感想
いわゆる業務マネジメントの指南本。
この手法はTOC(制約条件の理論:Theory of Constraints)と言われるものだが作品にこの言葉は出て来ない。
現役(設計G長)当時、一番人気のビジネス本と言われ、時勢に流されて購入(2004年)その時のレビューがコチラ
読んだ当時はテクニカルな部分だけ拾い読みして、読んだ気になっていた。
この本が最近再認識されているという(日本語版発刊から20年)
作者のエリヤフ・ゴールドラットは、イスラエルの物理学者。生産スケジュールソフトを作っていたが、本を出したらこちらのケアがメインになってしまったという。
残念ながら2011年に亡くなっている。
今回じっくりと再読。
大手製造業の工場長が、三ヶ月で工場を立て直せと命じられ奮闘する物語。その中には妻との不仲で離婚寸前まで追い込まれたり、といったドラマも盛り込まれ、サラリーマンにとっては家庭再建の指南本にもなっている。
工場の業務改善プロセス
「ステップ1」ボトルネックを見つける
「ステップ2」ボトルネックをどう活用するか決める
「ステップ3」他の全てを2に従わせる
「ステップ4」ボトルネックの能力を高める
「ステップ5」4で問題解決したら1に戻る
最終的なマネジメントの極意は
「何を変える」「何に変える」「どうやって変える」
いわゆるPDCA(Plan Do Check Action)と通底するものがあるが、具体例に基づいて対処して行くので、けっこう面白く学べる。
企業活動に限らず、人生の課題の多くに適用出来そう。
オマケ
訳者の資質なのか「一所懸命」の言葉が心地良い(一生懸命、ではない)
オマケ2
そういえば現役時代、量販店対応で値引きを要求された時、営業が「限界利益が出るなら受けよう」とか言って受けていた。開発の評価会では全てのチャージ込みで損益を評価されるのに、えらくアバウトやなーと思ったが、要はリソース内で台数が増やせるならオッケーだという事か(今でも納得はしていないが・・・)
時間のない人のために(17分で分かった気になる)
ストーリーのサワリでこんなのもある コミック版Ⅰ、Ⅱ
あらすじ
主な登場人物
アレックス・ロゴ ユニコ社 ベアリントン工場所長
ジュリー・ロゴ アレックスの妻
デイブ・ロゴ アレックスの息子
シャロン・ロゴ アレックスの娘
ビル・ピーチ ユニコ社副本部長
ジョナ 物理学者(アレックスの恩師)
ボブ 製造課長(改善チーム)
ルー 経理課長(改善チーム)
ステーシー 資材マネージャー(改善チーム)
ラルフ データ処理責任者(改善チーム)
Ⅰ.突然の閉鎖通告
1
ユニコ社ユニウェア部門 ベアリントン工場所長のアレックス・ロゴは、自車の駐車スペースに本社ユニウェア部門 副本部長 ビル・ピーチの赤いベンツを見つける。
部下が順次やって来て、ビルが「41427番」のオーダを至急出荷しろと命じている事を伝えた。だがこの工場では納期遅れは当たり前。ビルは現場にまで押しかけたという。
取り敢えずビルの指示通り作業する様伝え、アレックスは所長室に行った。彼の言い分は、大手顧客からの注文が7週間も納期遅れを生じ、その社長から激怒されたという。
慢性的な納期遅れは人員削減のためだ、と抗議しても聞く耳持たずのビルはそれに輪をかけて、これから三ヶ月の間に工場を立て直せと命じた。そしてベンツで去って行く。
現場に戻って製造課長のボブ・ドノバンと作業の調整を行う。
ビルが行ったパワハラが元で機械工が辞め、あおりでNC機械が故障。それの手当ても任せるアレックス。
2
とりあえず夕食を摂りに戻ったアレックスは、めかし込んだ妻のジュリーを見て外食の約束を思い出したが、すぐ工場に戻らなくてはならない。こちらに来て六ヶ月、友人のいない彼女はストレスが溜まっていた。言葉のすれ違いに泣き出すジュリー。
また車に乗り込んだアレックス。元々ベアリントン生まれの彼は各地を回った後、半年前この町へ所長として戻って来た。
工場に戻ってボブとの打ち合わせ。最新鋭NC機「NCX-10」の修理を夕方までに済ませ全員残業で作業を進める。11時過ぎに何とかオーダーの出荷は完了。ボブと食事に行くアレックス。
会社の事を思う。一体どうなっている?半年ごとに本部が問題解決プログラムを押し付けるが、悪くなる一方。
ここも本来はいい工場の筈。必要な資源は揃っている。競争について行けないだけ。ずっと一所懸命働いて来た。
生産管理一筋十五年。そして会社からとんでもないお荷物を背負わされた。38歳にしてしがない工場長か・・・
3
ビルが招集した本社での会議に出掛けるアレックス。各工場の所長が皆呼ばれている。ビルのスタッフになったネイサンに、年内に業績改善しないと、ユニウェア部門が売りに出されるとの話を教えられた。そうなれば、まずトップのビルが処分される。
ビルとの事を思い出す。一介のプロジェクト・エンジニアだったアレックスをビジネススクールに通うよう計らいMBA(経営学修士号)を取らせてくれた。その彼といがみ合っている。
会議が始まり、この危機にどう立ち向かうかの深刻な話を始めるビル。次々に業績が映し出される。第一四半期の売上げは例年比22%減少。生産効率は12%悪化・・・
ペンを取ろうとして上着のポケットから出て来たのは葉巻。
禁煙してもう長い・・・しばらくしてようやく思い出した。
Ⅱ.恩師との邂逅
4
二週間前、出張でシカゴ空港に行った時、ラウンジで葉巻を手に読書している人を見て驚く。昔世話になった恩師 物理教授のジョナ。自ら名乗り、彼の方もアレックスを思い出す。
ユニコ社の工場で所長をしていると告げ、依頼されて工業ロボットが製造業に与える影響の討論に参加すると言った。
ロボットを使って生産性は上がったかね?と訊くジョナ。
いろいろと数字でその効果を話すアレックスだが、話を重ねるに従い仕掛かり増加、納期遅れを出していないかとズバリ指摘される。今彼は組織の科学について研究しているというジョナ。
思っているほど工場がうまく回っていない事を確信しているジョナに食い下がるアレックスは、搭乗口に急ぐ彼を追う。
生産的である事は何かと問われる。何かを成し遂げる・・・ではそれを何で測る?「目標(ゴール)でしょうか」「その通り」
褒美だと言って葉巻をくれた。だがその目標が分かっていないと言うジョナ。目標が分からなければ生産性の意味は分からない。
権力、マーケット・シェア、いずれも不正解。
「自分で考えるんだ」と言って機に乗り込んだジョナ。
5
ビルとの会議の間、ジョナとした会話を反芻しながら葉巻をふかした。利点マトリックス、業務指数・・全く頭に入らず。
ジョナはどこまで本当の事が分かっているのか?
