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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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三体Ⅲ 死神永生(上巻) 作:劉 慈欣 訳:大森 望 他

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登場人物 
程心            (チェン・シン)
艾AA           (アイ・エイエイ)
雲天明          (ユン・ティエンミン)

トマス・ウェイド
ミハイル・ヴァディモフ
畢雲峰           (ビー・ユンフォン)
曹彬             (ツァオ・ビン)

ジョセフ・モロヴィッチ
ウェスト
関一帆           (グァン・イーファン)
ジェイムズ・ハンター
褚岩             (チュー・イェン)
羅輯            (ルオ・ジー)
フレス
葉文潔          (イエ・ウェンジェ)
楊冬            (ヤン・ドン)
智子            (ヂーヅー)

ETO:地球三体協会(Earth Trisolaris Organization)
PDC:国連惑星防衛理事会(Planetary Defense Council)
PIA:PDC戦略情報局(Planetary Intelligence Agency)
SIM:相互作用物質(Several Interact Material)

超々あらすじ(最初から)
三体(一作目)
地球(中国軍)から宇宙に向けて友好のための電波が発信されたが、それを受けた三体文明が宇宙艦隊を繰り出して侵攻に向かった。
それに先駆け「智子」という攪乱分子が地球を混乱させる。
艦隊が到着するのは四百五十年後(今は危機紀元元年)

三体Ⅱ黒暗森林上巻下巻
三体文明迎撃のための「面壁計画」に巻き込まれた羅輯は、それを悪用して安穏な生活に浸った。だがそんな彼から去る妻子。
行動を始めた羅輯はある恒星の位置情報を太陽の増幅作用で発信。
危機紀元205年。冬眠から醒めた羅輯。危機は去ったと油断した人類の宇宙艦隊を殲滅させた、三体文明の探査機「水滴」
最後の面壁者として復権した羅輯は、呪文をかけた恒星が破壊された事で宇宙の暗黒を知る(宇宙では問答無用で文明が粛清される)
太陽による増幅に頼らない信号発信の方法で、三体文明との交渉に勝ち、人類を救った羅輯。

超あらすじ
第一部
西暦1453年。コンスタンティノープル陥落に隠れた高次元のかけら問題。母 葉文潔の秘密を知ってしまった娘 楊冬。
危機紀元4年。末期がんで死を待つばかりの雲天明に大金が入る。
かつて思いを寄せた同級生「程心」に星をプレゼントした天明。
その後安楽死を選ぶが寸前で止められた。その相手が程心。

PDC戦略情報局(PIA)で働く程心。「面壁計画」に並行し、三体世界に人を送る「階梯計画」のスタッフとして働く。候補者に雲天明を推薦してしまい、彼の脳が摘出される時に、星を贈ってくれた人だと知る。
その階梯計画は、アクシデントを発生。
計画の行く末を見極めるため冬眠に入る程心。

第二部
帰還した<青銅時代>隊員は「反人類罪」を適用されて投獄された。
もう一隻の<藍色空間>は情報を察知して逃亡。
<藍色空間>を追う<万有引力>は重力波アンテナを持つ。
追い付くのには50年かかり三体文明の水滴二機が監視。

抑止紀元61年。264年間の冬眠から目覚めた程心は、PIA局長だったトマス・ウェイドから命を狙われる。その理由は執剣者争い。
抑止紀元を始めた執剣者 羅輯が抑止スイッチを62年間守っているが、高齢であり交代の時期。
執剣者候補の争いを見て、自ら立候補した程心。
<藍色空間>に迫る<万有引力>だが、艦内で怪現象を経験する。
第二代となった程心が執剣者を羅輯から引き継いだ。

その15分後に水滴からの攻撃。スイッチを押せなかった程心。

三体世界からの第二艦隊侵攻が確認され智子の指図で人類はオーストラリアと火星への住居集約を余儀なくされる。
オーストラリアへの移住完了を受けて、智子は電力他のインフラを停めると通告し、人類に食料サバイバルを迫る。

<藍色空間>と<万有引力>の間で起きた四次元空間の歪みにより水滴の攻撃を阻止したクルーは、投票を経て重力波送信を行った。
移住完了翌日、地球でも重力波送信を確認した。撤退する三体人。
<藍色空間>らによる四次元空間の調査。その後帰還希望者を冬眠船<方舟>で地球に送り、艦は深宇宙に向かった。

第三部
人々は順次オーストラリアから元の場所に戻って行った。
暗黒森林理論について様々な説が出されたが、送信がなされて四年弱で三体世界が潰滅し、理論が裏付けられた。

智子が示唆する、宇宙に対する安全通知の可能性。
地球を去る智子が、最後の仕事で程心と雲天明を会わせるという。
三体の第一艦隊に鹵獲された天心。今の状態は誰も知らない。
軌道エレベーターで昇り、太陽と地球のラグランジュ点で雲天明と邂逅した程心は三つのおとぎ話を聞く。
智子が全て焼却され、三体文明との関係が断たれた。

感想
いきなりローマ帝国が出て来てびっくり。

これはまず飛ばして、最後に読んで「ああそうか」とするのが妥当。

「面壁計画」に並行して、三体世界に人を送り込む「階梯計画」が立案され、それに関わることになった程心と雲天明。
人類から抑止手段を奪ってからの三体がやる事がエグい。

全人類を一ケ所に集めての食料サバイバル・・・
惨劇が本格化する前に抑止信号が出されるんだけど。
だがそのエグい事を先にやったのが宇宙軍<青銅時代>クルー。

最大の見せ場は戦艦<万有引力>による重力波送信。

これで実際の三体世界が潰滅して、ようやく暗黒森林が実証された。
<万有引力>や<藍色空間>で起きた四次元の表現は小松左京の短編で読んだ事がある(断面が見えるとか)
それにしても疑問なのは、三体文明が四次元の事を知らないだろうと人類側が言っていること。そもそも智子は二次元展開した惑星サイズの表皮にエッチングを施し、それを十一次元まで折り畳んで陽子サイズにしたもの(三体 の33智子参照)

その途中段階の四次元を三体が知らない筈はないだろう。

まあ大した話ではないのだが・・・

この四次元の話は「箸休め」みたいなものか。

そしてムダ死にだと思われていた雲天明の再登場。
最終巻の主役は彼かな?


