監督 岡本喜八
脚本 岡本喜八、石堂淑朗
原作 筒井康隆
音楽 筒井康隆、山下洋輔
キャスト
海郷亮勝 :古谷一行
石出九郎左衛門 :財津一郎
文子姫 :神崎愛
松枝姫 :岡本真実 (新人)
玄斉 :殿山泰司
鈴川門之助 :本田博太郎
由比軍太夫 :今福将雄
中山八兵衛 :小川真司
赤坂和馬 :利重剛
アマンド :ミッキー・カーチス
益満休之助 :唐十郎 (友情出演)
ジョー :ロナルド・ネルソン
ルイ :ファーレズ・ウィテッド
サム :レニー・マーシュ
アンクル・ボブ :ジョージ・スミス
予告編
感想
アメリカで暮していた黒人奴隷が、幕末の日本に来て、音楽好きの殿様とジャムセッションをするという、いかにも「筒井的」なお話。
明治維新を背景に、ちょっと歴史の勉強も出来るというオマケ付き。
戊辰戦争が判っていると、8割方は理解出来る。
通行の難所に位置するバカ長い城。最初、殿や家臣がわざとらしく、延々と襖を開けて隣へ隣へと歩く姿に違和感を覚えたが、話の展開に従ってそれが理解される。
番組初めで不適切表現がどうとかいうテロップが出ていたが、本編で「黒ん坊」という言い方があり、昭和時代はそれで通っていたんだとナットク。
どちらにも味方せず、地下でひたすらクラリネットを吹く藩主。この厭戦気分は、これはこれで立派な反戦映画だろう。
監督が岡本喜八というのもシュール。
そういえば、例の庵野秀明の「シン・ゴジラ」は彼をリスペクトして作ったものらしい。
元ネタとなった曲(メープル・リーフ・ラグ)はデキシーランド・ジャズのスタンダードらしいが、何となく物悲しく、途中からメンバーが加わって大合奏になっても、その印象が漠然と残った。
ラジオドラマの「ジャズ大名」。根気があればどーぞ
あらすじ
アメリカ。南北戦争の最中、オレンジ畑から逃げ出したジョー。
川に落ちた拍子に昔の仲間の元に瞬間移動。
トロンボーンのジョー、コルネットのルイ(従兄)、ドラムのサム(弟)、クラリネットのボブ(叔父)の四人でニューオーリンズに行って楽隊を作ろうと考える。
最初にメープル・リーフ・ラグの単旋律を吹くジョー。それに合わせて皆が楽器を重ねて音楽らしくなって行く。
だが野火送りの行列しか見た事がない連中、音楽が悲しげ。
ニューオーリンズからアフリカに帰ろうという話をしていると、アマンドという男が、船で楽隊をやってくれたらアフリカまで乗せて行ってやると言われて付いて行く。
それから4ケ月。船上の四人。音楽は上達。更に4ケ月。西方に進む船。ようやく騙された事に気付く。
叔父のボブが病気で死ぬ。今度は北に流されている。
心中しようとしている親子三人。
子供が、小舟に転がっている黒人三人を見つける。
そこに「ええじゃないか」の集団が踊りながら通る。
ええじゃないかの騒ぎを見ている男。庵原藩主、海郷亮勝(うみのごうすけかつ)。一万三千石の徳川系小藩。
干ばつによる不作、赤潮による不漁、政局不安定による世情不安等により、多数の自殺者を出している事を憂慮。
家老の石出九郎左衛門の課題具申。薩摩から訪れた二名の侍。決起する若者の扱い。そして黒船からの小舟漂着。
小舟に乗っていた黒んぼ三名は医師の玄斉が看病。
若者らの決起に「おきゃーせ、とろくせー」と方言丸出しの亮勝は、尾張から養子で来た身。
薩摩の侍に面会する亮勝。同席する妹の文江、松枝。
つい先だって徳川慶喜が大政奉還したとの知らせが入り、慶喜は大阪城に立て籠もり、西郷先生が江戸をひっちゃき回している。
浪士二千人が江戸に集まっている。
侍の申し出は、まず我々にこの城を通らせて欲しいという事と、次にその浪士を通して欲しいという事。
庵原藩は、北に険しい峠、南に海沿いの難所という立地の中間に細長い城が立っており、近道として絶好。
二千人も通ったら床が抜ける!と九郎左衛門。よいではないか、と亮勝。
黒人三名の扱いを、本家では「何なりと良きにはからえ」
亮勝は篳篥(ひちりき)の趣味を持っており、家人はその音色に閉口(近くでは聞きたくない、下手に吹かれると居たたまれない・・・)
薩摩の二人を襲う密偵(城内で聞いていた)が銃で殺される。
隣の駿東藩との境。相手側へ死体を動かす庵原の藩兵(領外(OB)でござる・・・)
「火の粉を被らないのが唯一の生きる道」と亮勝に諭す九郎左衛門。黒き者も処分せよと、と?(えー、まあ)
三人を死んだ事にして棺桶に入れ、城内に入れる。
江戸に残した奥方が男児を誕生したとの知らせを受けて喜ぶ亮勝に、十月十日で生まれるものが一年かかるなどめでたくもない、との松枝の言葉に、不義密通だとあわてて戻る使者。
九郎左衛門が、監督不行き届きで切腹しようとするのを止め、その代わりに黒人に会わせろと言う亮勝(会いたくて仕方がない)。
地下牢での待望の面会。鈴川門之助を通訳にして、三人のいきさつを聞く亮勝。
三人の演奏を気に入る亮勝は、クラリネットを見つける。リードが壊れていると言うと、篳篥をジョーに見せる亮勝。そこから部品を外してクラリネットに付けると音が出た。
ジョーが口ずさむメロディーを吹いて見せた亮勝は夢中でのめり込む。
次第に城中の者たちが巻き込まれて音楽の輪が広がって行く。
その間にも、大阪城に急ぐ旗本、江戸薩摩屋敷へ行く浪士等が通路代わりに城を縦断。
江戸から戻った使者の話、奥方は男と逐電。だが亮勝は薩摩屋敷焼き討ちの話に反応(死者多数)。
藩兵が間もなくここに来るという。
座敷全ての畳を裏返せとの命令。どちらにも味方しない。
幕府も薩長も自由に通せ。斬り合いになっても手出し無用。
そして、地下ではジャズの大競演、地上では斬り合いの修羅場が繰り広げられる。
どさくさ紛れにミッキー・カーチス、山下洋輔、タモリらが登場。
騒ぎも収まり、官軍がしずしずと行軍する姿を見送る九郎左衛門。
時は明治元年。