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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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春に散る 作:沢木耕太郎 全体あらすじ

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いきさつ
この作品は2015年4月~2016年8月まで朝日新聞で連載されていたもの。その後単行本、文庫本も発行され高い評価を得ている。
そして今回映画化され、8/25から公開される。
新聞連載時ずっとレビューしていたが、なんせ膨大な量で、映画化されたものとの比較が難しく、今回記事1回分にまとめた。

感想
ボクシングで頂点を目指し、挫折するもアメリカでホテル経営者として成功した広岡仁一。心臓疾患が発覚し、やり残した思いを抱いて帰国。そして様々な者たちと関わって行く。
かつてのジム仲間 佐瀬、藤原、星と、ジム経営者だった真田を継いだ娘 令子。そこに若きボクサー 黒木翔吾、のちに恋人となる佳菜子が加わる。
これらの人間関係が見事に融合し毎日読み進むのが楽しかった。
若い頃の思いを残しながら老齢期を迎えた人間の思考、それが分かる年代になってみると、この小説が重く心に響く。
決してハッピーエンドではないが、清々しい読後感を味わった。
さて、映画ではどう料理されているのかな?
小説の新聞全レビューはこちらから追える。

 

映画予告編


ラジオドラマにもなった。

 

 


あらすじ(番号は新聞レビューと対応)
(1)ルート1
タクシーでマイアミからキーウェストに向かう広岡仁一。
ホテル近くのスポーツ・バーでボクシング ウェルター級のジェイク・ミラーとトシオ・ナカニシのTV中継を観る。

番狂わせでナカニシが勝利。


広岡は若い頃、そのボクシングで世界の頂点に立つ夢を持ち、そして捨てた。

灯台
キーウェストの灯台からキューバを眺める広岡。

トレーナーのペドロ・サンチェスに指導を断られた時、キューバのトレーナーに教えを乞おうとしたが国は断交中で、そのままボクシングを断念。それで見てみたいと思い立った。
渡米して40年。最近心臓発作を起こし、バイパス手術が必要。
主治医に電話を入れ、日本に帰ると言って一旦それを断った。

後楽園
帰国後一段落して後楽園ホールに出向き、ボクシングの試合を観る広岡。赤コーナー選手に声をかける年配の女性。

目が釘付けになった。
試合後、その女性が声をかける。「広岡・・・君?」
兄が逃げ通したからジムを引き受けたという。
会長の死にも不義理をしていた広岡。

(2)四天王
「真拳ジム」を訪れる広岡。お嬢さんー先夜の女性 真田令子。
若い者に広岡を紹介する令子。ジムの黄金時代を支えた広岡仁一、藤原次郎、佐瀬健三、星広。皆の消息を知らない令子。
藤原が傷害事件を起こして服役中だと教えるトレーナー。
不動産屋で物件を探す広岡。翌日案内すると言う女性事務員。

部屋
軽自動車で物件を見に行く途中、問われるままにアメリカでの暮らし、ボクサーだったいきさつ、名前の由来の八犬伝まで思いがけず饒舌に話した広岡。
事務員の名は土井佳菜子。アパートの部屋は即決で決めた。
店に戻ると店主の進藤が広岡を思い出しファンだったと言った。
広岡が日本タイトルに挑戦した時の事を「勝っているのに負けてしまった」と言う進藤。突き刺す様に蘇る感覚。

刑務所
アパートで暮らし始めた広岡。だが何のために日本に来たのか。
藤原が収監されているという、甲府の刑務所を訪ねる広岡。

互いの戦歴を語り、互いにバカな奴と納得。
広岡がやった日本タイトルマッチを振り返る藤原。ジャッジが行った恥知らずの判定。そのまま日本に居れば世界チャンピオンにしてやれた、という会長の言葉を伝える。
藤原が収監された理由。店内TVのオリンピック番組で、体が不自由なモハメッド・アリを侮辱した男を殴り倒したため。
あと2ケ月で仮出所と知って「俺のところへ来い」と言う広岡。
次に、毎年新米を届けてくれる佐瀬の住所を知った広岡。

