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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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海底二万マイル  1954年

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カーク・ダグラス氏が先日亡くなったので、作品を紹介してご冥福をお祈りします。

 

監督 リチャード・フライシャー
脚本 アール・フェルトン
原作 ジュール・ヴェルヌ
製作 ウォルト・ディズニー


キャスト
ネッド・ランド       カーク・ダグラス
ネモ艦長        ジェームズ・メイソン
アロナクス教授    ポール・ルーカス
コンセイユ(助手)   ピーター・ローレ
ファラガット艦長    テッド・デ・コルシア

 


予告編

 

感想
自分が子供の頃は「サブマリン707」の関係からか、プラモデルも潜水艦モノが多かった。ゴム動力で、潜望鏡と昇降舵がセットになったメカで浮上ー潜航を繰り返すもの。

そんなシリーズの中に本作の「ノーチラス号」もあった。
さんざん遊んだくせに、物語そのものは今回初めて知った。ただ巨大イカが絡み付くシーンなんかは挿絵で良く見かけていたが・・・

 

少年少女向けのSF大作。1954年という時代(戦後9年)を考えると、良く作り込まれているなー、と感心。

船内の、潜水のための出入りの部屋に、ちゃんと与圧を与えているところなど、考証がしっかりしている(スターウォーズなんかとは違う・・)。
またアクアラング式の潜水着は、当時としては先進技術だっただろう。

 

この映画で想定している新エネルギーは「原子力」のこと。

ネモが動力室でアロナクス教授にエネルギーを見せるところで防護服の様なものを着せているのにその片鱗が見える。

ただ、それ以外の遮蔽が一切ないのがご愛敬だが。
米海軍は、同年に就航した初の原子力潜水艦に「ノーチラス号」と命名したそうだ。


ネッド役のカーク・ダグラス。シブい役どころが多い人だが、こんなにひょうきんな役をやっていたとは驚き。

世界的なエネルギーの発明を行った天才が、その才能のために迫害を受け、海底に逃れて自分の世界とした。

宇宙と並んで、海底は人の知的好奇心をくすぐる貴重な存在。
映画は、海底の魅力も十分伝わる構成となっており、そちらの面でも楽しめる。

 

ツッコミ
潜水艦にパイプオルガンかよ!(曲はバッハの「トッカータとフーガ」)
とても潜水艦と思えない設計にビックリ。

オマケ
推奨はしませんが・・・(全動画
英語字幕付きなので、語学の勉強になります。

 

 

 

あらすじ
1968年。航海する船が、謎の怪物に襲われて沈没する事故が多発。生き残った者の話に尾ひれがついて船員が集まらず、運輸会社は頭を抱える。騒いで取り押さえられる銛打ちのネッド・ランド。
調査のためのサイゴン行きが中断されて困っている、海洋学者のアロナクス教授と助手のコンセイユ。
米政府の役人が来て、アロナクスにこちらの船に乗ってもらえないかとの申し出。怪物の噂の真偽を確かめるための航海。

調査が終わればサイゴンに送るという事で、乗り込むアロナクスとコンセイユ。ネッドも船員として入る。

 

航海一ケ月、南太平洋の海域を回ったが、何も出ない。責任者のファラガット艦長は、元々怪物を信じておらず、人を集めて帰港を宣言。
そんな時に、近くで船が襲われて爆発、沈没するのを目撃。

そして緑に光る目を持つ怪物が猛スピードでこちらに迫る。


ネッドが銛でそれを目がけて打ち込むが、船は衝突されて沈没。

アロナクス、コンセイユとネッドは残骸に掴まって漂流。

流されるうちに鋼鉄製の構造物に辿り着く三人。アロナクスは潜水艦だと気付く。
入り口が開いており、中に入るが誰もいない。

船底にある窓から外を見ると、潜水服を来た者が多数歩き回っている。どうやら葬式をしている模様。


彼らが戻って来る気配に、慌てて隠れる三人。

だが見つかって引き出される。

この艦はノーチラス号。支配しているのはネモ艦長。

 

訳あって人間界を捨てたという。アロナクス教授の事は知っており、一応彼だけを客として残すと言ったが、アロナクスは拒否。
そのため三人は外に出されて、艦が潜水を始める。

三人の姿が水没した時、ネモ艦長は浮上を宣言。
回収された三人。なぜ助けた?と聞くアロナクスにネモは、仲間のために命を投げ出す心が重要だと言った。あんたは役に立つ、とも。

 

客の待遇として扱われるが、場の空気を乱すネッド。
出される食事は全て海から集めて来たもの。

地上のものは使わないという。葉巻も海藻から作る。

クレスポ島に立ち寄り、そこの海底で食料を調達する船員たち。

ネッドとコンセイユは使役に出され、アロナクスも興味があってネモと潜水服で出る。


海草、魚、ウミガメなどを捕って帰艦する船員たちだが、ネッドが沈没船を見つけ、コンセイユを引っ張ってその中に入る。

財宝の入った箱があり、それを持ち出そうとするネッド。

だがサメが襲って来る。ネモの水中銃で辛くも助かったネッドたち。

 

戻って叱責されるネッド。

 

財宝類はいくらでもあり、単にバラストに過ぎない、と保管庫の財宝を見せるネモ。

ノーチラスの動力室にアロナクスを案内するネモ。

今まで発見されていない、真のエネルギーが動力源。
科学の限界を超越した発明であり、世界のために利用すべきだと言うアナクロス。
ネモは、地上には飢えと恐怖が充満し、争いが絶えない、水に潜れば平和な世界がある、と言う。真の独立は海中にある。

怪物と思われている方がマシと言った。

 

その説明をするために島に上陸して、ある光景を見せるネモ。

ここはロラパンディー収容所。ここでは硝酸塩とリン酸塩が作られており、白人の墓場と言われている。

これらは爆弾の材料となり、かつてネモや船員たちもここで働かされていた。
ネモたちはこの島から脱走してバルケニア島に逃げ延び、そこでノーチラス号を作った。

島から物資を積んだ船が出航。

ノーチラス号はその船に体当たりして沈没させる。

 

船乗りが殺された、何とも思わないのか、と憤慨するネッド。

それに答えるネモ。何千もの仲間が殺された。

妻と息子も、エネルギーの秘密を暴くための犠牲にされた。

私には憎悪が動力源。同情するアロナクス。

 

部屋に戻った三人。いつの間にかアロナクスの事をキャプテンと呼ぶようになったコンセイユ。

ネモは人殺しを楽しんでいる、教授もネモに丸め込まれている。
二人で相談するネッドとコンセイユ。何とか逃げ出そうとする相談。

 

バルケニアという行き先を確認するためにネモの部屋に忍び込んで、そこの海図から緯度、経度を割り出してメモを取る。

 

魚の標本を入れた瓶をカラにしてそのメモを入れ、何個も外に放り出すネッド。

ニューギニア海域で座礁したノーチラス号は、舵の修理でしばらく動けない。近くの島を見て、標本を取りに行きたいから上陸させてくれと申し出るコンセイユ。許可されたが、食人種がいると警告するネモ。

 

ボートで上陸して、一人で逃げ出すネッドだが、食人部族は本当におり、集団になって追いかけて来る。ボートで何とか逃げ戻る二人はノーチラス号に入り込むが、ネモはハッチも閉めずに余裕。

土人が中に入りかけた時、ネモがスイッチを入れると、入り口や甲板に微弱電流が流れて土人たちは逃げて行った。

 

逃げるつもりだった事がバレて閉じ込められるネッド。

軍艦に見つかり、砲撃を受けて深海に逃れたノーチラス号だが、そこで巨大イカに捕まった。船体に電流を流すが、平気で絡み付くイカ。

 

浮上して、銛を手にして戦う船員たち。ネモが先頭に立って銛を持つ。一方閉じ込められた部屋から脱出するネッド。
ネモがイカの急所に銛を打ち込んだが、まだ倒せない。

そのうちに海に投げ出されるネモ。
そこにネッドが駆け付け、銛をイカの急所に打ち込む。

そして海に飛び込み、巻き付いたイカの足を外してネモを助ける。

 

助けてくれた事に初めて感謝するネモ。
素直になりなさい、助けられて感動する気持ちがある、と諭すアロナクス。世界はもっと複雑、そこまで完璧なものはない。

 

地上はまだ不完全だが、と前置きしながらも、アロナクスに研究の秘密を明かす使者になって欲しいと頼むネモ。

だが迷っている。アロナクスに対し、楽観的すぎると注意。
その末に秘密を全て見せる、とネモ。

だがそのエネルギーは人類を破滅にも導く。

ノーチラス号がバルケニア島に近づいた時、そこに多数の軍艦が居るのを見つける。
待ち伏せされた。軍隊が既に上陸している。

 

最悪の事態だ、全てを破壊する、とネモは海底の入り口に艦を向けた。

火口湖に浮上した艦からボートで湖畔の研究施設に向かったネモ。

そして再び出て来て、艦に戻ろうとするところで背中を撃たれる。
島から脱出し、潜水降下するノーチラス号。

船員は全て殉死を決心している。
ネッドが操舵室に入って、艦を浮上させ、教授とコンセイユを助けてボートで脱出する。

 

大爆発する島。そしてノーチラス号も静かに沈んで行った。
アロナクスの呟き。あなたは未来への夢。

未来に希望はある。いつの日か・・・・・

 

 

 


火の鳥 望郷編   1976年

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少し中断していたがマンガ版「火の鳥」のレビュー再開。
過去レビューについては当ブログのINDEX→読書・国内→手塚治虫を参照方。

 

感想
少年マンガらしからぬ、近親相姦や人食いを扱っており、かなり踏み込んだ取り組み。
近親間での生殖は、劣性遺伝子の重複による奇形の発現等があるが、本作では女子が生まれない現象となり、子孫を増やすというロミの願いを砕く(注:今は優性を「顕性」、劣性を「潜性」とされている様だ)
そこで火の鳥は多種族との混血を一つの解決策として、「不定形生物(ムーピー)」一体を送り込む。
その結果エデナの町は栄えるが、望郷の念が高じてロミは地球に向かう。コムの思念で飛ぶ岩の宇宙船。

ロミの心に共鳴したことでその能力が現れた。

 

結局、夢にまで見た地球は一日しか味わえなかったが、それで満足して息を引き取ったロミ。
ここに出て来る牧村は「宇宙編」で、火の鳥の血を舐めたためどんどん若返って行く運命を背負う彼が、それを経験する前のエピソードに相当するもの。
またムーピーも以前の作品でたびたび出て来るキャラクター。

火の鳥は、子孫繁栄に少し手を貸し、エデン17の地殻変動を抑制するという手助けをしたが、それも最後には自然に任せた。
滅びるならそれもやむなし。生命の流れをただ見守るだけ。
突き放している様でもあるが、命に対する深いリスペクトあっての事だろう。

 

 

あらすじ
地球を脱出して「エデン17」という星に辿り着いたロミとジョージ。

30世紀フォックス宇宙不動産会社の斡旋によるもの。
ガイドの男は、簡単な説明をして去って行った。
周辺地域を回るジョージだが、ガイドの説明はデタラメで、廃墟となったドームを見つけ、騙された事に気付く。
とりあえず水を確保するためにボーリングを始めるジョージ。

塔が倒れて下敷きになったが、水が出たことでロミに将来を託して死ぬジョージ。

ジョージの忘れ形見を産んだロミ。男の子をカインと名付けた。
今のままではもう子供を産めないロミ。それを空から見つめる火の鳥。
ロミは召使いロボットのシバに命じて冷凍睡眠室を作り、長い眠りについた。

 

二十年の歳月の後、カインは立派な青年になる。

目覚めるロミを拒否するカイン。「母さんはシバ・・・」


シバを破壊し、強制的に生活を始めるロミ。

料理は格段に美味く、次第に受け入れるカイン。
ロミはその後何人もカインの子を産むが、七人生まれた子は全て男(ロト、リウ、エベル、パロ、テラ、ハラン、セブ)。
ある日山崩れに遭ってカインが下半身不随になる。

子孫を繋ぐため、もう一度眠ってくれと頼むカイン。

眠りについたロミに代わって子供たちに知識を授けるカイン。
だがエデン17に凄まじい日照りが襲い、食料が尽きてしまった。

生き残った者の誰かが食料になるくじを引こうとする時、カインが犠牲になる事を自身で提案。ロミが眠る部屋のそばで息絶えるカイン。

それぞれの子供は才能を持ち、各方面で貢献した。

 

眠りから醒め、母親として子供たちを仕切るロミ。

だが七番目のセブがトラブルの元。一番大きく皆の三倍食べる。

セブが、自分の思い込みでロミに女の子を産ませられると言う。
兄弟のいさかいを見て嘆くロミ。

 

ジョージとの思い出に浸るロミ。出会ったのは高校の時。

大学の研修で島に来た間丈二。すぐ恋に落ちる二人。
丈二の任務は、増え過ぎた人口を調節するための人工島建設の下調べ。だが壊された自然に絶望するロミ。大学の研究室から十億を盗み出し、ロミを連れて宇宙に脱出したジョージ。

二流の宇宙不動産会社の手配でこの星に来た。

 

ロトの子供を五人産んだロミだが、みな男。そして六番目も男。
思いあまってロミをさらうセブ。俺なら女の子を産ませられると言うセブを諭すロミだが、一人別れるセブ。

残った兄弟が、女しか産まれないのは動物を食べないせいだと言って、セブをその肉として考えた。

それを知ったロミは絶望して、再び冷凍睡眠に入る。

 

その状況を見た火の鳥は、六千光年離れた星に住むムーピー族に相談する。ムーピーはどんな望みの体形にもなれて、相手の種族の子孫も作れる。恩義のあるムーピーの長は、一体を提供した。
ロミの夢に入り込み、混血を受け容れさせる火の鳥。

 

セブの前にロミの姿で現れるムーピー。そして生まれる混血の子供。目が見えないが同等の感覚を持つ。

何十年も経ち、ロトたちは悪い病気で死に、残ったのはロトの息子六人だけ。セブが自分とムーピーとの子供(女の子)を連れて来た。
子供たちを置いて山に戻ったセブ。

 

長い眠りから醒めたロミは、立派な農園を見て驚く。地球人とムーピーの混血の人間は二百人を超えていた。教えを受け継いで「ロミ王女」と慕うみんなはエデナという町を作り始めた。

 

幸せな毎日のロミだが、望郷の念に苛まれる。

混血の子供コム。奉仕のきっかけでロミと知り合う。

地球への思いを訴えるロミの事を、ムーピーの母親に話すコム。

母から聞く、岩に乗って来た人の話。
ある日「禁断の谷」からの呼びかけでそこに向かったコムは、岩の乗り物を見つける。その話をロミにするが、側近が退けた。
その晩、ロミがコムを訪ね、その岩で地球に連れて行って欲しいと懇願。予感のあった母親はオリジナルのムーピーであり、ロミの身代わりを引き受けた。

 

コムの深層意識で飛び続ける岩の宇宙船。
氷の輪を持つ星では、雌雄同体のスロン人が住む。

その一組ノルヴァを受け入れる一行。
そこに宇宙船が近づき、人が入って来る。地球人の連絡員、牧村。
宇宙船が流されて同行を余儀なくされる牧村。

 

ベルドベ3という星に近づく。牧村がタブーだと言うのに構わず上陸するロミ。だが木も草も変質。危ないところで牧村が船を脱出させる。
いつの間にか岩の宇宙船はワープに入り、銀河系以外に飛び出した。

 

再び地球そっくりの星を見つけたが、巨大で奇怪なものに襲われて脱出。

また現れた地球そっくりの星。

勇んで地上に降りたロミは感電して死んでしまう。

牧村が地球に関する事実をコムに話す。盛んにおこなわれた宇宙移民だが、例外なく移民は地球に戻りたがる。


今ではどんな理由があろうと入国禁止。破れば殺される。
それを聞いて嘆くコム。

そんな様子を見た火の鳥は、彼らを地球の近くに置いた。

 

銀河系に近づいた事を驚く牧村。近づいた宇宙船から乗り込んで来た商人のズダーバン。地球移民の子孫。
ロミを生き返らせたいコムをムーピーの混血だと知って、コムの母親と引き換えだと言うズダーバン。
牧村やノルヴァにも声をかけるズダーバン。
装置のある星まで行くと、とにかくロミの手当てを求める牧村。

治療装置に入れられるロミ。

 

体が若返るロミ。目覚めて自分の体に喜ぶロミ。
若返り法があるなら不死身になりたいという牧村に、火の鳥の話をするズダーバン。
信じない牧村に、地球行きのロケットを引き渡すズダーバン。

地球に着き、ロミとコムをダミーのロボットに入れて、隊員として入国手続きをする牧村。
感謝するロミに口を滑らせる牧村。ズダーバンの話では、若返りの副作用として寿命が三日しかもたない。


最後の時間を過ごせと言ってロミたちと別れ、宇宙船に戻ろうとした牧村だが、船はズダーバンに奪われていた。

 

牧村にもらった特別パスが疑われて、追われる立場になったロミとコム。下水道に逃げるが、更に追っ手が迫る。

それをチヒロというロボットが助けた。
まだ自然が残っている場所があると言って、作業用の車を提供するチヒロ。
暴走族風の連中に絡まれるが、そのリーダー、フォックスが事情を聞いて自然が残る場所まで案内した。

 

やっと地球らしい風景に巡り合えたロミ。

密入国者を逃がした罪を問われる牧村は、二人の死体を持ち帰る事を命令される。
二人を見つけた牧村がミロを殺そうとするが、それを止めるコム。

あと一時間の命。
銃を突き付ける前で息絶えるロミ。
コムを撃とうとする牧村。撃たれてコムの右腕が飛ぶ。

 

川に落ちたコムが土と同化して頭の触角がつぼみの様に伸びる。
ロミの遺体とコムの腕を、証拠として持ち帰る牧村。
牧村が去った後、岸辺に咲き始めた水草の花。

コムが母親から引き継いだ不定形生物(ムーピー)の血・・・

 

エデン17の、エデナの町に到着したズダーバン。

女王に面会し、彼女がムーピーである事を見抜いていた。

厄災を予感して苦悩するムーピーの女王。
ズダーバンが、人の心に欲望を植え付ける薬を飲料水に混ぜてバラ撒いた。連れて来られたノルヴァがそれを見て咎めるが、閉じ込められてしまう。

 

それから半年後、星を訪れた火の鳥はエデナの町の荒廃を見て、もうエデン17はおしまいだと感じる。
女王の許に降り立ち、ロミが地球で死んだ事を伝える火の鳥。
火の鳥は、実はロミの健気さに打たれて、今までこの星を地震から守って来た。それを止めればすぐに崩壊が始まる。
最後のチャンスだと言って去る火の鳥。

閉じ込めていたノルヴァの事を思い出し、部屋を開けるズダーバン。

部屋には無数の卵が植え付けられていた。

やっかいなので再びドアを閉める。

 

ズダーバンの煽動で市民が王女を襲いに来た。

その時大地震が起きて宮殿は崩壊。町も崩れ去った。
脱出しようとしたズダーバンだが、宇宙船はノルヴァの子供たちが操縦して飛び去った。

 

再び調査に派遣された牧村は、プレアデス星系へ行くついでに廃墟となったエデン17に立ち寄り、ロミの亡き骸を土の中に埋めた。

 

その時に読んで聞かせた「星の王子さま」。
再び結ばれたジョージとロミ。

 

火の鳥のことば
数知れぬ宇宙の伝説の中に
かつてエデン17という小さな星があって
そこに愛に生き、試練に耐えた人々がいたという・・・
そこに語られる、ロミという名の女のことを
私は永遠に忘れないでしょう

 

 

”お伊勢さんで、ピストルに胸打たれて、、、”

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ヤスミンさんの記事は、いつもじっくり読んでいる。
それでこの題名にびっくり。
読み進むと、夫婦で山岳道路を走っている描写。
遂にヤスミンさん、タヌキと間違えられて撃たれたか~~

 

でも大丈夫。


実は竹原ピストルさんのライブに、ご夫妻で参戦していました。
このお方にズキューン!とやられた訳。

そのMCの最中、幼児が泣き出してお母さんが会場から去ろうとした時、ピストルさんが優しい声かけをしてくれたとか。
会場のみんなも、そのお母さんに拍手したらしく、ホントいい話。


そういえば、1月30日のミュージック・ステーション(Mステ)でこの方がゲスト出演。
トリで歌ったのが中島みゆきの「ファイト」
まさに神回。これには撃ち抜かれました・・・

ファンの方のツイッターがこちら

 