本当のゴール--目標とは何か。
10時の休憩になった時、書類をカバンに入れて退室した。
すぐ工場には戻らず車で流した後、ピザ屋で食料とビールを買い込み、工場手前の丘に上がって車を停め、食べ始める。
この工場で一体何をしなければならないんだ。
ジョナの言う目標とは何か。製品。品質。低コスト。技術・・
それでようやく「金を儲けること」に行き着く。ノートに目標の候補を列記。金を産むための行為は生産的、それから遠ざかる行為は非生産的。残りのビールを飲みほした。
6
現場に出て、仕事をしていない者らに喝を入れ、事務所に戻った。電話メッセージはビルからのものが半分。退席がバレた。
そこへノックの音。経理部長のルーだった。ルーに会社の目標は金を儲ける事かと訊く。当然だとの返事。儲かっているかどうか、どうすれば分かるのか・・・
それを知るための最低限の評価指標は、純利益と投資収益率。そしてキャッシュフロー。
キャッシュが一定のラインを下回ったら会社はおしまい。今のわが社がそうだとルーは知っていた。あと二年で定年のルー。
猶予が三ヶ月しかないと言い、口止めと協力を頼むアレックス。
先の三点をノートに書き付け、初日としての成果を感じる。
時計は10時、慌ててジュリーに電話を入れる。今日に延ばした外食もすっぽかしていた。食事は作ってある、とジュリー。
早く帰る必要がないと知り、夜勤のスーパーバイザー エディーを呼んで仕事の様子を訊く。一度も間違った事はないが純利益、投資収益率、キャッシュフローとは無縁の世界を生きている。
7
家に戻り、静かに入ったが娘のシャロンが起きて来た。今日もらって来た成績表を見て欲しかったのだ。オールAだった。
少二の娘とは逆に、彼は仕事で落第しそう。時間のムダかも知れないが、残り三ヶ月出来る限りの努力をしようと決心した。
この工場を救いたければ、物事の基本を注意深く観察し、良く考えなければならない。
大きな不安を抱えながらジュリーの横に潜り込んだ。
Ⅲ.亀裂
8
アドバイスを乞うために、何としてもジョナを見つけなくてはならない。会社の仕事に忙殺され、夜帰る途中でそれをようやく思い出した。ジュリーに電話で断りを入れてから実家に向かった。驚く母。昔のアドレス帳を探すと言って屋根裏部屋を探すが見つからず。都合三時間ほど探してようやく見つけ、友人をたぐる様に電話をかけ続けて、何とかジョナと話す事が出来た。
メーカーの目標はお金を儲ける事、は正解。続く評価指標の純利益、投資収益率、キャッシュフローにも否定はない。
ただそれらはメーカーの現場では馴染まず、ジョナは別の指標を開発したという。それは「スループット」「在庫」作業経費」
スループット:販売を通じて金を作り出す割合
在庫 :販売する物を購入するための投資全て
作業経費 :在庫をスループットに変えるための金
ジョナにはそこまでしか聞けなかった。寝落ちするアレックス。
9
目覚めると11時。あわてて秘書のフランに電話を入れる。
雑多な報告の後、会長のグランビーが来所するとの伝達。
本社に問い合わせると、来月半ばにロボットを背景にして工場で撮影したいとの事。ピーチ副本部長に通す様進言した。
心配する母と、工場やロボットの件で禅問答。深い愛は感じた。
身なりを整えるため一旦帰宅。ジュリーの車がなかった。
ジョナに教えてもらった指標の運用を考えるが、それをどう実際に当て嵌めるか。ロボットのおかげで効率は上昇した・・・
工場に入って早速ルーを呼び出す。作業ロボットをラインに投入して売上げがどうなったかの質問。調べた結果では、ロボットを使って部品を作った製品の売上げはことごとく増加していない。
在庫の量を調べたいと言い、資材マネージャーのステーシー・ポタゼニックを呼び出した。40代の女性で仕事は速い。
大まかな傾向が分かればいいと聞いて、ロボットを導入したエリアの部品仕掛かり、在庫は増えていると断言。
ロボットの効率を上げるために材料の投入を増やしている。
各部品の生産調整を訊くためにボブを呼ぶ。部品は、必要な時に足りないという事が良く起きるという。悪循環の連鎖。
部品コストは減ったが在庫の維持コスト(作業経費)は増える。
「目標に沿っていない」
と呟くアレックスは、皆への説明を始めた
10
一時間半かけて一通りの説明を終えたアレックス。
これを教えてくれたジョナが物理の先生と聞いて皆が驚く。
「スループット」「在庫」「作業経費」の細目を各立場から工場の部署、装置、人員に照らして分類する。
だが議論は途中で行き詰まった。
ジョナに電話しては?との提案。だが不在と言う相手秘書。
ニューヨークに居るというホテルにかける。就寝中を起こしてしまったが、来てくれれば一時間程度なら話せると言った。
「行ってください」と皆が言った。
11
突然の出張の必要性を理解しないジュリー。和解ないまま出発。
ホテルのロビーでジョナと会うアレックス。教えた指標の運用を褒めたが、工場を救うためには不十分と聞いて状況を理解するジョナ。だが手伝って欲しいと頼まれても多忙で不可能。
ルールに従って一所懸命努力すれば成果を上げられると言う。
手始めにロボットから、との相談にそれは忘れろと言うジョナ。
