監督・脚本 宮﨑駿
主題歌「地球儀」:米津玄師
キャスト
牧眞人(まひと) - 山時聡真
アオサギ - 菅田将暉
キリコ - 柴咲コウ
ヒミ - あいみょん
夏子 - 木村佳乃
牧勝一(しょういち) - 木村拓哉
ばあや - 風吹ジュン、阿川佐和子
大竹しのぶ、竹下景子
インコ大王 - 國村隼
老ペリカン - 小林薫
大叔父 - 火野正平
ワラワラ - 滝沢カレン
感想
自身が最後に監督した「風立ちぬ(2013年)から10年を経ての監督作品。前の時には「もう長編は作らない」と言ってた筈だが、それを曲げての復活(ソレ何回もやってる様だが・・・)
まあとにかくエネルギッシュ。82歳になってもパカパカ煙草を喫ってるのだろう。
→そういえば今回喫煙シーンは最小限だった(笑)
さて本編。
事前情報は、あの鳥の被り物のポスターのみ。
いきなり戦時中の描写で「アレ?」と思ったが、少年眞人の周囲が丁寧に描かれる。やや冗長だが嫌いではない。
喋るアオサギは、唯一ポスターにも載っていた事前キャラだから注目していたが、エンドロールで菅田将暉と知ってびっくり。
クセの強いキャラをケレン味たっぷりに演じて、これはこれで好感が持てた。
基本ストーリーとしては、亡くなった母の実家に疎開した少年が、次の母となった叔母との関わりの中で成長していく、といったところか(ちょっと端折り過ぎ?)
かつて、空から落ちて来たという塔を建物に仕立てた後、行方不明になった大伯父。そして森に消えた叔母(新しい母)を追って「下の世界」に踏み込んだ眞人。
ペンギンやインコの大群がこれでもかと押し寄せる。一緒に観賞したカミさんは大のトリ(三つ足)嫌いなんで往生しただろう。
様々な酷評を読んで、まあ「そうだわな」とは思っている。
結局これは眞人の成長物語。
吉野源三郎(山本有三)作の「君たちはどう生きるか」もちゃっかり取り込んではいるが、それほど深い関連性はない(と思う:キチンと読み比べている訳ではない)
最初は義務感からこの冒険に足を踏み入れた眞人。
夏子の事を「父さんが好きな人」だと押し通すが、クライマックスでは「夏子母さん!」と叫ぶ。
アオサギと共に様々な経験を積むうちに、義母への気持ちが次第に変化して行く・・・
でもこの父親の勝一、妻が死んだ後その妹を孕ませた。どう見ても「これってどうよ」と思う(キムタクだし・・・)
昔からこういった事は珍しくもないが、母親を失った少年には承服し難い部分があるだろう。なまじ似ているだけに余計混乱・・
こんな少年の深層心理が「下の世界」を生み出したのか・・・
まあ、どこまで言っても宮﨑の脳内世界。
イロイロ酷評する人は居るだろうが、一通り宮﨑映画を観て来た者にとっては「それなりに面白かった」
過去作のオマージュもけっこうあり、枚挙にいとまがない。
一例を挙げれば、製品である戦闘機の風防を家に一時避難させた所は、ナウシカがオームの抜け殻から目の部分を外した場面。
でも日本戦闘機のキャノピーは、あんな風に一体では作らない事を宮﨑も十分知っている筈(確信犯だな)
オマージュも含めていろんな解釈が出来る映画。
青筋を立て、口角泡を飛ばして糾弾する人がいる。
一方で深読みして悦に入ってる人も(♪解釈ぅ いろいろ~)
それらも含めて、本人が楽しいと思えば「それでいいのさ」
出来のいいと思えるレビューをご紹介。
書籍版「君たちはどう生きるか」やストーリーの元ネタと言われる「失われたものたちの本(ジョン・コナリー)」についても言及している。
もう一つ。これは面白い!宮﨑のホンネを丸裸にしている説
岡田斗司夫の解説2件
あらすじ 画像は使用許可のあるものを使用→コチラ
空襲による病院の火事で母 久子を亡くした少年 牧眞人はその3年後、父の工場の疎開先でもある母方の実家(諏訪?)に着いた。出迎える新しい母 夏子は亡き母の妹。
そのお腹には眞人の弟か妹が宿っていた。
着く早々、父 勝一のトランクを物色する手伝いのばあやたち。
眞人に興味を示したアオサギが近くまで飛んで来た。屋敷の近くの塔に住んでいるらしい。
塔に入ろうとするもばあやに止められる眞人。
夏子から塔のいきさつを聞く眞人。
頭の良かった大伯父が建てたもの。
本の読み過ぎで、ある時本を開いたまま行方不明になった。
その後出入口は塗り潰して塞がれた。
帰宅した父 勝一は軍需工場の盛況を誇る。
翌日学校へ車で乗り付けてびっくりさせると言う父。
だが登校後すぐ同級生からのイジメを受けた眞人。
その帰りに、自ら道端の石を頭にぶつけて怪我を装った。
