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新聞小説「聖痕」 筒井康隆

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新聞小説「聖痕」 筒井康隆 作  筒井伸輔 画

7/13より連載

以前に断筆宣言したSF作家の筒井康隆。その後執筆活動を再開したのか、特に気にもしていなかったのが、新聞小説の予告で次の作品が彼のものであると知った。


筒井作品は「時をかける少女」「家族八景」などが有名だが、長編の「俗物図鑑」を読んだ時はこのオッサンの異常性というか筋金入りのフェチ性に驚いたものだった。
今回は予告を読むと、どうもそんなフンイキがプンプン・・・・


小説の紹介
http://book.asahi.com/special/tsutsuiyasutaka.html


1回目挿絵


You Can Fly


1~56(7/13~9/6)
葉月家に長男として生まれた貴夫は、美貌なるが故に幼稚園の時、変質者に陰茎、陰嚢を切り取られる。
事件は警察沙汰になるが、その怪我については秘匿された。母親の佐知子、舅の猛夫は佐知子を叱責する。葉月猛夫は戦争景気で衣料の会社を拡大し、地元の名士。現在は息子の満夫が後を継いでいる。手術の後、退院した貴夫の患部を見て涙する佐知子。母にはその部分が聖痕の様に見え、彼がその後どんな人生を送るのかを思った。


街に噂が立つ前にと葉山家は引越しを決め、邸を引き払いマンションでの仮住まいを始める。別のところに土地を買い、新築が進む。

佐知子は次の子を身ごもった(男の子)。幼稚園では貴夫の美貌に様々な噂が飛び交う。

身重の佐知子に替わって貴夫の送迎を始めた姑の朋子は貴夫の周りを取り囲む欲望を感知し、彼の秘密が察知されない様に擬似茎を作らせ、ブリーフに縫いこませる。

佐知子は子供を産む。貴夫とは似つかわない南方産の猿の様な外観。新居が完成し転居した葉月家。

幼稚園のクリスマス行事で「受胎告知」のガブリエルをやらせる事になり、貴夫はそれを演じきる。その観客の中に芸能プロダクション関係者がおり、マネージしたいとのオファーを受ける。貴夫の過去が暴かれる恐怖から、佐知子はそれ以後貴夫が表舞台に立つ事を極度に恐れることとなる。


私立の小学校「智徳学園」に通う事になった貴夫。幼稚園で同級だった小林亜美。貴夫と同じ学校に入り、以後貴夫の用心棒的存在となる。貴夫は悪童たちの劣悪な衝動を知る。彼らは隙を見ては貴夫に干渉した。
貴夫のきゃしゃな体を心配した満夫は、自身の趣味でもある登山に貴夫を伴い、そのせいで貴夫の体は大柄になり、筋肉質になって行った。


そんな中、二男の登希夫は奔放に育ち5歳になっていた。
貴夫ばかり可愛がられる事に反発して嫌がらせをする登希夫。

登希夫は貴夫が通っていた幼稚園に通う様になるが、その子憎らしさ故にいつも苛められていた。喧嘩が出来ない貴夫は登希夫を守ってやれない。


貴夫はますますその美貌に磨きがかかる。
貴夫がリアリズムに偏った志向の絵画表現なのを気にかける美術教師。貴夫は事件の後、3年生の頃からあの男の絵を描き続けていた。


貴夫は男子生徒の遠慮のないスキンシップに閉口していた。そんな相談を聞く満夫は高度な性教育の必要性を感じ始めていた。父子が親密に話す様子を見てまた嫉妬する登希夫。

小林亜美は思春期に突入。大人に成長した時の貴夫との関係に思いを馳せている。

学園祭の出し物に5年2組として「ヘンゼルとグレーテル」を上演する事になり、ヘンゼル役に貴夫が推される。断るが容れられず、家族に相談すると言ったところ、家族を説得する者が誰も出ず、その話は立ち消えた。注目されない様に低い声で話す様になった貴夫。


保養のため家族で強羅温泉に行く事になる。登希夫が小さいうちは宿に迷惑をかけるため中断していたもの。その宿で無防備に家族専用の露天風呂に入っていた貴夫は登希夫にその秘密を知られてしまう。
大きな声で「お兄ちゃんにはおちんちんがない!」と叫び回る登希夫。
猛夫に引き据えられる登希夫。諄諄と貴夫の秘密を話し始める満夫。次第に狂喜の表情をあらわす登希夫。
誰かに喋ったらお前を見放すと祖母の朋子に言われ、それ以後兄の秘事を口にする事はなくなったが、兄を軽侮する様になった弟。


6年になり、貴夫は金杉君と親友になる。華麗な表現の下に性欲が隠されているのを感じ、文学に興味が持てない貴夫。美術にも興味なく、貴夫にとっての美は「美味」。その流れで野菜に興味を持った。

修学旅行を不参加とした貴夫。
金杉君とは時々映画を観に行ったが、いつも選ぶのは金杉君。そんな中でも貴夫の興味を引いた「エレファント・マン」。


ある日の放課後、同級生の船越が貴夫の前に立ちはだかる。貴夫を性欲の相手として迫り、ズボンを下ろそうとする船越。危険危険危険危険警戒警戒警戒警戒・・・・・・
貴夫は力いっぱい船越の左眼を指で突く。そのまま帰宅する貴夫。怒る船越の両親。翌日校長室で双方の親同士の対決。怒りが収まらない船越夫妻。学校は貴夫の味方。警察に補導させると言う夫妻に対し「そうなると息子の男色傾向についても明らかになる」と話す満夫。失笑する船越夫人。だが校長室に呼ばれた貴夫の美貌を見て納得する夫妻。
船越は手術の後、転校した。サポーターを改良する満夫。


私立の進学校への受験準備を始める貴夫。学力がなく公立に行く事になった小林亜美。
貴夫の野菜作りは次第に本格的になった。

貴夫と金杉君は京陽中学に進学した。入学祝いに料理の本を希望する貴夫。

電車通学の2日目に中年の変質者に迫られる貴夫。男は股間を摘もうとするが擬似茎の感触に驚く。男から逃れ、降車駅で降りる貴夫。
その2日後に再び同じ男に迫られ、父の助言通り大声で「やめてください」と叫ぶ貴夫。居直る男に乗客がサポートしてくれ、男は次の駅で降車。その後美貌を覚えられ、彼らに見守られて登校出来る様になった。
陸上部に入った貴夫。新たな友人安曇学。


感想
前回の「沈黙の街で」に較べると時系列は安定しており、登場人物にも無理がなく新聞小説としてストレスなく読み進める事が出来る。
ただ、いきなり児童のペニス切り取りから始まって、その痕が「聖痕」とはある意味判り易すぎるかも。
無茎となった児童を巡って家族が大きく揺れ動く。

貴夫は悲劇には見舞われたが、その行動、精神構造にさほどの闇は見受けられず、話の展開として方向性はまだ見えてこない。
貴夫は料理に興味を持ち、野菜作りもしている。彼の将来に関係あるのだろうか。
また登希夫はこの先もよからぬ影響を貴夫に与え続けて行くのだろう。
しかし、挿絵を息子がやるのはいいけど、抽象画ってのがちょっと難しい・・・・





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