そしてジョナの話がことごとく理解出来ないアレックス。
どの工場にも二つの現象があり、それが組み合わさる。一つは「従属事象」後から起こる事象は前に起こる事象に依存する。
もう一つは「統計的変動」
答えが欲しいという願いは「今教えたらきっと失敗する」と否定された。次の打合せのため、迎えの車に乗ったジョナ。
12
自宅に帰る車中、妻に去られた男の事を思い浮かべる。
出張の間、何度電話してもジュリーは出なかった。
彼女の車を見て安堵。硬い態度のジュリー。昨晩は子供をシッターに預け、前住所の友達に会いに行ったという。
飲み過ぎて昨晩は帰れず。今後二ケ月、自分の時間を全て犠牲にしないといけないと言うアレックス。
書類を家に持って帰ってやればと提案する妻に、何とかやってみようと返す。条約締結のキス。
Ⅳ.ハイキング
13
土曜の朝、息子のデイブに起こされるアレックス。ボーイスカウトのハイキングに同行する約束を思い出した。子供たちは男子15名。現地に着くと隊長が病気(痔)で来られなくなり、アレックスが隊長だという。計画はここから16キロほどの「悪魔の峡谷」まで行って野宿し、翌日帰って来るというもの。
まずは峡谷まで行かなくてはならない。一列縦隊で歩き始める。平均時速3キロで歩けば午後3時には着くと軽く考えた。
だが歩き始めて数分で列が伸び始める。遅れの原因は太った子ハービー。ペースメーカーになる子を先頭にしてハービーの後ろに付く。歩きながらもジョナに言われた事を考える。この歩行も依存的事象の一つ。速い者、遅い者の組合せで平均時速3キロなど守れない。歩きながら製造現場の行動を当て嵌めて行く。
そんな時、隊列が止まった。「昼食の時間です」
14
まだ目的地の川に着いていないが、多数決で全員の賛成によりここで昼を摂る事にした。そんな中でも、どうすれば平均時速3キロで歩けるか腐心するアレックス。
子供の持っていたサイコロでゲームを思い付いた。出た目に応じてマッチ棒を動かすもの。大きな目と小さな目が平均的に出てバランスの取れた結果になると思ったが、ひどい結果。
生産スケジュールに置き換えたらとんでもない事になる。
15
休憩が終わり、再び歩き始める。考え事をしているうちに、遅いハービーがすぐ前に来ている。皆が勝手に順番を変えた結果。
なんてこった。他の者がどれだけ早く歩こうが、ハービーが列全体のスループットを決定している。ハービーがマイルストーンを見つけた。丁度中間点の8キロ。5時間かかっている。着く頃には暗くなっている。皆を止めさせて集めた。手を繋がせてハービーを先頭にして歩く。それは一見うまく行ったが、後ろの者が不平を言う。
休憩の折りにハービーのリュックが異常に重いのに気付く。
フライパンや、折り畳みの軍用シャベルまで入っている。
荷物を皆で分担してハービーの負担を軽くした(一番の負担はアレックス)そして出発。驚くほどのスピードアップ。
在庫が減ってスループットが増えた。
ほぼ予定時刻の5時に着き、テント設営と夕食。
寝る時に「見直した」と言うデイブに
「父さんの工場でも役に立ちそうだ」とアレックス。
16
日曜の夕方帰宅したアレックスとデイブ。ジュリーの車がない。
クローゼットの服がカラになっている。デイブが置手紙を見つけて来た。しばらく留守にするとの内容。追伸でシャロンを母に預けたとあった。急いで母の家に行き事情を聞く。
シャロンは小さなカバン一つで玄関に置かれていたという。
子供らには、ジュリーがしばらく帰って来ないと告げ、夕食は外で食べた。帰宅してから、先日ジュリーが行った友人のジェーンに電話を入れるが出ない。
ジュリーの実家に電話。そちらには行っていないという。母親の叱責。その後警察にも電話したが、事件でもないと動かない。
17
月曜の朝は修羅場。デイブが朝食を作ろうとしてホットケーキを焦がし、シャロンと揉めている。シリアルを食べさせてデイブは学校に出たが、シャロンはスクールバスに乗り遅れ。
休みたいと言うシャロンをなだめすかして車で送り込んだ。
会社に着いたのは9時過ぎ。伝言を受けて別工場のヒルトン・スミスに電話し、遅れている部品の納品を約束させられる。
ボブにその部品の手当てを指示したが、先の電話が気になってフランに訊くと、先週来たボブからのメモを渡される。
ヒルトンが本部の生産性担当部長になり、今後各工場所長に彼への報告義務が発生する。
10時、例の三人にデータ処理責任者のラルフ・ナカムラを加えて会議を始めた。ハイキングでの事を披露。だが反応は弱い。
ロボットには統計的変動はないという反論。
ロボット以外の作業でそれが出ると説くアレックス。
そこへ、ヒルトンからせかされている部品100個の生産についての情報が入る。間に合うかが微妙だという。
作業内容の情報を集め、統計的変動の観点から各作業の手順を提示して行くアレックス。ボブに納得させ、10ドルの賭けを提案。アレックスは出来ない方に賭けた。
フランがデイブからのメッセージを伝えに来た。家に入れないかも知れないとの危惧。母親に電話してジュリーが戻って来るまでの切り盛りを頼む。そして工場を抜けて母を迎えに行った。
4時少し前にボブが来て、賭けに勝ちそうだと言う。5時のトラックに乗るのを見届けてからと言うアレックス。