YouTubeでもこの歌がありました。

顔はゴツいけど、優しい人です。

 

ついでにリブログもう一件(2/1付)
「そしてわたしは途方に暮れる、、、完結編」

近鉄電車で乗り換えにミスったヤスミンさんを、次の停車駅まで愛車で追っかけて回収してくれた優しいダンナさんの話(単なるノロケ)

ピストルさんみたいな外見なんだろうか・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一つ。
「母を葬る」
ヤスミンさんが、お母さん(実母)を看取った時の話。
自分の両親は50年以上前に他界しているから、そのまま、とまでは行かないが、4年前に義父を見送った ことで、気持ちは判る。

 

足りなかった部分に対する後悔もある。
だが時が自分に力を与えてくれる。

 

 

コズミック フロント☆NEXT 選 ▽ザ・プラネッツ(抜粋)   BSプレミアム

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感想

46億年前に誕生した、太陽系の惑星たちの歴史についてを描く5回シリーズ。

初回放送は2019年6月だが、今回再放送されたのはこのうちの3編。
こうして様々な角度からの探査結果を知るにつけ、いかに地球がラッキーな運命に導かれて生命を育んで来たかが良く判る。
もっと大事にしなくては・・・・


1. ひとときの楽園 水星・金星 1/23放送 番組概要


水星
太陽に一番近く、月と同等の大きさ。極端な楕円軌道(近:4600万km、遠:7000万km)
自転遅く昼は88日(夜も)。日なた430℃、日陰-170℃
探査は1973年にマリナー10号、2004年にメッセンジャーが行っている。
内部の核の割合が85%と高い。

原因は小惑星の衝突で表面の岩盤が剥がれた。
また硫黄、カリウムなどの揮発性元素が多い(形成のためには高温不可)。
誕生のシナリオ
誕生時は金星より太陽から離れていた。その後今の位置に移動。
極付近に大量の氷がある。自転軸が垂直のため、氷が安定して何十憶年も維持された。
小惑星の衝突がなければ楽園だったかも。

 

金星
厚い雲に覆われている。輝く理由:距離が近く、雲が光を反射。
初の探査機は着水を想定。ベネラ13号が着陸しカラー写真を送付。
CO2 96.5%、気圧は地球の89倍。

なぜあの姿になったか(地球とほぼ同じ大きさ。組成も)
太陽に近く表面温度高い。太陽は年を取るにつれて熱くなった。

35憶年前の太陽は暗かった。その時点での金星はうららかな春。
太陽が高温化するにつれて、温室効果で水が蒸発。

地球も温暖化が進めば同じ道を歩む。

その他衛星についての記述
木星のエウロパ、土星のタイタン
タイタンへの探査機ホイヘンス。
川原があり、摩耗した石があった

→液体の作用。石ではなく氷。メタンの液体。
2006年カッシーニの観測で液体メタンの湖を発見。
55億年後、更に太陽が高温になると、これら衛星が楽園になるかも知れない(太陽系の最後でもあるが)


2. 運命を分けた姉妹惑星 火星 1/30放送 番組概要

 

地球と姉妹惑星と言われている。最初の探査機はマリナー4号(1965年)。1971年、マリナー9号で全体の80%の表面をカバー。
1976年バイキング計画で着陸。数十憶年侵食されていない。

火山、峡谷、盆地。
2011年にキュオリシティによる探査。摩耗した石の発見。

土に2%の水分を含む。
40億年前には豊富な水があった。

表面の1/5が海。出来て10億年以内に海、水が消える。
初期の火星は、生命のためにはいい環境だった。
38億年前、火星に小惑星が降り注いだ(後期重爆撃期)。

他の惑星にもその機会があった。
原因は海王星の関わり。重力の相互作用が乱れて影響した。
火星では大気による温室効果が減り、温度低下。

地球は大気を保った→この違い。
太陽風が大気を吹き飛ばす。それを防ぐのが磁場。

プラズマが磁場に捕らえられてオーロラが見える。
地磁気がなければ大気が剥ぎ取られる。

地球は核の液体金属の対流で磁場を作っている(防護システム)
火星も磁場で守られていたが、35~40億年前にダイナモが切れた。
この違いは火星の成分に金属が少なかったから。また火星の大きさが地球の半分しかない事で、ダイナモのスイッチが切れた。
火星が我々に与える未来。地下資源。鉱物、鉄、窒素が豊富。
火星に故郷を作る。新たな世界。


3. 私たちの命運を握る 木星 2/6放送 番組概要

 

太陽系で最大の惑星。

木星質量:木星以外の全ての系内惑星、衛星等の総量の2.5倍。
2016年に送り込まれた探査機ジュノーによる詳細調査。
系内惑星に対して、太陽に次いで大きな影響力を与えている。
特に強い影響は衛星イオ。月とほぼ同等だが火山活動が活発。

内部エネルギーではなく、木星を回る楕円軌道(1周42時間)による潮汐力の摩擦熱。
太陽系の創成期には今より太陽に近かった。その際に多くの星間物質をはじき、その他の惑星が大きくなれなかった。

地球が生命のために最適となった要因。
その後土星の生成により、木星は今の軌道に安定。地球に水が多いのも、木星がはじき飛ばした氷の小惑星が降り注いだため。
今も外宇宙からの隕石を、自身の重力で捉えて地球などから守っている。

 

 

 

 

 

新聞小説 「カード師」 (8) 中村 文則

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朝日 新聞小説 「カード師」(8)  1/29(117)~123/(2/4)
作:中村 文則  画:目黒 ケイ

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感想
次章が思いの外長くなりそうなので、その手前で短めにレビュー。
せっかく現在に戻ったのに、またブエルかよ(笑)
ここでは夢にかこつけて、高校時代の手品師へのアプローチと、その挫折が描かれる。
そして占星術に関するサワリについてのレクチャー。

結局占星術自体信じておらず、プロファイルから自分が考えた望ましい未来を、占いに沿わせて対応して来た。
世間の占いなんてそんなものかも知れない。

生まれ年や干支、星座なんて同じ人がどれだけ居ることか。

そして再び佐藤との対峙。誰それと会えとかいう話は、結局大した話ではなかった。なんかこう、イヤなもどかしさがある。
次章でまた変な話に落ち込むが、ホント疲れる小説・・・

 


あらすじ117~123
<ドア> 1~4
警報は聞こえなくなった。あれは健全な人々に向けられたものだから、と言って笑うブエル。


あの時、早急に僕がディオニュソス神に帰依したのを見逃した事を「リサーチ不足だった」と言う。
父性を使って君に接すれば完全に狂わすことも出来た。

そのきっかけはドア。
ブエルの背後にあるドアが、グレーがかった白になる。

薄いが不透明なドア。

君の過去が脳内で活性化されているきっかけは、ドア。

君が施設内で廊下の先に見た不透明なドア。
記憶の封印とかではなく、思い出す時に避けたくなるような。

あのドアを開けなければ良かった、と本当の君は思っている。
父親でもない人間が母を喜ばせているのを、事前に知ることが出来たかも知れない。だが君はそれを見た瞬間、全てを肯定した。
ディオニュソス信者の乱交に慰められるのも、その肯定から来るもの。
重大な、話したい事がある。

一人の人間が生涯を終える時に発生する「総括」
・・・君が手品師を諦めた時--

 

電車の中。夢かも知れない。向かいに座る七人掛けの乗客の一人。
四十代半ばの短髪、ジーンズの男が言い聞かせる様に言う。
--手品師を諦めた時、君は中々ショックだったろう?

カードマジック以外に興味が持てず、さりとて人前だと落ち着かなくなって、不快になる。手品師としては致命的。
だが手品師になる目標を持ったのは、高校時代を乗り切るのには有効だった。結果的に挫折はしたが、目標に従い行動する事が出来た事に、君は感謝していた。

男は、僕が会話に意識を置いていない事にうんざりし、隣りの女性を肘で押して参加させようとした。
だが女性は「興味ない」と相手にしない。

 

目の前にいるブエル。その背後には見覚えのないドア。
かつて占いを否定したのは十年前?と聞くブエルに頷く僕。

ドアの向こうに何があるか知らなかった。

僕の覚醒を感じてブエルが話し続ける。
最近の君は、こうやって無意識に自分を痛めつけている事に喜びを感じている・・・
そしてチェック柄がもうすぐ死ぬと言った。

 

ベッドから起き上がる。体が熱い。

夢を見ていた気がしたが思い出せない。
コーヒーを淹れるが、昔の事が脳裏に貼り付いている。

十年前、占いなどはない、と全身で感じた事があった。
その歴史を調べるほど湧く疑念。伝統的な占いを行う中で、自分の解釈で顧客の判断を行う方が当たった。
顧客の側の情報から判断するのは心理学、精神分析の領域で、占いと関係ない。
そもそも、惑星や星座が地球にもたらすのが引力だとしたら。

それが地球の人に及ぼす力は無に等しい。

 


<占星術の起源> 1~3
その星の位置に生まれた者全てが同じ人生を辿るわけがない。
占星術の起源は古代バビロニアと言われる。
語られる、星と神との結びつき。木星は最高神マルドゥク、金星はイシュタル、火星はネルガル。
木星が最高神に充てられた理由は不明。またマルドゥクが最高神とされたのは政治的理由。権力集中神話の創造。

 

その占星術がギリシャに伝わった時、金星に女神アフロディテ、火星に戦争神アレス、木星に最高神ゼウスが充てられた。

また惑星の影響を乾/湿、冷/熱の四つの気で説明している。

湿と熱は良い気、乾と冷は悪い気とされた。
それらより遠い星が発見されるたびに占星術も変わって行く。

こんないい加減な事はない。
占星術に限らず名前の画数、手の平のシワなどに運命が刻まれるはずがない。
ただ、占いには「何かある」という感覚が自分の中にあった。

ある顧客の女性を占った時、結果に疑問を持ち、彼女のプロファイルに基づいて、うまく行くと思われるアドバイスを行ったことがあった。

その後彼女は人生を劇的に変えて、大きく感謝された。
感謝されて高揚した気分の最中、瞬いた瞬間に景色全てが乾燥して見えた。
圧倒的に味気ない、先の判らないドアを開け続けてダメージを受けるのが人生・・・
占いなどないという認識の、最後の一押しだった。

それが感覚につきまとう。
占い師をやめる事はなかった。他に やれる事がない。

嘘としての占い師を続けることで、世界と乖離した。
英子氏に以前言われたこと。
あなたは人間が怖く、世界が怖いからそれらを研究した。だが目の前の世界に実感することが出来ず、虚無に覆われることになる。
あなたは奇妙なものになって行く。特殊な賭博者。

 

佐藤の秘書に先導されて、再びあの部屋(と思う)に入った。

佐藤もまた白いトレーナー姿。
前回の二人の男について話し始める佐藤。どちらの男に会うべきかの問いに、伝統的な占いで運のいい方を選んで答えた。
四つの選択肢の中で選んだ、Bとの面会以外では、面倒なことになっていたらしい、と言った佐藤。
本当なら偶然に過ぎない。

 

 

蘇える金狼(映画)   1979年

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監督 村川透
脚本 永原秀一
原作 大藪春彦

 

キャスト
朝倉哲也(東和油脂 経理部 社員)  - 松田優作
永井京子(小泉の愛人)           - 風吹ジュン
桜井光彦(東和油脂を脅迫する男)  - 千葉真一
鈴本光明(東亜経済研究所 所長)   - 安部徹
小泉(東和油脂 経理部長)         - 成田三樹夫
金子(同社 経理次長)                    - 小池朝雄
竹島(同社 専務)                           - 草薙幸二郎
石井(興信所 所長)                        - 岸田森
清水(東和油脂 社長)                     - 佐藤慶
牧雪子(桜井の愛人)                      - 結城しのぶ
清水絵里子(清水社長の末娘)         - 真行寺君枝

 

 

トレイラー

エンディング

 

感想
TV録画してあったもの。20年以上前に一度観ただけ。
松田優作の、アクション俳優のポジションを確立した一作。
オモテ向きはおとなしいサラリーマンだが、ボクシングで体を鍛え、銃の扱いにも習熟し、まさに「羊の皮をかぶった狼」。

 

ただ、ストーリーの持って行き方がどうにもスマートでない(原作がこうだから仕方ないが・・・)。
盗んだ金が通し番号のせいで使えないため、裏取引で麻薬に変えようとするが「俺が盗んだ」と言ってしまったら、流通出来ない金だと相手にもバレて取引出来ない筈。
会社が強請られる話も、桜井とのやりとり辺りは、何だか冗長でイマイチかったるい。

 

終盤で京子に刺される場面はびっくり。単に情報を得るためだけに麻薬漬けにした京子と一緒に、海外へ行こうとした心理状況が、全く理解不能。
赤いカウンタックで、全てがうまく行ったと高笑いする姿と、どうしても噛み合わない。

いろいろケチをつけたが、中腰で銃を持って敵に走り込む松田優作は、ホントかっこ良く、彼のために作られた映画と言える。

 

オマケ
主題歌を歌う前野曜子は、ペドロ&カプリシャスの初代ヴォーカル。

最初の「別れの朝」は高橋真梨子ではなくこの人のもの。

1988年に死去。

 

 

あらすじ
町なかで発生した一億円強奪事件。銀行員は射殺された。

犯人は東和油脂で働く朝倉哲也。

 

会社では風采の上がらない社員を演じているが、勤務外ではボクシングジムに通っている。

ジムでも実力を称賛され、試合に出るよう勧められるが、血友病の持病があるので、と断っていた。
報道では、盗まれた紙幣は番号が控えられていて、そのまま使えば足がつくものだった。

 

街でヤクザを締めて、ヤクの売買の関係者を探る朝倉。

黒幕として市会議員の磯川が居る事を知る。
尾行した先のゴルフ場で、磯川の妻の友人永井京子を知り、近づいて麻薬とセックスで意のままにする朝倉。


京子は会社の部長、小泉の愛人でもあった。
磯川との交渉で、盗んだ金と交換で麻薬を手に入れる朝倉。

 

社内盗聴と京子からの情報で、横領事案をネタに会社が強請られている事を知る朝倉。相手は桜井、金額は五千万。

バックに財界を牛耳る鈴本が居る。
会社幹部は興信所の石井らを雇って対応するが、その内金二千五百万を横取りする朝倉。桜井は改めて二億円を会社に要求。
この桜井を石井が助っ人を使って始末し、謝礼を清水社長に要求した。
朝倉の身体能力を知った小泉が清水に進言し、石井殺しを朝倉に社命として与える。朝倉は会社での地位と、社の株二百万株を要求。

 

石井らを皆殺しにし、口封じで撃とうとした金子を苦も無く抑え込む朝倉。

 

結局株と重役のポストを手に入れ、清水の末娘、恵理子とも交際を始める朝倉。
そんな中、朝倉に接触する鈴本。朝倉の株を買い取って東亜油脂を乗っ取る計画。売り渡す朝倉。
絶頂期を迎え狂喜する朝倉。

 

朝倉に呼び出される京子。恵理子との交際も知っていた。

死を決意して毒を飲み、朝倉の腹をナイフで刺す。


息絶える京子。
京子を崖下に捨てる朝倉。

二枚持った航空機チケットのうち、一枚がハラハラと落ちる。

スーツ姿で歩く朝倉。時々発作的に倒れる。


国際線の機内。様子のおかしい客に声を掛ける乗務員。
「木星には何時に着く?」と言って崩れ折れる朝倉。

 

 

NHKスペシャル「食の起源」 第5集「美食」 2月23日放送

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シリーズ
第1集「ご飯
第2集「

第3集「

第4集「

 

第5集「美食」   番組詳報
~人類進化が教える、理想の食~

 

感想
苦味の中においしさがあるというのは、サンマのワタとか、ふきのとうなどに代表される「ほろ苦さ」で良く知るところだが、その背景として人類生き残り戦略があったとは。
香りについても昔、母方の叔父が嗅覚を失なって味が判らなくなったという話を聞き「オーバーな事を言うなぁ」と思っていたが、ここまで密接(むしろ嗅覚の方が重要)だと知って驚いた。
他人が食べているものをウマく感じるのが、人類に刷り込まれた本能だと知って、これにもびっくり。

 

全体感想
昨年12月から続いたこのシリーズ。食にまつわる様々な疑問、課題に、ある程度の指針を得る意味で、NHKらしい良質の番組だった。
「LIFE」なんてくだらない番組なんか廃止して、もっとこういう方面に注力すべきだろう。


内容
ナビゲーター(TOKIO)
:城島茂 国分太一 松岡昌宏 長瀬智也
ゲスト:木村文乃

健康よりもおいしさを求めてしまう人類→美食のモンスター

人類だけの三つの特殊能力

 

①特別な味 苦味
米シアトルのワインソムリエ、エイブリル・ボーグさん。
鋭い舌で微細なワインの味の違いを見分ける。
唾液を採取して遺伝子分析。
エイブリルさんにだけ苦味を感じる遺伝子がある。
チンパンジーによる実験。わざと苦味をつけたリンゴ。苦味遺伝子を持たない方は平気で食べるが、持っている方は穿き出す。
苦味センサーが毒をキャッチして避ける。危険を避けるための機能。
なぜ美食と関係するか?

700万年前から出現した人類。

6万年前に気候変動により森を追われ、新天地へ旅立つ。
苦味のあるものの中に栄養があるものを発見。

苦いが食べたくなる味として記憶される(脳内の眼窩前頭皮質)。


食事の実験。田楽豆腐、イワシの水煮、みたらし団子等に、コーヒーを煮詰めた苦味ソースをかける→香ばしくおいしくなる。


②嗅覚でおいしさを感じる
ニューヨークの女性リア・ホーゼルさんの体験。

おいしさを全く感じなくなってしまった。診断は「無嗅覚症」。
嗅覚が働かないだけで、なぜ味覚がなくなるか。

進化の歴史に秘密がある。
恐竜時代の人類の祖先は夜行性。

長い鼻面のため、嗅覚が鋭敏になる。
恐竜絶滅の気候変動を経て、人類の祖先は昼行性となり、嗅覚よりも目を武器にする様になった。
長い鼻は退化し口、喉、鼻にかけて一つにつながる

→人類を美食モンスターにした。

人の口の形を模した模型実験。

 

口の中で食べ物を噛むと、香り成分が喉の入り口に溜まり、それが鼻にかけて流れ込む。

香りと味を一体のものとして感じる。
味センサーの100万個に対し、味覚センサーは1000万個。

味よりも風味をおいしさと強く結びつける。
決定的な事件は、火による調理を始めたこと。

食物から立ちのぼる香り成分。風味の洪水が脳を刺激。


③究極のおいしさは味でも香りでもない!?
第3の特殊能力の実験
同等年代の男女30人づつのA、Bグループに食事を提供。
Aグループでは味の評価が低く、Bグループでは高評価。

 

実は全く同じ料理。Aに対しては機能優先の内容説明、Bに対してはダシたっぷり、モチシャキ、創作などのおいしさを感じさせる内容説明。

 

人から与えられる情報で、おいしさの評価が変わる。
先の、苦いリンゴを吐き出したチンパンジーも、食べている方の姿を見るうちに食べられるようになった。

初期人類に対して、進化と共に前頭葉が大きく発達。仲間への共感を生みだすのが腹内側前頭前野であり、生き残りの重要な変化。


仲間と分かち合うものを「おいしい」と感じることで、生存競争を生き残った。
食の楽しさを育むことで、野菜嫌いの子供を変化させる試みが成果を出している。

 

理想の食とは何か? ただ何を食べるべきか、ではなく「人間にとって食とは何か」を知る先に見えてくるものがある。 

 

 

新聞小説 「カード師」 (9) 中村 文則

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朝日 新聞小説 「カード師」(9) 124(2/5)~142/(2/24)
作:中村 文則  画:目黒 ケイ

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感想
佐藤の部屋で読まされる600年以上前の手記。

メインストーリーには関係なく(作者的には関係あるのだろうが)、あらすじ書きにも身が入らない。
青年エテカが、叔父に預けられた一時期、雇われの錬金術師と交流したものだが、後に佐藤が触れている様に、ポイントはプリマ・マテリアなのか。
錬金のための重要なアイテムだが、そもそも釜で作り出すものではなく、添加剤の様なものだという認識だったので、あの白いものがプリマ・マテリアだと言われても、全くピンと来ない。
一体このエピソードで何が言いたいのか・・・謎
今までの中にも、そんな類が多すぎる(ギリシャ神話とか)。

これは作者が単に知識をひけらかしているのか、とも思えるし、後のストーリーに重要な意味を持つかも知れないし。
だからこそあらすじは、あまり手を抜かずに書いてはいるんだけど。

