アイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズは①~③(1951~1953年)の後、④~⑤(1982~1986年)の続編を以て、時間軸基準では完結した。
その次にアシモフが取り組んだのが、ハリ・セルダンが「心理歴史学」を完成させるまでの話。若きセルダンが描かれる。
興亡史としては⑥、⑦の扱い。
ハードカバー表紙
文庫版表紙
超あらすじ
数学者の大会で、未来を数学的に予言出来ると言った、32歳のハリ・セルダンは各方面から注目される。
銀河帝国皇帝クレオン一世がセルダンを招聘。宰相のエトー・デマーゼル。謁見は不調に終わり、皇帝は失望。謁見の後、襲われたセルダンを連れ出すチェッター・ヒューミン。
ヒューミンの手引きでストリーリング大学に行き、ドース・ヴェナビリという女性に引き合わされる。
ドーム屋上での遭難騒ぎ。凍死を免れるセルダン。
膨大な情報量を扱うのでは心理歴史学が機能しない事から、狭くても過去の歴史が確保されているマイコゲン地区へ向かう。
サポートする女性レインドロップ43から、歴史の資料である「本」を入手するセルダン。本に「ロボット」の記載。
ロボットを求めて寺院「サクラトリウム」への侵入。だがそこにあったのは単なる象徴。捕らえられるセルダンとドース。
ヒューミンに危機を救われ、帝国から目の届かないダール地区に送られる二人。
数学者を目指すユーゴ・アマリルとの出会い。地球の事を知っている「リター母さん」に会うため、危険なビリボトンに出向くセルダンとドース。案内者の少年レイチ。
アパート家主の妻カシリアの策略で危機に陥るが、レイチの機転で助かる。
レジスタンスのダヴァンの手引きにより、ダール地区から脱出。
着いたところはワイ。南極地区を統治して長い歴史を持つが「反帝国」として認識されている。女性市長のラシェル。父マニックス四世から権限移譲を受けている。
帝国主導によるクーデターによりワイの政権が奪取される。力を失うラシェル。裏で手引きをしていたのはヒューミン。
彼の正体は帝国宰相のデマーゼル。
セルダンとヒューミンだけの会話。
最初、心理歴史学に実用性はなかった。単純な世界として扱うためにマイコゲン、ダール地区は有用だった。
だが結局求めていた単一の世界は「トランター」にあった。
そしてヒューミンがロボットである事を言い当てるセルダン。
二万年に亘って機能を続けている彼の正体は「R・ダニール・オリヴォー」
帝国の宰相として、何とか衰退を防ごうと関与していた時にセルダンの論文を知り、人類にとっての未来を識別する可能性に賭けた。
ここから先はセルダンの仕事。
セルダンにとって、大事なパートナーのドース。
ロボットである事を承知で彼女に求愛するセルダン。
感想
ファウンデーションと地球(銀河帝国興亡史⑤)のラストで現れたロボットのダニールが、ハリ・セルダンにどうやって関与したのかを描くシリーズ。そこに書かれていた「五世紀ほど前に、ガイア確立に対する障害を丸く収めるための次善の策として、心理歴史学の発達を助けた」の一行が大作ドラマに膨らんだ。
若いハリ・セルダンが、最初理論だけで実用にはならなかった心理歴史学を、ヒューミン/デマーゼル/実はダニール からの影響を受けながら軌道に乗せる端緒を掴むまでの話。
様々な地区を渡り歩いて、危機を脱しながらヒントを掴んで行くというパターンはいつもの流れだが、話がトランター内に限定されているので「宇宙もの」という観点からはやや物足りないか。
相棒のドース。最初他人に託して、セルダンがドームの屋上で凍死しかけた事で、彼を「放っておけない人物」と認識するが、その後も勝手な行動をするセルダン。普通ならキレるところだが、種明かしによれば彼女もヒューミン同様ロボットだったのならナットクか。
そらーロボットなら、ナイフ持ったチンピラにも負けるわけないわな。
ヒューミンの語る、帝国衰退の要因の一つが出生率低下というのは示唆に富んでいる。
今回では心理歴史学の研究として全く進んでおらず、膨大な帝国全域の歴史ではなく、トランターに絞ったものとして今後進めて行くという、方針だけが判明。
今回はアクション混じりだったが、次作の「ファウンデーションの誕生」では心理歴史学の完成までの道程が描かれるだろう。次で興亡史としては終わり。何だか寂しい・・・・
あらすじ
文庫版・上巻
数学者
銀河百科事典:クレオン一世
エンタン朝最後の銀河帝国皇帝。ハリ・セルダンと同年(定かではない)。二十二歳で帝位を継いだ。宰相エトー・デマーゼルの手腕により穏やかな統治を行った。
銀河帝国の皇帝に即位してから十年のクレオン一世。十年毎に行われる数学者の大会で、未来を数学的に予言出来ると言ったハリ・セルダンに興味を持ち、宰相のエトー・デマーゼルに招聘を命じた。
宮殿に呼び出されるハリ・セルダン、32歳。
早速、数学者大会での講演内容の事を聞く皇帝。期待する言葉が得られずイラつく皇帝は、自分の暗殺について予言せよと迫る。過去の例を引いて確率論を話すが一蹴。セルダンを下がらせる皇帝。