あらすじ
第一部
西暦1453年5月 魔法使いの死
コンスタンティヌス十一世はオスマン帝国軍の攻撃を受けていた。
そんな中、ディオレナという娼婦が持っていた聖杯が、教会の隠し部屋から持ち出されていた。現実には不可能。
彼女が、触れずに捕虜を殺したことで「メフメト二世を殺せ」と命じるコ
ンスタンティヌス。夜が明けてもディオレナは戻らなかった。
暗殺は失敗。秘密を守るため、胸を串刺しにされたディオレナ。
彼女は人類史上初めての、本物の魔法使いだったかも知れない。
魔法紀元は、高次元のかけらが接触した西暦1543年5月3日16時から5月28日21時までで終わった。
二十九日の夕方、コンスタンティノープルは陥落した。
この陥落の歴史的意義が明らかになるには長い年月を要した。P34

危機紀元1年 命の選択肢
楊冬は管制センター最上階から、運用停止された加速器を見下ろす。
偶然母のコンピュータの受信メッセージを読んでしまった。

その結果母親と三体世界に関する秘密を知る。
言い知れないほどの衝撃。だが母親に問い質す事など出来ない。
センターの端末室に戻り、担当の青年と話す楊冬。
生命生存のシミュレーション。生命が水を維持していた。
母のあの文書によれば、宇宙に生命は少なくない。それどころか生命で溢れている。圧倒的な恐怖が楊冬を襲った。P41

危機紀元4年 雲天明
回診の張医師から新聞を見せられる雲天明。
第三回全人代常務委員会特別会議 で安楽死法案が可決。
翌日隣りのベッドの李さんが「もう発つ」という。

退院ではなく「安楽」だと言った。安楽死のこと。P45

張医師に頼まれ、李さんの「安楽式」に参列した天明。
彼の腕には注射針が刺され、薬剤が注入出来るようになっている。
正式手順が始められる。質問にマウスのクリックで答える。
三つほどの質問を経て、その意思が確定され、薬剤が注入された。
儀式が終わり、雲天明は張医師に見覚えがあるのを思い出した。
姉が高校の時の同級生。姉のために動いていた彼。
姉は天明が安楽死するのを望んでいた。
独り身の天明は、入院が長引くと入院費が父の負担になる。
姉夫婦は家もなく、父の遺産に期待している。
姐さんが僕に死んで欲しいなら、そうしよう・・・P50

病室に戻ると、大学時代の同級生 胡文が来ていた。
さほど親しい仲ではなかったが彼の話で、同級生だった程心に強く惹かれていた事を思い出す。
胡文は、当時天明の飲んでいたジュースに注目した。
雑草をすりつぶしたもの。それが自分の人生を変えたという。
見せられたのは「緑色暴風(グリーン・テンペスト)」という缶飲料。

これで起業して成功した。
お前には借りがあると言って、三百万元が入ったカードを渡した。
だが彼のがんは肺から全身に転移しており、手術も出来ない。
この金の使い道を考える。姉には渡したくない。程心が心をよぎる。
その夜テレビでニュースを見た。
「星の群れ」計画の始動。企業及び個人を対象としたもの。P55

「時の外も過去」より抜粋 

星群計画--危機紀元初期の幼稚症
危機紀元初期の二十年間は「危機幼稚症」と言われた。
その代表は「面壁計画」と「星群計画」
面壁計画は後世の文明史に影響を与えたが、星群計画は違った。
国連主導で太陽系以外の特定恒星及びその惑星を販売するもの。
しかし運用を始めたとたんに打ち切られてしまった。
要は恒星が売れなかった。この計画はすぐ忘れられた。P60

程心に星をプレゼントしようと決心した天明は、胡文から程心の個人情報を入手した。秘密を確約した胡文。
体調不良を押して受付のユネスコ事務局に出向いた天明だが、予算はオークションのスタート価格にも満たない。
中国国内初の申込みであり、特例として物件を紹介された。

地球から286.5光年離れた恒星DX3906。
手続きを済ませた天明は、その恒星を見せてもらった。肉眼で見えるギリギリの星。程心へのプレゼントだが自分の名は一切出さなかった。

今日は天明にとって最後の日。
李さんと同様質問に答えて行く。程心との思い出。

彼女と何回か会話したこと。大学では共に航空宇宙工学を学んだ。

そして自分は民間企業へ。
仕切りの向こうで騒動が起きていた。安楽室に人が押しかける。
「薬剤はまだ体内に入っていない」の声。
ガラス仕切りの向こうにもう一人いた。それは程心だった。
長い沈黙。永遠に続いて欲しい。

君の言うことを聞いて安楽死は中止するが、どのみち結果は同じ。
彼女がゆっくり顔を上げ、二人は近くで見つめ合った。

美しい瞳に天明の胸は張り裂けた。だが彼女の予想もしない言葉。
「天明、知ってた?安楽死法はあなたのために作られたのよ」P78

危機紀元 1年~4年 程心
程心がエンジン開発グループに採用されてから三体危機が勃発。

化学燃料に頼った開発には意味がない。
そんな時に国連の惑星防衛に関する研究機関設立を知る。
PDC戦略情報局、略称PIAのオファーを受けた程心。P80

PIA本部に着任した程心。技術企画センター室長のミハイル・ヴァディモフ。長官のトマス・ウェイド。第一回全体会議が開かれた。
この会合で早々に長官のウェイドが「PIAは三体艦隊に探査機を送らなければならない」と宣言。光速の1%の速度は必須だと言うウェイド。
自由討議の前提で程心にも発言のチャンスが与えられた。
巨大な帆を持つ宇宙船の後ろで核爆発を繰り返し起こし推進する。
基本アイデアはスタニスワフ・ウラムによる。
他に目ぼしい案も出なかったため、本案が「階梯計画(ラダー・プロジェ
クト)」として検討された。P92
次の一週間奔走した程心は航空宇宙局からの調査報告を受け取る。
設計面での可能性は見出されたが、階梯計画は否決された。
探査で得られる情報量の少なさと、智子の存在。