 

挿絵作家も大変ダナ、こんな毎日では(笑)

しかしここに来て、挿絵の類型的表現がちょっと鼻につく。

画面を断ち切る色の帯。初めの頃はシャープで斬新さも感じたが、こう繰り返されるとイマイチ。

そういえば「国宝」の時の挿絵で、顔なし表現に当初喝采したが、延々と続くので結局「顔が描けない作家なんや」と斬り捨てた。

 

 

あらすじ124 ~ 142
<手記 一三八六年 ヨーロッパ中部> 1~19
組織の芳野が以前、佐藤には二人とも会わせるなと言っていた。
そうしていれば、佐藤は困難に陥っただろうか。

また佐藤は胃薬男の死を知っていたのだろうか。

佐藤が数冊の、紐で綴じた冊子を見せた。奇妙な資料だと言った。
元はラテン語だったのが独語、英語となり、最後に佐藤の部下が和訳した。十四世紀、エテカという人物が書いたという。
表紙には「一三八六年 ヨーロッパ中部 錬金術師の記録」と書かれてあった。
読むといい、というのは、今から読めということ。

 

--以下その記録
白煙が漏れる石釜を前にする尊師。私(エテカ)が中に何があるのかを問うと「言っただろ?この世界の全て」だと言い微笑する尊師。


錬金術師という存在を、知ってはいた。幼少期に訪れた工場で作業をしていた男たちは、具体的には何も教えてくれなかった。
尊師も同じく釜の蓋を開けようとしない。
本当に出来るのですか?の問いに頷く尊師だが、見せて下さいとの願いには「今度見せてやる・・・」

 

家庭教師とうまく行かなかった十八歳の私を、叔父が引き受けてくれた。そんな叔父は、錬金術師である尊師を雇っていた。

彼は叔父の指示で、私の仏語の家庭教師も兼ねた。
秘術を教えて下さい、と乞う私。

仏語習うよりも錬金術の弟子にしてほしい。

弟子にするかはこれからのお前にかかっている、と尊師。

高められた精神がなければ秘術は降りてこない。
わからないままに頷く私。

たまに叔父が様子を見に来ると、雇い主にへりくだる尊師。

単なる義務で精進を促す叔父。
誰もが私という存在を持て余している。

 

夜も尊師の家に行った私は、秘術を教えて下さいとせがむ。 
まずは真理の習得だと言って、物質の四元素を言わせる。

火、風、水、土と答えると、本当は五元素だと言う尊師。
五つ目はプリマ・マテリア、と喜びに満ちた声で話す尊師。

プリマ・マテリアは全ての第一物質。

第五元素であると同時に他の四元素を生んだ。
高められた純粋な精神、または幼児だけが捉えられるもの。
プリマ・マテリアは世界の至るところに存在する、全ての物質の本質。
金を作成するのに欠けてはならないのがプリマ・マテリア。
この真理は古代、人の女を愛した堕天使が伝えた。

ゆえに初期の錬金術師には女性が多い。

錬金術師の象徴である蛇の彫刻を見て、アダムとイヴを唆して知恵の実を食べさせた、と蛇が神に背く象徴である事に言及する私。

錬金の行いが神に背くと考えるのは、未熟だからと言う尊師。

 

街に新しい錬金術師が六人雇われた話を聞いても、孤独は瞑想と思索を高めてくれる、と言う尊師。
作業効率は上がるが、人は複数になるほど愚かになる。

愚者のもとには真理は降りて来ない、と続けた。
その一方で彼らのことが気になる尊師。

買出しの助言を求めるとの理由付けで、尊師を街に連れ出した私。

 

錬金術師たちに尊師を紹介すると、彼らが集まって来た。

その中の一人が、尊師を達人と呼んで一枚の絵を差し出した。彼らの師匠が亡くなる寸前に描いたという、森の中で苦しむ龍。
龍は水銀を代表するもの。倒され、腐敗するところから全て始まるのは知っているが、なぜこの龍が苦しんでいるのか知りたい。
尊師が妙な事を言って失笑を買うのが恐ろしい。

尊師が言う。龍は我々。自分の中の龍を打ち倒し、苦しさの果てに精神の高みに到達しなければならない。


達人、仰るとおりです、という同意に尊師の顔が喜びに満ちる。
始められた尊師と錬金術師らとの議論。錬金の割合ではなく人の徳における最も重要なものについて。
例えば勇気と慈悲はどちらが上か。

尊師も、彼らも幸福そうに見え、議論は夜半まで続いた。


尊師が遂に石釜を開けた。

釜の中で沸騰する水銀は、波打つ蛇の群れに見えた。


この中から金が出現する。自分の人生のあらゆる事が、この水銀の起こす奇跡に浄化されると感じた。
貧しい貴族として、農夫たちを重税で追い詰めた父、その劣化複製の兄。しかし自分にも力はなく、戦場に行ってもすぐ死ぬだろう。
だがこの、金が溢れ出す現実があれば、全てが一変する。
この世界はどのような事も可能になるのではないか。 

物質の割合だけで金が発生するのではなく、動因となるものが必要。それがプリマ・マテリア。
別の者はそれを賢者の粉末、賢者の石と呼ぶ。
「それは何ですか?」との問いに、ただ微笑む尊師。


錬金術師らと尊師とが、徳の高さの議論をしている時、奥の部屋から壁職人が出て来る。

同じ部屋から錬金術師の仲間の一人も出て来た。
その男は、鋼より硬い金属の製造を打診された、と慌てて口走った。
なぜ?と聞く尊師の鈍感さに苛立つ私。今は復活祭前の受難の週。ユダヤ人と聞いてようやく気付く尊師。

 

憎悪の対象となっている、ユダヤ人狩りのための武器。
もちろん断ったと言う男に頷いた尊師。

また徳についての議論が再開された。
だが職人と、その錬金術師の男との、部屋での話が長かった事に引っかかる私。 

もし金属硬化技術があっても、あの男は打診を断っただろうか。

ユダヤ人の背後に居るのは私たちの様な貴族。
五年前イングランドで起きた農夫の反乱。

乱を起こした者は、無残に殺された。
街の者が嘲笑する「遍歴楽師」たち家族。

土地を持たない者が受ける蔑視。
その家族から目を逸らした尊師が、別の群集を見て「何だろう?」と尋ねた。見るのはよしましょう、と私。
「盲人競技」。貴族の子弟が、盲人に食事を与えて体力を付けさせ、競技場で豚と戦わせる。

 

始められたその競技ト。

武装させられた十一人の盲目戦士が柵の中にいる。
巨大な豚に追突された者が倒れ、群集が笑う。豚は次々に戦士たちを倒し、皆は棒や盾を振り回して同士討ちも繰り返す。それを見て更に笑いが増幅される。聖職者も、子連れの女も笑った。
青ざめた尊師が「見るべきでない」と立ち去ろうとする。
戦士同士の打ち合いに、割り込む様に豚が突進したのを見て爆発的な笑いが起き、私と尊師は思わず笑う。
そして互いにすぐ目をそらした。
どちらともなくその場を離れる。
「宿を探そうか」と言う尊師に同意する私。しばらくの沈黙。 

 

宿を探す道すがら、尊師はさっき笑った事を、豚の様子が理由だと言い訳した。
「私も同じですから」と追従したことを後で悔やむ私。
その日取った宿は壁がヒビ割れ、崩れそうな安宿。

尊師は意に介さずベッドに入り、意外にもすぐ寝入った。
醜かった尊師の寝顔。
深夜に聞こえた悲鳴。多分ユダヤ人狩り。

人を打つ鈍い音と笑い声。
終わってくれ、と願う。

ユダヤ人の事より、助けに行かない自分を感じないため。 

終わるかと思われた打撃は続いた。
怒りが湧いた。

ユダヤ人を打つ者にではなく、寝たふりの尊師に対して。
本当に寝ているなら、なお許せない。尊師にこの悲鳴を聞かせなければならない。私だけが聞くのは不公平。
ベッドから足を出し、尊師のベッドを押して揺らした。

 

尊師の体が反応した。喜びが広がる。

共犯者がいる安堵。悲鳴は続いた。

 

翌朝、無言で目覚める私たち。

昨夜の痕跡を見ない様にしながら外で、互いに天気の話を交わす。 
歩いて来る子供を見た。

プリマ・マテリアを扱うには、幼児の様に純粋でなければならない。
子供が近づき、真剣に物乞いする姿に興醒めした。

それを無視する私たち。

 

翌日から作業場に籠るようになった尊師。疎外された反発で「金が全てなのですか」と言う私に、金があれば全てが変わる、貴族がなくなると言う尊師。
臓腑が震える思い。そうだ、貴族などなくなってしまえばいい。 

尊師が持つ書物に基づき、様々な試みが繰り返される。色のついた石、満月に一晩照らされた水。それらが増えるにつれて神経も昂る。

 

ついに尊師が叫び、釜の中の白い濁りを指さした。

それは命の素に見えた。
一人にしてくれと言った尊師に従い外に出る。

次第に湧く疑念。あの白色が一体なんだ?
気になる尊師の行動。そして秘術を教えられていない事にも気付く。
尊師を盗み見ると、石釜の前でうずくまって祈っていた。

白い濁りに変化はない。 
祈りを続ける尊師。無力に見えるその後ろ姿に、私の視界も涙でぼやける。
そもそも金の生成が、高められた精神のもとにしか来ないのなら、私たちのもとに来る筈がない。
では一体誰のもとに?

 

気付いた時には遅かった。

私は父に呼び戻された。戦地に行くために。
そして父と叔父の領地の大半が、尊師も含め別の貴族のものになった。
尊師との別れ。金が出現するのを見せられなくて残念だ、と尊師。
あなたに金を作る能力がないから私は戦地に行くのだ、と言いかけて頷く私。

 

新しい雇い主の貴族が、尊師を拘束した事を聞いた。
早急な金の出現の要求に、尊師が秘術開示を拒否したという。 
貴族が、金の生成が出来ないのならそう言えばいいと言い、新たな錬金術師の助手となる道も示した。
だが今までの研究成果の開示も拒否する姿を見て、侮辱を感じた貴族は尊師を牢に入れた。
私は馬で貴族の許まで行き、接見を求めた。
尊師は所有物だと言う貴族が言った、投獄や父の領地召し上げの理由。また尊師を偽物と言った。十八歳だった私は言い返せない。
尊師が囚われている牢に向かう。

骨が浮き出るほど痩せた尊師は、視力も失っていた。
研究成果を開示すればいいではないですか、と私。 

何とか取りなそうとするが尊師は、高められた精神を持たぬ者に真理は明かせない、錬金術は私の人生そのものだと言った。

尊師の腕に、彼の死期を覚った蠅たちが這う。
見かけによらず67歳と高齢だった尊師。

自らの人生に賭けても、錬金術を虚偽と認める事は出来ない。
泣きながら、世界の全てに頷こうとしていた私は、自分が戦争で死ぬことを「つまらない」と言った。
それを否定する様に、尊師が小さい頃の話をする。療養中の神学生から文字を習った後、ある時棚に並ぶ膨大な書物を目にした。世界が無限に広がるようだった。

 

私は泣き続けた。

 

別れ際に尊師は、お前が死ぬまで世界に何も大きなことは起こらない。争いがあるだけだ、と言った。
尊師の処刑を聞き、馬で駆け付けた。吊るされて背筋の伸びた尊師に、小さな誇りを感じた。

 

 

やや唐突に終わった手記。
佐藤に見詰められ、手記に出て来る石釜の白いものが、プリマ・マテリアだと思う、と言った。そんな筈がないのに。
「私もそう思う」と頷く佐藤は手記の背景を話した。
実際にユダヤ人狩りは行われ、盲人競技も開かれた。このエテカも実在する人物で、四度目の出征で死に、彼の一族も離散したという。 

エテカの行動について、錬金術師が死んだ後すぐに作業場へ行けば、白い濁りがあった筈で、それはプリマ・マテリアでなくてはならない、と言った佐藤。
また、この手記を訳した男は、君に興味があり、君を主人公に何か書くかも知れないとも言った。
他にもある手記を、持ち帰るよう言われる。

佐藤の内面を知る資料となるかも。
これら超自然的なものが、物理学と矛盾しないと言う佐藤。

そして以前彼を占った、発狂した物理学者が作ったというタロットを見せて欲しいと言う。
それを受け取り、このカードを作った人間を知っていると言った佐藤。 

「誰ですか」の問いには答えず、いつまでもカードを眺める佐藤。
「これを私に貸すことは?」と聞かれ、頷く僕。

 

秘書の運転する車で送られる。

どれくらい?の問いに二十年と答えた秘書。

佐藤が以前、この秘書は人を殺していると言った。


彼に殺される予感。殺す時、彼も彼の手も無表情に違いない。

そしてすぐ忘れるのだ。 

 

 


投稿記事アクセス ベスト20 (2019年)

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アメブロで始まったこのサービスも、そろそろ2年。

2018年のものはコチラ

                                                                         アクセス
 順位  投稿年  記事タイトル                                       計
   1      2019   NHKスペ「彼女は安楽死を選んだ」        7606
   2      2019    どろろ ①、②巻 作:手塚治虫               2979
   3      2019    どろろ ③、④巻 作:手塚治虫               2355
   4      2015    失楽園 1997年                                    1421
   5      2018    新聞小説 「ひこばえ」(1)重松 清           1206
   6      2017    鈴木先生 TVドラマ 2011年 その1          1090
   7      2018    万引き家族 2018年                      1006
   8      2019    グリーンブック 2018年                    868
   9      2017    幻魔大戦 (映画) 1983年                         862
  10      2018    NHKスペシャル 山一証券破綻の深層      814
  11      2017    告発の行方 1989年                               793
  12      2018    スペシャルドラマ「荒神」                          745
  13      2018    世にも奇妙な物語 '18秋の特別編            729
  14      2013    竹内まりや「駅」パクリ疑惑                      727
  15      2019    千と千尋の神隠し 2001年                       722
  16      2017    火の鳥 黎明編 単行本①② 手塚治虫       697
  17      2018    ソイレント・グリーン 1973年                     671
  18      2019    七つの会議(小説) 原作:池井戸潤           629
  19      2017    火の鳥 未来編 単行本③ 手塚治虫          596
  20      2019    ハンターキラー 潜航せよ 2019年              564

 

コメント
1位 Nスペ 彼女は安楽死を選んだ
二人の難病女性を追ったドキュメンタリー。今回ダントツの1位。

一人は安楽死をサポートするスイスの団体まで行って死ぬ事を選び、もう一人は生き続ける事を選んだ。
6/7に記事アップした当初はさほどではなかったが、6/15に爆発的なアクセス「2119」を数えた。 

生きること、死ぬことの意味・・・

 

2、3位 どろろ(漫画)
手塚治虫原作の漫画。鬼神に、体の部品を奪われて生まれて来た百鬼丸が、コソ泥のどろろと旅をしながら体を取り戻して行く話。
昨年、息子の「手塚眞」がプロデュースした同名のアニメを観たことで、原作を読み返してレビューしたもの。

 

4位 失楽園
役所広司、黒木瞳版。安定の上位。

これを観て、鴨とクレソンの鍋でワインを飲んだ者がたくさん居ただろう(死なないけど)。

 

5位 新聞小説「ひこばえ」
2018年6月から翌年9月まで朝日新聞に連載された。

離婚のために別れた、顔も覚えていない父親を巡る話。

 

6位 鈴木先生
ヲタク系の中学教師と生徒の交流を描いたもの。根強い人気がある。

 

7位 万引き家族
カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した注目作。

血縁のない擬似家族が万引きをしながら寄り添って暮すが、次第に綻びが広がる。

 

8位 グリーンブック
黒人ピアニストと、そのお抱えの白人運転手を巡るヒューマンドラマ。自分的には昨年最高の映画。

 

9位 幻魔大戦
宇宙意識のエネルギー体「フロイ」と戦うために、世界中から集められた超能力者たち。
平井和正原作で、キャラクターデザインは石森章太郎。
キャラクターの中には、若くして亡くなった石森の姉も投影されている。
アキラ」と並んで古典的アニメとしてオススメ。

そういえば、今年に入ってアクセス急増。 謎ダ・・・

 

10位 Nスペ 山一証券破綻の深層
リーマン・ショックに先立ち、日本て起きた証券会社の破綻を描く。

ヘタな小説より迫力がある。

 

11位 告発の行方
レイプされたバーの女給と、その担当の弁護士が挑む裁判。

ジョディ・フォスターとケリー・マクギリスのダブル主演で見応え十分。

 

12位 スペシャルドラマ「荒神」
2013年に朝日新聞で連載された小説のTVドラマ化。前回の一位。

内田有紀がイイ♪

 

13位 世にも奇妙な物語 '18秋の特別編
毎年、春と秋にやる短編のオムニバス。

毎回ではないが、気が向いた時にレビューしている。

 

14位 竹内まりや「駅」パクリ疑惑
これもけっこう根強い記事(前回19位)。

本人に恨みはないが、このパクりは露骨。

 

15位 千と千尋の神隠し
宮﨑駿のアニメ。中華系の、荒廃したテーマパークに取り込まれた少女が、神々に奉仕しながら経験を積んで行く。

 

16、19位 火の鳥(黎明編、未来編)
手塚治虫のライフワークだった「火の鳥」。

黎明編:邪馬台国の卑弥呼をモチーフとしたもの

未来編:核戦争で絶滅した人類の再生を数十憶年描く
現在草稿のみ残る「大地編」を、小説の形で桜庭一樹が朝日新聞に連載中(コチラ

 

17位 ソイレント・グリーン 
近未来のディストピアを描いた秀作。そのグリーンの食料の正体は・・・

 

18位 七つの会議(小説)
企業のリコール隠しを描いた社会派小説。昨年映画化もされている。

 

20位 ハンターキラー 潜航せよ
原子力潜水艦を巡る映画。

ちょっとテンコ盛りではあるが、そこそこ楽しめた。


まとめ
元々分析は好きなので、こういうネタがあると、すぐ取り込んでソートかけてしまう。
でも基本は月毎の、上位100位の累計なので、少数派で読まれている記事なんかを、その日のアクセスで見つけたりすると、ちょっと嬉しい。

 

オマケ
年間アクセス累計 (2018、2019年)
順位 投稿年 記事タイトル                                   計                                                                                    1  2019    Nスペ「彼女は安楽死を選んだ」         7606    
  2     2018    ドラマ「荒神」 2/17放送                   3113   
  3     2019    どろろ ①、②巻 手塚治虫                 2979    
  4     2015    失楽園  1997年                            2694  
  5     2019    どろろ ③、④巻 手塚治虫                 2355   
  6     2017    鈴木先生 TVドラマ  2011年           2128 
  7     2018    新聞小説「ひこばえ」(1)重松 清        2033   
  8     2017    火の鳥 黎明編 手塚治虫                 1449   
  9     2018    万引き家族   2018年                       1438  
 10     2017   火の鳥 未来編 手塚治虫                 1423  
 11     2017   幻魔大戦 (映画)   1983年                1373   
 12     2018   世にも奇妙な物語 '18秋の特別編      1353  
 13     2017   新聞小説「国宝」(1)吉田 修一           1347  
 14     2018   NHKスペ 山一証券破綻の深層           1337   
 15     2013   竹内まりや「駅」パクリ疑惑                 1171   
 16     2017   火の鳥 宇宙編 手塚治虫                  1148   
 17     2017    アウトレイジ 最終章  2017年           1090   
 18     2018    レッド・スパロー  2018年                   968   
 19     2017   告発の行方 1989年                            965   
 20     2018   ソイレント・グリーン 1973年                   921   

 

 

スパイ・ゲーム 2001年

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監督 トニー・スコット
脚本 マイケル・フロスト・ベックナー

 

キャスト
ネイサン・ミュアー          ロバート・レッドフォード
トム・ビショップ             ブラッド・ピット
エリザベス・ハドレー       キャサリン・マコーマック 
チャールズ・ハーカー      スティーヴン・ディレイン
トロイ・フォルジャー         ラリー・ブリッグマン
グラディス・ジェニップ        マリアンヌ・ジャン=バプティスト 
ハリー・ダンカン            デヴィッド・ヘミングス 
アン・キャスカート大使夫人  シャーロット・ランプリング 
アマード医師             アミドウ

 

 

予告編

 

感想
録画して放置していたものを、たまたま正月休みで帰っていた娘が見つけて視聴。
題名と出演者から、ミッション・インポッシブル系のカッコいいスパイものと思っていたら、全く外れた。