父に詰問されても「転んだだけ」
開いた窓から入り込んで来たアオサギ。長い間待ち続けた人が現れたと言い、母君の元へご案内すると言った。
木刀を持ってアオサギを退治しに行った眞人だが歯が立たない。
心配した夏子がばあや達を引き連れて加勢に向かう。
ある日勝一が、戦闘機の風防を多数屋敷の庭に持ち込む。
駅に着いたものを仮置きした。
「見事なものだろう」「美しいですね」
つわりで苦しむ夏子。ばあやに乞われて見舞いに行った眞人だが、そっけない態度しか取れない。
それからもアオサギは「お待ちしておりますぞ」とちょっかいを出す。
アオサギが残した羽根を使って矢を作り始める眞人。
そんな中、部屋にあった本を見つけた眞人。
そこに吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」があった。
母さんが僕に残してくれたものだ、と読み始める眞人。
夏子が居なくなったと屋敷で大騒ぎが起きていた。その前に夏子が森に入って行くのを見ていた眞人は、その先の塔に入って行った。止めようとしたが、やむなくあとに続くばあやのキリコ。
そこに待ち受けていたのはアオサギ。
あなたの母上です、と言って指し示すソファに横たわる女性。
うしろ姿は母そっくり。
だが「母さん」と肩に触れると溶けてなくなった。
何ならもう一度作るという言葉に逆上した眞人は矢を放つ。
虚しく逸れたが、矢はアオサギを追い回し嘴に刺さった。
矢を抜いたが、元の鳥の姿に戻れなくなったアオサギはオヤジ顔を晒した。
刺さった原因は矢に使ったアオサギ自身の「風切りの8番」
アオサギに命じて夏子の元に案内させる眞人。
「下の世界」に落ちて行く眞人、アオサギ、キリコ。
塔の主と思われる者の声「我を学ぶ者は死す・・・」
海に浮かぶ小島に落ちた眞人。その門にも「我を学ぶ者は死す」
「誰かが墓の門を開けた」と駆け付ける女。
周りはペンギンの大群。
何とかそれを倒して眞人を船に乗せる。
矢を見て、アオサギのおかげて食べられなかったなと笑う女。「どこから来た?」と聞かれて「上から」
夏子という人を探していると言う眞人。
その人が好きなのか?と聞く女。
「お父さんが好きな人だ・・・」
大きな魚を釣り上げ舟べりに括る女。
大波を超えて彼女の家まで辿り着いた。
岸辺で皿を持つ者たちが群がっている。
「彼らは殺生が出来ないので、殺すのはオレの仕事さ」
すぐワラワラたちが来るぞ、と言って魚の解体を手伝わされる眞人だが、働かされるうちに気絶する。
翌朝食事を出される眞人。テーブルの下に並んでいる人形が、屋敷のばあやたちにそっくりだった。お守りだという。
彼女に「キリコさん」と言う眞人。何で知ってるんだと驚く女。
ゼンゼン違うけど、僕のいたところのキリコさんに似ている・・
外のデッキに出るとワラワラが多数空に昇っていた。
それは上で人間として生まれる「魂」だった。
そこに突然襲いかかるペンギンの群れ。
「みんな食われちまう!」とあせるキリコ。
そこに炎を操る少女が現れ、ペリカンたちを追い払った。
「ヒミさまー、ありがとう!」と叫ぶキリコ。
ヒミの炎にやられ、デッキの端に横たわる老ペリカン。
一族はワラワラを食うために連れて来られたという。
海にはエサになる魚が少なく、この島にしか辿り着けない。
ここは呪われた海だ、と言って息絶えたペリカン。
そこにやって来たアオサギに手伝わせてペリカンを葬った眞人。
反目し合う眞人とアオサギをお茶で宥め、協力して夏子を探しに行くよう促すキリコはお守りを渡した。
それはばあやキリコの人形。
上の世界では勝一が夏子、眞人、キリコを探し回っていた。
ばあやの一人があの塔についての話を始める。ご維新の少し前に空から落ちて来たもの。それが落ちた池は干上がった。30年ほどして森に埋もれた塔を見つけた大伯父が、貴重なものだからと建物で覆ったという。また久子もかつて「神隠し」に遭い、一年ほど経って同じ服装で戻って来たと話した(何も覚えておらず)
すぐ塔に向かった勝一。
嘴の穴で飛行能力を失ったアオサギは、歩く事に疲れ果てる。
穴を明けた者が塞げば治ると言われ、木っ端を削って詰めてやった眞人。飛べる様になり、眞人を見捨てて逃げようとしたアオサギだが、すぐに具合が悪くなって再調整してもらった。
鍛冶屋の家を見つけたアオサギだが、そこは人ほどもある二足歩行のインコ多数に占拠されていた。
「人を食べるの?」「象だって食いますよ」
ペリカンと同じで大旦那が持ち込んだのが増えたのだと言う。
