ＮＨＫスペシャル「運命の１枚」　2月3日放送

高名な戦場カメラマン、ロバート・キャパが世に知られる事になった「崩れ落ちる兵士」の写真を巡っての話。非常に見ごたえがあった。

その完璧すぎる構成から「やらせ」疑惑のあった写真について作家沢木耕太郎がその真実に迫って行く。
キャパはハンガリー生まれのユダヤ人。スペイン戦争を取材するために戦場へ。反ファシズムとして共和国側の兵士のみ撮影した一枚がこの写真。

同時期に撮られた数十枚の中の１枚に兵士の陰で腰を落とした男の写真が。衣服から見て「崩れ落ちる兵士」の者だと判明。周囲の草の配置から、その写真が例の写真の直前に撮られたものと推定。

ＣＧを駆使して、おのおのの写真の撮影位置が1.2m離れており、またその２枚の時間経過が１秒足らずだという事を突き止める。フィルム巻上げ式のカメラでは１台でこの２枚を撮る事は不可能。

当時のキャパの恋人ゲルダ・タローがその写真を撮ったのではないかとの推定。キャパはライカで横長、ゲルダはローライフレックスで正方形の写真。構図及び距離からその撮影範囲を割り出すと、キャパのカメラでは写真上部５％が欠けることが判明。

ただ、キャパがウソの写真を投稿した、としただけでは終わらせなかった。投稿した写真が思いがけず「ＬＩＦＥ」誌に掲載され、一躍注目を集めたが、写真を撮った当のゲルダは戦場で戦車に轢かれて死亡していた。

沢木は、キャパのその後の戦場写真への取組みは負債を返す様なものではなかったかと結ぶ。キャパはノルマンディー上陸を含む５つの戦場で過酷とも言える命知らずな写真を撮り続け、最後は1954年にベトナム戦争で地雷を踏んで命を落とす。

沢木耕太郎は単なる進行役と思っていたが、実際にキャパの写真に疑問を持ち、小説も発表していたらしい。この特集のキーマンと言える。