セルダンへの失望を話す皇帝。デマーゼルは彼が害をなす可能性に言及。今後見張りを付ける事を提言。
謁見の後、公園に出掛けたセルダンに近づく男。数学の十年大会で彼を見たと言う。名前はチェッター・ヒューミン。ジャーナリスト。
セルダンが宮殿に呼ばれた事を知っていた。警告するヒューミン。監視を続け、必要に応じて捕まえ、もし危険なら殺す。それはセルダン自身の予測でもあった。
逃走
銀河百科事典:トランター
第一銀河帝国の首都。今の時代がこの都の絶頂期。人口400億。ドームに覆われ、果てしなく広がる都市。
男二人に因縁をつけられるセルダン。今立ち去れと命令される。
そこへ助っ人に出たヒューミン。逃げて行く二人。
だがここを立ち去らなくてはならないという。彼らは多分警察から差し向けられた者。
エアタクシーのレンタル・ターミナルで車に乗り発進。目的の場所はトランターの中でも、帝国権力からは全く安全だという。
ヒューミンの語る銀河帝国の歴史。二万年以上前には単一の惑星系だったかも知れない。人類としての未来は今後も続いて行くだろう。それを調べる事は極めて重要。
「私は歴史心理学と呼んでいる。理論的には可能」とセルダン。
ヒューミンの話す衝撃の言葉「銀河帝国は、死にかけて、います」。
大学
銀河百科事典:ストリーリング大学
古代トランターにあった高等学術機関。ハリ・セルダンが逃亡中に一時滞在した。
ヒューミンの言葉を聞いて不快感を抱くセルダン。不確定の物事を評価するために確率の法則を使ってエレガントな方程式を作った。だがそれは数学的好奇心から。それに意味を与える歴史的知識は持っていない。
この状況で心理歴史学が実用に供するとはとても考えられない。
銀河帝国が死につつある理由を聞くセルダン。トランターの人口減少を挙げるヒューミン。理由の一つは出生率の低下。それとテクノロジー進歩の停滞。感覚としてはそう感じるが証明が出来ない。
それを見つけることは出来ないと言うセルダンに食い下がるヒューミン。やれというのではなく「やってみてくれないか」と言っているのです。失敗してもともと。
理由も判らず「やってみましょう」と言ってしまったセルダン。
エアタクシーは大きな駐車場に入る。ここからはストリーリング地区。公然の攻撃からは守られる。
車を降りて歩き出す。最後の行程はエクスプレスウェイ。
ヒューミンの話では、これから向かうのがストリーリング大学。
図書館
通された部屋は窓がなかった。セルダンが置いて来たものはもう取り返せない、とヒューミン。当面の出費に対応するため、彼のクレジット・タイルをくれると言った。
ヒューミンは、これで自分は通常の生活に戻るという。
ブザーで起こされた。相手はドース・ヴェナビリと名乗り、ドアの内側にホログラムで現れた。
身支度を済ませ、ドアを開ける。彼女はヒューミンから世話をする様に言われている女性。トランター人ではなくシンナの出身。セルダンの知らない星。
彼女は二年前に博士号を取ってここに居るという。もうすぐ30歳。
魅力的な女性との関わりに喜ぶセルダン。
晩餐を終えたクレオン一世は、デマーゼルを呼びつけて、先日の数学者について問い質した。
セルダンを早く帰国させようとしたが、加勢する者が居て今はストリーリング大学に居る。立腹すると共に引き抜きを心配する皇帝(例えばワイの市長)。そんな事態になれば殺す、とデマーゼル。
コンピューターの端末を見つけ出し、遅いながらも作業を進め始めたセルダン。
歴史を学び始めて、文献が限られた事件に集中している事をドースに指摘するセルダン。数学では、知った事は全てコンピューターの中に再現出来るが、歴史は取捨選択がされる。
歴史は取捨選択しなくてはならない、と言うドースに対し、心理歴史学の法則を割り出すには歴史の全てを知らなければならない、とセルダン。研究の先行き不安を口にするドース。
解決策が思いつけないセルダン。
上側
翌日になると、また端末に向かうセルダン。
そんな彼を訪れるリスング・ランダ。東洋人。リスングの伯父は気象学で有名な学者。彼は心理歴史学の内容を調べて気象学への応用可能性を考えていた。
ドーム覆いの「上側」に設置してある計器類のチェックに明日同行するというセルダン。気象学と聞いて驚くドースに気分転換と言った。スケジュールを理由に同行を断るドース。
気象学プロジェクト・リーダのジェナール・レッゲン。気象変化の一般法則を求めている。ドームの屋上に向かっていた。
同行の女性クロウジア。「上側」に出てからは彼女の説明を聞きながら関連の場所を回った。
上側に溜まる土のおかげで、樹木も生えていると聞き興味を持つセルダン。
クロウジアがレッゲンに呼ばれて残されたセルダンは、その樹木に急に興味を持ち、高いドームの方へ歩いて行った。
しばらく歩き、もう一つのドームの上に樹木を見つけて納得するセルダン。だが上空から音が聞こえ、遠くに目をこらすと、黒い点が現れて、やがて雲に隠れた。
