ヒューマニエンス 40億年のたくらみ
「“記憶” 未来を切り拓く源泉」NHKBS 1/22放送
感想
最近新番組の「フロンティア」で究極の知能についてのテーマがあった(コチラ)
ここでは知能の根幹として「次の単語を予測する」というものがあり、これでAIが飛躍的に進歩したという。
記憶についても今回の様に海馬が、ピンに見立てた記憶の断片を星座の様に繋いでいくプロセスが具体化されれば、もっと効率的な記憶媒体が開発出来るだろう。
人類がシリコンに置き換わる?
それもちょっとコワいが・・・
内容
【司会】 織田裕二、藤井彩子
【出演】 清塚信也(ピアニスト)
【解説】 井ノ口馨 富山大学 認知・情動脳科学専攻 教授
松井広 東北大学大学院 生命科学研究科 教授
記憶という「星座」
テキサス大。記憶メカニズムの映像化に取り組む。
マウスにある経験をさせる→どう作られるのか
いやな刺激を受けると白い点が残る。
視覚野、感覚野、嗅球・・・神経細胞全体が記憶の材料になる。
材料が記憶になるのが「海馬」記憶の獲得に海馬が関与。
情報を集約するのが海馬。一見バラバラに置かれている。
実は線で繋がれたネットワーク。
例えばバーベキューを楽しんだ記憶。
軸索を通って隣の神経細胞と繋がる(星座の様なイメージ)
人によって星座の形が変わる。
もしイヤな事があると別の場所に保存される。マウス実験で電気ショックにより保存される場所を特定→偏桃体
海馬は統合されたものを扱う。偏桃体は情動に関するもの。
実写で見る事が出来る様になったのは最近(ここ10年)
忘れた記憶でも、痕跡が細胞に残っている(思い出せないだけ)
何かの拍子に思い出す(トリガーがある)
脳には1千億の神経細胞があり、その組み合わせで記憶する。
約1000個で1つの記憶を覚える。別の記憶も1000個の細胞で覚える(両者で共通の細胞もある)→組み合わせは無限大
数学的には生まれてからの全ての事を記憶出来る。
記憶は時間と共に海馬から大脳皮質に移動する(選別を行う)
概念として海馬は机→本棚にしまう。
「鮮明」と「曖昧」の間
線の太さが太ければずっと記憶(細ければ曖昧になる)
記憶はたんぱく質で作られる。
接続部のシナプス→受け取り側が大きくなる(材料がたんぱく質)
記憶が出来る時に何かが起きると活性化(記憶の強化)
記憶の線は全て太くなるとは限らない。
記憶を消す仕組み
ミクログリア細胞(免疫細胞)がシナプスを食べる。
食べられるための信号(eat-me)は細胞の側から出る→忘れる行為は「よけいなものを外す」元ある記憶の強化になる。
記憶の強化→寝ている時にリプレイ(脳に定着)
ある程度記憶したら睡眠する事が重要。
記憶違いこそ記憶の本質
夫婦間で、初めて訪れた旅行の記憶が違う→しばしば起きる。
記憶が優れているのは過去の改変、アップデート出来ること。
例えば動物が危険な目に遭い、そこを避ける様になる→自然は別の場所にも危険があり、同じとは限らない(更新が必要)
殺人事件の目撃者。容疑者のマスコミ映像を見て、記憶が置き換わってしまう。覚え過ぎないのが大切(特徴の抽出)
曖昧にするけど本質は逃さない。
記憶は思い出した時に一旦弱くなる。美化していくのは記憶違いの自然なメカニズム(恥ずかしい記憶も薄れて行く)
記憶違いを人為的に起こせるか?
マウスを使った記憶の人工操作。
丸い部屋には何もなく、四角い部屋で不快を味わわせる。
オプトジェネティクスを使い、丸い部屋が不快と思わせる。
:記憶痕跡細胞に遺伝子操作をして光で活性化させる技術。
将来的にはヒトでも可能になる。
→トラウマ体験(PTSD)の治療にも応用出来る。
存在していない記憶をを作り出す事も可能。
ただしアイデンティティにも関わるため要注意。
昨日の自分と今日の自分が同じなのは記憶が一緒だから。
記憶そのものがその人らしさ。
認知症は自分の記憶を失うこと。アイデンティティを失うことで
自信がなくなって行く。→脳科学の大きなテーマ。
終末医療で、幸せな頃を思い出させる(安らかに逝ける)
「忘却」という名の洗練
自転車の乗り方は一旦身に付くと消えない。
運動に関わる記憶は小脳のネットワーク。
普通のマウスとグリア細胞抑制(忘れ難い)マウスでの実験。
同じ運動の繰り返しで、普通のマウスは上達するが、忘れ難いマウスは上達が止まった。
上達には積極的に忘れる事が大切(洗練)
例えば自転車の運転。
失敗が大切。エラーのないシナプスだけが残る(自動化)
一度覚えた運動の記憶は書き換えが難しい。
脳の神経細胞の8割が小脳にある(専用プログラム)
未来はいつも懐かしい
脳にとっては過去も未来もない。過去の話も未来の話も脳にとっては同じ場所が活動する。
未来を考えるのも過去を考えるのも同じ場所が活動。
未来を考える時、過去を道しるべにしている。
過去の記憶の断片の組み合わせで未来が作られる。
音楽で全く新しいものは出来ない(清塚)
ヒップホップを作った人でも、以前の音楽を組み合わせている。
バッハとショパンは100年違っている(和音も次第に変遷)
ハードディスクに入れる様な記憶ではなく、記憶は人のオリジナリティやクリエイティビティにも繋がっている。
関係のないものを結び付けて新しいものを作る、未来を作るために過去の参照をする。記憶が人の感性や創造性とどう繋がるか。
記憶が人格に与える影響、潜在意識や深層心理の研究が今後のテーマになる。