ヤマト編 初出:「COM」1968年9月号 ~ 1969年2月号
ヤマトの国の王。語り部を多く雇い、ヤマト王朝の正しい歴史を作るよう指示されていた。だが進捗は芳しくない。
ついで自らが入る墓の建設予定地を視察する王。建設反対の学生運動。
捕らえられたのは王子のヤマト・オグナ。
九州クマソの川上タケルが正しい歴史を編纂していると聞き、その征伐にヤマト・オグナが駆り出される。
クマソの国。酒宴で地方の族長をもてなす王、川上タケル。ヤマト国の攻撃に備え、味方を増やしておく作戦。
タケルの妹カジカ。おてんばで手下と戦争ごっこをやって遊んでいる。
ヤマト国から遠征の者が来るとの情報を掴むタケル。それを知って先回りするカジカ。
オグナは侍従二名を連れただけで向かっていた。カジカが接触し、タケルの所まで連れて行った。
途中で火の鳥を見つける。生き血を飲めば不死になる話を聞かせるカジカ。
タケルはオグナを歓待し、招待すると言ったが、オグナはそれを断った。
兵士のイマリ。カジカに求婚しているが、返事をもらえていない。
山で侍従と共に寝ようとした時、火の鳥が飛んで行くのを見つけ、それを追うオグナ。そこへカジカが現れる。
今まで誰も捕まえられなかった、というのを無視して更に追うオグナ。
湖の岩で休んでいる火の鳥に近づき、自分も岩に上がって笛を吹き始めるオグナ。一晩中吹いて戻って来た。意図が判らないカジカ。オグナはこれから毎晩聞かせに行くという。
翌日村に顔を出すオグナ。女たちには評判がいい。
タケルの許に赴くオグナ。タケルは自分が編纂している記録を見せ、ヤマト国がやって来た悪政も含め、正しく後世に残すと語る。殺しに来たのだろう、と問われるオグナだが、どうしてもタケルを憎むことが出来ない。
兵士たちの技くらべを見学するオグナ。そこにイマリが対戦を挑んで来た。いきがかり上それを受ける。高い丸太の上で棒を使っての打ち合い。
イマリの卑怯な手に負けそうになるが、逆転してイマリが落ちて死んだ。
報復を予感しながら寝所に戻った三人だが、オグナは火の鳥に笛を聞かせるため、湖に出掛けた。
タケルを訪れるオグナ。記録はもう少しで完成を迎えるところだった。タケルはオグナが火の鳥を笛で手なずけているのを知っていた。
火の鳥にこだわるオグナを、タケルは村一番の長老に会わせる。
深い竪穴から脱出した、かつてのタケル。外界で女を見つけ、家族を外に出して、次第に村を拡大して行った。
長老は言う。死なないことが幸せではない。生きている間に自分の生きがいを見つける事が大事だ、と。
自分の進むべき道に悩むオグナ。
湖で火の鳥に笛を聞かせるオグナ。心の中の直接語りかけて来た火の鳥。オグナは、自分がこれからどう進めばいいかを聞いた。
火の鳥は、それには答えず、ヤマト国の方に飛び去った。理解するオグナ。
長老が息を引き取り、タケルが采配して葬式が執り行われた。女に化けて葬列に加わるオグナ。埋葬場所で一人になったタケルの胸を突くオグナ。
タケルを尊敬しているが、クマソと縁を切るにはこれしかなかった。
死ぬ間際、タケルは自分の名前を与え、ヤマトタケルと名乗れと言い残した。
クマソ国を脱出するオグナたち。
兄に、理想の男性が出来たと伝えに来たカジカ。兄の死を知って怒りに燃え、オグナたちを追う。
追っ手に追い詰められたオグナ。カジカは大群を率いて、一対一で戦うために出て来いと叫ぶ。
そこに現れた火の鳥。自らの火で草を燃やしてオグナを逃がそうとする。オグナが足を挫いて歩けないのを知ると、足を差し出して捉まらせ、曳いて脱出。
カジカは自分の髪をヤマタイの者の形に結い直し、何年かけてもオグナを追う覚悟で出発した。
追っ手から逃げて辿り着いた山で、火の鳥に笛を聞かせるオグナ。この曲は墓地建設に反対した友人が死んだ時に自然に出来たもの。
曲を聞かせてくれたお礼にと、血を飲みなさいと言われたが、必要なのは自分ではないと言うオグナ。
墓の人柱にされる者に飲ませたい。血を布に含ませ、それを舐めさせれば大丈夫と言う火の鳥。
そこへ、笛の音を聞きつけてカジカが近づく。火の鳥は小舟までオグナを導き、そして逃がす。
帰国したオグナは、川上タケルを倒したことで王から評価され、墓の建設大臣に任命される。設計に手を加えるタケル。工事で追加された竪穴。
一方カジカは建設現場の労務者として紛れ込んでいた。
カジカは女ゆえの非力で咎めを受けそうになるが、そこを助けるオグナ。
二人だけでカジカと会うオグナ。恨みを抑えて話を聞くカジカ。
オグナは墓の完成を自分の生きがいとして取り組んだ。
墓の完成記念式典。だが施設の様子が違う。オグナは公園と遊園地を作ってしまった。
石牢に閉じ込められたオグナ。兄たちが来て王に謝れと詰め寄るが、言うことを聞かない。
王はショックで錯乱し、侍医はあと三日の命と診立てた。突貫で墓に戻す工事。
夢の中で生に執着する王。だが結局昇天。
告別の儀に参列するため、特別に解放されたオグナ。
だが殉死のための陪墳を作ると聞いて、また暴れ回り、逃げ出す。
宝物庫に逃げ込み、火をつけると言って時間稼ぎ。殉死者の代わりに埴輪を埋める事を思いつく。
事務方に行って殉死者が捕らえられている場所を聞き出し、そこに向かう。
牢にはカジカも居た。オグナは火の鳥の血を含ませた布を渡して、全員に舐めさせるよう指示。そして兄たちに殉死を止めさせるよう懇願する。
だが殉死に疑いを持たない兄たちはオグナを捕まえ、殉死者に加えてしまった。
みんなと共に埋められるオグナとカジカ。土をかぶせられても地中から歌声が続き、兵士たちは呪いだと恐れた。
一年も経つと、その声は次第に少なくなって行った。隣同士で埋められたオグナとカジカ。最後にオグナが結婚したい、と言うと、その言葉を待っていたの、と言うカジカ。
そして声は聞こえなくなる。後世になって殉死の風習は廃止された。
奈良県明日香村に、石舞台古墳と呼ばれるできそこないの様な墓の跡がある。いろいろ家庭の事情があったのかも・・・・・
単行本 第4巻 第一刷 1980年
感想
黎明編で、深い竪穴から脱出したタケルが再建したクマソ国を巡る話。明日香村にある石舞台古墳をモチーフとして作られた。
小品として、あまり強い印象はないが、オグナが自分のためではなく、殉死を強要される者のために火の鳥の血を欲した、というヒューマニズムが好ましい読後感を残す。