作業キーマンのピーターのところに向かう。作業の詳細を確認すると、ロボットの処理能力と供給のアンマッチで、結局間に合わない。謝るボブに「今日はいいことを一つ学んだ」
Ⅴ.ハービーを探せ
18
その夜帰宅すると、ママから電話があったとシャロン。デイブが受けたという。だが電話番号は知らせず。母が孫らを励ます。
出社して例の4名が所長室に集まる。昨日のおさらい。
依存的事象と統計的変動のコントロールが重要だが、要因が多過ぎて手が付けられない。ジョナ先生への電話が提案された。
何とか捕まってスピーカーフォンでの会話。今までの方向は肯定される。次は工場内のリソースを、ボトルネックと非ボトルネックに分けよとの指示。ボトルネックとは「処理能力が、与えられる仕事量より低い」こと。
それを受けてボトルネック探しを始めるが、正攻法ではとても間に合わない。ハイキングの時を思い出すアレックス。
ハービーの様にすぐ見つかる指標・・・長年の経験でそれが分かると言うボブ。いつも不足する部品が、ボトルネックを通過する部品。その前には多くの仕掛品がある。
それはすぐ見つかった。最新鋭機のNCX-10。
だがこれは本工場で一番効率のいい機械。ボブが言うには3台でやっていた仕事をこれ一台で賄える。省人化でこうなった。
ハービー2号は熱処理装置。時間が掛かる割りに中途半端な処理個数で運用させられている。このボトルネックを解消するためには、かなりの資金が必要。冷めた声で否定するルー。
19
ジョナが乗る飛行機を待つアレックス。電話での話ではどうしても不足で、ロスに行くフライトを変更してベアリントン空港に来てもらった。とりあえず工場へ、と言うジョナ。
道中、工場の窮状を説明するアレックス。そして工場に着き、例のメンバーを紹介。ジョナはまずボトルネックを見に行った。NCX-10の前に立ち説明するボブ。その機械が今動いていない事を咎めるジョナは、組合との契約で30分の休憩を取っていると聞いて呆れる。また、本機を導入する前の機器が残っているかを訊く。三種類のうち一つは処分したとの回答。
次いで熱処理装置。熱処理に代わる方法はないか訊くが、技術担当の賛同が得られないとの回答。熱処理を外注出来ないか訊けばコストアップを主張。また検査部門では、完成部品がはねられているのを見て、ボトルネックを通す前に除外すべきと指摘。
ジョナは、ボトルネックで損失となるコストは、それで作る事が出来る製品のコストと同じだという。製品千ドル、千個だから百万ドル。皆息を飲んだ。時給換算では2,700ドル。
ポリシーを変えるだけで出来る筈だと言うジョナ。。
まずはボトルネックの時間を無駄にしない事。
またボトルネックから負荷を減らして非ボトルネックに回す。
翌朝朝食時にシャロンが、ママからの電話の時、おじいちゃんの家で聴いた音楽が聞こえたと言った。
20
朝、皆でミーティングをする前にジュリーの実家に電話を入れる。義母のアイダとの会話。そこに居るのでしょう?の問いに話をしたくないようだと答えたアイダは電話を切った。
ミーティングが始まる。皆は概ねジョナの言葉を受け入れた。
ボブが、まず部品検査を加工前にするのを手始めに提案。
ラルフに、納期遅れに関わるボトルネック部品を指示。
ステーシーにはそれを受けて運転スケジュールを組ませる。
その夜、妻の実家へ車を走らせたアレックス。義母に拒絶されたが、車で待っているとジュリーが出て来た。ドライブは断られ、周囲の散歩。混乱していると言う彼女。
打開策のないまま「他に男でもいるのかい?」と禁句を吐く。「うんざりだわ・・」
離婚したいのかい?の問いにも「わからないって言ったでしょ」
失意のまま車に乗り「やっぱり君の事を愛しているよ」の言葉に駆け寄ってキスし、立ち去るジュリー。
21
意気消沈して帰宅するアレックス。冷たい食事の後、彼女の代わりになる女性はいるだろうかと考える・・・思う人は一人。
電話をかける。長い呼び出しのあと義父が出た。ジュリーと代わってもらう。この期間に時々会えないかとの申し出。
「デートに誘ってるの?」「そうさ」土曜の夜と約束。
翌日また会議。遅れオーダーとそれに関わるボトルネック部品のリストが揃った。追加で呼ばれたNCX-10担当のマリオと熱処理炉担当のテッド。彼らにリストの一番上からの作業を指示。
ミーティング後、組合支部長のマイク・オドネルとの交渉。それはボトルネック機器の連続稼働のための休憩時間運用見直し。
契約違反だと突っぱねるオドネルに理由を細かく説明する。
持ち帰って検討すると言って退室したオドネル。
その後もトラブルは散発するも、ボトルネックへの部品供給ルール見直し等で改善(重要度に応じて仕掛品に赤、緑の札付け)
この思想を全面展開するために、各担当が従業員に伝えた。
オドネルから、提案の了承が伝えられた。
土曜の夜、少しめかし込んでジュリーの実家に行くアレックス。
22
新システムを導入して一週間。ラルフが納期遅れオーダーのリストを出す。現時点での最尾オーダーは45日遅れ。先週の58日から大幅な改善。方向が間違っていなかったと言うアレックス。
更なる改良の提案があった(ロイとバーバラ)ボトルネックで作業を終わった部品の札に黄のテープ貼り。すぐ実行を指示。