その時、理由も判らず「追っ手が来た」と思い込むセルダン。
木立の陰に隠れるセルダン。近づいて来る物体はジェットダウンだった。六角形をして空中にホバリング出来る探査用の乗り物。
ヘリコンにもある乗り物。追っ手なのか、気象探査の一環なのか。なおも近くを動き回るジェットダウン。セルダンは、これを陰謀と判断して隠れ続けた。去って行ったジェットダウン。辺りを見回すと、日が暮れてい
た。出て来た所を探すが、どれだけ歩いても覚えのある場所に出ない。
顔に突き刺さる様な感覚。雪が降って来た。体を丸めてうずくまる。
眠れば死ぬと判っていても、目がひとりでに閉じた。
救出
ドースがレッゲンを見つけたのは日暮れ前。セルダンが「上側」に同行した事を確認したが、今どこに居るか知らないという。自分の多忙に気を取られて確認していない。
ドースは地震学者を呼び出した。地震計のデータで人の動きがあれば検知出来る。地震学者のベナストラが条件を絞り込んで、その痕跡を捕まえた。二十分前まで動きがあった。
レッゲンに緊急連絡をかけるドース。もし彼が死んだら過失致死だと脅迫。雪が降る中、セルダンを見つける。幸い手が触った時声を上げた。毛布に包まれて回収されるセルダン。
医者による抗ウィルス血清の投与。外世界人である事が幸いした。もしトランター人だったらショック死レベル。
二日目の朝、セルダンは目覚める。陰謀説を語るセルダンに驚くドース。ジェットダウンの件。
レッゲンが見舞いに来た。
ジェットダウンが来た事は知っていたレッゲン。トランターの気象観測所にはそれを所有しているところは多いという。
ドースは本件を、ジェットダウンを見て気が動転したセルダン博士が、暗闇のため帰れなかったと結論付け、水に流すようレッゲンに宣言。彼の話のうちどれだけが本当なのだろう?彼女には判らなかった。
マイコゲン
セルダンが目覚めると、そこにヒューミンが居た。二ケ月ぶりの再会。「上側」での事件を聞いて確認に来た
もの。
研究の進捗状況を聞くヒューミン。
二ケ月足らずで何が出来る!と憤慨するセルダンに、希望はありそうかと聞き直すが「率直に言って、ないね」
ドースが改めて心理歴史学の事を、数学抜きで説明して欲しいと要望。
物事は、複雑化するほどシミュレーションが困難になる。統計的な手法で、あるセットの出来事が起こるか、それとも別のセットで起こるかの確率で述べる事で未来の予測が可能になると証明した。
だが銀河系社会を理解するのに十億年かかる事になる。今の時点では大学図書館も役に立たない。
そこでヒントになる考えを話すセルダン。
過去に遡れば社会は縮小する。
ヒューミンが後を継いで「ずっと単純な銀河系社会を扱えば、心理歴史学を成立させられる?」「そうだ」
だがドースは記録時の効率、記録保持の必要性等で切り捨てられるものがあると説明。
その課題に対して「マイコゲン地区」があると言うドース。それに同意するヒューミン。それは何かというセルダンの問いに「後で話す。今夜発つことになるよ」
夜中、マイコゲン地区の事をドースに聞くセルダン。
人口二百万ほどの小さな地区。昔の歴史についての伝承を固く守っている。正統的な歴史学者より正確。
だがどういう形での記録かは不明。ドースに促され、ついに眠るセルダン。
午前三時、マイコゲンに向け大学構内を出るセルダンとドース。ヒューミンは同行出来ず。
エクスプレスウェイに乗り込むセルダンとドース。しばらく乗ってから降りる二人。薄暗い路地を進む。行き先の標識は飛行場を示している。
小型機まで辿り着き、パイロットに合言葉を言うドース。
サンマスター
発進するジェット。狭いチューブを通った後に真っ暗な外に放り出され、機は飛行を始める。
雨降る中、高度を上げ、雲の上に出ると輝く星空。銀河系の中心に近いトランター独特の景色。
夜明けを迎える前にマイコゲンに到着。閑散としたジェットポート。
ヒューミンの説明では、サンマスター14が迎えに来るという。いっとき名前に関するドースとの会話。
いつの間にか、オープンの地上車が来ていた。それがサンマスター14。老人で白いガウン(カートル)にサンダル。髪はなく青い目。ヒューミンからの依頼は承知していた。
ここでの風習は髪を見せない事。住民は成人になると脱毛もしくは剃毛。他からの住民は。頭髪と眉を隠すキャップの装着を求められる。
そして女性から話しかける事への警告。
単調な街並みに驚くドース。完全な農耕社会で、ここは居住区。農場は下階にある。白い服は男性で「ブラザー」女性は灰色の服で「シスター」。人数の増加はないと言う。
居住区に案内すると、去って行くサンマスター。
小さな居住スペースに失望するセルダン。必要なものは全て揃っているが、かなり窮屈。
ドースの話すマイコゲンの内容。語源は「酵母の生産者」。あらゆる種類のマイクロフード生産で産業を支えている。帝国にも供給。
ホステス役のレインドロップ43と45の姉妹。
マイクロファーム
ドースと話す、マイコゲンの文化についての考察。彼らの伝承に宗教が関係している?
