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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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白い巨塔(TVドラマ) 田宮版(1978)、唐沢版(2003)、岡田版(2019)

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昨年5月に集中放送された「岡田准一版:白い巨塔」を観てから、無性に田宮二郎版が観たくなり、この一週間程度で全話視聴した。

やっぱ田宮二郎は「エエなあ」

オープニング


名場面比較(田宮vs唐沢)
 

感想
母子家庭で育ち、苦学の末に有名大学病院の助教授になった財前五郎の、栄光と挫折を描く名作。

何と言っても1978年の田宮二郎版が最高。


眼光鋭く背も高い。野心、冷酷と共に母に対する優しさも共存する財前五郎は、全く田宮二郎のハマり役。
その相手となる里見を演ずる山本學も適役。

ただ里見の行動はやや疑問。患者佐々木庸平の術後の容体が悪くなった時に、内科と外科の垣根があるにせよ、元は自分の患者だったんだから、柳原から権限を取り上げて金井に声掛けるとかすべきだっただろう。

この重厚なドラマは、何回か繰り返し観る事で味わいが増す。
大学内の教授ポストを巡る戦い。術後トラブル、裁判を通じての証拠集め、証人申請等々の、重層を成すエピソード。
これらは原作者の山崎豊子が、いかに緻密に下調べを行ったかという事であり、ハードルは高いが原作を読んでみたい。

オマケ
東教授の娘・佐枝子を演じた島田陽子。清楚なイメージだが、2018年に亡くなった樹木希林と、内田裕也を争った過去がある。

その後金銭トラブルで騒がれ、金のためにヘアヌード写真集も出した。


五郎の愛人 ケイ子役の太地喜和子は絶品。

1992年に48歳で亡くなっている。志村けんとのロマンスもあったらしい。


2003年版の主役は唐沢寿明。


やや繊細なイメージのあった田宮に対しては、骨太な感じで安定感がある。対する里見には江口洋介。こちらも「いい人」を演じるには十分なキャスト。ケイ子役の黒木瞳は毒気がなさ過ぎて不満が残る。

かたせ梨乃がもう少し若ければ絶対こっちにするところだが・・・
自分の病気が発覚してからの唐沢五郎は、なかなかの演技だった。
今回の里見は、CTの結果を正直に告げて余命三ヶ月と宣言。

まあそれもありか。

2019年版の主役は岡田准一。


いい役者だが、一番残念なのは身長が足らないこと。
どの場面を見ても低身長がドラマのイメージを損なう。

里見と対峙しても常に財前が見上げる・・・
見下ろして圧力をかけるのが財前五郎だろ。

唐沢の時もギリの感じではあったが・・・・
だから廊下を走る姿も靴ばかり大きくてドタドタした印象。
低身長は、彼のせいではないものの、基本イメージというものがある。

キャスト

原作 山崎豊子
                   1978年版  2003年版    2019年版
                    全31話      全21話      全5話
監督(演出)            青木征雄     西谷弘         鶴橋康夫
浪速大学医学部
第一外科教授:東貞蔵   中村伸郎   石坂浩二    寺尾聰
   助教授:財前五郎   田宮二郎   唐沢寿明     岡田准一
財前の専門分野       胃がん      食道がん     腹腔鏡
   講師 :金井達夫    清水章吾   奥田達士     長谷川朝晴
   医局長:佃友博    河原崎長一郎 片岡孝太郎   八嶋智人
   医局員:柳原弘     高橋長英   伊藤英明     満島真之介
   医局員:安西       伊東辰夫   小林正寛
  病棟婦長:亀山君子  松本典子   西田尚美     美村里江
  総婦長 :           島美弥子

第一内科教授:鵜飼雅一  小沢栄太郎  伊武雅刀    松重豊
  助教授 :里見脩二     山本學     江口洋介     松山ケンイチ
  医局員 :竹内雄太     堀内正美     佐々木蔵之介
  医局員 :江川         坂東正之助

病理学教授:大河内清作   加藤嘉    品川徹       岸部一徳
第二外科教授:今津      井上孝雄   山田明郷     田基祐    
整形外科教授:野坂      小松方正   山上賢治    市川実日子  
産婦人科教授:葉山      戸浦六宏   渡辺憲吉   近藤芳正
皮膚科教授 :乾         伊藤豪     山中聡
小児科教授 :河合       林昭夫     菅原永二
証人看護婦:岡田みち子   追川泰子 
事務長   :              今西正男
付属病院長 :則内       川部修詩     田口主将 
名誉教授  :滝村恭輔    西村晃                    小林稔侍