(3)鳥海山
ベランダで見つけ、ミルクを与えるうちに居ついた猫。
G・W明けに酒田に向かった広岡。その途中で過去を思い出す。
高校でピッチャーだった広岡。

将来を見込まれ特待生で進学したが肩を痛め挫折。

そんな折りに電車でモメて、男に右ストレートで倒された。
佐瀬は無冠の帝王と言われていたが、頂点の戦いで敗れた。
「サセケン!」と当時のアダ名で呼び再会。

地元でボクシングジムを開いたが結局辞めた。農家も廃業。

今、友に送る米は農協で買ったもの。
令子に好意を持っていた佐瀬は、彼女とのその後を聞くが

「そうじゃないんだ」
鳧(けり)をつける、という言葉の意味。

俺たちが鳧をつける時期は・・・

(4)クロッシング(交差点)
藤原、佐瀬に会った事を令子に報告する広岡。ジムの希望の星 大塚の指導を頼む令子。1人でもいいから世界チャンピオンを出してから止めたいという。弁護士の息子はジムを継がない。

佳菜子を食事に誘った広岡。今までお礼の意味。まず映画が観たいと言われつきあう。その後令子に紹介されたレストランへ。

広岡が惹かれた、元音楽家のための老人ホーム、の予告編を覚えていた佳菜子。

(5)埠頭
佐瀬より、星からの米のお礼葉書を受け、横浜に向かう広岡。
小料理「まこと」には休業の張り紙。妻が一ヶ月前に亡くなっていた。傷心の星は昼間から酒を飲んでいた。立ち退き要求も受けている。自分のところへ来ないかと提案する広岡。

再び過去を思い出す広岡。
電車での相手はボクサーだと直感し、練習生募集の記事に誘われて「真田ジム」を訪れた広岡。入会のためには頭脳明晰でないと駄目だという。試験はヘミングウェイの短編「五万ドル」の読書感想文。出すには出したが、それとは無関係にジムに入れた。
そして集まったのがこの4名。広岡を殴った相手は星だった。

旧知の白石とジムを始めた会長の真田。
4人はデビュー早々快進撃。だが誰一人世界チャンピオンにはなれなかった。頭脳の明晰さはボクサーに必要なものだったのか。
改めて帰国してからの事を思う広岡。離散、孤立、喪失、病苦。
皆、年取った者が見舞われた困難の前に立ちすくんでいる。

(6)雨
広岡が話していた、ボクサーたちの老人ホームに見合う家を見つけてくれた進藤。一家心中があった事故物件だったが、意に介さない広岡。その家に何か居る印象を持った佳菜子だが、広岡となら大丈夫だった。

近くの桜並木の事を聞き、自分の命の限界を意識する広岡。

(7)白い家
藤原と佐瀬に宛ててこの家の事を知らせた広岡。

かつてジムの二階にあった長い木製テーブルの記憶があった。
改装を行う大工の氷見。元ボクサーの老人ホームを面白がった。
件の長いテーブルを探す広岡。その途中で立ち寄った饅頭屋で、真田の妻が亡くなった時の事を思い出した。
広岡たちが入って3年目に病気で亡くなった。

身内の納骨式でずっと運転手を勤め、一人式に参加した広岡。

その帰りに真田と話す。親が観戦に来ない事を聞かれ、母が自分を生んだ直後に死んだ事で父や兄が冷淡だった事を話す広岡。

ドイツ思想家の話を引用して「正しき人になって下さい」と言う真田。以後真田に傾倒して行った広岡。
テーブルで困っている事を氷見が知り「作ってやろうか」と持ち掛けた。出来たテーブルは、広岡の希望に限りなく近かった。


(8)帰還
刑務所から出所した藤原を家に案内する広岡だが、途中で刑務所では食べられなかったコロッケを買った藤原。送る佳菜子を気さくに「佳菜ちゃん」と呼ぶ。広岡は苗字さえ呼んだことがない。
佐瀬が来る事と、星はまっぴらだと言った話を伝えると、それは本心かな?と言う藤原。広岡が居なくなって一番寂しがった星。
その2日後、佐瀬と星が軽トラックで来た。来る途中、線香を上げに立ち寄った時、無理に連れて来たという。