誰かに昔の社会の事を聞かなくてはならない。サンマスターは教えてくれない、とドース。
例えばあのシスター・・・否定するドースだが、しばらく考えて、宗教には重要な本が関わると話すドース。
セルダンは、マイクロファームを見せて欲しいと43に申し出る。
手続きが面倒だと言いながらも、43はそれが出来るよう約束した。
その夜、マイクロファームへは自分も同行すると言い張るドース。大学での遭難騒ぎを後悔していた。
彼女に異常な環境を与えて自由に喋らせるのが目的、と同行を拒否するセルダン。
朝食を終え、レインドロップ姉妹が来て姉はセルダン、妹はドースとペアになり別れた。
下階へと次第に降りて行くセルダンと43。下降には「エスカレーター」というものが使われた。
多くの下降を繰り返し、フロアに到着。腐敗臭が一切しない事に驚く。
完全にコントロールされている事に驚嘆するセルダン。だがウィルス感染、突然変異等の問題もある、と43。
そんな時は群れ(バッチ)ごと廃棄。
どうやって防ぐかとの問いに、巧妙にコンピューターのプログラムを作っても、予言は出来ない、と返す。
自然法則以外のものに頼る事への話をするセルダンに「宗教のことを言っている?」と43。
毛を持たない事、服装等もあり、それを持っていると判断していた。
宗教は必要ない。「私たちには歴史があるんです!」
本
急に汗をかき始めた43。休憩用の小部屋を探して、そこに二人で入る。男と二人でこんな所にいたら追放されると話すが、出る事も出来ない。抑制が解け、セルダンを睨み付ける43。マイコゲンの真の歴史について聞くセルダン。
それはある本に書いてあるというが、それを見せるのには条件があると言う。
彼女の手でセルダンのキャップが除かれ、そして彼の髪を優しく撫でる。「気持ちいい」「可愛いわ」と撫でたり、といたりを繰り返す43。そしてカートルのポケットから「本」を取り出してセルダンに渡した。
セルダンから髪の話を聞いたドース。この社会では異性の髪に触る事が快感に繋がる行為。
今回の件で、やはりセルダンを一人で出した事を失敗だと言うドース。もしあんな場面で捕まったら大事件になる。
話を「本」に戻すセルダン。
ただページを繰っただけでは白紙。縁のちいさな突起を押す事で文字の行が現れて上にスクロール。翻訳言語を切り替える事も出来る。
ドースが目を覚ました時、セルダンは本を読んでいた。どうしても眠れない。
内容に落胆のセルダン。事実上の百科事典。人名と地名の羅列。
生物学者に絡む「地球(アース)」の言葉を言うドース。だがその言葉は「本」にはない。
ただある部分で「50」について述べている。50人のリーダー?50の都市?
ある一ヶ所で彼ら自身の世界を「オーロラ」と呼んでいた。そして彼らの寿命が三~四世紀だと言っている。
ついに睡魔に負けて眠りに付くセルダン。
レインドロップ45と次に外出する際に、いくつかの質問をドースに頼むセルダン。訊きたい事は、特別に意義のある建物、過去に結びつき、神話的価値がある・・・・
「寺院があるかという事?」その言葉を知らなかったセルダン。
(下巻)
サクラトリウム
ドースはレインドロップ姉妹と外出した。43の憔悴した姿を見て心配するセルダン。
ドースは夕方に帰って来た。寺院についての情報を聞くセルダンに、それはサクラトリウムと呼ばれている、
とドース。昔彼らが住んでいたというオーロラに捧げられている。本の中にロボットの記述がある。
人間そっくりの外観。長い寿命。記述を総合すると、サクラトリウムにはここ二万年生き続けているロボットが居る。いくら早くても行くのは明日。そして必ず行する、とドース。
地図を手に公共バスに乗るセルダンとドース。
スキンキャップがずれているのを教えてくれた老人。マイセリウム72といった。彼は学者で文化の専門。サクラトリウムへ行くというので、一緒に降りる二人。
話はサクラトリウムへ移る。部族民が入れるかとの問いに「夜明けの息子たち」しか入れない。「夜明けの娘たち」は特定の日だけ。
マイセリウム72はロボットの話を一蹴。だが「長老のエアリー」という特別な、隠された場所があるという。彼は前触れもなく立ち去った。すぐにセルダンたちを目指して男が近づいて来た。
ドースに強く手を引かれ、立ち退くセルダン。
昨日の一件で、あそこにロボットある事を確信するセルダン。
それを見に行く決心を話すセルダンに、今度こそ一緒に行くと譲らないドース。
自分が着る白いカートル(男装前提)と、サクラトリウム関係者の印である飾帯を買うドース。部屋で着替え、出発の準備をする二人。
エアリー
図書館の入り口。顔も見ない受付の男のわきを通って中に入る。外から見えない物陰で飾帯を付ける二人。
その先にサクラトリウムへの入室ドア。
