ZELDAさん絶賛の映画という事でリブログします。
公開当時は全国でも2館だけだったのが、話題が話題を呼び、続々と公開館が増え、結局350館、興行収入30億超えの大ヒットになった。
拡大公開時には、我が行きつけの映画館でもかかっていたが、どうもうさんくさい感じがしてそれはパス。
早めのTV公開(今年3月)を受けて録画、視聴した。
監督・脚本 上田慎一郎
原作 和田亮一、上田慎一郎
キャスト
日暮隆之 - 濱津隆之
日暮真央 - 真魚
日暮晴美 - しゅはまはるみ
松本逢花 - 秋山ゆずき ドラマの女優役
神谷和明 - 長屋和彰 ドラマの男優役
細田学 - 細井学 ドラマのカメラマン役
山ノ内洋 - 市原洋 ドラマの助監督役
山越俊助 - 山﨑俊太郎 ドラマの録音マン役
古沢真一郎 - 大沢真一郎 番組プロデューサー
笹原芳子 - 竹原芳子 TVプロデューサー
吉野美紀 - 吉田美紀 番組AD
感想
最初の第一部は、1カット長回しではあるものの、出来としては大学生がサークル活動で作るレベルといった感じ。途中でも不自然な沈黙があって「何?、これ」的な雰囲気を醸し出していた。
そんな映像を三十数分見せられた後のエンドロール見て再び「何?、これ」
場面変わって「1ケ月前」のテロップから先が実は本編。
ようやくドラマの構造が判って来た。
要するに本編を見せた後、間髪入れずにメイキングのネタばらしをし、改めて舞台裏を交えて見せるという映画。
あざといと言えば言えるが、映画の撮影現場の裏側が見られて、とにかく笑った。
あの助監督の右腕食いちぎられた姿は、最初の映像でも「良く出来てるなー」と思ったが、メイキングでの突貫作業でセットされる姿を見て、また驚き。
死体の人形差し替えも、機動性を考えて超軽量に作られていて、スピード感がハンパない。
ただ、そんな中でベースにある日暮家の家庭が丁寧に描かれ、それが最後に集約される。
一番のキーマンは晴美。女優だが役に入り込み過ぎて「使えない」烙印を押され、引退状態の妻。現在ハマっている護身術が、伏線回収で随所に出て来て「ポンっ!」と言うたび爆笑。
中盤、血だらけの顔で隆之から「大丈夫か?」と言われた時の顔が忘れられない。
また娘の真央は、バイトのADでこれまた入り込み過ぎ、子役に本物の涙を要求してその母親とトラブル。スタッフとの間に入って途方に暮れる隆之。
そんな状況で出演が決まった晴美は、芝居が進むにつれてどんどんエスカレートして行く。
メインカメラの裏で、男優の神谷が晴美にビンタされた時の「オヤジにもぶたれたことないんだ」はガンダムで、アムロがブライトにぶたれた時の名ゼリフ。これにはホント不意を突かれた。
そして番組ADの吉野がオーバーフローした時に、とっさに引き継いだ真央。この辺りの小気味良さにも喝采。
終盤の、引きの場面の攻防は、この映画のクライマックス。番組Pの要求に負けて自分を曲げた隆之。
それを見ている真央が行動を起こした。
ただあの人間ピラミッドは、作るのに何度も失敗してコケる場面がくどくて、いかにも二流のテイスト(それも狙った演出だった?)。
まあ、いろいろつっこみどころもあるが、金を掛けていないB級映画の中で、しっかりと上質な家族ドラマになっている。
しかし、この手法はZELDAさんも指摘する様に一回限りしか使えない。
この監督の次回作に期待したい。
またこの映画は、出演者にとっても今後の道を開くきっかけになった。そちらにも期待(特にしゅはまはるみ萌え~)。
あらすじ
オープニングから37分間、ノーカットのB級ゾンビ映画が続く。
主役男女の演技に対して監督がブチ切れ、女優を責める。
メイク役の女が、この建物で旧日本軍の人体蘇生実験が行なわれていた事を話すとビビる俳優たち。
監督が屋上に血糊でサインを描いた事で、関係者がゾンビ化。俳優たちは逃げまどい、それをカメラで追う監督。
メイク役の女が、驚異的な身体能力でゾンビ化した者を倒して行くが、屋上で斧を頭に受けて絶命。
ゾンビ化した男優が女優を襲うが、彼の首を斧で落とす女優。
最後に生き残った女優は、屋上に描いてある五芒星の上で空を見上げる。
エンドクレジットで「ONE CUT OF THE DEAD」
その1ケ月前。
前述の生放送番組のオファーを受ける監督の日暮隆之。
妻の晴美は、女優だったが使いづらくて引退状態。現在の趣味は護身術。また夫が持ち込むシナリオを毎回読み込むのが楽しみ。娘の真央は大学生で、映像制作のバイトをやるが、こだわりが強すぎて使えないと敬遠されている。
生放送なので、放送事故がないようリハーサルを重ねる隆之。
本番当日は晴美と、男優の神谷のファンである真央も見学に来ていた。だが本番を前にして、監督役とメイク役が交通事故で出演不能になる。
監督役は、やむなく隆之本人が行う事にしたが、メイク役がいない。
真央が母親を強プッシュ。シナリオが全部頭に入っている事が決め手で、晴美が代役に決定。
そして本番の開始。生番組の映像が、舞台裏を交えて繰り返される。
カメラマン役の細田が酒を飲んでしまい、序盤から混乱。
録音マン役の山越は、過敏性大腸炎で肝心な時に戦線離脱。
それも利用して映像は辛くも繋がって行く。晴美は芝居に入り込んで暴走するが、それも結果オーライでカットは入らない。
途中で裏方の人手が足りなくなった時、真央がADとして参加を始める。
番組も最終段階に入って、引きのクレーンの場面が近づくが、トラブルで使えない。描かれた五芒星を映し出して、それで皆がゾンビ化した事を説明する大事なオチ。だがプロデューサーの古沢は、番組のまとめを優先し不要だと反論。最後の判断で引きを諦めようとする隆之に、真央が「今動けるのは何人居る?」
残ったスタッフ、俳優全員で人間ピラミッドを作る。その一番上で隆之の肩車に真央が乗り、引きの場面を何とか撮って番組終了。
隆之の台本に貼ってあった、真央が幼い時に隆之が肩車をしている写真。真央はそれを見て思いついた。