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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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どろろ ①、②巻  作:手塚治虫  全4巻(秋田書店サンデーコミックス)

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どろろ  作:手塚治虫  秋田書店サンデーコミックス版
            初出 1967年 少年サンデー、1969年 冒険王


タイタンパーさんのところで、今年初めから「どろろ」の新作アニメが放送されているのを教えてもらった。
思い返せば、子供の頃最初に「少年サンデー」でリアルタイムに読んだが、内容の暗さもあり途中で連載は中断。

コミックスとして全4巻となったものを読んだのは成人してから。
最初のTV放映の時には、もう中高生だったので本格的には観ていなかった。確か放映途中から「どろろと百鬼丸」に改題された(まあ百鬼丸の話だからしゃーない・・・)。

その後全く思い出す事もなかったが、娘が中学の頃に古本を買って来て読んでいた。その時は「ああ、それ知っとる」てな程度で、読み返す事もなかった。
そして今回。第1回目を観て「あれ、こんなだったっけ?」と気になって娘の残したダンボール箱を発掘し、全部読み返した。
まあ、新作アニメが全て原作通りである必要はないが、一応原作との違いを理解しておくのもイイだろう。

なおアニメはBS11の月曜深夜0:30~で放送中。


登場人物
どろろ    野盗・火袋の子供。両親に死なれ泥棒で日々をしのぐ
百鬼丸   魔神の呪いで体の48ケ所が欠損して生まれる。
醍醐景光 百鬼丸の父。野心のために子供を魔神に売り渡す
縫の方   百鬼丸の母。夫の野望を知らずに百鬼丸を産む
法師     盲目の琵琶法師。百鬼丸に生きるアドバイスを与える
火袋     どろろの父。権力に抵抗する野盗。
お自夜   どろろの母。
イタチ    火袋の子分。後に火袋を裏切る
みお     不遇なこどもたちの世話をする少女。
寿海     赤ん坊の百鬼丸を救い、育てた恩人の医師


第①巻

 

<発端の巻>
領内の地獄堂に納められている48体の魔像を訪れる領主の醍醐景光。和尚が話すその由来。
和尚を帰し、魔像と交渉をする景光。天下取りと引き換えに、近く生まれる自分の子供を差し出すと約束。
話を聞いてしまった和尚は殺された。
景光の妻、縫の方が産んだ赤ん坊を見て、自分の願いが聞き届けられたと喜ぶ景光。川で、子供をたらいに乗せて流す景光と縫の方。

 

<百鬼丸の巻>
さむらい崩れの追いはぎに囲まれる百鬼丸。近寄ると危ないという警告に構わず切りつける追いはぎ。両腕の義手を抜いて刀を出し、皆を倒す百鬼丸は、その後も寄って来る妙な妖怪たちを撃退。
川原でボコボコにされている少年。やりすぎを止める百鬼丸に大男が、こいつはどろろといってどうしようもない悪ガキだと罵る。
そんな時「死霊の声がする」と百鬼丸。大男が、流れて来たものを掴むと急にそれが立ち上がる。
それに触られると体が溶けてしまう。大男がやられた。
百鬼丸が義手を抜いた刀で橋を切り刻み、妖怪を崩れた橋の下敷きにして仕留めた。
その姿に感激したどろろは、以降百鬼丸に付いて回る。だが百鬼丸に寄り付く妖怪に捕まる。すかさず助ける百鬼丸。

それでも懲りないどろろ。
百鬼丸はうつむくと両の目玉をポトリと落とす。

どろろ絶叫!。耳も外れる。

 

子供は胴体と頭だけの状態で、たらいに乗って流されて来た。

それを見つけたのが医者の寿海。
おかゆをあてがうと懸命に吸う。

 

幾つかの季節を過ぎたある日、寿海はその子供からの心の声を聞いた。「なにかたべたい」。寿海の語りかけに心で応える子供は、それからどんどん知識を吸収した。
寿海は工作の腕も確かで、腕や足、目などの部品を次々に作った。
そして子供に麻酔をかけ、長い手術を施して仮の部品を取り付けた。
見た目だけは申し分のない体が出来た。だがそれを自身で動くようにするには非常な努力が必要だった。
苦痛を乗り越え、自由に走れるまでになった子供。欠損がある分、特別な勘が働く。
ある日女が訪ねて来る。苦しいと言い、寿海が診るが脈がない。子供が「そいつ人間じゃない!」と教えるが、女の髪が寿海を襲う。
斧で女の首を斬り、火で追い払う子供。それは何とか撃退出来たが、その後おかしな妖怪が続発。
妖怪は、子供に惹かれて集まるのだと理解した寿海は、子供に旅へ出るよう勧め、指が動かせる義手と、それを抜くと出る刀を取り付けた。そして子供に百鬼丸の名を与えて送り出した。
嵐の中、入ったお堂で何者かに「お前は48匹の魔物に出会うだろう」と言われる。それらを倒す事で失われた体を取り戻せる。