中の雰囲気は葬式そのもの。ところどころにスクリーンがあり、近づくとナレーションが始まる。
部屋を注意深く眺め、ドアと思われる場所を見つける二人。色褪せた部分に触り、ドアを押すと音もなく開いた。ドースと共に中へ入る。
その先に続く階段。踊り場を三つ通って疲労を感じるセルダン。エアリーと言われる高い場所を求めてここまで来た。その先の入室パネルを押すと、ドアが開いた。
そこにロボットがあった。だがそれは金属的で生きてはいない。
単なる象徴。ロボットの陰から人間が出て来た。
男はサンマスター14だった。
二人の行動をなぞる様に話すサンマスター14。そしてセルダンがあの「本」を持っていると断定。やむなく本を返すセルダン。
全ての行動が監視されていた。ドースが話す。
あなたがたは、私たちを誘い込んだわけではないが、止める事をせず、来るのを容易にした。
ロボットがあのようなものに過ぎなかったため私たちは退去します、という言葉に違法行為の代償として皇帝に引き渡すか処刑するかしかない、というサンマスター14。
「第三の道を探さなければならない」と新しい声。
「ヒューミン」とドースの安堵した声。この行動に入る前、彼に連絡を入れていた。驚くサンマスター14。
ヒューミンが、セルダンの取り組んでいる心理歴史学の事について説明するが、蓋然性のない推論だと断ずる
サンマスター14。帝国の弱体化の中で、デマーゼルがもしこの理論を手に入れた時、マイコゲンに対して良
い方向には行かない、とヒューミン。
「気になる推論ではある」と認めるサンマスターは言った「彼らを連れて行け!」
マイコゲンを出て、どこかに続くトンネルを走るヒューミン、セルダン、ドースの三人。
ロボットを見たかった理由を訊ねるヒューミンに、自分の失敗を認めるセルダン。あれは単なるシンボルだった。
本の入手方法を聞かれてやむなく話すセルダン。だがシスターからの入手方法は、考えてみれば不自然。
ヒューミンはその本を読んだことがあるが、信憑性には疑問を持っていた。
セルダンが読んだ中に、そのロボットをレネゲイドと呼んでいた。反逆者の意味だとドース。
レネゲイドが人間の感情に影響を及ぼすという記述・・・
心理歴史学を完成させる方法を求めても、いつもそれを阻む方向に向かっている事に失望するセルダン。
もっと時間をかけなさい、と慰めるヒューミン。
熱溜め(ヒートシンク)
国家行事での対応に苦労する皇帝。デマーゼルは裏でそれを支えるが、実質的な支配者はデマーゼル。
行事が終わり、デマーゼルを呼び出すクレオン一世。まだ寝る気分にないため、あの数学者と心理歴史学の話
を始め、最新情報を求めた。マイコゲンに潜伏している事までは知っていた。失敗したと謝罪するデマーゼル。
ワイの市長への競り負けを気にする皇帝は、今度失敗したら許さぬ、と言い渡す。
ダール地区の粗末なアパートに匿われたセルダンとドース。オーナーのジラド・ティザルバー。背が低い。
ヒューミンが家賃等で格別の配慮をしており、愛想がいい。
この地区は注目度の低い貧しい場所であり、それなりに危険。今度はトラブルを起こさない様に、と釘を刺されていた。ドースにもプレッシャー。
娘のブックビューワーを提供されて情報収集していたが、三日で飽きてしまったセルダン。
妻のカシリア・ティザルバーがたまたま言った「ヒートシンク」の言葉に反応した。トランターのエネルギーの半分をここの地下で作り出している。トランターでは皆が知っている常識。
そこを見学したいと言うセルダンに、環境が悪いと渋るティザルバーだが、結局それを受ける。
ティザルバーの手持ちの衣類を借りて出発する一行。
しばらく歩いた後、エレベーターに乗る。
技術的な事を聞くセルダン。予想はトランター内の熱で水蒸気を作り、タービンを回して発電・・・
だがそれは違った。効率の良い大規模熱電堆での直接発電。
エレベーターを降りると猛烈な熱。
次の案内者、ハノ・リンドーに引き継ぐティザルバー。シャツを脱ぐ事を提案するリンドー。結局ドースもブラジャー姿になった。
要所で説明を受けながら進み、労働者グループに近づく。男はシャツなし、女性は機能優先で乳房を持ち上げるものを装着しており、隠すものではなかった。女からのジョークに応えるドース。場がなごんだ。
だが男たちの中で、セルダンを知っているという青年が進み出た。リンドーが制する。
名をユーゴ・アマリルと言い、セルダンをホロビジョンで見たという。心理歴史学のスピーチだったと記憶していた。その青年に興味を持ったセルダンは、仕事が終わったら会う約束をする。ティザルバーが不服そうだったので、自分の部屋で会う事にした。
熱溜め人夫(ヒートシンカー)を家に入れる事に反対するカシリア・ティザルバー。本日の家賃を二倍にする、また今回限りという事でようやく納得。
セルダンを訪れるアマリル。態度がおどおどしている。