ボブが来ないのを訝っていると、その彼から電話。現場の搬入ドックに呼び出されると、見たこともない様な古い機械が。
NCX-10が導入されるまで使っていて廃棄されたものを、引き戻したという。スクラップ扱いなので運賃だけ。遅いが動く。
23
先週からのジュリーの事を思い出すアレックス。あの土曜は映画のあと食事。帰ったのは夜中2時だったが、抱擁も出来た。
なんとも妙な関係。結婚前に戻った感覚。
そこに熱処理担当のテッドが押しかけて、ラルフが炉の運用に関して作業記録をつけろとうるさい、と抗議。
その後ラルフに訊くと、NCX-10作業は出荷と計算が合うが、熱処理が合わず。
現場確認すると、処理後数時間も放置されている状況を見つけたという。早速ボブを呼び出して問い質すと、熱処理は炉に入れてから出すまで仕事がなく、他に回っているうちに遅れる事もあると弁明。NCX-10でも時々停止の要因がある。
翌日ボブが提案を持って来る。二ヶ所のボトルネックに専任者を常時待機させる事。だがルーが、余分な人員はないと難色。
現有人員で対応するためのアイデアを出し納得させる。
その運用を始めてすぐ注目すべき事態が起きた。熱処理職長のマイクが、空き時間でアシスタントを使って炉に入れる前の部品整理を行っていた。時間ロスの低減に寄与。
また、クレーンで部品を運ぶ代わりにローラーを付けた台車が作れれば出し入れの時間ロスが減ると提案。
それを早速ボブに指示。ボブも不必要な熱処理をしていた部品を見つけ出していた。元々製造スピードアップでの強度低下が原因だった。加工速度を落とせばいい。それで炉の負荷が20%減る。
Ⅵ.つかの間の祝杯
24
金曜の午後、ドアの外から突然破裂音。笑い声と共に例のメンバーが入って来る。手にはシャンペンのボトル。
製品出荷の新記録達成だという。金額ベースで300万ドル。
乾杯をして飲んでいるとビルからの電話。納期遅れのオーダ出荷が改善されているのが、本社ベースでも確認された。
感謝の言葉に「これまでとはやり方を少し変えたんです」
パーティーは二次会まで続き、車の運転も出来なくなって、ステーシーの車で家まで届けられたアレックス。
抱えられてドアを開けた時、つまづいて二人で倒れ込んだ。
点いた灯りの先にジュリーがいた。「何という人なの!」
その足で車に駆け寄り走り去ってしまった。
土曜の朝、母が説明。ジュリーが驚かそうと思ってずっと待っていたという。実家に電話を入れるが、義母は取り次がない。
月曜の朝、ステーシーが来た。元々問題があって君のせいじゃないと伝えるが誤解を解きたい、と実家の電話番号を聞いた。
次は仕事の話。ボトルネックが広がったという。赤い札の部品は一つだけで、残りは緑。
ジョナに緊急連絡を取った。今までの対策とその成果を話し、赤と緑の優先システムを話した時「もう一度行った方がいいな」
その夜、ジュリーからの電話。ステーシーからの電話で誤解が解けていた。やり直しのため、水曜に会う事に。
25
空港でジョナを出迎えた。状況の概要を説明。早速工場へ。
ボトルネック以外の場所で緑の札の部品が山積みになっている。
NCX-10に近づくと、赤い札の部品の山で山脈の様になっている。
ジョナはボトルネックをX、その前の工程をYとして説明を始めた。Xがフル活動をしてもYより出来高は低い。
それを無視してYをフル稼働させた結果がこれ。
人、機械を働かせる事と利益を上げる事は別問題。
答えはとても簡単だ、と言うジョナ。
26
夜、仕事のお手伝いをしたいと言うデイブとシャロンに、例のハービーの話をする。先頭の子に合図を出せば?とシャロン。
子供たちのアイデア-過大在庫回避のため、ボトルネックから必要な部品の合図を出させる-を提案。ジョナが肯定。
ラルフが今までの動きを観察しており、資材投入のタイミングについて提案。それを非ボトルネックにも展開出来るという。
シカゴに行かなければならないジョナを空港まで送り届ける。
翌朝、運用についての詰めを行う。ボブが、工場のあちこちにアイドルが出るかも知れないと危惧。データ的に効率が落ちる事になる・・・月末に出す報告書の心配。
このままやってみよう、と言うアレックス。もし効率が下がったら、それはそのときだ・・・
Ⅶ.報告書
27
5月末のマネジャー会議で、ベアリントン工場の売り上げ増と会社の赤字回避が報告された。ヒルトンの渋面が心地良い。
アレックスに説明の順番が来た。その前にビルのねぎらい。
これまでと比較にならないフローの改善。納期遅れの解消。
だがビルの反応にはやや不満。会議のあと、ビルに声をかけた。
「いつになったら工場閉鎖を取り消してくれるのですか?」
過大な要求が来た。「先月より利益15%アップしたら考えよう」
とんでもない難題を課されたのかも知れないという不安。
学校が休みになって子供らはジュリーの実家に居る。
会社には早退を告げてそちらに向かった。
ジュリーとしばし散歩する。まだ家に戻る事は出来ないと言う。
彼女が語る、18歳の頃からの計画。それは実現したが何か違う。
彼女の結婚観を訊くが沈黙。次のデートの約束をして別れた。
28
家に着くと電話の音。ジョナだった。シンガポールから。