探査機計画は最初から敵側に筒抜け。
この結果にもウェイドは動じず計画推進を指示。

人間を一人送るという最低限の仕様での再構築。
敵に拿捕される可能性も容認した。それは智子に聞かれている前提。
とにかく送り込めば道が開ける。P96

三体危機直前までは未来に対する期待を持つ者が多く、未来へ脱出する思想の悪影響から、冬眠技術は厳しく制限されていた。

だが三体危機で未来への魅力がなくなった今、その制限は撤廃され実用化が進んだ。P99
冬眠技術の研究を進める程心だが、人間一人の人工冬眠設備に三トンを要する。「生きた人間を送る必要はないかも」と言い出す程心。
超低温でも三体人なら蘇生時の破壊を防げるかも知れない。P103

階梯計画が再び採決される。その前に総会で壁面計画の発表。
総会が終わった時、有名な「羅輯暗殺未遂事件」が発生。
その後、階梯計画の実行可能性に関する中間報告が行われた。
NASAの予備実験では、探査システムの総重量は十キロ以下が必要。
結局可能搭載重量は五百グラム。脱力して座り込む程心。
鼓舞するウェイドは予定通り進めると言った。「我々は脳だけを送る」

「時の外の過去」より抜粋 火龍出水、連弩と階梯計画
かつて中国明王朝で開発された火龍出水。多段式火薬ロケット。

また機関銃に先駆け、連弩という兵器も作られた。従来技術の応用。
階梯計画もそれと同様、従来技術を利用して光速の1%の加速を得る。
それを実現するための技術は正確な爆発タイミング、推力を得る帆(パラシュート)とそれをつなぐナノマテリアルケーブル・・・
現有技術から引き出す必死の試み。P110

危機紀元1年~4年 程心
脳だけを送るミッションについては、三体文明の蘇生技術から見て難しくはないと説得したウェイド。提案は可決された。
問題は誰の脳を送るか。解決策をウェイドが発案。安楽死法の施行。
だが国が付けた条件は「現代医療で治療できない末期患者に限る」

かくして候補者は末期患者から探すしかなくなった。P114

四日前、程心は恒星DX3906の権利証を受け取った。星のプレゼント。
幸福感で回りに話す。ウェイドは「役に立たん」と無視。

室長のヴァディモフは祝福。P118
階梯計画の人選が進む。余命が少なく航空宇宙の知識を持った者。
同級生の繋がりから、雲天明が末期の肺がんである事を知った。

ろくに考えず天明の名を候補者として推薦した程心。
そして帰国の時、天明とこの件について話す様依頼された。P119

程心の説明を聞いた天明は、彼女が部屋から去ると笑った。

星を送ったら愛してもらえる?そんなおとぎ話。
今回の話は安楽死にはほど遠い。脳が暗黒の深淵をさ迷い、三体人に蘇生させられたら、それこそが悪夢。あらゆる実験が繰り返される。
そして程心が戻って来た。人類の一員としてこの使命を引き受けますか?自発的な任務であり、拒絶してもかまいません・・・
「もちろん、引き受けるよ」P122

危機紀元 5年~7年 階梯計画
雲天明は他の六人と共に様々なテストを受け、彼一名に決定される。天明と会ってから、程心の心に暗雲が垂れ込める。
ウェイドに天明は不適格だと直訴するが彼が一番優秀だという。
階梯計画候補者による宣誓式が行われた。体力による差はあるものの、みな宣誓を行ったが、天明だけは宣誓しないと言った。

計画を引き受けたのは別の世界が見たいから。

忠誠を誓うかは三体文明次第。
涙をこらえる程心。その答えで雲天明は最終試験をパスしたのだ。

雲天明の容体が急変し、脳切除手術を行う連絡が程心に入った。
病院の前まで来た程心。同行したウェイドが、あの星は彼のプレゼントだったと言った。感情の大波が押し寄せる。脳外科病棟から手術室に飛び込んだが、全ての手術は終わっていた。
手術担当の老医が、三体人のクローン技術で体を再生し、脳の再移植も不可能ではないと諭した。「じゃあ彼は何を食べるの?」P134

計画の冬眠カプセルに穀物の種を入れる様ウェイドに願い出る程心。
だが却下された。そしたら辞職すると言う程心。階梯計画を未来でコントロールするのに、誰かを送る必要があると言ったウェイド。
「未来に行くことに同意します」弱々しく答える程心。P136

階梯探査機が出発した。軌道上で帆が開かれ、爆発により加速される。加速は地球から木星軌道までの区間。

核爆弾が1,004個配置されている。途中、光速の1%に達したが牽引ケーブルが一本切れて予定針路から逸れた。
探査機は本来のコースからズレ始め、レーダーから消えた。
こうなると、程心を未来に送り出す意味は薄れたが、階梯計画の連絡係という任務に変わった。
冷気で朦朧となる意識。かすかな慰め。

これで私も天明と同じく何世紀も暗黒を漂う。p138


第二部
抑止紀元12年 <青銅時代>
戦艦<青銅時代>から肉眼で見える地球。
「帰って来た」「子供が持てる!」
地球連合艦隊の潰滅から14年が経っていた。
生存者たちは暗黒の戦いを経て母星と連絡を絶ったが、それから一年半、受信は行っていた。

だが危機紀元208年11月初めに、地球からの通信が全て途絶えた。

それはまるで電灯のスイッチを切ったよう。P142
宇宙は、全員が他の全員を狩る暗い森。それを学んだ子どもはかがり火をすぐ消した。その後は通信を極度に制限。
人類技術の発達により、ニュートリノと重力波を使った抑止手段が採用された。P144

地球からの送信が途絶えたことで、戦艦<青銅時代>は太陽系が三体艦隊に占領されたと信じ、遠い恒星を目指した。その十日後、地球からの帰還指示を受信するが、当初それを信じず。
だがその後智子が低次元展開してメッセージを伝えた。