数学者になりたいと言うアマリル。だがダール人である事がそれに対する一番の障害。教育を受ける金もない。図書館員の彼女の助けで知識を得ることが出来た。書き溜めた論文を見るセルダン。新しいと言えるものはなかったが、その意欲は貴重。
何らかの奨学金を取って無料で勉強出来るようにすると言うセルダン。ドースも賛同。だがトランターではダールの人間は入れてくれないと悲観するアマリル。
セルダンは、故郷のヘリコンの大学に入れるよう約束した
。
アマリルの言う「地球の人々の子孫」との言葉に反応するセルダン。地球は、人類が発生した一つの惑星だという。なおも聞き直すセルダンに、その話を聞きたければリター母さんが居るという。彼の母親ではなく、そう呼ばれている人。ビリボトンに住んでいると言った。
会いに行くというセルダンを止めるアマリル。治安が悪く、ナイフを持ってそれが使えるぐらいでないと生きて帰れない。大学の話の確約と共に、絶対ビリボトンにいかないようドースに頼むアマリル。
ビリボトン
本当にリター母さんに会いに行くの?と聞くドース。地球という言葉への好奇心。アマリルについても本当に助けたいと思っている。
ティザルバーにビリボトン及びリター母さんの事を聞く二人。占いをする婆さんとして、噂は聞いていた。
ビリボトンは人間の屑が住むスラムだと言った。
ナイフについては、家にもあるが渡せないとのこと。買うなら道具屋。
道具屋でナイフを買おうとするドース。女性用と男性用。いずれも自分で使うと言った。取扱い方を主人に教わり、装着用のベルトも買った。
店を出てエクスプレスウェイに乗り「ビリボトン」で下車した二人。
通りかかった子供レイチに話しかけるセルダン。リター母さんを知っている様子。
ハンディ・コンピューターを餌にして彼女の部屋まで案内させる。
リター母さんは七十歳以上。背が低く太っていた。
早速地球の事を聞くセルダン。忘れられた、非常に古い惑星、との言葉。オーロラは邪悪の始まり。それは地球を滅ぼしかけた。地球は反撃して邪悪を滅ぼした。
地球はその邪悪より何百万年も前から存在していた。
これらは母親からの伝承。ずっと昔に遡る。
ロボットの話を聞くと老女は身震いした。地球を助けた人造人間がいた。ダ・ニーという名で、バ・リーの友達だった。どこかに生きていて復帰の時を待っている。
ここまでの話に二十クレジット払い、残りの話をディスクに吹き込んでくれる様頼む。謝礼は千クレジット。
帰ろうとした時、一群の男たちに襲われる二人。
セルダンは捕まってナイフを突き付けられる。
首領と思われるマロンと対峙するドース。ナイフを突き出すマロンだが、それはよけられ、マロンのTシャツに赤い筋が付いた。
本気で相手を始めるマロンだが、それを受け止めて反撃するドース。
敵が掴む腕の力が弱まったのを感じて、それを振りほどき、敵の股間に蹴りを入れるセルダン。そしてナイフを二丁手に取って構えた。
やみくもに突っ込むマロンを倒し、喉元にナイフを突きつけるドース。
男たちは戦意を失って逃げ去った。
ドースの活躍に感嘆するセルダン。噂はすぐに広がり、二人は安全にビリボトンを脱出した。
地下組織
借りている部屋に帰って風呂に入り、寛いでいるとティザルバーが入って来た。ビリボトンでの武勇伝は既に知れ渡っていた。彼の後ろに居たカシリアが重ねて苦情を言う。そして外に街の屑が立っていると言う。
来たのはビリボトンで道案内をしてくれた少年レイチ。ダヴァンという男が彼らに会いたいというのを伝言に来た。
多少の危険を予想しながら、行こうと考える二人。
外に出ると人が集まっており、記者風の男が取材を申し出た。ビリボトンでの騒ぎの一件。記者が帝国のスパイだと群集に伝えると不穏な雰囲気に。それに紛れて立ち去る三人。
レイチの道案内でその男ダヴァンに会うセルダンとドース。
彼はユーゴ・アマリルが話した、未来を予言出来るという話を繰り返した。ため息をついて、未来を予言する事は可能だが、その可能性を見出すことは不可能かも知れない、と説明。
ダヴァンは、抑圧されているダール人を代表する抵抗者。政権転覆のためにセルダンの研究に興味を持っている。反帝国を標榜しているワイ市長との協調も考えているが、それにはドースが批判。
ダヴァンに助けるとも助けないとも言えないセルダン。
レイチが、帰り道のために待っていてくれた。無事にビリボトンを脱出。
帰ると、共同住宅の入り口にカシリアが。例の記者がらみで暴動が起きたと苦情を言う。
彼女を見送ったセルダンは居直る「だからといって、彼女に何が出来る?」
警察官
翌朝ドースの部屋を訪れるセルダン。腰から下だけの衣服で髪を乾かしていたドース。セルダンは慌てて目を逸らすが、彼女は動じない。
セルダンの質問。ダヴァンまでもがワイ地区の事を話していた。一体それは何か?