更に改善する様指示されている事を話すと共に、今までの状況を詳細に話す。まだ始まったばかりだよ、と話すジョナ。
翌日、出社して皆にジョナの話を聞かせる。非ボトルネックのバッチサイズを半分にする事。仕掛かりへの投資が半分になる。
それによりキャッシュフローも改善する。
その先はレストランでランチを食べながらのミーティング。
ジョナの話。資材から完成品になるまでの時間を四つに分ける。
セットアップ :段取り
プロセスタイム :処理時間
キュータイム :該当機械での処理待ち
ウエイトタイム :完成するために他部品を待つ時間
バッチサイズ半減は、この中のキュータイムとウエイトタイムが半分になる。最終的にリードタイムが圧縮される。
顧客へも早く出荷できる。アレックスは顧客から受注して4週間で出荷するとの宣言を披露した。
本社に行き、マーケティング部長のジョニーに、顧客へリードタイム4週間をアナウンスする様申し入れるアレックス。
出来なかったらグッチの靴をプレゼントする・・・それに対しアナウンスは6週間以内として、5週間以内で出来たら私がそれをプレゼントする、と言ったジョニー。
29
夢のせいで目覚めたアレックス。ベンツに乗ったビルに追われている。轢かれる寸前で目が覚めた。隣りのジュリーを起こさぬようベッドを降りる。今夜は彼女と二人だけ。
仕事の方は順調。ただ悪い知らせもある。
起きて来たジュリー。工場の事を気にしていると聞いて、話してくれない?と言った。難しくならない様、他の例えも交えて話した。彼女なりに分かろうと努力。
事務所に着くとルーからの相談。実質の損益計算をするのに従来ベースでは最近の改善を反映出来ない。部品コストをここ二ケ月基準に変えればそれが出来る。だが本社経理のイーサンは認めないだろう。やってみろと背中を押すアレックス。
ジョニーからの電話。あれから彼とは意気投合。バッキー・バーンサイドから1,000台のオーダが取れそう。だが納期2週間。
さすがに厳しい。まずは状況を調べると言って電話を切った。
例のメンバーを集めて至急検討を始める。他を止めれば対応出来るが、それはダメ。種々アイデアが出されたが、二週間後の一括納入がネック。だが分割納入なら可能性はある。
ジョニーに電話。一週当り250台で4週に分けてなら可能。
その条件でジョニーはオーダーを取った。
30
月が変わり、ミーティングでボブにバーンサイドのオーダー進行状況を訊く。予定通り。ステーシーも以後の予定に問題ないと報告。遅れて来たルーに利益15%の達成度を訊くと、勿体付けた後「17%」バーンサイドの受注が効いたという。
翌日、本社からの封筒が届く。バーンサイドの件への感謝。
そして工場のパフォーマンス評価への準備指示。
翌週、人事担当と共に数日出張したアレックス。
戻るとボブが、ヒルトン・スミスがここに来てロボットのビデオ撮りをして行ったという(会長代理として)その折りに現場の様子が違っていたため、あちこち情報を集めて行ったらしい。
二日後、本部からニール・クラビッツをリーダーとする監査チームが工場にやって来た。すぐに部品コストの基準変更が見破られた。チームの再計算によればコストが上がっている事は明白。
チームが去ってすぐビルに電話するが不在。
その一週間後、コスト計算結果の再提出命令が届く。
数日後、工場にヘリコプターが乗り付けられた。中から出て来たのは営業のジョニーと、あのバッキー・バーンサイド。
製品がスケジュール通りに出たかボブに確認「もちろんです」
現場に向かった訪問者二人。バーンサイドが作業員全員に握手をして回っている。急いで駆け付けたアレックスに、オーダーを見事に仕上げてくれたと言うバーンサイド。
アレックスに靴のサイズを訊くジョニー。「いいよ、そんなの」
同社と年間一万台の長期契約を結ぶ、と続けたジョニー。
工場パフォーマンス評価の前日。プレゼンのリハーサルも終わり、報告書10部を抱えて退社。本社に行くのに近いため、実家に居るジュリーに電話をして泊めてもらいに行く。
実家に着いてしばらく子供らと遊んだ後、ジュリーと車で出掛け、明日の会議の事について話した。閉鎖するか存続するかの判断が行われる。売上げも増え最高の月だったが数字に出ない。
力強く励ますジュリー。明日の夜のデートを約束。
31
本社会議室にはヒルトンとニール・クラビッツにスタッフ数名。
ビルは別ミーティングで不在。待たせてもらうと言うと、任されているからすぐに始めてくれと言うヒルトン。
彼らに、我々の目標はコスト削減より金を儲けることだと宣言。
説明も進みボトルネックの説明にかかった頃、ヒルトンが口を挟む。私の工場長時代もボトルネックは多数あった・・・
アレックスは、自分たちが製造に関して従来ルールと違う事を実践していると説明。リソースも「使用」ではなく「活用」
堂々巡りの末、ヒルトンは君の工場でコストが上がった事は事実であり、それはビルへの報告で強調すると宣告。
彼らが去った会議室で呆然と座っているアレックス。
気が付いたようにビルの居る部屋に行く。そして会議の状況を説明した。彼らは聞く耳を持たない・・・
ビルは秘書を使ってヒルトン、イーサン、ジョニーを呼んだ。