諜報機関の泥臭い活動をベースに、組織の裏側を描く。
任務遂行に疑問を感じ、エリザベスを救出しようとしたビショップ。

任務の非情さを教えながらも、かつての部下を自らのキャリアと財産を賭けて救おうとするミュアー。

派手さはないが、男同士の友情、任務に対する矜持などが沁み込んでいて、いいものを観たという印象。
ワンダさんのクイズにこのスキットルが出て来て、正解出来た(ラッキー♪)

 

あらすじ
中国、蘇州刑務所。医師団が囚人に対してコレラの予防接種をしている。その最中に医師が感電して倒れる。息絶えて死亡宣告を受けるが、感電の直前にカプセルを飲んでいた。
途中で息を吹き返した男は、別房のドアをプラスチック爆弾で破壊し、そこに倒れていた女性の囚人を救い出す。
男と女囚はバンに乗せられ、刑務所から脱出しようとするが、最後の出口で工作がバレ、計画は失敗。
逮捕され拷問を受ける男。

 

1991年春。CIAの工作官ネイサン・ミュアーは、引退を迎える日に香港支局長のハリー・ダンカンから、自分が育てた工作官トム・ビショップがスパイ容疑で中国に逮捕された事を知る。

処刑までの期限は24時間。
CIA本部にミュアーを呼び出したのは、ビショップが無許可で工作を行った件の調査リーダーを務めるフォルジャー次官。


今は米中通商会談の時期であり、本来このための盗聴作戦がビショップの任務だった。
求められて、ビショップを工作官に育てたいきさつを語るミュアー。

 

ベトナム戦争末期の1975年。ラオス軍将軍の暗殺作戦を進めていたミュアー。狙撃手として参加したビショップは、厳しい状況の中でそれを遂行した。彼をCIAに採用する様働きかけたミュアー。
CIA工作員としての訓練を受けたビショップは、亡命者への協力者工作で頭角を現し、ミュアーとの師弟関係を築く。


だが、ある作戦で東ドイツ工作員を見殺しにした事案があり、スパイは非情なゲームであると考えるミュアーとの間で溝を生じた。

 

1985年、ミュアーはビショップと共に、アメリカ大使館爆破の首謀者サラメの暗殺実行のため、ベイルートい入りした。
ビショップは報道カメラマンを装い、サラメの主治医アマードとの人脈を築いた。


その後アマードと共に難民キャンプ支援を行うエリザベス・ハドレーと知り合い、男女の仲になるビショップ。
作戦参加のため加わったミュアーに貴重なスキットル(ウィスキーの小分け容器)をプレゼントしたビショップは、その入手を「ディナー作戦」と言って親交を深めた。

 

活動資金を得るため、テロ集団とも関係があったエリザベスを調べ上げたミュアーは、その事をビショップに伝えて警告。
サラメ暗殺はビショップが進める、アマード医師による毒殺を考えていたが、作戦決行が速まりミュアーがバックアップとして考えていた、義勇軍による爆破作戦も並行して準備されていた。
手違いでアマード医師の到着が遅れる中、見切り発車で爆破作戦が決行された。
ミュアーのやり方について行けなくなったビショップは、それ以来ミュアーと連絡を絶った。
サラメ暗殺後、ミュアーは情報を知りすぎていたエリザベスを危険視し、捕虜交換で彼女を中国政府に引き渡していた。

 

ビショップがエリザベス救出のために行った事を理解していたミュアーは、聴聞の合い間にマスコミと繋がりのある仲間に連絡し、捕虜の件をニュースで公表させる。
だが通商会談の進行を優先させるため、否定の報道が上書きされた。

 

ミュアーはビショップ救出のため、CIA長官のサインを偽造して蘇州刑務所近くの米軍基地に命令書を発行した。
それに並行して、ダンカン経由で中国の地方役人を買収し、刑務所一帯の停電工作を指示。その費用は彼の退職金282,000ドルを充てた。


だがミュアーの行った行為はフォルジャーらにも筒抜けで、金を振り込んだ目的を追及される。

その対策として、南国の物件費用282,000ドルが記載されたパンフレットを用意していたミュアー。

 

蘇州刑務所で停電発生。

2機のヘリが侵入してビショップとエリザベスを救出。
ミッション名が「ディナー作戦」と聞いて、ミュアーの仕業と知り涙を流すビショップ。

 

 

新聞小説 「カード師」 (10) 中村 文則

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朝日 新聞小説 「カード師」(10) 143(2/25)~151/(3/4)
作:中村 文則  画:目黒 ケイ

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感想
錬金術師の話がようやく終わり、メインストーリーに戻って来た。
「僕」の商売領域に現れた市井(紗奈)。

奪ったものは返せないが、言われたところに出掛けて、ある男をポーカーで勝たせれば全て教えると言う。
今のところは市井の話に乗るしかない。

 

だがその一方で、佐藤から渡された別の手記を読み始める「僕」。

これがエテカの頃から300年も下った時代の「魔女狩り」の話。

また当分この話が続くだろう(うんざり)
本当に「とらえどころ」のない小説。

最初の紹介記事で「テーマも多岐に亘ります」とあったが、これらをテーマと言えるのか。単なる挿話であり、メインストーリーの伏線にもなっていない(今のところ)。
例えば「ダヴィンチ・コード」辺りなら、当時の絵画や教会制度が、謎解きの直接の道案内だった。

この小説にはそういう導きとしてのものがなく、単に話として記述されているに過ぎない。
将来、小説の完結を迎えて「ああ、そうだったのか」と言わせてくれるのだろうか・・・? 

 

オマケ
カードにGPSを仕込んだ、とあるが、発信器には電源が必要であり、さすがに1ミリ以下のカードに組み込むのは不可能(情報チップと勘違い?)
佐藤に付けられたギミックのリングに対抗しての話なのだろうが・・・
この辺りのリサーチの甘さも、この小説に対する取り組みの姿勢が感じられてツ・ラ・イ

 

あらすじ 143 ~ 151

<賭博者> 1 ~ 9
客が溢れている。不定期な欲望の動きか。
タートルネックの男。ブラックジャックでの「ヒット」の要求。

裏目に出て負ける。まるで負けるために来ているようだ。
もっとシンプルな客もいる。

隣りのルーレット台から動かない、柄ネクタイの男。


かつてわざと勝たせ、強い感覚を植え付けていた。中毒の発生。
快楽を覚えた脳は、反復を求める。
酷く負けている柄ネクタイ。今日の負けで前回の勝利の全てを失うだろう。だが彼は終わらない。もう終わることが出来ない。

 

ドストエフスキーの「賭博者」という小説のレクチャー。

サド性とマゾ性に関する解釈。
ジョセフ・ロージーの映画「エヴァの匂い」の中での、サド性とマゾ性にも関連を見出す。
賭け事全般についても、その対象が作り出す幸運と不運の支配下に入り、快楽と絶望に振り回される。
賭博に嵌る人間はマゾ的属性を持つ。

ここに来て、コントロールされたがっている人間たち。

 

だがポーカーは、他のギャンブルよりゲーム性が強く、ブロと素人の差が歴然としている。
常連客の痩せた男。自分が最も強い役を成立させていると確信した時、スロープレイになり、相手を誘い込む。
序盤では場の他の者の動きに合わせているが、相手が引けない状況になった時に賭け金を上げた。

そして互いのカードがめくられ、痩せた男の勝利。
彼は多分金のためにポーカーをしていない。
スロープレイを楽しむ女性客も居る。そんな時の彼女は、性的な行為にも感じられる。被虐的に見える姿に、男は群がり戦いを挑むが、最後に微笑むのは彼女。

 

「待ってるんだから、早く配って」
声が聞こえてブラックジャックのテーブルに向き直る。

市井が座っていた。
平静を装ったが、少し遅かった。

カードを二枚配る。

彼女がここに居る事実に、意識がまだついてこない。
♢7と♣Jで計17。「ヒット」の言葉。

もし4を超えるカードを出して21を超えると負け。
ここはステイの方が、との助言にも「ヒット」
カードは♠4で彼女の勝ち。

 

目的があって近づいた事に、なぜ、と問う。
三年も前に受けた面接の相談をしたのは、あの時自信がなくて飲まれた事から、受ける前に占いをしていたら、と興味が湧いたから。
彼女がまたカードを要求し、再び彼女の勝ち。

本当に聞きたい話を始める彼女。

盗んだものは、全て第三者に渡している。
ここに来たのは取引きをしたいから。
この場所に行けば、全部を話すと言われて渡された封筒の中の紙に、日付と時刻、住所が書かれている。
ここのディーラーになって、竹下という男を勝たせろと言う。
ゲームはポーカー。

カードも渡された。神田と名乗れば全て通るとの事。
これをしても全てを教えてくれる保証はない。

だが、あなたに選択肢はないと言う彼女。
席を立つ時、私の名前、覚えました?と問われ、紗奈さんでしょうと答える。「やっと覚えたみたいですね」

わざと勝たせていた。

換金カウンターに向かう彼女に10%オフの会員証を手渡す。
こんな時にも営業、と笑う紗奈。それはGPSだ。

 

どうすればいいか。思わずタロットに手が伸びる。

信じていない筈が、自分の運勢を占っていた。
自分の運勢。今は凶。何が起きてもおかしくない。

注意すべきが女。苦い笑い。
タロットカードを切って並べる。悪魔、吊るされた男、塔。


カードを戻し、何度も切る。再び現れるカードに悩む。

佐藤から受け取った、別の手記を手に取る。

「一五八三年 ヨーロッパ南部 魔女狩りの記録」とある。
エテカとは別の人物が書いたもの。

 

ラジオドラマ「地下鉄のアリス」1977年 別役実氏を偲んで

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別役実さんの訃報を3/11の新聞で知った。
不条理劇の作家、という程度しか知らないが、40年以上前に彼が作った「地下鉄のアリス」をたまたま録音しており、一度だけ聴き返していた(録音したのは1978.7.22で、再放送時のもの)
今回聴こうと思って、何とかテープは見つけたが、肝心のデッキが壊れたままで放置状態。


でも大丈夫♪ ネットで探したら、ありました。
内容はあらかた忘れていたが、岡田英次が「砂の女」の昆虫学者とダブって、不思議な世界に誘われた。
そういえば、こちらも武満徹。不条理劇には良く似合う。
りりィもいい味出している。

脚本:別役実 
音楽:武満徹  
制作:現代制作社(NHK東京)
効果:後藤伸行,技術:鈴木清人,演出:平野敦子

出演
岡田英次,りりィ,瀬川哲也,加藤健一,若宮大祐,新村礼子,
稲垣昭三,風間杜夫,水田マリ,草薙良一,中西良太,斎木茂,
中川彰,瀬戸山秀樹,大竹信,堀レモン,笹尾圭

初放送:1977/03/22 再放送:1978/07/22
1977年度イタリア賞参加


聴いてみるのが一番です(55分間のトリップ)


あらすじ
地下鉄をこよなく愛する男がいる。

いつも後部車両に乗り、目立たない様気を配る。
試している遊戯「地下鉄ゲーム」
中央に座ってガモフの天文学を読んでいる。実は本など読んでいない。読むふりをしながら乗客を観察。
本を読んではいないと見抜かれなければ自分(親)の勝利。
幾度か勝利し、幾度か敗北。だがその緊張が途切れることもある。
顔がだらんとし、異変に気付いて客たちが集まる。
次の駅で客たちに連れられてベンチに横たわる。

敗北には耐えなければならない。
そんな事があると、地下道に降りる前に疲労する。
私の体の各部がしみじみと崩壊していく。

どうしたの?と声をかける少女。外に出たいのだという。

友達の家に行く道順が紙に書いてある。
男は少女を連れて地下鉄に乗る。

だが何度通っても駅に着かないという少女。
性急すぎたんだよ、と男。なぜ?の問いに「ここは地下鉄だから」
風が吹いているわ、と言う少女に、地下鉄全体が呼吸している、と男。

ピンボールをする若者に、いろいろ指図する中年。

さっきここにいた娘を知らないかと言うが、若者は知らない。
娘の見舞いに行ってくれるというから道順を教えた。まるで知らない娘。
ああいうのを地下鉄迷子っていうんだ・・・・

切符を買う男。

地下鉄という大きな装置が、切符を買ったことを知った。

中年が、地下鉄の一号から六号までが全部繋がったらしい事を話す。

完成したというのは本当なのか?と若者。
今誰かアリスって言ったよ。あのコに何かあった・・・
若者に「アリスがどうかしたのか?」という言葉を人の流れに乗せるように頼んだ中年。
噂の流れが一巡して中年に戻って来た。 「もう少しだったんだが・・・」

アリスをエレベーターに乗せる男。この地下に何百本もの地下鉄がある。そこの通風口から空を見ると、昼でも星が見える。

アリスの事を心配する中年に、あのコはもう着いているよ、と若者。
娘がいるという、しもた屋の二階を訪れる若者。

女のコが訪ねて来なかったか聞くが、娘は知らない。
「ここにはもう、誰も来ないんですよ」

ラーメン屋で食事している中年と若者。

あのコは迷い込んでいる、私が迷わせてしまった。

操車場を過ぎ、通風口に辿り着いたアリスと男。 「星空が見えるわ」
ここがボクたちの場所。ここに居ればゲームをしなくてすむ。
アリスが、地下鉄が完成した噂を話すと、ゲームとならない、嘘だ!と言って走り出す男。

中年が、通風口を見つける。そこでアリス、アリス と小さく呼び始めた。

地下鉄会社に電話をした男。広報課に繋がり、地下鉄の事について聞きたいと話すと、こちらは事実を伝えるところではなく、調査するところだとの返事。質問の中に応えがあると言う。

質問の中にしか答えがないのだとしたら、ここから出られないかも知れない、と男。
しもた屋に行くわ、と言うアリスに「行っちゃだめだ」
誰かが呼んでいるわ。
あの駅は間違っている、君は騙された。

呼びかけを続けたが、諦めた中年。

私が娘に会いに行くのがイヤだったから・・・
街の噂。アリスという女のコが行方不明になった。

地下鉄がこうなってから、いろんな事が起こる。

逃げるんだ、と言ってアリスと地下鉄に乗り込む男。

どんどん前に行き、先頭車両へ。
運転席に行くんだ。ガラスを割って運転席を見ると無人。
やっぱり地下鉄は完成したんだ。
僕たちに応えてくれる運転手がいなくなった。
ハンドルは自動になってるけど手動にできる、とアリス。
僕たちのものになる。しもた屋に行きたい、とアリス。
警報が鳴り、信号も全て赤になった。
もう止まらない。僕たちが運転し始めた。

暗いわ  暗いね
アリス、愛しているよ。いや、何も言わなくていい。前を見ててくれ。
僕は、そんな風にして愛していたいんだ。
暗いわ  暗いね

しもた屋での会話。
暗いねー 電気点けようか。いいわ、この方が星見えて。
今日もお父さん来てくれなかった。

ねえ見て! 地下鉄が火を吹いて空を飛ぶわ
本当に。 何てきれい

アリース!

 

 

コズミック フロント☆NEXT選 ▽ザ・プラネッツ  (4、5集) BSプレミアム

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1~3集はコチラ

感想
再放送という事で、部分的な選集だと思っていたら、残りの2集も放送された(ラッキー♪)
土星と、それよりも更に遠い天王星、海王星、冥王星についてのもの。
科学の暗記で「スイキンチカモクドッテンカイメイ」はお約束だったが、その中で何が岩石惑星で、何がガス惑星かなんて、気にもしなかった。
一時期海王星と冥王星の、太陽からの距離が逆転して話題になった事があったが、冥王星が太陽系惑星から除外された事については、あまり意識がなかった。
このシリーズであからさまには言っていないが、太陽系惑星を8個と言ってる以上は・・・
だからこそ、宇宙探査に惑星である、ないは関係ないと配慮している。
冥王星(プルート)を発見したのがアメリカ人だったという事から、本件はすごくデリケートな問題。
ディズニーのプルートも、この星が発見された年に誕生したキャラクターと聞けば、アメリカ人の拠り所でもあったのだろう。


4.破壊と創造の暴君 土星 3/5放送 番組概要

 

巨大ガス惑星の誕生経緯
46億年前、地球と同時期に出来た。材料は氷と岩石。
これに水素、ヘリウム等のガスが引き寄せられ、熱せられて輝く。
気圧は地球の一千万倍。深部では炭素圧縮によりダイヤモンドが出来るが、それさえ溶ける。
 

土星に特徴的なリング。なぜ出来たか。
土星の衛星は62個。それらの多くは土星と同じ様な材料(氷と岩石)。
土星近くにあった氷の衛星が、土星の重力で引き裂かれ、破片が広がり数日で土星を取り囲んだ。

衛星に生命存在の可能性
衛星エンケラドスの氷の下に何があるか。
ボイジャー1号が1980年に撮影した、片側に吹き出す何か

→2004年の後継探査機カッシーニの観測で水蒸気の間欠泉を発見。
エンケラドス内部にある液体の水の秘密→公転軌道
土星を回るエンケラドスは、衛星イオネに引かれて楕円軌道を取る。

潮汐力で星全体が変形する事で摩擦熱を発生。
噴出する水に有機化合物の存在。地球でも熱水噴出口近くに生命体。
数十億年後に知的生命体が生まれる可能性はある。

運用13年、燃料が尽きたカッシーニは、土星に墜落する事で、最後のデータを地球に送った(グランドフィナーレ)
最後に集めたデータにより、毎秒10トンの氷が土星に降り注いでいる事が判明→土星のリングが一億年後には消滅する。



5.太陽系の果て、未踏の世界へ 

                          3/12放送 番組概要


氷の巨人 天王星

 

天王星以遠は未知の領域(到着に十年以上かかる)
今までに探査されたのは一回。地球から29憶キロ。

1977年に打ち上げられたボイジャー。175年に一度起きる、惑星が一方向に集まる時期に合わせて投入する計画。
1号2号がほぼ同時期に打ち上げられた。

天王星、海王星にまで行ったのは2号。

 

地球を離れて9年。天王星に到達。
大気成分は水素とヘリウム。内部はメタンとアンモニアがカクテル状に。
10個の雲がある。温度は-224℃であり、太陽系で最も低い。

接近により過ごしたのは6時間。
謎の解明
①見つかったリングの形状、位置を衛星が支えている(イプシロン、コーデリア)。
②反時計方向に公転(普通は自転と同じ方向)金星と天王星だけが逆。
③自転の向きが横。仮説として大きな惑星の衝突。


海王星

 

天王星から16憶キロ。地球を出てから12年で到達。
青く見えるのは大気にメタンがあるから。
大気の活動が活発で強い風が吹く(メタンの雲)
時速2000キロの風。太陽エネルギーが乏しいのに、なぜ風が吹くか?
鍵は星の温度。-214℃。天王星より高い。

多分対流のエネルギーだが、それがなぜかは不明。

衛星トリトンの謎
間欠泉の存在。8キロ上空まで上がり、100キロ風下に飛散。
噴出する部分に太陽の光が当たる→温める(温度差4℃) わずかな光が原動力。
トリトンにある裂け目の秘密は生い立ちにあった。
自転が海王星とは逆。別の場所で出来て、衛星になった?
何十億年も前にカイパーベルト(外縁を回る小惑星群)から海王星の重力に取り込まれた。
現在はきれいな円軌道だが、最初は楕円軌道で変形して亀裂を生じた。

海王星を過ぎて、ボイジャーは太陽系の外を目指す。


冥王星

 

太陽系の果てを目指すニューホライズンズが2006年に発射された。
冥王星とカイパーベルトの探査が目的。

寿命を延ばすため、途中休眠の措置が取られた。
冥王星が見つかったのは20世紀に入ってから。

クライド・トンボーが発見。
最近になって、太陽系惑星の定義についての論争が始まる。カイパーベルトの中に、冥王星並みの惑星がいくつも見つかったため。
だが科学者のスタンスは、惑星である、ないに関わらず「謎があれば探査する」

2015年7月。ニューホライズンズが冥王星に到達。太陽から49憶キロ。
驚きの光景。初めて明かされた素顔。
注目されるのはトンボー地域。

スプートニク平原にはクレーターがなく、模様がいくつもある(蜂の巣状)
下から熱せられた液体が持ち上がる時に見えるものに酷似。
平原の下には下が熱く上が冷たい、対流が生じている。
その熱はどこから来るか。
奥深くで放射性元素が暖めている(内部に熱源)

ニューホライズンズが接近したのは、わずか数時間。

遠ざかる時に、冥王星に大気がある証拠を捉えた。


その後カイパーベルトを三年半進み、地球から65億キロ離れたところでウルティマ・トゥーレを発見。最も原始的な星。
探査機は、今でも未知との遭遇を繰り返しながら進んでいる。