地球連合艦隊の生き残りを英雄として表彰するという。帰途についた<青銅時代>だが燃料が乏しいため帰還に十一年を要した。
全てのクルーが降りた時、全員に行われた通達。
君たちはここで全員不名誉除隊となる。この汚点は永遠に消えない。

<青銅時代>事件は太陽系連隊軍法会議にかけられた。
裁判長が艦長、管制担当士官、副艦長らに聴取。地球を捨てて宇宙に出ようとする者の払うべき代償についての主張。
士官らへの聴取により、兵士の遺体は食料備蓄に加えられた事が判明した。その事を知った上で全員が食べたという。
最終的に艦長及び関連士官六名は終身刑。残り1,768名のうち作戦に反対した138名は無罪、それ以外は20~300年までの有期刑。P158
刑の執行の前に元艦長による<青銅時代>引き渡し作業が行われた。その作業の最後に元艦長が通信ジャックして戦艦<藍色空間>に危険を通知。そして射殺された。P160

元々帰還命令に懐疑的だった<藍色空間>はメッセージを受け、フルパワーで太陽系をあとにした。
太陽系艦隊が保有する唯一の恒星間宇宙船<万有引力>が追跡を開始した。三体文明が水滴による破壊を申し出たが、それは退けられ、護衛として二機の水滴が同行した。

重力波アンテナを持つ<万有引力>は、推進システムが相手とは大差なく、追い付くのに五十年かかる計算。P162

抑止紀元61年 執剣者(ソードホルダー)
264年に亘る冬眠から目覚めさせられた程心。彼女が持つ恒星が二個の惑星を持つ事が判明し所有権移転が必要になったための蘇生。
「階梯計画」のその後にニュースはなし。
雲天明の脳は茫漠たる宇宙に、永遠に失われた。
その恒星DX3906の惑星を発見したのは艾AAという女子大学院生。
国連の買戻し交渉では結局惑星だけを売却し、恒星からのエネルギー使用は無償という契約を結んだ。
艾AAは国連職員だったがその場で退職し、程心の下で働くと言った。
そして程心の選択が最悪だったと批判。P166

情報ウィンドウから、死刑宣告される者の話が。羅輯は座標を全宇宙に送信したことで、ある星系を破壊させた・・P171
ニセの呼び出しを受け、トマス・ウェイドから殺されかける程心。
執剣者になるのに程心が邪魔だという。知らない言葉。

「時の外の過去」より抜粋 執剣者--面壁者の亡霊
羅輯が三体世界に仕掛けた暗黒森林抑止は偉大な功績。
人々は抑止そのものについて考え始めた。

そして生まれた「抑止ゲーム理論」

人類が抑止者、三体世界が被抑止者。抑止行動とは三体世界の座標を全宇宙に送信し地球、三体双方を滅ぼすこと。
抑止の成否が二つの世界の滅亡に関わるため、抑止者を人類全体に求めるのが困難。それゆえ今まで羅輯個人の資質のみでシステムが支えられて来た。当時は太陽を取り巻く核爆弾の起爆スイッチ。

現在は重力波送信スイッチ。

暗黒森林抑止はダモクレスの剣。よって羅輯は執剣者と呼ばれた。
抑止はかつての、核攻撃とその報復ボタンとの関係にも似ていた。
だがこの抑止が始まってから六十年。羅輯をうとましく思う勢力もあった。面壁計画の中で彼が「呪い」をかけた結果消滅した文明があった件の罪を問う動き。だが彼はそれを黙殺し、沈黙を守った。
抑止制御権を人工知能に委ねる選択肢もあったが、智子の干渉の可能性もあり否定された。折衷案としての選択肢は執剣者の交代。P181

「時の外の過去」より抜粋  文化的反射
暗黒森林抑止後、三体世界から届く技術情報。それらは体系付けて膨大な量が送られた。彼らは人類が三体世界の水準に到達するのを熱望していた。一方人類の文化や美に対して敬意を表した。

抑止紀元10年以後、科学情報の他に映画、小説等の文化・芸術が送られ「文化反射」と言われた。単なる模倣ではなく洗練されていた。
人類は、全てがプラスの方向へ進んでいる事に感謝した。

程心の回復は早かった。現医学は脳以外のダメージなら救命できる。
容体も落ち着きAAがホログラム映画を再生してくれた。

程心の心を捉える美しい映像。のどかさと温かさ。

これらを作ったアーティストが三体人と知って驚く程心。
退院の日、AA経由で智子から面会の申し入れがあった。

三体世界から来た陽子コンピュータに制御された、日本名の「智子(ともこ)」という女性型ロボット。
彼女を訪ねて街はずれまで行った。優雅な屋敷に招かれる。

着物をまとった清楚な女性。お茶をふるまうという。

その優雅な所作に時間も忘れる。
私たち女性皆が一つになればこの世界は美しくなります、と智子。

次の会合は程心の気分を重くした。

六名の冬眠覚醒者が訪ねて来た。畢雲峰、曹彬、アントノフ・・・

二代目執剣者の候補だという。
六名それぞれが自身の経歴と競争相手への攻撃を話す。

程心が候補者として一番有力なのでけん制に来た。
現執剣者 羅輯がどんな境遇に耐えて来たかがやっと分かった。
六名の男が去った。どうしてあんなものになりたがるのか、とAA。
一週間後、二つの惑星の譲渡式に出席した程心。その帰り道、国連広場で赤ん坊を抱いた母親が駆けて来て、その子を程心に抱かせた。
「どうかこの世界をお守りください」 母親の事を思い出す程心。
母子家庭だったが、父親のことは「知らない」とだけ言われた。
「わたし、執剣者に立候補します」とその母親に言った程心。P200

抑止紀元62年 オールトの雲の外の宇宙(万有引力)
戦艦<藍色空間>の追跡を続ける<万有引力>

あと一歩に近づいていた。本艦の左右五キロ以内を航行する水滴。
ちょうど一年前智子のブラインド。ゾーンに入ったため、同時通信が不可能となり<万有引力>からのメッセージと、地球からの返信おのおので一年三ヶ月かかることになった。P203