説明するドース。ワイ地区は南極に近く、大きくて人口も多い。ワイはトランターで生じた熱の90%を放出している。もしこの放出をやめれば、トランター全体の温度が上昇する。だから皇帝はワイに対して慎重。
朝食を摂ろうと階下へ降りる二人。だが朝食の用意もせず、カシリアが大がかりな準備をしていた。
警察官と思われるダール人二名。カシリアの訴えで来たという。昨日の記者をスパイだと言って周りを煽動した罪。それに加えてビリボトンでの傷害事件。ナイフの不法所持も含め、何を言っても相手は説得されない。
レイチは二人と別れた後、寝入ってしまった。
次に目を覚まし外に出ると「宇宙船に太陽」の紋章が付いた地上車。直感が働き二人のアパートに行くと人だかり。大声を上げてドン、ドン!とドアを叩いた。
中から警官が出てレイチを捕まえる。逮捕されるところだとドースが言うと暴れ出すレイチ。警官が神経鞭で打ちすえるとレイチが転がった。
セルダンがもう一人の腕を捻り上げ、レイチを助け上げた。
ティザルバーに手伝わせて倒れた男と武器を部屋に運び、ドースに指示してもう一人の警官を気絶させる。
その場から逃げ出す三人。レイチは肩を押さえながら自ら走り、二人を先導。
レイチが二人のために見つけてくれた隠れ家。。
ヒューミンには連絡を取った、とドース。だが場所も判らず、いつ来るかも不明。ダヴァンに会わせたからトラブルになったと責任を感じるレイチに、自分たちの方が追われていたのだと言うドース。
しばらくするとドースが追っ手の足音に気付く。だがハイチが「ダヴァンだ・・・」
ダヴァンに状況を説明するセルダン。ダヴァンは、この窮地を脱するためダール市長を動かせる人を知っているという。それを聞いてヒューミンが手を回したと微笑するセルダン。
だがその対応が速すぎる事が納得出来ないドース。
ダヴァンはセルダンたちを熱探知器で見つけたという。
彼の有力な友人が近づいているという。ドアをくぐって入って来たのは・・・・ヒューミンではなかった。
ワイ
その男は背が高くて筋肉質の軍人。エマー・サルス軍曹と名乗った。
それでもセルダンはこの男がヒューミンの代理だと思っていた。だが彼はセルダンだけを連れて行くという指示しか受けていなかった。三人連れて行くという要望を拒否。
無理に連れて行こうとするのをセルダンは払いのける。ドースがナイフを抜いた。
軍曹が攻撃に移るため神経鞭に手を伸ばしかけた時、レイチが軍曹の銃と神経鞭を奪った。
セルダンは、軍曹に与えられた指令を確認する。言われたのはセルダンの移送だけ。だがそれ以外の者を連れて来るなとは言われていない。軍人の名誉にかけて、この三人の安全確保と移送を約束させるセルダン。
エアジェットでの移動。レイチは初めてで少し緊張。豪華な大型ジェット。ヒューミンが手配したものとは思えない。機は寒い方に向かっている。北か南。機が降下し、翼が畳まれてトンネルに入った。
機が停止し全員が降りると、今度は地上車に乗せられた。広い幅の道路、高層建築。
侍女二人に先導されて奥の間に導かれると、中年の女性が現れて挨拶した。彼女は「ラシェル」といった。やや装飾過剰。まず入浴して休み、その後晩餐の時間を取りましょうとの提案。
ドースの「ここはどこですか?」の問いに「ワイ地区です」。そしてセルダンの事を、十年会議で講演をした日から欲しかったと言った。
入浴して着替え、十分に睡眠を取った後、到着二日目の夕方が晩餐となった。
広い応接室。多数の給仕。食後、十年会議の時から欲しかったという話の意味を聞くセルダン。当然心理歴史学のため、との返事。実用的でないという否定をしても認めない。
またドースとラシェルとの会話が噛み合わないが、その理由が判った。
「わたしがワイの市長なんですから」
ワイ家はダシアン家の末裔で、ダシアン家は、五千年前に地域を支配していた。だがドースが、ワイの支配者は「反皇帝」と言われていたと指摘。
ラシェルは続ける。内乱で政権を取ることは出来るが、それには惨事が伴う。セルダンの予言を安全保障として利用したかった。ワイは銀河全体の支配は望んでおらず、トランターとその周辺二、三の惑星系があれば十分。
ラシェルは父マニックス四世の娘。セルダンの論文を機に権力の移譲を決めた父。
心理歴史学の一人歩きに閉口するセルダン。だがラシェルはいたって本気。
転覆
豪華な朝食の後、レイチはラシェルが近いうちに動物園へ連れて行ってくれると話す。
ヒューミンとの連絡の事をドースに聞くセルダン。ダールで連絡を入れたけど彼は来なかった。
彼は心理歴史学の問題を解決したと言った。だがそれは実用的であるという確信だけ。時間と平和と施設が必要。そして帝国はまとまっていなければならない。
