監督 アルフレッド・ヒッチコック
キャスト
バリー・ケイン ロバート・カミングス
パット プリシラ・レイン
フライ ノーマン・ロイド
トビン オットー・クルーガー
ミラー(パットの叔父) ボウハン・グレイザー
フリーマン アラン・バクスター
トラック運転手 マレイ・アルパー
あらすじ
カリフォルニアの軍需工場で働くバリー。仕事を終え、同僚メイソンと工場から出るところで男とぶつかり、男は金と封筒を落とす。男が100ドル札を拾い忘れたので、封筒にあった名前「フライ」を思い出し、探し出して金を渡す。驚く男。
その直後に工場で火災。消火に向かったバリーと同僚のメイソン。メイソンが先に行き、バリーはさっきの男、フライから渡された消火器で消火を試みるが、火勢はなお強くなり、メイソンは焼死した。
消火器にガソリンが詰めてあった事でバリーに疑いが掛かり、身柄を拘束されそうになったためバリーは逃げた。犯人はフライだと確信。封筒にあった「ディープ・スプリング牧場」が手掛かり。
そこに行き、牧場主のトビンにフライの事を訪ねるが、知らないと言う。トビンが飲み物を取りに行った隙に服のポケットの手紙を見たバリー。
そこにはフライからの手紙があり「ソーダ・シティに行く」と書いてあった。
トビンは警察に通報しており、バリーは手錠をかけられて連行される。スキを見て逃げ出すバリー。
ヒッチハイクで牧場まで送ってくれた運転手が逃走を助けてくれた。
雨中の山をさまよううちに家を見つけるバリー。そこの老人の好意で家に入れてもらう。老人は盲目であり、手錠には気付いていなかった。
老人が食事を出そうとした時、外に車の気配。老人の姪のパットが来たのだ。時々伯父の様子を見に来ているもの。警察が男を捜していると老人に伝える。手錠をパットに見られ、バリーは窮するが老人は最初から音でバリーに手錠が掛かっている事を知っていた。バリーの無実を信じ、パットにバリーの手錠を隣町の鍛冶屋に切らせる様指示した。
やむなく車を出すパットだが、指示に逆らって警察に行こうとする。揉めているうちに郊外まで来てしまい、パットは車を降りて、通りかかる車に助けを求める。バリーはボンネットを開け、ファンベルトのプーリーで手錠を切り、パットを無理やり乗せてその場を逃げる。
車のガソリンもなくなり、とぼとぼ歩く二人の行く手にサーカス団の車列が通った。最後の車に乗った二人だが、団員に見つかる。この二人をどうするかで団員の意見が分かれるが、結局団長が匿う事を決断。捜査に来た警察からも隠してくれた。
ようやくソーダ・シティに着いた二人だが、そこには爆破するべき施設などなく、ある家に入った時、そこに生活している跡があったため忍び込む。そこへ人の来る気配。パットを別の部屋に隠し、バリーは来た男たちに、工場に放火した男として話を合わせる。工作員の一人フリーマン。
組織の一員として工作員と一緒に本部に向かうバリー。パットはいつの間にか逃げていた。
ニューヨークでバリーはパーティー会場に到着。市の有力な資産家サットン夫人。彼女が破壊工作員のパトロンだった。そこへ牧場主のトビンが現れて、バリーの正体がバレる。なぜかパットも捕まっていた。警察に通報したものの、警察内の工作員に連れて来られた。
トビンから一連の事件の真相を聞かされるバリー。彼らはナチの破壊工作員だった。
工作員のフリーマンは何か大きな仕事をやるつもりの様だった。
捕まったバリーは、ビルのスプリンクラーを細工して警報を鳴らし、そのスキに逃げ出す。そしてトビンとの会話から、今日進水式を行う新造戦艦の爆破が目的だと知る。港に向かい、そこの担当に話すが取り合ってくれない。
自力で爆破操作の現場を見つけ出すバリー。そこにはフライが居た。ボタンを押そうとするフライを懸命に止める。だが結局ボタンは押され、爆破は実行された。
逃げるフライを追う途中で警察に止められるバリー、丁度そこで警察に事情を説明していたパットにフライの尾行を託す。
フライは船でリバティ島に向かっていた。フライが島に立つ自由の女神像の中に入ったのを見届けてFBIに連絡を入れるパット。捜査官とバリーは島に向かう。
引き止めるため、フライに声をかけるパット。時間稼ぎも限界に来た時、警察が駆けつける。女神像の最上部(たいまつの所)まで逃げるフライを追うビリー。
もみ合ううちに足を滑らせてたいまつに宙吊りになるフライ。救いに行くビリー。何とか片腕の袖をつかんで引き止める。
フライは、助けられたら証言すると言ったが、結局袖がちぎれて落ちて行く。
感想
題名だけ見て録画して、さあ観ようとなったら白黒。ヒチコック映画だという事も初めて知った。よって上のあらすじはネット情報の助けも借りているが、映画としての都合の良い展開も含め、そこそこ面白かった。
話の骨子としては、ナチの破壊工作に巻き込まれた男が逃走しつつ核心に迫って行く話。そこに恋愛も適当に絡ませて観客にサービス。
でもこのヒロイン、簡単に男を信用しない。手錠の付いた腕をハンドルにくぐらせて手の動きを封じたり、車から逃げ出して助けを求めたり。
それで、どこで信用するかと言うと、たまたま乗り込んだサーカス団のバスで団長がバリーを信用するのを見てからようやく。
その点で言うと、バリーは警察から疑われて追われるが、市井の人々はみなバリーを信じて手助けしてくれる。これは旧き良き時代のアメリカ市民の資質なのかも。
でもこの映画、太平洋戦争の直前に作られている。まだアメリカがドイツとの戦争に巻き込まれる前のプロパガンダ映画とも言えるが、破壊工作の幹部であるトビンに、ある程度の人格者として思想を語らせ、戦艦の爆破も結局成功してしまう。
この辺が、ある意味ヒチコックらしいという事かな。
しかしカリフォルニアからニューヨーク、この距離的スケールの大きさも、当時としては旅行気分をくすぐる演出だったのかも。