第3集「脂」
第4集「酒」
第5集「美食」 番組詳報
~人類進化が教える、理想の食~
感想
苦味の中においしさがあるというのは、サンマのワタとか、ふきのとうなどに代表される「ほろ苦さ」で良く知るところだが、その背景として人類生き残り戦略があったとは。
香りについても昔、母方の叔父が嗅覚を失なって味が判らなくなったという話を聞き「オーバーな事を言うなぁ」と思っていたが、ここまで密接(むしろ嗅覚の方が重要)だと知って驚いた。
他人が食べているものをウマく感じるのが、人類に刷り込まれた本能だと知って、これにもびっくり。
全体感想
昨年12月から続いたこのシリーズ。食にまつわる様々な疑問、課題に、ある程度の指針を得る意味で、NHKらしい良質の番組だった。
「LIFE」なんてくだらない番組なんか廃止して、もっとこういう方面に注力すべきだろう。
内容
ナビゲーター(TOKIO)
:城島茂 国分太一 松岡昌宏 長瀬智也
ゲスト:木村文乃
健康よりもおいしさを求めてしまう人類→美食のモンスター
人類だけの三つの特殊能力
①特別な味 苦味
米シアトルのワインソムリエ、エイブリル・ボーグさん。
鋭い舌で微細なワインの味の違いを見分ける。
唾液を採取して遺伝子分析。
エイブリルさんにだけ苦味を感じる遺伝子がある。
チンパンジーによる実験。わざと苦味をつけたリンゴ。苦味遺伝子を持たない方は平気で食べるが、持っている方は穿き出す。
苦味センサーが毒をキャッチして避ける。危険を避けるための機能。
なぜ美食と関係するか?
700万年前から出現した人類。
6万年前に気候変動により森を追われ、新天地へ旅立つ。
苦味のあるものの中に栄養があるものを発見。
苦いが食べたくなる味として記憶される(脳内の眼窩前頭皮質)。
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食事の実験。田楽豆腐、イワシの水煮、みたらし団子等に、コーヒーを煮詰めた苦味ソースをかける→香ばしくおいしくなる。
②嗅覚でおいしさを感じる
ニューヨークの女性リア・ホーゼルさんの体験。
おいしさを全く感じなくなってしまった。診断は「無嗅覚症」。
嗅覚が働かないだけで、なぜ味覚がなくなるか。
進化の歴史に秘密がある。
恐竜時代の人類の祖先は夜行性。
長い鼻面のため、嗅覚が鋭敏になる。
恐竜絶滅の気候変動を経て、人類の祖先は昼行性となり、嗅覚よりも目を武器にする様になった。
長い鼻は退化し口、喉、鼻にかけて一つにつながる
→人類を美食モンスターにした。
人の口の形を模した模型実験。
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口の中で食べ物を噛むと、香り成分が喉の入り口に溜まり、それが鼻にかけて流れ込む。
香りと味を一体のものとして感じる。
味センサーの100万個に対し、味覚センサーは1000万個。
味よりも風味をおいしさと強く結びつける。
決定的な事件は、火による調理を始めたこと。
食物から立ちのぼる香り成分。風味の洪水が脳を刺激。
③究極のおいしさは味でも香りでもない!?
第3の特殊能力の実験
同等年代の男女30人づつのA、Bグループに食事を提供。
Aグループでは味の評価が低く、Bグループでは高評価。
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実は全く同じ料理。Aに対しては機能優先の内容説明、Bに対してはダシたっぷり、モチシャキ、創作などのおいしさを感じさせる内容説明。
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人から与えられる情報で、おいしさの評価が変わる。
先の、苦いリンゴを吐き出したチンパンジーも、食べている方の姿を見るうちに食べられるようになった。
初期人類に対して、進化と共に前頭葉が大きく発達。仲間への共感を生みだすのが腹内側前頭前野であり、生き残りの重要な変化。
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仲間と分かち合うものを「おいしい」と感じることで、生存競争を生き残った。
食の楽しさを育むことで、野菜嫌いの子供を変化させる試みが成果を出している。
理想の食とは何か? ただ何を食べるべきか、ではなく「人間にとって食とは何か」を知る先に見えてくるものがある。