テーブルを囲み皆で乾杯。カレーを作ろうと言う広岡。

当時週1回のカレー作りは広岡の担当。
佳菜子が猫を連れて来た。広岡が前のアパートでエサを与えていたが、いつの間にか居なくなっていた。

飼うという暗黙の了解の中、佐瀬の言う「チャンプ」で名前が決まった。そしてここは「チャンプの家」

何かが始まるような、何かが終わるような胸騒ぎを覚える広岡。

(9)新しい人
引っ越し祝いの宴会のため、焼き鳥屋に入った4人と佳菜子。
料理、ビールを口にしながら話が弾む。
そんな頃、チンピラ風の若者4人連れが入店。気になった広岡だが、次第に意識から離れた。そのうち中の一人が佳菜子にこっちへ来て飲もうと誘う。無視する佳菜子。

揉め事を避け勘定を済ませた広岡。
そこに追る4人組。土下座を要求されても余裕の藤原、佐瀬。
星の胸ぐらを掴んだ男が呻き声を上げて倒れた。

佐瀬のジャブで尻餅をつくもう一人。

その中でファイティング・ポーズをとる男が広岡に迫る。
ライセンスが、との仲間の言葉を聞き、やめておけと広岡が言うが、パンチを繰り出す相手。
フックが放たれた瞬間若者が昏倒。クロス・カウンターだった。


アスファルトに頭を打った様な音を聞いた広岡は、パトカーが来る前にタクシーで病院まで彼を連れて行き、CT検査を実施。
心配な広岡は、彼を泊めるために家まで連れて来た。
遅くなったため、泊るよう言われ喜ぶ佳菜子。
翌日、ぎこちなく皆と食事を摂る若者。黒木翔吾と名乗る。
佐瀬が知っていた。高校三冠でプロ・デビューしたが、日本タイトル挑戦前に手を痛めてから話を聞かない。

(10)戦う理由
真田会長の墓参りに4人で出掛けた。その折りに藤原が令子について説明。法科大学を卒業後法律事務所で働き、同級生と結婚して子が出来たが離婚。真田ジムを継いだのが皆にも意外だった。
家に戻ると黒木翔吾が来ていた。事件後、治療費の立替分が郵便受けにあったが、今日はあのパンチをもう一度見たいと言う。
最後の試合で、負けていると思ったのに判定で勝ち、敷かれたレールに乗っていただけだったと話す。
自分と全く逆の経験をした翔吾の話に動揺する広岡。
また、これまで一度もダウンした事がなかったと言う。今まで父親からの英才教育で高校三冠になったが、プロになっても対戦は格下の相手。初めて倒されて、もう一度戦いたいと思った。
互いにグラブを嵌めて対峙。

ジャブを、本能を捨てて打ってみろ、と言う広岡。
左手で打たれたジャブを左手で返せば、相手の体が開いてガラ空きになる。クロスカウンターも同じ原理。


次の日曜再び来た翔吾は、ボクシングを教えて欲しいと言った。
パンチを教える前にまず「走ること」と彼を多摩川の土手に連れて行く4人。ここを斜めに駆け上り駆け下りる。

簡単だと言ったが5回で音を上げた。
これで2キロ走れるようになったらまた訪ねて来い、と言う星。

(11)庭のリング
練習の指示を出してから1ケ月ほどして訪ねて来た翔吾。
広岡たちでも2~3ケ月かかったものを難なく行う姿に皆が感嘆。
庭をリングに見立て、翔吾にシャドーボクシングさせる星。
夕食のカレーを食べ、佳菜子に送ってもらった翔吾。皆で相談。
ジム経営の経験がある佐瀬は「・・・教えてみたい」
彼のシャドーボクシングを見て欠けている部分も見つかった。
「教えてくれという若者と、教えたい年寄り、それだけでいい」と星。4人の意見が一致した。
佐瀬が山形から用具を持ち帰り、次第に形になって行った。
翔吾と共に4人もトレーニングの日を心待ちにする様になった。
自分たちも走ったらどうかと提案する佐瀬。発作以来運動を避けていた広岡だが、少しづつ慣らしていき、それが楽しくなった。
翔吾に試合をさせてやるために、令子へ移籍の相談に行く広岡。
翔吾が平井ジム会長 黒木の息子だと話す令子。
家に戻った後、令子が黒木会長からの、よろしく頼むの伝言を伝えた。そして、石坂ジムの山越ハヤトとの対戦に相手が乗って来たと言った。
対戦まで1ケ月しかない