雷鳴と共に声は消えた。

 

<法師の巻>
ある日、盲目の琵琶法師とすれ違う百鬼丸。

その時法師が「死神のにおいがプンプンする」と言った。
百鬼丸の事をスキだらけだと言いながら、飛んでいる虫を仕込み杖の刀で、音もなく二つに割る。
弟子にして欲しい、とつきまとう百鬼丸だが、法師は構わず歩く。
強風吹きすさぶ崖で、足がすくみ動けない百鬼丸。人並みな事は何も出来ないと嘆く百鬼丸に、あるところへ連れて行く法師。
荒れ果てた山門に棲み付く浮浪児たち。手や足のない子もいた。
それ以来子供たちと一緒に暮らす百鬼丸。浮浪児たちの世話をする少女みお。心惹かれる百鬼丸だが、自分は汚れていると言うみお。子供たちを食べさせるために雑兵たちから食べ物を恵んでもらっていた。
ある日百鬼丸が剣の練習から帰って来ると、山門が燃えている。
以前から立ち退きを要求していた武士たちが、子供たちを皆殺しにしていた。そこにはみおも。
叫びながら武士たちを斬り殺す百鬼丸。

 

<金小僧の巻>
今までのいきさつをどろろに話す百鬼丸。だがそれにも怯まず、手に付いている刀をいつか奪い取ると豪語するどろろ。
川原で野宿する二人。明け方に鈴を持った妖怪が、寝ている百鬼丸を窺っているのを見るどろろ。
行き着いた村で、どろろが村人にその話をすると「それは金小僧だ」と言って二人を縛り上げ「万代(ばんだい)」さまのところに引き出される。半身にふとんを掛けて座る美人。
金小僧が何か言った筈だと万代が聞くが、シラを切る百鬼丸。
納屋の柱に縛り付けられる二人。そこの井戸から妖怪が現れた。刀で応戦する百鬼丸。妖怪は再び井戸に逃げ戻った。身軽などろろが井戸に入って行く。底には多くの人骨。更に横穴を通ると屋敷の中に出た。
見つかって捕らえられたどろろは、木に縛られてしまう。
どろろを助け、村人に万代と金小僧の事を聞く百鬼丸だが、万代が情深いという割に貧しい村。定期的に妖怪が襲い、人を殺して金を奪うという。
金小僧を見た者を万代のところへ連れて行くのが、命じられている事。
百鬼丸は、金小僧から「やろうかあ、やろうかあ」という言葉と、ある場所を聞いていた。
そこへ行くと金小僧が居たが、皆が行くと消えてしまった。その場所を掘れと言う百鬼丸。
そこにはたくさんの金が埋まっており、村人が奪われたものだった。

 

<万代の巻>
金が見つかった事を万代に報告する村人。それは良かった、と万代。一人になった時、万代の目が光る。
村人の話を聞く百鬼丸。荒地を開墾してここまで漕ぎ着けた。万代さまの寄付のおかげ。だがばけものが人を殺して金を奪って行く。そしてまた万代から金を借りるという繰り返し。
ばけものはきっとまた村を襲う、と百鬼丸。
警戒しているところで、見張りの村人が殺される。
万代を見張っていたどろろだが寝てしまい、百鬼丸の通信で目覚めるが、万代は既にいない。
現れた怪物と戦う百鬼丸。しっぽに布が巻いてあり、その先には万代の顔があった。
百鬼丸の足に仕込んだ焼水の攻撃で逃げて行くバケモノ。
部屋で待つどろろは、怪物と合体した万代を見てしまう。
駆け付ける百鬼丸。

 

 