三体世界が送り出した六個の智子は全て消息を絶った。智子にブラインドゾーンがある事自体が、宇宙が暗黒森林である証しか。P205

智子がブラインドゾーンに入ったことで<万有引力>の業務がやや増えた。智子の制御がなくなった水滴は内蔵AIで制御されている。
これ以上待てないとして加速を命じる<万有引力>艦長。

それを受けて<藍色空間>は初めて送信。主犯の者をシャトルで引き渡すから、このまま航行をやらせて欲しい・・・
だが同行している水滴二機を見て断念し、減速を始めた。
一方<万有引力>は戦闘に備えて全員を冬眠から蘇生させた。

全員が蘇生した後<万有引力>の精神科医ウェストは相談者デヴォン中佐と面会した。<藍色空間>にいる筈の少佐とすれ違ったという。
冬眠蘇生か、ブラインドゾーンであちらの映像が遮断された要因かも知れない、とウェスト。
生態エリア3区でのトラブル。補給パイプの断裂。裂け目の顕微鏡画像には微小隕石のあと。だがこの場所は船体の中央部。
隊員の居住キャビンに大穴が出現。人体の断面におののくアイク。
更に、船殻チェックのため小型艇で船外に出た隊員が、船体の尾部1/5が切り落とされているのを見る。
目を閉じ30まで数えて開くと異常なく完全な船体。

民間研究者 関一帆と話すウェスト医師。ひも理論の話をしていた。
その時、突然警報が鳴った。ウィンドウに画像が重なる。水滴の攻撃だ!一機は<藍色空間>もう一機はこの艦へ。P224

抑止紀元62年11月28日16:00~16:17 抑止制御センター
高速エレベーターが降下する。半年前、圧倒的な得票で第二代の執剣者となった程心。同行者はPDC議長と太陽系艦隊参謀総長。

地下45キロまで二十分かかって降りた。
ここが抑止センター。移譲セレモニーは地上で行われた。P227

「時の外の過去」より抜粋
執剣者の選択--生存と破壊の十分間

初期の暗黒森林抑止システムは、油膜物質と核爆弾の組合せで三体世界の座標を太陽光の明暗パターンで送信するものだった。
その後水滴の電波妨害解除を前提とした電波送信システムに移行。
そして現在は重力波によるものに進化。当初重力波送信機は三十二基作られたが、過激派組織に狙われる事件が発生し、三体世界の圧力で三基に減らされ、その一つは戦艦<万有引力>に搭載された。

暗黒森林抑止後、三体艦隊が方向転換した事は確認されたが、気がかりは十機の水滴。三体世界との攻防でその配置が決められた。
今の三体人は透明な思考の持ち主ではなく嘘、欺瞞、策略などを人類から学んだ。そして、もし暗黒森林抑止が破られた時、執剣者が決定に使える時間は十分間。P232

暗黒森林抑止システム心臓部に入る三人。
羅輯はホールの中央にあぐらをかいていた。眼前の白い壁を見つめ、今までのことを思い出していた。この五十四年間、一言も話さなかった。羅輯は自分を一個の抑止機械に変えた。P236

移譲する時間となり、羅輯に声をかけるPDC議長。

参謀長が手を添えようとしたが、彼は自分の力で立ち上がった。
羅輯は両手でスイッチを程心に渡し、彼女も両手で受け取った。
ドアの方に歩き出した羅輯。

そしてPDC議長、太陽系艦隊参謀総長も去って行った。
程心は改めて手の中の赤いスイッチを見た。長い旅のスタート地点。だがそれは十五分間しか続かなかった。P239

抑止紀元62年11月28日16:17:34~16:27:58
抑止紀元最後の10分間 抑止制御センター
白い壁が真っ赤になり、白いテキスト文字が表示された。
強い相互作用宇宙探査機群の接近を探知しました
総数:6 1機は地球・太陽のラグランジュ点L1へ航行中。
残る5機は1・2・2のフォーメーションを組み、地球へ接近中。
速度:秒速2万5千キロメートル。
地表到達までの予想残り時間:10分間。

6機の水滴は宙域に散らばるスペースデブリに紛れていた。程心は最悪の事態に備えて計画を立てていたが、今直面している事が起き得るのを、彼女の潜在意識は受け入れていなかった。

地表到達までの予想残り時間:9分間。
今から5分前、彼女が赤いスイッチを受け取った瞬間、6機の水滴は一秒も無駄にせず加速した。

地表到達までの予想残り時間:7分間・・5分間・・3分間。

地表到達までの予想残り時間:1分30秒。
「だめ--」程心は恐怖におののき、スイッチを放り投げた。
各重力波送信機の破壊が伝えられた。
「重力波宇宙送信システムは回復不能です。暗黒森林抑止は終了しました」
程心はエレベーターで外に出た。移譲セレモニーが行われた広場。
ゴビ砂漠が見える。何も変わらないが、もはや人類のものではない。
どこからも連絡は来なかった。執剣者はもはや存在しない。P250

「時の外の過去」より抜粋
暗黒森林抑止の失敗に関する考察

抑止失敗の最大要因は執剣者の人選ミス。技術面について考察。
問題はこのシステムが破壊可能だったこと。例えば<万有引力>相当が二十三基が宙域に分散していれば、全艦同時破壊は困難だった。
だが根源的な理由は、抑止力として重力波宇宙船が強力すぎた事。
もし重力波宇宙船が深宇宙から帰還出来ない様な状況になったら、それが人類の命運を握る。これは暗黒森林抑止そのものに対する恐怖。威嚇する者、される者共通の恐怖。P253

士官に頼んでエア・カーを手配してもらった程心。ゴビ砂漠に上る噴煙。水滴によるクレーター。この地下45キロに重力波送信機があった。
夕陽を背に人影が近づく。迷彩服てショートヘアにした智子だった。
あなたは予想通りに行動してくれました、と言う智子。
どうして?との問いに「宇宙はおとぎ話じゃないからよ」
なぜ自分が生かされているかを悟る。万一執剣者が死ぬことで発動する抑止を未然に防ぐ。
AAが、こっちには<万有引力>がある!と言ったが智子はそれが一時間前に破壊されたと言った。

