監督 犬童一心
脚本 浅野妙子、小岩井宏悦
原案 ジャスティン・ザッカム著「最高の人生の見つけ方」
主題歌：竹内まりや「旅のつづき」
キャスト
北原幸枝 ：吉永小百合
剛田マ子 ：天海祐希
高田学 ：ムロツヨシ
北原美春 ：満島ひかり
神崎真梨恵 ：鈴木梨央
北原一慶 ：駒木根隆介
三木輝男 ：賀来賢人
北原孝道 ：前川清
ももいろクローバーZ
予告編
感想
邦画はごくたまにしか観ないが、気になって視聴。
その後「プロフェッショナル 仕事の流儀」で彼女の回が放送され「観といて良かったー」状態。
オリジナルは2007年の同名映画。こちらは観ていない。
死期の迫った女性二人が、道半ばで亡くなった（実は生きていた）少女の残した「死ぬまでにやりたいことリスト」に基づき、様々なタスクをこなして行くもの。
世間のレビューは、オリジナルでは自分たちでリストを作ったとか言う批判がある様だが、日本の普通の主婦が、死ぬ前にやりたい事、と言っても急に出て来ないのも事実。この辺りにはさほど違和感はなかった。
前川清のダメ亭主ぶりが秀逸。ごろ寝でＴＶ見て「宇都宮のギョーザ食いたい」なんて、アホかぁ！！と言いそうだった（笑）
でも大なり小なり、我々亭主が女房に依存しているのは事実。
笑いながらも身につまされた。
幸枝が、マ子から託された遺産２００億をブチ込んで、リスト最後の項目「宇宙旅行」に賭けた。
ただ、これをオープニングに持って来るのはネタバレもいいとこで、もうちょっと組み立て方に工夫が欲しかった。
引きこもりの一慶をキャストとして入れたのは成功でもあり、失敗でもありといったところか。
この様な状況で毎日ゲームに耽っている青少年は、多分数万レベルで存在するだろう。確かに小百合の演技は素晴らしかったが、あの程度の事でドアを開けるかね。
引き込もりを取り上げるなら、もっと掘り下げないと。
ただ、あまり批判的な目て見るのではなく、ファンタジーとして楽しめば、名優小百合も頑張った甲斐がある。
しかし天海祐希デカい！！
あらすじ
緊張の走る打ち上げ現場。カウントダウンが進み、ロケットが発射された。「火星探査機を乗せた”MAKO&SACHI"は・・」のアナウンス。
買い物をする北原幸枝。体調が悪い。
帰宅しても亭主の孝道はＴＶを見てソファでゴロゴロ。
二階へ弁当を持って行き、ドアの前に置く。
息子の一慶はＴＶゲームに熱中。
編集者をしている娘の美春に会いに行く幸枝。来週から検査入院するから、お父さんと一慶の様子を時々見て欲しいと頼むが拒否される。
病院での診察結果は「悪性」。
転移もあり、ステージ４。かなり進んでいる。
「浦安Bay」のオープンセレモニーで挨拶する剛田ホテルチェーン社長の剛田マ子。ここの開業で総室数が五万を超える。
セレモニーの後、トイレで吐くマ子。
病院の四人部屋で、大声で話す先輩患者たち。
小さくなっている幸枝。
病院の特別室でタバコを喫いかけるマ子に、ここは全面禁煙ですと警告する秘書の高田。退室する時に「消してください」・・・「消しましたー」
病院のスプリンクラーが作動して水びたしとなり、幸枝も避難。
騒ぎの後、二人の相部屋に移されたマ子は、イヤだと高田に文句を言う。幸枝がマ子の顔を知らないのに驚き、一応名乗る。警報器の誤作動という話に「迷惑な話よねー」とトボけるマ子。
マ子の夫の三木輝男が見舞いに来るが、女を車に待たせているのを幸枝は見ていた。
幸枝が売店で買い物をしている時に、少女が弟と一緒に母親から叱られている場面に出会う。甘いものはダメ。
美春の見舞い。家に行ったら散らかっていたとのこと。自分がガンだと伝え、お父さんと一慶の事を頼むと言うが、納得出来ない、何もかも押し付けないで、と帰って行く美春。
庭のベンチでタバコを吸いながら幸枝と話すマ子。
末期と聞いて「私も」
五年前に卵巣ガンになり、今は肝臓に転移。夫には言ってない。
「病院へ女連れで見舞いに来る様な男だけど」
知っていた幸枝と一緒に笑うマ子。
幸枝が試しにタバコを喫ってみようとした時、先の少女がタバコを喫おうとしているのを見つけて止める。
居直る娘。ずっと我慢して来た、毎日注射。
子供だって死ぬ時は死ぬ。
立ち去ろうとした時、少女が倒れた。慌てて医者を呼びに行く幸枝。
倒れた娘、神崎真梨恵が残していたポシェットを預かっていた幸枝は、売店で、たまたまあの時の弟に会う。
お姉ちゃんはどうなったの？と聞くと 「死んだ」
ずるいんだよ、お姉ちゃんばっかり。
マ子が情報を仕入れていた。１２歳で１型糖尿病。毎日インシュリン注射が必要。反抗して打たない日もあったらしい。
