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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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ラストエンペラー 1987年 (伊・中・英合作)

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監督・脚本  ベルナルド・ベルトルッチ
音楽      坂本龍一、デイヴィッド・バーン、蘇聡


キャスト
愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)   ジョン・ローン
婉容(えんよう)                    ジョアン・チェン
レジナルド・ジョンストン              ピーター・オトゥール
アーモ(溥儀の乳母)              イェード・ゴー
戦犯収容所所長                  英若誠
陳宝琛(溥儀の教育係)           ヴィクター・ウォン
大李(溥儀の召使)               デニス・ダン
甘粕正彦                      坂本龍一 
溥傑(ふけつ:溥儀の弟)           ファン・グァン
イースタン・ジュエル(川島芳子)     マギー・ハン 
西太后                        リサ・ルー

 

予告編(日本語版の後に英語版)

 

感想
かなり以前に録画して寝かせてあった。
お正月という事もあり、何とか時間を取って鑑賞。
ブロ友のZELDAさんのレビューはこちら(マイ・ベスト・ムービーらしい)

第二次大戦中、日本が中国に作った傀儡国家「満州国」の皇帝として祭り上げられた、愛新覚羅溥儀の人生が語られる。
劇場では観ていないが、レンタルビデオの時代に一度借りて観た覚えがある。

特に覚えていたのは音楽と、コオロギが筒から出て来るところ。

 

映画では、ソ連の抑留を解かれて中国に戻り、収容所に入れられてからと、過去とが交互に描かれる。
元々歴史に強いわけではないので当方の「あらすじ」はウィキペディアをレイヤーにして、観た内容を乗せて行った感じか。

 

史実では「1912年、辛亥革命により退位」とあるが、溥儀そのものは少年の上に情報が与えられず、それを弟の溥傑に教えられる始末。

三歳足らずで即位して、何も判らないまま意のままに暮らした者が、どれほどいびつな人間に育つのか。

壮大な実験を見せられている様な気がした。

 

様々な場面で溥儀を阻む「門」。城から去ったアーモを追った時。亡くなった母に会いに行こうとした時。
その後も溥儀の人生に立ちはだかる、象徴としての「門」。
その門からようやく出られたのは、クーデターによる退去のため。

 

国内のデモを知って、自分自身も何かしようという思いはあったのだろう。そうした気持ちが、日本軍に付け込まれる土壌を作ったのかも知れない。
また、描きようによっては相当ひどい奴にする事も出来たが、この監督の目線は、あくまでも溥儀に優しく、それが一種の切なさとなって胸に残る。いい悪いは別にして。

 

川島芳子が婉容にアヘンを教えたり、甘粕と関係を持ったりした点はフィクションだが、飛行服姿の彼女はりりしく「男装の麗人」のイメージ(ただ、もう少し東洋美人にして欲しかった・・・)

 

甘粕役の坂本龍一は、努力は感じるものの演技イマイチ。これより前に演じた「戦場のメリー・クリスマス」のヨノイ大尉役の方が良かった。

本人も軍国主義まき散らす様なキャラじゃないし、あくまでも静かに演じた方が良い。芳子と指を絡めるシーンは蛇足もいいとこ・・・

 

この映画で最も賞されるべきは「音楽」
こちらは大まかなあらすじも確認出来るため、私の「お気に入り」

 

でもこの曲聞くと「新日本紀行」のテーマ曲を思い出す。
パクリとかではなく、雰囲気のこと。

 

オマケ

溥儀と昭和天皇の同時代の写真。

監督は、傀儡としての日本国天皇も描きたかったのかな。

 

オマケ2
ジェーン・ドゥさんがお気に入りの音楽は、第二夫人が雨の中去って行く時の「Rain
良かった~

 

 

 

あらすじ
1950年の満州 ハルビン駅。
ソ連からの抑留を解かれ送還される者たちの中で、ある男の前に跪く人たち。

 