宇宙探査を始めてから50年。全ての太陽系惑星に到達した。
太陽系にわずか8個の惑星。私たちの地球に生命が誕生した。
 

なぜ宇宙探査をするのか
今の地球の課題解決も大切だが、外に目を向けるのが未来に向かって重要なこと。

番組中盤に、太陽系の各惑星の位置関係についてのレクチャーあり。
太陽系を6億分の1に縮小して、太陽と各惑星との距離を評価
水星 金星  地球  火星    木星   土星    天王星  海王星
96m   180m  250m  380m    1.3km   2.6km   4.8km     7.4km

番組にはなかったが、以下の図がカイパーベルトと各惑星の関係を把握し易い。

 


 

100分 de 名著 アーサー・C・クラーク「太陽系最後の日」「幼年期の終わり」 NHK Eテレ

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番組紹介

 

感想
アーサー・C・クラーク作品は「2001年宇宙の旅」の原作者というところから入ったので、他はあまり読んでいない。

「2001年--」は本当に理詰めで構築されており、モノリス以外は小説としての「遊び」が少ない気がしていた。
だが今回初期の作品に接してみて、その発想の柔軟さに圧倒された。

 

「太陽系最後の日」は伊集院が言う様に、この番組で以前取り上げられた小松左京の「日本沈没」の本質が描かれている。

沈みゆく日本から脱出した日本民族は、その勤勉な性格から、多分20年もすれば世界の脅威となる存在を予感させる。

逆にクラークが日本を意識してこれを書いたとも思える。

  
「幼年期の終り」も同じく小松の「果しなき流れの果に」の中に、地球滅亡の危機に陥った人類を救う異星人が出て来る。宇宙は意識体という事や「階梯」の概念もクラークに影響されていた様だ・・・

続く3、4回も楽しみ。

オマケ
語りの銀河万丈さんは「ガンダム」のギレン・ザビ総帥でおなじみ(イイ声)

 

 

第1回 知的好奇心が未来をつくる 3/2放送
~「太陽系最後の日(1947年)」~ 

進行役:伊集院光 安部みちこ 
ゲスト  :瀬名秀明(作家)     語り:銀河万丈   

 

アーサー・C・クラークはSF界の代表的作家。
イギリスで生まれ、海好きな理科少年だった。
12歳でSFに目覚め、成人してからは英国惑星間協会で「宇宙開発の伝道者」として活動した。
28歳でデビュー作の「太陽系最後の日」を発表。
第二次大戦中に「地球外の中継」という、通信衛星に関する概念の論文を発表。ビジョナリスト(未来予測者)の位置付け。
キーワードは「センスの良い好奇心

 

作品導入
太陽が新星化して爆発するのを前に、地球を救おうと超大型の宇宙船を進める異星人船長のアルヴェロン。


残された時間は4時間。救出隊が向かうが、人の姿はどこにも見えない。
トンネルを発見して、中の地下鉄に乗ると自動的に閉まり走り出す。大陸間横断用であり、途中で降りられない。残された時間はあと30分。

 

原題は「レスキュー・パーティ(Rescue Party:救助隊)」
視点の逆転。異星人が未開(だと思っている)人類を上から目線で見ている。その中で列車に閉じ込められる。コントっぽい、笑える展開。

 

救出隊のパラドー人の能力で何とか脱出し、地球から離脱。

太陽は消え去った。
地球から出されていた電波を辿ると、人類の宇宙船団が現れた。
劣っていると思っていた種族が、太陽系を脱出した勇気と行動力に驚愕。
あの連中は怖い。礼儀を尽くした方がいい、と言うアルヴェロンを笑う部下。20年後、その言葉は笑いごとでは済まされなかった。

 

日本沈没と響き合う感じがする(伊集院)
1970年「SFマガジン」創刊号に本作品が載り、小松左京がこれを読んで夢中になりSF作家を目指したという逸話がある(瀬名)
こういうものを「俺スゲー小説」と呼んでいるが、自己陶酔の恐れもありSFのいい面と悪い面を刻み付けた。

ここに出て来るパラドー人に、ある思いが投影されている。

地球外生命の予感。
あらゆる知的種族は、最終的に個々の意識を犠牲にし、大宇宙には集合精神しか残らないだろう。
物質の形を取らないという考え方も出来る。精神的、宗教的存在、かも知れない。

 

クラークに影響を与えた作品
バナール宇宙・肉体・悪魔」群体知性、サイボーグ等の未来予想図
ステープルドン最後にして最初の人類」数十億年に亘る人類の興亡を描く。イギリス人の伝統を受け継いだ(ヘンな小説)

SFは、科学を正確に書いてないといけない、と言われがちだが、今回の若きクラークが好奇心をストレートに出した作品は今でも通用する。

 

 


第二回 人類にとって「進化」とは何か 3/9放送
~「幼年期の終わり(1952年)」~

クラーク最高傑作と言われる。テーマは「人類の変容の可能性」
現在言われている、人間とAIとの一体化、電脳世界に精神が入るといった概念の先駆け。

 

作品導入
ある日、巨大な宇宙船の群れが全世界に現れる。

異星人オーヴァーロード。


地球上の問題を総督カレランが解決してくれる。
武力を使わない平和な社会の実現。カレランの正体は謎。
50年後にカレランが姿を現した。革で出来た翼を持ち、神話に出て来る悪魔そのもの。

 

一見ユートピアだが、人間は無気力となる→人類家畜化小説の代表。
オーヴァーロードの目的は何か? 家畜化ではない
なぜ悪魔と思うか。 未来に対する人類の記憶。

未来に悪魔がやって来るというビジョン。 神秘×科学

 

50年経った結果、人々は大きく変化。

労働は短縮され、人々はスポーツ、娯楽に時間の大半を使う。
彼らの目的は謎だが、オーヴァーロードのラシャヴェラクが世界中の神話を読み漁っている。
人々が行うこっくりさんの様なゲームを監視するラシャヴェラク。

リーダーのジャン・ロドリゲスがオーヴァーロードの母星を訊ねると、複数の人が持つ棒が、ある文字列を指す(NGS549672)
その時、メンバーの一人ジーン・モレルが気絶。
その事をカレランに報告するラシャヴェラク。

彼女は重要人物だが、プライム・コンタクトではない。
後に彼女は息子ジェフリーを産む。

文字列がオーヴァーロード母星の座標だと知り、彼らの宇宙船に密航したジャン・ロドリゲス。母星に行って彼らの技術力に驚く。
一方カレランは地球人に、自分らは格上の存在「オーヴァーマインド」に命じられていると言った。君たちは絶滅の一歩手前に居たと言う。
そして、君たちは太陽系を制する事は出来るだろうが、人類が宇宙を制する日は来ないと宣告。

 

科学とオカルト→食い合わせが悪い。
オカルトの話から、人類の可能性の話へと変貌。
現代でも、AIが発達して人の雑用を引き受ければ、ベーシックインカムさえあれば、人が芸術等に専念出来るという考えがある。

 

ジェフリーが7歳になった時に激変が起こる。
超能力で、触れずに物が動かせたり、精神体となって宇宙を探検出来るようになった。


実は人類をメタモルフォーゼ(変容)させる事がオーヴァーロードの目的だった。
この日を境に、10歳未満の子供たち全てがメタモルフォーゼを起こし、一人ひとりの意識が繋がり、オーヴァーマインドとの一体化が可能になった。


オーヴァーロードは種族としての限界があり、メタモルフォーゼが出来ず、他の種族を助ける事しか出来ない存在。

子供たちは、親が理解出来ない存在に変貌し、彼らが起こす超常現象で地球は滅びる。
地球に戻ったジャン・ロドリゲスは、子供らのメタモルフォーゼのエネルギー源となって地球が消滅するのを見届けた。

 

肉体は滅んで、魂が天国にいます、という話・・・・
オーヴァーロードが切ない感じ(実はいい奴だった)
未来学者 レイ・カーツワイルが言うシンギュラリティ(技術的特異点)を予見。2045年頃に、AIが人類を越える。

遺伝子工学、ナノテクなどにより人類が変貌する。

我々は最後の人類かも知れない。

→子供たちがメタモルフォーゼするのを見守る産婆役。

 

本当のユートピアとは何か、の問題提起。
次の「都市と星」で答えが描かれる・・・・

 

 

機動戦士Zガンダム(TV版) 1985年

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1985年(昭和60年)3月2日から1986年(昭和61年)2月22日まで放送 (名古屋テレビ)
番組詳細

感想(全体概要)
ファーストガンダムの後に続く物語を全く観ていなかった事は以前にも書いたが、その後「ガンダム SEED」「ガンダムSEED Destiny」のレビューを行った事もあり(先日はTHE ORIGINをレビュー)、ファースト以降のストーリーが気になっていた。

本作(ゼータガンダムという)はファーストガンダムの「1年戦争」から7年後の世界が舞台。地球連邦軍内に出来た過激エリート部隊「ティターンズ」と反地球連邦組織「エゥーゴ」との戦いを描いたドラマ。

主人公のカミーユは工学系の学生で、設定として「ガンダム」開始当時のアムロより少し年上(16歳ぐらい?)。
父親がガンダムMk-2の開発者という点もアムロを引き継いでおり、要は初めて乗っただけでガンダムを操縦出来るというための必然か。
初回で出会ったジェリドと最終話近くまで戦う関係になるという点が、物語に一つの軸を与えている。
第一回目で、MPに殴られたのを恨んでキれ、ガンダムMk-2で仕返しするという直情型のカミーユ。

先が思いやられたが、比較的早い段階で人間的成長を遂げる。
物語のポイントは、ファーストでは地球連邦軍側が正義とされ、ジオン対地球連邦という図式だったのが、反連邦組織のエゥーゴ側からドラマが描かれている点。シャア(クアトロ大尉)がキーマンとして存在する。

ファーストでのメンバーが数名サプライズ的に出て来る中、実にたくさんの女性が戦闘パイロットとして登場する。
また子供相手(とも言えないか)のアニメで女同志の争い、確執等も多く描かれ、特にレコアなどはクワトロから愛情をもらえない事からシロッコに走り、毒ガス作戦までやってしまうという恐ろしさ。

戦死する時まで引っ張られる「辱めを受けた」という言葉。

ニュータイプという存在に対しては、ファーストでのアムロに代表される勘の良さ、といった部分が拡大され、カミーユ他若いパイロット、敵パイロットの間でテレパシーの様な相互認識の感覚を持つ。

また中盤でのフォウとカミーユ、後半でハマーンとカミーユが宇宙を漂う様な感覚になる点などが、ニュータイプの側面として描かれる。

この場面でカミーユが言う「判り合える力」。

これはファーストでのアムロとララァから継承されている概念であり、将来的にも人類の希望として受け継がれて行くのだろう。

また題名にもなっているZ(ゼータ)ガンダムは、メカ的にはアーマーに変形可能なモビルスーツ、という位置付けで、ドラマ後半までそれ以上の存在とは言えなかったのが、ラスト2話で、散って行った者の思念を集めて武器と出来得る、特別なモビルスーツである事が明らかになる。
この辺りは、もう少しネタばらしで、途中にその概念とか武器としての威力とか現してもよかったと思う。

それから、これだけシャアが前面に出ているのに、その妹セイラが出て来たのは第37話のみ(それもセリフなし!)

ファーストでは、ラストでシャアの行動を止める役割りをしていたので、それなりにドラマに組み入れる事も出来た筈。本ドラマ中でもアムロに向かって「セイラさんが好きだっただろう」という言葉もあったし。


原作       矢立肇(原案)、富野由悠季
総監督    富野由悠季

キャスト
エゥーゴ&カラバ
カミーユ・ビダン                   飛田展男
クワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)  池田秀一 
アムロ・レイ                     古谷徹
ブライト・ノア                      鈴置洋孝
エマ・シーン                     岡本麻弥
ファ・ユイリィ                      松岡ミユキ
ヘンケン・ベッケナー、ナレーション       小杉十郎太
ブレックス・フォーラ                         藤堂貴也
レコア・ロンド                                  勝生真沙子
ハヤト・コバヤシ                             鈴木清信
ベルトーチカ・イルマ                        川村万梨阿
カツ・コバヤシ                                難波圭一

ティターンズ
パプテマス・シロッコ                         島田敏
ジェリド・メサ                                  井上和彦
ヤザン・ゲーブル                             大塚芳忠
ジャミトフ・ハイマン                          西村知道
バスク・オム                                  郷里大輔
ジャマイカン・ダニンガン                   キートン山田
カクリコン・カクーラー                       戸谷公次
ライラ・ミラ・ライラ                           佐脇君枝
ブラン・ブルターク                          中村秀利
ロザミア・バダム                            藤井佳代子
ベン・ウッダー                               大林隆介
フォウ・ムラサメ                             島津冴子
サラ・ザビアロフ                            水谷優子
マウアー・ファラオ                          榊原良子 
ハマーン・カーン                            榊原良子
ゲーツ・キャパ                             矢尾一樹 

アクシズ
ハマーン・カーン                           榊原良子

民間人・他
ウォン・リー                              名取幸政
カイ・シデン                              古川登志夫
キッカ・コバヤシ                          井上瑤
セイラ・マス                              井上瑤
ハサウェイ・ノア                           花中康子
フラウ・コバヤシ                           鵜飼るみ子
ミライ・ノア                               白石冬美
レツ・コバヤシ                           鵜飼るみ子



あらすじ(各話短縮バージョン)
1話 「黒いガンダム」
サイド7のコロニー「グリーン・ノア」が舞台。ティターンズ(連邦軍内のジオン残党狩りのための組織)と反連邦政府組織エゥーゴとの対立。
グリーン・ノアに住む少年カミーユ・ビダン。1年戦争後、今は定期便シャトルの船長をしているブライト・ノア中佐の追っかけをしている。

ティターンズのジェリド中尉に、名前についてからかわれ(女性名)、彼を殴って連行されるカミーユ。

エゥーゴのクアトロ・バジーナ大尉が連邦のガンダムMk-Ⅱを奪取するために潜入・攻撃。カミーユはその混乱に乗じて脱走する。

2話 「旅立ち」 
クアトロ大尉とその部下が激しい戦闘を起こしている最中、カミーユは横暴な尋問を行ったMPに復讐するため、無人のガンダムMk-Ⅱに乗り込み、その目的を果たす。

その上、クワトロに加勢してガンダムMk-Ⅱの奪取に協力。
クワトロ大尉の呼びかけに従い、コロニーを去るカミーユ。

その現場を見てアムロ・レイの再来を感じるブライト。
カミーユの父はガンダムの開発者。

母も軍の研究者だったが夫婦仲は悪く、父は不倫をしている。

3話 「カプセルの中」
エゥーゴの旗艦「アーガマ」に回収されたクアトロ、カミーユらは、ティターンズのMSと交戦するも、何とか防戦。
ティターンズのエマ・シーン中尉が、指揮官のバスク・オム大佐からの親書を持って接触。カミーユの母親と交換でガンダムMk-Ⅱとカミーユの引き渡しを迫る。
カミーユがガンダムMk-Ⅱで回収に向かうが、MSを駆るジェリドが母親の乗ったカプセルを破壊した。


4話 「エマの脱走」
母を殺され逆上するカミーユだが、結局ガンダムMk-Ⅱと共にティターンズに引き渡される。そこで父フランクリン・ビダンに再会するカミーユ。
バスクのやり方に反発するエマは、カミーユとフランクリンをガンダムMk-Ⅱと共に逃がし、自分もそれに加わってアーガマにたどり着く。
そんなエマを信用しないクワトロ大尉。

5話 「父と子と… 」
カミーユの父フランクリンは、クワトロ大尉の機体「リック・ディアス」をティターンズに持ち帰り、自分を有利な立場にしようとした。

機体と共に脱走した父を追うカミーユだが、どうしても撃てない。

流れ弾に当たって死ぬフランクリン。僅かな間に両親を失ったカミーユ。

6話 「地球圏へ」
地球のジャブロー基地は連邦の象徴とされるもの。

そこを偵察するために派遣されるレコア・ロンド少尉。

地球に降下するシャトルを助けるため、片腕状態のMk-Ⅱで出撃するカミーユ。レコアは無事地球に降り立った。

7話 「サイド1の脱出」
ティターンズ艦隊を振り切るためにサイド1を目指すアーガマ。

サイド1にあるコロニーにカミーユとエマを連れて行くクワトロ大尉。

その30バンチコロニーでは、ティターンズが毒ガスを散布して大量虐殺を行っていた。
ティターンズのライラとの戦いで、ニュータイプとしての片鱗をみせつつあるカミーユ。

8話 「月の裏側」
正規パイロットにされるのに反発するカミーユ。

エマはそんなカミーユに、地球で出会ったアムロ・レイの話をした。
月面に降りたアーガマ。師匠のライラを殺されたジェリドは、怒りに燃えてアーガマを攻撃。カミーユは慣れない月面での戦い。

辛くもクアトロ大尉のリック・ディアスに助けられるカミーユ。
月面都市アンマンに入港するアーガマ。

9話 「新しい絆」
レコアは、ジャブローの偵察中に、元ホワイトベースのクルーで、今はフリーのジャーナリストをしているカイ・シデンに助けられる。
会議に遅れたカミーユを殴りつけるウォン・リー(エゥーゴの出資者)。
ティターンズの戦艦を奪取する作戦を立てるエゥーゴ。

その出撃の後で隙を突かれて攻撃を受けるアーガマ。先遣隊に同行したカミーユだが、エマの叫びを心で感じて救援に向かい窮地を救う。

カミーユにニュータイプの資質を感じるエマ。

10話 「再会」
ジェリドとカクリコンはアナハイム・エレクトロニクスから譲渡された新型MSでアーガマを攻撃。だがカミーユとクワトロ大尉の百式MSにより撃退。

エゥーゴ艦隊は月からの脱出に成功。
ジャブローへの降下作戦中に、攻撃を受けているシャトルを救出するアーガマ。その船長がブライトだった。

シャトルに乗っていた、カミーユの幼馴染みのファ・ユイリィ。

カミーユの事が原因でファの両親が捕らえられていた。

11話 「大気圏突入」
ティターンズに反感を持つブライトは、アーガマの艦長への要請を承諾し、ジャブロー進攻を進めた。カミーユと衝突するファ。

以前シャトルを襲ったメッサーラを駆るパプティマス・シロッコがエゥーゴ艦隊を攻撃する。

12話 「ジャブローの風」
ジャブロー進攻を続けるエゥーゴ艦隊。

だがクワトロ大尉は連邦側の守りの薄さを訝っていた。
レコアとカイは捕まってエゥーゴへの連絡が出来ずにいた。

捕虜として辱めを受けたレコア。
そんな中でティターンズの捕虜の情報から、連邦が基地を放棄し、地下の核爆弾を爆発させようとしている事を知るクワトロたち。
撤退を進める中、カミーユは基地内に捕らえられていたレコアとカイを見つける。

13話 「シャトル発進」
エゥーゴの地上支援部隊カラバの一員、ハヤト・コバヤシがクワトロ、カミーユらを先導して救う。機体は超長距離輸送機アウドムラ。
避難して来たハヤトの妻フラゥ・コバヤシを迎え入れるアムロ。

同行のカツ、レツ、キッカは養子。

幽閉状態のアムロをふがいない、と責めるカツ。
エゥーゴのパイロットを宇宙に返すシャトルの発進準備。

ティターンズからの攻撃を守るため、シャトルに乗り損ねるクアトロとカミーユ。

14話 「アムロ再び」
フラゥらを日本に送るため空港に来たアムロは、カツを連れて輸送機を奪い脱走、ハヤトと合流するためケネディ空港にに向かう。
ティターンズのロザミア・バダム少尉が攻撃に参加。

ジェリドは「オーガスタ研の・・・」と呟く。
ハヤトたちのアウドムラは、ロザミア少尉のMAギャプランに襲われ、カミーユが応戦するも苦戦。アムロはその窮地を知って輸送機を体当たりさせる。クワトロ大尉として戦うシャア・アズナブルとの再会。

