監督 リュック・ベッソン
脚本 リュック・ベッソン
原作 ピエール・クリスタン
音楽 アレクサンドル・デスプラ
キャスト
ヴァレリアン少佐 - デイン・デハーン
ローレリーヌ軍曹 - カーラ・デルヴィーニュ
アルン・フィリット司令官 - クライヴ・オーウェン
アイゴン・サイラス(声) - ジョン・グッドマン
バブル - リアーナ
ギブソン少佐 - オーラ・ラパス
客引きジョリー - イーサン・ホーク
国防大臣 - ハービー・ハンコック
ネザ軍曹 - クリス・ウー
オクト=バー将軍 - サム・スプルエル
海賊ボブ - アラン・シャバ
世界連邦大統領 - ルトガー・ハウアー
あらすじ
1970年代から始まった宇宙開発構想。その後宇宙ステーションとして地球の各国を結びつけるだけでなく、違う惑星の民も受け入れて巨大化して行った。
西暦2700年代。地球の低軌道上にあった宇宙ステーションアルファは、異星人を受け入れ増殖するうちに、その質量が地球に影響を与えるまでになった。世界連邦大統領の演説。
推進用エンジンを取り付けて地球の引力圏から離脱したステーションアルファは、その後も他惑星の民を受け入れ、巨大な人工都市に成長して行った。それから400年後。
青い海と美しい海岸。そこに住む白い民は、パール状のエネルギー物質を糧として暮らしており、小動物にそのパールを与える事で数を増やしていた。
ある時、空に黒煙が広がり、多数の飛行物体が落ちて来た。不時着した機体の調査を行う人々。その後、巨大な母艦が地面を目がけて墜落。強烈な爆風が広がりつつあった。あわてて機体に乗り込む人々。だが妃と思われる女性が一人残された。
ドアは壊れて開くことが出来ない。
諦めた妃は爆風に向かって手を広げる。
南国の砂浜で寝ている男。衝撃を受けて目覚める。その後飲み物を持った女性とじゃれ合う。風景はホログラムで、男は連邦捜査官のヴァレリアン少佐、女は同じくローレリーヌ軍曹。
小型宇宙船「イントルーダー」で船内コンピュータ「アレックス」の誘導により惑星キリアに降下。
国防大臣からの連絡。使命は盗まれたコンバーターの回収。闇商人のアイゴンから奪う。それを終えたら宇宙ステーションアルファに向かえ、との命令。惑星キリアはバーチャル空間のビッグマーケット。
ツアー客に混じって潜入するヴァレリアンだが、その前にローレリーヌにプロポーズ。
しかし何十人と彼女を作っては離れているため信用されない。
多少予定の変更はあったものの、アイゴンからコンバーターを回収したヴァレリアンとローレリーヌは「イントルーダー」で脱出。回収したコンバーターは、先の、破壊された星の小動物だった。
ローレリーヌが小動物を容器から出して治療ポッドに入れる(ハイグレードウランによる治療)。
ヴァレリアンは小動物と共に持ち帰った、パール状の物体をアレックスに分析させる。1個でこの船の10倍のパワーを持つ。QN34座にあった惑星ミュールで産出。下等な種族しかいない。だがその星は30年前に消滅。それ以上の情報はアクセス制限により閲覧不可。
宇宙ステーションアルファに着いた二人は上司のオクト・バー将軍に報告。もう一人の上官、アルン・フィリット司令官。
司令官の話すアルファでの問題。
一年前、ステーション中心部に高放射能ゾーンを発見。探査機、特殊部隊を送ったが帰らず。この区域は空気も汚染されている。取り除かなくては1週間でアルファを滅ぼす。
国防大臣と司令官の会話。安全保障理事会に出席する司令官へ、ヴァレリアンとローレリーヌを護衛に付けろという指示。
アルファ内の各星人の代表が集まり、司令官が状況の説明。そこに外部から敵の侵入。防衛システムが無力化されている。武器を持った白い民の攻撃で皆が倒れる。撃たれると膜で包まれて意識を失う。
司令官だけを運び出す侵入者。
撃たれたが、メディカルパーツを起動させていたヴァレリアンは、何とか膜を切断して脱出し、ローレリーヌを助け出す。
追うヴァレリアンだが、相手はかなり先行している。最短コースを通信で聞くと、ローレリーヌは目の前の壁を行けと言った。
壁をブチ抜き、時には水中も通って追いかけるが、相手は三角錐状の宇宙船で逃げる。
それをイントルーダーで追うヴァレリアン。追跡するヴァレリアンが攻撃すると、敵はバラバラになった。元々小型機の集合体。ローレリーヌが、センサー情報で司令官を乗せた機体を教え、それを追うヴァレリアン。だがこの機体では大きすぎて小回りが利かない。一人乗りの「スカイジェット」に乗り換えて追跡を継続。ロープを撃ち込み、繋がった状態で追うが、宇宙船は危険区域に向かっている。
とうとう通信圏外まで出てしまい、交信不能になってしまった。