五郎の愛人:花森ケイ子   太地喜和子    黒木瞳      沢尻エリカ 
クラブの名               シロー       アラジン        ラディゲ
リドのホステス :加奈子       夏樹陽子
東の妻  :東政子         東恵美子    高畑淳子     高島礼子
東の娘  :東佐枝子       島田陽子    矢田亜希子   飯豊まりえ 
五郎の岳父:財前又一   曽我廼家明蝶  西田敏行    小林薫
五郎の妻 :財前杏子      生田悦子    若村麻由美    夏帆
五郎の長男:財前一夫    木村雄
五郎の次男:財前富士夫   佐久間良
里見の妻 :里見三知代    上村香子   水野真紀     徳永えり
里見の息子:里見好彦     長谷川幹樹  片岡涼      鳥越壮真
里見の兄 :里見清一       岡田英次
鵜飼部長の妻:鵜飼典江   野村昭子   野川由美子   浅田美代子
亀山君子の夫:亀山雄吉   山田吾一                松尾諭
五郎の実母 :黒川きぬ    中北千枝子  池内淳子    市毛良枝 

浪速医師会会長:岩田重吉 金子信雄  曽我廼家文童  岩松了
大阪市議会議員:真鍋貫治 渡辺文雄                山田純大

東都大学医学部
第二外科教授:船尾隆      佐分利信   中原丈雄     椎名桔平
金沢大学医学部
外科教授  :菊川昇       米倉斉加年  沢村一樹     筒井道隆

原告患者 :佐々木庸平    谷幹一      田山涼成     柳葉敏郎
店の設定              繊維業      弁当屋       繊維業
庸平の妻 : 〃よし江     中村玉緒     かたせ梨乃  岸本加世子 
庸平の弟 : 〃信平      小鹿番       廣川三憲
庸平の長男: 〃庸一     中島久之     中村俊太    向井康二
 
五郎の患者 :安田太一  谷幹一       嶋崎伸夫    六平直政
柳原の婚約者:野田華子  世樹まゆ子  三浦理恵子  樋井明日香
里見の患者 :山田うめ    北林谷栄

原告側弁護士:関口仁    児玉清     上川隆也     斎藤工
被告側弁護士:河野正徳  北村和夫   福島勝美     矢島健一
      :国平敏男         小林昭二   及川光博   山崎育三郎

洛北大教授 :唐木       村上冬樹    平泉成    
東都大教授 :正木       高橋昌也    潮哲也
奈良大教授 :竹谷       下條正巳  

裁判長(大阪)
地裁裁判長 :            大滝秀治   小林勝也   
高裁裁判長 :            松本克平   湯浅実       モロ師岡





あらすじ(田宮版)
浪速大学医学部第一外科教授、東の下で助教授として働く財前五郎。
産科医院を経営する、財前又一の娘杏子との結婚で養子に入った五郎は、東の下でもう8年勤めている。
外科医として腕は立つが、スタンドプレイの多い五郎を快く思わない東は、来年の退官に向けて、後任を五郎以外にと考えていた。
クラブ「シロー」のママ、ケイ子との愛人関係を続けている五郎。

五郎の岳父、財前又一は、娘婿を教授にするため内科教授の鵜飼に高額の絵を贈って顔繋ぎをし(画策したのは五郎)、教授選挙の参謀として医師会会長の岩田と大阪市議の真鍋を取り込む。

東は自身の出身である東都大教授船尾の尽力で、有力な候補、金沢大の菊川教授を得る。
水面下で繰り広げられる票読み。
候補者は10名から財前、菊川、葛西の3名に絞られ、最終的に財前、菊川の決選投票となる。双方で繰り広げられる裏工作。
そして最終的に五郎が東の後任教授に決定する。

選挙委員長の病理学教授、大河内はその節操のない腐敗ぶりを嘆いた。

ドイツから国際外科学会の招聘を打診される五郎は、出席を決める。
第一内科助教授の里見が受け持つ患者、佐々木庸平。

慢性胃炎との診断だが、癌の疑いが拭えず数度の検査を実施。

不満が募る患者。
ある程度の確信を得て、五郎に患者のバリウム検査を頼む里見。
検査結果で初期の噴門部癌だと診断した五郎。

早急に入院させ、早期の手術が必要。
手術前の回診で、担当の柳原が患者の肺の影を指摘するが、五郎は古い結核の病巣だと断定して手術を実施。
だがその後患者の容体が悪化。柳原が五郎に指示を仰ぐ。だが五郎は渡航準備や壮行会にかまけて一度も患者を診察せずに訪欧。
患者は術後23日目に死亡。

直前で判った死因は癌性胸膜炎。胃癌の肺転移。

里見の勧めで大河内による病理解剖が実施される。
遺族は五郎の冷たい対応に怒り、訴訟を起こす。
五郎の帰国翌日に、告訴のスクープが出る。
浪速弁護士会会長の河野が財前側の担当となる。
柳原を責める五郎だが、状況の難しさを理解し、懐柔に回る。

始まる裁判。証人尋問で原告側証人に立つ里見。だが柳原が被告側証人として五郎の過失を否定(肺への転移には気付いていた)。
原告、被告双方から鑑定証人を出して論争。
地裁での判決は「請求棄却」で原告敗訴。

だが遺族は控訴を決心。
里見は報復人事で、鵜飼から地方大学への教授を指示されるが、それを蹴って辞職する。
その後大河内の口利きで近畿がんセンターへの転職を果たす里見。