15話 「カツの出撃」
長い幽閉生活で、戦いへの意思が沸いて来ないアムロ。

カツだけでなくクワトロにも責められる。
アウドムラはシャトル基地のあるヒッコリーに向かう。

誘導のためにカラバメンバーのベルトーチカ・イルマが乗船。
途中、アウドムラはロザミアに襲われ、焦ったカツが独断でガンダムMk-Ⅱで出撃。

後を追ってクワトロとカミーユも出撃するが、アムロは出られない。

16話 「白い闇を抜けて」
ヒッコリーに到着したアウドムラ。

皆はシャトルの準備を始める。カツも宇宙で戦う事を決めた。
ベルトーチカの激励で再びMSに乗る決心をするアムロ。
シャトルを狙って再びティターンズの攻撃。

アムロとカミーユの協調で応戦し、クアトロ大尉とカツを乗せたシャトルは無事地球から離脱。

17話 「ホンコン・シティ」
指揮官のブランを失ったティターンズの副官ベン・ウッダーは、アウドムラと兄弟機のスードリを指揮。日本のムラサメ研究所に協力を要請した。

強化人間のフォウ・ムラサメと共にサイコ・ガンダムが合流。
武器、物資調達のため、ルオ商会に接触するアムロ。

そこでブライトの妻となったミライ・ノアとその子供二人に出会う。
フォウが操るサイコ・ガンダムによりメチャクチャにされるホンコン・シティ。カミーユは苦戦。

18話 「とらわれたミライ」
アムロはミライにアウドムラへの乗船を勧めるが、断られる。

この接触によりミライの存在がウッダーに知られ、ミライ母子が拉致されてアウドムラ引き渡しの駒にされる。

責任を感じたアムロが単身ベンの元に行くが、アムロも人質にされてしまう。
降伏を装ったハヤトは、海中からガンダムMk-Ⅱのカミーユを接近させる作戦でミライらを救出した。
一方、フォウとカミーユは交戦した時の不思議な感覚から、互いを知らないまま惹かれ合う。

19話 「シンデレラ・フォウ」
フォウをティターンズ側の人間と知ったアムロはカミーユに警告するが、それに反発するカミーユ。
夜の街で再会するフォウとカミーユは唇を重ねる。
不在のフォウに代わってサイコ・ガンダムを操るウッガー。だが途中で制御不能になり、フォウを呼び戻す。カミーユもガンダムMk-Ⅱで応戦。

戦いの中でサイコ・ガンダムのパイロットがフォウだと知り、愕然とするカミーユ。

20話 「灼熱の脱出」
ニューギニアのティターンズ基地に向かうアウドムラに対し、スードリで特攻を仕掛けるウッダー。サイコ・ガンダムにも出撃を命じる。
サイコ・ガンダムと戦うカミーユだが、ノーマルスーツでフォウの前に立ち、家族の話をする。フォウは銃でカミーユを追い払うが、その後スードリに突っ込み、大気圏突破用ブースターを切り離す。

咎めるベンに撃たれるフォウ。
ブースターで宇宙に行けというフォウの言葉を聞くアムロとカミーユ。

アムロは行くようにカミーユを促し、支援に回る。

ブースターは発進し、アーガマに回収されるカミーユ。

21話 「ゼータの鼓動」
アーガマの一員に戻ったカミーユだが、まだ地球に心を残していた。
ティターンズ総帥ジャミトフに表面上の忠誠を誓うシロッコ。

疑いながらもそれを利用しようとするジャミトフ。
指揮下に入ったジェリドとマウアーに、ジャミトフの本心を解説するシロッコ。そしてジェリドらは新MSのガブスレイでアーガマを攻撃する。
迷いながらの戦いでジェリドに追い詰められ、ノーマルスーツで放り出されるカミーユ。そこに援軍が入ってカミーユは助けられる。

相手は軍曹として働くファ・ユイリィ。

完成したZガンダムを配備しに来たのだ。

22話 「シロッコの眼」
ニュータイプ候補生のサラ・ザビアロフとシドレを訓練するシロッコ。

まだ少女とも言える二人と訓練に出たジェリドはMSメタスとGディフェンサーを輸送中のレコアと遭遇。

レコアの危機を感じたカミーユとエマ、ファが出撃し、何とか撃退。
アーガマに帰ると身勝手な行動をしたファに平手打ちをするエマ。
一方勇み足だったジェリドはシドレを死なせ、サラも恐怖のために戦線から逃避。この結果を全て予測していたシロッコに不信を抱くマウアー。

23話 「ムーン・アタック」
ティターンズが月の重要都市フォン・ブラウンを制圧するためのアポロ作戦。エゥーゴはその阻止のために戦うが、善戦及ばず、シロッコの強行着陸を許した。

24話 「反撃」
ティターンズの情報収集のためにフォン・ブラウン市に潜入したカミーユ。だがジェリドとマウアーに捕まる。その窮地を救ったカツ(後を追って来た)。レコアがZガンダムで出撃し、市街戦となる。

その余波で再びジェリドと遭遇するカミーユだが、そこから脱出し、レコアからZガンダムを引き継ぐ。

ティターンズの指揮官ジャマイカンはフォン・ブラウン市から撤退。
一方連邦議会総会に出席していたブレックス准将がティターンズに暗殺される。クアトロに後を託すブレックス。

議会は連邦連邦軍がティターンズの傘下に入る事を議決。

25話 「コロニーが落ちる日」
サラがアーガマに投降して来る。ティターンズが月の都市グラナダにコロニー落としをする作戦があると伝えた。

作戦自体は信じるも、何か裏があると感じるブライトたち。

ラーディッシュの艦長ヘンケン。エマに横恋慕。
27バンチの移動を確認するも、フォン・ブラウン市、グラナダ市、いずれに落ちるのかが不明。

ジャマイカンはこのチャンスで攻撃を仕掛ける作戦。反発するヤザン。
サラに接近してしまうカツ。丸め込まれてザクのところへサラを連れて行く。サラはザクに乗り込んで脱出。
エマ、フォらの努力でコロニーのコースが変わり、グラナダ市への直撃は免れた。

26話 「ジオンの亡霊」
ジャマイカンのコロニー落としに反発したヤザンは、独断でアーガマに攻撃を進める。
ヤザン部隊とカミーユらの戦い。

ヤザンは攻撃から撤退すると見せかけて、旗艦アレキサンドリアの艦橋をエマに撃たせ、ジャマイカンを爆死させた。

27話 「クワトロ大尉の帰還」
エゥーゴの未来をブレックスから託されたクアトロ大尉。

ハヤトはシャトルでクアトロを送り出す準備を進める。
アーガマとラーディッシュもその回収に動くが、そこを狙ってヤザン隊の攻撃。それに応戦するカミーユたち。
交戦の中をクアトロはシャトルからボートで離脱し、アーガマに回収される。

28話 「ジュピトリス潜入」
アポロ作戦の功績がありながらヘリウム輸送船ジュピトリスの船長に戻ったシロッコ。レコアは廃棄寸前の敵MSを改修して、そのジュピトリアに潜入しようとしていた。反対するカミーユを突き放すレコア。
ファが、ジャブローでレコアが受けた屈辱の話をしかけるが、それを遮るレコア。こういう仕事が適任だから選ばれると話す。
偽ゲルググに乗り、漂流者を装ってジュピトリスに潜入したレコア。

船内を調査するうち、シロッコに見咎められる。本名を名乗るが、シロッコは見逃した。ハッチ担当の者を倒して脱出するレコアを、シロッコは知りながら再び見逃し「好きになりそうだ」と呟く。
アーガマに帰還し、ブライトに報告するレコアだが、シロッコに関する情報を言うことが出来なかった。

29話 「サイド2の危機」
出資者と会うため、フォン・ブラウン市に向かうクアトロ大尉。
一方ジェリドが主導するサイド2への毒ガス散布の作戦が進みつつあった。25バンチコロニーに取りついてガスボンベを作動させようとするところへ駆けつけるカミーユたち。

カミーユとエマが防戦し、カツがボンベを破壊した。

30話 「ジェリド特攻」
ウォンと共に出資者と会合をするクアトロ大尉。

ジオン残党により組織されたアクシズについての議論。

クアトロはアクシズとエゥーゴの協力を目論んでいた。
ヤザン隊を囮にして廃棄コロニーに誘い込む作戦に抜擢されるジェリドとマウアー。
ジェリドとカミーユの一騎打ち。

カミーユの必殺の一撃に、マウアーが自分を盾にして散った。
逆上して攻撃を仕掛けるジェリドのMSの両脚を打ち砕くカミーユ。
ジェリドはアーガマに特攻を仕掛ける。自爆するジェリド。

31話 「ハーフムーン・ラブ」
フォン・ブラウン市に寄港中のアーガマ。クアトロが地球から連れて来て、ファが面倒を見ているシンタとクムが居なくなってしまう。

探しに出掛けたカミーユとファ。そこにサラも爆破作戦のため、街を訪れていた。お互いの気配を感じる二人。
サラを見つけ、一時穏やかな時を過ごすが、爆弾を仕掛けた事を知り、その回収に向かうカミーユ。だが爆弾は配管から落ちてしまう。

連絡を受けてアーガマは脱出し、カミーユとサラも回収される。
ドサクサに紛れて脱出するサラ。逃げるサラを見て、無駄に空へ向かってビームを撃つカミーユ。
シンタとクムはシャワー室にいた。

32話 「謎のモビルスーツ」
ティターンズもアクシズとの接触を模索しており、アーガマは損傷の修理を先送りにして進んだ。
クアトロと話すレコア。

目を閉じたレコアに口づけするクアトロ。それを遠くで見るカミーユ。
シロッコの乗る戦艦ドゴス・ギアを百式のメガ・バズーカ・ランチャーで攻撃するクアトロだが、そのプレッシャーから目標を外してしまう。
ヤザンが新MSハンブラビで発進し、カミーユらは苦戦。一方クアトロの砲撃に協力したレコアは、シロッコの気配を感じてそのまま行ってしまう。
ヤザンのMSハンブラビに苦戦するカミーユ。弾切れとなったカミーユを助けるレコア。だが更にヤザンの攻撃は続く。
その時、大量の赤いMSが到着。

アクシズのハマーン・カーンが指揮する部隊だった。

33話 「アクシズからの使者」
アクシズに救われた形になったアーガマ。旗艦のグワダンに招聘されてミネバ・ザビと会見する。

7歳でザビ家復興の言葉を話すミネバを見て、ハマーン・カーンに詰め寄るクアトロ。騒ぎを起こしたせいで閉じ込められるブライトらメンバー。
カミーユが狂言に協力してクアトロが脱出。

ハマーン・カーンに迫るも逃げられる。
メンバーは何とかカーゴに乗り、アーガマに帰還。

岩のダミーを出してその場を脱出するアーガマだが、ティターンズの攻撃を受けて苦戦(Zガンダムへのクモの巣攻撃)。

戦いの最中、敵の思念を感じて心が乱れるレコア。ラーディッシュの支援で何とかティターンズを退けるアーガマ。
アクシズを訪れたシロッコは、ミネバに忠誠を誓う。

34話 「宇宙が呼ぶ声」
先の戦闘で負傷したレコア。見舞いに来たファに今までの生活を話す。レジスタンスを経験するうちに危険な事を求めるようになった。

ヤザンにアーガマ攻撃を指示するシロッコ。
ヤザンの攻撃が始まる。カミーユ、クアトロが発進。レコアもクアトロの制止を振り切って出撃。ヤザンはMSを引き、ダミーのMS部隊にクアトロらを引き付ける。その隙にアーガマを叩く作戦。

攻め込むヤザンと戦うレコアのメタス。

異様な感覚を感じるヤザンに向かってノーマルスーツのままで向かうレコア。レコアを手でホールドしたままドゴス・ギアに戻るヤザン。

レコアの戦死を感じるアーガマのクルー。カミーユはクアトロを殴り倒す。

35話 「キリマンジャロの嵐」
ドック艦ラビアンローズで修理を行ったアーガマ。

その後は地球のキリマンジャロにあるティターンズ基地へカラバが攻撃するのを衛星軌道上から支援する。
それを阻止するために攻撃を仕掛けるヤザン。苦戦するカミーユを助けたクアトロは攻撃を受けて大気圏に落ちて行く。

MAに変形して追いつき、百式を乗せて大気圏突破を行うZガンダム。
キリマンジャロに降りたクアトロとカミーユの近くにサイコ・ガンダムが降り立った。フォウは乗っていない、違和感を感じるカミーユ。

不凍湖から基地内部に侵入する二人。
フォウの制御状況を視察するティターンズ創始者のジャミトフと対峙する二人。サイコ・ガンダムに搭乗しようとするフォウを追って出口を見つけるカミーユとクアトロ。
出撃したサイコ・ガンダムに呼びかけるカミーユだが、フォウは応じない。アムロが救援に入り二人をドダイに乗せる。

同じ事を繰り返させるのか、とクワトロを責めるアムロ。

36話 「永遠のフォウ」
フォウを救おうとするカミーユに否定的なクアトロ。

単身キリマンジャロ基地に潜入するカミーユ。

互いの感覚で引かれ合い、再び出会うフォウとカミーユ。前回とは別人のフォウに驚く。薬を求めるフォウを連れてラボに行くカミーユ。

そこでフォウの秘密を知る。基地から二人で脱出するが、フォウは再び別人格となってサイコ・ガンダムを呼び出し、乗り込んでしまう。
サイコ・ガンダムに守られながら、シャトルで宇宙へ脱出するジャミトフ。

カミーユは必死でフォウを止めようとするが、そこへジェリドが捨て身の攻撃をして来る。それを庇うようにサイコ・ガンダムがサーベルを受けた。
放り出されるフォウ。

 

フォウの亡骸と共にカミーユを乗せてアウドムラに戻るアムロとクアトロ。
カミーユは「これからは、あなたはシャアと名乗らなくてはならない」と静かに言った。

37話 「ダカールの日」
キリマンジャロを制したカラバのアウドムラを追うジェリド。爆撃機メロゥドを指揮していた。行先は連邦会議総会の行われるダカール。
戦う意味が判らない、とアムロに問うカミーユ。

クアトロを議場まで護衛するアムロ。
ベルトーチカは会議の様子を全世界に中継するための工作を進めていた。エゥーゴによって議場を占拠する中でクアトロは自らをシャア・アズナブルと公表し、ティターンズの行っている所業について世界に訴えた。
通信基地の攻撃を全力で防ぐカミーユたち。ベルトーチカがカメラを回して非道な攻撃を中継したため、やむなく攻撃を中止するティターンズ。
その放送を海辺のリゾートで静かに聞く女性、セイラ。
ベルトーチカの活躍に、ご褒美のキスをするアムロ。

シャアの演説を褒めるカラバのクルーたち。

だがシャア自身は自分の自由を失ったと嘆く。

38話 「レコアの気配」
再び宇宙に戻るカミーユとシャア。合流予定のアーガマに攻撃を加えるヤザン隊。苦戦するアーガマに、シャトルから発進したカミーユとシャアが応援に。
シャアは更に百式のメガ・バズーカ・ランチャーで敵艦アレキサンドリアを撃つが、ビームが逸れる。
ヤザンに助けられてアレキサンドリアに身を寄せていたレコアが、シャアの意識を感じて艦の後退を進言していた。
その気配を感じていたカミーユ。

39話 「湖畔」
修理のためサイド2、13バンチの観光コロニー・モルガルテンに寄港。休息を取るカミーユの前にロザミィ・バタムという女性が現れ、カミーユをお兄ちゃんと呼んだ。一緒に写った写真もある。
ティターンズの拠点はルナツー、グリプス、ゼダンの門(かつてのア・バオ・ア・クー)。ジャミトフと協議するバスク・オム。

レコアを依存心の強い女と評するシロッコ。
湖で偶然少女をボートに乗せるロザミィやシンタ、クム。

それはミネバだった。楽しそうに笑うミネバを見て驚くハマーン。

ザクの急襲を受け、勢いで13バンチでの戦いを始めるシャア。
避難の流れでアーガマに乗船するロザミィ。

40話 「グリプス始動」
ロザミィの素性を怪しむシャアとエマ。

彼女の精密検査を船医のハサンに依頼する。
ティターンズはグリプスの片方をコロニーレーザーに改造し、運用しようとしていた。
一方レコアを言葉巧みに懐柔するシロッコ。彼女にメッサーラを与える。
偵察に出たカミーユはメッサーラのレコアと遭遇し、ショックを受ける。

敵になったもののコロニーレーザーの情報を与えるレコア。
情報が洩れた事を知ったバスクは、サイド2の18バンチコロニーをコロニーレーザーで攻撃する。大量の人の死を感じてしまうカミーユ。

41話 「目覚め」


バスクは陽動作戦としてレコアに18バンチへ毒ガスを撒布する作戦を指示した。
検査によりロザミィが強化人間である事が判明。だが彼女自身その自覚がない。カミーユを助けるつもりでMSのネモで出撃するロザミィ。シャアの攻撃もかわす。
準備が整い、やむなく毒ガス撒布開始の指令を出すレコア。多くの人の死で再びカミーユの心は乱れる。ロザミィにも同じ反応。
怒るカミーユを冷たく突き放すメッサーラのレコア。

ロザミィは敵のハイザックを難なく倒す。
コロニー内で死んだ子供を見てショックを受けたロザミィは、ロザミア・バダム少尉として記憶を取り戻す。

彼女の使命はZガンダムの破壊とそのパイロットの抹殺。

42話 「さよならロザミィ」
サイド2への毒ガス攻撃が再びあるとの情報で現場に向かうアーガマとラーディッシュ。
ティターンズに戻ったロザミアは、他の強化人間と共に訓練と意識調整を受ける。
再び戦場で出会うカミーユとロザミア。

だが彼女は以前のロザミィではなかった。
アーガマ隊は毒ガス攻撃を阻止したが、それはバスクの作戦であり、コロニーレーザーはグラナダ市を照準に合せるため、移動しつつあった。

43話 「ハマーンの嘲笑」
エウーゴの最大出資者、アナハイム社のメラニー会長がアーガマに親書を送る。この戦いを打開するため、アクシズに協力を求めるというのだ。それに反発するカツとファ。

カミーユはグアダンの、ハマーンへの伝達役を買って出た。
ハマーンは偵察の意味もあって、自らアーガマに出向いた。
シャアはティターンズのコロニーレーザーを潰してくれ、とハマーンに頭を下げる。ハマーンはメラニー会長が条件として出したサイド3の譲渡を受け入れた。
味方を装いティターンズに近づくグアダン。

ハマーンは後に自分らが使う事を考え、最低限の破壊を指示。
MS戦でカミーユたちが消耗する中、ようやくハマーンが攻撃開始。コロニーレーザーの射程はクラナダから逸れた。
後にグアダンに出向き、ミネバに謝意を述べるシャア。

ミネバにザビ家再興を信じ込ませるハマーン。

44話 「ゼダンの門」
エゥーゴと手を結んだ筈のハマーンはゼダンの門(かつてのア・バオア・クー)でジャミトフと会見を行っていた。
目的はザビ家再興の後押し。

それを承知のシャアたちを見て反発するカツ。
ハマーンがジャミトフを殺そうとして交渉は決裂。

そしてアクシズ、ティターンズ、エゥーゴ三つ巴の戦いが始まり、戦場は混沌として来る。
おとりとして戦っていたサラを回収してアーガマに戻ったカミーユ。

サラと再会するカツ。

45話 「天から来るもの」
ハマーンが小惑星アクシズをゼダンの門に激突させる作戦を支援するエゥーゴ艦隊。

カツは捕虜になったサラが気になるが、それを咎めるカミーユ。
一方シロッコはレコアにサラの救出を指示しMSのパラス・アテネを与える。
レコアがアーガマの後方に入り直撃(ただし致命傷は避ける)。その機に乗じてサラがMSで脱出するが、その気配を感じ散るカツが追尾する。
戦うレコアとファがゼダンの門の中で機外に出る。責めるファに自分の心を話すレコアだが、ファには理解出来ない。

再びMSに戻るレコア。追うカミーユ。
戦場で相対するカツとサラ。逃げるサラを撃てないカツ。
混戦が続く中、アクシズがゼダンの門に激突。

破片の巻き添えになってティターンズの艦隊にも被害が出る。

46話 「シロッコ立つ」
ハマーンとの会見を行うため、グアダンに終結するジャミトフ、シロッコ。シロッコを介して争うレコアとサラ。
カツが勝手に出たため、通信兵名目でグアダンに乗船を願い出るアーガマ。カミーユが追うが、既にカツは連行された後だった。

船内で兵を倒し、シロッコを殺そうとするカツだが、既にグアダン内に居たシャアに止められる。会見場に乗り込んだシャアだが皆に逃げられる。
混乱に乗じてジャミトフを殺害するシロッコ。
キュベレイに乗ったハマーンが戦いに加わり、シロッコのジオと交戦。
戦いの最中、カツがシロッコに撃った必殺の一撃を、サラが盾となって受け、散って行った。サラを失い放心状態のカツ。