助けに行こうとするローレリーヌだが、将軍はこれ以上の犠牲を出せないと、彼女を拘束。
だが見張りの二名を難なく倒してしまうローレリーヌ。
情報屋のドーガン=ダギーズ(アヒル顔の小人3人組)に金を払い、ヴァレリアンの正確な居場所を聞く。
案内された海洋エリアに海賊ボブを訪ね、巨大海獣に寄生するコンテックスクラゲの捕獲を頼む。命がけでそれを捕まえて来ると、ドーガン=ダギーズはローレリーヌにそれを被れと言う。時間は1分以内。それ以上やると脳が侵食される。
それを被ると、ヴァレリアンの行動がそのまま再生された。
スカイジェットが、どこかにぶつかって放り出された所の扉に書かれた「630 ESUL 作動停止」の文字に心当たりがないか聞くと、区画名を教えるドーガンたち。そして「詳しい地図は欲しくない?」
ヴァレリアンが落ちた区画に到着したローレリーヌは、何とかヴァレリアンを見つけて助け起こす。
だがそんな時に、付近を漂う蝶に手を出したローレリーヌは釣り上げられてしまう。気付いたヴァレリアンも蝶を掴んで上昇。
ローレリーヌは、釣りをしていた屈強な男にカゴへ入れられ、屋敷に連れて行かれた(惑星ゴーラの移住民居住区)。
通信が復活したアレックスにアドバイスを聞くが、外交問題を引き起こさずに入るには彼らになりすます事、との返事。そしてグラムポッドを探しては?と提案。
歓楽地域に行き、見世物をやっている所を探すヴァレリアン。そこで見つけた客引きジョリーの店に行く。
ステージの女が、一瞬で様々な衣装に変身してポールダンス。体つきや肌の色も自由自在。ピアノを弾く客引きを気絶させ、女に本当の事を話せと迫る。彼女は自由に姿を変えられるグラムポッド。名前はバブル。密入国者であり奴隷同然に扱われていた。仲間を助けるために協力してくれと頼むヴァレリアン。
ローレリーヌをさらったボーラン人に化けるため、バブルがヴァレリアンに重なって変身。少し訝しむ者たちの間を通って扉の中に入る。
中ではローレリーヌが白いドレスに着替えさせられていた、王に食事を出すための行列。その長い列の最後に並ぶローレリーヌ。実は彼女自身が食い物だった。王がローレリーヌの頭を切る寸前に、暴れ始めるヴァレリアン。
大立ち回りのあげく、地下のゴミ捨て場に落ちて逃れる三人。
バブルは戦いの中で致命傷を負っており、ヴァレリアンに別れを告げて息絶えた。
部族の地域から脱出した二人は、危険区域に到着した。
だがそこは特に汚染されていなかった。
虹色に光る膜状のフィールドを前にして、中から白い民が現れ、二人を中に導いた。多くの白い民。
彼らがミュール星の生き残りのパール人だった。皇帝の話す真相。
かつてミュール星の近くで艦隊戦が起こり、多くの宇宙船が不時着。その後母艦に相当する巨大戦艦が墜落した事で、星が壊滅した。
その時妃が一人船に入れず命を落としたが、寸前に精神を解き放ってエネルギーを放出した。
その波動がヴァレリアンに届いた。パール人の思念は、これはと思う宿主と融和する事があり、ヴァレリアンの夢もそれが原因。
残ったパール人は、シェルターとしての戦艦から様々な知識を得、更にアルファへ辿り着いた事で、知識を蓄え、自分たちの故郷を再現出来る宇宙船を作り上げた。
だが宇宙船を作動させるためにパールと、それを増やすコンバーターが必要だった。彼らは、星を滅ぼした者に対する復讐で今までの事をやったわけではないと説明。
ヴァレリアンは、司令官を起こして事実を確認。
パール人の説明は正しく、その戦いの当事者が司令官だった。戦闘を終結させるため、母艦への核攻撃を強行。星へのダメージを承知の上での作戦。
パール星のことも、下等なものしか居なかったと情報操作。そして、一連のパール人の行動も把握しており、ミュール・コンバーターの回収、パール人の根絶やしまで想定に入れていた。
司令官はパール人の逮捕を二人に命じるが、彼を殴って失神させるヴァレリアン。
ローレリーヌが、パールとコンバータを返そうとした時、ヴァレリアンがそれを止める。彼は兵士。政府の命令で回収したコンバータを何の手続きもなく返す事には反対だった。
猛然と反発するローレリーヌ。これだけの事をされたパール人なのに、過去は許し、これからの生活のためにコンバータを必要としているだけ。これこそが愛であり、ルールも法も関係ない。
君のためなら死ねる、というローレリーヌへの気持ちに思い至った事で全てを理解し、彼らにコンバータ渡す事を決めるヴァレリアン。
だがその時、危険区域の回りは軍隊で固められていた。ドーガン=ダギーズが情報を横流ししていた。また司令官の指示だけ聞くロボット「ケイトロン部隊」の存在。