ここを通り抜けないと夏子様の所へ行けないと言うアオサギ。
アオサギのオトリで逃げようとする眞人だが、捕まってしまう。
食い散らかされている様子を見て「夏子さんを食べちゃったのか!」と叫ぶ眞人。赤ちゃんがいる者は食べないと言うインコ。
そこに駆け付け、炎でインコを散らし眞人を助けるヒミ。
「キリコのところでナマイキを言ってたのはお前だね」と言うヒミに、夏子という人を探していると言う眞人。
「夏子?妹か」と呟くヒミ。
ヒミの家に連れて来られた眞人は、ここがお屋敷にある塔と同じである事に気付く。この塔はいろんな世界にまたがって建っていると言うヒミ。
ジャムをたっぷり塗ったパンを渡すヒミ。
眞人は、亡き母が作ってくれたパンみたいだと感動する。
「夏子はマヒトのお母さんか?」「違うよ、夏子さんはお父さんが好きな人なんだ。僕のお母さんは死んじゃったんだ」
腹ごしらえが済んで夏子の居る場所に向かうヒミと眞人。ドアの並ぶ通路でインコの集団に襲われる二人。「132」と書かれたドアから外に出ると、そこは元の世界。ドアノブを離すなと言うヒミ。そこに自分たちを探す父の姿が。向こうでも気付く。
「まひとー!」
「手を離せば戻れるぞ」「ダメだ、夏子さんがまだだ」元の世界に出たインコは普通の姿になった。
下の世界に戻った眞人とヒミ。
勝一は眞人がインコになったと勘違い。
石に囲まれた通路を歩く眞人。石に触るなとヒミに警告される。
「この中が産屋だ、夏子はここにいる」外で待つと言うヒミ。
中に入り夏子さん!と呼び掛ける眞人。
「あなた、なぜこんな所に来たの。帰りなさい!早く」
「一緒に帰りましょう」
「あなたなんか大っキライ!出ていって!」
周囲の石が変容を始める。
「マヒトさん逃げて!」「夏子母さん!」
紙の攻撃に晒される眞人。
ヒミが部屋の外で呪文を唱える。
「大いなる石の主よ、我が願いを叶えたまえ。そこにいる我が妹を、ここなる息子となる者の元へ返し給え・・・」
夏子を導いて部屋の外に出るヒミ。気を失う眞人。
老人と向き合っている眞人。あの大伯父の様だ。
石の積み木を積み上げ「これで世界は、1日は大丈夫だ」
と言った。
案内されて膨大な石を見せられる。私の力は全てこの石がもたらしてくれたと言う大伯父。まだ道半ば。
年老いて、あとを継ぐ者を求めているが、石との契約で自分の血を引く者でなければならない。
継いでくれぬかと言われる眞人。
その石は墓と同じで悪意があると言う眞人。
それが分かる者にこそ継いで欲しいと懇願する大伯父。
目覚めるとインコたちに捕まっている眞人。包丁で料理されそうになっているところを助けるアオサギ。ヒミが捕まっており、担架の様なベッドに寝かされていた。殿様(大伯父のこと)の所へ連れて行かれると言うアオサギ。眞人が禁忌を犯して産屋に入ったため、それを口実にヒミを連れて取引きに行こうとしている。首領のインコ大王が指図して出発。
大王らは今まで来たことがない場所まで辿り着いていた。
部下を帰らせて一人で先に進む大王。
大王を追う眞人とアオサギ。互いの声を聞いて近付く眞人とヒミ。そしてようやく出会えた。
大伯父のところへ眞人を案内するヒミ。
大伯父は、やって来た眞人に説明する。
これは悪意に染まっていない石。遥かに遠い時と場所を旅して見つけて来たものたち。全部で13個ある。
3日に一つづつ積みなさい。
君の塔を築くのだ。豊かで平和な美しい世界を作り給え。
傷を見せる眞人。この傷は自分で付けました。僕の悪意の印。
夏子母さんと自分の世界に戻ると言う眞人。
時間がない!私の塔はもはや支えきれないと訴える大伯父。
そこに乱入する大王。何という裏切りだ!閣下はこんな石ころに帝国の運命を預けるつもりか。石を崩してしまった大王。
空に浮かんでいた巨石が大きく動き始める。
「ヒミ、眞人!。時の回廊に戻れー!」と叫ぶ大伯父。
皆で辛くも脱出。夏子も合流。
そして例の「132」のドアの前に来た。
「眞人はここから戻れ」「ヒミはどうするの?」
「私のドアは別だ。眞人のお母さんになるんだからな」
火事で死なせたくない思いの眞人だが、運命は変えられない。
別れを惜しむヒミ。
別の扉(559)から去って行くヒミとキリコ。
元の世界に戻った眞人と夏子。
キリコも人形の姿から元に戻った。
戦争が終わって2年後、東京に戻る日が来た。
「おーい、まひとー。行くぞー」と勝一。
「はーい」
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