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Channel: 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)
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NHKスペシャル 松本清張と帝銀事件 第2部(ドキュメンタリー) NHK 12/30放送

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NHKスペシャル 未解決事件 File.09
松本清張と帝銀事件 第2部 74年目の“真相”
第1部はコチラ

感想
第1部『松本清張と「小説 帝銀事件」』のドラマを受け、事実主体の受け皿として組まれた番組。
ただ731部隊の件、GHQの関与についてもドラマの方でかなり語られてしまっているため、やや冗長な印象を受けた。
ただそれは、初期段階から捜査情報が漏れ出し「青酸ニトリール」なんて名前が雑誌に載ったため。そちらの方に驚く。
そこまで周知になったものを、GHQの圧力があったとはいえ司法が皆チャラにして「毒物は青酸カリ」と嘘の上塗りをして平沢を有罪にしてしまった。
この時の悔しさが清張に「日本の黒い霧」を書かせた原動力になったのだろう。

20代半ばで松本清張に入れ込み、当時の全集48巻を読破した。
「昭和史発掘」も読んだが結婚時、社宅に置き場所がなくて本はみな手放し、その後読んだ内容も忘却の彼方へ。
改めて読み直し、再レビューしたいと思っても、もう残り時間が足りないか・・・・


内容
70年以上封印されて来た映像。平沢貞通による犯行再現。
1948(昭和23)年1月26日。GHQ占領下で起きた事件。
事件の真相に迫る。74年目の真相。

ドラマでは事件と、作家松本清張の知られざる戦いを追った。
本編では清張が解明しようとした、事件の真相に迫る。

閉店直後の帝国銀行椎名町支店。市の衛生課を名乗る男。
使われた赤痢の予防薬。1杯目のあと2杯目を飲ませる手口。
犯人自ら飲んで手本を見せた。16人中12人が死亡。
現金16万と小切手を奪って立ち去る男。警察動員延べ2万人。
辛くも助かった村田正子さんの証言。


北海道で逮捕された平沢貞通は画家。横山大観の弟子。

 

出所不明の大金を持っていた。換金した小切手の筆跡が類似。
1ケ月以上の取り調べで自白した平沢。そして死刑判決。
物的証拠なし。命を取りとめた被害者村田正子は「似ているが犯人とは思えない」

モンタージュ写真との差


裁判で自白を翻した平沢。自白には裏があると感じた清張。
一つは平沢の病気「コルサコフ症候群(記憶障害や虚言)」

テキストマイニングによる平沢証言の解析。
「青酸カリ」の言葉を刑事が誘導。自白後「塩酸」の言葉を使ったが、平沢は次第に「青酸カリ」を多用→無知の暴露


平沢は本当に犯人か? 70年以上前の映像資料。平沢が行った犯行再現(自白後11日)と犯人の行動との食い違い
・ピペットの取り扱い方・毒物の飲ませ方

・二杯目を飲ませるまでの時間2分(犯人は1分と言った)
平沢犯人説に大きな矛盾がある(担当弁護士)
無実を訴え続け35年前、獄中で死亡した平沢。


警察は、全く別の犯人像を追っていた。
清張は犯人が軍関係者と知っていた。

捜査一課係長 甲斐文助の捜査記録。

2000ページ超の手記を今回徹底分析。

警察は半年程で日本軍の化学戦、謀略等の全容を掴んでいる。
事件の時系列解析。途中から軍関係者が急増。捕虜の虐殺、人を殺す研究・・・


犯人が使った名刺の「松井蔚(しげる)」

本人がインドネシアの「南方防疫給水部」で毒物研究を行っていた事が判明。

アリバイがあり松井は捜査線上から外れたが、青酸化合物(当時詳細は不明)の線を追って網を広げるうちに731部隊へ到達した。

 