「来週からは・・・毎日だ」と翔吾に言う佐瀬。

(12)竜が曳く車
試合まであと5週間。練習のスケジュールが決められた。
得意技の伝授。佐瀬は「三段打ち」

藤原は「インサイド・アッパー」
ある日翔吾を連れて真拳ジムに行き、移籍の礼を言わせた広岡はスパーリング相手を求めた。見つかった相手は城南ジムの藤田。
だが圧倒的に翔吾が強い。力量差が歴然とし始め、自信をなくした藤田が4週目、捻挫を口実にスパーリングを断って来た。
令子が、うちの大塚とやっては?と提案。世界レベルの相手。
その当日。優勢を保つ大塚に善戦するも、疲れが見え始める。だが大塚の動きをじっと見る翔吾は、フックが来た瞬間右アッパーで打ち抜いた。倒れた大塚。スパーリングはそこで中断された。
「誘ったな」と言い、自分はそれをする様になって弱くなったと言う藤原。

試合当日。佐瀬、星、藤原がセコンド。藤田とは違って手強い。
次第にポイントを重ねる翔吾だが、タフな山越にノックアウトは無理。時折り広岡を見る翔吾。

インサイド・アッパーを使いたいと理解し、8ラウンド目で大きく頷く広岡。勝負をかけようとする山越に、ロープの反動を利用してアッパーを打ち込んだ翔吾。動かない山越。
控室で報道陣に囲まれる翔吾。
出口近くで翔吾の父親が待っていた。かつての羽佐間正一。

過去に広岡と戦って負けていた。翔吾との今までを話す。

翔吾を生き返らせてくれたと感謝する黒木。
祝勝会で、今日だけはとビールを許された翔吾。佳菜子の予言したノックアウトを実現するために許可を求めたと理解した広岡。
本格指導のため翔吾をチャンプの家に住まわせると皆で決める。
佳菜子も、家賃倹約のために住みたいと言い出す。
佳菜子が、こうなると思っていたと、里見八犬伝を引き合いにして説明を始める。広岡から聞いて感化された。
そのうちに星が真田会長の言っていた、六頭の竜が曳く「日車」に乗って太陽が昇るという中国古事を話し始める。
望みを聞かれ、世界チャンピオンをこのジムから出す事、と話す令子。このために自分は日本に帰ったのかも、と思う広岡。

(13)来訪者
翔吾、佳菜子を加えた6人の生活リズムが落ち着いて来た。

翔吾は、かつて広岡たちが働いた荷役会社で体幹を鍛えた。
そんなある日、チャンプの家を訪れる令子。世界戦を控える大塚が、翔吾を倒さないと前に進めないと言っており、翔吾の側から断らせて欲しいとの要望。 その夜、話を皆に伝える広岡。
翔吾はやってみたいと言い、それを後押しする広岡に皆が乗った。翌日それを令子に伝える広岡。少し考えさせて、と令子。
その日広岡に来訪者(佐瀬の言う「イージーライダー」のなりそこない)


弁護士 宇佐美薫。佳菜子の転居を知り様子を見に来たという。
そこで話された佳菜子の経緯。

佳菜子を連れた母親が再婚相手のDVから逃れるため、岐阜山村の集落に入ったが、佳菜子が15歳の時他界。その後集落内で育てられる中で特殊能力を見出される(予知や治癒能力)
集落は新興宗教の信徒で、その再興に利用され始めた佳菜子を守るため相談を受けた宇佐美は、佳菜子を高知にある実家の母親のところで匿い、ピアノ等を教え高卒の資格も取らせた。

だが彼女が拉致されそうになる事件が起き、旧知の仲だった進藤に委ね、事務員として働かせてもらっていたという。
宇佐美が帰ってから、他の3人に話す広岡。秘密は守られた。

(14)階段
令子より、翔吾と大塚の試合をやらせてみるとの電話。
その試合の勝者が世界タイトルマッチに挑戦(興行的にベスト)
体幹が鍛えられた頃合いを見て、星が得意技の「ボディー・フック」を教えると宣言。

