結婚して数年後、2歳下の義兄が結婚する時、奥さんの方の土地に家を建てるので、実家の面倒は見られないと宣言。
義父母は後の生活不安から我々を頼った。こちらの両親は、もうその当時で20年以上前に死んでいる。
結局、当時住んでいた新築の家を売却して義父母のすぐ隣に転居した(親が隣家の中古住宅を購入していた)。
それ以来「半マスオさん」状態で暮らして25年。
今年の4月に義父の肺がんが発覚。義父は、義母にしつこく言われてかかりつけ医院に通った結果グレーゾーンで、市民病院のCT検査を経て判ったもの。
それ以来、市民病院への通院には必ず同行。PET検査で片道2時間近くかかる検査施設にも行った。
結果は右肺の腺がん(ステージ3)。転移3ケ所(縦隔、副腎、脊椎の棘突起)。
担当医の見解は、転移があるため末期との診断。ただ元々体力はあり、見た目は元気そのもの。
年齢から見て強い抗がん剤は使えない。また効果のある分子標的薬も血液検査の結果ではマッチしなかった。
そのためか、それ以降の対応は通院月1回で、その都度レントゲン検査により経過を見るというもの。
次の通院まであと3週間という8月上旬、突然背中の強い痛みを訴えた。背中の痛みは前から言っていた。だが担当医は診察でも転移があると言っただけで、その後の経過観察(CT検査等)は一切行っていなかった。痛み止めについてはかかりつけ医で継続的にもらっていた薬を使用しなさいとの指示。
その日は日曜、緊急対応で市民病院に行くも、痛み止めの座薬を出されただけで返された。
痛みについてはかかりつけ医へ、というので、翌日その医院で別の痛み止めを追加。それが効いてしまったため、1週間をそのまま過ごした。
おじいちゃんが立てないと義母が言うので見に行くと、困ったような義父の顔。足に力が入らないという。
その当時は副腎が侵されてカリウム欠乏にでもなっているのかと思い、とりあえず次の通院が来週だからと様子を見る事に。
だが症状は日に日に悪くなり、ついに全く歩く事が出来なくなった。これはただ事ではない。
間の悪い事にまた日曜。救急車は使いたくないと言うので、やっとの事で車に乗せ救急外来へ。
下半身まひという事で、まず頭部CTを実施されたが異常なし。
8時も過ぎて医師たちが集まった頃、脊椎の異常の方に話が移り、再度CT。
通院時の担当医とは別の女医からの説明では、がん細胞が脊椎の神経を圧迫しているのが下半身まひの理由との事。
通院時担当医はそれまで下半身不随の可能性については一言も言っていなかった。
足の感覚は残っており、即入院として背骨に特化した放射線治療を翌日からやりたいとの申し出。転移は判っていたのだから、なぜ4月の時点で言わなかったのか、と通院時担当医への不満が募ったが、とにかくやるべき事をやろうと承諾。
そして10日間の放射線治療が終わったが、結局足が動く事はなかった。
義父は突然下半身マヒになった事で非常にショックを受けた。排尿はカテーテルになり、また体を起こしても慣れない体位での食事は思うように摂れず、次第に衰弱は進む。
市民病院は元々治療目的の病院であるため、緩和ケア病棟を持つ病院への転院を提案される。
転院の申し込みをしてから3週間ほどして、入院可との連絡。見学の結果、こんな時だからと特別室を申し込む。
だが転院してからは、水とお茶以外は全く受け付けない。
病院の話では、元々治療のための行為は行わない前提。また食事が出来ないからと言って栄養点滴を入れようとしても、肺に水か溜まって余計苦しむからダメだと言う。
そして10月中旬の朝、病院からの電話。呼吸が荒いという。昨日は比較的元気だったのに。
1時間以内に行くと言って義母、妻を乗せて駆け付けたが、臨終には間に合わなかった。結局転院してから9日目の死。享年86歳。
教訓
かかりつけ医によるがんの疑い発見から市民病院によるCT検査。また診療が市民病院に移ってからのPET検査までは医療対応として万全。義父としても今まで一度も健康診断をやって来なかったから、転移により結局死ぬ事は特に悲しいとも思っていなかっただろう。
ただ、背骨への転移が判った時点で、それが以降に何を起こすかという事を全く示唆しなかった通院時主治医の対応は許せない。義父が下半身マヒになった後で、おそまきながら調べたサイトがココ。
背骨への転移を知った時点でこのサイトを調べていれば、せめて死の間際まで下半身マヒは防げたのではないかと悔やんでいる。
入院してからの主治医に、この通院時担当医の対応について、落ち度はなかったのか?と聞いた。
落ち度とまでは言えないが、病状の進行についての説明に不十分な点があったと思う、とのコメントはもらった。
この長寿社会、2人に1人はがんで死ぬとも言われているが、末期のQOLを確保するために、脊椎を最後まで守るという事が重要。
そしてもう一つ。がんで死ぬ場合でも、最近では痛みのコントロールがかなり進んでおり(医療麻薬)、死の直前まで痛みによる苦しみを感じる事はほとんどない。
子育ての責任も果たしたし、残り寿命の計算が出来るという点で、がんもそう悪くないか・・・・