気付かれないように洗面所に入ったその男は、手首を切って自殺を図る。幼い日々を思い出す男。

1908年 北京
清朝西太后の命令により、幼い溥儀が紫禁城に呼ばれる。

乳母アーモに息子を託す実母。
西太后の前でも物おじしない幼児。

溥儀を皇帝に指名して西太后は崩御する。

即位式で無邪気に歩き回る溥儀。咎める者はいない。

コオロギの鳴き声を追って行くうちに、ある家臣に辿り着く。

小さな筒を取り出してフタを開けるとコオロギが出て来る。

 

その贈り物を受け取る溥儀。
細心の注意で育てられる溥儀。毎回の便を侍従がチェック。

何でも好きなことが出来た。

一万年王朝の天子と呼ばれたが、紫禁城の外には出られない。

 

1950年
命を取り留めた溥儀は、戦犯として収容所に送られた。そこの所長が溥儀を助けた男。再び過去を振り返る溥儀。

 

弟の溥傑がお相手として紫禁城に送り込まれた。

母親との七年振りの面会。我が家の誇り、と母。
溥傑に話す溥儀。普通の人は皇帝を見てはいけない。

悪い事をしても罰を受けるのはこいつら。
時々アーモの乳を吸う溥儀。それを双眼鏡で見ている先の帝妃。

 

ある日溥傑が黄色い服を着ているのを咎める溥儀。

皇帝のみが着られる色。
だが兄ちゃんは皇帝じゃないと言って、窓外の袁世凱を指さす溥傑。
紫禁城の中では皇帝である、と宦官から聞かされる溥儀。
アーモが城から追われた。

乳母など要らない歳。それを追う溥儀。「一番大事な人だ」

 

十代となった溥儀の元に来た、イギリス人家庭教師のレジナルド・ジョンストン。


最初に学力をテストしようとするジョンストンだが「皇帝をテストする事は出来ません」
多少の行き違いを越えて、ジョンストンは世界の様々な情報を溥儀に与え、彼もそれを吸収した。

外で何かが起こっている。何が起こっているのですか?
大学生のデモ運動。日本への権益譲渡への反対で、多くの首が斬り落とされた。
学生の怒りは当然。私も怒っているが、紫禁城から出られない。

 

溥儀に自転車をプレゼントするジョンストン。

母親の死を人づてに知る溥儀。

母は自殺だ、アヘンの固まりを飲んだ。
弟にも会いたい、と自転車で外に出ようとする溥儀だが、門は閉じられた。秘密で飼っていた二十日鼠をその門に打ち付ける溥儀。

 

母親が死んでも会いに行けない。屋根に上って反抗する溥儀。

ジョンストンらが手を伸ばして助けるが、その時彼の目の異常に気が付くジョンストン。
医師の検査で陛下には眼鏡が必要だと言うが、それは許されない事だと拒否される。眼鏡をかけなければ失明する。
眼鏡が許されないなら辞職し、中国の新聞にこの件を公表すると脅したジョンストン。

 

溥儀の眼鏡が実現した。その目で見たのが妃候補。
17歳の婉容を皇后、12歳の文繍を第二皇妃とした。

モダンな妻を望んだ溥儀。
そして行われた結婚式。全てを改革したい、と夢を語る溥儀。

ベッドの下にはオックスフォード行きのカバン。

婉容にも米国人の家庭教師がいた。ミス・ウィンザー。

 

1950年
囚人981号として出頭する。名は? 愛新覚羅溥儀。
君はなぜここに来た?と問われる。
告白は日付の羅列だと断じられた。どんな告白をすれば?・・・
ありのままに。君のことは全部判っている。
-改革をしたかった。全てを

 

再び過去
成長した溥儀は自ら辮髪を切った。

「紫禁城の改革で殺されるか確かめる」
まず在庫目録の監査に着手。自ら統治したい。
婉容、文繍らと寝間で過ごす溥儀。外では火の手が上っていた。
一部の宦官が証拠隠滅のため、保管庫に放火した。激怒した溥儀は千人を超える宦官を追放した。
庭に集まって許しを乞う宦官の集団。

手に持つ容器を聞く溥儀に「体の一部」

1924年。
婉容らとテニスをしていた時、北京政変(馮玉祥によるクーデター)のため一時間以内での退去を命じられた溥儀。
ジョンストンによるイギリス大使館への避難要請は、国際問題を嫌って受け入れられず、溥儀に手を差し伸べたのは日本のみ。

