター実行の方に力点を置きながら、集団の意思が整って行く。
玉音放送阻止のためのクーデター未遂。空気感としては2.26事件を思わせて、緊張する場面展開だった。
録音盤を巡る攻防はなかなか見ものだった。宮内省とNHK、どっちにあるのか?右往左往する侍従たち。
NHKを乗っ取って、玉音放送前に陸軍の思いを国民に伝えようとするが、女子局員が電源を落としてそのスイッチをヒモでグルグルに巻く。この場面は良かった。
ただ松山ケンイチのマヌケ演技にはまいった。首相官邸を襲った佐々木大尉役だが、緊迫感まるでなく「官邸に火つけようか?」なんて回りに聞いたりして、完全にギャグ。
監督に言われるままだったのだろうが、ここは不要。
そういえば、東条と天皇のやりとりがあった(創作エピソード?)・・・・
東条は御聖断に納得せず、軍はサザエの殻、殻がなくなれば中味も死ぬと言うが、天皇はスターリンやトルーマンがサザエを食う場面が想像出来るか?彼らなら殻ごと捨てる、と返す。
軍があろうがなかろうが日本は死ぬと言う事ネ。
印象としては「良く出来ている」と思える映画だったが、やはり1967年版があっての本作という位置付けからは逃げられないのだろうか。
予告編観ただけでも、あちらの方が上という気持ちが抜けない。
ミフネ強すぎ!(笑)
1967年版