47話 「宇宙の渦」
メールシュトローム作戦(コロニーレーザー奪回)のために発進するカミーユを追って出るカツとファ。

カミーユは本気で追い返すが、構わずついて行くカツ。
グアダンの兵の練度の低さに自らキュベレイで発進するハマーン。

戦いの中で強い思念を感じる。その相手はカミーユだった。

ハマーンを戦いの意思を生む源だとして倒そうとする。
強い思念が反応し合った結果、カミーユとハマーンは宇宙空間を漂う。

二人は共通の意識の中で同じものを見る。カミーユは母親、ハマーンはかつての恋人。人は判り合えると話すカミーユ。

 

だがそれも束の間、我に返ったハマーンの厳しい攻撃。カツ、ファが援護に入るが共に大破。
片腕を切られ、その場から逃げるキュベレイ。グアダンに戻り、倒すべきはカミーユだと悟るハマーン。
自分の心が弱くてハマーンを倒せなかったと言うカミーユに、アムロの二の舞になるな、と諭すシャア。

48話 「ロザミアの中で」
ゼダンの門に激突した小惑星アクシズは、月面都市グラナダに落ちようとしていた。それを阻止するための工作に努力するアーガマのMS。
ロザミアはゲーツ・キャパを兄と思い込む事で精神を安定化させ、再び強化人間として利用されていた。
アーガマの工作員にロザミアのサイコ・ガンダムMk-2が襲いかかる。

止めさせようとロザミアに話しかけるカミーユ。

ロザミアの中にはフォウの意識もあった。
だがその後ファとカミーユの言葉に混乱するロザミア。錯乱状態でビームを乱射するロザミアに向けてビームを放つカミーユ。
グリプス2のコロニーレーザーにより、小惑星アクシズのコースが逸れ、グラナダ市は助かった。

49話 「生命散って」
グリプス2を制圧したエゥーゴに対しティターンズとアクシズが総攻撃を仕掛ける。
迎え撃つアーガマのMS隊。エマとカツがペアで戦うが、ヤザン隊の攻撃をかわすうち、コアファイターが岩に激突し、カツが戦死した。
残されたエマも奮戦するが、追い詰められる。

その状況を知ったラーディッシュ。Mk-2を助けに行きましょうというクルーの声で船を向けるヘンケン。
無茶だと叫ぶエマだが、ラーディッシュは構わず突っ込み、ヤザンの集中攻撃により撃破される。
ラーディッシュの撃沈を知り、ショックを受けるカミーユの背後にジェリドのバウンドドッグが取り着いた。
ビーム攻撃でバウンドドッグをラーディッシュの方に飛ばすと、ラーディッシュ爆発の巻き添えでジェリドも戦死。
「みんな、死んでいく・・・・」呆然とするカミーユ。

無駄に宇宙へビームを撃つ。

カミーユのむき出しの思念を感じて不愉快だとレコアに話すシロッコ。

そして二人で出撃する。
MS隊を率いて出撃するハマーン。シロッコ、レコアと交戦。その後カミーユが加わり、レコアとカミーユの戦いに。
ヤザンがレコアに加勢し、カミーユはロープに捕まる。危ういところをエマが助ける。
今度はエマとレコアの戦い。エマはレコアに「貴女は女でありすぎた」と責める。「だから戦うのよ」と返すレコア。思念を感じたカミーユが「やめろー!」と叫ぶ中、レコアとエマはビームサーベルで相討ちとなり、レコアが爆死。エマは最後に「辱められた」とのレコア言葉を聞く。

50話 「宇宙を駆ける」
エマを、投棄された巡洋艦に運び込むカミーユ。

瀕死のエマは、自分の命を吸い取って戦え、と言い残して絶命。
コロニーレーザーをティターンズ艦隊に向け、発射準備を指示するブライト。
だがそのコロニーレーザーを破壊しに向かうシロッコと、それを追うシャア。更にシャアを追うハマーン。ジオで心臓部を破壊しようとするシロッコと戦うシャアだが百式の片手、片足をもがれ、機から出て居住区に向かう。それを追うハマーンとシロッコ。
劇場跡で三者が相対する。ハマーン主導で銃を手放すシャア。

そこにカミーユ、ファが割り込んでハマーンとシロッコが逃げる。
戦いは再びMS戦となり、シロッコとカミーユの一騎打ちに。

カミーユの周囲に今まで亡くなった女性、カツたちの思念が集まり、Zガンダムがピンクの輝きに包まれる。
そのままカミーユはジオに突っ込み、シロッコの体を貫く。


ファの呼びかけに、ヘルメットのない状態で外に出ようとするカミーユ。

カミーユの死を知り叫ぶファ。

 

 

 

 

 


新聞小説 「カード師」 (11) 中村 文則

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朝日 新聞小説 「カード師」 (11) 152(3/5)~168/(3/22)
作:中村 文則  画:目黒 ケイ
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感想
ルネサンス時代にあった、魔女狩りの当事者の手記。
ペストの流行を鎮めるため、罪のない人を魔女に仕立てて処刑した。

その中で開発された、押すと引っ込む針の仕掛け。破綻を生じていると判っていて、宗教の名を借りて処刑を強行する司祭の狂気。
メインストーリーとは関係ないと言いつつも、思わず引き込まれてしまった。
神を信じ、奇跡の発現を望むが、結局信じてはいない「私」
娘が焼かれるのを嘆きつつも、服から覗いた乳房に心を乱し、魔女への尋問でも劣情が走る。
キリストが奇跡を見せてから千五百年。当時既にキリスト教の神通力は失われつつあり、そんな中での権威付けのための魔女狩り。
 

30年ほど前、出張でイタリアに行った折り、最後の一日だけ観光でバチカンに行きサン・ピエトロ寺院を訪れたが、中央礼拝堂(ドーム)で30分あまりも動けなかった。

カトリックという宗教のバックに控えるものの迫力。
だがその、バカげたほどの壮麗さが「うさんくささ」の裏返しなのかも。
司祭自ら神の存在など信じずナルシズム、マゾ性の先にある幸福感こそが宗教の根本だと言う。
処刑される者の火で暖を取る・・・・最後の一行にシビれた。

相変わらず「訳わからん小説」ではあるけど、本章はそのヒントになるのかも知れない。今までの「駄エピ」を少し振り返ってみるのもいいだろう。

今回の挿絵、最後の1枚が秀逸。
魔女に触れたという右小指の青い印。

そして本心が曝け出されたその顔。魔女を焼く炎で暖を取る男の。


あらすじ 152 ~ 168
<一五八三年 ヨーロッパ南部 魔女狩り> 1~17
リュール司祭について修行する見習い修道士の「私」。悪魔と性交して人を惑わせた、と言われる娘が焼かれているのに立ち会っている。
年老いた母を助けて縫子をしていた彼女が、魔女だとは思えない。

針刺し師の検証で血が出なかったのは、針が引っ込んだから。
魔女を取り逃がすことこそが罪。多少の誤認は仕方ないと言う司祭は、お前はまだ未熟だ、と重ねる。
あとは主が選別してくれる、と言われたが私の心の中には、娘が焼かれる現実はなかった。神が御身を現し、間一髪で何かが起こる筈。

しかし彼女は燃えた。
柱に括られたまま焼かれる娘。服が破れ落ち、彼女の乳房が見えた時に一瞬気を失った。だがその直後司祭に押し出される。「見るのだ」


認識していた世界は、以前とは別のものになった。

街にペストが蔓延し、それを解決するための魔女狩り。
そんな中で、自ら毒を作っていると称する老人が拘束されていた。
リュール司祭は不在で、一人赴く事になった。
ペストを呼んでいるのですか、の問いに肯定する老人。

この町で長く虐げられて来た。
誰に祈ったのか、神?悪魔? 繰り返される不毛な問答。
老人をこのままにしておけば私刑で殺される。だが連行しても殺される。
呼ぶ事が出来るなら、追い出すことも出来るのでは?、との言葉に老人は  「お前は人間と人生を知らなすぎる」

老人を連行して司祭のもとに連れて行った。司祭の厳しい取り調べ。
激しい言葉の応酬。取り調べを終えて司祭が言ったのが「彼はとても嬉しそうだった」
嘘を言っているのなら釈放に、との申し出には「釈放したら、彼は悲しみのうちに死ぬ。そんな残酷なことは出来ない」
老人が焼かれる時、確かに嬉しそうだった。

そしてこの町はペストで死ぬと叫び続けた。
処刑の見物人を当て込んだ出店で、親にロザリオを買ってもらった子供。おそらく十字の意味を知らない。


点けられた火が全身に回り、痙攣と共に動かなくなった老人に「見事だ」と司祭。

老人が死んでもペストが収まることはなかった。
ある女が悪魔と性交し、魔術で村人を惑わしているという報告を受け、リュール司祭と出向く。
荒廃した村。放置された死体に蠅が舞う。
四十歳ほどの長髪の女性の傍らに横たわる子供。

死にかけた子供を連れて来た母親がいた。
治療の途中で死んだと言う母親に「まだ間に合う」と魔女。
リュール司祭の叱責に「ならお前がやれ!」
お前たちのイエスは死者を蘇らせたのだろう、さあ、と続ける。
魔女の周囲にある膨大な書物。

なおも迫る魔女を、兵士を使って連行する司祭。

眠れぬ夜、礼拝堂に行くとリュール司祭が跪いて祈っていた。
だがそれはあの魔女に対する称賛。

そして神を待った時の事について話し始めた。
神の声を求める旅。放浪の末に蹲っている自分の前に現れる男。見上げるとそれがキリスト。そういう光景を期待した。
そうした主の出現を命を賭けて待った。だがそうしても、何も現れない。
声を上げて泣いた時、奇妙な事に気付いた。

そんな風に泣いている時の幸福感。
絶望感とナルシシズム。辛いと思う間じゅう、ずっと満たされていた。
そしてこの魔女騒ぎ。神、精霊、悪魔、魔女。

目に見えないものに対するフラストレーション。
それなら存在させてやろう。我々のはそういう力がある。

信仰の苦しみをお前にやろう、と神父。あの魔女への尋問を命じた。

悪魔と性交したかをしつこく聞き、服を脱がせて魔女の印を見つける。

あの魔女の体に何をしても懺悔で許される。


尋問部屋で魔女と対峙する。美しい。


 

悪魔と性交したかの印を見つけるため、彼女の腰巻に手をかけた。

女の体臭に混ざる甘い香料。

彼女の服を引き裂こうとした時に女が言った。

「お前は臭い、離れろ」
気がつくと部屋から飛び出していた。怒りに覆われる。
司祭には魔女の印は見つからず、尋問も出来なかったとだけ報告した。
見透かしたように司祭が言う。お前は人間より神を愛し、神より、神に祈る自分を愛している。

六人同時の火あぶり処刑が準備された。

さすがにこれは壮観だ、と司祭。興奮して騒ぐ群衆。
そんな中に老人を見つけ、前に焼かれた老人の姿がよぎって思わずガウンを脱いで渡す。その行いを見た者たちが十字を切る。
その老人がキリストだったかも知れないとの夢想。善行に対する反応が見たい。だが思うような劇的な事など起きなかった。
 

六人の中にあの魔女もいた。

脱がせようとした時、胸に触れた時の右小指の感触。
魔女の服を裂こうとした時の高揚感。

 

人は善行に興奮せす道を外す時に興奮する。
では・・・人間とは何だろう。
この小指の先ほどの感触も、神は実感を与える事が出来ない。

だから教会も豪華にしなくてはならない。
キリスト教の断末魔だよ、と言うリュール司祭。
そして、魔女狩りは突然終わるだろうとも言った。聖書で神が奇跡を見せてからもう千五百年。この辺りが限界。
だがこうして六人の処刑を起こせる事こそ奇跡。
 

一斉に火が点けられ、彼らは勢いよく燃えた。彼らの叫びが風の音に混ざり合う。
肌寒くなり、男に与えたガウンを思い出す。

風邪でも引けばペストになるかも。
彼らを燃やす炎の側に二、三歩と近づいた。


手記をテーブルに置く。

佐藤はこの話の、何に引っかかり訳させたのだろう。
当時魔女狩りで、針を刺して血が出ない事がその証拠とされた時のカラクリ。その針が引っ込む仕掛けによるもの。
魔女狩りはカトリックだけでなくプロテスタントでも行われた。
ルネサンスとほぼ同時期に魔女狩りは始まり、その終焉と共に終わったとされる。
キリスト教が権威を失った十八世紀に、ヨーロッパでオカルトブームが起こり、タロットカードにも占いの要素が加わった。
そういった超自然に対する興味が佐藤にあるのか。

次の手記はとても短いもの。
一九三三年 ナチス政権下の記録。
 

 

100分 de 名著 アーサー・C・クラーク 3.「都市と星」4.「楽園の泉」NHKEテレ

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番組紹介  第1回、第2回はコチラ

感想
「都市と星」
管理社会により異質な生き物になってしまった人類の中で、新たに生まれたアルヴィンが人類の融和に奔走する。
一応SFの体裁は取っているが人、社会を描くという事なのだろう。
こうやってサラっとあらすじにされてしまうと、なんか陳腐に見えてしまう嫌いがある。
しかし話の中で「道化師」が出て来たのには笑った。
ファウンデーション対帝国」で物語のキーマンになっていたのが「道化師」。アシモフの方が数年発表が早いから、キャッチーな言葉としてクラークがチョイスしたのは間違いないだろう。

「楽園の泉」
宇宙エレベーターの話だとはもちろん知っているが、最後に読んでからもう20年以上経っているので、このハラドキの展開などは全く忘れていた。やはり何万光年も旅をして・・・なんて話よりも、実現性のある近未来の話の方が好き。
また元々技術系に携わっていたから、課題解決の筋道とか、その辺りに興味が湧く。

カーボンナノチューブの開発により、この構想も実現可能と言われているゼネコンでもやる気マンマン

動画(さすが大林組)

 

全体感想

代表作である「2001年宇宙の旅」をベースにして展開するのが合理的だった思うのだが、ちょっと初期作品に力を入れ過ぎたか・・・



第3回 科学はユートピアを作れるか  3/16放送
  ~「都市と星(1956年)」~

進行役:伊集院光 安部みちこ 
ゲスト:瀬名秀明(作家)語り :銀河万丈

前回「幼年期の終わり」でユートピアとは何かの問いがあったが、今回はその答えに言及。
社会のあり方、幸せな暮らしとは何か。

クラークのSF、宇宙に対する考え方の進化が見られる。

作品導入
はるか未来の地球は荒廃し、人類は「ダイアスパー」という閉鎖都市に暮らす。コンピューターで管理された社会。


人の寿命は千年もの長寿で、記憶はメモリーに受け継がれ、不老不死。
人々は仮想ゲーム「サーガ」を楽しみ、十億年も変化のない生活を続けていた。
そんな時に前世の記憶を持たない、新たなヒトとしてアルヴィンが誕生した。それはこの十億年の中で一度もなかったこと。

ダイアスパーの外に出たいと熱望するアルヴィンは、道化師ケドロンの助けで都市を脱出した。
そして「リス」という国を見つける。

動物を飼い、自然な暮らしをしている人々を見て感動するアルヴィン。
そこの住人セラニスが、なぜここに来たのかを訊ねると、探検がしたかった、とアルヴィン。だが「それが理由?」
と聞かれて、寂しかったからと本心を話す。

コメント
このダイアスパーはユートピアなのかディストピアか・・・
クラークが作品を作った当時は、サイバネティックスの考え方が出て来た頃。

ウィーバーが提唱したサイボーグは、人が機械と融合して宇宙へ行く。
前作のジャン・ロドリゲスは衝動だけで宇宙に出た。
今作はアルヴィンが冒険に出るまでは手厚く描かれている。

リスの住民はテレパシーを使える。

人と人との結び付きを愛情と同じくらい貴重なものと考える。
アルヴィンは、友人になったヒルヴァーと共に、リスの外の世界へ冒険に出た。そこで人類の歴史を知っていると思われるロボットを捕獲。
ダイアスパーに戻ろうとすると、リスの住民は帰るなら記憶を消すと言い、辛くも逃れて戻るアルヴィン。
だが戻ったダイアスパーで聴聞会にかけられるアルヴィン。
こうした状況を憂うアルヴィン。人類の二つの系統が離ればなれになっている。交流を持つべきだという主張。
リスから持ち帰ったロボットのロックを解除して、リスとの交流を復活させたアルヴィンは、人類の過去の謎を解くために、ヒルヴァーと共に宇宙へ出た。

コメント
都会と地方、デジタルとアナログといった対比。

リスの自然に触れたからアルヴィンが変わった。
両方ミックスした方が良くなるという考え方。
クラークの心の変化。
この当時のクラークはダイビングに夢中で、グレートバリアリーフでバディと一緒に海へ潜った。

七つの太陽の星系を旅して、精神だけの存在のヴァナモンドに出会い、人類の経緯を知る。銀河系から外に出ようとする者と、地球に戻ってダイアスパーに閉じこもった者。
地球に戻ったアルヴィンは、ダイアスパーとリスの住人との融和を進める。

一度宇宙に出て確かめたアルヴィンは、もう宇宙に興味はなかった。

しなければならない事は地球にある。
最後にラストフライトとして宇宙から地球を見つめるアルヴィン。
横から光が当たり半球が昼、半球が夜の世界を同時に見る事が出来た。明と暗の共存。

 

コメント
今までは宇宙に出て行く話。今回は帰って来る話。
この小説を書く前にクラークは「指輪物語」を読んでいたのが知られている。
指輪物語は「行きて帰りし物語」の典型とも言われるもので、クラークは大きな影響を受けただろう。



第4回 技術者への賛歌   3/23放送
  ~「楽園の泉(1979年)」~


「都市と星」から23年後の円熟期に書かれた。後半生に残した傑作。
生涯を通して宇宙に行きたかったクラークの到達点を読み解く。

作品導入
かつてカーリダーサ王が支配していたインド洋のタプロバニー島。

そこにそびえる霊峰スリカンダ。
山の麓に棲息する金色の蝶は兵士の霊魂の象徴。その蝶が山頂まで上ったら、僧は山を下りなくてはならないという言い伝え。

22世紀。タプロバニー島を訪れる地球建設公社 技術部長のヴァニーヴァー・モーガン。
島の責任者に、超繊維を使った宇宙エレベーターの構想を提言。
地上と静止軌道間の3万6千キロを結ぶ。

それに最も適した場所が霊峰スリカンダ(赤道上)。
僧侶たちはそれを拒絶。かつてのタコマ峡谷橋の崩壊(1940年)

この世に絶対はないという教訓。
世界司法裁判所への提訴で、建設が認可された。
だがテスト段階の工事で超繊維が強風のために切れ、大事故を起こした。

コメント
土地の問題、権利等人間くさいところが描かれている。現実味がある。
宇宙エレベーター(軌道エレベータ)の構想は最初ツィオルコフスキーが提唱。その後アルツターノフが1960年に宇宙ステーションからワイヤーを降ろして作る方法を提案。クラークの構想はそれに沿っている。
1954年にスリランカへ寄港したクレークは、そこで仏教、民族等に惹かれ移住した。
民族の多様性や人それぞれの価値観を受け入れる。


事故の後、奇跡と言える出来事が起こった。
予想外の強い風が金の蝶を山頂に運んだ。

僧は山を明け渡し、開発が前に進んだ。
宇宙空間にコンビナートを作って超繊維を製造しながら塔を下に向けて建造する。
モーガンは精力的に作業を進めるが、心臓の病のため、胸にセンサを付ける事になる。


塔の完成まであと600キロとなったところで大事件が発生。オーロラ観測で塔を訪れていた教授と学生が塔下端でブレーキ故障のため閉じ込められ、空気が漏れだしている。
地上からロープを伝って作業車の「スパイダー」で救援物資を届ける役目を小柄なモーガンが志願。
400キロ進んだところでアクシデント。使用済みの補助電池を切り離すネジが外れない。車外に出て外すモーガン。
あと2キロの所で内蔵電池のパワーが尽きる。
10分休めては動かす、の繰り返しで進むか、残り20メートルのところで完全に停止。出来ることはもうない。
 

その時地上の技術者ウォーレンから連絡。残りの距離を聞く。
あと20メートルと知って安堵するウォーレン。
実は塔の製造は、一日2キロのペースで下方へ伸びており、15分も待てば届く。無事に到着し、7人の命は救われた。
作業を終え、スパイダーで戻る途中、心臓発作で命を落とすモーガン。鳴り続ける警報。