外に居るパール人から、包囲されている事の情報が入って来る。攻撃を止めさせる通信をするため、妨害電波を止めるよう頼むヴァレリアン。だがバリヤーも無防備になる。皇帝はそれを受け入れた。
本部のオクト=バー将軍に通信を入れるヴァレリアンとローレリーヌ。攻撃を止めるように訴えるが、本人確認が出来ないと形式にこだわる将軍。
言い合っているうちに将軍は「司令官を呼び出してくれ」と依頼。司令官を起こしてマイクの前に引き出すヴァレリアン。
将軍は、司令官の命令通りに軍備を整えて待機している。何かお言葉は、と言われヴァレリアンは「告白タイムだ」と促すが司令官は「殲滅せよ」との指示。それがケイトロン部隊への指令トリガだった。
数体のロボットが攻撃を開始して、バリヤー前のパール人が次々に倒れる。味方の部隊も見境なく攻撃するロボット。
ヴァレリアンはロボットたちを交戦で次々に倒して行き、時限爆弾も何とか1秒前に停止出来た。
その間にパール人の宇宙船はコンバータを使ってパールを増やし、そのエネルギーでアルファから離脱した。
退避したアポロ宇宙船の中で救助を待つヴァレリアンとローレリーヌ。改めてプロポーズを受けるローレリーヌ。
感想
リュック・ベッソンの作品は、SFでは旧いのだと「フィフス・エレメント」、新しいものでは「ルーシー」辺りを観ている。
カラフルな予告編に惹かれて視聴。
宇宙ステーションがどんどん拡張して都市化して行ったといういきさつから、エンジンを取り付けて地球外へ離脱するところまでは、オープニングとしては悪くない。世界連邦大統領にルトガー・ハウアーが出て来たのにはびっくり。でも物語はそれから400年後の話だから、彼の出番はこの先にはない・・・・
惑星キリアでのバーチャルとリアルとの混在は、なかなか見応えがあった。この辺りの華やかなゴチャゴチャ感は嫌いじゃない。しかし動物がコンバータという命名には、どうも違和感あり。
ボンネットバスにジェットエンジン付けた乗り物はナイスだった。
軍の扱いでは、将軍と司令官が同時に出て来たので、ちょっと混乱。また連邦捜査官と軍隊の関係についてもイマイチ判りにくい。
国防大臣のハービー・ハンコックにはびっくり。以前「ラウンド・ミッドナイト」で役者の経験はあるのだが、あの時は実際と同じピアニストの役。今回まともにセリフ喋って、ホントの役者みたい。今後仕事が増えるか・・・
ハービー・ハンコックといえば
全体として観て、それほど悪いとは思わなかったが、なーんか華がない・・・キャストのせいなのかな?
ヴァレリアン役のデイン・デハーン。なんとなく若い頃のディカプリオみたいな感じだが、プレイボーイと言っている割りに、そのオーラが全くないので「そのネタ必要?」という感じ。
ヒロインのカーラ・デルヴィーニュもイマイチ。
配役だけに押し付けるのもかわいそうだが。
突っ込みどころはイロイロあるが・・・
まず、本編とちょいズレの小ネタが多過ぎ。
行方不明になったヴァレリアンを探す場面で、海獣に寄生するクラゲを取って来て頭に被って知るとか、変身するためにポールダンスしている女と交渉とか、こういうのはリュック・ベッソンが好むパターン(フィフス・エレメントでも良く出て来た)。彼らしいと言えばそれまでだが。
リアーナのポールダンスは、まあ・・・・良かった。
宇宙船「イントルーダー」は、何となくファルコン号にテイストが似ている。それから追跡場面で出て来た「スカイジェット」はトヨタがデザインしたらしい。ノーズ回りがレクサスそっくり(そんでもってエンブレムのLはそのまんまレクサス)。
ネット情報を見ると「失敗作」との評判みたいだが、まあ、こんなもんでしょ。スターウォーズだって、それほどとび抜けて優れたシナリオってわけでもないし。そこそこ楽しめた。
原題は「Valerian and the City of a Thousand Planets」だから、ヴァレリアンと千の惑星の都市、てな直訳になり「救世主」なんてどこにも書いてない。このムダな邦題が、映画のニュアンスをやや損なっている様な気がする。
最初はステーションアルファが、消滅の危機に瀕しているというインプットがあったものの、結局ミュール星の生き残りがアルファから脱出するというドメスティックな話に収斂するので、題名から壮大なドラマのイメージを持った者には、やや肩すかし。
観終わった後でネット検索して、バブルの吹替えをやったのが、ゆりやんレトリィバァと知った。まあ、普通に違和感なく映画に溶け込んでいたが。
それからドーガン=ダギーズ三人組の吹替えはアルフィーのメンバー。こっちは別にどうでもいいか・・・・