司馬遼太郎思索紀行 番組表の題名は 「武士」で迫る日本人
番組情報
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160214
序章
日本はユニークな国。いろいろな人間がいろんな事を一所懸命やって来た。
日本人は働き者。常に緊張している。
その理由→いつも様々な「公(おおやけ)」意識を持っている。
こだわったキーワード→「武士」。
「武士」というそのたくましい人間像ではない。
武士がいたから明治の近代化が出来た。
奇跡の近代化は驚くほど手間のかかる事の連続だった。
小学校を8年で全国に整備。明治19年に鉄の大量生産を実現。
30年で7000kmの鉄道を敷設。
日本人の総力が結集された。
注目したのはその心根。基本、汚職をしなかった。痛々しいほどの清潔さ。公の意識が横溢。
その高い倫理観はどこから来たのか。そのルーツが武士にある。
1000年の歴史の中の「ある時代」。流鏑馬神事→鎌倉時代。武芸向上のために始まった。
節義(死についてのいさぎよさ)。歴史の中で際立っている。
坂東武士。元は農民。和田塚から今でも刀傷のある頭蓋骨が出土する。彼らの行動の奥の、精神に関心があった。
能の演目「鉢木」。貧しい旅人が訪れた時、自宅の鉢の木を切って暖を取らせた。根底にある倫理観。
土着の倫理を持っていた。「名こそ惜しけれ」。
自己を律することで他を大切に出来る。今の日本人にも息づいている。東日本大震災での秩序ある行動。
一地方の農民になぜそれが生まれたか。
坂東武士の原型が高知の梼原町にある。平安時代に移住した開拓民が元(過酷な開墾)。
千枚田。築城するほどの仕事。なぜわざわざ奥地で開拓したのか。
平安時代に支配していたのは天皇、公家。全ての土地は彼らのもの。飢饉が起これば地獄。
平安末期、その支配から逃れるため奥地へ。一部が梼原開拓に。
そこまでは公家の支配が及ばない。そして律令制が土崩して行った。
有力な開発者の中から実力のある者が出て、次第に力を付け始める。
12世紀末に、そうした者たちがある場所に集まる→鎌倉幕府。
日本史として中国、朝鮮などとは全く異なる「百姓の政権」が誕生した。
名こそ惜しけれ、の精神→幕府の褒美「安堵状」。農地所有を確かなものにした。恩義のある人に恥ずかしい事をしない、の根底に土地所有が深く関わっている。
司馬は、武士の精神はキリスト教にも対抗出来ると考えた。なぜ高く評価したか。その転換点→戦国時代。
小田原、北条早雲。鎌倉幕府から300年。大名の出現。激しい勢力争い。
ある事が必要だった→日々の心得。「早雲寺殿廿一箇条」家訓。
早雲は伊豆を支配。基本は「領民の面倒を一切見る」。その後関八州を支配。
公の意識の変化。恩のある人のために→領国のために。
早雲のやり方が全国に浸透して行った。
秋田、新屋地区に一人の人物がいた。栗田定之丞。
15石の下級武士。20里に亘る防風林を作った。
この地区は飛び砂被害がひどかった。栗田は防風林を提案するが誰も相手にしない。
植える木の種類、根付かせる工夫の研究を浜辺で8年間続けた。人々の意識が変化。女子供まで参加(14年間で延べ7万人)。
公の意識が庶民にも広がった(精神を受け継いだ)。貧しさの中に誇り(公に奉ずる)。
幕末。植民地化を目指す列強各国。全国の武士が行動を起こした。
どう行動すれば美しいか→それが幕末人を作り出した。人間の芸術品(高杉晋作他)。
多少奇形ではあるものの、その結晶の見事さは類を見ない。
明治の近代化の中で公の意識は庶民にも広がった。
明治6年。維新後4年で郵便制度を全国に展開(まるで手品)。
郵便業務を地区の名主にやらせた。郵便事務を公務と認識。
自ら金を出して自宅を改造。関われることに意気を感じた。
武士の精神があったからこそ近代化出来た。
その後日清、日露を勝ち進んだ事については「坂の上の雲」に詳しい。
だがその後変質して行った。
「日比谷焼き討ち事件」。3万人が暴徒化。
むこう40年の魔の季節への出発点。以後の国家的盲動の起点となった。
昭和初期、なぜあの戦争に突き進んだのか。
キーワード→「統帥権」。天皇が持つ最高指揮権を参謀本部が乗っ取った。
軍部が拡大解釈。国家が暴走。満州事変、日中事変、ノモンハン事変→首相以上は後で知って驚いた。
こんなばかなことは、日本史の中にない。
この時の国民の意識。個を出さない方が良い。出すとロクな事がない。社会全体の雰囲気。
そして焼け野原になった。
焼け跡からの戦後復興。
戦後の民主主義(新たに手に入れた)は日本人の気質に合っていた。自由な社会。司馬は武士の精神に危うさも見ていた。
それぞれが確かな個々を持たなくてはならない。戦後日本はまだまだ出来ていない(武士道を土台にしてその義務を育てたつもりだったが)。
近代日本史を、新しいあり方の基本にすべき。
感想
「武士道」などと大上段に持ってこられると反発するが、そのルーツが開拓農民にあった、とする考えには賛同出来る。
「名こそ惜しけれ」が、最近のニュースに登場する人々から完全に欠落しているのが、ホント悲しい。
ただ「名を惜しむ」行為が、不釣り合いな犠牲を強いる方便に使われる危うさ、という面も考えなくてはならない。
それが狂気の時代に利用された。
司馬もその事を言っているのだと思うが、元々彼に、武士に対する感情移入があったのも確か。
「武士」から「日本人」を導くのはホントに正しいのか?
番組詳細
http://tvtopic.goo.ne.jp/kansai/program/nhk/25413/458195/
日比谷焼き討ち事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%AF%94%E8%B0%B7%E7%84%BC%E6%89%93%E4%BA%8B%E4%BB%B6
早雲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%9D%A1%E6%97%A9%E9%9B%B2
早雲寺殿廿一箇条
http://capm-network.com/?tag=%E5%8C%97%E6%9D%A1%E6%97%A9%E9%9B%B2%E3%81%AE%E5%90%8D%E8%A8%80
坂の上の雲(あらすじ)
http://homepage2.nifty.com/hashim/sakakumo/sakakumo001.htm
http://bunshun.jp/pick-up/sakanouenokumo/outline.html
http://www.eonet.ne.jp/~kumonoue/sikiarasuji.htm
最強のあらすじ
http://kataribedoujinn.at.webry.info/