プロフェッショナル 仕事の流儀「ふたりのキネマ〜山田洋次と吉永小百合〜」 NHK 9/27放送
感想
今年公開の「こんにちは、母さん」の撮影現場を取材したもの。
山田洋次と吉永小百合の50年以上に亘る交流がそれに重なる。
吉永小百合の映画を最初に観たのは「キューポラのある街」だったか。宇野重吉との父娘だった「父と娘の歌」も印象深い。
吉永小百合は4年ほど前「プロフェッショナル」に出演している
こういう取材は最初で最後と言っていたが、今回は山田監督メインだがら引き受けたのだろう。
俳優生活に行き詰まりを感じた頃に「寅さん」のオファーを受けた。結婚後1年間の休業も、山田からの影響が関係したか。
あの結婚の時はびっくりした。28歳で15歳上のプロデューサー 岡田太郎氏がお相手。
山田監督との出会いが、長い俳優を助けたのかも知れない。
92歳になり、杖なしでは歩けない体で演者に指示を出す山田。
彼女のご亭主と同年代。やっぱ山田監督も吉永のことを女性として好きだったんだろうな・・・
番組の最後で「監督特権」を使って吉永にハグしていた(笑)
生身の吉永小百合に出会えて、なんか得した気分。
内容
昨年10月から撮影開始。山田洋次92歳。2年振りの撮影。
スタッフは200人超え。
これまで吉永小百合との映画は5本撮って来た。
男はつらいよ 柴又慕情(1972年) - 歌子 役
男はつらいよ 寅次郎恋やつれ(1974年) - 歌子 役
母べえ(2008年) - 主演・野上佳代 役
おとうと(2010年) - 主演・高野吟子 役
母と暮せば(2015年) - 主演・福原伸子 役
タッグを組むのは8年振り。だが再会を喜ぶ様子はない。
山田90作目の映画「こんにちは、母さん」
涙と再生の人情喜劇。家族三代を描く。
一年半の撮影。この一年半撮影がなかった。
志村けんの死を経ての「キネマの神様」以来。
撮影が動き出す。
序盤、福江が牧師に恋心を抱く場面。
繰り返し、演者らに意図を伝え続ける山田。
魂が、映る
どんだけその作品に愛情を持っているか→フレームに映る
一番厳しい声をかけられていたのは主演の吉永。
セリフのない場面でも容赦なく声が飛ぶ。
吉永にとって本作品は123本目。11歳でデビューして67年。
80本を超える主演を務めて来た。今回、秘めた思いがあった。
別れ。渡哲也、高倉健・・・ 欠けていくのは辛い。
吉永を苦しめる事。セリフを覚える能力が衰えた。
78歳での主演。
自らの引き際を山田に託そうとしていた。
「山田監督の映画なら、これで最後にできるかな・・・」
撮影開始から3週間。監督が笑わないと言う吉永。
吉永への指導は厳しさを増す。
山田の、体への負担は大きい。
控室に戻る体力もなく、寿司屋のセットで休憩。
嚥下障害により食べ物が十分に摂れない。体重も落ちた。
100本も200本も出てるけど緊張する。それがあの人(吉永)だ。いいところ。
今回期待している山田。新鮮な気持ち。
宮本信子は簡単におばあさんになれるが、吉永は体幹鍛えてるからおばあちゃんになれない。
この役の時「おばあちゃんになれますか?」と聞いた山田。
今まで実年齢より若い役を求められて来た。吉永小百合という存在。小百合であり続ける、そんなプレッシャーが気の毒。
二人の出会いは51年前。
「男はつらいよ」へのヒロインオファー。
遂に登場という事で、どんなに嬉しかったか。そんな存在。
10本/年以上に出演し社会現象になっていた。
孤独を深める吉永。
「私は魂のない人形」日記に記していた。
山田からの依頼を受けたのはその頃。手紙をもらった。
「とらやに遊びに来るような気持ちで来てください・・・」
楽になった。求められる一方の現場とは違っていた。
語り合いながら作って行く。
押し込めて来たものが込み上げてきた。
正直に、生きたい
それで結婚して1年休んだ。大事な1年。もしその時休まなかったらどうなっていたか。俳優は続けられなかっただろう・・・
「山田学校」私にとっては学校。
吉永のためにと企画を考え続けた山田。
「母べえ 2008年」小百合さんの企画ならいくらでも出せる。
小百合さんと仕事をする喜び。素敵な人格に触れられる。
顔だけでなく感受性、思想、生き方含め。彼女はそんな人。
引退の事は分からないが、もしこれが彼女の最後の映画だと言われて観るほは辛いよね。そんな悲愴な映画は観たくない。
そんなのはふさわしくない。僕だってそろそろ引退だけど、これが最後の作品です、なんて言って作りたくない。
終わりを決めるのは、自分ではない
10/下旬。重要なシーンがある。
夫との出会いを、ミシンを踏みながら孫に伝える。
その人を好きになると近くなれる。心を演じる。
撮影当日の本番で咳き込む山田。撮影は中断。そして再開。
そのシーンを褒めた山田。この撮影の中で初めて。
撮影も終盤を迎えていた。
観たお客さんが、ふと元気になるような、明日から頑張ろうと思える映画が作れれば文句ない・・・
ああ笑った、腹減っちゃったという映画、夢だね。果たせぬ夢。
2月。身内だけの試写会に風邪のため欠席した山田の手紙。
映画作りはいつでも後悔の塊のようなもの
演出、演技も完成には程遠い
だがそれを超えた願い、祈りとかが作品全体から匂って来ないだろうか、というようなことを僕はひそかに祈っています・・・
試写を観終えた吉永。
もうちょっとやらないといけない。うまくならなくていいから、芝居してないように見えるくらいに透明感を持ちたい・・・
吉永は、俳優を続けたいと、言った。
9/1の映画公開日。舞台挨拶に立った山田と吉永。
もう少しやってみようと今思っています(吉永)
控室で、次の作品のアイデアを吉永に話す山田。
プロフェッショナルとは、
いいものを作りたいと思う心、じゃないかな(山田)