イギリスの作家サマセット・モームが書いた長編小説「人間の絆」は、少年だったフィリップの前半生を描いたヒューマンドラマだが、そこにかなりこと細かな金銭に関わる記述がある。
レビューではその価値を1ポンド=2万円相当と評価したが、様々な品物、役務等を引き合いにして、こちらもレビューしてみた。
当時の通貨単位
1ポンド=20シリング=240ペンス
1ポンド=21ギニー
1シリング=12ペンス
*1971年以降は1ポンド=100ペンス(シリング、ギニーは廃止)
Ⅰ巻 単位:円
扶養費 2,000ポンド(伯父扶養時) 40,000,000
牧師の年俸 300ポンド 6,000,000
献金(日曜) 2ポンド 40,000
牧師年俸 600ポンド 校長天下り 12,000,000
伯父の送金 15ポンド/月(ドイツ留学時) 300,000
大学の費用 200ポンド/年 4,000,000
葡萄 1ポンド8シリング 28,000
Jペン 1ペニー分 83
ペン軸 1シリング2ペンス 1,167
カレンダー1冊 1ペニー 83
レッスン謝礼 2シリング/回 2,000
下宿費 週14シリング 14,000
イブニング一揃い 5ギニー(5ポンド5シリング) 105,000
普通の牧師年俸600万か。まあそんなとこ?伯父の送金月30万、ちょっと多いか。
葡萄の28,000円はべらぼーに高い!高貴な果物だったのね。
カレンダー一冊83円は安い!でも当時は紙の質も悪かっただろうし、そんなもん?
Ⅱ巻
伯母からもらった金 100ポンド 2,000,000
パリ旅行 25ポンド 500,000
助医の週給 3ポンド 60,000
廉価版文学書 6ペンス 500
安葉巻 3ペンス 250
書記週給 35シリング 35,000
パリ旅行25万ね、一応海外だし。安小説500円は妥当か。
助医の週給6万は月収で25万てなとこ?
Ⅲ巻
化粧箱 20ポンド ミルドレッドへの結婚祝い 400,000
小説原稿料(三万語)15ポンド(ノラ) 300,000
貸金 5ポンド 文無しのミルドレッドに 100,000
質入れの化粧箱 8ポンド 160,000
印税前払い 10ポンド(クロンショー) 200,000
アセルニーの本妻の年収 1,500ポンド 30,000,000
アセルニーの週給 3ポンド 60,000
グリフィスの借金(フィリップからの)7ポンド 140,000
劇場エキストラ 16シリング (ノラの副業) 16,000
中編ものの注文 15ギニー 14,286
2ペンス小説 ノラが書いたもの 167
分娩費用 15ギニー 14,286
馬車代 2シリング 2,000
服代 6ギニー (ミルドレッド) 5,714
ケニントンの貸部屋 週9シリング 9,000
壁紙 10シリング 10,000
遺体清拭のチップ 5シリング(クロンショー) 5,000
ビール一杯 6ペンス 500
掃除と料理週給 3シリング半 3,500
劇場(一般席)6ペンス 500
ミルドレッドへの化粧箱40万は出しすぎ!見え張りフィリップ・・
アセルニーの月収相当が25万。これで子供9人と奥さん養うのか・・・
馬車代2,000円とかビール500円は、十分アリな数字。
壁紙の1万はちょっと高いナ(でもホームセンターなんてなかったし)
Ⅳ巻
株250株の運用利益30ポンド 600,000
スペイン半年の滞在費100ポンド(目論見) 2,000,000
フィリップ投資300株×2ポンド1/4→675ポンド 13,500,000
7ポンド 株精算の残金 140,000
伯父への借金申込み150ポンド 3,000,000
アセルニーからの借金4ポンド(80シリング) 80,000
ミルドレッドの所持金 7ポンド 140,000
ミルドレッドへの仕事候補週給14シリング 14,000
フィリップ引っ越し先 週6シリング 6,000
公衆浴場入浴料6ペンス 500
有料化粧室 2ペンス 167
百貨店の週給(フィリップ)6シリング 6,000
フィリップ昇給12シリング 12,000
洗濯料4シリング 4,000
伯父への往診料5シリング 5,000
海岸の病院助手(住み込み週給)3ギニー 2,857
フィリップ引っ越し先が週6,000円、1ルームのアパートならそんなもん?
百貨店での週給6,000円は安い。かなり格下の職業。
まとめ
1万以下の、生活に近いものについては概ねイメージに近いが、内容によっては1ポンド1万でも高いか?と思えるものもあって、経済状況がモノの価値に様々なバイアスを与えているのを痛感する。