預っていたポシャットを開けると手作りの冊子が。
「死ぬまでにやりたいこと」リスト。
自宅に戻ると、汚れ物で一杯のシンク。言い訳だらだらの夫。
マ子の会社の役員会。輝男が自分を後任の社長となる決議の最中、マ子スマホ画像がＴＶの画面に映る。
病気の噂で株価が下がっている。幹部も後任決めを希望。
マ子に電話する幸枝。死ぬまでにやりたい事を考えてみたが思いつかない。
あの子のリストには溢れるぐらいの夢が詰まっていた。やってみたい。
「供養？」いえ、自分のため。
もっともともな人だと思っていた、と言うマ子だったが「死ぬのを待つのはイヤ」の言葉を聞いて、
「待って、それ私も乗るわ」
①スカイダイビング
海外の空。インストラクターの介助で二人組として飛行。高田が最初に放り出される（悲鳴）。次いでマ子、最後に幸枝。だがマ子が恐怖で目を閉じ、手も広げられない。喜んで満喫する幸枝。
②億万長者になる
マ子のプライベート・ジェットに乗り、大量に買い込んだ宝くじのチェックをする幸枝。全てハズレ。
こんなのに乗って、気分は大富豪でしょと言うマ子に、子供に少しでも残してやりたい、と幸枝。
「ダメな親ねぇ、でももっとひどい親もいるけどな・・・」
③エジプト旅行
ピラニッドに圧倒される幸枝に、マ子が「お墓は別にあったみたいよ。王様がきっと死ぬ前に意味のないことをしてみたかったのよ」
何の気なしに日陰から外に歩き出して、足の裏にヤケドする幸枝。
④ももクロのコンサートに行く
観客参加で「10代の人ー！」との声に大歓声。次いで20代、30代と続き、60代でガタっと減る。
70代はー？と聞いたところで場内シーン・・・
その時マ子が手を上げて幸枝を立たせる。12歳の友達がいるけど、来られないから代わりに来た。
「お孫さん？」の問いに「いえ、友達です！」
ももクロのメンバーに「一緒に踊りましょう」とステージに引き出されて踊る幸枝とマ子。
コンサートを終えて、次のミッションの検討をする二人。逆上がり、日本一大きなパフェを食べる、ウエディングドレスを着る・・・
そこで「着たの？」と聞くマ子に「着たかったけどダメだった」
なれそめは夏まつり。下駄の鼻緒が切れて、彼が下駄を貸してくれた。それで大学を出てすぐ結婚。親を安心させたかった。
リストは続く。パパとママにありがとうを言う。
両親とも見送った幸枝には無理。
マ子も「私もムリだわ」
母は小さい時に死に、父は小４の時に借金を作って逃げた。
ひどい父親だった。
私、本当はマ子じゃなくて剛田球磨子。小さい時からクマ、クマと言われ続けた。親を恨んだ。
⑤京都の店でジャンボパフェを注文
食べきれずに客のみんなに手伝ってもらう。
大盛況のためもう一個追加。
何も京都まで来ることないんじゃないの？とマ子。
行きたいところがある、と高田に指示して老人ホームに到着。
ここにマ子の父親がいる。誰に聞いたの？高田？！と激怒するマ子。
一度も会っていない。
車椅子の老人がいた。認知症の様子。
「娘さんが来ましたよ、徳次さん」の職員の声。
あなた、借金の取り立て屋がドアを叩く音を一晩中聞いたことある？ 公園の水のんでお腹を膨らました事は？
私はあいつを恨んで、恨み抜いてここまで来たの。向こうが忘れてもこっちは全部覚えてる。
そして幸枝に逆襲。
逃げてるのはあなたの方。何でダンナに病気の事を言わないの。何のための家族なのよ。ダンナからも病気からも逃げてるだけじゃない！
その場を逃げ出したマ子は、いつのまにか公園の鉄棒の前にいた。
小さい頃、逆上がりが出来なくてみんなにひどい事を言われていた。
目の前の鉄棒につかまり、地面を蹴る。逆上がりが出来た！
「えらいなー、逆上がりが出来るのか」幸枝が連れて来た父親が、我が娘とも知らずに誉める。
頭を撫でられて涙を流すマ子。
旅館で起きるマ子。今日は寝覚めがいい。
リストの「人のために何かをして喜んでもらう」を消してもいいと言った。会って良かったなー、と・・・思う。
それで「アンタもよかったんじゃない？」と言いながら、幸枝をのんきな主婦、退屈な人生と言ったのが逆鱗に触れた。
「バカにしないでください！」 「え？」
主婦だってのんきで気楽な事ばかりじゃないんです。逃げたくなる事だっていっぱいある。
日々一生懸命、精一杯で・・・・・と言いながら激痛で倒れる。
あわてるマ子。
病院に居る幸枝。付き添いの孝道。目覚める幸枝。
「こんな大事なことを・・・体が悪いのに旅なんかして・・」
「思い切ったことをやりたかった」
