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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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マイストーリー(4) 林 真理子

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マイストーリー(4)160~192(10/12~11/15)

 作:林 真理子 挿絵:三溝美知子


プロジェクト

編集者を集めての「企画会議」。大手出版社から辺見が来てから、こうした会議が増えていた。
辺見は、自費出版の中からベストセラーを作ろうと本気で考えていた。会議の席上で辺見は、太田が数日前高橋由美から聞き取ったシートに興味を示した。「すごい美人だってね」という言葉にいやな予感がする太田。


辺見の要請で太田は、出来るだけ事務的にその概要を話した。辺見は、この話は普通の流通に乗ってベストセラーに出来ると社長に進言する。当人が既にプロのライターを使って本を作り出そうとしている事を太田は話すが、辺見は意に介さず、全ての費用を社で持って進めればいいと言う。前の社で自分がライターをしてベストセラーを出した「脳ミソのトリセツ」の話を披露する辺見。


この本は僕が作ります、と言う辺見に太田は、これは自分が契約して進めている話だから、最後まで責任を持って自分が進めたい、とクギを刺した。
君はプロモーションをやれ、と社長が助け舟を出した。辺見は不貞腐れながらも、この企画を持ってテレビドラマとのタイアップを考えているというアイデアを出す。その話に乗る社長。ライターとして考えている高木の事を話す太田に、辺見は以前の社でつきあいがあり、その人選に賛同した。
こうして高橋由美の出す本はユアーズ社の重点企画として進める事が決定した。


費用を全てこちらで持つ、という話を由美はさほど喜ばなかった。自分の話のどこがそんなに気に入ったのかと訝る由美。
社の方針が変わった事について諄々と説明する太田に「太田さんを信用してるから」と承諾する由美。一瞬うろたえる太田。


ライターの高木にメールで連絡し、電話を掛ける太田。高木は今まで3作ほどの著作があったが、作家として自立出来るところまでではなかった。高木はこの話を喜んだ。太田が辺見の話をすると、いろいろ仕事をもらっていたと言う。高木から見た辺見はそれほど悪い男ではなかった。ドラマ化させるという話についても高木は、辺見さんならやるかも知れない、と言った。


五日後、高木と太田は、由美の聞き取りのために新幹線で向かっていた。第1回目の打ち合わせは高橋のして来た仕事を見てもらいたいとの由美の希望からだった。出張扱いで太田も行くと言った時、由美は声を弾ませた。

駅に着き、由美の説明通りの商店街を歩いた先に「風シネマ」があった。ガラスの扉が開いて由美が出迎える。
ロビイの壁に書かれているサインのひとつに目を止める高木。彼の後輩で映画のコラムを書いている者だった。二人から離れて客室に入る太田。いつのまにか太田のうしろにぴったりと立つ由美。促されて二階の階段を上がる太田。
その時、女性の靴とすぐに判る足音。「支配人の雨宮恭子です」と由美が紹介した。名刺を受け取る太田。

高橋が映画祭の準備を始めた頃、学生ボランティアとして参加しているうちにこうなったという。恭子は高橋のことを「ナオ兄」と呼んだ。
由美が促して、皆は二階の事務所に入った。恭子が、高橋の事を取上げる企画があったのを断った経緯がある事を話し始める。その時は、映画祭が十年続いたらその時に本にしてもらおうという事になった。だがナオ兄は6年目でいなくなってしまった。映画祭も来年出来るかどうか判らないのに、本を出してもいいのかなァ、と言う恭子。
高木がそれをフォローする様に本の内容について恭子に説明する。ナオ兄の話はそんなに感動的なのか?と問う恭子。それについてもていねいに対応する高木。


取材から二日後、太田は高木から、恭子が打ったメールを転送して来た。
高橋のことが本になるのは嬉しいが、その著者が由美である事に抵抗があると言う。由美は「副支配人」の肩書きがあるが、何もやっていない。元女優だったにも関わらず、映画に尊敬も、興味もない。由美が居ることで小さな諍いや失敗が起こった。高橋は亡くなる前恭子たちに、自分が居なくなったら映画館や映画祭に由美の事は一切無視していい、と言われていた。
高木は続ける。映画のボランティアはほとんどが女性であり、高橋は一種のハーレムを形成していたのではないか。そんな中で正妻の由美が浮いた存在になって行ったのではないか。


太田の方は由美からメールを受け取っていた。
自分が恭子たちに嫌われている事を承知していた。また高橋が、死後の保険金で映画館を続けてくれと恭子らに言っていたのに対し、本を出版するのを選んだのが気に入らないと考えている。
太田は由美の「これからも取材についてきてくださいね」という言葉を読んで、このメールを高木に転送するのを止めようと決めた。


感想
大手から引き抜かれて来た辺見が、太田の取ってきた話にちょっかいを出す。由美が美人だというのがキーワード。仕事とはいいながらも太田自身、由美と仕事上の繋がりが出来る事に対する期待から、辺見を敵視するが、ライターの高木の話では、そんなに悪いヤツではないという。この辺り「男ってヤツは」と思いながらもご同慶の至り・・・・・


保険金の使い道について由美があまり執着心がない理由も、これで解明。





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