同世代の天皇も居て親近感があった。

 

日本の庇護下、天津での生活を楽しむ溥儀。

溥儀と婉容はヘンリーとエリザベス、と名乗り注目された。
第二夫人では妻と認められず、離婚を望む文繍。
蒋介石率いる国民党の上海鎮圧を受けて、甘粕正彦大尉が溥儀を日本公使館に迎える。


雨の日に出奔した文繍の代わりに、飛行服姿の川島芳子(イースタン・ジュエル)が婉容の友人として近づいた。

彼女は溥儀の遠縁(愛新覺羅顯㺭(あいしんかくら けんし))。
行くなら日本よ、と言って芳子は婉容にアヘンを教える。

 

1950年
溥儀に対する詮議。告白には日本に誘拐されたとあったが、ジョンストンの著書「紫禁城の黄昏」には彼が自由意志で行ったとの記述。
溥儀の使用人だった男も、天津に発つ前日に荷造りしたと証言。
この資料で真実を思い出せ、と取調官。

TIME誌(溥儀の正装した表紙)。
房で使用人に何でもやらせていた事が発覚し、知り合いのいない房に移される溥儀。一族から離れて暮らした事がない、と嘆く溥儀。

 

1934年
満州国皇帝となる溥儀。即位を祝う舞踏会。

その様子の撮影を指示する甘粕。
欄の花を食べる婉容。それをたしなめる溥儀だが、会を中座してアヘンを喫いに行く婉容。
訪日する溥儀。

1935年 満州
帰国早々、新任大臣の承認を求められる溥儀。
東京訪問中に大改革があった。国務総理大臣の鄭孝胥が、息子の暗殺により辞任。後任は関東軍の推薦。
日本と対等の関係を築きたいと話す溥儀だが、甘粕他家臣たちは次々に退席。婉容が自らの懐妊を告げる。相手は満州人。
そこに新首相の承認書類を持ち込む甘粕。後継者が出来ると強気に出る溥儀に、相手の男(陛下付きの運転手)まで教える甘粕。

皇帝の名誉を守ると言われ、やむなく署名する溥儀。

 

婉容は出産したが、赤ん坊はすぐに安楽死させられた。
満州の公用語が日本語と決められた。
婉容は暖地で静養すると聞いて、見送ろうとした溥儀だが、既に車は出発。追う溥儀の前で門が閉じられた。

それを階上で眺める甘粕と芳子が、指を絡め合う。

 

日本軍の後退による満州国への圧力が描かれる。
そして1945年8月15日、天皇裕仁の玉音放送。

国民は初めて天皇の実声を聞いた。
甘粕は自殺。狂って戻った婉容。
溥傑の勧めで日本に亡命しようとしていた溥儀は、婉容に会うが狂って会話にならない。
亡命の途上でソ連軍に捕らえられた溥儀。

 

1950年代
ソ連抑留以後の、中国共産党の取り調べで、あらゆる告白に署名した溥儀。自分の知らないハルピンでの細菌戦の事まで。
自殺から救ったのも利用するためだろう、と溥儀。

1959年
戦争犯罪人として10年投獄されていたが、特赦により収容所を出た溥儀。53歳。

1967年 北京
自転車の群れの中に居る溥儀。

庭師として植物園に勤めていた溥儀は、近衛兵のデモを見かけ、その中にかつて自分を取り調べた所長が罪人として引き回されているのを見つける。
この人はいい人だ、と懸命に庇うが、相手にしない近衛兵。

 

そして溥儀は、博物館として一般公開されている紫禁城に行く。
立ち入り禁止の札を越えて玉座に向かおうとする溥儀を、守衛の子供が制止した。
「昔ここに住んでいたんだよ」との言葉に「証拠は?」と少年。
玉座の後ろからコオロギの筒を出して少年に見せる溥儀。
その蓋を開ける少年。中から茶色いコオロギがゆっくり姿を現した。
少年が顔を上げると、そこに溥儀の姿はなかった。

 

 


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