この日のために長い期間をかけて計画が練られた。
智子の分析によれば程心の抑止度は10%程度。

もしトマス・ウェイドだったら90%。彼はとんでもないやつ!
彼になっていたら半世紀以上遅れた。
オーストラリアに行く準備をしなさい、と智子P259

抑止紀元終了後 第60日 失われた世界
抑止の終了から38日目、三体星系付近の星間雲に415本の新たな航跡が発見された。三体世界は5年前に第二艦隊を派遣していた。
そして次の星間雲に到達するのには6日間。光速に近い速度だった。彼らは一年後、太陽系に到着する。P262
三体文明の技術発展が爆発的に加速した要因推定。一つは地球文明との接触。文化面での共感が技術の飛躍的発展に繋がった。また、太陽系以外にも送った智子ミッションによる他文明発見かも。P264

三体世界の人類に対する政策は、オーストラリアと火星が人類に与えられ、文明存続はなされるだろう。四年後の占領に向けての移住作業は一年以内に行わなくてはならない。
劣勢を立て直すべく人類は水滴に対抗する相互作用物質SIM(Several
Interact Material)の試作を進めたが、計画は全て水泡に帰した。

かくして大移住が始まった。P267

抑止紀元終了後 第2年 オーストラリア
オーストラリアに来た程心。大都市にも住めたが普通の移民を選んだ。AAも無理やりついて来た。居住スペース狭小、食料は配給と悲惨。程心の素性を知る者からの厳しい迫害。
そんな折り、先住民アボリジニの老人フレスが自宅に住むよう勧めた。やっと穏やかな生活を手に入れた程心とAA。P272
その翌日思いがけない行動をとった程心。ウェイドに会いに行った。
懲役30年で服役中だった。作業中の彼に会うと「移住が完了しないうちにオーストラリアを離れろ」P274

移住開始から三ヶ月。移住者は十億人を超えていた。

住宅・食料問題が噴出。最も危険なのは無政府状態。P275
宇宙への移住も進展。現宇宙滞在者は民間人50万と太陽系艦隊100万。艦隊は逃げるチャンスもあったが智子の命令に従った。
民間人は地球に戻り、艦隊の100万は火星へ異動した。P277

フレスの家で3Dホログラムのテレビを見る程心。配給所の様子が中継される。輸送機が物資を下ろすと、それに群がる群衆。

争奪で収拾がつかない。そこに迷彩服姿の智子が姿を現す。
「クズどもが!」と言って背中の刀を抜き放ち、男どもを斬り捨てた。
老人フレスから昔の話を聞く程心。ウェイドから聞いた話をするが、今はオーストラリアからは出られないという。人類の海上部隊が封鎖に加担している。P283

移住が始まって半年。世界人口の約半分、21億人が移住した。

時に大規模な虐殺が行われ、キャンベラで50万人が殺された。
そのような経緯を経て一年後「大移住」が完了した。P288
この時点でオーストラリアの人口は41億6千万。智子が人類自らを使っての地球治安軍を招集。移住生活を逃れるための500万人が組織された。その一方で地球抵抗運動も行われた。

かつての執剣者候補六名もメンバーであり、畢雲峰、曹彬、アントノフの三人が生き残っている。絶望的な中で唯一の希望。P288

明け方目覚めた程心。外に出ている者が黒く立ち昇る煙を見る。

治安軍による大規模な空爆。
程心が何とか自転車で省政府まで行くと、巨大な情報ウィンドウに連邦議会議事堂が映し出された。
智子が国連総会の緊急特別会議を招集した。
大移住が終わり、今後三ヶ月の間に電力はじめ現代技術を全て禁止するという。

現在食料自給は多大な電力に頼っている。「食料はどうなる?!」
との抗議に、まわりじゅうに食料がある、と智子。
今後三ヶ月で残った五千万の勝者は文明的な生活が送れる。
喧噪の中、突然目が見えなくなった程心。

治安軍に頼んで智子と話す。艾AAとフレスを助けてやって欲しい。

それを引き受ける智子だが、自身に無頓着なのに「まわりの状況が見えないの?」実際見えなかった。
人食いは始まったのだろうか?大部分の人は人間を食べるわけがないと信じていた。P302

抑止紀元62年11月28日16:17:34~16:27:58 

抑止紀元最後の10分間
オールトの雲の外の宇宙。<万有引力>と<藍色空間>
参謀総長の命を受けて重力波送信システムの監視を行っていたジェイムズ・ハンター。艦内で最高齢の78歳。
アンテナ心臓部の振動弦はあと二ケ月で寿命が来る。
それを前にして本艦と二機の水滴は智子のブラインドゾーンに入り、地球とのリアルタイム交信と<藍色空間>の画像が消えた。
艦内で奇妙な現象が多発し、調べを進めたハンター。

特に気になったのはデヴォン中佐の見た幻。
重力波送信システムの制御ユニットは船尾にあり、その近くを仕事場にしている関一帆博士と親しくなって監視を続けたハンター。
そんな時に警報を受けた。水滴の衝突まで十秒以上ある。だからこそ30秒後に警報が解除された時、却って大きな危険だと判断。
腕時計の破壊ボタンを押した。だが何も起こらず。
「作動不能。自己破壊モジュールが見つかりません」P312

二機の水滴はどちらも目標に接触しなかった。<万有引力><藍色空間>をかすめて飛び去った。<万有引力>艦長が幹部を集めて軌道確認。分析によると水滴が何らかの力を受けてコースを変えた。

減速した水滴の先にいたのは<藍色空間>の小型シャトル。

水滴のコースを変えさせて<万有引力>を救ったのもこれ。
その後シャトルから二人が出て来て水滴を調べ始めた。

水滴は死んだように輝きを失っていた。シャトルが水滴を押す。
艦長は自分の腕時計のボタンを押した、ハンターと同じもの。
「作動不能。自己破壊モジュールが見つかりません」