<人面瘡の巻>
鐘突き堂に逃げる怪物。百鬼丸は青梅の毒矢で万代の額を貫く。鐘の上で怯む怪物に村人が鐘木を打ち込む。
何度も打ち込まれ、落ちた怪物がどんどん小さくなり、人の顔になる。
「人面瘡だ!」と言って村人を遠ざけ、焼水をかける百鬼丸。白い液体を出して消滅するばけもの。
以前にも似たものを退治した百鬼丸。その時は娘のヒザに大きなできものが出来、人の顔になってものを言ったり食ったりする。その時も焼水で退治した。
怪我をしたどろろを手当てする場所を貸して欲しいと言う百鬼丸。だが村人はどろろの悪い噂を知り、追い払う。
百鬼丸の手当てで何とか回復するどろろ。だが体を触られた事にショックを受ける。
その時、百鬼丸の右腕に異変が起きる。義手が外れ、刀も抜けた。そして腕が生えて来た。凄まじい痛み。

 

今まで16匹の妖怪を退治し、髪や鼻などは生えて来たが、今回の様な大きなものは初めて。
どろろが寝ている間にうわごとを聞いていた百鬼丸は、お前も身の上話をしろと言うが、頑なに拒むどろろ。

 

 

第②巻

 

 

 


<無残帳の巻>
どろろの回想。
多くの手下を使って夜盗をする首領の火袋と、女房のお自夜。

そして乳飲み子のどろろ。
酒盛りの最中に、子分のイタチが侍と手を組んでの天下取りを進言するが、侍の仕打ちに苦しんだお自夜たちにその気はない。
逆恨みしたイタチは、味方につけた子分と共に、どろろを誘拐して火袋をおびき出した。
代官と手を組んだイタチは火袋家族三人を牢に入れる。
どろろが盗み出したカギを使って牢を脱出した三人。

お自夜をどろろと共に逃し、代官の屋敷を破壊する火袋。
イタチの待ち伏せに遭って捕まるお自夜。結局火袋も捕われの身に。
矢で火袋の足を痛めつけてイタチが去る。
まともに歩けない火袋と、どろろを抱えて苦労するお自夜。

野盗のまねごともしたが続かない。
何年も経ったある日、通りかかった公家の一行。

娘がどろろに饅頭を恵んだ。
それに激怒した火袋が、侍従たちといさかいを起こして結局殺される。

 

寺の炊き出し。器を持たないお自夜は、両手に直接おかゆを受けて、それをどろろに飲ませる。手は火傷。


その年の冬は厳しく、雪山へ迷い込んだ二人。

むしろにくるまって冷たくなるお自夜。

 

<妖刀の巻>
百鬼丸とどろろの行く手に現れた男。似蛭という刀を持ち、人を多く斬りすぎたために刀が血を欲しがっているという。
延々と続く百鬼丸と男との戦い。男は刀を構えたまま気を失っていた。念力同士の戦いだった。
百鬼丸がよせと言うのを聞かず、男からその妖刀を盗んで来たどろろ。だがそれを持ったとたん「斬れ!」という言葉が頭を支配する。
参拝で階段を上る父娘。娘の名はお須志。そこに妖刀を持って迫るどろろが襲いかかり、父親の頭を傷付けるが、持っていた護符のおかげてそれ以上の攻撃は食い止められた。
父娘が逃げた後、町で刀を振り回すどろろ。
お須志が茶屋へ血止めをもらいに行くと、そこにはあの妖刀の男。

お須志は「兄さん!」と叫ぶ。
彼は五年前に足軽に取立てられた田之介。城主に仕えるのはまっぴら、と田之介。
城の秘密を知った大工の抹殺を指示されてイヤイヤ実行したが、それが高じて刀に振り回されるようになった。
どろろに取られた刀を取り返しに来た田之介。町人の火責めに遭って刀を落とすどろろ。妖刀は田之介に戻った。
そして百鬼丸との戦い。壮絶な斬り合いの中で、田之介が百鬼丸の左腕に斬り付ける。その腕が抜け、刀が出て驚く田之介。そこに斬り込む百鬼丸。
重傷を負う田之介。血が吸いたいと言う刀を、自分の体へ突き立てる田之介。百鬼丸の一撃で粉々になる妖刀。
突然左目に痛みが走り、入れ目が落ちる百鬼丸。そして本物の目が生まれた。
川で体を洗う事を提案する百鬼丸だが、どろろは絶対拒否。だが橋の上でわめいているうちにどろろが落ちた。
その時、どろろの背中に現れた模様を見て驚く百鬼丸。

 

