感想
昨年放送したものの再放送らしいが、ギリギリ正月特番という事で視聴した。クフ王のピラミッド誕生の秘密、巨石を積み上げる驚異のテクノロジーなどを考古学者・河江肖剰氏が紹介する。
近年の発掘調査の成果が、こうして紹介されるのはいいこと。
なお完全に近い番組レビューはこちらを参照。 １ ２ ３
概要
約4500年前に築かれた巨大建造物、三大ピラミッド。
最大のクフ王のものは高さ140m。
① どのようにして巨石を積み上げたのか？
・滑車引き上げ説× ・担ぎ上げ説×
→傾斜路を引き上げる説が有力
だがピラミッドが高くなると傾斜路に要する土砂が膨大となる。
2018年、採石場の発掘調査で傾斜路にいくつもの穴が見つかった。
穴に柱を立て、それにロープを掛けて引き上げた。
傾斜12度以上でも引き上げ可能
② どのくらい時間がかかったのか？
大ピラミッドは王の即位と共に始まるのが定説。
有名なのはヘロドトスの唱えた「10万人、20年間」
2013年、遺跡ワディ・エル＝ジャラフで見つかったパピルス書簡。
物資担当の役人メレルが残したもの。
ピラミッドに化粧のための石灰岩を覆う工程の時期が、クフ王下での13回目の家畜調査（2年に1回）の時期だった→２６年
③ どんな人々が造ったのか？
動員されたのは数万。ハリウッド映画では奴隷のイメージ。
神殿そばの住居跡から発掘された食料から、現在と同等（2400キロカロリー）が得られていた事が判明。
ビールジョッキも発掘され、重労働に見合った報酬が供給されていたことが分かった。
④ 大ピラミッドはなぜあの形なのか？
クフ王の父「スネフェル」がピラミッド建造を始めた人。
当時の王墓は日干しレンガで積んだもの。
スネフェルはピラミッドにより国力を示そうとした。
最初は斜面が折れ曲がった「屈折ピラミッド」を作ったが、技術不足により途中で放棄。
試行錯誤の末、四角錐の形になった。
⑤ 物資はどこから来たのか？
再び遺跡ワディ・エル＝ジャラフ（ピラミッドから200km）
石の切り出しに必要な工具を作るための銅。この地を駐屯基地として船で銅鉱石をシナイ半島から運んだ。横穴に船を保管。
⑥ ピラミッドはなぜ廃れたのか？
ヒントは一人の人物の墓。部屋数は32。墓の主は「メレルカ」
王の下で政治を執り行う「宰相」だった。
官僚が王に代わり強大な権力をふるった。
それを可能にしたのが、ピラミッド建設によって築かれた社会構造。
労働者の食料調達に必要な農場、牧場。
レバノンから木材調達するためのネットワーク。
物資積み下ろしのための港湾、ダム建造。
それらはピラミッドよりも、システムとして重要なものになった。
メレルカは王の娘を妻に娶っていた。エジプトを牛耳る力があった。
王の権力が衰えることで、ピラミッド建造に対する動機付けがなくなり、官僚の権力構造だけが残った。
⑦ ピラミッド復活の謎
ピラミッド黄金時代から千年後のツタンカーメン。この時期の王はピラミッドを捨て地中深く墓を作った（王家の谷）
過去の遺産となったピラミッドだが、その時代から2千年後、エジプト文化を吸収した人々によりスーダンでピラミッド型埋葬施設が広がった。憧れの存在として永遠のシンボルとなった。