船尾に向かった艦長。P316
重力波送信制御ユニットに最も早く到着したのはハンター。

だが先客がいた。それは<藍色空間>の朴義君少佐。

デヴォン中佐の見間違いではなかった。
説明しようとする相手を撃つハンター。だが艦内専用のため致命傷は与えられない。更に撃とうとした時にモロヴィッチ艦長が飛び込んだが、驚くべき光景を見た。

ハンターの心臓が宙に浮いている。彼の胸に傷はない。
彼の命は助かると言った朴少佐。

その間に<藍色空間>の武装兵が飛び込んで来た。P318

<藍色空間>のホールに集まった千四百名あまりの乗員。その中に<万有引力>の乗員百数十名。<藍色空間>艦長の褚岩が語る。我々の間にはまだ溝があるが、喫緊の問題処理が必要。
三体星系近くの星間雲で観測された航跡。

光速で進む第二艦隊。多分四年後には到達。
地球でも何かが起きた。具体的には水滴が我々に攻撃を仕掛けてきた持。それは地球で執剣者の引き継ぎが行われたタイミング。

水滴はブラインドゾーンに入る前、智子から指示を受けていたに違いない。準備された攻撃。

褚岩は抑止に失敗したと言った。地球人類はその能力を失った。
そして<万有引力>の重力波送信能力はあと二ケ月しか保たない。
選択肢は一つ。重力波宇宙送信。

様々な意見が出る中、褚岩がここの全員による投票での決定を提案。賛成が総数の2/3--944票に達したら送信を開始する。
投票が始まる。順次数字が増えて行く。そして数字が943になった時にボタンを受け取った兵士が押すのを躊躇した。

その手の上から押そうとする手が伸びる。

それを制止したモロヴィッチ艦長が手を添え、ボタンが押された。
重力波送信器が起動した。強い振動が12秒続いて終わった。
二つの世界に対する死刑判決は光速で宇宙全体に広がった。P325

抑止紀元終了後、第2年
「大移住」完了の翌朝 オーストラリア
周囲の喧噪が収まって、智子と誰かの声。だが遠すぎて分からない。
皆の歓喜の声が聞こえた。そして程心を呼ぶ声が。
皆が元いた場所に帰るのだという。

<万有引力>が全宇宙に向けて重力波送信を実行した。
三体人は逃げ始め、三体星系の第二艦隊も方向を変えた。P328

抑止紀元終了後、第1日~第5日
オールトの雲の外の宇宙 <万有引力>と<藍色空間>
空間の歪みはこの<藍色空間>に現在三つあるという。案内されるモロヴィッチと関一帆は1メートルほどの丸い穴の前に来た。褚岩が手を差し入れるとそこから先が消えた。消えた腕の断面が見える。

中に入った褚岩。そしてモロヴィッチと関一帆が引き込まれた。
ここは四次元空間。船の船首から船尾まで全体を見通せ、船室の中味が見えた。人の内臓も骨格も見える。触ることも出来るが注意が必要。二人はそのうちに空間そのものを感じるようになった。
促されて穴の向こうに戻った二人。この空間について説明する褚岩。
これは「四次元のかけら」とでもいう場所。僕らの三次元宇宙が大きな紙だとしたら、あの場所はその紙についたシャボン玉。
褚岩は続ける。我々は四次元空間から水滴を攻撃した。

あれがどんなに強大でも所詮三次元。
三体世界も「四次元のかけら」を知らない?「おそらく」P339

<藍色空間>は「四次元のかけら」を研究していた。

<万有引力>も加わり本格的に作業が進んだ。
その四次元空間の中に望遠鏡を入れて観測。ドーナツ状の物体が見つかった。三次元換算で直径100キロほど。切り口の径は約20キロ。そして深部にピラミッド形、十字形等の自然でないものも見えた
その後二隻の宇宙船では流星塵の衝突事象が発生した。

四次元空間では艦内の設備がむきだしになるため無防備で危険。
褚岩は安全のため二隻を「四次元のかけら」から撤退させる事を決定したが、研究者の関一帆が憤慨。P342

結局宇宙艇での観測が行われた。場所は二隻の間の歪曲ポイント。あのリングを目指す。三時間航行しても点にすぎないリングだったが、不意に硬貨サイズになった。更に二時間経つと巨大構造物に。

近づいた状態で予定していたビットマップの信号を送った。

反応があり数回のやりとり。
言語データベースを送る案が出て、母船の承認を得た。
通信はニュートリノ信号で<万有引力>から送られた。
先方から「我是墓地(わたしは墓だ)」の表示。
対話のやりとり。そして

海が干上がったら、魚は潮だまりに集まる。潮だまりも干上がったら、魚は全て消え失せる。
海を干上がらせた魚は、海が干上がる前に陸に上がった。一つの暗黒森林から別の暗黒森林に移動した。

更に続く
低次元空間は高次元空間の脅威にはなり得ない。だが同一空間を共有する者同士の間では至るところに暗黒森林がある。
助言を求めると「すぐにこの潮だまりを離れろ
その後リングは沈黙。
褚岩の指示で艇は帰還。

両艦は「四次元のかけら」から撤退する方向に加速した。
加速を始めて五日。全員が三次元に戻った。

船内のどこにも歪曲ポイントはなかった。
「四次元のかけら」の境界がリングを残したまま後退した。

そして置き去りにされたリングが三次元空間に入って来た時閃光が放たれ、その後一本の線を引いたようになった。
リングは三次元崩壊ののちに普通の元素に変化した。重元素のいくらかは金属として回収できた。P356

両艦は、自分たちの未来を考える時期に来ていた。二つの選択肢。
二隻の船と共に航宙を続けるか、太陽系に帰還するか。
別に冬眠用の方舟が建造され、推進用核エンジンが搭載された。冬眠状態での帰還にはおよそ35年かかる。戻る選択をしたのは200名。
一ヶ月後二隻と方舟は別々に出発。P357