改めて見解を訊くビルに、ルール無視に対して何か手を打つべきだと言うヒルトン。アレックスの工場の改善も一時的だと言う。
ジョニーが販売サイドの驚くべき効果を主張。営業への強み。
「工場は閉鎖するのですか?」耐えきれず訊くアレックスに
「掘り当てた金鉱を埋める事などしない」とビル。
先の会議に不在だったのはビル、ジョニー、イーサンの三名が会長と会っていた。彼らは昇進してグループ全体を見る。
そしてアレックスは私の後任になる、とビル。
工場に戻り、何とかジョナと連絡をつけ、工場存続を伝えた。
今後とも手伝って欲しいとの申し出。どうすれば効率的な部門運営が出来るか。自分の人生の管理方法も学びたい・・・
まず、効果的な管理運営にはどんなテクニックが必要か考えろ。
それが宿題。
32
ジュリーとのレストランデート。乾杯しましょうと言う彼女に、まだそんな気になれないアレックス。家族を犠牲にしすぎた。
思えばぞっとする様な数ケ月。それを乗り越えて部門全体を率いる立場になった。引っ越せる事で彼女も機嫌がいい。
ジョナとのやりとりを彼女に話しながら思う。はい、どうぞと答えをくれなかったからこそ自分のものに出来た。
彼に相談した時、どんな反応をするか前もって知っていた彼。
彼は製造業界で働いたことなどない物理学者。釈然としない。
「そんな人なら仕事の手法以外も教えてくれる様頼んだら?」
33
スタッフとして連れて行きたい筆頭はルー。だがあと二年で定年の身。会いに行くと業績改善を嬉しそうに説明するルー。
だがこの改善が今の評価方法ではうまく表現できない。バランスシート(貸借対照表)で説明。一例で言えば余剰在庫を減らす事が、経理上は損になる・・・
彼は、古いシステムの欠点を修正し、適正に評価出来るシステムを完成させるために連れて行って下さいと言った。強く握手。
次はボブ。アレックスの不得手な分野を補ってもらいたい。
話を聞いて驚いたボブだが、バーンサイドの受注の件で開眼した。あの時のやり方をもっと発展させるため工場に留まりたい。
その先の、売上げを伸ばす事にまで意識が向いている。
次いでステーシーとラルフを呼ぶ。
「やっと所長が見つかったのね」「そうだ」とボブを見る。
次いでステーシーにボブの後任を頼んだ。その仕事をしたかったと言うステーシー。最近、安定している仕組みの中でリスクが増して来ている部門があるという。それをCCR(生産能力制約リソース)と名付けた。生産の穴になる危険性が増大。
その鍵になるのが製造。
次はラルフ。ようやく自分の仕事が好きになって来たと言う。やりたいのは新しいシステム作り。売上げを伸ばし労力を減らす。
34
ジュリーとお茶を飲みながら過ごす夜のひととき。
最近は彼女に仕事の話もよくする。チームの皆が目標を持って動き始めている。自分はどうやってマネジメントの方法を学ぶか。
チームのみんなはあなたに借りがあるから、残された時間であなたの疑問をぶつけたら?と言うジュリー。
ジュリーの助言を実行に移す。皆を集め、部門全体をうまく運営するためにマネジャーが何をすべきか手伝って欲しい。
冗談が散発しつつも「新スタッフにまず会う」「生産施設巡り」「大手顧客への挨拶回り」・・・
おさらいのためにホワイトボードを使いだしたアレックス。
事実確認は丸、内容により四角も。盤面が真っ赤になっただけ。
堂々巡りをする中、要するに図形分類などでは分厚いレポートが出来るだけ。もっと別の角度から取り組まなければいけない。
誰からも言葉はなく、今日の会議はお開きとした。
Ⅷ.新たな尺度
35
翌日の会議「さあ、誰かいい考えはないか?」と促す。
ラルフが、昨日の話に戻ってみたいと言い出した。大学では化学を副専攻したというラルフ。ロシアのメンデレーエフという昔の学者の話を始めた。彼は各元素の識別を、原子重量の比率(水素基準)で並べる事を提唱。化学特性の揃った七つを一列として格子状にまとめると、その間の未出の元素の予測を行い、実際に発見された。だが何らかの法則を見つける方法は支持されず。
その日の会議は終わり、自宅でジュリーと話していると、図書館に行ってソクラテスの本を借りて来たという。
36
オーダートラブルとかで、全員揃うのに時間がかかった。
皆への再確認。
ここ数ケ月の成功を一般論として説明する必要がある。
ステーシーの言う「我々の目標は?」の呼び水を受けてルーが
「継続的改善プロセスをここでスタートさせる事」と言った。
その言葉がボードに書かれる。小学生の様にボブが読んだ。
ヒルトンから届くその「改善」メモに閉口のボブ。
改善という言葉を使わなくても実践して来た。それをどうとらえるか。ルーが立ち上がってボードの前に立つ。
「スループット(THROUGHPUT)」
「在庫(INVENTORY」
「作業経費(OPERATING EXPENCE)」
重要なのはスループットの向上。
コスト第一主義からスループット第一主義への転換。
突然気付いてボードの「プロセス」に丸を打つボブ。
鎖の強度を例にするラルフ。一番弱い輪がボトルネック。
そして今までの作業を皆でボードに書き付けた。
「ステップ1」ボトルネックを見つける
「ステップ2」ボトルネックをどう活用するか決める