火袋は、皆のために使う目的で金を貯めていた。お自夜は死ぬ少し前、隠し場所を伝えるためにどろろの背中に地図を彫り込んだ。
いつの間にか琵琶法師が姿を現し、生きがいについて説く。どろろが金を探す事への協力がそれだという。

 

<鯖目の巻>
歩く先に妖気を感じて隠れる百鬼丸。大きな体のシワだらけの赤ん坊を連れている、性別も判らぬ者。子供を買ってくれという。断る百鬼丸だが、いつの間にかその者が消えた。


寺の焼け跡を見つけて泊まろうとするが、そこに赤子を抱いて訪れる夫婦。捨て子だと怒る百鬼丸。だが夫婦の言うには、慈照尼さまが赤子を養ってくれると聞いて来た。
百鬼丸は先の者を思い出し、その尼は死んだと言う。
そこに現れる土地の郷士の鯖目。慈照尼がうそつきだったと言った。
屋敷に招待される百鬼丸とどろろ。凄まじい妖気。
食事を提供され、寝る場所も与えられるが、その夜現れる妖怪。百鬼丸が腕に仕込んだ刀で刺すが、空を飛んで逃げられる。
鯖目と話す奥方は百鬼丸たちを泊めた事を咎める。鯖目から出て行くように言われるが、バケモノの話を持ち出して断る百鬼丸。
土蔵に忍び込んで捕まるどろろ。奥方の名はマイマイオンバ。女官たちと共に遠い世界からやって来た。屋敷で自分たちの子供を育てており、それを慈照尼に知られ殺した。
スキを見て土蔵に火を点けて逃げ出すどろろは、百鬼丸と合流して全てを伝える。
鯖目は洗脳されており、百鬼丸に斬り付けるが敵わない。
火に追われて逃げ出す妖怪たち。

 

<地獄変の巻>
山に登って奥方と会う鯖目。私が妖怪でも妻としてくれる?という奥方に頷く鯖目は、百鬼丸を殺すための毒を渡された。
村人に真相を話し、守りを固めるよう指示する百鬼丸。
だが僧の集団に化けて入り込む女官たち。その上百鬼丸は毒入りのお茶を飲まされる。
妖怪たちの粘液に捕まるどろろ。そこに助けが来る。途中で姿を消した赤ん坊の妖怪。その体が割れて中から白い体の妖精の様なものが多数出て妖怪たちを撃退。


それはお寺に住んでいた子供たち。姿を変えて強い人が来るのを待っていた。村人が団結して妖怪たちを底なし沼へ追い詰める。
まだ体がマヒしている百鬼丸を襲う鯖目。落ちていた丸いものをぶつけて応戦するどろろ。
その丸いものはマイマイオンバの卵。
妖怪をどうしても斬らなくてはいけない、と言う百鬼丸に肩を貸すどろろ。舟に乗って最後の戦いに臨む。水面から浮かび上がるマイマイオンバ。
指示を受けてたいまつの火を灯すどろろ。習性から火に引きつけられて焼死する妖怪。
百鬼丸の足に激痛が走り、右足が生えて来た。


翌朝、鯖目は頭を丸めて来た。尼寺を再建して子供たちを弔うという。
厄払いの祭りで賑わう村だが、百鬼丸の足が取れてまた生えて来た事を知って、妖怪の仲間だと決めつけ、追い払おうとする。怒るどろろだが、それをなだめて村を出る百鬼丸。

 

感想
前述のように、子供時代「少年サンデー」で読んだのが最初。
胴と頭だけの、究極の欠損体として生を受けた百鬼丸。これは一時医師を目指した手塚独特の視点であり、以後「ブラックジャック」のピノコにもその設定が受け継がれる。
寿海に育てられる時期に、相手への呼び名が「パパ」というのにはどうにも違和感があったが、シャレなのか彼のマンガにはこういうものがけっこう多い。
子供の頃読んで一番印象に残ったのは「万代」。巨大な怪物のしっぽ部分が女だったというショック。
ネーミングも、当時急成長したプラモメーカーの「バンダイ」と重なって記憶に刷り込まれた。
悪ガキのどろろには、最初あまりいい印象はなく、いつも足を引っ張るイヤな奴という感じ。だが百鬼丸との人間関係が構築されるにつれてそれは解消。
題名も、本来ならば「百鬼丸」としたいところだが、どろろに対する手塚の思い入れの強さが、このマンガに独特の味を加えている。

 

 

 

 


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