鵜飼が五郎に「日本学術会議」会員(近畿地方区)への立候補を勧めて来た。自分が裁判の被告である事を危惧する五郎だが、周囲は大乗り気。ただ、鵜飼の狙いはまだ不明。
選挙参謀には葉山教授。
教授会で五郎の立候補を諮る鵜飼だが大河内が批判。

それをいなして多数決で賛意を固める鵜飼。

裁判対応は、被告側に国平弁護士を入れて補強。

五郎が手術前に転移に気付いていたというストーリーに基いて証人が準備される(佃が対応)。
一方関口は、関東医大の正木教授に鑑定依頼の承諾を取り付ける。

断層撮影はやって当然、と正木。

集団検診で疑いのあった山田うめの胃カメラ検査をする里見。

結局胃がんの確定により、うめは手術し健康を取り戻す。

原告側に肩入れして、元婦長の亀山君子に証言を依頼する東の娘佐枝子。
柳原に見合い相手を紹介する財前又一。
 

正木助教授の件で対策を講じる鵜飼側。細君の実家に手を回す策略。
そんな折りに、紹介の患者「安田太一」を無理やり押し付けられる五郎(佐々木庸平そっくり)。診断結果は胃がん

。逃れられず手術を行う五郎。

その後安田が腸閉塞を起こした時も自ら手術してケアする五郎。

学術会議の票獲得のために、三人の若手医局員が系列病院へ送り込まれる。そのうちの一人江川が不満を持つ。
国平が、亀山の亭主の会社へ圧力をかけた事で亭主激怒。

君子は原告側証人を承諾。

控訴審で大河内証言により、術前での肺への転移に気付いていたかが争われる事となる。
財前側は断層撮影の依頼をし、その後キャンセルしたという佃の証言を捏造(無記名の検査依頼を利用)
系列病院へ飛ばされる事になり、柳原に絡む江川。

佃が証言。依頼書に患者名がない事を追及する関口。肺への転移に気付いていなかった事の証人、亀山君子を在廷証人として召喚。
公判前、柳原ににダメ押しをする五郎。

そして相変わらず前証言を繰り返す柳原。
 

大学の講義で佐々木庸平の切除検体を使う五郎。

転移のない例だと断言。だがその検体は、原告側の証拠保全要求により病理検索に供された。相手は近畿がんセンター(里見の母体)。
公判。肺への転移に気付いていれば、切除切片の分析を行った筈だという証言。反論する五郎。

学術会議会員への当選を果たす五郎。
公判。関口の厳しい追及に、全て受け持ち医に指示をしていた、と柳原に責任を押し付ける五郎。
そこで「ウソです!」と傍聴席から叫ぶ柳原。

すかさず柳原を在廷証人に立てる関口。
医師としての良心に耐えかねた。今までの証言を偽証罪に問われても悔いはない、と言う柳原。

医局に忍び込む江川。「抄読会記録」を持ち出す。

それを柳原に見せる江川。
公判。「抄読会記録」を証拠として提出。佐々木庸平の手術の翌日に、転移があり得ないと五郎自身が医局員に発言していた。
成立は認めるが内容は否認。そこに江川が在廷証人として呼ばれる。「江川、君までが・・・」愕然とする五郎。

判決。原判決取り消し。被告に2700万の支払い命令。
記者の取材に反論するが、上告すると叫ぶ中で倒れる五郎。

五郎が進行した胃がんだと判明。

だが違う患者のレントゲン写真を見せて本人を騙す。
里見を訪れて診断を受ける五郎。胃カメラでの確認。

胃かいようだとの診断を下す里見。細胞診不要(出血が増す)
金井君が入院を勧めている・・・・ 手術を東教授に頼む様勧める里見。

東による手術。肝転移があり手遅れ。そのまま縫合。

覚られないよう手術時間操作や、切除した胃も準備させる。
不快症状に耐え兼ね、うがいをした時黄疸に気付く五郎は、全てを知る。
里見と二人で話す五郎。五郎自身の診断は「切除不能の胃がん」

病状が進み、ケイ子が五郎の母親を連れて来るが、会えない母親。
肝性昏睡が始まり、皆が五郎のベッドに集まる。

鵜飼の呼びかけに「用はない、あっちへ行け・・・」
「かあさん」との言葉を最後に絶命する五郎。そして駆け付ける母親。
母親が里見宛の手紙を見つける。

「君の忠告に耳を貸さず、俗事に捉われて自身の内臓を侵しているがんに気付かず、早期発見を逸し、手術不能のがんで死ぬことを、がん治療の第一線にある者として、今深く恥じている。
それ以前に、医学者としての道を踏み外していた事が恥かしくてならない。
しかし、君という友人のおかげで死に臨んでこうして反省が出来たことは、せめてもの喜びだ。
あの美しいバラは、病床を慰めてくれた。母をよろしくと伝えて下さい。
僕の遺体は大河内先生に解剖をお願いして下さい。
後進の教材として遺体を役立てて頂くことが、医師の道を踏み間違えていた僕の、教授として出来るただ一つのことです。君の友情を改めて感謝します」

しずしずとストレッチャーで運ばれる五郎の遺体。泣きながら歩く佃。

暗い中、病院を出て別棟に向かう葬列。

 

 

 


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