コメント
到達までのハラハラは「はやぶさ」の時を思い出す(瀬名)
クラークとモーガンは一体。宇宙に来られたという達成感と多幸感。
やる事をやり切った。ハッピーエンド。

宇宙エレベーター完成から1500年後、スターホルム人がそこを訪れ感銘を受ける。
だがエレベーターの名に設計者モーガンの名がない。
「カーリダーサの塔」とどうして呼ぶのか?と子供に問う異星人。

コメント
最後の問いに対する答えは「裏方でいいんだ」
技術者の勝利だけではない。
土地と一つになって新しい光景になった。人類スゲー小説の進化。
「センスの良い好奇心」

 

 

ゲットバック  2012年

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脱力息抜きレビュー・・・

監督    サイモン・ウェスト
脚本    デヴィッド・グッゲンハイム

キャスト
ニコラス・ケイジ     ウィル・モンゴメリー
ジョシュ・ルーカス   ヴィンセント
マリン・アッカーマン  ライリー・ジェファーズ
サミ・ゲイル        アリソン・ローブ
ダニー・ヒューストン  ティム・ハーランド
M・C・ゲイニー      ホイト
マーク・ヴァレー    フレッチャー
エドリック・ブラウン   ジェイコブス


予告編



感想
BSの録画。ちょっとひねった強盗モノ。
最初の強盗のプロセスでは、壁ぶち抜きや金庫開錠の仕掛けが本格的だった割りに回収、逃走のくだりがお粗末すぎて、そらーもっと本格的な組織じゃないとダメだろう。
それに、1000万ドル分の紙幣を燃やすなんて、一体どれだけ時間がかかることか。必ず残る燃えカスもないし。
娘を誘拐したヴィンセントの計画もデタラメだし、その脅迫を受けて銀行を襲うにしても、下水道から金庫室直下にたどり着いて、そこに穴開けて金塊を溶かして持ち出すなんて、ムリすぎる。いくら融点低いと言っても、あんな程度のバーナーで金が溶けるわけない(ま、それは言うまい)。

エピローグでちゃっかりアリソンと一緒に暮らすウィル。

FBI監視の中で、強盗に使ったライリーの車から金塊のかけらが出るなんて、それぐらいFBIが全部調べるだろう。

全く、もう・・・・という映画だが、ニコラス・ケイジらしいと言えば言えるかも(息抜きには好適)。


あらすじ (hmhmさんの詳細レビューはコチラ
4人組の強盗。襲撃をしようとするが、情報はFBIに筒抜けになっていた。その中での実行。犯行直前、娘にtelをする男。相棒は面白くない。
隣のオモチャ屋の壁をブチ抜いて宝石店に侵入、その後金庫の開錠に取り掛かる。鍵が開いた頃を見計らってFBIが宝石店に突入するが誰もいない。
彼らが実際に襲ったのはそこから500mも離れた銀行だった。

1000万ドルを盗んで逃げる途中、顔を見られたと言って1人が郵便夫を殺そうとするが、もう1人が止める。脱出用の車の前で足踏み。

もみ合う中で銃が暴発して1人の男が足を打ち抜かれた。

その男を車に乗せ、走って金を取りに戻るが間に合わず、取りに行った男は取り残される。
パトカーを奪って逃げるが、最終的に追い詰められ、残された男は札を燃やした上で捕まる。


それから8年後、出所した男、ウィルは娘のアリソンに会いに行くが、対応が硬いアリソン。

 

彼女はタクシーを拾ってカウンセリングに向かう。

その原因を作ったのは父親。
渡されていた郵便物の中から呼び出し音。

かつて足を打たれた相棒、ヴィンセントがアリソンを誘拐していた。

FBIのハーランド捜査官に対応を求めるが、金を隠していると思い込んでいるハーランドは全く信用しない。
タクシー会社名からヴィンセントを突き止めたウィル。
ヴィンセントは死んだ事になっており、別人になりすましていた。

金は本当になくウィルは、身代金を作るため元相棒だったライリーに協力を求める。かつて襲った銀行の金塊を盗み出す事にした。



奪った金塊を持ち、夜更けの遊園地へ。
ヴィンセントとの死闘の末、何とか娘を取り戻すウィル。

 

小説 火の鳥 大地編 一 ~ 三章 超あらすじ

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手塚治虫が2ページの構想だけ残した「火の鳥 大地編」
それを引き継ぎ桜庭一樹が、小説の形で昨年4月から朝日新聞土曜版「be」に連載している。
話は三章まで進み今は四章が綴られているが、これが長い。

延々半年以上続いているため途中でアップしようと思うが、冗長すぎて過去を忘れかけている。
一章 二章 三章 の各あらすじを超あらすじにまとめた上で、次回に四章を途中までアップする。

感想

不老不死の、伝説の「火の鳥」のホルモンの秘密を解明するための「ファイアー・バード計画」
その探検隊のリーダ緑郎と、同行メンバーが織りなすハラドキの展開で二章までは楽しく読めたが、挙動不審で掴まったマリアの告白になった三章で、話の展開がストップ。
経緯は判ったが、何度も繰り返される話にイラ付く(四章でもっとイラ付く事になるが・・・)

 

小説 火の鳥 大地編 一 ~ 三章 超あらすじ
  作 桜庭 一樹 画:黒田 征太郎  原作:手塚 治虫
 

プロローグ 1938年10月
タクラマカン砂漠を、息も絶え絶えに歩く五十がらみの男、猿田博士。
 「急がねばならん・・・・奴らにあの魔法を使わせないために」
 「逃げろっ、世界!」


一章 上海 [1] 2019/4/6 ~ [8] 6/1
その1 関東軍ファイアー・バード計画
1938年1月。上海の外灘(バンド)が舞台。
関東軍の司令部付き副官 間久部緑郎(まくべろくろう)は、三田村財閥の末娘 麗奈を妻に持つ。
緑郎の義父 三田村要造に呼び出された大学の恩師猿田博士と再会する緑郎。
中国タクラマカン砂漠の、ロプノール湖周辺の植物から未知のホルモンを見つけた猿田博士。
大本営の犬山元帥が、そのホルモンを皇軍の士気高揚に使う「ファイアー・バード計画」を明かす。スポンサーは三田村要造。

計画遂行を任命される緑郎。

先の計画を盗み聞きして捕まる正人。同行のルイは正人が逃がした。
正人は緑郎の弟だが、生き別れて15年。

この国に詳しい正人をガイドとして雇う緑郎。
麗奈に近づく女、マリア。

その2 西太后のため息
自身が属する八路軍のアジトに戻った正人。逃げていたルイとの再会。
ファイアー・バード計画の詳細を同志に話す正人。

ルイもスパイとして同行せよとの指令。
ルイは歓楽施設「大世界」のダンサー。
 

「大世界」の一角でダンスホール「東興楼」を経営する川島芳子こと愛新覺羅顯㺭(あいしんかくら けんし)
青幇(チンパン)のゴッドファーザーと言われる中国老人 黄金栄(ワンジンヨン)の恩義を受けており、日本軍の女スパイもやっている。
芳子をお姉ちゃまと慕う麗奈が、楽団員のマリアを紹介する。
「大世界」でルイに指令を出す黄金栄。未知のホルモンの入手。

芳子も含めて彼の手下。

タクラマカン砂漠の絵を見て懐しさにウィグル語を話すマリアに驚く芳子。
正人を訪れるルイ。

眠っている正人に「スキだけど裏切るの・・・それがボクの愛し方」

その3 秘密結社(鳳凰機関)
三田村家でロプノール湖への旅程を聞かされる緑郎。
一方芳子も呼ばれてここに来ていた。
麗奈に止められていた地下室に忍び込む芳子。
「鳳凰機関」とある部屋の奥に、麗奈の母親と昨年上海で客死した山本五十六元帥の遺影。
関東軍参謀関係者の密談を聞き、逃げ出した芳子だが掴まり、緑郎の居る部屋に連れて行かれた。
芳子が今回のガイドだと言われ、旅程が知らされる。
1、上海から南京の鉄道。2、南京から重慶の航路。3、重慶からイルムチの山岳地帯。4、ウルムチから南へはウィグル族商人との交渉が必須。マリアを思い出す芳子。

その4 スパイたちの輪舞曲(ロンド)
五日後、日本陸軍司令部に集められたメンバー。緑郎、正人、ルイ、マリア、芳子。
武器が扱えるかと聞く緑郎にルイは刀の舞い、マリアは武闘笛、芳子は自前のピストル。
銃を渡される正人。記録のための記念写真撮影。


翌日、出発した火の鳥調査隊の報告を聞く犬山元帥は、メンバーの写真を見て驚く。
「楼蘭の笛吹きマリアか!よりによって」




二章 タクラマカン 一九三八年一月  

                                                          [9] 6/7 ~ [16] 7/27 
その1 大地が燃えている
上海からの蒸気機関車に乗る一行。

個室に侵入した火夫が、芳子の切符を奪って屋根に逃れた。
次いで追いかける緑郎、正人たち。

屋根上での争いの末、切符を取り返し男は殺された。
死んだ火夫の代わりに石炭をくべるルイと芳子。

自らの出自を満州国だと言うルイ。

その2 揚子江を上れ!
汽車で到着した南京から徒歩で南京港に向かった一行。
古いジャンク船に乗って揚子江を川上に進む。
中国国民党と日本軍との激戦区。水雷で船は沈没し、辛くも逃れた一行は、別の船で何とか重慶まで辿り着く。
港で八路軍兵士と情報交換するルイ。

一行は小舟で更に上流を目指す。

成都に到着した一行は民宿に落ち着く。次いで芳子が旧ロシア商人から小型機をチャーター。ウルムチまでは空路。

その3 プロメテウスの火
翌日飛行場で、政治犯とおぼしき男が処刑されようとしていた。

「間久部くんじゃないか!」の声はあの猿田博士。

飛行機に乗って脱出しようとした緑郎に対し、猿田博士を助けに行った正人。助太刀に行く芳子とルイ。
今すぐ飛び立てと言う緑郎に「簡単に見捨てる」と過去を知っている様なそぶりのマリア。うろたえる緑郎。
正人、芳子、ルイの連携で猿田博士を救い出し、マリアも加勢して脱出する飛行機。
本来は未知のホルモンの解析が役目だったが、調査隊に同行したくて追って来たと言う猿田博士。
新エネルギー開発が進む中、火の鳥のホルモンが最終兵器として利用出来るかも・・・
火の鳥こそプロメテウスの火じゃ!と猿田博士。
緑郎は戦意高揚、猿田博士は兵器開発。

だがどちらも真実と違う、と呟くマリア。
やがて飛行機はウィグル北のハミ(クムル市)に到着。

同時期に着陸した小型機の中の老人に、会った事を秘密にせよと脅される芳子。後であんな大物が、と首をかしげる芳子。

その4 死の砂漠
ウルムチに到着して飛行機の旅は終わった。
ウイグル語が出来るマリアの交渉で食料と宿を調達。マリアの言葉が古い時代のものなので、店の男に笑られる。
翌日一行はラクダに乗って出発。過酷な気温上昇。
40キロほど進んでの野営。
夜、マリアを美しいと讃える猿田博士は、恋に破れて研究に没頭した結果、未知のホルモンを発見した。
マリアも身の上話をする。


過酷な旅が何日か続き、ようやくロプノールと思われる大きな湖に到着。
だが期待した植物、動物など見当たらない。
通りかかった現地の男から話を聞き出したマリア。
この湖は河の影響で、数年ごとに場所が変わる。

今まで湖には不思議な力があったが、昨年急にその力がなくなったという。湖畔にあった「年を取らない都」も廃墟になった・・・

聞き返す緑郎に、淡々と通訳を続けるマリア。
湖畔にあった楼蘭という国。民は何百年も年を取らなかった。

だが緑郎が聞いていた楼蘭は16世紀に滅びている。
マリアの顔を見た現地の男が驚くのを、そのまま追い払うマリア。
食事の準備をするマリアだが、毒を入れようとする素振りをルイが見つけ、騒ぎになる。
ルイとマリアの戦いが始まり、それを知った緑郎がマリアの肩を撃って捕える。
緑郎の拷問を受けるマリアを見かねて、自白剤を提案する猿田博士。
注射を打たれて話を始めるマリア。
「私はマリア。楼蘭の王ザムヤードの長女・・・」

三章 楼蘭 [17] 8/3 ~ [23] 9/20
その1 ゾロアスターの神の鳥
楼蘭王の娘マリアの婚礼前夜に王国が滅ぼされ、それを不憫に思った火の鳥が、もう一度マリアが婚礼前夜を過ごせるよう、自らの首を刎ねさせた。
約束により、刎ねた首を火に投じて魔法が解けたが、再びその首を刎ね婚礼前夜を延々繰り返す事になったマリア。
その間マリアは年を取らなかった。
 

ある日、見慣れぬ男が神殿から鳥の首を奪って逃げた。

追うマリアだが、男と共に出た後ろで王国が消え去った。
この時が1904年。楼蘭での繰り返しは400年に及んでいた。
それから年を経て10年経ったマリアは28歳に。
その数年後、突然突風を受けて気を失い、目覚めた時には18歳で婚礼前日の楼蘭王国にいたマリア。

王国を守るために警戒するマリアだが、再び男に鳥の首を奪われ、背後で楼蘭は消滅した。
楼蘭の外の世界は1915年。前の世界で殺されたと聞いた、ロシアの指導者レーニンが生きているとの話を聞くマリア。
男を追って3年間中国東北部をさまよったが、再び突風を受けて気を失うマリア。

また婚礼前日の楼蘭王国。再び訪れた男は犬山だと名乗った。

なぜ何回も来るのかと聞いても話が合わない。上官の命令だと言う。
逃げる男を追うマリアの後ろで再び崩れる楼蘭。

三回目の世界は1916年であり、世界大戦の最中。

レーニンとスターリンがソビエト連邦を樹立。
この世界で生きる覚悟を決めて結婚したマリア。三男三女を儲けて22年を過ごし40歳となった。そんな1938年、突風に襲われるマリア。
再び楼蘭で18歳に戻ったマリアは、家族を求めて楼蘭を飛び出す。

長春を目指すマリア。そこで1916年から1938年まで暮らした筈。
今の年代は1931年。夫は別の家庭で妻子と暮らしていた。
そして迎えた9月10日、日本軍が長春を制圧(満州事変)
前の世界では1938年まで平和だった。毎回変わる歴史。
旅をして楼蘭王国に戻ったマリア。

首は持ち出していないので、同じ毎日を繰り返していた。
ある日若い男を湖畔で見つけ、手当てするマリア。

ここが楼蘭だと知って、男は神殿から首を持ち出して逃げた。

再び追うマリアの後ろで崩れる楼蘭。

四回目の外界は1934年。再び訪れた長春一帯は日本の関東軍が支配する満州国となっていた。犬山の言っていた上官の命令とは日本軍?
関東軍へのスパイ活動をしていたマリアだが、再び突風に襲われて過去の楼蘭に戻る。
敵の存在を意識したマリアは、武闘笛による武術を習得。
そしてようやくあの時の若い男が来る。連れの部下は線が細い。

争いの中でその部下を射殺し、間久部緑郎と名乗った男は再び鳥の首を持ち去った。
マリアの後ろで再び消える楼蘭。

五回目の外の世界は1937年7月。
満州国で、間久部少佐に三田村財閥の末娘との縁談がある事を知るマリア。だがそこでまた突風。

楼蘭に戻ったマリアを再び訪れた間久部少佐。

今度は彼と似た青年と、美貌の青年を同行している。
二人の青年を倒したマリアは、間久部少佐を名指し会うのは三回目だと言うが、相手に記憶はない。それでも鳥の首を奪って逃げる緑郎。

追うマリアの後ろで崩れる楼蘭。
緑郎を追って上海まで来たこの時代は1937年9月。
そして見つけた男装の美女川島芳子に近づくマリア。

緑郎が二回目に来た時殺した部下は彼女だった。
マリアはロシア人貴族を装い、親密になる。
この時の上海の状況では、日本は支那事変に負けた。
マリアの予感。負けた日本は必ず歴史を変えようとする・・・
そして突風。風に立ち向かうマリア。

楼蘭で目覚めたマリアは、自らの手で鳥の首を持ち楼蘭を出る。

消えゆく王国。それが今の姿。
南下の途中で首を隠し、上海に向かったマリア。
外の世界は前と同じ1937年7月。

日中戦争の最中だが、日本が上海を制圧し有利な状況。
そしてとうとう緑郎を見つけた。

その2 廃墟の七人
マリアの自白を聞き終えた皆は茫然とする。

大日本帝国による歴史の修正。関東軍は「時間旅行軍」
緑郎と博士による話の整理。
425年前、明に滅ぼされた楼蘭王国は火の鳥の力で、滅びる一日前を延々と繰り返す様になった。
1904年に、犬山という日本の軍人が鳥の首を盗んだ事で時が巻き戻された。
鳥の首の強奪を繰り返すたびに変化する世界。

レーニンは一回目で殺され、二回目では日本軍に砲撃された。

三回目では殺されずソビエト連邦を樹立している。
満州事変も初めは失敗し、四回目で満州国を樹立した。
更に五回目では支那事変が形勢不利となり、六回目では上海戦で敗退し大陸進出を諦めた。
七回目である今の日本は、中国大陸を次々と制圧して西、南へと進撃している。

時間を巻き戻している黒幕の存在。芳子が、三田村家の地下室で見た鳳凰機関での三人の話をする。

特徴から一人は関東軍 参謀長 東條英機、次いで参謀副長 石原莞爾。あと一人は背の高いおじさん、と芳子。
遺影の話もする芳子。一人は麗奈の母だ、と緑郎。もう一人は山本五十六閣下。昨年客死したという話を否定しないみんな。
鳳凰機関という組織が、世界情勢を日本有利に導いている。
だが七回目の今は、マリアが先回りして鳥の首を隠した。

そこで芳子が、リマの飛行場で三田村要造氏に会った事を話す。
銃声がして、芳子の帽子に穴があいた。

闇から現れた偉丈夫の老人。

その老人は三田村要造。調査隊の集合写真を見て追って来た。
要造の言うには、この世界は15回目。

マリアには9回目以降の記憶しかない。
ユーラシア大陸を手中に収める、新たな16回目の世界が来ると言う要造。

 

要造に命じられマリアに、鳥の首のありかを吐かせるための自白剤を注入しようとする緑郎。
だが隙を見て皆が要造を抑え込み、緑郎が自白剤を注入した。
呻きながら話し出す要造。
48年前の1980年。秘境探検隊を率いる大滝雪之丞という男に会った。

 

 

 

 

 

ブラウザ乗り換えとフリーセル

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ネットを使い始めてからの付き合いなので、ブラウザはIE(インターネットエクスプローラー)一本でやって来た。
それがここ半年ぐらい、アメブロで訪問先の「いいね」ボタンが出現しないという事態が頻発する様になった。記事が長く、かつ表示件数が多いサイトは開き切るのに時間がかかるため、そういう状況になり易い。
ネット環境のせいだと思い込み、ブロガーさんによっては個別で表示件数ダウンをお願いしていた。

それでも速度が遅いのにナットクが行かず、試しにブラウザをGoogle Chrome(グーグルクローム)にしてみたところ、ビックリするほど速い。

以前はそんな感覚なかったのに、IEの質が落ちたということ?


だがChromeで一番の問題は「お気に入り」表示。

IEで左側に固定されているお気に入りリストに慣れた身ではChromeの、探す時だけ出て消えてしまうブックマークは、欲しいものを順に探して行く時、決定的に使いづらい。

Chromeでもブックマークを左に固定する機能はあるが、これを導入しても選んだアドレスを読み込むことが出来ずイラつくばかり。

それが、たまたまそのアドレスをダブルクリックした時に、ようやく読み込む事が出来てあっけなく解決。
知ってみれば「なーんだ」という事だが、ネットで調べてもブックマーク固定までの説明しかない。
これで開くと、その後閉じるなどでブックマークに戻った時、アドレス表示が残っているため、次への移行も簡単。
慣れてみると、必要な時だけブックマークが出る点で、IEより画面が広く使えるのがイイ。
「お気に入り」の移行も比較的簡単に出来た(読み込むのに10分以上かかったけど)

そんな訳で今、運用の主体はChromeになっているが、ログインが必要なサイトのパスワードまでは移行してくれなかっため、その時だけはIEに。
それに関連して例のフリーセルも履歴がゼロに。クラウド上のゲームだから、ブラウザ単位で履歴が保存されるシステムの様だ。
そこで改めてチャレンジ。
今のところ748連勝。最近では負ける気がしないが、逆にプレッシャーでもある・・・

 

 

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