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新聞小説「荒神」(6)宮部みゆき

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「荒神」 作 宮部みゆき  画 こうの史代


第五章 荒神 317~361(11/17~3/18)


溜家の土間。蓑吉、おせん、太一郎は弾正の一行に捕らえられていた。蓑吉も太一郎も、知っている限りの事を弾正に白状。思案の弾正。
蓑吉に妙高寺への案内を命じる弾正。怪物をおびき出して捕らえるという。その生贄に妻の音羽を利用するとも。部下も息を呑む。
それを聞いて咎める太一郎は弾正の指示で部下に斬り殺された。おせんも斬ろうとする部下の前に「道案内でも何でもする」と倒れこむ蓑吉。




妙高寺に向かう直弥とやじ、金次郎と園秀、そして朱音。
半日ほどかかって妙高寺に到着した一行。明念和尚は不在だった。
寺の事を聞く直弥にやじは逆に「その絵師をどうにかしろ」と言う。直弥は園秀に、なぜ光栄寺の奉納絵馬の事を知っていたのかと問い詰める。
園秀は、あの絵馬は光栄寺の寺男、伊吉から見る様に誘われたという。伊吉は心の清い忠義者だと言って怒る直弥。
伊吉の阿呆は見せかけだと言う園秀。その時のいきさつを話す園秀を斬り捨てようとする直弥に、朱音の平手打ちが飛ぶ。朱音は絵馬の事を園秀に聞くが、彼は絵馬を見る誘いには乗らず、香山を離れたという。絵馬は持ち去られたと話す直弥。
園秀の弁護をする朱音。絵を描く事になると見境いがなくなり、怪物が現れた時もそれを描きのこそうとしていた。この様な者に間者など出来ようはずがない。
園秀から更に語られる伊吉の言動。




明念和尚が皆の前に姿を現した。平伏し、涙をながすやじ。
朱音に向いて「母親の秋音様に生き写しだ」と言い、ここに戻ったからには全てを知らなければならないと話す。「つちみかど」様を平らげるには朱音の力が必要だと言う。
直弥は和尚に自分の素性と立場を全て話すが、和尚は香山藩の騒動を全て知っていた。

和尚が話す怪物の背景。
瓜生氏は、旧くからこの山々に働きかける術を使う事が出来た。古代より雨乞い、厄病鎮圧等を担う呪術者がおり、瓜生氏もその末裔だった。この分家が柏原瓜生氏。戦乱の世で永津野竜崎氏が強国に恭順する度に人質とされた経緯。その恐怖から怪物を作ろうとした。だがそれは完成しなかった。
その呪術には家中の武士の血も多く供された。その後ろめたさのために柏原家は呪術を捨てた。
柏原家の中で術者になり得る子が生まれた際には大平良山の頂上で電光が閃く。その赤子は家を出され、妙高寺で育てられる事になっていた。
朱音と市ノ介(弾正)もそうして生まれた。
この寺は「つちみかどさま」が大太良山に埋けられた寺に、封印のために建立されたもの。
朱音らの後に生まれた子は夭折し、ここ十年ほどはその様な子も生まれなくなっていた。
なぜ百年も前に作られたものの呪詛が今になって利いたのか。
和尚は言う。かつて出来損ないの呪詛の塊として山に帰されたものが、山の力を吸込んで自ら育ち上がった。
園秀が和尚に絵馬の事を聞くが、全く知らないという。「つちみかどさま」が目覚めた時に鎮める呪文がある、と言って和尚が諸肌を脱ぐと、その背中一面に文字が書き込まれていた。

そこへ弾正が姿を現す。本堂は武士たちで囲まれていた。和尚に話しかける弾正。

弾正は既に十五歳の時、和尚からこの話を聞いていた。
直弥らを「虻侍」と言う弾正に逆上する直弥。武士が打ち込もうとするところを鉄砲で撃たれる。そこにいたのはじっちゃと宗栄だった。


妙高寺への道案内の後、木の枝に吊るされた蓑吉。そこへ現れたじっちゃと宗栄。
緊迫した気配に声をかけられずにいると、その後一発の銃声。
その時、頭上からの間延びした声。風体も間延びした男。そこへ本堂から人がたくさん出て来た。じっちゃ、宗栄もその中に居て、皆縛られていた。
男はすぐに居なくなった。


宗栄とじっちゃは多勢に無勢で捕らえられ、引っ立てられて行き、本堂には明念和尚、弾正、朱音、やじだけが残った。
言い争う兄と妹。百年も前の仕損じた呪術のために人生を奪われた、だがその怪物が本当に居た。弾正は自分の願いが通じたからだと信じ込んでいる。また弾正は、香山藩の世継ぎの死去についても知っていた。和尚は弾正との会話を諦め、朱音に向かい、怪物を鎮めるためには術者の血を引く者が呪文を体に記し、怪物に食われる事によってのみ効力を現すと言う。
怒った弾正が和尚を切り捨てようとした時、副官の左平次がそれを止める。和尚が息絶えれば呪文が消える。

和尚を生贄にしようとする弾正に対し、自分が贄になると言う朱音。
弾正は、和尚の呪文を他の者の背に写して贄にしようと指図する。呪文を書くための背を差し出す左平次。呪文を写す役の小十郎が和尚の背中を読み始めた時、異変が起きる。小十郎の指が黒変し、それは腕の方へ這い上りながら皮膚を焼いて行った。
のたうち回る小十郎はやがて動かなくなり絶命した。




弾正が問い質すと、和尚は未熟な者が読めば魅入られ、焼きつくされるのだと言う。
左平次が、呪文に頼る事がそもそも考え違いであると進言し、弾正もそれに乗ってまともに迎え撃つ準備を始める。

朱音は和尚らと離され、左平次に僧坊へ連れて行かれた。途中厩で音羽を見つけ出す朱音。左平次は二人を匿った。左平次に助力を頼む朱音。だが呪文を写すのは術者の血筋でなければ不可能。朱音は、呪文を文字として読まず、絵として無心に写す事が出来る者として園秀の顔を思い浮かべていた。


感想

この連載もあと1ケ月あまりで終わるとの情報があるので、とりあえずアップ。
第五章は怪物の謎解きに入っている。
呪いで作り出されたものだとなると、結局何でもアリという事なんで、今まで読んで来たのが、ちょっと肩スカシって感じ。


最後の興味は、朱音と弾正という兄妹の最終的な決着の着け方と、蓑吉。最初の紹介で、少年がカギだと言っていた割りには、あまり目覚しい「主役感」がない。意図してやっているのかも知れないが・・・・

ただ、やっぱ登場人物は多いかなー。直弥の同僚、いいなずけの女性、絵馬とか重要かな、と思っていた人、モノが適当に打ち捨てられて、単に行数を埋めるためだけに使われていたのか、とも思える。
逆に柏原氏なんて、確か途中で出て来たよな、と思っても読み飛ばしてあらすじにも入れていない。
この辺りは伏線なら伏線と判る様に、もう少し丁寧に扱って欲しかった(今さら読み返したくない・・・・・)


最終的な感想は、全部終わってから。





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