レイチが公式の衣装を着るのを手伝うドース。今日が動物園に行く日。全ての話を聞いて来るよう指示するドース。
元気に出発するレイチ。
ラシェルの目的に対する議論。セルダンに関する情報を適当に誇張、美化して少数に伝える戦略。好意的か否かの餞別。そして新秩序を早く打ち立てる。帰って来たレイチ。内容を聞くドース。
動物園は貸し切り状態。終わり頃に制服の男が入って来てラシェルと話をしていた。
士官たちは父マニックス四世に忠誠を誓っている。それに怒っているラシェル。
ワイに来て十日目の朝、レイチが「戦争だ!」と叫んで皆を起こした。
皆がホロビジョンに集まるとニュース映像。帝国の提供でマニックス市長が写っている。
帝国軍が市長を人質に取って市を鎮圧。「彼女は長くは無事でいられない」と話す後ろで「たぶんそうね」の声。ラシェルだった。驚く三人。
本来ラシェルがやろうとしていたクーデター。裏切られた。女性のために戦う事を拒否して古い主人に走った士官たち。
ラシェルは、デマーゼルがセルダンを手に入れるために我々を攻めたのだと言った。
最後まで残っているエマー・サルス軍曹。
むざむざセルダンは渡さない、と彼を撃つよう軍曹に命令するラシェル。
だが打つのをためらう軍曹。ラシェルの命令とセルダンとの約束とのはざまで、ブラスターを床に落とす軍曹。
それを拾って軍曹を撃ったラシェル。次いでセルダンにそれを向けた時、レイチが前に出た。躊躇するラシェル。その間にドースが体当たりしてブラスターを落とさせた。拾うレイチ。
そこに新しい声。「ヒューミン!」と嬉しそうに声を上げるセルダン。
だがラシェルはヒューミンを指さして「これは誰?」と聞く。
「チェッター・ヒューミン。私の保護者」と言うセルダンに
「この男はデマーゼルよ。そしてこのドースという女はそれを知っている。あなたはずっと騙されていたのよ」
食事の後、セルダンに話すヒューミン。
心理歴史学を、帝国の衰退と滅亡を防ぐためと、そのコースを辿った後の早い再生のための二つの点で信じた。
だが皇帝に説明した時点でのセルダンは自分自身でそれを信じておらず、真に実用的な心理歴史学を探求するために仕向けた。
それは有用だった、とセルダン。単純な世界を扱うための示唆をマイコゲン、ダールで得た。また最後にワイへ来て、ラシェルが「欲しいのはトランターと僅かな周辺世界」と言い、それ以外を遠方として退けた。
探し求めた単一の世界は「トランター」だった。
それを聞いてホッとするヒューミンは研究への援助を確約した。
そしてついにセルダンは言った「ヒューミン/デマーゼル? 君はロボットなのだ」
ドース
今までの旅で集めたロボットに関する情報を当て嵌めて行くセルダン。それから関わった人たちの、誘導される様な行動。リター母さんが話したダ・ニーというのは君のこと。
二人の会話は続く。セルダンの言葉を穏やかに否定し続けるヒューミン。トランターだけで心理歴史学を構築するにあたっても、基礎事実を知ればもっと仕事は容易になる。
もし心理歴史学が欲しいなら君はロボットだと認めなくてはならない。ロボットでなければこの研究の成功の可能性は低くなる。
「私はR・ダニール・オリヴォーです。「R」はロボットを表わします」
真実を語り始めるダニール。二万年たつと、彼がロボットだと気付く者はいなくなった。感情の探知は容易だったが感情に影響を与えるのは困難だった。必要最小限の干渉。
ロボット三原則の説明。もう一台いたロボットが提唱した第零法則は人間を「人類」に置き換えたもの。彼は途中で活動を止め、銀河系の将来をダニールに託した。
帝国の衰退に対しての様々な干渉が困難になる中で、人類にとって何が良くて何が悪いかを識別出来る道具が心理歴史学の中にある事を、公演を聞いて覚った。それからダニールの行動が始まった。
今後は必要な情報は教えるが、私のことは他言無用。
ドースはこの事を知っているという。秘密の共有者。
ダニールの忠告。もし計画が固まったら、そういうものを二つ作りなさい。
ドースはセルダンに、あなたは皇居地区に戻ると言った。そして自分は大学に戻ると。
心理歴史学のプロジェクトを一緒にやって欲しいと懇願するセルダン。
様々な理由を付けて逃げようとするドースに「僕は君が欲しいんだ」
「私は一人のヘルパー」と言うドースに「君は違う種類のヘルパーだ」
「どのように?言ってみて」と挑発するドース。
「それを言うつもりはない。なぜなら・・・僕はかまわないからだ」
彼はドースにキスした。---ゆっくりと。
「もう一度キスして、ハリ。--お願い」