Quantcast
Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1566

火の鳥 生命編 作:手塚治虫 1980年

$
0
0

マンガ「火の鳥」のレビューも、今回含めてあと3編。
バックナンバー


感想
クローン人間を殺す番組を考えた男が、自分自身のクローンを番組に利用されてしまう。
クローンネタの使い方としては特異で、人間のクローンなんて殺し合いぐらいしか役に立たない、というかなりハードな人間批判となっている。

ハンターゲームが始まる前、指を落とされた本物の青居が電撃で倒され、この時黒コゲだったので、てっきりオリジナルは殺されたと思ったが、その後読み返すうちに左腕を切断された(最後まで残る)青居の右指が欠損している事に気付いた。
要は、最後に人の心を取り戻して死んで行ったのはオリジナルという事になり、ドラマとしての整合は取れている様な気がするが、そんなら黒コゲにまではするべきでなかった。
それにジュネが最後に言った「とうさんは人間よ。それでいいじゃない!」の言葉を活かすためには、改心したのがクローンだった方が深く刺さったのに、とも思う。


あらすじ
2155年
未来のTV制作会社。クローン動物の狩猟ゲームで賞品を出す番組「クローンハンティング」の編集作業。
番組の視聴率が他局に食われているのを咎められる、若手プロデューサーの青居部長。
クローン人間をたくさん作ってハンターに殺させる「人間狩り」を提案する青居だが、クローン人間相手でも殺人は禁じられている。

 


スポンサーの幹部に呼び出される青居。クローン人間による狩猟を相変わらず提案するが、法律の壁がある。どこか一ヶ所でも人間じゃない所があれば、法律は回避出来ると言って会議を押し通す青居。

高等動物のクローン化に唯一成功している、アンデス奥地の研究所に幹部たちと出向く青居。
そこの所長に、人間は作れないかと聞く青居だが、クローン動物を作るのは食料危機を救うためだと一蹴される。
宿舎に案内されたところで、人間は作れる筈だという鼻の大きな男が現れた。
研究所でクローンが作れるのには秘密があった。

 

鳥に教わって作れるようになったという。
青居は、どうしても人間のクローンが作りたいと言って、その鳥のところへ案内される。
道すがら、男が青居に話す素性。猿田といって元日本人。ペルーに帰化した。自分も鳥に会いたい、そして自分のクローンが欲しいという。
昔結婚を約束した女性がいるが、その後鼻に悪性の腫瘍が出来て、何度手術しても取れない。クローン技術で病気に罹る前の自分を作り、その女性と引き合わせてやって欲しいとの願い。
この男のクローンを作ってハンターゲームに利用しようと画策する青居。

そこに鳥の面をかぶった女が現れる。古代語で女と話す猿田。
金は払う、と言って出した札束の十万ドルが吹き飛んだ。
試験に合格すれば中に入れると言って、巨大な一枚岩の皿に案内される。日射で炙られた後に暴風が訪れる。
振り回されながらもそれに耐える青居。
風が収まった時、猿田は吹き飛ばされて死んでいた。

怒った青居が女の面を取ると、実際の顔も鳥そっくりだった。

見てはいけないものを見た、と女。
彼女の父はインカのケチュア族。母は空から来た精霊。
三千年前、この地に降りた精霊が若者と結ばれ、娘が生まれた。
娘は鳥のような顔だったが、食べ物を無限に増やす製法を知っており、やがて家畜の複製まで作れるようになった。
娘は自分の複製も作って何代も生き続けた。そして正体を隠すために仮面を付けている。
培養池に生き物のかけらを入れることで、人間でも七日間で複製出来るという。
あの死んだ男の体を使ってクローンを作ることを提案する青居に、おまえの体だと言って槍で青居の指を吹き飛ばした女。
そのまま気を失う青居。


青居がいなくなって一週間。幹部たちが対策を考えているところへ青居が帰って来た。だが意識朦朧としている。
そのうちに同じ青居の姿をした者が、次々と現れ、自分は青居だと主張する。
彼らは動物運搬車に乗せられた。

クローンハンティングの材料にと考える幹部。

チャンネル9の改編番組「クローンマンハンティング」が始まる。

司会によるルール説明。
数多くの青居の中から二名選び、それを二名のハンターが追う。
指が一本足りない青居が「クローン人間じゃない!」と叫ぶが電撃で気絶させられる。


そして始まったハンターゲーム。

二人で助け合って逃げる青居だが、一人が片腕を切断された。


アパートに逃げ込むが、ドアは閉ざされたまま。

だが血を見てジュネという少女がドアを開けてくれた。
おばあちゃんと二人暮らしだが、そのおばあちゃんの脳髄から下は生命維持装置。サイボーグ手術のなれの果て。
人間じゃないと言う青居に、人間よ!と言い返すジュネ。
家にはテレビがなく、青居たちの事は何も知らないジュネ。
そんな時に、おばあちゃんの口にゴキブリが入って、そのままだと命が危ない。
ケガをしていない方の青居が、危険を賭して医者を呼びに行くが、ハンターに撃ち殺される。
ジュネの鳴き声を聞きつけて番組関係者が行き、危険状態のおばあちゃんを見つけて視聴率目当てに助け出す。

一人泣くジュネの元に、隠れていた片腕の青居が出て来て慰める。
出て行こうとする青居の後をついて来るジュネ。
パトカーを奪って北海道の自然境に逃げ込んだ青居とジュネは、野生生活を始める。

それから十五年。ジュネは立派な娘に成長し、農家から野菜や鶏を盗んで来る技術も学んだ。


沐浴をするジュネを盗み見て、愛している事に気付く青居だが、ジュネにとってはお父さん。
毎晩誰かに会いに行っている事を責める青居に、鳥のお面をかぶった女性に会ったというジュネ。
青居は大罪を犯して報いを受けたという。そして青居が人間の心を取り戻すまで、ジュネに知識を与え教育すると言った。
アンデスの鳥女、と言ってその話に逆らう青居。

ジュネが夜中に家を出たのを追う青居。

男に会いに行ったかと疑ったが、農家へ芋を盗みに行っていた。
百姓に見つかり撃たれるジュネ。
重傷を負ったジュネを助けるため、病院に押しかける青居。

院長が青居の事を知っており、まだ有効だった青居のクレジットカードで入院費を引き落とした。あの番組は十五年後も続いていた。

番組を止めるため、TV局に押しかける青居。

ジュネは反対するが、これは償いだ、と青居。

 

かつての相棒だった幹部との対面。クローン人間も、そろそろ底をついた頃だと言う青居に、我が国の技術でクローン人間を作れるようになった、と幹部。一年前から若いクローンが使われている。
今企画しているのは五百人ずつのクローン人間の肉弾戦。
クローン植物もクローン動物も、食料として人間の役に立っている。だがクローン人間はその程度の事にしか使い道がない事を嘆く青居。

クローン人間製造の現場に青居を案内する幹部。青居の左腕の義手を見咎めて、機械の義手など時代遅れだと幹部が言う。
だがそれは爆弾だった。

傷が癒えて退院するジュネに院長が、クローン製造工場が爆破された事を告げる。
彼は本物かい?クローンかね の問いに
「とうさんは人間よ。それでいいじゃない!」と言って去るジュネ。

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1566

Trending Articles