お母さんが生きていた間は遠慮して、そのうち一慶が家に引きこもる様になって・・・それから外に出てないの。
病気になって思った。この家でこのまま死ぬのはイヤ。
「もう少し旅をさせてくれる？」 「・・・・うん」
五島列島。幸枝の郷里 福江島。
「来てよかった」「私も20年振りです」
「ガンになって、悪いことばかりじゃなかったわね」「ホントに」
家族の反対押し切って、まだ行きたいところがあるなんて言って・・・・
本当は旅が終わるのが怖いのかも。
リストを見るマ子。これならあなたも間に合うんじゃない？
⑥ウエディングドレスを着る
「くやしいけど良く似合ってる」
エキストラの出席者にいろいろ指示を出している高田。
そこに、マ子にエスコートされた幸枝がドレス姿で入場。
二人が皆の前に来た時、夫の孝道が正装した姿で現れた。
「幸枝、俺と結婚してくれ」 「・・何言ってるの？」
「もう一度生まれ変わっても、俺と結婚してくれないか」
沈黙の幸枝。
そうだよな、応えられないよな、と続ける孝道。
おふくろの世話、子育ての苦労を押し付けて来た。文句言われないのをいいことに甘えて来た。
でも今日からはお前が幸せで居られるようがんばるから。そばに居てくれないか。
それでも旅に行くというのなら、俺も行く。
「わかったわ・・・・」と頷く幸枝。
「私の旅は・・・・・終わった」
式も一段落してマ子が感心。
あなたってすごいのね。あんなショボいダンナと５０年も連れ添って、最後はあんな事言わせちゃうんだから。
マ子がタバコを喫うのを見て幸枝が「もう火災報知器鳴らさないでくださいね」
「知ってたのーーー？」大笑いする二人。
会社で輝男と対決するマ子。会社どーすんだよ、と言う輝男に「タカラが買ってくれた。剛田ホテルの名と経営陣は残してくれる」
輝男が会社の金を投機に流していた事を暴露。３０億。
解任して刑事告訴する、と言って離婚届を差し出すマ子。
それを持ってドアから出て行く輝男。片手でバイバイ。
年末の北原家。料理を作っている孝道。何でも自分で出来るようにするのっ！とハッパを掛ける美春。
だが急にトイレに走る美春。それを見て娘の妊娠を知る幸枝。
相手は８歳下の部下だが言っていない。結婚する気はないだろう。
相手にちゃんと言わなきゃダメと言う幸枝。簡単に諦めないで。
お母さんも諦めずにお父さんにもっと言えば良かった。後悔してる。
「お父さん、来て」と孝道を二階まで連れて行く幸枝。
一慶の部屋のドアをドンドン叩く幸枝。
いいから開けなさい！ だが開かない。
美春のお腹に赤ちゃんがいるの。
美春があわてて「一慶に言ったってしようがない」
「お母さん、もう少ししたら、この家からいなくなる。そしたらあなたがおねえちゃんを助けてあげて。生まれてくる赤ちゃんを好きでいてあげて・・・・それだけでいいから」
ドアが開き、一慶が一言「うん」と言った。
「よかった、ありがとう」
「お母さん、一慶がスキ、美春がスキ、それからお父さんがスキ」
「何言ってんの、今さら」と泣き笑いの美春。
マ子の会社に呼び出される幸枝。マ子の遺影の前で高田が遺産相続の書類と、２００億の小切手を幸枝に渡した。
ダメですと言う幸枝に、社長から預かったという手紙を渡す高田。
それはペンを持つ力もなく、口述筆記で高田が残したもの。
お金は墓場まで持って行けない。でも私には会社という子供が残った。それで十分。
人生の最後にあなたに会えたのが何よりの喜び。
今まで、上ばかり見て生きて来た。でも違うのね。
バカにしないで下さい！
・・・・ささやかな毎日をいとおしんで生きる大切さ。
死ぬと判ってからは叫びたいほど怖かった。でもあなたに会ってから怖がっているヒマはなかった。
ありがとう、幸枝さん。
高田が蛇足。「最後にこう言われました。高田、心配するな。お前にもきっといい出会いがあるぞ」
待っててね、マ子さん。もう少しだから。
病院の売店で、例の少女真梨恵と弟を見かける幸枝。生きていた・・・・
ももクロの映像を見たという「おばさんたちすごいね」
倒れた後ＩＣＵに入ったとのこと。今はもうキチンと注射している。
弟が「ごめんね、ボクうそついちゃった・・・・」
あなたの落とし物、と言ってリストを渡す幸枝に
「いらない、捨てちゃって。私、死なないから」
ロケット発射の場面。打ち上げ成功。
アナウンサーの言葉
「三年前に亡くなられた剛田球磨子、北原幸枝両氏の名前にちなんで名付けられました。太陽系の研究開発において、大きな一歩となります・・・」
現場で荷役の作業をしながら、事務所にあるＴＶで発射の映像を見る一慶。