「ステップ3」他の全てを2に従わせる
「ステップ4」ボトルネックの能力を高める
「ステップ5」4で問題解決したら1に戻る
ボトルネックは部品に限らない。ステーシーがそれを「制約条件」に書き換えた。皆で成果を噛みしめた。
家でジュリーに話すアレックス。この勢いを失いたくない。
どうやったら継続して工場を速いペースで改善出来るか・・・
「それはボブの責任でしょ・・・」
37
翌日の会議で、まだ何か足りないと言うラルフ。その言葉にステーシーも考え込む。ルーが何気なく「赤と緑の札」の話をする。
ステーシーが赤い札の問題に気付く。ボトルネックに続く周辺のCCRでは赤い札を優先して作業し、緑の札は後回し。
それで問題が起きて初めて手を付ける(33章)
札をなくして、来た順に処理すれば解決する。
CCRの問題を解決出来ると聞いて明るくなるアレックス。
もっとオーダーを取れる・・・
ステップ5に「ただし「惰性」を原因とする制約条件を発生させてはならない、とステーシーが追記した。
課題解決の前提で工場の生産余力を訊くとステーシーが「20%ぐらいです」 明日本部に出向くと言うアレックス。
38
翌朝、本部でのジョニーとの会議にルーとラルフを同行させた。
もっとオーダーを回してもらう交渉。ジョニーは腹心の部下ディックを同席させていた。単刀直入に1.000万ドルの仕事を要求。
生産余力が20%あると言っても信じない。
話をするうち、ディックがフランスのジャングラー社との商談を紹介した。渋るジョニー。ディスカウントの要求が厳しい。
要求金額を聞いてルーが「行けます」
国内に影響がない事を前提に「うちで引き受けよう」
その後具体的な契約条件の概要を決めて本部を辞した。
車の中で三人ではしゃいだ。予想利益は100万ドル。
このアイデアが出たのもラルフがまだ何か足りない、と言ってくれたおかげだと感謝する。どんなマネジメント・テクニックを身につけたらいいか、早く探さなければ・・・
ジョナの事を思い出す。物理学者がどうして知る事が出来る?
科学的手法のどこかにマネジメント・テクニックがある筈。
ジュリーと話す。ソクラテスの本が面白いと言う。
自分が読んでいる科学の本の事も話した。科学者のアプローチは
「If(もし・・・ならば)、Then(・・・という事になる)」という考え方。それが全ての基本。
ジュリーは、ソクラテスの対話もそれと同じだと言う。
それがジョナのテクニックの基本・・・
「ジョナが授けたのは思考プロセスよ!」
だがジョナが言ったのは「何が必要か探せ」
見極めにはニーズから始めないとダメ・・・
39
工場に戻り、伝言を聞いてビルに電話した。報告書を見たという。驚くべき数字。また、イーサンと話しても通じないから明日来てくれという。また、ジョニーが製造コスト割れでも儲けが出ると言っている理由も。
ステーシーから連絡が入る。悪い予感が当たったという。
納期遅れのオーダーの続出。ボトルネックもCCRのチェックも問題ない筈。「一体何が起きているかミーティングだ」
事象の整理。ボトルネックの処理能力は超えていないが、時々空き時間が出来る。そうかと思うと大量に仕事が来る。ボトルネックがあちこちに移動している・・・
ボトルネック手前の在庫が少ない時には手前のリソースに予備能力が必要。今回オーダーを取り過ぎてバランスが崩れた。
即座にそれを理解したボブがてきぱきと指示を出す。4週間以内の納品約束の中止、営業キャンペーンの中止・・・
目の前でバトンは渡された。少しの嫉妬と誇り。
ボブの裁きを褒めるルー。だが彼をネガティブな状況に追い込んだ事を後悔。キャンペーンの撤回に人件費も膨らむ。
どこで間違えた・・・まだやみくも状態。
40
ここ二週間ほど毎日ルーと本社を往復。ユニウェア部門の全貌は明らかになって来たが、見通しは暗い。唯一明るいのは自分(ボブ)の工場だけ。我がユニウェア部門の救世主。
改善のために様々なアイデアを考える。
売掛金の回収、在庫評価方法の変更。要因が多すぎる。
ルーの言う「何らかのプロセスが必要」の言葉に先日のステップの件をボードに書く。組織改善の最初は鎖の一番弱い輪探し。
その中でどう制約条件を探すか。ルーの言う評価指数にも立腹。
時代遅れの製品、プロジェクト遅れ、営業プランの粗雑さ。極め付けは「長期計画」どうしようもないものばかり。
話すうちに制約条件を探し出す方法をジョナに聞こうと叫ぶアレックス。だがそれを知るだけでは不十分だと言うルー。
ステップを実践するために必要なテクニックを聞くべき。
「ステップ1」制約条件をどう活用するか決める。
だがすぐに行き詰まる。
様々な話の中でルーが「何、に変えたらいいのですか?」
もし最初の思考プロセスで「何を変える」の問いに答えられたら、次は「何に変える」そうなると三つ目は
「どうやって変える」ユニウェア部門には三つ目が最重要。
探し求めていたのは三つの簡単な問いに答える能力。
「何を変える」「何に変える」「どうやって変える」
「それこそ所長がやって来られたことです」とルー。
それはどうかな。みんなでやって来た事かも。
ようやく分かった。彼は自ら学ばなければ駄目だと言った。
「所長と一緒に働くことができて、誇りに思います」