3000人の隊員を抱える大組織。

隊長の石井四郎に接触。

俺の部下にいる様な気がする(石井談)
君らが行っても喋らんだろう・・・
旧満州で行った人体実験。囚人は「マルタ」と呼ばれた。
捜査員が接触。昭和10~11年にハルビンで青酸研究(人体実験)が行われた。指揮官の憲兵Aが一番良く似ている。
Aの名は捜査会議でも度々出た。九州にその行方を追った。


捜査員は毒物の正体を追った。
事件での遅効性は、青酸カリでは説明がつかない。
731部隊で極秘研究を行っていた部署(風船爆弾、ニセ札・・)
登戸研究所。秘密兵器研究。終戦で資料は焼却された。


全容を知る幹部:伴繁雄。未知の毒物の存在を明かす。

青酸ニトリール。数分後に効果が出る
→事件の毒物と似ている。
それは厳重管理されていたが、複数の人物が持ち去った(自殺用)帝銀事件で使わないとも限らない。

そこまで迫りながら、なぜ捜査を転換させたか?巨大な仮説。
清張の録音テープ。
GHQは絶対権力。占領時代は警察・報道機関も監視下にあった。
暗部に迫ろうとした米ジャーナリスト:ウィリアム・トリプレット。公文書館で、ある文書を見つけた。

帝銀事件の捜査記録(GHQと警察との会議)
軍の秘密部隊と、帝銀事件の関連を警察が捜査している事に触れる記事は一切差し止め(要請)
「オフリミット」「手を引け」との内容。何故GHQは止めたか。

事件当時GHQ諜報員だったアロンゾ・シャタック(96歳)

731部隊の資料を入手していた(トップシークレット)
帝銀事件の8ケ月前、731の人体実験データを米国に送った。
独占の代わりに関係者を免責するよう提言。
731の情報が世に出ない事をアメリカは願った(東西冷戦の緊張回避)日本を「反共の防壁」と位置付けた。

捜査員たちはGHQの存在に直面(ある二人を聴取して)
陸軍中将 有末精三と、大佐 服部卓四郎。

二人は戦時中、参謀本部で作戦の立案や指揮を担っていた。
そして戦後は責任を問われる事なくGHQと関係を深めた。
捜査員に「軍の秘密を聞くのはGHQの関係で無理であろう・・」
と軍関係の調査をけん制。
他の軍関係者も次第に口をつぐんだ。
戦争犯罪が、データ取得という側面から免責に繋がるものとして変質する流れが出来た。
帝銀事件の捜査がその分岐点になった。

有末、服部の聴取から一週間後、平沢が逮捕された(急転換)
追っていた憲兵Aの所在は最後まで掴めず。
元憲兵の名簿を入手。Aは1974(昭和49).2.24に死亡。
伴繁雄は、凶器が青酸カリである事を裁判でも証言。
判決でも青酸カリが認定された。
平沢有罪に加担した伴はその後固く口を閉ざした。何故か。
未公開手記がある。GHQに召喚されて尋問を受けた。
戦犯に問われる恐れ→ギブアンドテイク。
どんな約束を交わしたか?・・・伴は平成5年に死去。

当初平沢に同情的だった世論も、彼が過去に詐欺事件を起こしていた事で一変。凶悪犯と非難した。
警察は全ての調査を終了。

清張の言葉
世間の大衆が平沢に憎悪の目を投げつけたのは当然。
彼らは新聞による報道だけで、詳細な内容を知らされていない。
警視庁の主観が新聞の主観となり、それが読者の主観となり、世論の主観となる、のである。

昭和62年、95歳でこの世を去った平沢。
先日、彼の絵画展が開かれた。獄中で2000点の作品を描き残した。

現在、20回目の再審請求が行われている。

検察は取材に「個別の意見には答えられない」としている。
今の日本が形作られた占領期。捜査員たちが垣間見た闇は、一人の画家の逮捕と共に、歴史の奥へと消えた。

 

 

 

 


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