第三部
送信紀元7年 程心
オーストラリアから帰国して六年が経っていた。

網膜壊死に進んだ程心の目の網膜再生のため五年間冬眠。
オーストラリアに集まった人々は母国に戻り、生活の再建を始めた。
学界での暗黒森林理論に対する疑問。星系187J3X1の破壊が外部によってなされたとの確証は得られていない。更に、三体世界が威嚇に怯えたのが暗黒森林理論によるものかは不明。
送信紀元が始まってから、世間では暗黒森林理論が被害妄想だとの考えを持つ者が多くなった。P366

事態収拾と共に、抑止に関する総括が行われ、執剣者がシステム起動しなかった点が糾弾されたが程心個人に対して世論は寛容だった。
だが程心の心は闇に閉ざされ、ますます言葉少なになった。
そんな中、フレスからの電話が彼女にとっての慰め。
その夜遅く、フレスからの電話。急いで外を見てくれという。
夜空に青い星が見える。それが急激に輝きを増し、ピークに達して月よりも明るくなった。

だがそれは次第に赤へと変わって暗くなり、30分ほどで消えた。
暗黒森林の妥当性は、三体世界の殲滅によって証明された。P370

三体世界は、送信紀元が始まって三年十ケ月で破壊された。

彼らが受けた攻撃は星系187J3X1と同様光速に近い物体が、三つの恒星の一つを破壊した。その時惑星も殲滅された。
<万有引力>の信号発信、周囲宙域での航跡等から見て、恒星を破壊した者は宇宙船から発進した。暗黒森林攻撃の出所は予測不能でかつ、いつ来るか分からない。P372

三体世界滅亡から三日後、程心と羅輯は突然智子からお茶に招かれた。智子の断片的な話と人類側の観測で、三体世界滅亡の状況が概ね判明した。太陽爆発により、星系内の全てが潰滅。

残った二つの太陽で二重星系となった。
残った三体人は、艦隊を含めても全人口の千分の一以下。
人類に残されている時間を聞く程心。メッセージは三体星系の座標だけであり、地球が発見されるまでタイムラグはあるでしょう。
彼らの攻撃法は「気軽」で「経済的」なものだった。
羅輯は一つだけ質問をした。
三体世界が危険だというしるしとは逆に、ある文明が自分たちは無害だと言う通知は可能か?しばらくの沈黙の後、智子は答えた 「はい」
これ以上話すことは永遠にありません、と言った智子。P382

智子、程心、羅輯の三者会談は公表され、皆が考え始めた。
宣言派の主張は文字通り地球文明は安全であるとの宣言送信。

だが誰が信じるか。大多数は自傷派。脅威となる可能性を自ら断つ。低技術社会、積極的な知的能力の低下。

他にも様々な案が出るものの、そんな事は達成不可能。
もう一つの疑問。なぜ智子はそれを教えたか?元々侵略を仕掛けたのは三体世界。地球の安全宣言は、三体文明にとっても安全。P387

送信方法もわからないまま、安全通知に対する熱は醒めなかった。
様々な団体による活動、テロ事件も散発。そんな中で宗教も復活。宇宙教会も建設された。智子をその信仰対象として崇めるものも出た。

絶賛されていた<藍色空間>に対しても再び態度を変えた民衆。

智子にその殲滅を願うが、無視される。
程心は再び偉大な女性として崇められた。

新時代のマリア像。だがそれが彼女の心を死へ向かわせた。
彼女が持つ一つのカプセル。

冬眠用だが設備併用しないと自殺薬になる。
フレス、AAとの会話も最後だとの思い。
そんな時に智子からの連絡。また羅輯と共にお茶の招待。
二人にお茶を点てたあと、智子は出発すると宣言した。

そして最後の使命を果たすと言い、程心を見つめた。
「雲天明があなたに会いたいそうです」P397

「時の外の過去」より抜粋  長い階梯
危機紀元のはじめ、防衛のために進められた「階梯計画」
それは発射時にケーブル断裂によりコースを逸脱し行方不明になったが、三世紀近く経って三体世界の第一艦隊に鹵獲された。
雲天明の今の状態は知る由もない。だが彼の事が知られた時、人々は救済の天使が現れたと反応した。P401

送信紀元7年 雲天明
軌道エレベーターで宇宙に向かう程心。

航空宇宙エンジニアだったが、宇宙に出るのは初めて。
到着してから静止軌道ターミナル・ステーションに案内される。更に進んで小さな宇宙艇の前に着いた。透明な半球の窓。前方に緑、赤、黄の表示。情報の適否によりランプが点き、最悪爆破されるという。
艇に一人乗って出発した程心。目的地は地球と太陽間の引力均衡点(ラグランジュ・ポイント)五時間ほどかけてその場所に到達。
そう遠くないところで智子が二次元展開し、前面に球状の全反射鏡面を作り出した。そして黄金色の麦畑が現れた。
麦畑の向こうから男が歩いて来た。雲天明だった。

若く見え、少し日焼けしている。微笑む顔は喜びに溢れている。
少しづつ会話が始まる。小麦の種は程心が出発の時託したもの。

土をつかんで、これは隕石で出来ていると言った時、黄色の警告。

監視者の存在。
その後も天明が少し話そうとすると黄色ランプが点灯。

思うように情報が伝えられない。
天明が唐突に小さい頃お話しを作ったと始める。話を合わせて、私が作った話を聞かせてと誘う程心。彼は三つの物語「王宮の新しい絵師」「饕餮の海」「深水王子」を話した。
まもなく別れの時。次は僕たちの星で!の言葉で映像が消えた。

小型艇が戻った時、狭い部屋に通された。ここは智子遮蔽室だという。
参謀総長に指示されて会話の再生を行う程心。供述は五回繰り返された。それは薬剤を使い半睡眠状態で行われた。
 
同じ頃、地上では智子の屋敷が燃えていた。智子のアバターとしてのアンドロイドも同時に焼却された。太陽系内の智子は全て撤退するとの宣言。新たな智子建造は困難なはず。
三体と地球の関係がこれで一切断たれることになる。P430

 


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