そのためにサーフィンをさせると言って海に連れ出す星。日焼けして帰った二人。翔吾は嘘みたいにすぐ波に乗れたと言う星。
正月は家に帰れと翔吾を諭す中で、佳菜子が彼に自分の全てを話していると悟る広岡。
スパーリング相手探しに悩んでいたが、令子が中西利男を紹介する。広岡がフロリダのバーで見た時逆転で勝った、あの中西。
そのスパーリングは4日ほど行われた。

満員の後楽園ホールで翔吾と大塚のセミ・ファイナルが行われた。更にシャープな印象の大塚は、接近戦には持ち込まずポイントを稼ぐ。7ラウンドでダウンを喫する翔吾。

コーナーに戻った時、広岡を見る翔吾。山城戦の時と同じ。

だがインサイド・アッパーは通じない。頷く広岡。
9ラウンドの開始。次第にガードが下がる翔吾に連打を加える大塚。そしてとどめの一発を放った時、スッと腰を沈めた翔吾は左のフックを打ち込んだ。立てない大塚。

大逆転での勝利。また一つ階段を昇った。

(15)花の道
大塚に勝利した結果世界戦まであと2ケ月。対戦相手は前チャンピオンを倒したアフメド・バイエフ。
練習中異変を感じ、ニトログリセリンで危機を脱した広岡。
病院に連絡を入れ、試合の3日後に受診すると伝えた。
翔吾が、前髪もないのに手で払う姿を見て網膜剝離かも知れないと気付く広岡。元トレーナー、ペドロの教え子と同じ症状。
眼科を受診させた結果は「網膜裂孔」
その夜皆で議論。失明の危険を冒してまでやるべき事か・・・
佳菜子が、自分が治したいと言う。持っているという不思議な力。その晩、夜通し翔吾と二人で過ごした佳菜子。
翌朝「ああさっぱりした」と言いつつ例の動作を繰り返す翔吾。
泣きじゃくる佳菜子だが、能力の呪縛からは解かれた。
その後裂孔塞ぎの手術を受けた翔吾。だが目への衝撃は禁忌。

三月のある日、令子とその息子 公平と会食した広岡。

食事も終わり、心臓手術時の万一に備えて財産取り扱いの書類を見せた。自分に関与している者それぞれに使うというもの。
三分咲きの桜並木を散歩する広岡と令子。たまたまベンチに座っていた翔吾と佳菜子の後ろを気付かれぬよう通り過ぎた時
「そういうことじゃ、ないんだ」という翔吾の言葉。
判定で負け、外国に行こうとしていた時、止めようとした令子に広岡が返したのがその言葉。

どういうことだったのかしら?と呟く令子。
試合も迫り、翔吾に世界のベルトを取る焦りを感じた広岡。

翔吾は心臓の事を感づいていた。

今度はセコンドに付いて欲しい、と頼む。
他の3人も病気の事を知っていた。

試合当日。徹底したアウト・ボクシングに驚くバイエフ。一進一退の攻防が続く中、右の視野が狭くなっていると伝える翔吾。

止めるか、と言う広岡に「冗談はよしてください」
10ラウンド。翔吾の足が止まり腕のガードも下した。そこに遅い掛かる右ストレート。鮮やかなクロス・カウンターが決まった。

だが驚異的な闘志で立ち上がるバイエフ。

結局最終ラウンドまで続き、結果は判定に。

翔吾の勝利が決定した。
直後に翔吾の容体が悪くなり、病院で即手術を受けた。
その晩付き添う広岡。引退を考えていると言った翔吾。
見舞いに来た佳菜子に任せ家に戻ろうとする広岡に「ここに居てください」と訴える佳菜子。

散り際の桜を見ながら運河べりの土手を歩く広岡。

胸の痛みを感じ、ベンチに座ってニトログリセリンの瓶を探すが、ない。セコンドで穿いたユニフォームにそのまま置いて来た。そういう事だったのか、と悟る広岡。


自分はただ、歩いて行きたかっただけ。
何かを手に入れるためでもなければ、何かを成し遂げるためでもなく、ただその場に止まりたくないという思いだけで、ここまで歩き続けてて来たのだな、と。

 

 

 

 

 


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